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  • 特開-浴室システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090734
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】浴室システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/196 20220101AFI20240627BHJP
   F24D 15/00 20220101ALI20240627BHJP
   F24H 15/14 20220101ALI20240627BHJP
   F24H 15/258 20220101ALI20240627BHJP
   F24H 15/254 20220101ALI20240627BHJP
   A47K 3/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F24H15/196 301L
F24D15/00 B
F24H15/14
F24H15/258
F24H15/254
A47K3/00 D
A47K3/00 Q
A47K3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206808
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】小幡 恭士
【テーマコード(参考)】
3L024
3L072
【Fターム(参考)】
3L024CC03
3L024DD22
3L024DD27
3L024DD35
3L024DD37
3L024EE03
3L024GG02
3L072AA05
3L072AB03
3L072AB06
3L072AC01
3L072AF01
3L072AF03
3L072AG01
(57)【要約】
【課題】浴室の温度が低いなどの状況であっても、浴槽の洗浄効率を高くすることが適切に実現可能な浴室システムを提供する。
【解決手段】浴室システムSYは、浴槽10に洗浄水を噴射する浴槽洗浄運転が可能な浴槽洗浄装置Aと、浴室1の床または床下に敷設された温水流通部材80に、浴室床暖房運転が可能な床暖房装置Bと、浴槽洗浄装置Aおよび床暖房装置Bの運転制御が可能な制御手段7,3と、を備えており、浴槽洗浄運転が開始される場合には、監視対象温度が所定温度以下であるか否かが判断され、かつ所定温度以下である場合には、浴槽洗浄運転に先立ち、浴室床暖房運転が開始され、浴室1の温度が上昇した後に浴槽洗浄運転が開始される特定動作制御が実行可能とされている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽に洗浄水を噴射する浴槽洗浄運転が可能な浴槽洗浄装置と、
前記浴槽が設置されている浴室の浴室床暖房運転が可能な床暖房装置と、
前記浴槽洗浄装置および前記床暖房装置の運転制御が可能な制御手段と、
を備えており、
前記浴槽洗浄運転が開始される場合には、監視対象温度としての前記浴室の温度、外気温、またはこれらに対応する温度が所定温度以下であるか否かが前記制御手段により判断され、かつ前記監視対象温度が前記所定温度以下である場合には、前記浴槽洗浄運転に先立ち、前記浴室床暖房運転が開始され、前記浴室の温度が上昇した後に前記浴槽洗浄運転が開始される特定動作制御が実行可能な構成とされていることを特徴とする、浴室システム。
【請求項2】
請求項1に記載の浴室システムであって、
前記特定動作制御は、前記浴槽洗浄運転の終了時から所定時間内に、前記給湯装置による前記浴槽への湯張り動作が開始されることが予定されていることを条件として、実行されるように構成されている、浴室システム。
【請求項3】
浴槽に洗浄水を噴射する浴槽洗浄運転が可能な浴槽洗浄装置と、
前記浴槽が設置されている浴室の浴室床暖房運転が可能な床暖房装置と、
前記浴槽洗浄装置および前記床暖房装置の運転制御が可能な制御手段と、
を備えており、
前記制御手段は、前記浴槽洗浄運転が開始される場合に、それに先立ち、前記浴室床暖房運転が開始され、前記浴室の温度が上昇した後に前記浴槽洗浄運転が開始される特定動作制御が実行される旨のデータ設定が可能とされており、
前記浴槽洗浄運転が開始される際に、前記データ設定がなされている場合には、前記特定動作制御が実行されるように構成されていることを特徴とする、浴室システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の浴室システムであって、
前記浴槽洗浄運転中は、前記浴室床暖房運転が継続されるように構成されている、浴室システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室システムの具体例として、特許文献1~3に記載のものがある。
これら特許文献1~3に記載の浴室システムにおいては、浴室に設置された浴槽に洗浄水を噴射する浴槽洗浄運転が可能な浴槽洗浄装置が具備されている。このような構成によれば、浴槽洗浄運転を行なうことにより、浴槽に付着している水垢や皮脂などの汚れを落とし、浴槽を衛生的な状態にすることが可能である。
【0003】
前記したような浴槽洗浄運転を行なう場合、その洗浄効率をできる限り高くすることが望まれる。また、たとえば寒冷期において浴室の温度が低い場合には、洗浄効率は低くなりがちである。
そこで、特許文献1には、浴槽洗浄の効率を高めるための手段として、前記した浴槽洗浄運転を行なう際には、別途設置されている温風式の浴室暖房装置を運転し、浴室の温度を高める手段が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の手段においては、次に述べるように改善の余地があった。
【0005】
すなわち、特許文献1においては、浴室暖房方式として、浴室の天井部に設置された浴室暖房装置から下向きに温風送風を行なう方式が採用されている。このため、温風送風によって、たとえば浴槽が効果的に暖められてその温度が上昇すればよいが、実際には、浴槽の表面に付着している水垢や皮脂などの汚れに対して温風が直接当たるため、それら汚れの成分が乾燥し、固化・白化を生じ易い。また、温風の送風流には、塵・埃が含まれ、これが浴槽の表面に付着して固化・白化する現象、あるいは浴槽外に存在していた塵・埃が送風流に巻き上げられてから浴槽内に落下し、浴槽に付着して固化・白化する現象を生じる虞もある。このような現象を生じたのでは、浴槽の洗浄効率が却って低くなる可能性があり、洗浄効率を向上させることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第7120952号公報
【特許文献2】特開2020-68859号公報
【特許文献3】特開2022-177895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、浴室の温度が低いなどの状況であっても、浴槽の洗浄効率を高くすることが適切に実現可能な浴室システムを提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される浴室システムは、浴槽に洗浄水を噴射する浴槽洗浄運転が可能な浴槽洗浄装置と、前記浴槽が設置されている浴室の浴室床暖房運転が可能
な床暖房装置と、前記浴槽洗浄装置および前記床暖房装置の運転制御が可能な制御手段と、を備えており、前記浴槽洗浄運転が開始される場合には、監視対象温度としての前記浴室の温度、外気温、またはこれらに対応する温度が所定温度以下であるか否かが前記制御手段により判断され、かつ前記監視対象温度が前記所定温度以下である場合には、前記浴槽洗浄運転に先立ち、前記浴室床暖房運転が開始され、前記浴室の温度が上昇した後に前記浴槽洗浄運転が開始される特定動作制御が実行可能な構成とされていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
浴槽洗浄運転が開始される際に、浴室の温度が低い場合には、浴槽洗浄運転に先立ち、浴室床暖房運転が開始され、浴室の温度が上昇した後に浴槽洗浄運転が開始される特定動作制御が実行可能であるため、温度上昇による浴槽洗浄効率の向上が期待できる。
ここで、本発明においては、浴室の温度を上昇させる手段として、浴室床暖房の手段が採用されているため、浴室の床から浴槽エプロンや浴室の側壁などを経由する浴槽への熱伝達により、浴槽を効果的に加温することが可能である。特許文献1の温風送風による浴室暖房とは異なり、浴槽の表面の水垢や皮脂などの汚れに温風が直接当たって、それらを乾燥させることは抑制され、それら汚れ成分の固化・白化を防止することができる。また、温風送風の場合には、送風流に含まれている塵・埃が浴槽の表面に付着して固化・白化する現象、あるいは浴槽外の塵・埃が送風流に巻き上げられて浴槽に付着する現象を生じる虞があるが、本発明によれば、そのような虞もない。したがって、浴室の温度が低い場合に、特許文献1などの従来技術と比較して、浴槽の洗浄効率を高めることができ、浴槽を衛生的な状態とすることが適切に達成される。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記特定動作制御は、前記浴槽洗浄運転の終了時から所定時間内に、前記給湯装置による前記浴槽への湯張り動作が開始されることが予定されていることを条件として、実行されるように構成されている。
【0012】
このような構成によれば、浴槽洗浄運転に引き続いて浴槽への湯張り動作が開始されることが予定されており、その後にユーザが入浴を行なうと考えられる場合には、前記特定動作制御が実行される。したがって、ユーザが入浴を行なう際には、浴室床暖房運転によって浴室が暖められていること、および浴槽は浴室床暖房によって洗浄効率が高い浴槽洗浄を終えた衛生的なものとされていることに基づき、快適な入浴が可能となる。
【0013】
本発明の第2の側面により提供される浴室システムは、浴槽に洗浄水を噴射する浴槽洗浄運転が可能な浴槽洗浄装置と、前記浴槽が設置されている浴室の浴室床暖房運転が可能な床暖房装置と、前記浴槽洗浄装置および前記床暖房装置の運転制御が可能な制御手段と、を備えており、前記制御手段は、前記浴槽洗浄運転が開始される場合に、それに先立ち、前記浴室床暖房運転が開始され、前記浴室の温度が上昇した後に前記浴槽洗浄運転が開始される特定動作制御が実行される旨のデータ設定が可能とされており、前記浴槽洗浄運転が開始される際に、前記データ設定がなされている場合には、前記特定動作制御が実行されるように構成されていることを特徴としている。
【0014】
このような構成によれば、実際の浴室の温度や外気温には関係なく、ユーザが浴室の温度を、現状の温度よりも高めた状態で、浴槽洗浄運転を効率よく行なうための特定動作制御を実行させたい場合には、その旨のデータ設定を行なっておけばよいこととなり、ユーザの要望に対応した制御が実行され、便利である。
本発明の第1の側面により提供される浴室システムと同様に、浴室床暖房の手段が採用されている。このため、先に述べたのと同様に、浴槽の表面の水垢や皮脂などの汚れを温風送風によって乾燥させて固化・白化させることを防止しつつ、浴槽を効果的に加温することが可能である。温風送風の送風流に含まれている塵・埃が浴槽の表面に付着して固化
・白化する現象や、浴槽外の塵・埃が送風流に巻き上げられて浴槽に付着する現象なども適切に防止することが可能である。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記浴槽洗浄運転中は、前記浴室床暖房運転が継続されるように構成されている。
【0016】
このような構成によれば、浴槽洗浄運転中に、浴室の温度が低下しないようにし、浴槽の洗浄効率を高い状態に維持することが可能である。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る浴室システムの一例を示す概略説明図である。
図2図1に示す浴室システムにおいて実行される動作制御手順の例を示すフローチャートである。
図3図1に示す浴室システムにおいて実行される動作制御手順の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図1に示す浴室システムSYは、給湯装置WH、浴室1の下部に設置されている浴槽洗浄装置A、浴室1の洗い場14の床または床下に敷設された温水パイプなどの温水流通部材80を含む床暖房用端末8に温水を循環供給可能な床暖房装置Bを備えている。
【0021】
給湯装置WHは、たとえば瞬間式ガス給湯装置であり、各部の動作制御やデータ処理を実行する制御部7を備えており、浴槽10への湯張り機能、風呂追い焚き機能、給湯栓29への一般給湯機能、浴槽洗浄装置Aへの給湯機能を有している。さらに、浴室床暖房運転(床暖房用端末8への温水循環供給)を行なうことも可能である。床暖房用端末8と給湯装置WHとの組み合わせは、床暖房装置Bを構成している。
図1において、符号90は、給湯装置WHの外装ケースを示し、符号10bは、浴槽10のエプロンを示している。
【0022】
給湯装置WHにおける一般給湯は、入水口20aから入水路2aに流入した湯水が熱交換器25aに送られてバーナ26aにより加熱され、かつこの加熱された湯水は内部出湯路2bおよび外部出湯路2cを流通して給湯栓29に供給される態様で行なわれる。
【0023】
浴槽10への湯張り動作は、風呂用出湯路50に設けられた開閉弁V1が開状態とされ、熱交換器25aを通過して加熱された湯水が、風呂用出湯路50および三方弁V2から湯水循環配管部5に流れ込んでから浴槽10に向かう態様で行なわれる。湯水循環配管部5は、浴槽10のアダプタ10aに接続された外部配管部5a,5b、およびこれらに接続された内部配管部5c,5dを備え、かつ内部配管部5c,5dには風呂追い焚き用の熱交換器25cおよび第1の循環ポンプP1が接続された構成である。
【0024】
風呂追い焚き動作は、第1の循環ポンプP1が駆動オンとされ、浴槽10の湯水が湯水循環配管部5を介して熱交換器25cに送り込まれて加熱されてから浴槽10に戻される態様で行なわれる。給湯装置WHには、湯水用のリザーブタンク51、第2の循環ポンプP2、およびバーナ26bにより加熱される熱交換器25b、三方弁V3を備えた温水循環系5Aが設けられており、熱交換器25cへの熱供給は、この温水循環系5Aを作動さ
せることにより行なわれる。
【0025】
浴室床暖房運転は、第2の循環ポンプP2を駆動し、バーナ26bおよび熱交換器25bを利用して加熱された温水を、湯水循環系5Aに接続された内部配管部51a,51bおよび外部配管部51c,51dを介して床暖房用端末8に循環供給させることにより可能である。
【0026】
浴槽洗浄装置Aは、浴槽10に洗浄水を噴射する浴槽洗浄運転が可能な装置であり、その基本的なハード構成自体は、従来既知のものと同様である。具体的には、この浴槽洗浄装置Aは、浴槽10の底部に取付けられた洗浄ノズル60、およびこの洗浄ノズル60に終端が繋がった湯水流路6を備えている。湯水流路6の始端の入水口6aには、給湯装置WHに設けられた出湯口20bから湯水供給が可能である。また、浴槽洗浄装置Aは、湯水流路6に設けられた開閉バルブとしての注湯バルブVa、湯水流路6の途中に設けられたベンチュリ部61、洗剤タンク62からベンチュリ部61に洗剤を供給するための洗剤供給路63、この洗剤供給路63に設けられた開閉バルブとしての洗剤バルブVb、および洗剤バルブVbや注湯バルブVaの開閉制御を実行する制御部3を備えている。
【0027】
ベンチュリ部61は、湯水流路6の一部を構成する絞り部を備えており、この絞り部を湯水が高速で流れることによりその付近に負圧が発生する。この負圧に基づいて洗剤供給路63からベンチュリ部61内、ひいては湯水流路6内に洗剤が円滑に流入し、洗剤と湯水とが混合した洗剤液を生成可能である。前記洗剤液、および洗剤を含まないすすぎ用の湯水は、ともに本発明でいう洗浄水に相当する。
【0028】
浴槽洗浄運転の動作手順の例としては、洗剤を含まないすすぎ用の湯水を所定時間にわたって浴槽10に散布する予備すすぎ、浴槽10への所定時間にわたる洗剤液散布を、所定のインターバル時間で複数回にわたって繰り返す本洗浄、および所定時間にわたってすすぎ用の湯水を浴槽10に散布する本すすぎを、これらの順序で行なう動作手順が挙げられる。それら一連の動作が完了した時点で、浴槽洗浄運転は終了する。浴槽10には、浴槽洗浄装置Aの制御部3によって浴槽10の排水口11aを開閉可能な排水栓11が設けられており、浴槽洗浄運転は排水栓11が開状態に設定された状態で行なわれる。
【0029】
給湯装置WHおよび浴槽洗浄装置Aの制御部7,3は、いずれもマイクロコンピュータなどを用いて構成されており、これらの相互間において有線または無線でのデータ通信が可能である。これらの制御部7,3は、互いに協働して浴室システムSYの全体の動作を制御可能であり、本発明でいう制御手段の具体例に相当する。これらの制御部7,3による制御の具体例としては、浴槽洗浄運転が開始される場合に、所定条件下において、浴槽洗浄運転に先立って浴室床暖房運転が行なわれる特定動作制御があるが、その詳細については後述する。
【0030】
給湯装置WHの制御部7には、浴室用および台所用のリモコン7A,7Bが通信接続されている。これらのリモコン7A,7Bには、複数の操作スイッチ72や、画像表示が可能な表示部73などが設けられている。
好ましくは、浴槽洗浄装置Aの制御部3には、操作部30が付属して設けられており、後述する3種類のモード(第1ないし第3のモード)のうちのいずれかを、操作部30の操作により、任意に選択設定可能とされている。ただし、このようなモードの選択設定は、たとえばリモコン7A,7Bなどの他の機器を利用して行なうことが可能な構成とすることもできる。
【0031】
次に、前記した浴室システムSYの作用について説明する。併せて、浴室システムSYにおける動作処理手順の一例について、図2に示すフローチャートを参照しつつ説明する
【0032】
まず、リモコン7A,7Bの操作部72、または浴槽洗浄装置Aの操作部30が用いられることにより、浴槽洗浄運転を開始する旨のスイッチ操作がなされると、浴室システムSYの設定モードとして、予めどのようなモードが設定されているのかが判断され(S1:YES,S2)、そのモードに応じて次の動作制御の内容が相違する。
【0033】
浴室システムSYの設定モードとしては、第1ないし第3のモードがあり、これらの個々の詳細については後述するが、浴槽洗浄運転を開始する際に、第1のモードが設定されている場合には、所定条件が満たされると特定動作制御が実行される(S2:YES,S3~S7)。
ここで、前記所定条件は、監視対象温度が所定温度以下であることである。監視対象温度は、たとえば外気温であり、これを検出するためのセンサ(不図示)が給湯装置WHに具備されている。外気温が低く、前記所定条件が満たされると、特定動作制御が実行される。
【0034】
前記特定動作制御は、具体的には、ステップS4~S7の一連の動作制御が相当する。すなわち、浴槽洗浄運転に先立ち、浴室床暖房運転が開始され、かつこの浴室床暖房運転が所定時間実行され、浴室1の温度が適度な温度まで上昇したと考えられるタイミングになると、浴槽洗浄運転が開始される。浴槽洗浄運転は、たとえば既述した動作手順で行なわれるが、この浴槽洗浄運転中は、浴室床暖房運転は継続される(S7:NO,S11)。
【0035】
このような一連の制御によれば、外気温が低く、浴室1の温度が低い場合には、特定動作制御が実行され、浴槽洗浄運転に先立ち、浴室床暖房運転が開始され、浴室1の温度が上昇した後に浴槽洗浄運転が開始される。したがって、温度上昇による浴槽洗浄効率の向上が期待できる。浴室1の温度を上昇させる手段としては、浴室床暖房の手段が採用されているため、浴室1の床から浴槽10のエプロン10bや、浴室1の側壁などを経由する浴槽10への熱伝達により、浴槽10を効果的に加温することが可能である。たとえば、温風送風による浴室暖房によれば、浴槽10の表面の水垢や皮脂などの汚れに温風が直接当たり、それらを乾燥、固化させることにより、それらの汚れを落とすことが困難となる虞があるが、本実施形態によれば、そのような虞をなくし、または少なくすることが可能である。さらに、温風送風による浴室暖房によれば、送風流に含まれている塵・埃が浴槽10の表面に付着したり、あるいは浴槽10とは異なる箇所に存在していた塵・埃が送風流に巻き上げられて浴槽10に付着する虞もあるが、そのようことも適切に防止可能である。いずれにしても、外気温が低く、浴室1の温度が低いと考えられる場合には、浴槽洗浄の効率を高め、浴槽10を衛生的な状態とすることが適切に達成される。
【0036】
前記した特定動作制御の終了時、またはそれ以降の時期において、浴槽10への湯張りを行なうためのスイッチ操作がなされた場合には、浴槽10への湯張り動作が実行される(S8:YES,S9)。浴室床暖房運転は、好ましくは、浴槽10への湯張り動作が終了した時点またはそれ以降に終了する(S9,S10)。浴室床暖房運転の終了時期は、たとえばユーザが入浴のために浴室1に進入した時期、あるいは浴室1の温度がユーザにとって快適な温度まで上昇したと考えられる時期などとすることが可能である。
【0037】
前記とは異なり、浴槽洗浄運転が開始される際に、監視対象温度(外気温)が比較的高く、所定温度以下でない場合には、前記した特定動作制御は実行されず、浴槽洗浄運転が通常どおりの手順で単独で行なわれる(S3:NO,S13)。外気温が比較的高く、浴室1の温度もそれに対応して高めである場合には、浴槽洗浄運転を単独で行なったとしても、浴槽洗浄の効率は比較的高い状態とすることが可能である。このような動作制御によ
れば、外気温が比較的高い場合であって、浴室床暖房運転を行なう必要がない、または少ないにも拘わらず、浴室床暖房運転が無駄に行なわれることは適切に回避される。
【0038】
浴槽洗浄運転が開始される際に、前記第1のモードではなく、第2のモードが選択設定されている場合には、次に述べるような動作制御が行なわれる。なお、第2のモードは、浴槽洗浄運転が開始される場合には、特定動作制御が無条件で実行されるモードである。
この第2のモードが設定されている場合には、監視対象温度が所定温度以下であるか否かには関係なく、特定動作制御が実行される(S2:NO,S12:YES,S4~S7)。特定動作制御は、前記したステップS4~S7の一連の動作制御である。
ユーザとしては、外気温が実際にはどのような状況にあるかには関係なく、浴槽洗浄運転を行なう際に、それに先立ち、浴室床暖房運転が開始されることを要望する場合があり得る。前記した制御は、そのような要望に的確に対応する。
【0039】
さらに、浴槽洗浄運転が開始される際に、浴室システムSYの設定モードが第3のモードに設定されている場合には(S2:NO,S12:NO)、次に述べるような動作制御が行なわれる。すなわち、この第3のモードにおいては、前記特定動作制御は実行されず、浴槽洗浄運転が単独で、かつ通常どおりの手順で実行される(S13)。
ユーザとしては、なんらかの事情により、前記特定動作制御を避けた上で、浴槽洗浄運転のみを行なわせたい場合があり得るが、前記制御はそのような要望に合致する。
【0040】
前記した浴室システムSYにおいては、前記した動作制御に代えて、図3に示すような動作制御を行なわせることも可能である。
【0041】
すなわち、図3に示す動作制御においては、ステップS3において、監視対象温度が所定温度以下であったとしても、それだけでは特定動作制御は実行されない。ステップS3’において、浴槽洗浄運転の終了時から所定時間内に、給湯装置WHによる浴槽10への湯張り動作が開始されることが予定されているか否かが判断され、そのような条件が満たされていれば、その後に特定動作制御が実行される(S3’:YES,S4~S7)。そうでない場合には、特定動作制御は実行されず、浴槽洗浄運転のみが単独で行なわれる(S3’:NO,S13)。
【0042】
このような動作制御によれば、監視対象温度が所定温度以下であったとしても、浴槽洗浄運転に引き続いて浴槽10への湯張り動作が開始されることが予定されていなければ、前記特定動作制御は実行されない。ユーザが入浴を行なうと考えられる場合に、前記特定動作制御が実行される。したがって、前記特定動作制御が実行される回数を比較的少なくし、ユーザが入浴を行なう際にのみ、浴室床暖房運転によって浴室が暖められている状態に設定したい場合には最適である。
【0043】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る浴室システムの各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0044】
前記した一連の動作制御においては、浴室システムSYの設定モードとして、第1ないし第3のモードを設け、かつこれらのうちのいずれかを任意に選択設定可能としているが、そのようなモード選択が不可能なシステム構成とすることも可能である。
【0045】
本発明でいう監視対象温度は、外気温に限定されず、それ以外のたとえば給湯装置への入水温度などであってもよい。また、たとえば浴室リモコンに温度センサを組み込むことにより、浴室の温度を検出可能とし、この温度を監視対象温度とすることもできる。
【0046】
本発明における特定動作制御においては、浴室床暖房運転が開始され、浴室の温度が上
昇した後に浴槽洗浄運転が開始されるが、「浴室の温度が上昇」とは、具体的にどの程度だけ温度が上昇したのかは問わず、浴室の温度が上昇することが見込まれる状態であればよい。たとえば、浴室の温度を実際に検出し、その温度が所定温度に達した時点で浴槽洗浄運転が開始されるように構成することも可能である。
【0047】
浴槽洗浄運転、および浴室床暖房運転のそれぞれの具体的な内容は、上述した実施形態に限定されない。浴槽洗浄運転は洗浄水を浴槽に噴射して浴槽を洗浄する内容であればよく、洗浄水の種類なども限定されない。浴室床暖房運転は、浴室の床または床下に敷設された温水流通部材に、給湯装置から温水を循環供給させる方式に限定されない。浴室の床または床下に、たとえば電熱ヒータを設置し、この電熱ヒータからの放熱による浴室床暖房運転とすることもできる。
【0048】
本発明でいう所定時間や所定温度は、一定の値に固定されていなくてもよく、たとえばユーザがスイッチ操作するなどして、適宜に増減変更できるように構成することも可能である。
給湯装置としては、ガス給湯装置などの瞬間式給湯装置に代えて、たとえば貯湯式給湯装置を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
SY 浴室システム
A 浴槽洗浄装置
B 床暖房装置
WH 給湯装置
1 浴室
10 浴槽
11 排水栓
80 温水流通部材
図1
図2
図3