(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090737
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】レバー式コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/629 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
H01R13/629
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206811
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間宮 裕馬
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB07
5E021FC08
5E021FC31
5E021HB02
5E021HB04
5E021HB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】レバーが長くなった場合に、レバーの回動範囲をフェールセーフ(2重)で規制しつつ、レバーの回動軸にかかる負荷を軽減できるレバー式コネクタを提供する。
【解決手段】雄コネクタ2と嵌合するコネクタ本体11と、コネクタ本体11に回動可能に組み付けられており、倍力機構によってコネクタ本体11と雄コネクタ2との嵌合を補助するレバー12と、レバー12の回動範囲を嵌合初期位置から嵌合完了位置までの範囲に規制する第1の範囲規制部(回動軸の凸部及び軸受け穴の凹部の外側部分)と、レバー12の回動範囲を嵌合初期位置(
図1に示す位置)から嵌合完了位置までの範囲に規制する第2の範囲規制部(第3のストッパー及びストッパーレール28)であって、第1の範囲規制部よりレバー12の回動軸から離れた位置に配されている第2の範囲規制部と、を備え、第1の範囲規制部より先に第2の範囲規制部によってレバー12の回動が規制される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバー式コネクタであって、
相手側コネクタと嵌合するコネクタ本体と、
前記コネクタ本体に回動可能に組み付けられており、倍力機構によって前記コネクタ本体と前記相手側コネクタとの嵌合を補助するレバーと、
前記レバーの回動範囲を嵌合初期位置から嵌合完了位置までの範囲に規制する第1の範囲規制部と、
前記レバーの回動範囲を前記嵌合初期位置から前記嵌合完了位置までの範囲に規制する第2の範囲規制部であって、前記第1の範囲規制部より前記レバーの回動軸から離れた位置に配されている第2の範囲規制部と、
を備え、
前記第1の範囲規制部より先に前記第2の範囲規制部によって前記レバーの回動が規制される、レバー式コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のレバー式コネクタであって、
前記コネクタ本体は、
ハウジングと、
前記ハウジングに収容されている端子保持部と、
同軸線又はシールド線と、
前記同軸線又は前記シールド線の先端部に固定されており、前記端子保持部に保持されている金属端子と、
を有し、
前記同軸線又は前記シールド線が前記ハウジングの内部で曲げられて前記ハウジングから引き出されている、レバー式コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のレバー式コネクタであって、
前記第1の範囲規制部は、
前記レバーの回動軸の外周面、及び、前記回動軸が軸受けされている軸受け穴の内周面のいずれか一方に設けられて前記回動軸の周方向に延びている凹部と、
いずれか他方に設けられて前記凹部に収容されている凸部であって、前記周方向の幅が前記凹部の前記周方向の幅より狭い凸部と、
を有する、レバー式コネクタ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のレバー式コネクタであって、
前記第1の範囲規制部は、
前記コネクタ本体に設けられており、前記レバーが回動範囲の一方の側の端まで回動すると前記レバーに当接してそれ以上の当該一方の側への回動を規制する第1のストッパーと、
前記コネクタ本体に設けられており、前記レバーが回動範囲の他方の側の端まで回動すると前記レバーに当接してそれ以上の当該他方の側への回動を規制する第2のストッパーと、
を有する、レバー式コネクタ。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のレバー式コネクタであって、
前記第2の範囲規制部は、
前記コネクタ本体の側壁に形成されている貫通穴又は溝であって、前記レバーの回動軸方向から見て前記回動軸を中心とする円弧状に形成されている貫通穴又は溝と、
前記レバーから前記側壁に向かって突出しており、前記貫通穴又は前記溝に挿入されている第3のストッパーと、
を有する、レバー式コネクタ。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のレバー式コネクタであって、
前記第2の範囲規制部は、前記レバーの長手方向の中心に配されている、又は、前記中心よりも前記回動軸から離れた位置に配されている、レバー式コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レバー式コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、倍力機構によってコネクタ本体と相手側コネクタとの嵌合を補助するレバーを備えるレバー式コネクタが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1に記載のレバー式コネクタは、アウタハウジングに形成されている回動軸を中心に回動可能なレバーを備えている。レバーはアウタハウジングに形成されている2つの傾斜部によって回動範囲が規制されている。
【0004】
特許文献2に記載のコネクタは、ハウジングの外殻部の外側に設けられた旋回軸部を中心に旋回可能なレバーを備えている。レバーは、外殻部に形成された円弧状の窓を通過してスライダに形成されたカム溝に挿入されるカム軸部を備えている。当該コネクタはカム軸部の旋回範囲を円弧状の窓によって規制することによってレバーの旋回範囲が規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-148194号公報
【特許文献2】特開2016-12439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レバー式コネクタは、設計上の理由でレバーを長くしなければならないこともある。特許文献1に記載のレバー式コネクタは、レバーが長くなった場合に、傾斜部が支点となって回動軸に大きな力が作用することが懸念される。特許文献2に記載のコネクタは、レバーが長くなった場合に、支点となるカム軸部に大きな力が作用し、カム軸部が破損することが懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のレバー式コネクタは、相手側コネクタと嵌合するコネクタ本体と、前記コネクタ本体に回動可能に組み付けられており、倍力機構によって前記コネクタ本体と前記相手側コネクタとの嵌合を補助するレバーと、前記レバーの回動範囲を嵌合初期位置から嵌合完了位置までの範囲に規制する第1の範囲規制部と、前記レバーの回動範囲を前記嵌合初期位置から前記嵌合完了位置までの範囲に規制する第2の範囲規制部であって、前記第1の範囲規制部より前記レバーの回動軸から離れた位置に配されている第2の範囲規制部と、を備え、前記第1の範囲規制部より先に前記第2の範囲規制部によって前記レバーの回動が規制される、レバー式コネクタ。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、レバーが長くなった場合に、第2の範囲規制部と第1の範囲規制部とによってレバーの回動範囲をフェールセーフ(2重)で規制しつつ、レバーの回動軸にかかる負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るレバー式コネクタ及び相手側コネクタの斜視図である。
【
図3】
図3は、レバー式コネクタの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、ハウジングの回動軸を拡大して示す斜視図である。
【
図7】
図7は、レバー式コネクタの横断面図(通信用電線がハウジングの内部で曲げられてハウジングから引き出されている様子を示す断面図)である。
【
図8】
図8は、倍力機構によってコネクタ本体と相手側コネクタとの嵌合を補助するレバー及び相手側コネクタの側面図である。
【
図11】
図11は、レバーの軸受け穴を拡大して示す斜視図である。
【
図12】
図12は、ハウジングの回動軸及びレバーの軸受け穴を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。
【0011】
(1)本開示のレバー式コネクタは、相手側コネクタと嵌合するコネクタ本体と、前記コネクタ本体に回動可能に組み付けられており、倍力機構によって前記コネクタ本体と前記相手側コネクタとの嵌合を補助するレバーと、前記レバーの回動範囲を嵌合初期位置から嵌合完了位置までの範囲に規制する第1の範囲規制部と、前記レバーの回動範囲を前記嵌合初期位置から前記嵌合完了位置までの範囲に規制する第2の範囲規制部であって、前記第1の範囲規制部より前記レバーの回動軸から離れた位置に配されている第2の範囲規制部と、を備え、前記第1の範囲規制部より先に前記第2の範囲規制部によって前記レバーの回動が規制される。
【0012】
上記(1)に記載のレバー式コネクタによると、第1の範囲規制部と、第1の範囲規制部より先にレバーの回動を規制する第2の範囲規制部とを備えているので、先にレバーの回動を規制する第2の範囲規制部と第1の範囲規制部とによってレバーの回動をフェールセーフ(2重)で規制できる。
ここで、第1の範囲規制部と第2の範囲規制部とがある場合、回動軸に近い第1の範囲規制部が先にレバーの回動を規制したとすると、レバーが回動範囲の一方の側の端にあるとき、レバーを更に当該一方の側に回動させようとする力が作用すると、支点となる第1の範囲規制部から回動軸までの距離が近いことから、梃子の原理(倍力機構)によって回動軸に大きな負荷がかかる。これに対し、回動軸から離れた位置に配されている第2の範囲規制部によって先に回動が規制されると、支点となる第2の範囲規制部から回動軸までの距離が遠いことから、回動軸にかかる負荷を軽減できる。
よって上記(1)に記載のレバー式コネクタによると、レバーが長くなった場合に、第2の範囲規制部と第1の範囲規制部とによってレバーの回動範囲をフェールセーフ(2重)で規制しつつ、レバーの回動軸にかかる負荷を軽減できる。
【0013】
(2)上記(1)に記載のレバー式コネクタであって、前記コネクタ本体は、ハウジングと、前記ハウジングに収容されている端子保持部と、同軸線又はシールド線と、前記同軸線又は前記シールド線の先端部に固定されており、前記端子保持部に保持されている金属端子と、を有し、前記同軸線又は前記シールド線が前記ハウジングの内部で曲げられて前記ハウジングから引き出されていてもよい。
【0014】
例えば通信用電線は電気的なノイズの影響を低減するために複数の電線を同軸線、シールド線などで束ねたサイズになっており、電力を供給する電力用電線1本に比べて径が大きいことが多い。このため通信用電線がハウジングの内部で曲げられてハウジングから引き出される場合、通信用電線の径が大きいと通信用電線が曲がり難くなるため、ハウジングを大きくして曲がりを緩やかにしなければならない。
しかしながら、ハウジングが大きくなるとそれに伴ってレバーも長くなる。レバーが長くなると、レバーが回動範囲の一方の側の端に位置しているとき、レバーを更に当該一方の側に回動させようとする力が作用すると、倍力機構(梃子の原理)によってレバーの回動軸にかかる負荷が大きくなる。
上記(2)に記載のレバー式コネクタによると、第1の範囲規制部に比べて回動軸から離れた位置に第2の範囲規制部が配されているので、支点となる第2の範囲規制部から回動軸までの距離を長くできる。これにより、レバーが長くなっても回動軸にかかる負荷を軽減できる。
【0015】
(3)上記(1)又は(2)に記載のレバー式コネクタであって、前記第1の範囲規制部は、前記レバーの回動軸の外周面、及び、前記回動軸が軸受けされている軸受け穴の内周面のいずれか一方に設けられて前記回動軸の周方向に延びている凹部と、いずれか他方に設けられて前記凹部に収容されている凸部であって、前記周方向の幅が前記凹部の前記周方向の幅より狭い凸部と、を有してもよい。
【0016】
上記(3)に記載のレバー式コネクタによると、第1の範囲規制部の凸部と凹部とによってレバーの回動が規制されるより先に、回動軸から遠い位置にある第2の範囲規制部によってレバーの回動が規制されるので、回動軸にかかる負荷を軽減できる。
【0017】
(4)上記(1)又は(2)に記載のレバー式コネクタであって、前記第1の範囲規制部は、前記コネクタ本体に設けられており、前記レバーが回動範囲の一方の側の端まで回動すると前記レバーに当接してそれ以上の当該一方の側への回動を規制する第1のストッパーと、前記コネクタ本体に設けられており、前記レバーが回動範囲の他方の側の端まで回動すると前記レバーに当接してそれ以上の当該他方の側への回動を規制する第2のストッパーと、を有してもよい。
【0018】
上記(4)に記載のレバー式コネクタによると、第1の範囲規制部の第1のストッパーや第2のストッパーによってレバーの回動が規制されるより先に、回動軸から遠い位置にある第2の範囲規制部によってレバーの回動が規制されるので、回動軸にかかる負荷を軽減できる。
【0019】
(5)上記(1)又は(2)に記載のレバー式コネクタであって、前記第2の範囲規制部は、前記コネクタ本体の側壁に形成されている貫通穴又は溝であって、前記レバーの回動軸方向から見て前記回動軸を中心とする円弧状に形成されている貫通穴又は溝と、前記レバーから前記側壁に向かって突出しており、前記貫通穴又は前記溝に挿入されている第3のストッパーと、を有してもよい。
【0020】
上記(5)に記載のレバー式コネクタによると、第3のストッパーが貫通穴又は溝に挿入されることによってレバーの回動範囲を規制できる。
【0021】
(6)上記(1)又は(2)に記載のレバー式コネクタであって、前記第2の範囲規制部は、前記レバーの長手方向の中心に配されていてもよい、又は、前記中心よりも前記回動軸から離れた位置に配されていてもよい。
【0022】
上記(6)に記載のレバー式コネクタによると、第2の範囲規制部を、レバーの長手方向の中心、又は、当該中心よりも回動軸から離れた位置に配することにより、第2の範囲規制部がレバーの長手方向の中心より回動軸側に配されている場合に比べ、回動軸に係る負荷を軽減できる。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態について説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0024】
<実施形態1>
実施形態1を、
図1から
図12を参照しつつ説明する。便宜上、以降の説明において左右方向、前後方向及び上下方向とは、
図1に示す左右方向、前後方向及び上下方向を基準とする。以降の説明では、雌端子および電線の図示は省略する場合がある。以降の説明では同一の構成要素には一部を除いて図面の符号を省略している場合がある。
【0025】
(1)レバー式コネクタ
図1に示すように、実施形態1に係るレバー式コネクタ1は、雄コネクタ2(相手側コネクタの一例)に嵌合される雌コネクタである。レバー式コネクタ1は、雄コネクタ2と嵌合するコネクタ本体11と、合成樹脂製のレバー12とを備えている。レバー12は、
図1に示す嵌合初期位置から、
図2に示す嵌合完了位置まで回動可能にコネクタ本体11に組み付けられている。
【0026】
(1-1)コネクタ本体
図3に示すように、コネクタ本体11は、合成樹脂製のハウジング13、ハウジング13に収容されている端子保持部14、通信用電線15及び複数の金属端子16を備えている。
【0027】
(1-1-1)ハウジング
ハウジング13は後側が開放されている概略箱状であり、前壁20、右壁21(側壁の一例)、左壁22(
図4参照、側壁の一例)、上壁23及び底壁24(
図4参照)を有している。
【0028】
図4に示すように、底壁24には雄コネクタ2が備える雄端子が挿入される複数の端子挿入穴が形成されている。
図5に示すように、上壁23は略水平な水平部23Aと、水平部23Aの前端から前側に向かって下に傾斜する傾斜部23Bとを有している。
【0029】
水平部23Aの上面には嵌合完了位置(
図2に示す位置)まで回動したレバー12に係合してレバー12が嵌合初期位置(
図1に示す位置)側に回動することを規制する係合部26が一体に形成されている。係合部26は水平部23Aから上に張り出している台座部26Aと、台座部26Aの上面に配されている係合突起26Bとを有している。台座部26Aの上面は後側から前側に向かって下に傾斜する斜面となっている。係合突起26Bは前側且つ上側の角部が面取りされて斜面が形成されている。
【0030】
右壁21の構成と左壁22の構成とは左右対称な点を除いて実質的に同じであるので、ここでは右壁21を例に説明する。
図5に示すように、右壁21の外面(右側を向く面)には、後述するレバー12の軸受け穴39(
図9参照)に嵌る回動軸27が一体に形成されている。
図6に示すように、回動軸27の外周面の上下両側には凸部27Aが一体に形成されている。詳しくは後述するが、凸部27Aはレバー12の軸受け穴39が回動軸27から抜けることを防止するためのものであるとともに、レバー12の回動範囲を規制するためのものである。
【0031】
図5に示すように、右壁21には回動軸27を中心として円弧状に延びる貫通穴28が形成されている。貫通穴28は右壁21を左右方向に貫通している。以降の説明では貫通穴28のことをストッパーレール28という。詳しくは後述するが、レバー12の右側の脚部36(
図9参照)には左側に向かって突出する第3のストッパー38(
図9参照)が一体に形成されている。第3のストッパー38がストッパーレール28に挿入されることによってレバー12の回動範囲が規制される。
【0032】
図5に示すように、ストッパーレール28の周方向の概ね中央には上下方向に長い長方形状の貫通穴29が形成されている。詳しくは後述するが、貫通穴29はハウジング13にレバー12を組み付ける際に第3のストッパー38を通すための穴である。
【0033】
右壁21において回動軸27の前側には、回動初期位置にあるレバー12がそれ以上前側(回動範囲の一方の側の一例)に回動することを規制する第1のストッパー30Aが一体に形成されている。第1のストッパー30Aは右壁21から右側に張り出して上下方向に延びている。第1のストッパー30Aは上側且つ後側の角部が面取りされて斜面が形成されている。
【0034】
図1に示すように、右壁21は前側且つ下側の領域がそれ以外の領域よりも内側に凹んで凹部21Aが形成されており、凹部21Aとそれ以外の領域21Bとの間に段差面21Cが形成されている。段差面21Cの後端部は、右側から見て後から前に向かって下に傾斜する斜面30Bを有している。斜面30Bは、嵌合完了位置にあるレバー12がそれ以上後側(回動範囲の他方の側の一例)に回動することを規制するためのものである(
図2参照)。以降の説明では斜面30Bのことを第2のストッパー30Bという。
【0035】
図5に示すように、右壁21には、第1のストッパー30Aより前側の位置に、レバー12を嵌合初期位置に係止するための係止片31が一体に形成されている。
図10に示すように、係止片31は、ハウジング13の右壁21から右斜め上に向かって延びている弾性変形部31Aと、弾性変形部31Aの右側を向く面の上端部から右側に向かって張り出している係合突起31Bとを有している。係合突起31Bは上側且つ右側の角部が面取りされて斜面が形成されている。
図1に示すように、レバー12が嵌合初期位置にあるとき、レバー12に形成されている貫通穴41(
図9参照)に係合突起31Bが嵌ることによってレバー12が嵌合初期位置に係止されている。
【0036】
(1-1-2)端子保持部、通信用電線及び金属端子
図3に示すように、端子保持部14は、第1の端子保持部14A、第2の端子保持部14B、及び、それらの端子保持部14A,14Bの長手方向の一方側(
図3では後側)に組み付けられてそれらの端子保持部14A,14Bを一体に保持する保持部材14Cを有している。
【0037】
第1の端子保持部14Aは上面視で前後方向に長い長方形状であり、上下方向に貫通する複数のキャビティを有している。それらのキャビティのうち3つのキャビティには高速通信用電線15A(通信用電線の一例)の先端部に圧着(固定の一例)されている金属端子16(
図10参照)が保持されている。金属端子16は雄コネクタ2に設けられている金属製の雄端子が挿入される雌端子である。第1の端子保持部14Aには高速通信用電線15Aが接続されていない金属端子16も保持されている。
【0038】
第2の端子保持部14Bも第1の端子保持部14Aと同様の構成である。第2の端子保持部14Bには5つの高速通信用電線15B(通信用電線の一例)が保持されている。第2の端子保持部14Bには高速通信用電線15Bが接続されていない金属端子16も保持されている。
【0039】
高速通信用電線15A及び高速通信用電線15Bは高速で通信するための電線である。高速通信用電線15A及び高速通信用電線15Bは送受信される信号が電気的なノイズの影響を受けることを抑制するために複数の電線を同軸線、シールド線などで束ねたものである。高速通信用電線15Aは高速通信用電線15Bより径が大きい。
【0040】
図7に示すように、高速通信用電線15Aは、端子保持部14から上に延びた後、ハウジング13の内部で後側に曲げられてハウジング13の後側から引き出されている。前述したように高速通信用電線15Aはある程度の太さを有しているため、急角度で曲げることができない。このため、高速通信用電線15Aは後側に緩やかに湾曲しており、湾曲している部分の曲率半径がある程度大きくなっている(言い換えると曲率が小さくなっている)。このため、レバー式コネクタ1はハウジング13が大きくなっており、それに伴ってレバー12も長くなっている。
【0041】
(1-2)レバー
図8に示すように、レバー12は梃子の原理(倍力機構の一例)によってレバー式コネクタ1と雄コネクタ2との嵌合および離脱を補助するための部材である。
図3に示すように、レバー12は、レバー本体35と、レバー本体35に組み付けられている嵌合検知部材50とで構成されている。
【0042】
(1-2-1)レバー本体
図9に示すように、レバー本体35は、2つの脚部36と、2つの脚部36の一端側同士を連結する連結部37とを有している。
脚部36は概略板状であり、互いに板面が対向する姿勢で連結部37から延びている。脚部36には、脚部36の内面に一体形成されている第3のストッパー38、コネクタ本体11に形成されている回動軸27(
図6)を受け入れる円形の軸受け穴39、及び、脚部36の先端部に形成されているギヤ部40を有している。
【0043】
第3のストッパー38は前述したストッパーレール28に挿入されてレバー12の回動範囲を規制するためのものである。第3のストッパー38とストッパーレール28とは第2の範囲規制部の一例である。第2の範囲規制部(第3のストッパー38及びストッパーレール28)は、レバー12の長手方向の概ね中心に配されている。
【0044】
図10に示すように、第3のストッパー38は脚部36の内面からハウジング13の内側に向かって延びている円柱部38Aと、円柱部38Aの先端部に全周に亘って形成されているフランジ部38Bとを有している。フランジ部38Bの外径はストッパーレール28の短手方向の幅より広い。このため、第3のストッパー38はフランジ部38Bによってストッパーレール28から抜け止めされている。フランジ部38Bの外径は貫通穴29(
図5参照)の短手方向の幅より狭い。このため、フランジ部38Bは貫通穴29を通されて右壁21の左側に位置している。
【0045】
図11に示すように、軸受け穴39は脚部36を板厚方向(左右方向)に貫通している。軸受け穴39の内周面には脚部36の延伸方向の両側に凹部39Aが形成されている。凹部39Aは、レバー12をコネクタ本体11に組み付ける際に、前述した回動軸27に形成されている2つの凸部27Aを通過させるためのものである。軸受け穴39の具体的な構成については後述する。
【0046】
図9に示すように、ギヤ部40は、軸受け穴39を中心として放射状に延びた形態の第1ギヤ部40Aと第2ギヤ部40Bとで構成されている。第1ギヤ部40Aと第2ギヤ部40Bとは間隔を空けて配置されている。ギヤ部40は、雄コネクタ2の側壁の内面に形成されているギヤ受け部62に噛み合うものである。
【0047】
レバー12は長さ方向の概ね中央が下側に略三角形状に張り出しており、その三角形状に張り出している部分を含む範囲に四角形状の貫通穴41が形成されている。
図1に示すように、レバー12が嵌合初期位置にあるとき、ハウジング13に形成されている係止片31の係合突起31Bがレバー12の貫通穴41に嵌ることによってレバー12が嵌合初期位置に係止される。
【0048】
図11を参照して、レバー12に形成されている軸受け穴39の形状についてより具体的に説明する。前述したように、軸受け穴39の内周面には2つの凹部39Aが形成されている。凹部39Aは軸受け穴39の中心軸方向(左右方向)の概ね中央を境に内側と外側と(言い換えると右側と左側と)で軸受け穴39の周方向(言い換えると回動軸27の周方向)の幅が異なっており、外側部分の幅の方が内側部分の幅より広くなっている。
【0049】
図12に示すように、回動軸27の先端部に設けられている凸部27Aの形状は、軸受け穴39の凹部39Aの内側部分の形状と略一致している。レバー12は軸受け穴39の凹部39Aが回動軸27の凸部27Aを通過して回動軸27に軸支される。凹部39Aの内側部分を通過した凸部27Aは、凹部39Aの外側部分に収容された状態となる。凸部27Aは回動軸27の周方向の幅が凹部39Aの外側部分の周方向の幅より狭い。このため、レバー12は凸部27Aが凹部39Aの外側部分の周方向の端面に当接する範囲内で回動可能である。
回動軸27に形成されている凸部27Aと、レバー12の軸受け穴39に形成されている凹部39Aの外側部分とは、レバー12の回動範囲を嵌合初期位置から嵌合完了位置までの範囲に規制する第1の範囲規制部を構成している。
【0050】
図1を参照して、第1の範囲規制部(回動軸27の凸部27A及び軸受け穴39の凹部39Aの外側部分)と第2の範囲規制部(第3のストッパー38及びストッパーレール28)との関係について説明する。第2の範囲規制部は、第1の範囲規制部よりレバー12の回動軸27から離れた位置に配されている。
【0051】
レバー12が嵌合初期位置にあるとき、レバー12の第3のストッパー38がストッパーレール28の前側の端面に当接しており、ストッパーレール28によってこれ以上の前回り(嵌合方向側とは逆側)の回動が規制されている。このとき、回動軸27の凸部27Aは、レバー12の軸受け穴39に形成されている凹部39Aの外側部分の周方向の端面に当接していない。また、このときレバー12は第1のストッパー30Aにも当接していない。従って、レバー12は第1の範囲規制部や第1のストッパー30Aより先に第2の範囲規制部によってレバー12の回動が規制される。
【0052】
図2に示すように、レバー12が嵌合完了位置にあるとき、レバー12の第3のストッパー38がストッパーレール28の後側の端面に当接しており、ストッパーレール28によってこれ以上の後回り(嵌合方向側)の回動が規制されている。このとき、回動軸27の凸部27Aは、レバー12の軸受け穴39に形成されている凹部39Aの外側部分の周方向の端面に当接していない。また、このときレバー12は第2のストッパー30Bにも当接していない。従って、レバー12は第1の範囲規制部や第2のストッパー30Bより先に第2の範囲規制部によってレバー12の回動が規制される。
【0053】
なお、レバー12が嵌合完了位置にあるときは、第3のストッパー38がストッパーレール28の右側の端面に当接するより先に、レバー12が第1の範囲規制部や第2のストッパー30Bによって右回りの回動が規制されてもよい。すなわち、第2の範囲規制部は、レバー12の回動範囲のいずれか一方の側においてのみ第1の範囲規制部や第1のストッパー30A(あるいは第2のストッパー30B)より先にレバー12の回動を規制し、他方の側では第2の範囲規制部より先に第1の範囲規制部や第1のストッパー30A(あるいは第2のストッパー30B)によってレバー12の回動が規制されてもよい。
【0054】
(1-2-2)嵌合検知部材
図2に示すように、嵌合検知部材50はレバー12に対して待機位置(図示せず)から検知位置(
図2に示す位置)まで移動可能にレバー12に組み付けられている。嵌合検知部材50は作業者がレバー式コネクタ1と雄コネクタ2との嵌合完了を確認するためのものであり、レバー12が嵌合完了位置まで回動した後に作業者によって待機位置から検知位置まで押し込まれる。
【0055】
(2)雄コネクタ
図1に示すように、雄コネクタ2(相手側コネクタの一例)は、底板部60と、底板部60から延びる筒状のフード部61とを有する。雄コネクタ2にはレバー式コネクタ1の金属端子16(雌端子)に接続される雄端子が保持されている。フード部61の内面には、レバー12の脚部36に備えられているギヤ部40に対応するギヤ受け部62が設けられている。
【0056】
(3)レバー式コネクタと雄コネクタとの嵌合
図1に示すように、レバー式コネクタ1は、レバー12が嵌合初期位置にある状態で雄コネクタ2に浅く嵌合される。
図8に示すように、その状態でレバー12が嵌合初期位置から嵌合完了位置に向けて回動されると、その回動途中において、レバー12の回動に伴って、レバー12の回動操作によるギヤ部40とギヤ受け部62とのカム作用により、レバー式コネクタ1が雄コネクタ2に相対的に引き寄せられ、レバー式コネクタ1と雄コネクタ2とが嵌合する。
【0057】
作業者は、レバー12が嵌合完了位置まで回動すると、嵌合検知部材50を検知位置に向けて押し込む。これにより嵌合検知部材50が検知位置に移動し、嵌合が検知される。
【0058】
(4)実施形態の効果
実施形態1に係るレバー式コネクタ1によると、第1の範囲規制部(回動軸27の凸部27A及び軸受け穴39の凹部39A)と、第1の範囲規制部より先にレバー12の回動を規制する第2の範囲規制部(第3のストッパー38及びストッパーレール28)とを備えているので、先にレバー12の回動を規制する第2の範囲規制部と第1の範囲規制部とによってレバー12の回動をフェールセーフ(2重)で規制できる。
ここで、第1の範囲規制部と第2の範囲規制部とがある場合、回動軸27に近い第1の範囲規制部が先にレバー12の回動を規制したとすると、レバー12が回動範囲の一方の側の端にあるとき、レバー12を更に当該一方の側に回動させようとする力が作用すると、支点となる第1の範囲規制部から回動軸27までの距離が近いことから、倍力機構によって回動軸27に大きな負荷がかかる。これに対し、回動軸27から離れた位置に配されている第2の範囲規制部によって先に回動が規制されると、支点となる第2の範囲規制部から回動軸27までの距離が遠いことから、回動軸27にかかる負荷を軽減できる。
よってレバー式コネクタ1によると、レバー12が長くなった場合に、第2の範囲規制部と第1の範囲規制部とによってレバー12の回動範囲をフェールセーフ(2重)で規制しつつ、レバー12の回動軸27にかかる負荷を軽減できる。
【0059】
レバー式コネクタ1によると、第1の範囲規制部に比べて回動軸27から離れた位置に第2の範囲規制部が配されているので、支点となる第2の範囲規制部から回動軸27までの距離を長くできる。これにより、レバー12が長くなっても回動軸27にかかる負荷を軽減できる。
【0060】
レバー式コネクタ1によると、第1の範囲規制部によってレバー12の回動が規制されるより先に、回動軸27から遠い位置にある第2の範囲規制部によってレバー12の回動が規制されるので、回動軸27にかかる負荷を軽減できる。
【0061】
レバー式コネクタ1によると、第3のストッパー38がハウジング13のストッパーレール28に挿入されることによってレバー12の回動範囲を規制できる。
【0062】
レバー式コネクタ1によると、第2の範囲規制部を、レバー12の長手方向の概ね中心に配することにより、第2の範囲規制部がレバー12の長手方向の概ね中心より回動軸27側に配されている場合に比べ、回動軸27に係る負荷を軽減できる。
【0063】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、第1の範囲規制部として、ハウジング13の回動軸27に設けられている凸部27Aと、レバー12の軸受け穴39に設けられている凹部39Aの外側部分とを例示した。これに対し、凸部27Aと凹部39Aとの配置は逆であってもよい。具体的には、回動軸27に凹部39Aを設け、軸受け穴39に凸部27Aを設けてもよい。
ハウジング13に軸受け穴39が設けられており、レバー12に回動軸27が設けられている構成であってもよい。
【0064】
(2)上記実施形態ではコネクタ本体11が同軸線又はシールド線を備えている場合を例示したが、コネクタ本体11は同軸線又はシールド線を備えていなくてもよい。
また、上記実施形態では同軸線又はシールド線がハウジング13の内部で曲げられている場合を例示したが、同軸線又はシールド線はハウジング13の内部で曲げられていなくてもよい。
【0065】
(3)上記実施形態では第1の範囲規制部(回動軸27の凸部27A及び軸受け穴39の凹部39Aの外側部分)とは別に、第1のストッパー30Aと第2のストッパー30Bとが設けられている場合を例示した。これに対し、第1のストッパー30A及び第2のストッパー30Bは設けられていなくてもよい。
逆に、ハウジング13の回動軸27に設けられている凸部27Aと、レバー12の軸受け穴39に設けられている凹部39Aとが設けられていなくてもよい。その場合は第1のストッパー30Aと第2のストッパー30Bとが第1の範囲規制部の一例である。この場合、第1の範囲規制部の第1のストッパー30Aや第2のストッパー30Bによってレバー12の回動が規制されるより先に、回動軸27から遠い位置にある第2の範囲規制部によってレバー12の回動が規制されるので、回動軸27にかかる負荷を軽減できる。
【0066】
(4)上記実施形態ではコネクタ本体11の右壁21(側壁の一例)及び左壁22(側壁の一例)に、第3のストッパー38が挿入される貫通穴28(ストッパーレール28)が形成されている場合を例示したが、貫通穴28に替えて、第3のストッパー38をガイドする円弧状の溝が形成されていてもよい。
【0067】
(5)上記実施形態では第2の範囲規制部(第3のストッパー38及びストッパーレール28)が、レバー12の長手方向の概ね中心に配されている場合を例示したが、第2の範囲規制部はレバー12の長手方向の概ね中心よりも回動軸27から離れた位置に配されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1: レバー式コネクタ
2: 雄コネクタ
11: コネクタ本体
12: レバー
13: ハウジング
14: 端子保持部
14A: 第1の端子保持部
14B: 第2の端子保持部
14C: 保持部材
15: 通信用電線
15A: 高速通信用電線
15B: 高速通信用電線
16: 金属端子
20: 前壁
21: 右壁
21A: 凹部
21B: 領域
21C: 段差面
22: 左壁
23: 上壁
23A: 水平部
23B: 傾斜部
24: 底壁
26: 係合部
26A: 台座部
26B: 係合突起
27: 回動軸
27A: 凸部
28: 貫通穴(ストッパーレール)
29: 貫通穴
30A: 第1のストッパー
30B: 斜面(第2のストッパー)
31: 係止片
31A: 弾性変形部
31B: 係合突起
35: レバー本体
36: 脚部
37: 連結部
38: 第3のストッパー
38A: 円柱部
38B: フランジ部
39: 軸受け穴
39A: 凹部
40: ギヤ部
40A: 第1ギヤ部
40B: 第2ギヤ部
41: 貫通穴
50: 嵌合検知部材
60: 底板部
61: フード部
62: ギヤ受け部