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特開2024-90742樹脂被覆を有するFRP成形体の製造方法、及び樹脂被覆を有するFRP成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090742
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】樹脂被覆を有するFRP成形体の製造方法、及び樹脂被覆を有するFRP成形体
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/50 20060101AFI20240627BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20240627BHJP
   B32B 27/04 20060101ALI20240627BHJP
   B32B 27/08 20060101ALI20240627BHJP
   B29C 70/68 20060101ALI20240627BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20240627BHJP
   B29C 48/15 20190101ALI20240627BHJP
   B29C 48/34 20190101ALI20240627BHJP
   B29C 48/79 20190101ALI20240627BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20240627BHJP
   B29C 48/03 20190101ALI20240627BHJP
   B29K 101/10 20060101ALN20240627BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20240627BHJP
【FI】
B29C70/50
B32B5/28 Z
B32B27/04 Z
B32B27/08
B29C70/68
B29C70/16
B29C48/15
B29C48/34
B29C48/79
B29C48/88
B29C48/03
B29K101:10
B29K105:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206820
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230124763
【弁護士】
【氏名又は名称】戸川 委久子
(74)【代理人】
【識別番号】100224742
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】成沢 良輔
【テーマコード(参考)】
4F100
4F205
4F207
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DG01A
4F100DH02A
4F100EH17B
4F100GB07
4F100JB13A
4F100JB16B
4F205AA36
4F205AD05
4F205AD16
4F205HA05
4F205HA13
4F205HA33
4F205HA34
4F205HA37
4F205HB02
4F205HB13
4F205HF05
4F205HK04
4F205HK05
4F205HT26
4F205HT29
4F207AD05
4F207AD16
4F207AH05
4F207AH46
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB11
4F207KJ05
4F207KK55
4F207KL58
(57)【要約】
【課題】FRP成形体の加工時において、成形体表面や端面における強化繊維またはマトリックス樹脂の剥離を防止することができるとともに、金属材料が接触した場合であっても腐食を防止することができるうえ、複雑な形状に成形することができる、樹脂被覆を有するFRP成形体の製造方法を提供すること。
【解決手段】熱硬化性樹脂であるマトリックス樹脂11と前記マトリックス樹脂11を含浸させた強化繊維12・12…とを備えるFRP引抜材1を引抜成形機により成形する引抜成形工程と、前記引抜成形工程により得られたFRP引抜材1を押出成形機の金型M2にインサートすることで前記FRP引抜材1表面に熱可塑性樹脂2を被覆する押出成形工程とを備える構成とした。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂であるマトリックス樹脂と前記マトリックス樹脂を含浸させた強化繊維とを備えるFRP引抜材を引抜成形機により成形する引抜成形工程と、
前記引抜成形工程により得られたFRP引抜材を押出成形機の金型にインサートすることで前記FRP引抜材表面に熱可塑性樹脂を被覆する押出成形工程とを備えることを特徴とする、樹脂被覆を有するFRP成形体の製造方法。
【請求項2】
前記引抜成形工程の後、前記FRP引抜材の表面に熱硬化性の接着剤を塗布する前処理工程を更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂被覆を有するFRP成形体の製造方法。
【請求項3】
前記引抜成形工程を経たFRP引抜材を予備加熱して前記押出成形工程に導入することを特徴とする、請求項2に記載の樹脂被覆を有するFRP成形体の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂に軟質系樹脂を用いることを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の樹脂被覆を有するFRP成形体の製造方法。
【請求項5】
前記押出成形工程を経たFRP成形体に冷却流体を噴射することを特徴とする、請求項4に記載の樹脂被覆を有するFRP成形体の製造方法。
【請求項6】
熱硬化性樹脂であるマトリックス樹脂と前記マトリックス樹脂を含浸させた強化繊維とを備えるFRP引抜材と、
前記FRP引抜材表面に被覆された押出材である熱可塑性樹脂とを備えることを特徴とする、樹脂被覆を有するFRP成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化樹脂)の成形体において、外表面にさらに樹脂被覆を有するFRP成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂(以下、FRPという)には、一般的な樹脂と比較して同等の軽量性を備える一方、繊維方向に対しては金属材料に匹敵する引張り強さや曲げ強さを有するものがある。このような優れた特徴から、金属の代替素材として種々の製品に用いられている。特に近年、比較的大規模な機械や建造物においては、構造体に用いる素材の密度が建設コストや強度設計に大きく影響することから、軽量なFRPをこれらの構造体に採用する事例が見られる。
【0003】
FRPには、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させてシート状や板状に成形したものがある。このようなシート状や板状のFRPを加工する場合には、例えば次のような問題がある。
一例として、板状のFRPを切断したり穿孔したりすると、切削性の良いマトリックス樹脂は工具により容易に除去加工される一方で、強化繊維(特に炭素繊維など)は、マトリックス樹脂よりも強度が強いうえ、細長い繊維状で撓みやすいため、工具により切断されにくい。敢えて工具により切断すると、板状FRPの中で強化繊維が撓みながら切断されることにより強化繊維の端部が切断面から突出する。特に外表面に近い部分では、切断や穿孔時に工具が強化繊維を撓ませ、その力で表面の強化繊維とマトリックス樹脂とが剥離してしまうという問題が生じる。
【0004】
また、強化繊維に炭素繊維を用いる場合、例えば金属ボルトによる締結作業をする場合には、シート状や板状のFRPと金属ボルトとの接触箇所において、雨等により金属製のボルトと炭素繊維との間に水分が介在すると、炭素が還元される一方で、金属性のボルトは酸化(腐食)して水の中にイオンとなって溶け出す。これは、いわゆるガルバニック腐食と呼ばれ、これによりボルトが破断に至る場合があるという問題も生じ得る。
【0005】
そこで、従来においては、FRPに他の樹脂を被覆することで、切断や穿孔等の加工時に表面が剥離することを防止したり、金属部品の腐食を防止したりする技術が開発されている。
【0006】
例えば特許文献1では、補強用繊維素材(強化繊維)に熱硬化性樹脂(マトリックス樹脂)を含浸させて賦形・硬化させた後、溶融した熱可塑性樹脂で被覆して冷却固化させる、繊維強化熱硬化性樹脂製連続成形物の製造方法に関する技術が開示されている。
【0007】
特許文献1の技術によれば、「表面を熱可塑性樹脂で、内部の繊維強化熱硬化性樹脂を継目なく被覆し、外部と遮断するため、折り曲げ等の変化によって内部の補強用繊維素材が表面に浮き出してくることを防ぐことができ」るとされている。
【0008】
また、特許文献2では、繊維基材(強化繊維)に担持された熱硬化性合成樹脂補強層(FRP)が、熱可塑性合成樹脂成型品の厚み内にサンドウィッチ状に複合一体となって構成されている建材用補強合成樹脂成型品、及びその製造方法に関する技術が開示されている。
【0009】
特許文献2の技術では、従来の熱可塑性樹脂成型品においては、成型品の切断端面における補強芯が「容易に発誘して腐食し易い」という問題を有していたことに対して、「繊維基材によって担持された熱硬化性樹脂層がその全面を熱可塑性樹脂成型材によってサンドウィッチ状に複合一体とされた構成を有するために、…鉄板、金網を基材としたものに較べて軽量であり、…錆を発生しないと云う利便も付加される」とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭50-43177号
【特許文献2】特開昭58-209560号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の技術では、賦形装置により、繊維強化熱硬化性樹脂を所望の形状に賦形させるため、「断面形状を円形、平板型、波板型、アングル型の形状等種々の形状のものが得られる」とされている。
【0012】
しかし、特許文献1の製造方法は、賦形装置で直径5mmの円形にした後、複数のガイドロールにより段階的に成形して硬化させる方法となっている。
ガイドロールは回転体であるため、ロールの断面形状を転写させることで成形させる。ガイドロールが成形体に接触する部分は僅かであり、一度に賦形させることができる変形量も僅かであるため、何種類ものロールを用いることで段階的に最終形状に近づくように成形するのが一般的である。
そのため、成形するための設備が長大になるうえ、形状の制限も大きいという問題がある。
【0013】
上記の問題は特許文献2の技術であっても同様である。特許文献2の製造方法では、含浸樹脂液に繊維基材を含浸させた後、含浸基材繰出し工程により送出し、予備加熱した状態で金型によって予備成型する。そして、押出成形することによってさらに金型で成形するとともに、熱可塑性樹脂の成形と合わせてマトリックス樹脂の熱硬化性樹脂を完全硬化させる。
このように、特許文献2の技術は、繰出しによる予備成型と押出成形による成形とを合わせることで所定の形状に成形するものである。そのため、複雑な形状とするためには予備成型を複数回行う必要があるうえ、特許文献1同様に形状の制限も大きいという問題がある。
【0014】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、FRP成形体の加工時において、成形体表面や端面における強化繊維またはマトリックス樹脂の剥離を防止することができるとともに、金属材料が接触した場合であっても腐食を防止することができるうえ、複雑な形状に成形することができる、樹脂被覆を有するFRP成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を以下に説明する。
本発明の樹脂被覆を有するFRP成形体(以下、単にFRP成形体という)は、熱硬化性樹脂であるマトリックス樹脂と前記マトリックス樹脂を含浸させた強化繊維とを備えるFRP引抜材と、前記FRP引抜材表面に被覆された押出材である熱可塑性樹脂とを備えるものである。
【0016】
前記FRP成形体の製造方法は、FRP引抜材を引抜成形機により成形する引抜成形工程と、前記引抜成形工程により得られたFRP引抜材を押出成形機の金型にインサートすることで前記FRP引抜材表面に熱可塑性樹脂を被覆する押出成形工程とを備える。前記FRP引抜材は、熱硬化性樹脂であるマトリックス樹脂と前記マトリックス樹脂を含浸させた強化繊維とを備えるものである。
【0017】
本発明において、「熱可塑性樹脂を被覆する」とは、FRP引抜材の外周面全体を熱可塑性樹脂で覆う構成だけでなく、FRP引抜材の外表面の一部に熱可塑性樹脂を積層する場合も含む。
【0018】
引抜成形機とは、少なくとも金型と引抜装置とを備えた設備である。引抜成形工程では、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた状態で引抜装置を用いて金型内に引き込み、金型から引き出す際に金型に応じた形状に成形することができる。金型から引き抜いた後、または引き抜くとともに硬化させることで、FRP引抜材を得ることができる。
【0019】
押出成形機とは、少なくとも金型と押出装置とを備えた設備である。押出装置は例えば電動のスクリュー等である。押出成形工程では、溶融した熱可塑性樹脂を押出装置によって金型内に供給し、金型から押し出す際に金型に応じた形状に成形させることができる。金型から押し出した後、または金型から押し出すとともに冷却硬化させることで、所定の形状の成形体を得ることができる。
【0020】
本発明では、押出成形機の金型に溶融した樹脂を供給する際、前記引抜成形機によって成形したFRP引抜材を、押出成形機の金型内に挿入(インサート)し、FRP成形体と熱可塑性樹脂とを同時に金型から押し出す。これにより、FRP引抜材表面に熱可塑性樹脂を被覆させたFRP成形体を得ることができる。
引抜成形工程では、引抜装置により引き抜き(引っ張り)ながら、マトリックス樹脂を含浸させた強化繊維を金型内に引き込んでFRP引抜材を成形している。金型の形状が複雑であっても、引抜装置によって強い力で引き込むため、ローラで成形する場合と比較して、複雑な形状の成形体をひとつの工程で精度良く成形することができる。したがって、複雑な形状であっても、設備を簡略化でき、成形に要する時間も短時間とすることができる。
【0021】
また、FRP引抜材を押出成形機にインサートして金型により熱可塑性樹脂を被覆することで、金型の表面状態を熱可塑性樹脂層の外表面に転写させることができる。金型の表面に意匠性を有する模様や形状を設けておくことで、成形されたFRP成形体に意匠性を付与することができる。
【0022】
前述の課題を解決するために本発明が採用した手段としては、上記手段に加え、前記引抜成形工程の後、前記FRP引抜材の表面に熱硬化性の接着剤を塗布する前処理工程を更に備えることも可能である。
【0023】
FRP引抜材のマトリックス樹脂に用いられる熱硬化性樹脂は、熱を加えることで硬化する樹脂である。これに対し、押出成形工程で用いられる熱可塑性樹脂は、熱を加えることで軟化する樹脂である。
仮に、マトリックス樹脂に熱可塑性樹脂が用いられた場合には、押出成形工程によりFPR引抜材表面を熱可塑性樹脂で被覆するとき、FRP引抜材のマトリックス樹脂の表面が再加熱される。この再加熱によりマトリックス樹脂が一部溶融し、FRP引抜材表面を被覆する熱可塑性樹脂とマトリックス樹脂とが溶融一体化する。そのため、FRP引抜材と被覆する熱可塑性樹脂層とを強固に一体化させることができる。
【0024】
しかし、本発明のように、マトリックス樹脂に熱硬化性樹脂を用いる場合には、押出成形工程によりFPR引抜材表面を熱可塑性樹脂で被覆するとき、FRP引抜材のマトリックス樹脂の表面が再加熱されても、マトリックス樹脂は溶融することがない。そのため、FRP引抜材と被覆する熱可塑性樹脂層とを密着させることはできるものの、その密着強度は使用する樹脂同士の性質に左右されやすい。
【0025】
そこで、前処理工程として、前記引抜成形工程の後(押出成形工程の前)に、FRP引抜材の表面に熱硬化性の接着剤を塗布する。この接着剤には、常温で液状のものだけでなく、常温で個体のものも含まれる。
【0026】
熱硬化性樹脂は、熱を加えると、化学反応によりモノマー同士の結合が進み、ネットワーク構造が形成される(架橋反応)ことで硬化する。FRP引抜材のマトリックス樹脂は引抜成形工程で既にある程度硬化しているものの、その一部には架橋反応が未だ進行中の部分が存在する。そこに、接着剤として未架橋の熱硬化性樹脂を塗布して、押出成形工程で加熱すると、FRP引抜材の架橋反応中のマトリックス樹脂の一部と、接着剤としての熱硬化性樹脂のモノマー同士が結合して強固に一体化する。
【0027】
これに対して、接着剤としての熱硬化性樹脂が架橋して硬化する際、押出成形工程により溶融した熱可塑性樹脂が架橋反応中の熱硬化性樹脂の表面と接触する。硬化中においては、熱硬化性樹脂は硬化状態よりも軟質であるため、接着剤としての熱硬化性樹脂の一部と熱可塑性樹脂の一部とが混合し、両者が硬化するときに融着して一体化する。
【0028】
上記作用により、FRP引抜材の表面に熱硬化性の接着剤を塗布する前処理工程を設けることで、FRP引抜材と、その表面を被覆する熱硬化性樹脂とが、接着剤としての熱硬化性樹脂を介して強固に一体化させることができる。
【0029】
上記前処理工程を設ける場合には、前記引抜成形工程を経たFRP引抜材を予備加熱して前記押出成形工程に導入することも可能である。前処理工程における接着剤としての熱硬化性樹脂は、押出成形工程における溶融した熱可塑性樹脂の熱により硬化する。しかし、熱可塑性樹脂の熱は接着剤としての熱硬化性樹脂の表面から伝わるため、熱可塑性樹脂の溶融温度によっては、FRR引抜材表面と接している部分にまで十分な熱を伝達できない場合も考えられる。
【0030】
そこで、FRP引抜材を予備加熱しておく。予備加熱することで、FRP引抜材の温度が上昇するため、FRP引抜材側からの熱と、熱可塑性樹脂からの熱とによって、接着剤としての熱硬化性樹脂を確実に硬化させることができる。
なお、この予備加熱工程は、接着剤としての熱硬化性樹脂を用いない構成であっても、マトリックス樹脂の架橋反応を促進する作用により、FRP引抜材と熱可塑性樹脂をより強固に一体化させることができるという効果も生じ得る。
【0031】
また、熱硬化性樹脂は、加熱することで硬化する樹脂であるが、一定温度までは軟化して液状化し、さらに所定の温度を超えると硬化する性質を有する。前処理工程においては、常温で液状の樹脂を用いる他、常温で個体の樹脂であれば、予め加熱して液状化した状態で塗布する。このとき、FRP引抜材の温度が低いと、塗布した熱硬化性樹脂の粘度が上がってしまい、濡れ性が低下する。
【0032】
そこで、FRP引抜材を予備加熱しておくと、塗布した熱硬化性樹脂の温度が低下せず、濡れ性を維持または向上させることができる。そのため、FRP引抜材の表面に滑らかに塗り広げることができる。その結果、FRP引抜材表面の接着剤層の表面が平滑化され、押出成形工程で被覆される熱可塑性樹脂層の表面の平滑性も向上させることができる。
【0033】
また、前記熱可塑性樹脂に軟質系樹脂を用いることも可能である。FRP成形体は構造材等の主材として用いることもできるが、既存の構造材等にパテ等の充填剤(または発泡基材を用いた粘着テープ等の緩衝材)を用いて取り付ける補修材や補強材として用いることもできる。
【0034】
既存の構造材等は、その表面が平滑な面である場合の他、素材の特性や経年劣化により凹凸が生じている場合もある。凹凸が生じている面にFRP成形体を取り付ける場合、FRP引抜材を被覆している熱可塑性樹脂が硬質であると、FRP成形体と取り付け面との間に間隙が生じる。そのため、充填剤や緩衝材を用いなければ、振動等が加わったとき、その間隙が閉じたり開いたりして騒音が発生したり、徐々に削れて破壊に至る可能性がある。
【0035】
そこで、前記熱可塑性樹脂に軟質系樹脂を用いることで、FRP成形体の熱可塑性樹脂が取り付け面の凹凸に沿って変形し、間隙を減少させることができる。熱可塑性樹脂により間隙が減少すると、充填剤や緩衝材を用いなかったとしても、軟質の熱可塑性樹脂の変形により間隙が無くなり、密着性を向上させることができる。
【0036】
また、軟質系樹脂は剛性が低いため振動の共振周波数が低く、振動の伝達における抵抗も高いことから、振動の減衰が大きいという特徴がある。そのため、FRP引抜材に被覆する熱可塑性樹脂を軟質系樹脂とすることで、振動や音の伝達を抑制することができ、構造物に用いた場合には免振性や遮音性を向上させることができる。
【0037】
さらに、前記押出成形工程を経たFRP成形体に冷却流体を噴射する構成とすることも可能である。
押出成形工程において熱可塑性樹脂を被覆したFRP成形体は、金型から押し出された直後は熱可塑性樹脂の温度が高い状態である。自然冷却により冷却することで熱可塑性樹脂の硬化が進むこととなる。
このとき、自然冷却のような徐冷による冷却であると、押し出されたFRP成形体の硬度が上昇するのに時間がかかるため、FRP成形体が湾曲したり表面にうねりが生じたりすることがある。
【0038】
そこで、前記押出成形工程を経たFRP成形体に冷却流体を噴射する構成とすることで、熱可塑性樹脂を急冷させることができる。これにより、FRP成形体表面の平滑性を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0039】
前述のとおり、本発明のFRP成形体の製造方法は、熱可塑性樹脂で被覆されたFRP成形体を得ることができる製造方法である。熱可塑性樹脂で被覆されたFRP成形体は、切削や穿孔等の除去加工によって生じる、強化繊維またはマトリックス樹脂の剥離を防止することができる。また、強化繊維に炭素繊維を用いた場合には、金属材料であるボルト等を使用した場合であっても、FRP成形体表面において金属と炭素繊維とが水分を介して接触することがないため、ガルバニック腐食の発生を防止することができるという特徴がある。
【0040】
本発明では、上記特徴を有する熱可塑性樹脂で被覆されたFRP成形体を得ることができるという効果に加えて、引抜成形機でFRP引抜材を引き抜く引抜成形工程によって得られたFRP引抜材を、押出成形機の金型にインサートしてFRP成形体を成形する押出成形工程を備えることで、複雑な形状に成形することができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明のFRP成形体の製造方法により得られるFRP成形体を表す斜視図及び断面図である。
図2】本発明のFRP成形体の製造方法を表す説明図である
図3】本発明のFRP成形体の製造方法により得られるFRP成形体の使用方法を表す説明図である。
図4】本発明のFRP成形体と従来のFRP成形体とを除去加工したときの端面の様子を表す説明図である。
図5】本発明のFRP成形体の製造方法の変形例1を表す斜視図及び断面図である。
図6】本発明の変形例1のFRP成形体の使用方法を表す説明図である。
図7】本発明のFRP成形体の製造方法の変形例2を表す斜視図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明を実施するための形態について、図1から図4に基づいて以下に説明する。
なお、各図は説明のために模式的に記載されており、寸法や形状は一部強調または簡略化して示されている。
【0043】
本発明のFRP成形体の製造方法により得られるFRP成形体100は、図1に示すように、断面コの字形のチャンネル材であるFRP引抜材1と、FRP引抜材1の外側の面に被覆された熱可塑性樹脂2とを備える。FRP引抜材1は、熱硬化性樹脂であるマトリックス樹脂11と、マトリックス樹脂11を含浸させた強化繊維12・12…とを備える。
【0044】
図1のFRP成形体100は、FRP引抜材1の全周面において熱可塑性樹脂2が被覆するように一体化している。なお、図1の形態では、FRP引抜材1の全周面に熱可塑性樹脂2を被覆した構成としているが、FRP引抜材1の任意の面のみに熱可塑性樹脂2を積層した構成としてもよい。
【0045】
FRP引抜材1におけるマトリックス樹脂11には、熱硬化性樹脂であるビニルエステル樹脂や、その他の熱硬化性樹脂を採用することもでき、例えばエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリイミド樹脂などを採用することもできる。
【0046】
強化繊維12には、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミックス繊維等を用いることができる。特に炭素繊維は軽量性と強度の観点や、屋外で用いられる場合には耐候性の観点からも好ましく、その場合、弾性に優れたピッチ系の炭素繊維を用いることもできるが、PAN(ポリアクリロニトリル系)系の炭素繊維であれば、更に高い強度とすることができる。また、複数の強化繊維12を混合して用いても良い。強化繊維12の繊維長は適宜調整することができる。
【0047】
FRP引抜材1における繊維体積含有率は、45%以上80%未満となるようにするのが好ましく、50%以上70%未満であるとより好ましい。繊維体積含有率が45%よりも小さいと強化繊維12・12…が均一に分散せず、FRP引抜材1の強度にばらつきが生じ易い。また、金型に硬化したマトリックス樹脂11が付着する等の成形不良も起こり易くなる。一方、繊維体積含有率が80%よりも大きいと、マトリックス樹脂11の割合が少なくなって熱硬化性樹脂を繊維間に充分に含浸させることができない。これにより、FRP引抜材1として引抜成形することができなくなる。
【0048】
FRP引抜材1の各辺の厚さは、適宜選択することができるが、例えば2mm程度の薄い板状としてもよいし、5mm以上の厚い板状としてもよい。
また、FRP引抜材1の各辺の幅も適宜選択することができるが、例えば30mm程度に狭い板状としてもよいし、100mm以上の広い板状としてもよい。
FRP引抜材1の長さにおいては、後述する引抜成形工程の後、一旦中間製造物として保管し、改めて押出成形工程に用いる場合には、所定の長さにカットした状態とすることができる。また、引抜成形工程と押出成形工程とを連続して行う場合には、FRP引抜材1は連続体として製造して押出成形工程に導入することもできる。
【0049】
一方、FRP引抜材1を被覆する熱可塑性樹脂2には、種々のものを採用することができるが、例えば図1の形態では、硬質樹脂として、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PVC(ポリ塩化ビニール樹脂)、PA(ポリアミド)、POM(ポリアセタール)、PC(ポリカーボネート)、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)、PAI(ポリアミドイミド)、PEI(ポリエーテルイミド)、PESU(ポリエーテルサルホン)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PEK(ポリエーテルケトン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEKK(ポリエーテルケトンケトン)、PSF(ポリサルフォン)、PAR(ポリアリレート)、PPSU(ポリフェニルサルホン)、PMMA(アクリル樹脂)、フッ素系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、液晶ポリマー等を用いることができる。
【0050】
また、熱可塑性樹脂2には、軟質系の塩化ビニール樹脂(PVC)や、ウレタン系、アクリル系、スチレン系、オレフィン系、アミド系、フッ素系の熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることもできる。
上記のような熱可塑性樹脂を2種類以上混合したポリマーアロイを用いても良い。
さらに、難燃性を付与する難燃剤や、強化繊維2への含浸性を向上させる添加剤、紫外線吸収剤等の、種々の添加材を配合するようにしてもよい。
【0051】
熱可塑性樹脂2の厚さは、適宜選択することができるが、例えば0.5mm程度の薄層としてもよいし、2mm以上に厚く積層してもよい。
【0052】
次に、本発明のFRP成形体の製造方法について、図2に基づいて説明する。
FRP成形体100の製造方法は、まず、引抜成形工程として、図2(a)に示すように、開繊装置(図示せず)により、強化繊維12・12…を薄層開繊した繊維束Fを長手方向に引き揃え、引抜装置P2によって、繊維束Fをマトリックス樹脂11となる液状化した熱硬化性樹脂を貯留した樹脂槽P1に浸漬させる。
【0053】
次いで、熱硬化性樹脂を含侵した繊維束F’を、引抜成形機Pの金型M1に引き込む。金型M1では、熱硬化性樹脂を含侵した繊維束F’が金型に応じた形状に成形されるとともに、金型M1に取り付けたヒーター(図示せず)により加熱される。これにより、マトリックス樹脂11が硬化したFRP引抜材1を得ることができる。
【0054】
上下のローラで挟み込んで成形する方法と異なり、本発明では引抜成形機Pの金型M1によって成形するため、平板状やLアングル、チャネル材等の比較的単純な形状だけでなく、
多数のリブやフィン形状を有する形状や非対称形状等の異形材、中が空洞になっている中空形状等、複雑な断面形状のFRP引抜材1とすることもできる。
【0055】
次に、図2(b)に示すように、前処理工程として、FRP引抜材1の表面に、接着剤3としての熱硬化性樹脂を塗布する。接着剤3には、常温で液状の熱硬化性樹脂を用いることができるが、別途加熱する構成とするならば、常温で個体の熱硬化性樹脂を用いてもよい。
常温で液状の熱硬化性樹脂としては、変性エポキシ系樹脂を用いることができるが、その他の熱硬化性樹脂を用いてもよい。
【0056】
前処理工程における接着剤3の塗布は種々の方法を用いることができ、ノズルから噴射させてFRP引抜材1の全体に塗布する方法の他、ローラを用いて塗布する方法等、種々の方法を用いることができる。
なお、前処理工程は、必須の工程ではなく、省略してもよい。
【0057】
次に、押出成形工程として、FRP引抜材1を押出成形機Eの金型M2に挿入(インサート)する。押出成形機Eには、熱可塑性樹脂のペレットを投入するためのホッパーE1や、金型M2内に溶融した熱可塑性樹脂を供給するためのヒーター及びスクリューを内包したシリンダE2、FRP引抜材1を金型M2に導入し、成形後のFRP成形体100を引き出すための引取機E3が設けられている。ヒーターで加熱溶融させた熱可塑性樹脂は、スクリューにより金型M2を通過して押し出される。押し出された熱可塑性樹脂は、自然冷却により冷却硬化される。
以上の一連の工程により、FRP成形体100を得ることができる。
【0058】
なお、前処理工程の後、または前処理工程の前に、FRP引抜材1を予備加熱する工程を備えることもできる。予備加熱の方法としては、FRP引抜材1の表面に温風を噴射する方法の他、加熱したローラを用いる方法等、種々の方法を用いることができる。
【0059】
また、押出成形工程の後に、成形体100に冷却流体を噴射する工程を備えることもできる。冷却流体としては、空気を好適に用いることができるが、水等の液体を用いてもよい。
押出成形された熱可塑性樹脂を急冷する方法としては、冷却したローラを用いる方法も考えられるが、FRP成形体100の表面に意匠性を有する模様が転写された状態であると、ローラの圧力により模様が消失してしまう可能性がある。冷却流体を噴射する方法であれば、上記問題が生じないため好ましい。
【0060】
上記の製造方法により得られたFRP成形体100は、たとえば図3に示すように、角パイプ材B等と組み合わせて、屋内の吊り天井の梁材として用いることができる。吊り天井は、種々の梁材を金具L等により連結して格子状の梁組を構成する。また、天井材として石こうボードG等を梁材に固定する。
梁材となる角パイプ材BやFRP成形体100は、所定の長さで製造されるが、現場の設計に合わせて切断して用いる。また、金具Lの連結や石こうボードG等の固定には、一般的にタッピングねじを用いる。
【0061】
ここで、例えば、図4(a)に示すように、熱可塑性樹脂で被覆していない従来のFRP成形体200を所定の長さに切断する場合、例えば電動のこぎりのような切断工具Tを用いる。
切断工具Tの刃がFRP成形体200の切り初めの表面から内部へと切り進め、反対面まで達すると、切り終わりの反対面付近の強化繊維12・12…は、繊維が有する弾性と細長い形状とにより、FRP成形体200の反対面から剥離する。切削工具Tの刃は、剥離して斜めに撓んだ強化繊維12・12…の表面を滑ってしまうため、強化繊維12・12…は、切断されたFRP引抜材1よりも僅かに長い寸法で切断される。
【0062】
このように、熱可塑性樹脂で被覆していない従来のFRP成形体200を切断すると、切断した端面においては、一部が剥離しているうえに僅かに長い寸法となった強化繊維12・12…が露出するため、外観を損なううえ、強化繊維12・12…が人の皮膚に刺さる可能性がある。
また、強化繊維12・12…の一部が剥離していることで、FRP成形体200のマトリックス樹脂11も強化繊維12・12…と同様に一部が層状に剥離する。そのため、使用中に受ける荷重等の外力により、剥離が進展し、破断に至る可能性がある。
【0063】
上記の剥離現象は、切断の場合だけでなく、タッピングねじをねじ込むときや、ドリルで下穴を穿孔するときも同様であり、ねじやドリルが入り始める表面の孔の稜線部や、ねじやドリルが突き抜けた反対面の孔の稜線部に、強化繊維12・12…の剥離が生じ、剥離した位置から亀裂が進展する可能性がある。
【0064】
それに対して、本発明により得られるFRP成形体100では、図4(b)に示すように、切断工具Tの刃が、FRP成形体100の切り初めの表面から内部へと切り進め、反対面まで達すると、FRP引抜材1の外側に一体化されている熱可塑性樹脂2が押さえとなって、切り終わりの反対面付近の強化繊維12・12…が撓んで剥離することなく、FRP引抜材1と揃った位置で切断することができる。
【0065】
そのため、端面におけるマトリックス樹脂11が強化繊維12から剥離することもなく、使用中に受ける荷重等の外力により、剥離が進展し、破断に至ることもない。
タッピングねじやドリルによる穿孔においても同様であり、他の除去加工であっても同様である。
【0066】
さらに、本発明により得られるFRP成形体100では、タッピングねじやドリルによる穿孔を行って、ねじやボルト・ナットによる締結を行った場合であっても、強化繊維12・12…が剥離して表面に露出することがない。そのため、強化繊維12に炭素繊維を用いた場合であっても、表面が水で濡れたとき、金属製のねじやボルトと炭素繊維とが水を介して接触することはない。したがって、ガルバニック腐食が生じる可能性を著しく低下させることができる。
【0067】
『変形例1』
本発明においては上記の形態に限定されず、他の形態を採用することもできる。そこで、本発明の変形例について、図5、6に基づいて説明する。なお、以降の説明において、前述の実施の形態と同一の部分については同一の符号を用い、重複する説明は割愛する。
図5に示す変形例では、FRP成形体101は、角を丸めたLアングル状の形状であり、図1に示す構成に対して、形状の他、熱可塑性樹脂2に軟質の塩化ビニール樹脂(PVC)を用いている点が異なる。
また、FRP引抜材1の全周面ではなく、一方の面にのみ熱可塑性樹脂2を被覆(積層)している点が異なる。
【0068】
図5の形態のFRP成形体101は、前述の図2に示す製造方法において、押出成形工程で導入する熱可塑性樹脂を、硬質の熱可塑性樹脂から軟質の熱可塑性樹脂に変更することで得ることができる。
【0069】
本変形例によるFRP成形体101は、例えば図6に示すような、コンクリート製の橋げたにおける補強材として用いることができる。コンクリートは、セメントペースト、細骨材、粗骨材、混和材料から構成されるが、時間の経過とともにセメントペーストが風化して消失し、粗骨材や細骨材が露出する。そのため、製造時には平滑な表面であったとしても、経年劣化により凹凸面となる。
【0070】
このような凹凸面を有する橋げた等の構造物に対して、本変形例のFRP成形体101を密着して固定し、補強する。このとき、取り付け面に凹凸があったとしても、軟質の熱可塑性樹脂11が凹凸に沿って変形するため、間隙が無くなる。
そのため、充填剤や緩衝材を用いることなく、凹凸面である取り付け面との密着性を向上させることができる。
【0071】
また、軟質の熱可塑性樹脂2が取り付け面と密着して接触していることで、橋げたのような構造物が振動した場合であっても、振動が熱可塑性樹脂2により減衰する。そのため、FRP成形体101それ自体が共振して騒音を発する恐れが低くなり、遮音性を向上させることができる。
さらに、図6のような橋げた以外にも、構造物の主材として連結して用いる場合には、軟質の熱可塑性樹脂2が介在することで、振動が伝達しにくくなり、免振性を向上させることもできる。
【0072】
『変形例2』
本発明においては、さらに他の形態を採用することもできる。例えば、図7に示す変形例では、FRP成形体102は、図1の形態のようなチャンネル材や平板のように単純な形状ではなく、複雑な断面形状である梁材や窓枠等に用いるサッシである点が異なる。
【0073】
FRP引抜材1をローラにより成形する場合には、ローラを上下から挟み込んで成形するため、上下方向に対してアンダーカットとなる形状は成形するのが困難である。
しかし、本変形例では、引抜成形機Pを用いた引抜成形工程において、金型M1にアンダーカットを有するような形状のものを用いることで、図7に示すような複雑な形状のFRP引抜材1とすることができる。また、押出成形機Eを用いた押出成形工程においては、このFRP引抜材1をインサートすることができる形状の金型M2とすることで、FRP引抜材1が複雑な形状であったとしても、その周囲に熱可塑性樹脂2を被覆することができる。
【0074】
以上のように、本発明のFRP成形体の製造方法であれば、引抜成形工程と押出成形工程を備えることで、得られたFRP成形体は、その表面や端面における強化繊維またはマトリックス樹脂の剥離の防止及びガルバニック腐食の防止ができるという特徴に加え、複雑な形状に成形することができるという特徴を有する。
【符号の説明】
【0075】
100,101,102 FRP成形体
1 FRP引抜材
11 マトリックス樹脂
12 強化繊維
2 熱可塑性樹脂
3 接着剤
200 従来のFRP成形体
B 角パイプ材
E 押出成形機
E1 ホッパー
E2 シリンダ
E3 引取機
F,F’ 繊維束
G 石こうボード
L 金具
P 引抜成形機
P1 樹脂槽
P2 引抜装置
M1,M2 金型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7