(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090745
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】患者登録方法及び患者登録システム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20240627BHJP
【FI】
G16H10/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206827
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 亮介
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】田島 有美
(72)【発明者】
【氏名】礒田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 咲由美
(72)【発明者】
【氏名】本城 友基
(72)【発明者】
【氏名】宗片 大地
(72)【発明者】
【氏名】大田 理豊
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA21
(57)【要約】
【課題】病院情報システムと病院到着前記録との連携を速やかに行うことができる、患者登録方法及び患者登録システムを提供すること。
【解決手段】患者登録方法は、端末装置(タブレット端末10)が、患者1の病院到着前の状態及び患者1に対する病院到着前の処置を含む病院到着前記録を送信するステップ(ステップS11)と、病院情報システムが、病院到着前記録を病院内の場所の情報(初療1)に紐付けることで患者1を受け付ける受付ステップ(ステップS13)と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置が、患者の病院到着前の状態及び前記患者に対する病院到着前の処置を含む病院到着前記録を送信するステップと、
病院情報システムが、前記病院到着前記録を病院内の場所の情報に紐付けることで前記患者を受け付ける受付ステップと、
を含む、患者登録方法。
【請求項2】
前記病院情報システムが、登録された前記患者の患者IDに、前記病院到着前記録と、病院内での前記患者の状態及び前記患者への処置と、を紐づけて前記患者のカルテ情報を作成するカルテ情報作成ステップを、さらに含む、
請求項1に記載の患者登録方法。
【請求項3】
前記病院内の場所の情報は、前記患者が初期治療を受ける部屋又はベッドを示す情報である、
請求項1に記載の患者登録方法。
【請求項4】
前記端末装置は、前記病院到着前記録に加えて、前記患者を特定するための患者特定情報を送信する、
請求項1に記載の患者登録方法。
【請求項5】
前記患者特定情報は、前記端末装置によって前記患者を撮像した患者画像である、
請求項4に記載の患者登録方法。
【請求項6】
患者の病院到着前の状態及び前記患者に対する病院到着前の処置を含む病院到着前記録を記録及び送信可能な端末装置と、
前記病院到着前記録を受信し病院内の場所の情報に紐付けることで前記患者を受け付ける病院情報システムと、
を含む、患者登録システム。
【請求項7】
前記病院情報システムは、前記患者の患者IDが登録されると、当該患者IDに、前記病院到着前記録と、病院内での前記患者の状態及び前記患者への処置と、を紐づけて前記患者のカルテ情報を作成する、
請求項6に記載の患者登録システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、患者登録方法及び患者登録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、救急車に医師が同乗する医師同乗搬送車(以下、これを「ドクターカー」と呼ぶ)が広がってきている。ドクターカーの普及により、救急現場や搬送中において、患者に治療を行うことができるようになった。
【0003】
ドクターカーでは、医師が車内で行った処置や診療を記録する。以下、この記録を「病院到着前記録」と呼ぶ。病院到着前記録は、搬送先の病院に引き継がれる。一般に、この病院到着前記録は紙に記録され、病院に着いてから病院情報システム(hospital information system; HIS)に転記される。
【0004】
この病院到着前記録を、紙ではなくタブレット端末などの情報端末装置を用いて行うことが提案されている(特許文献1参照)。このようにすることで、紙を用いた場合と比較して、転記が不要となるので医療従事者の手間が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、病院情報システムでは、基本的に、患者のデータは患者ID(IDentification)に紐付けられて運用されている。患者IDは、患者毎に発行され登録される。患者IDの発行・登録は、例えば医療従事者が患者の氏名や保険番号などを入力することで行われる。
【0007】
ドクターカーが病院に到着した時点では、搬送された患者の患者IDは登録されていない。患者IDが登録されていないと、病院情報システムに病院到着前記録を取り込めないので、速やかに病院情報システムに患者IDを登録する必要がある。
【0008】
しかし、救急時の慌ただしい中で迅速かつ確実に患者IDを登録するのは、病院にとって負担である。患者IDは例えば10桁から14桁程度の符号である。患者IDと患者氏名、保険番号との紐付けは、間違ってはならない。しかし、急いで登録処理を行うと、誤登録するおそれがある。特に、救急時には、病院に患者IDの登録に慣れた人員が勤務しているとは限らない。患者IDの登録に時間がかかると、それ以降、患者への処置が遅れることにもなりかねない。
【0009】
一方、患者IDの登録を行わずに患者への処置を行い、処置後に患者IDを登録する場合も考えられる。しかし、このようにすると、患者IDを登録するまでの間、病院情報システムに病院到着前記録を取り込むことが困難である。この結果、病院到着直後の患者への処置を行う際に、病院情報システムから病院到着前記録を参照することが困難となり、甚だ不便である。
【0010】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであり、病院情報システムと病院到着前記録との連携を速やかに行うことができる、患者登録方法及び患者登録システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の患者登録方法の一つの態様は、
端末装置が、患者の病院到着前の状態及び前記患者に対する病院到着前の処置を含む病院到着前記録を送信するステップと、
病院情報システムが、前記病院到着前記録を病院内の場所の情報に紐付けることで前記患者を受け付ける受付ステップと、
を含む。
【0012】
本開示の患者登録システムの一つの態様は
患者の病院到着前の状態及び前記患者に対する病院到着前の処置を含む病院到着前記録を記録及び送信可能な端末装置と、
前記病院到着前記録を受信し病院内の場所の情報に紐付けることで前記患者を受け付ける病院情報システムと、
を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、病院情報システムと病院到着前記録との連携を速やかに行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態による患者の救急搬送から病院受け入れまでの流れを示す図
【
図2】実施の形態の患者登録方法の流れを示すフローチャート
【
図4】実施の形態における病院到着前記録の紐付けの様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態の患者登録方法が適用される、患者の救急搬送から病院受け入れまでの流れを示す図である。
【0017】
図1Aに示したように、患者1は医師2が同乗したドクターカー3により搬送される。ドクターカー3には、端末装置としてのタブレット端末10が備えられている。
【0018】
タブレット端末10は、少なくとも、表示部、入力部、演算処理部、記憶部及び通信部を有する。タブレット端末10には、医師2が病院到着前記録を作成可能なアプリケーションプログラムが予めインストールされている。
【0019】
図1Bに示したように、ドクターカー3による患者搬送中において、タブレット端末10には、患者搬送中の患者1のバイタル情報、医師2が患者1に施した処置の情報、医師2による所見、患者の様子などの患者情報、などが医師2によって記録される。これらの、患者1の病院到着前の状態及び患者1に対する病院到着前の処置を含む情報は、病院到着前記録と呼ばれる。
【0020】
また、本実施の形態では、タブレット端末10によって患者1の顔写真などが撮像され、顔写真が患者識別子(患者識別情報と言ってもよい)として記録される。なお、患者識別子は顔写真に限らない。例えば、患者にバーコードが付されたリストバンドを装着させ、タブレット端末10によってこのバーコードを撮像して患者識別子として記録してもよい。
【0021】
図1Cに示したように、ドクターカー3が病院に到着すると、患者1は初療室や手術室などの病院内の所定の場所に入れられて処置を受けることとなる。また、タブレット端末10に記録された病院到着前記録は、病院情報システム(HIS)のサーバー20に送信される。
【0022】
ここで、病院情報システムは、電子カルテシステムや部門システムなどを構成する単数又は複数のサーバー20及び複数の端末30がネットワーク接続されて構成されたものである。病院情報システムの形態としては様々なものがあるが、本開示の患者登録方法及び患者登録システムは、病院情報システムを構成するサーバー20や端末30のネットワーク接続の形態などにかかわらず適用可能である。
【0023】
本実施の形態で説明する病院情報システムの処理は、病院情報システムを構成しているサーバー20や端末30によって実行される。
【0024】
図2は、本実施の形態の患者登録方法の流れを示すフローチャートである。
【0025】
ステップS11において、タブレット端末10が病院到着前記録及び患者識別子を病院情報システムに送信する。
【0026】
続くステップS12において、患者1が入室した場所の情報(換言すれば、患者が初期治療を受ける部屋又はベッドを示す情報)の入力が行われる。この入力は、例えばタブレット端末10に、
図3に示したような選択画像を表示し、ユーザーがタブレット端末10を操作することで行うようにすればよい。
図3では、患者1が初療室1に入室したので、ユーザーが「初療1」をタップする例が示されている。この場所の情報は、病院情報システムに入力される。なお、場所の選択は、タブレット端末10ではなく、病院情報システムの端末30で行うようにしてもよい。
【0027】
続くステップS13において、病院情報システムが、患者が入室した場所に病院到着前記録及び患者識別子を紐付けることで、患者を受け付ける。換言すれば、患者の入室処理が行われる。このように、本実施の形態では、従来は患者IDが登録されるまでは行われなかった患者の入室処理を、患者が入室した場所に病院到着前記録を紐付けることで行うようになっている。
【0028】
続くステップS14において、病院情報システムが必要に応じて病院到着前記録を表示する。例えば、初療室のホワイトボートと呼ばれる画面に病院到着前記録が表示される。
【0029】
続くステップS15において、医療従事者によって病院情報システムで患者IDが登録される。
【0030】
すると、続くステップS16において、病院情報システムが、患者が入室した場所を介して、登録された患者1の患者IDに、病院到着前記録と、病院内での患者1の状態及び患者1への処置と、を紐付けて患者1のカルテ情報を作成する。カルテ情報は、患者の診療録であり、その患者の診療経過等を記録したものである。
【0031】
図4は、本実施の形態における病院到着前記録の紐付けの様子を示す図である。
【0032】
先ず、
図4Aに示したように、患者1が入れられた場所の情報(初療室1)に病院到着前記録が紐付けられる。次に、
図4Bに示すように、患者IDが登録されると、患者IDに病院到着前記録が紐付けられる。次に、
図4Cに示すように、患者1が初療室1から退出すると、初療室1への病院到着前記録の紐付けが解除され、
図4Dに示すように、患者IDに病院到着前記録が紐付けられる。このようにして、患者が入室した場所を介して、患者IDに病院到着前記録が紐付けられる。続いて、
図4Eに示すように、患者IDに、病院内での患者1の状態及び患者1への処置が紐づけて記録される。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態の患者登録方法は、端末装置(タブレット端末10)が、患者1の病院到着前の状態及び患者1に対する病院到着前の処置を含む病院到着前記録を送信するステップ(ステップS11)と、病院情報システムが、病院到着前記録を病院内の場所の情報(初療1)に紐付けることで患者1を受け付ける受付ステップ(ステップS13)と、を含む。
【0034】
これにより、病院情報システムと病院到着前記録との連携を速やかに行うことができるようになる。この結果、患者IDが登録される前であっても、病院到着前記録を参照して患者1の処置を行うことができるようになる。
【0035】
また、病院到着前の患者1の顔写真や患者1に装着されたリストバンドのバーコードなどの患者識別子を、病院到着前記録に付随させるようにしたことにより、紐付けの際の患者の取り違いを防止できる。つまり、患者1の部屋番号を間違えて入力してしまった場合でも、患者識別子に基づいて患者の取り違いを検出できる。
【0036】
本実施の形態の構成によれば、ベッド(部屋)を介して病院到着前記録の紐付けを行うので、ユーザーは患者登録を意識せずに、病院到着前記録を病院情報システムに連携できる。
【0037】
また、副次的に、病院到着後即時にホワイトボード画面に病院到着前記録を表示させることができるようになるので、初療室での治療時に搬送中のデータを活用することができるようになる。
【0038】
本開示は、病院情報システムを構成する救急部門システムは、従来からベッド管理をしていることに着目してなされたものである。つまり、緊急搬送された患者がどのベッドに入るかが管理されているので、それを有効活用したものである。
【0039】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0040】
上述の実施の形態では、タブレット端末10が病院到着前記録を病院情報システムに直接送信する場合について述べたが、これに限らず、例えば、病院到着前記録は外部のサーバーを介してタブレット端末10から病院情報システムに送られてもよい。
【0041】
病院内到着記録は、必ずしも病院に到着してから送信される必要はなく、例えばドクターカー3内からリアルタイムで病院情報システムに送られてもよい。このようにするには、病院到着前に病院情報システムに予め患者1が入る病院内の場所(部屋やベッド)を設定し、病院情報システムはそれに病院到着前記録を紐付ければよい。
【0042】
上述の実施の形態では、1人の患者1が搬送される場合について述べたが、複数の患者が、1台のドクターカー3と医師が同乗していない1台以上の救急車で搬送される場合にも適用可能である。この場合、1つのタブレット端末10に複数の患者の病院到着前記録(例えば事故現場での患者の状態や患者に対する処置)を記録し、それぞれの患者が入室される場所を病院情報システムに入力し、病院情報システムは上述したのと同様の紐付けをそれぞれの患者に対して行うようにしてもよい。
【0043】
患者が異なる病院に搬送される場合には、患者到着前記録がタブレット端末10から各病院に配信される。具体的には、先ず患者がどこの病院に搬送されたかの情報がドクターカー3に送られる。すると、ドクターカー3のタブレット端末10から患者が搬送された病院に患者到着前記録と患者識別子とが送られる。初期治療を受ける部屋又はベッドを示す各病院での部屋の設定は病院情報システムで行えばよい。
【0044】
また、上述の実施の形態では、本開示の患者登録方法及び患者登録システムを、ドクターカー3で搬送された患者1を例にとって説明したが、これに限らず、例えばドクターヘリで搬送された患者にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示の患者登録方法及び患者登録システムは、患者の病院到着前記録を病院情報システムに連携させる患者登録方法及び患者登録システムとして有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 患者
2 医師
3 ドクターカー
10 タブレット端末
20 サーバー
30 端末