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特開2024-90747水素・酸素発生装置および水素ガス製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090747
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】水素・酸素発生装置および水素ガス製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20240627BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240627BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20240627BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20240627BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20240627BHJP
   C25B 9/75 20210101ALI20240627BHJP
   C25B 13/02 20060101ALI20240627BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B15/08 302
C25B9/77
C25B9/19
C25B9/75
C25B13/02 302
C25B15/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206830
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】西山(三宅) 明子
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021CA08
4K021CA09
4K021CA15
4K021DB04
4K021DB15
4K021DB31
4K021DB49
4K021DB50
4K021DC01
4K021DC03
4K021EA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水電解セルの使用期間の長期化を図り、水素ガス製造効率の向上を図った水素・酸素発生装置、および水素ガス製造方法を提供する。
【解決手段】セルスタック(110)の積層方向の一端側と他端側との間に介装された中間板(150)を備え、該中間板によって区切られた複数のブロック(111,112)のそれぞれに水を供給するための複数の水供給口(101)と、前記複数のブロックのそれぞれから酸素ガスを排出するための複数の酸素ガス排出口(102)とが備えられ、前記中間板が、ガス非透過性の素材で構成され、且つ、水素ガス排出経路に対応する位置に水素ガスを通過させるための通気部を有しており、前記水と前記酸素ガスとのブロック間での移動を規制しつつ前記複数のブロックから排出される前記水素ガスを前記水素ガス排出口から排出できるように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電気分解モジュールを備え、
前記電気分解モジュールが前記酸素ガスを排出する酸素ガス排出口と前記水素ガスを排出する水素ガス排出口とを備え、
該電気分解モジュールには、複数の電解セルが積層されたセルスタックが備えられ、
前記複数の電解セルのそれぞれは、固体高分子電解質膜と、該固体高分子電解質膜を介して隣り合う陰極室と陽極室とを備え、前記陽極室に水が供給されて該陽極室から前記酸素ガスが排出されるとともに前記陰極室から前記水素ガスが排出されるように構成され、
前記セルスタックには、前記複数の電解セルが積層されている方向に前記電解セルを貫通し、それぞれの前記電解セルの前記陰極室と連通する水素ガス排出経路が備えられ、
前記複数の電解セルのそれぞれの前記陰極室で発生された前記水素ガスが前記水素ガス排出経路を通じて前記水素ガス排出口より排出されるように構成されている水素・酸素発生装置であって、
前記セルスタックの積層方向の一端側と他端側との間に介装された1枚又は複数枚の中間板を更に備え、
該中間板によって前記セルスタックが複数のブロックに区切られ、
前記電気分解モジュールには、前記複数のブロックのそれぞれに前記水を供給するための複数の水供給口と、前記複数のブロックのそれぞれから前記酸素ガスを排出するための複数の前記酸素ガス排出口とが備えられ、
前記中間板が、ガス非透過性の素材で構成され、且つ、前記水素ガス排出経路に対応する位置に前記水素ガスを通過させるための通気部を有しており、
前記水と前記酸素ガスとのブロック間での移動を規制しつつ前記複数のブロックから排出される前記水素ガスを前記水素ガス排出口から排出できるように構成されている、水素・酸素発生装置。
【請求項2】
前記電気分解モジュールが第1エンドプレートと第2エンドプレートとの2つのエンドプレートを備え、
該電気分解モジュールでは、前記電解セルが積層されている方向での前記セルスタックの両端部にそれぞれ前記第1エンドプレートと前記第2エンドプレートとが配されており、
前記セルスタックを前記第1エンドプレート側の第1ブロックと前記第2エンドプレート側の第2ブロックとの2つの前記ブロックに区切るべく前記中間板が前記セルスタックの一箇所にのみ介装され、
前記第1ブロックの前記水供給口と前記酸素ガス排出口とが前記第1エンドプレートに開口され、
前記第2ブロックの前記水供給口と前記酸素ガス排出口とが前記第2エンドプレートに開口され、
前記水素ガス排出口が前記第1エンドプレートに開口されている請求項1記載の水素・酸素発生装置。
【請求項3】
前記中間板に前記水供給口と前記酸素ガス排出口とが設けられ、該中間板に隣接する2つの前記ブロックの内の一方のブロックに該中間板を通じて水を供給し得るように構成されているとともに該一方のブロックから前記中間板を通じて前記酸素ガスを排出し得るように構成されている請求項1記載の水素・酸素発生装置。
【請求項4】
前記電気分解モジュールは、前記セルスタックが複極式電解セルで構成され、前記中間板が導電性を有する素材で構成されており、前記複数のブロックに対して一つの電力系統で給電できるように構成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の水素・酸素発生装置。
【請求項5】
水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電気分解モジュールを備えた水素・酸素発生装置で水素ガスを製造する水素ガス製造方法であって、
前記水素・酸素発生装置は、
前記電気分解モジュールが前記酸素ガスを排出する酸素ガス排出口と前記水素ガスを排出する水素ガス排出口とを備え、
該電気分解モジュールには、複数の電解セルが積層されたセルスタックが備えられ、
前記複数の電解セルのそれぞれは、固体高分子電解質膜と、該固体高分子電解質膜を介して隣り合う陰極室と陽極室とを備え、前記陽極室に水が供給されて該陽極室から前記酸素ガスが排出されるとともに前記陰極室から前記水素ガスが排出されるように構成され、
前記セルスタックには、前記複数の電解セルが積層されている方向に前記電解セルを貫通し、それぞれの前記電解セルの前記陰極室と連通する水素ガス排出経路が備えられ、
前記複数の電解セルのそれぞれの前記陰極室で発生された前記水素ガスが前記水素ガス排出経路を通じて前記水素ガス排出口より排出されるように構成されており、
前記セルスタックの積層方向の一端側と他端側との間に介装された1枚又は複数枚の中間板を更に備え、
該中間板によって前記セルスタックが複数のブロックに区切られ、
前記電気分解モジュールには、前記複数のブロックのそれぞれに前記水を供給するための複数の水供給口と、前記複数のブロックのそれぞれから前記酸素ガスを排出するための複数の前記酸素ガス排出口とが備えられ、
前記中間板が、ガス非透過性の素材で構成され、且つ、前記水素ガス排出経路に対応する位置に前記水素ガスを通過させるための通気部を有しており、
当該水素・酸素発生装置が、前記水と前記酸素ガスとのブロック間での移動を規制しつつ前記複数のブロックから排出される前記水素ガスを前記水素ガス排出口から排出できるように構成され、
前記電気分解モジュールを運転して水素ガスを製造することと、
前記電気分解モジュールの運転を停止して前記固体高分子電解質膜を検査することとを実施し、
前記検査では、前記陰極室と前記陽極室との間に圧力差を生じさせて前記固体高分子電解質膜のガス透過性を測定する水素ガス製造方法。
【請求項6】
前記検査では、前記陰極室が前記陽極室に比べて高い圧力となるように前記陰極室に窒素ガスを供給して前記ガス透過性を測定する請求項5記載の水素ガス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電気分解モジュールを備えた水素・酸素発生装置と、そのような水素・酸素発生装置で水素ガスを製造する水素ガス製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンなエネルギー源として水素ガスを利用する機会が広がっており、このような水素ガスを得るための方法としては、水を電気分解する方法が広く知られている。このような水素ガスの製造においては、水を電気分解するための電気分解モジュールを備えた水素・酸素発生装置が知られている。
【0003】
水素・酸素発生装置の電気分解モジュールとしては、複数の電解セルが積層されたセルスタックを備え、電解セルが固体高分子電解質膜と、該固体高分子電解質膜を介して隣り合う陰極室と陽極室とを備え、固体高分子電解質膜の陽極面側に純水を流通させ、電解により酸素ガスと水素イオンとを生成し、水素イオンを当該陽極面側から陰極面側へと固体高分子電解質膜内を移動させ、陰極面側にて水素ガスを発生させるタイプのものが知られている。
【0004】
この種の電気分解モジュールでは、水を供給するための経路と、酸素ガスを排出する経路と、水素ガスを排出する経路とがセルスタックを貫通するように設けられ、水供給経路と酸素ガス排出経路とがそれぞれ全ての陽極室と連通するように設けられ、水素ガス排出経路が全ての陰極室と連通するように設けられている。また、この種の電気分解モジュールには、水供給経路を通じて陽極室に供給する水の供給口と、酸素ガス排出経路を通じて排出される酸素ガスの排出口と、水素ガス排出経路を通じて排出される水素ガスの排出口とが備えられている。そして、この種の電気分解モジュールは、電力を供給しつつ水供給口から水を供給することで酸素ガス排出口と水素ガス排出口とのそれぞれから酸素ガスと水素ガスとが排出されるように構成されている。
【0005】
電解セルでは、化学的な劣化等により固体高分子電解質膜にピンホールが生じることがある。そのため水素・酸素発生装置では、そのようなピンホールの発生を検知するために酸素ガス排出口から排出される酸素ガスにおける水素濃度が測定されたりしている(下記特許文献1の段落0042等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-80108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水素・酸素発生装置で固体高分子電解質膜にピンホール等の異常が発生した場合、どの電解セルで異常が生じているのかは、通常、セルスタックを解体せずに調べることが困難である。また、一度解体したセルスタックを元通りに組み直すことも困難であるため、ピンホール等の異常が発生した場合、セルスタックごと交換する修理方法がとられる。そのため、セルスタックでは最も寿命の短い電解セルによって全ての電解セルの使用期間が決定され、多くの電解セルは、耐用期間を満了する前に廃棄されたりしている。したがって、このような装置で水素ガスを製造する水素ガス製造方法においては、交換部品の消費量を抑制することが難しく、効率良く水素ガスを製造することが難しい状況になっている。本発明はこのような問題に着目してなされたものであり、電解セルの使用期間の長期化を図り、水素ガス製造効率の向上を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、
水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電気分解モジュールを備え、
前記電気分解モジュールが前記酸素ガスを排出する酸素ガス排出口と前記水素ガスを排出する水素ガス排出口とを備え、
該電気分解モジュールには、複数の電解セルが積層されたセルスタックが備えられ、
前記複数の電解セルのそれぞれは、固体高分子電解質膜と、該固体高分子電解質膜を介して隣り合う陰極室と陽極室とを備え、前記陽極室に水が供給されて該陽極室から前記酸素ガスが排出されるとともに前記陰極室から前記水素ガスが排出されるように構成され、
前記セルスタックには、前記複数の電解セルが積層されている方向に前記電解セルを貫通し、それぞれの前記電解セルの前記陰極室と連通する水素ガス排出経路が備えられ、
前記複数の電解セルのそれぞれの前記陰極室で発生された前記水素ガスが前記水素ガス排出経路を通じて前記水素ガス排出口より排出されるように構成されている水素・酸素発生装置であって、
前記セルスタックの積層方向の一端側と他端側との間に介装された1枚又は複数枚の中間板を更に備え、
該中間板によって前記セルスタックが複数のブロックに区切られ、
前記電気分解モジュールには、前記複数のブロックのそれぞれに前記水を供給するための複数の水供給口と、前記複数のブロックのそれぞれから前記酸素ガスを排出するための複数の前記酸素ガス排出口とが備えられ、
前記中間板が、ガス非透過性の素材で構成され、且つ、前記水素ガス排出経路に対応する位置に前記水素ガスを通過させるための通気部を有しており、
前記水と前記酸素ガスとのブロック間での移動を規制しつつ前記複数のブロックから排出される前記水素ガスを前記水素ガス排出口から排出できるように構成されている水素・酸素発生装置、を提供する。
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、
水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電気分解モジュールを備えた水素・酸素発生装置で水素ガスを製造する水素ガス製造方法であって、
前記水素・酸素発生装置は、
前記電気分解モジュールが前記酸素ガスを排出する酸素ガス排出口と前記水素ガスを排出する水素ガス排出口とを備え、
該電気分解モジュールには、複数の電解セルが積層されたセルスタックが備えられ、
前記複数の電解セルのそれぞれは、固体高分子電解質膜と、該固体高分子電解質膜を介して隣り合う陰極室と陽極室とを備え、前記陽極室に水が供給されて該陽極室から前記酸素ガスが排出されるとともに前記陰極室から前記水素ガスが排出されるように構成され、
前記セルスタックには、前記複数の電解セルが積層されている方向に前記電解セルを貫通し、それぞれの前記電解セルの前記陰極室と連通する水素ガス排出経路が備えられ、
前記複数の電解セルのそれぞれの前記陰極室で発生された前記水素ガスが前記水素ガス排出経路を通じて前記水素ガス排出口より排出されるように構成されており、
前記セルスタックの積層方向の一端側と他端側との間に介装された1枚又は複数枚の中間板を更に備え、
該中間板によって前記セルスタックが複数のブロックに区切られ、
前記電気分解モジュールには、前記複数のブロックのそれぞれに前記水を供給するための複数の水供給口と、前記複数のブロックのそれぞれから前記酸素ガスを排出するための複数の前記酸素ガス排出口とが備えられ、
前記中間板が、ガス非透過性の素材で構成され、且つ、前記水素ガス排出経路に対応する位置に前記水素ガスを通過させるための通気部を有しており、
当該水素・酸素発生装置が、前記水と前記酸素ガスとのブロック間での移動を規制しつつ前記複数のブロックから排出される前記水素ガスを前記水素ガス排出口から排出できるように構成され、
前記電気分解モジュールを運転して水素ガスを製造することと、
前記電気分解モジュールの運転を停止して前記固体高分子電解質膜を検査することとを実施し、
前記検査では、前記陰極室と前記陽極室との間に圧力差を生じさせて前記固体高分子電解質膜のガス透過性を測定する水素ガス製造方法、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、セルスタックが複数のブロックに区分けされているため、ブロック単位で固体高分子電解質膜の異常を検知できるとともにブロック単位で電解セルを交換できるため、異常の検知されなかったブロックでは電解セルをそのまま継続して使用することができ、電解セルの使用期間を長期化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態の水素・酸素発生装置の概略構成図である。
図2図2は、一実施形態の水素・酸素発生装置における電気分解モジュールの様子を示した概略正面図である。
図3A図3Aは、(イ)セルスタックの各ブロックを構成する電解セルのブロック毎の固定状況を示した概略図、及び、(ロ)a-a’矢視方向での様子を示した概略図である。
図3B図3Bは、(イ)図3Aとは別の固定状況を示した概略図、及び、(ロ)b-b’矢視方向での様子を示した概略図である。
図4図4は、図2の電気分解モジュールの構成を模式的に示した概略図である。
図5図5は、図2の電気分解モジュールを上方(図2 ブロック矢印V方向)から見た様子を示した概略平面図である。
図6A図6Aは、電解セルに用いられるガスケットの形状を示した概略平面図である。
図6B図6Bは、電解セルに用いられるガスケットの形状を示した概略平面図である。
図6C図6Cは、中間板の形状を示した概略平面図である。
図7図7は、図2の電気分解モジュールを下方(図2 ブロック矢印VII方向)から見た様子を示した概略底面図である。
図8図8は、図2の電気分解モジュールを左側方(図2 ブロック矢印VIII方向)から見た様子を示した概略側面図である。
図9図9は、図2の電気分解モジュールを右側方(図2 ブロック矢印IX方向)から見た様子を示した概略側面図である。
図10図10は、他実施形態の水素・酸素発生装置における電気分解モジュールの様子を示した概略正面図である。
図11A図11Aは、固体高分子電解質膜のガス透過性を測定するための一機構を示した概略斜視図である。
図11B図11Bは、固体高分子電解質膜のガス透過性を測定するための機構であって、図11Aに示したものとは別の機構を示した概略斜視図である。
図11C図11Cは、固体高分子電解質膜のガス透過性を測定するための機構であって、図11A図11Bに示したものとは別の機構を示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように本実施形態の水素・酸素発生装置1は、水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電気分解モジュール100を備えている。本実施形態の水素・酸素発生装置1は、電気分解モジュール100で電気分解される水を貯留するタンク200を有する。本実施形態の水素・酸素発生装置1は、電気分解モジュール100の陽極側に水を循環供給し得るように構成されている。本実施形態の水素・酸素発生装置1は、電気分解によって消費されるよりも過剰の水を電気分解モジュール100に供給し、電気分解モジュール100の陽極側から酸素ガスと水とを気液混合流の状態で排出させ、該気液混合流をタンク200に返送し、該タンク200で気液分離を実施させ得るように構成されている。
【0013】
なお、図1では、該タンク200に該気液混合流を返送し、該タンク200で気液分離を実施するようにしているが、該タンク200とは別に気液分離タンクを設け、該気液混合流は気液分離タンクに返送するようにしてもよく、また、該タンク200の内部に仕切りを設け、電気分解モジュール100で電気分解される水を貯留する部分と該気液混合流が返送される部分とに区画を分けるようにしてもよい。なお、区画を分ける仕切りは、仕切りを介して隣り合う一方と他方とでタンク内の気相部分が連通するように設けてもよく、それらが完全に別々になるように設けてもよい。
【0014】
本実施形態の水素・酸素発生装置1は、膜を透過する水が水素ガスに同伴されて電気分解モジュール100の陰極側より排出され、水と水素ガスとを分離し得るように気液分離器300をさらに有している。本実施形態の水素・酸素発生装置1は、タンク200より電気分解モジュール100に水を供給するための水搬送経路を構成する給水配管L1と、酸素ガスを含んだ気液混合流を電気分解モジュール100から排出してタンク200に返送するための酸素搬送経路を構成する酸素ガス排出配管L2と、電気分解モジュール100から水素ガスを排出するための水素搬送経路を構成する水素ガス排出配管L3と、をさらに有している。
【0015】
電気分解モジュール100は、固体高分子電解質膜を備えている。水素・酸素発生装置1は、固体高分子電解質膜のガス透過性を測定する検査機400をさらに備えている。以下においては、電気分解モジュール100が、直方体状である場合を例示するが、電気分解モジュールは円柱状や他の形状であってもよい。
【0016】
本実施形態の電気分解モジュール100は、直方体形状を有し、図2図4図6図8に示すように正面視における横方向(左右方向)の寸法が奥行方向(前後方向)よりも長い。即ち、電気分解モジュール100は、上方や下方から見た形状が横長な長方形となる形状を有している。以下の説明においては、この長方形の長辺に沿った第1の方向のことを電気分解モジュール100の横方向Xと称し、短辺に沿った第2の方向のことを電気分解モジュール100の奥行方向Yと称し、この第1の方向や第2の方向に直交する方向を電気分解モジュール100の上下方向Zと称することがある。
【0017】
本実施形態の電気分解モジュール100は、当該電気分解モジュール100で電気分解される水をモジュール内に導入するための水供給口101と、電気分解して得られた酸素ガスを排出する酸素ガス排出口102と電気分解して得られた水素ガスを排出する水素ガス排出口103とを備えている。該電気分解モジュール100には、複数の電解セル10が上下方向Zに積層されたセルスタック110が備えられている。
【0018】
前記複数の電解セル10のそれぞれは、図3に示すように、固体高分子電解質膜11と、該固体高分子電解質膜を介して上下に隣り合う陰極室12と陽極室13とを備え、前記陽極室13に水が供給されて該陽極室13から前記酸素ガスが排出されるとともに前記陰極室12から前記水素ガスが排出されるように構成されている。
【0019】
本実施形態での電解セル10では、前記固体高分子電解質膜11の上方に前記陽極室13が配され、前記固体高分子電解質膜11の下方に前記陰極室12が配されている。前記陽極室13の上方と前記陰極室12の下方にはそれぞれ陽極室13や陰極室12に対して電気的エネルギーを供給するための電極板14が配されている。本実施形態での電解セル10には、陰極室12を包囲するガスケット材(陰極ガスケットS2)と、陽極室13を包囲するガスケット材(陽極ガスケットS1)とが設けられている。即ち、陰極室12及び陽極室13は、外周部がガスケット材でシールされ、上下方向への開口部が電極板14と固体高分子電解質膜11とでそれぞれ閉塞されて気密性の高い空間となって備えられている。
【0020】
本実施形態の前記セルスタック110は、複極式の電解セル10で構成され、一枚の電極板14が上下方向Zに隣り合う2つの電解セル10の電極板として兼用されている。前記セルスタック110では、陰極室12や陽極室13が上下方向Zに2つ以上連続しておらず、陰極室12と陽極室13とが交互に配されている。そして、前記電極板14の両面の内の一方の面は、当該電極板14が兼用されている2つの電解セル10の内の一方の電解セル10の陰極室12に向けた陰極面14cとなっていて、該陰極面14cとは反対の面は、他方の電解セル10の陽極室13に向けた陽極面14aとなっている。
【0021】
本実施形態の電気分解モジュール100では、前記電解セル10が積層されている上下方向Zでの前記セルスタック110の両端部にそれぞれ第1エンドプレート121と第2エンドプレート122との2つのエンドプレート120が備えられている。第1エンドプレート121は、セルスタック110の積層方向の一端側と他端側との内の一端側(上端部)に上方から接するように配されており、第2エンドプレート122は、セルスタック110の積層方向の一端側と他端側との内の他端側(下端部)に下方から接するように配されている。
【0022】
本実施形態の電気分解モジュール100では、前記セルスタック110の積層方向の一端側と他端側との間に介装された1枚又は複数枚の中間板150を更に備え、該中間板150によって前記セルスタック110が複数のブロックに区切られている。図2に例示の電気分解モジュール100は、1枚の中間板150が一箇所にのみ介装されて前記セルスタック110が2つのブロックに区切られている。2つのブロックの内の第1ブロック111は、第1エンドプレート121と中間板150との間に備えられ、第2ブロック112は、中間板150と第2エンドプレート122との間に配されている。なお、第1エンドプレート121と第2エンドプレート122の厚さは、中間板150よりも厚いことが好ましい。また、第1エンドプレート121と第2エンドプレート122の厚さは、電極板14よりも厚いことが好ましい。
【0023】
電気分解モジュール100での積層方向(上下方向Z)に沿って見たときの電解セル10の平面視や底面視における形状は、電気分解モジュール100の平面形状や底面形状と同じく横長な長方形となっている。第1ブロック111及び第2ブロック112は、それぞれ複数の電解セル10が上下方向Zに真っすぐに積層されて直方体形状となっている。第1ブロック111と第2ブロック112とは、上下方向に沿ってそれらを見た平面視や底面視において全ての電解セル10が輪郭を揃えた状態で中間板150を介して上下に積層されている。第1エンドプレート121、第2エンドプレート122及び中間板150は、本実施形態では、それぞれ電解セル10以上の大きさを有する矩形板状である。本実施形態での第1エンドプレート121、第2エンドプレート122及び中間板150は、電解セル10よりも一回り大きく、第1ブロック111や第2ブロック112よりも前後左右にはみ出した状態となって電気分解モジュール100に備えられている。
【0024】
中間板150は、電解セル10より大きくある必要はなく、電解セル10と同等の大きさであってもよい。中間板150は、電解セル10よりも外向きに突出する突出部を有していてもよく。突出部は、全周に亘って形成されるようにしてもよく、対向する2つの辺に設けてもよい。突出部は、対向する2辺の一部のみを突出するように設けてもよい。突出部を設けることで、第1ブロック111を垂直方向からはさみこむように突出部と第1エンドプレート121とを押圧する押圧部材を設置することができ、第2ブロック112に不具合が生じたときに突出部と第1エンドプレート121とを押圧部材ではさみこむことで第1ブロックを分解することなく第2ブロック112のみ点検することが可能となる。一方、突出部と第2ブロック112を押圧部材ではさみこむときは第1ブロック111を、第2ブロックを分解することなく点検することが可能となる。突出部は、中間板150の上下に隣接する電解セル10より5mm以上外側に突出するように設けることができる。突出部は、10mm以上外側に突出してもよく、15mm以上外側に突出してもよく、20mm以上外側に突出するように設けられていてもよい。
【0025】
突出部には、孔を設けて吊り治具で吊り下げまたは吊り上げることで移動させることができるようにしても良い。この場合、第1エンドプレート121、または第2エンドプレート122にも同様の吊り治具用の孔を設け、平面視で突出部の孔と第1エンドプレート121の孔、突出部の孔と第2エンドプレートの孔、または突出部の孔と第1エンドプレート121の孔と第2エンドプレートの孔が同じ位置に来るように設けるとより好ましい。
【0026】
中間板150は、複数枚重ねて配置しても良い。例えば、2枚重ねて配置することで片方のブロックのみモジュールから取り外した場合、もう一方のブロックの積層方向の片面がもう一枚の中間板150で保護されるため、もう一方のブロックの損傷を防ぐことができる。この場合、取り外しの容易さを考慮して、それぞれの中間板150の大きさを変える、または中間板150同士の突出部が平面視したときに重ならないようにするとより好ましい。中間板150の大きさについては、特に限定しないが、エンドプレートの外周部分には固定ボルトが通るため、ボルトの通る位置よりも内側にするとより好ましい。尚、ボルト、ナットなどの2つの部材を締結するための締結具は、部材同士が接近する方向に圧力を作用させることもできるため上記のような押圧部材として用いることができる。
【0027】
中間板150を複数枚重ねてブロック毎の保護をするための方法としては、例えば、図3Aに示すように、第1エンドプレート121と第2エンドプレート122とのそれぞれに係合してモジュール全体を一纏まりのものとして固定する全固定ボルトB0が通る領域よりも内側に位置する中間板150として上板150aと下板150bとの2枚の中間板150を配置する方法が挙げられる。
【0028】
この図3Aに示した例では、モジュール全体を固定する全固定ボルトB0として、外周面に螺子山が設けられた丸棒状の軸部B0aと該軸部よりも径大な頭部B0bとを有し、該頭部B0bが前記軸部B0aの長さ方向一端側に設けられている一般的なボルトが用いられている。この図3Aに示した例では、第1エンドプレート121と第2エンドプレート122とに全体を固定するための貫通孔として全固定用貫通孔H0が設けられている。全固定用貫通孔H0は、第1エンドプレート121と第2エンドプレート122とをそれぞれ厚さ方向に貫通し、且つ、鉛直方向に延びる仮想軸が両者の中央部を通るように配されている。そして、全固定ボルトB0では、前記軸部B0aが、全固定用貫通孔H0の内径以下の外径を有し、前記頭部B0bが前記全固定用貫通孔H0よりも径大となっている。
【0029】
図3Aに示した例では、第1エンドプレート121の上面121aから第2エンドプレートの下面122bまでの距離よりも長い軸部を備えた全固定ボルトB0を用い、第2エンドプレート122の下面122bよりも下方に突出した軸部B0aの先端部にナットN0を嵌めて第1エンドプレート121-第2エンドプレート122間の固定を行っている
【0030】
図3Aに示した例では、第1エンドプレート121と上板150aとで上下方向から第1ブロック111を挟み込んで第1固定ボルトB1によって第1ブロック111での電解セル10の積層状態を固定できるように第1エンドプレート121と上板150aとのそれぞれに第1固定用貫通孔H1が設けられている。また、図3Aに示した例では、第2固定ボルトB2によって下板150bと第2エンドプレート122とで上下方向から挟み込んで第2ブロック112を固定できるように第2エンドプレート122と下板150bとのそれぞれに第2固定用貫通孔H2が設けられている。
【0031】
本実施形態の電気分解モジュール100での全固定ボルトB0によるセルスタック110の積層状態の固定は、電気分解モジュール100が解体される場合を除き、原則的に常時行われる。一方で、第1固定ボルトB1での第1ブロック111の固定や第2固定ボルトB2での第2ブロック112の固定は、電気分解モジュール100が解体される場合に実施され、原則的に通常運転時には行われない。第1固定ボルトB1、及び、第2固定ボルトB2のそれぞれは、全固定ボルトB0と干渉し合わない位置に設けられることが好ましく、全固定ボルトB0が装着された電気分解モジュール100に対して着脱自在に装着可能であることが好ましい。
【0032】
第1固定ボルトB1、及び、第2固定ボルトB2のそれぞれは、要すれば、電気分解モジュール100が解体される場合以外において装着されてもよい。全固定ボルトB0、第1固定ボルトB1、及び、第2固定ボルトB2のそれぞれは、電気分解モジュール100の通電時においても装着され得る場合、電気的なショートパスを形成するのを防止すべくエンドプレートや中間板との間に電気的な絶縁性を確保して取り付けられる。
【0033】
図3Aに示した例では、下板150bの上面において第2固定用貫通孔H2が開口している位置には前記上板150aが設けられておらず、前記上板150aには、前記第2固定用貫通孔H2に対応した位置に第2固定用貫通孔H2よりも大きな切欠部(以下、「上板切欠部150a1」ともいう)が設けられている。また、図3Aに示した例では、上板150aの下面において第1固定用貫通孔H1が開口している位置には前記下板150bが設けられておらず、前記下板150bには、前記第1固定用貫通孔H1に対応した位置に第1固定用貫通孔H1よりも大きな切欠部(以下、「下板切欠部150b1」)が設けられている。
【0034】
図3Aに示すように、この図に例示の電気分解モジュール100では、全固定ボルトB0よりも短い第1固定ボルトB1や第2固定ボルトB2が第1ブロック111や第2ブロック112を電気分解モジュール100から取り外す際に用いられ得る。該電気分解モジュール100は、第1固定用貫通孔H1に第1固定ボルトB1を通して第1エンドプレート121と上板150aとを締結し、これらによって第1ブロック111を上下方向から挟み込んで固定できるようになっている。該電気分解モジュール100は、第2固定用貫通孔H2に第2固定ボルトB2を通して下板150bと第2エンドプレート122とを締結し、これらによって第2ブロック112を上下方向から挟み込んで固定することができるようになっている。従って、この図に例示の電気分解モジュール100では、第1ブロック111や第2ブロック112を構成している電解セル10の積層状態を元の状態から崩すことを防ぎつつ第1ブロック111や第2ブロック112を個別に取り出すことができる。
【0035】
尚、第1固定ボルトB1や第2固定ボルトB2の形状等と第1固定用貫通孔H1や第2固定用貫通孔H2との関係性については全固定ボルトB0と全固定用貫通孔H0と同じである。即ち、第1固定ボルトB1や第2固定ボルトB2も第1固定用貫通孔H1や第2固定用貫通孔H2以下の太さの丸棒状で外周に螺子切りが施されている軸部と、第1固定用貫通孔H1や第2固定用貫通孔H2よりも径大な頭部とを有し、軸部の長さがそれぞれのエンドプレート120から中間板150に到達可能な長さとなっている。加えて、第1固定ボルトB1は、上板150aの側から第1エンドプレート121に向けて上向きに軸部を第1固定用貫通孔H1に通した時に頭部が下板切欠部150b1に収まった状態で上板150aの下面に当接され得るように構成されている。また、第2固定ボルトB2は、下板150bの側から第2エンドプレート122に向けて下向きに軸部を第2固定用貫通孔H2に通した時に頭部が上板切欠部150a1に収まった状態で下板150bの上面に当接され得るように構成されている。
【0036】
図に例示の第1固定ボルトB1は、頭部の厚さ(軸部の長さ方向での厚さ)が下板150bの厚さ以下となって、第1ブロック111の固定に際して頭部が下板150bの下面よりも下側に突出しないようになっているが頭部は下板150bの下面よりも下側に突出する厚さを有していてもよい。図に例示の第2固定ボルトB2は、頭部の厚さ(軸部の長さ方向での厚さ)が上板150aの厚さ以下となって、第2ブロック112の固定に際して頭部が上板150aの上面よりも上側に突出しないようになっているが、第2固定ボルトB2の頭部は上板150aの上面よりも上側に突出する厚さを有していてもよい。
【0037】
上記のような構造を有することから、図3Aに例示の電気分解モジュール100では、組み立て時に第1固定ボルトB1や第2固定ボルトB2で第1ブロック111や第2ブロック112を固定していなくても、後から、必要に応じて第1ブロック111や第2ブロック112の固定を実施することができる。尚、そのような利点は、上板150aや下板150bに切欠部を設けるのに代えて頭部を収容可能な大きさを有する貫通孔を設ける場合も同様に発揮され得る。
【0038】
電気分解モジュール100の組み立て時点において予め第1ブロック111や第2ブロック112を固定しておくのであれば、図3Bに例示するような構造を採用してもよい。図3Bに例示の電気分解モジュール100は、上板150aと下板150bとの2枚の中間板150を間に電解セル10を介装させることなく積層している点では図3Aの態様と同じである。図3Aの電気分解モジュール100では、上板150aと下板150bとの外周縁を全固定ボルトB0が通る領域よりも内側に位置させていたが、図3Bに例示する電気分解モジュール100では、外周縁が全固定ボルトB0の通る領域に達する大きさの上板150aと下板150bとを採用し、上板150aと下板150bとの両方にも全固定用貫通孔H0を設けて全固定ボルトB0の軸部B0aを挿通させるようにしている。
【0039】
図3Bに例示する電気分解モジュール100では、上板150aの下面側と下板150bの上面側とに座繰り部(上板座繰り部150a2,下板座繰り部150b2)を設け、第1固定ボルトB1や第2固定ボルトB2の頭部を座繰り部に収容させている。このような場合も電解セル10の積層構造を維持したまま第1ブロック111と第2ブロック112とを分離することができる。図3A図3Bに示すような態様においては、各ブロックでの積層状態を固定したまま電気分解モジュール100が解体できるため、解体作業が容易になるだけでなく、取り換えが必要なブロックを取り換える際に取り換え不要なブロックにおいて電解セル10に意図しない位置ずれが生じることを防止することができる。
【0040】
前述のように第1固定ボルトB1や第2固定ボルトB2は、通常、電気分解モジュール100を解体する際に装着される。一方、図3Bに例示の態様では、第1固定ボルトB1や第2固定ボルトB2が常時装着された状態になるため、エンドプレートや中間板との間に電気絶縁性を確保する必要がある。電気絶縁性を確保するためには、第1固定ボルトB1や第2固定ボルトB2とエンドプレートや中間板との間に電気絶縁性を有する部材を介装させたり、第1固定ボルトB1や第2固定ボルトB2としてそれ自身が電気絶縁性を有するボルト(例えば、樹脂ボルトやセラミックボルトなど)を採用したりしてもよい。尚、電気分解モジュール100の構成をシンプルなものにする上では、図3Aに示すような構成を採用することが好ましく、第1固定ボルトB1や第2固定ボルトB2は、全固定ボルトB0で電気分解モジュール100全体が固定された状態において着脱自在であることが好ましい。
【0041】
図5図7に示すように第1エンドプレート121と第2エンドプレート122とは、それぞれ水供給口101と酸素ガス排出口102とを有している。具体的には、第1エンドプレート121には、平面視における長手方向(横方向X)での一端側において前後(奥行方向Y)に対を為すように2つの水供給口101(以下、「第1水供給口101a」ともいう)が設けられ、長手方向での他端側において前後に対を為すように2つの酸素ガス排出口102(以下、「第1酸素ガス排出口102a」ともいう)が設けられている。即ち、本実施形態において横長な長方形となっている第1エンドプレート121では、長辺の一端側の2つの角部にそれぞれ水供給口101が設けられ、他端側の2つの角部にそれぞれ酸素ガス排出口102が設けられている。
【0042】
前記給水配管L1は、第1エンドプレート121においては水供給口101に接続されている。前記給水配管L1には、図11A図11Cに示すように、水供給口101との接続箇所に、開閉弁(以下「給水弁V1」ともいう)が設けられている。即ち、本実施形態の電気分解モジュール100は、水供給口101を介した外部との流通が可能な状態と外部との流通が阻止された状態とに切替可能になっている。
【0043】
前記酸素ガス排出配管L2は、第1エンドプレート121においては酸素ガス排出口102に接続されている。前記酸素ガス排出配管L2には、酸素ガス排出口102との接続箇所に開閉弁(以下「酸素ガス排出弁V2」ともいう)が設けられている。即ち、本実施形態の電気分解モジュール100は、酸素ガス排出口102を介した外部との流通が可能な状態と外部との流通が阻止された状態とに切替可能になっている。
【0044】
第1エンドプレート121には、図5に示すように、長手方向の一端側で前後に対になっている2つの第1水供給口101aの間に設けられた第1水素ガス排出口103aと長手方向の他端側で前後に対になっている2つの第1酸素ガス排出口102aの間に設けられた第2水素ガス排出口103bとの2つの水素ガス排出口103が設けられている。
【0045】
前記水素ガス排出配管L3は、第1エンドプレート121においては水素ガス排出口103に接続されている。前記水素ガス排出配管L3には、水素ガス排出口103との接続箇所に開閉弁(以下「水素ガス排出弁V3」ともいう)が設けられている。即ち、本実施形態の電気分解モジュール100は、水素ガス排出口103を介した外部との流通が可能な状態と外部との流通が阻止された状態とに切替可能になっている。
【0046】
本実施形態での第2エンドプレート122には、図7に示すように、第1エンドプレート121に設けられた2つの第1水供給口101aと上下方向Zにそれぞれ対を為すように設けられた2つの水供給口101(以下、「第2水供給口101b」ともいう)が設けられている。また、第2エンドプレート122には、第1エンドプレート121に設けられた2つの第1酸素ガス排出口102aと上下方向Zにそれぞれ対を為すように設けられた2つの酸素ガス排出口102(以下、「第2酸素ガス排出口102b」ともいう)が設けられている。即ち、長辺の一端側の2つの角部にそれぞれ水供給口101が設けられ、他端側の2つの角部にそれぞれ酸素ガス排出口102が設けられている点では、第1エンドプレート121と第2エンドプレート122とは共通している。
【0047】
給水弁V1を設けた給水配管L1が水供給口101に接続されている点については第2エンドプレート122の側についても同じである。即ち、本実施形態の電気分解モジュール100は、第2水供給口101bを介した外部との流通が可能な状態と外部との流通が阻止された状態とに切替可能になっている。また、酸素ガス排出弁V2を設けた酸素ガス排出配管L2が酸素ガス排出口102に接続されている点については第2エンドプレート122の側についても同じである。即ち、本実施形態の電気分解モジュール100は、第2酸素ガス排出口102bを介した外部との流通が可能な状態と外部との流通が阻止された状態とに切替可能になっている。
【0048】
本実施形態での第2エンドプレート122には、水素ガス排出口103が形成されておらず電気分解モジュール100は、第1エンドプレート121の側からのみ水素ガスを取り出し可能になっている。尚、本実施形態の電気分解モジュール100は、第2エンドプレート122にも第1水素ガス排出経路161や第2水素ガス排出経路162に繋がる水素ガス排出口103を設けて上下両方から水素ガスを取り出し可能にしてもよい。この場合も、第2エンドプレート122に設けた水素ガス排出口103には、開閉弁を設けた水素ガス排出配管L3を接続することができる。
【0049】
図4図8図9などに示すように、前記電気分解モジュール100での前記セルスタック110には、複数の電解セル10が積層されている上下方向Zに当該複数の電解セル10を貫通し、前記中間板150をも貫通してそれぞれの前記電解セル10の前記陰極室12と連通する水素ガス排出経路160が備えられている。本実施形態では第1水素ガス排出経路161と第2水素ガス排出経路162との2つの水素ガス排出経路160が設けられ、それらが電気分解モジュール100の横方向Xでの両端部にそれぞれ設けられている。
【0050】
第1水素ガス排出経路161は、第1水素ガス排出口103aに連通し、第1水素ガス排出口103aから下方に延びるように設けられている。第2水素ガス排出経路162は、第2水素ガス排出口103bに連通し、第2水素ガス排出口103bから下方に延びるように設けられている。第1水素ガス排出経路161及び第2水素ガス排出経路162は、セルスタック110の最も下方に設けられている陰極室12に到達するように延在している。
【0051】
電気分解モジュール100に備えられている全ての陰極室12は、横方向Xでの一端側と他端側とのそれぞれにおいて水素ガス排出経路160に連通している。第1水素ガス排出経路161は、図2正面視左側の端部において陰極室12に連通し、第2水素ガス排出経路162は、右側の端部において陰極室12に連通している。尚、第1水素ガス排出経路161と第2水素ガス排出経路162とは、それぞれ奥行方向Yでの中央部において陰極室12に連通している。即ち、第1水素ガス排出経路161と第2水素ガス排出経路162とは、横方向Xでの両端部、且つ、奥行方向Yでの中央部において上下方向Zに垂直に延びるように電気分解モジュール100に設けられている。
【0052】
第1水素ガス排出経路161と第2水素ガス排出経路162とのそれぞれの水素ガス排出経路160は、図6Aに示すように、固体高分子電解質膜11よりも陽極室側では、陽極室13の周囲を画定するガスケット材(陽極ガスケットS1)において陽極室13から離れた位置を通過するように配されている。一方で第1水素ガス排出経路161と第2水素ガス排出経路162とのそれぞれの水素ガス排出経路160は、図6Bに示すように、固体高分子電解質膜11よりも陰極室側では、陰極室12に連通するようにガスケット材(陰極ガスケットS2)を通過している。
【0053】
前記中間板150については、図6Cに示すように、これらの水素ガス排出経路160に対応する位置に前記水素ガスを通過させるための通気部151を有し、水素ガス排出経路160を通る水素ガスの流れを遮断しないようになっている。そして、本実施形態では、水素ガス排出経路160を上方に延長するように第1エンドプレート121に貫通孔が設けられ、当該貫通孔が水素ガス排出口103となっている。前記のように本実施形態では、横方向X及び奥行方向Yでの位置が第1水素ガス排出経路161に対応した位置に設けられた第1水素ガス排出口103aと第2水素ガス排出経路162に対応した位置に設けられた第2水素ガス排出口103bとの2つの水素ガス排出経路160が横方向Xに対を為すように設けられている。本実施形態においては、2つの経路で水素ガスを取り出せるようにしているが、一方の水素ガス排出口103を閉塞して一つの経路のみで水素ガスを取り出すようにしてもよい。
【0054】
前述の上板150aと下板150bとのように積層方向における一箇所に複数枚の中間板150を介装させる場合、それぞれの中間板150に通気部151が形成される。該通気部151は、中間板150を厚さ方向に貫通する貫通孔などによって構成されてよく、上板150aと下板150bとのそれぞれにこのような貫通孔を通気部151として設ける場合、上板150aと下板150bとの界面を通じて水素ガスが漏洩しないように通気部151を囲繞するシーリング材(例えば、Oリングなど)を配置するようにしてもよい。シーリング材は、メタルガスケットやメタルOリングなどの導電性を有するものであってもよい。
【0055】
本実施形態ではそれぞれの水供給口101から上下方向に延びて陽極室13に連通する水供給経路130を有する。本実施形態の水供給経路130は、水素ガス排出経路160のように中間板150を通過できるようにはなっておらず、第1エンドプレート121に設けられた第1水供給口101aから下方に延びる水供給経路130と、第2エンドプレート122に設けられた第2水供給口101bから上方に延びる水供給経路130とは、中間板150で分離されている。即ち、本実施形態においては、第1ブロック111において複数の電解セル10が積層されている上下方向Zに当該複数の電解セル10を貫通して第1ブロック111の全ての陽極室13に連通する第1水供給経路131と、第2ブロック112において複数の電解セル10が積層されている上下方向Zに当該複数の電解セル10を貫通して第2ブロック112の全ての陽極室13に連通する第2水供給経路132との2つの水供給経路130は、互いに連通し合わないように設けられている。
【0056】
本実施形態ではそれぞれの酸素ガス排出口102から上下方向に延びて陽極室13に連通する酸素ガス排出経路140を有する。本実施形態の酸素ガス排出経路140は、水供給口101と同様に中間板150を通過できるようにはなっておらず、第1エンドプレート121に設けられた2つの第1酸素ガス排出口102aのそれぞれから下方に延びる酸素ガス排出経路140と、第2エンドプレート122に設けられた2つの第2酸素ガス排出口102bのそれぞれから上方に延びる酸素ガス排出経路140とは、中間板150で分離されている。即ち、本実施形態においては、第1ブロック111において複数の電解セル10が積層されている上下方向Zに当該複数の電解セル10を貫通して第1ブロック111の全ての陽極室13に連通する第1酸素ガス排出経路141と、第2ブロック112において複数の電解セル10が積層されている上下方向Zに当該複数の電解セル10を貫通して第2ブロック112の全ての陽極室13に連通する第2酸素ガス排出経路142との2つの酸素ガス排出経路140は、互いに連通し合わないように設けられている。
【0057】
本実施形態での電気分解モジュール100は、第1ブロック111での電気分解において、第1エンドプレート121に設けられた第1水供給口101aに接続された給水配管L1から水を供給し、この供給された水を第1ブロック111に設けられている複数の陽極室13に第1水供給経路131を通じて分配し、該水を陽極室13の一端側から他端側へと通過させる間に酸素ガスと水素イオンとを発生させ、該酸素ガスを第1酸素ガス排出経路141及び酸素ガス排出口102(第1酸素ガス排出口102a)を通じて酸素ガス排出配管L2へと排出するとともに固体高分子電解質膜11を通じて陰極室12に前記水素イオンを移動させて水素ガスを生成させ、当該水素ガスを陰極室12の両端部に配された第1水素ガス排出経路161と第2水素ガス排出経路162とを通じて水素ガス排出口103より水素ガス排出配管L3へと排出し得るように構成されている。
【0058】
本実施形態での電気分解モジュール100は、また、第2ブロック112での電気分解において、第2エンドプレート122に設けられた第2水供給口101bに接続された給水配管L1から水を供給し、この供給された水を第2ブロック112に設けられている複数の陽極室13に第2水供給経路132を通じて分配し、該水を陽極室13の一端側から他端側へと通過させる間に酸素ガスと水素イオンとを発生させ、該酸素ガスを第2酸素ガス排出経路142及び酸素ガス排出口102(第2酸素ガス排出口102b)を通じて酸素ガス排出配管L2へと排出するとともに固体高分子電解質膜11を通じて陰極室12に前記水素イオンを移動させて水素ガスを生成させ、当該水素ガスを陰極室12の両端部に配された第1水素ガス排出経路161と第2水素ガス排出経路162とを通じて第1エンドプレート121に設けられた水素ガス排出口103より水素ガス排出配管L3へと排出し得るように構成されている。
【0059】
本実施形態での電気分解モジュール100は、例えば、電解セル10で電気分解される以上の量の水が第1水供給口101aや第2水供給口101bから供給され、電気分解によって生じた酸素ガスと電気分解されずに残った水とが気液混合状態となって第1酸素ガス排出口102aと第2酸素ガス排出口102bとのそれぞれから排出されるようになっている。
【0060】
上記のように本実施形態の電気分解モジュール100では、陽極側の空間が中間板150で分断されて第1ブロック111と第2ブロック112とでそれぞれ独立しているのに対し、陰極側の空間が第1ブロック111と第2ブロック112とで連通されて全体で一纏まりの空間を構成している。水と酸素ガスとのブロック間での移動を規制しつつ両ブロックから排出される水素ガスを両ブロックとも同じ水素ガス排出経路160と水素ガス排出口103とを通じて排出できるように構成されている電気分解モジュール100は、前記陰極室12と前記陽極室13との間に圧力差を生じさせて固体高分子電解質膜11のガス透過性を容易に測定することができ、固体高分子電解質膜11にピンホールなどの異常が生じていないかをブロックごとに確認することができる。
【0061】
前記電気分解モジュール100は、中間板150の材質が電極板と同じで、かつ、中間板150と電極板14の材質が導電性を有する素材であることが好ましく、これらが純チタン、又は、チタン合金であることが好ましい。本実施形態の電気分解モジュール100は、中間板150の設けられている箇所で第1ブロック111の側と第2ブロック112の側とを電気的に絶縁して第1ブロック111での電気分解のための電力を供給する電力系統と、第2ブロック112での電気分解のための電力を供給する電力系統とを別系統としてもよいが一つの電力系統で給電できる構成とすることで、装置構成をシンプルにすることができる。より具体的には、本実施形態の電気分解モジュール100は、第1エンドプレート121と第2エンドプレート122とが対電極となるように第1エンドプレート121に陽極電位を負荷するとともに第2エンドプレート122に陰極電位が負荷されることで第1ブロック111と第2ブロック112とで同時に水の電気分解を実施し得るように構成されている。
【0062】
本実施形態で電気分解に用いられる電力としては、火力発電や原子力発電などによって発電されて送電線によって広域に供給されて常時安定的に利用可能になっている系統電力と称されるものであってもよく、再生可能エネルギーにより発電された電力であってもよい。再生可能エネルギーは、例えば、太陽光、風力、波力、潮力、バイオマス、地熱、流水などであってもよい。系統電力を用いる場合は、安定した電気分解を実施することができる。再生可能エネルギーにより発電された電力を用いる場合は、電力供給が不安定になり易いが休転を余儀なくされた時間を固体高分子電解質膜11の検査のために有効活用し易い。また、再生可能エネルギーにより発電された電力を用いる場合は、電力供給が不安定で固体高分子電解質膜11に与えるストレスが大きい場合も想定される。そのため、最も早期に異常を生じた電解セルによって全ての電解セルの交換時期が決定されることが回避可能な本発明の効果は、そのような電力が安定し難い状況においてより顕著に発揮され得る。
【0063】
本実施形態の電気分解モジュール100は、ピンホールなどの異常が固体高分子電解質膜11に生じたことが検知されたときやそのような異常が疑われる場合には、例えば、電気分解モジュール100の運転を停止した後に給水配管L1と電気分解モジュール100との流通を遮断するとともに電気分解モジュール100と酸素ガス排出配管L2との流通、および、電気分解モジュール100と水素ガス排出配管L3との流通を遮断し、水素・酸素発生装置1において電気分解モジュール100を周囲から縁切りされた状態にして検査を行うことができる。この場合の検査は、電気分解モジュール100を水素・酸素発生装置1に取り付けられたままの状態で実施してもよく、電気分解モジュール100を水素・酸素発生装置1から取り出して実施してもよい。そして、前記のように陰極室12と陽極室13との間に圧力差を生じさせて固体高分子電解質膜11の健全性を検査することができる。検査は、運転停止後の電気分解モジュール100の内部を窒素ガスでパージして大気圧に戻してから開始することができる。
【0064】
検査は、そのような場合だけでなく、定期的に実施されてもよい。より具体的には、運転時に、陽極室13から排出されるガス中の水素濃度が上昇してきた場合に、例えば、陰極室12が陽極室13に比べて高い圧力となるように前記水素ガス排出口103より窒素ガスを供給し、前記水供給口101と前記酸素ガス排出口102との内の一方又は両方から排出されるガス量を測定する。ガス量が基準値以上のときは膜にピンホールが生じていると判断する。窒素ガスは、窒素ガスボンベ等から供給することができる。このような検査は、例えば、陽極室から排出されるガスにおける水素ガス濃度が3000ppm以上となった時に実施することができる。
【0065】
このような方法により、固体高分子電解質膜11のガス透過性の程度を確認することができ、固体高分子電解質膜11の健全性を評価することができる。供給するガスの圧力は、窒素ガスの場合、使用する電解セル10の圧力許容設計値以下、またはゲージ圧で0.2MPa以上1.0MPa未満である。ガス量の基準値は、膜の種類、供給するガスの圧力によって決められる。
【0066】
上記方法以外では、水素ガス排出口103より陽極室13へ窒素ガスを供給して陰極室12よりも圧力が高い状態とし、陰極室12から水供給口101と前記酸素ガス排出口102との内の一方又は両方から排出されるガス量を測定し、ガス量が基準値以上となったときは膜にピンホールが生じていると判断するようにしても良い。
【0067】
より確実に固体高分子電解質膜11の健全性を検査するため、固体高分子電解質膜11を通過するガスの量の測定は、一回の検査において2回行ってもよいが、1回でもよい。
【0068】
また、窒素ガス以外のガスを用いて検査することも可能である。例えば、電気分解モジュール100の運転中にピンホールが疑われるような事態になった場合は、電気分解のための電力供給を停止し、陽極室13の側では水の供給を継続し、第1酸素ガス排出口102aや第2酸素ガス排出口102bから水がそのまま排出される状態にし、陰極室12の側では水素ガスを加圧状態のまま保持させ、第1酸素ガス排出口102aや第2酸素ガス排出口102bから排出される水に同伴されて水素ガスがどの程度排出されるかを測定してピンホールなどの異常の有無を確認するようにしてもよい。即ち、本実施形態では、窒素ガスではなく水素ガスでピンホール検査を行うこともできる。
【0069】
検査は、陰極室12を正圧にして実施する必要はなく、陽極室13の側を負圧にして実施することもできる。また、検査は、陽極室13が陰極室12に比べて高い圧力となるようにして行うこともできる。例えば、第1ブロック111の陽極室13を窒素ガスで充満させるようにし、第2ブロック112の陽極室13を酸素ガスで充満させるようにし、陽極室13が陰極室12に比べて高い圧力となるようにし、ピンホールなどが存在する場合に窒素ガスや酸素ガスが陰極室12に移動される状況にして、水素ガス排出経路160を通じて水素ガス排出口103から排出されるガスの量を測定すればブロックごとに固体高分子電解質膜11の健全性を確認することができる。
【0070】
上記のように第1ブロックと第2ブロックとを含む複数のブロックに区切られたセルスタックを有する電気分解モジュールの検査は、各ブロックの検査を同時に並行して実施してもよく、順次実施してもよい。例えば、前記第1ブロックの陽極室に第1のガスを供給し、該第1ブロックの健全性を確認した後で、前記第2ブロックの陽極室に第1のガスと同じか、又は、第1のガスとは異なる第2のガスを供給する方法で実施することができる。
【0071】
検査によって何れかのブロックにピンホールなどの異常が認められた場合は、当該ブロックの電解セル10を新たなものに交換し、異常が認められなかったブロックについては同じ電解セル10を引き続き使用することができる。このようにして本実施形態の水素・酸素発生装置では、電解セル10の使用期間を長期化することができる。
【0072】
本実施形態の水素・酸素発生装置を用いた水素ガス製造方法では、電気分解モジュール100を運転して水素ガスを製造することと、電気分解モジュール100の運転を停止して前記固体高分子電解質膜11を検査することとを実施し、この検査では、陰極室12と陽極室13との間に圧力差を生じさせて固体高分子電解質膜11のガス透過性を測定することでブロックごとの電解セル10の健全性が容易に確認することができるため、交換用部材の消費を抑制することができ、効率よく水素ガスを製造することができる。
【0073】
水素ガス製造方法では、単位時間当たりの水素ガスの製造量を従来に比べて増加させることが要望される場合がある。その場合、セルスタックにおける電解セルの積層数を従来のものに比べて増加させることで対応可能となる。従来の方法の場合、電解セルの積層数を単に増加させただけでは、その内の一つの電解セルが早期に寿命を迎えただけで全ての電解セルを取り換えなければならずハイリスクな状況となってしまいかねない。一方で本実施形態の方法においては、ブロック単位で電解セルを取り換えることができるため水素ガスの製造能力を大容量化しても上記のようなリスクを負い難い。
【0074】
前記検査は、より具体的には、図11A図11B図11Cに例示の機構を利用して実施することができる。また、検査対象とする各ブロックでの電解セル(固体高分子電解質膜)の数は20以上50以下であることが好ましい。
【0075】
図11Aに例示の電気分解モジュール100では、接続されている各配管に開閉弁が設けられている。図11Aに例示の電気分解モジュール100には、開閉弁(給水弁V1)を経由することなくモジュール外の空間と第1水供給経路131とを連通させることが可能な分岐経路(以下「給水分岐経路L11」ともいう)が設けられている。また、図11Aに例示の電気分解モジュール100には、開閉弁(水素ガス排出弁V3)を経由することなくモジュール外の空間と水素ガス排出経路160とを連通させることが可能な分岐経路(以下「水素ガス分岐経路L31」ともいう)が設けられている。図11Aに例示の電気分解モジュール100は、それぞれの分岐経路と外部空間との間に、開閉弁が装着されて当該分岐経路の開閉状態を切替可能になっている。尚、開閉弁を設ける方法に替え、密栓などの着脱操作によって分岐経路の開閉状態を切替可能にしてもよい。図11Aには明記していないが、第2エンドプレート122の側にも同様の分岐経路が設けられている。また、このような分岐経路は、第1ブロックや第2ブロックに対してのみ設けられるものではなく、第3番目以降のブロックが設けられる場合においても各ブロックに設けられ得る。
【0076】
図11Aに例示の電気分解モジュール100は、分岐経路を有することで給水配管L1、酸素ガス排出配管L2、水素ガス排出配管L3を接続したまま検査できるようになっている。
【0077】
図11Aに例示の電気分解モジュール100は、第1エンドプレート121や第2エンドプレート122の厚さ方向での中間地点で水供給経路130に給水分岐経路L11が接続されており、該給水分岐経路L11がエンドプレートの側面部を通って外部空間と連通するように構成されている。また、図11Aに例示の電気分解モジュール100は、第1エンドプレート121や第2エンドプレート122の厚さ方向での中間地点で水素ガス排出経路160に水素ガス分岐経路L31が接続されており、該水素ガス分岐経路L31がエンドプレートの側面部を通って外部空間と連通するように構成されている。尚、給水分岐経路L11や水素ガス分岐経路L31は、図11Bに示すように第1エンドプレート121の上面側や第2エンドプレートの下面側で外部空間と連通するように形成されてもよい。
【0078】
本実施形態においては、図11Aに示した態様のように、分岐経路と外部空間とがエンドプレートの側面部で連通されるように電気分解モジュール100を構成することが好ましい。また、本実施形態においては、図11Aに示した態様のように陰極側に分岐経路を1つ設け、陽極側の分岐経路を各ブロックに1つずつ設けることが好ましい。尚、分岐経路と外部空間との連通箇所は、エンドプレートの側面部でなくてもよい。また、分岐経路は陰極側、陽極側のそれぞれに複数ずつ設けてもよい。以下、図11B図11Cを参照しつつそのような事例について説明する。
【0079】
図11Bに例示の電気分解モジュール100は、接続されている各配管に開閉弁が設けられている点において図11Aに例示の電気分解モジュール100と共通する。図11Bに例示の電気分解モジュール100にも、開閉弁(給水弁V1)を経由することなくモジュール外の空間と第1水供給経路131とを連通させることが可能な分岐経路(給水分岐経路L11)が設けられている。また、図11Bに例示の電気分解モジュール100には、開閉弁(酸素ガス排出弁V2)を経由することなくモジュール外の空間と第1酸素ガス排出経路141とを連通させることが可能な分岐経路(以下「酸素ガス分岐経路L21」ともいう)が設けられている。さらに、図11Bに例示の電気分解モジュール100には、開閉弁(水素ガス排出弁V3)を経由することなくモジュール外の空間と水素ガス排出経路160とを連通させることが可能な分岐経路(水素ガス分岐経路L31)が設けられている。図11Bに例示の電気分解モジュール100は、それぞれの分岐経路と外部空間との間に、開閉弁が装着されて当該分岐経路の開閉状態を切替可能になっている。尚、開閉弁を設ける方法に替え、密栓などの着脱操作によって分岐経路の開閉状態を切替可能にしてもよい点については図11Aに例示の電気分解モジュール100と同じである。第2エンドプレート122の側にも同様の分岐経路が設けられているこのような分岐経路は、第1ブロックや第2ブロックに対してのみ設けられるものではなく、第3番目以降のブロックが設けられる場合においても各ブロックに設けられ得る点についても図11Aに例示の電気分解モジュール100と同じである。
【0080】
図11Cに例示の電気分解モジュール100を備えた水素・酸素発生装置1では、分岐経路を設けることを省略して開閉弁(給水弁V1,酸素ガス排出弁V2,水素ガス排出弁V3)として三方弁を設けている。図11Cに例示の電気分解モジュール100も、給水配管L1、酸素ガス排出配管L2、水素ガス排出配管L3が三方弁を介して電気分解モジュール100に接続され、電気分解モジュール100からの経路を各配管と外部空間とに切替可能になっている。
【0081】
図11Cに例示の電気分解モジュール100を備えた水素・酸素発生装置1では、
第1の出口と第2の出口と第3の出口との三方の出口を備え、
第1の出口と第2の出口との間が連通し、第1の出口と第3の出口との間および第2の出口と第3の出口との間が遮断された第1の状態と、
第1の出口と第3の出口との間が連通し、第1の出口と第2の出口との間および第2の出口と第3の出口との間が遮断された第2の状態とに切替可能な三方弁が備えられ、
該三方弁での第1の出口から第3の出口までの流路が、水搬送経路を構成し、且つ、第1の出口が電気分解モジュール100の側となるように給水配管L1に三方弁が備えられている。
また、図11Cに例示の電気分解モジュール100を備えた水素・酸素発生装置1では、
第1の出口と第2の出口と第3の出口との三方の出口を備え、
第1の出口と第2の出口との間が連通し、第1の出口と第3の出口との間および第2の出口と第3の出口との間が遮断された第1の状態と、
第1の出口と第3の出口との間が連通し、第1の出口と第2の出口との間および第2の出口と第3の出口との間が遮断された第2の状態とに切替可能な三方弁が備えられ、
該三方弁での第1の出口から第3の出口までの流路が、酸素搬送経路を構成し、且つ、第1の出口が電気分解モジュール100の側となるように酸素ガス排出配管L2に三方弁が備えられている。
さらに、図11Cに例示の電気分解モジュール100を備えた水素・酸素発生装置1では、
第1の出口と第2の出口と第3の出口との三方の出口を備え、
第1の出口と第2の出口との間が連通し、第1の出口と第3の出口との間および第2の出口と第3の出口との間が遮断された第1の状態と、
第1の出口と第3の出口との間が連通し、第1の出口と第2の出口との間および第2の出口と第3の出口との間が遮断された第2の状態とに切替可能な三方弁が備えられ、
該三方弁での第1の出口から第3の出口までの流路が、水素搬送経路を構成し、且つ、第1の出口が電気分解モジュール100の側となるように水素ガス排出配管L3に三方弁が備えられている。
そのため、図11Cに例示の電気分解モジュール100を備えた水素・酸素発生装置1では、それぞれの三方弁の第2の出口を固体高分子電解質膜の検査におけるガスの出入り口として利用することができる。
以下にこれらのような電気分解モジュール100での検査の一例を挙げる。
【0082】
図11Aに例示の電気分解モジュール100は、前記固体高分子電解質膜のガス透過性を測定するのに際し、まず、当該電気分解モジュール100の運転を停止する。
このとき、陽極側での水の循環は継続し、陽極室に残留している酸素ガスをできるだけ追い出すようにしてもよい。
酸素ガスが十分に電気分解モジュール100から排出された後は、電気分解モジュール100への水の供給を一旦停止し、水の還流経路となる給水配管L1と酸素ガス排出配管L2との開閉弁(給水弁V1、酸素ガス排出弁V2)を閉止する。
次いで、給水分岐経路L11にパイプを接続し、別途用意した水槽にこのパイプの先端部を浸漬させる。なお、パイプは特に材質や形状は限定されず、例えばポリテトラフロロエチレンチューブ等の市販品を用いることができる。
次いで、水素ガス排出配管L3の開閉弁を閉止し、水素ガス分岐経路L31を窒素ガスボンベに接続し、陰極室側を所定の加圧状態にする。
検査する際に陰極室側に発生させる圧力は、窒素ガスボンベにレギュレーターなどを設けて調整することができる。
この状態でパイプから規定量を超える気泡が排出されるようであれば、陰極室から陽極室へと通常での量を超えて窒素ガスが透過したとみなすことができ、ピンホール等が存在していて十分な健全性を備えていないと判断することができる。
そして、パイプの先端から放出される気泡(窒素ガス)の単位時間当たりの量を測定することで、各ブロックにおいてどの程度の窒素ガスの漏洩が生じているかを確認することができる。
【0083】
図11Bに例示の電気分解モジュール100は、前記固体高分子電解質膜のガス透過性を測定するのに際し、まず、当該電気分解モジュール100の運転を停止する。
このとき、陽極側での水の循環は継続し、陽極室に残留している酸素ガスをできるだけ追い出すようにしてもよい。
酸素ガスが十分に電気分解モジュール100から排出された後は、電気分解モジュール100への水の供給を一旦停止し、水の還流経路となる酸素ガス排出配管L2の開閉弁を閉止する。
次いで、酸素ガス分岐経路L21にパイプを接続し、別途用意した水槽にこのパイプの先端部を浸漬させる。酸素ガス分岐経路L21は、各ブロックに2つずつ設けられているが、パイプを接続するのは各ブロック1つずつであってもよい。その場合、パイプの接続されていない酸素ガス分岐経路L21では、開閉弁を閉状態にし、パイプの接続されている酸素ガス分岐経路L21の方だけを開閉弁を開状態にする。なお、パイプは特に材質や形状は限定されず、例えばポリテトラフロロエチレンチューブ等の市販品を用いることができる。
尚、パイプは、酸素ガス分岐経路L21に接続せず、各ブロックに2つずつ設けられている給水分岐経路L11の一方に接続してもよい。
検査する際に陰極室側に発生させる圧力は、窒素ガスボンベにレギュレーターなどを設けて調整することができる。
この状態でパイプから規定量を超える気泡が排出されるようであれば、陰極室から陽極室へと通常での量を超えて窒素ガスが透過したとみなすことができ、ピンホール等が存在していて十分な健全性を備えていないと判断することができる。
陰極室から陽極室へと移動した窒素ガスを速やかに排出させるために、給水配管L1による陽極室への水の供給は、検査が終了するまで継続してもよい。
そして、パイプの先端から放出される気泡(窒素ガス)の単位時間当たりの量を測定することで、各ブロックにおいてどの程度の窒素ガスの漏洩が生じているかを確認することができる。
【0084】
図11Cに示した電気分解モジュール100でも上記と同様にピンホールの検査を行うことができる。前記検査で、前記陰極室が前記陽極室に比べて高い圧力となるように前記陰極室に検査用のガスを供給し、陽極室には水を供給して陰極室から陽極室へと移動した検査用のガスを電気分解モジュール100から速やかに排出させてもよい点についても上記と同じである。
【0085】
図2などに例示の電気分解モジュール100では、セルスタック110が2つのブロックに分割されているが、より多くの電解セル10の使用期間を長期化させるべく、図10に示すようにセルスタック110を3つのブロックに分割するようにしてもよい。即ち、前記中間板150は、1枚である必要はなく、図10に示すように複数枚であってもよい。
【0086】
図10に示す態様においては、第1中間板150’と第2中間板150”とを含む複数枚の中間板150を有し、セルスタック110が区切られて出来たブロックが中間板150とエンドプレート120との間だけでなく、第1中間板150’と第2中間板150”との中間板150どうしの間にも形成されている。
【0087】
図10に示す電気分解モジュール100は、第1エンドプレート121と中間板150との間に第1ブロック111を有し、第2エンドプレート122と中間板150との間に第2ブロック112を備えている点においては図2に示した電気分解モジュール100と共通している。図10に示す電気分解モジュール100は、第1エンドプレート121とともに第1ブロック111を画定している第1中間板150’と、第2エンドプレート122とともに第2ブロック112を画定している第2中間板150”との2つの中間板150を備え、該2つの中間板150の間に第3ブロック113を有している点において図2に例示の電気分解モジュール100と異なっている。
【0088】
隣り合うブロック間に複数枚の中間板150を介装してブロックの固定を行わせることが可能であることは図10におけるような態様においても同じである。即ち、本実施形態においては、隣り合うブロック間を仕切る中間板150として先述の上板150aと下板150bとのような複数枚の中間板150が重ねて備えられており、該中間板150(上板150aや下板150b)と、該中間板150が接するブロックの反対側に設けられた他の中間板150又はエンドプレートとの間をボルト、ナットなどの締結具で締結可能に構成され、電気分解モジュール100の解体時にブロックを固定したまま解体可能に構成されていることで、交換が必要なブロックの取り換えが容易になり得る。そして、この点については、ブロックが3以上設けられている場合も同じである。
【0089】
第1中間板150’と、第2中間板150”とのそれぞれは、ガス非透過性で電極板14と同じであることが好ましい点や純チタン、チタン合金などの導電性を有する素材で構成されることが好ましい点、及び、水素ガス排出経路に対応する位置に通気部を有している点において図2に例示の電気分解モジュール100の中間板150と共通している。
【0090】
図10に示す電気分解モジュール100でのセルスタック110において、第1ブロック111と第3ブロック113との2つのブロックを区切っている第1中間板150’は、当該第3ブロック113での水供給経路130に連通する水供給口101(第3水供給口101c)と第3ブロック113での酸素ガス排出経路140に連通する酸素ガス排出口102(第3酸素ガス排出口102c)とを備えている点で図2に例示の電気分解モジュール100の中間板150とは相違している。一方で第3ブロック113と第2ブロック112との2つのブロックを区切っている第2中間板150”は、図2に例示の電気分解モジュール100の中間板150と同様の構造を有している。即ち、図10に示す電気分解モジュール100は、陽極側の空間がブロックごとに独立している一方で陰極側の空間がブロック間で連通して全体で一つの空間を形成している点においても図2に例示の電気分解モジュール100と共通している。
【0091】
図10に示す第1中間板150’は、前記水供給口101と前記酸素ガス排出口102とを有し、該第1中間板150’に隣接する2つの前記ブロックの内の一方のブロックに水を供給し得るように構成されているとともに該一方のブロックから酸素ガスを排出し得るように構成されている。そのため、例えば、第1中間板150’と第2中間板150”との間に第1中間板150’と同様に水供給口101と酸素ガス排出口102とを備えた第3中間板を更に介挿し、第3ブロック113を更に区切って合計4ブロックとなるようにしても、図10での第3ブロック113を第1ブロック111と第2ブロック112との間に上下に2つ並べて配置したような状態にすることができる。
【0092】
即ち、第1中間板150’は、セルスタック110の途中に介装させるだけで水供給経路130と酸素ガス排出経路140とをそれぞれセルスタック110の積層方向における途中で分断することができ、当該第1中間板150’を介してそれぞれ2つに分断された水供給経路130と酸素ガス排出経路140との一方に連通可能な水供給口101と酸素ガス排出口102とを備えるため、セルスタック110の任意の位置に介装することで一つのブロックを形成することができる。そして、このように3つ以上のブロックが形成される場合も、図2に示すような電気分解モジュール100と同様に陰極室と、陽極室との間に圧力差を生じさせて固体高分子電解質膜の検査を容易に行うことができる。
【0093】
この第1中間板150’にも給水配管L1や酸素ガス排出配管L2などが接続されるため、分岐経路を設けたり三方弁を介して配管を接続したりすれば、図11A図11Cに例示の機構を当該第1中間板150’にも付与することができ、各配管を第1中間板150’から取り外すことなく検査を実施することができる。
【0094】
尚、本実施形態での水素・酸素発生装置や水素ガス製造方法についての上記のような例示は、あくまで限定的な例示に過ぎない。したがって、本発明の水素・酸素発生装置や水素ガス製造方法は、上記例示に何等限定されるものではない。
【0095】
上記のように本明細書においては、以下のような開示を含む。
【0096】
(1)
水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電気分解モジュールを備え、
前記電気分解モジュールが前記酸素ガスを排出する酸素ガス排出口と前記水素ガスを排出する水素ガス排出口とを備え、
該電気分解モジュールには、複数の電解セルが積層されたセルスタックが備えられ、
前記複数の電解セルのそれぞれは、固体高分子電解質膜と、該固体高分子電解質膜を介して隣り合う陰極室と陽極室とを備え、前記陽極室に水が供給されて該陽極室から前記酸素ガスが排出されるとともに前記陰極室から前記水素ガスが排出されるように構成され、
前記セルスタックには、前記複数の電解セルが積層されている方向に前記電解セルを貫通し、それぞれの前記電解セルの前記陰極室と連通する水素ガス排出経路が備えられ、
前記複数の電解セルのそれぞれの前記陰極室で発生された前記水素ガスが前記水素ガス排出経路を通じて前記水素ガス排出口より排出されるように構成されている水素・酸素発生装置であって、
前記セルスタックの積層方向の一端側と他端側との間に介装された1枚又は複数枚の中間板を更に備え、
該中間板によって前記セルスタックが複数のブロックに区切られ、
前記電気分解モジュールには、前記複数のブロックのそれぞれに前記水を供給するための複数の水供給口と、前記複数のブロックのそれぞれから前記酸素ガスを排出するための複数の前記酸素ガス排出口とが備えられ、
前記中間板が、ガス非透過性の素材で構成され、且つ、前記水素ガス排出経路に対応する位置に前記水素ガスを通過させるための通気部を有しており、
前記水と前記酸素ガスとのブロック間での移動を規制しつつ前記複数のブロックから排出される前記水素ガスを前記水素ガス排出口から排出できるように構成されている、水素・酸素発生装置。
【0097】
(2)
前記電気分解モジュールが第1エンドプレートと第2エンドプレートとの2つのエンドプレートを備え、
該電気分解モジュールでは、前記電解セルが積層されている方向での前記セルスタックの両端部にそれぞれ前記第1エンドプレートと前記第2エンドプレートとが配されており、
前記セルスタックを前記第1エンドプレート側の第1ブロックと前記第2エンドプレート側の第2ブロックとの2つの前記ブロックに区切るべく前記中間板が前記セルスタックの一箇所にのみ介装され、
前記第1ブロックの前記水供給口と前記酸素ガス排出口とが前記第1エンドプレートに開口され、
前記第2ブロックの前記水供給口と前記酸素ガス排出口とが前記第2エンドプレートに開口され、
前記水素ガス排出口が前記第1エンドプレートに開口されている(1)記載の水素・酸素発生装置。
【0098】
(3)
前記中間板に前記水供給口と前記酸素ガス排出口とが設けられ、該中間板に隣接する2つの前記ブロックの内の一方のブロックに該中間板を通じて水を供給し得るように構成されているとともに該一方のブロックから前記中間板を通じて前記酸素ガスを排出し得るように構成されている(1)記載の水素・酸素発生装置。
【0099】
(4)
前記電気分解モジュールは、前記セルスタックが複極式電解セルで構成され、前記中間板が導電性を有する素材で構成されており、前記複数のブロックに対して一つの電力系統で給電できるように構成されている(1)乃至(3)の何れか1つに記載の水素・酸素発生装置。
【0100】
(5)
水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる電気分解モジュールを備えた水素・酸素発生装置で水素ガスを製造する水素ガス製造方法であって、
前記水素・酸素発生装置は、
前記電気分解モジュールが前記酸素ガスを排出する酸素ガス排出口と前記水素ガスを排出する水素ガス排出口とを備え、
該電気分解モジュールには、複数の電解セルが積層されたセルスタックが備えられ、
前記複数の電解セルのそれぞれは、固体高分子電解質膜と、該固体高分子電解質膜を介して隣り合う陰極室と陽極室とを備え、前記陽極室に水が供給されて該陽極室から前記酸素ガスが排出されるとともに前記陰極室から前記水素ガスが排出されるように構成され、
前記セルスタックには、前記複数の電解セルが積層されている方向に前記電解セルを貫通し、それぞれの前記電解セルの前記陰極室と連通する水素ガス排出経路が備えられ、
前記複数の電解セルのそれぞれの前記陰極室で発生された前記水素ガスが前記水素ガス排出経路を通じて前記水素ガス排出口より排出されるように構成されており、
前記セルスタックの積層方向の一端側と他端側との間に介装された1枚又は複数枚の中間板を更に備え、
該中間板によって前記セルスタックが複数のブロックに区切られ、
前記電気分解モジュールには、前記複数のブロックのそれぞれに前記水を供給するための複数の水供給口と、前記複数のブロックのそれぞれから前記酸素ガスを排出するための複数の前記酸素ガス排出口とが備えられ、
前記中間板が、ガス非透過性の素材で構成され、且つ、前記水素ガス排出経路に対応する位置に前記水素ガスを通過させるための通気部を有しており、
当該水素・酸素発生装置が、前記水と前記酸素ガスとのブロック間での移動を規制しつつ前記複数のブロックから排出される前記水素ガスを前記水素ガス排出口から排出できるように構成され、
前記電気分解モジュールを運転して水素ガスを製造することと、
前記電気分解モジュールの運転を停止して前記固体高分子電解質膜を検査することとを実施し、
前記検査では、前記陰極室と前記陽極室との間に圧力差を生じさせて前記固体高分子電解質膜のガス透過性を測定する水素ガス製造方法。
【0101】
(6)
前記検査では、前記陰極室が前記陽極室に比べて高い圧力となるように前記陰極室に窒素ガスを供給して前記ガス透過性を測定する請求項5記載の水素ガス製造方法。
【0102】
以上のような本発明では、水素・酸素発生装置での電解セルの使用期間の長期化を図ることができ、水素ガスの製造効率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0103】
10:電解セル、11:固体高分子電解質膜、12:陰極室、13:陽極室、14:電極板、
100:電気分解モジュール、101:水供給口、102:酸素ガス排出口、103:水素ガス排出口、
110:セルスタック、111:第1ブロック、112:第2ブロック、
120:エンドプレート、130:水供給経路、140:酸素ガス排出経路、
150:中間板、151:通気部、
160:水素ガス排出経路
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C