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特開2024-90752重症度スコア出力方法及び重症度スコア出力装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090752
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】重症度スコア出力方法及び重症度スコア出力装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/60 20180101AFI20240627BHJP
【FI】
G16H10/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206842
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 有美
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】礒田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】星野 亮介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 咲由美
(72)【発明者】
【氏名】本城 友基
(72)【発明者】
【氏名】宗片 大地
(72)【発明者】
【氏名】成田 明弘
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA23
(57)【要約】
【課題】医療従事者に患者の重症度の改善傾向又は悪化傾向を分かり易く把握させることができる、重症度スコア出力方法及び重症度スコア出力装置を提供すること。
【解決手段】重症度スコア出力装置10は、重症度スコアをスコアの大きさに基づいて複数のゾーンに区分けするゾーニング部11と、異なる期間における患者の重症度スコアを取得し、当該異なる期間における重症度スコアを時間方向に並べる重症度スコア形成部12と、時間方向に並べられた重症度スコアのそれぞれが、区分けされた複数のゾーンのどのゾーンに属するかが識別可能な画像を出力する画像出力部13と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の重症度スコアを出力する重症度スコア出力方法であって、
前記重症度スコアを、スコアの大きさに基づいて複数のゾーンに区分けするゾーニングステップと、
異なる期間における前記患者の前記重症度スコアを取得し、当該異なる期間における重症度スコアを時間方向に並べる重症度スコア形成ステップと、
時間方向に並べられた前記重症度スコアのそれぞれが、区分けされた前記複数のゾーンのどのゾーンに属するかが識別可能な画像を出力する画像出力ステップと、
を含む、重症度スコア出力方法。
【請求項2】
前記ゾーニングステップでは、前記患者に施された処置に応じて前記ゾーンの区分けを変更する、
請求項1に記載の重症度スコア出力方法。
【請求項3】
前記患者に施された処置には、薬剤の投与が含まれる、
請求項2に記載の重症度スコア出力方法。
【請求項4】
前記患者に施された処置には、輸血が含まれる、
請求項2に記載の重症度スコア出力方法。
【請求項5】
前記ゾーニングステップでは、前記患者に処置が施されると、前記患者の重症度スコアが重症度の重いゾーンに属する方向に前記ゾーンの区分けを変更する、
請求項2に記載の重症度スコア出力方法。
【請求項6】
前記ゾーニングステップでは、前記患者に処置が施されたときには前記患者の重症度スコアが重症度の重いゾーンに属する方向に前記ゾーンの区分けを変更するとともに、前記患者への処置が終了されてから所定時間経過後に前記ゾーンの区分けを変更前に戻す、
請求項2に記載の重症度スコア出力方法。
【請求項7】
前記重症度スコア形成ステップでは、
所定期間に測定された複数の器官系のスコアを積み上げた積み上げ棒グラフを形成し、異なる期間に関する積み上げ棒グラフを時間方向に並べる、
請求項1に記載の重症度スコア出力方法。
【請求項8】
前記重症度スコア形成ステップでは、
さらに、前記時間方向に並べた異なる期間の前記積み上げ棒グラフを直線で繋ぐことで、前記重症度スコアの経時的変化を折れ線グラフの形式で表現する、
請求項7に記載の重症度スコア出力方法。
【請求項9】
患者の重症度スコアを出力する重症度スコア出力装置であって、
前記重症度スコアを、スコアの大きさに基づいて複数のゾーンに区分けするゾーニング部と、
異なる期間における前記患者の前記重症度スコアを取得し、当該異なる期間における重症度スコアを時間方向に並べる重症度スコア形成部と、
時間方向に並べられた前記重症度スコアのそれぞれが、区分けされた前記複数のゾーンのどのゾーンに属するかが識別可能な画像を出力する画像出力部と、
を備える、重症度スコア出力装置。
【請求項10】
前記ゾーニング部は、前記患者に施された処置に応じて前記ゾーンの区分けを変更する、
請求項9に記載の重症度スコア出力装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療に用いられる重症度スコア出力方法及び重症度スコア出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療現場における集中治療科や救急科、さらには診療科では、患者の重症度を評価するスコア(指標)として、「SOFA(Sequntial Organ Failure Assessment score)」、「Quick SOFA」、「APACHE(Acute Physiology And Chronic Health Evaluation)」、「APACHE II」、「EWS(Early Warning Score)」などが用いられている。これらの重症度スコアについては、特許文献1などに記載されている。
【0003】
例えば、SOFAスコアは、呼吸系、凝固系、肝臓、循環系、中枢神経系、腎臓の6つの臓器の障害の程度をスコア化したものであり、敗血症などによる臓器障害の評価方法として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-81977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のSOFAのスコアは、表形式で数値として表示される。
【0006】
そのため、患者の重症度がどの程度の改善傾向又は悪化傾向にあるのかを把握するには不便であった。
【0007】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであり、医療従事者に患者の重症度の改善傾向又は悪化傾向を分かり易く把握させることができる、重症度スコア出力方法及び重症度スコア出力装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の重症度スコア出力方法の一つの態様は、
患者の重症度スコアを出力する重症度スコア出力方法であって、
前記重症度スコアを、スコアの大きさに基づいて複数のゾーンに区分けするゾーニングステップと、
異なる期間における前記患者の前記重症度スコアを取得し、当該異なる期間における重症度スコアを時間方向に並べる重症度スコア形成ステップと、
時間方向に並べられた前記重症度スコアのそれぞれが、区分けされた前記複数のゾーンのどのゾーンに属するかが識別可能な画像を出力する画像出力ステップと、
を含む。
【0009】
本開示の重症度スコア出力装置の一つの態様は
患者の重症度スコアを出力する重症度スコア出力装置であって、
前記重症度スコアを、スコアの大きさに基づいて複数のゾーンに区分けするゾーニング部と、
異なる期間における前記患者の前記重症度スコアを取得し、当該異なる期間における重症度スコアを時間方向に並べる重症度スコア形成部と、
時間方向に並べられた前記重症度スコアのそれぞれが、区分けされた前記複数のゾーンのどのゾーンに属するかが識別可能な画像を出力する画像出力部と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、医療従事者に患者の重症度の改善傾向又は悪化傾向を分かり易く把握させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る重症度スコア出力装置が適用される病院情報システムの概要を示す図
図2】実施の形態の重症度スコア出力装置の機能ブロック図
図3】ゾーンの区分けの説明に供する図
図4】患者の重症度出力画像の例を示す図
図5】従来のデータ収集の説明に供する図
図6】実施の形態の従来のデータ収集の説明に供する図
図7】他の実施の形態による患者の重症度出力画像の例を示す図
図8】他の実施の形態による患者の重症度出力画像の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
<1>システムの全体構成
図1は、本発明の実施の形態に係る重症度スコア出力装置が適用される病院情報システム(hospital information system; HIS)の概要を示す図である。図1の病院情報システムは、電子カルテシステムを上位システムとして、医事会計システム、放射線システム、中央検査システム、オーダリングシステム、物流管理システム及び急性期部門システム1がオンライン接続されている。
【0014】
急性期部門システム1はデータベースサーバー100を有する。データベースサーバー100は、データ交換器としてのゲートウェイサーバー101を介して上述の電子カルテシステムやオーダリングシステム等の病院情報システムに含まれる他のシステムと通信可能に接続されている。
【0015】
データベースサーバー100は、集中治療室(ICU (Intensive Care Unit))、救命救急室(ER (emergency room))のデータを一元管理する。なお、以下では集中治療室をICU、救命救急室をERと略記する。
【0016】
ICU及びERには、人工呼吸器200や生体情報モニター210が設けられており、これらが変換モジュール220を介してデータベースサーバー100にオンライン接続されている。なお、図では、ERの人工呼吸器、生体情報モニター等は省略して示してある。ICU及びERには、図示しない大動脈バルーンポンプ、経皮的心肺補助装置、体外式膜型人工肺等が設けられており、これらが図示しない変換モジュールを介してデータベースサーバー100にオンライン接続されている。
【0017】
データベースサーバー100は、ICU、ERに設けられた人工呼吸器200や生体情報モニター210、血液ガス分析装置(図示せず)等のデータをオンラインで収集して一元管理する。また、データベースサーバー100は、ゲートウェイサーバー101を介して電子カルテシステムや、中央検査システム等から患者属性や各種検査データ、薬剤オーダー、手術オーダー等のデータを取得可能となっている。さらには、急性期部門システム1からのデータを病院情報システムに含まれる他のシステムに送信することも可能となっている。
【0018】
端末103、104は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CPU(Central Processing Unit)等を有し、CPUがROMに保持されたプログラムを実行することにより、重症度スコア出力装置としての機能を実現する。つまり、端末103や端末104に、本実施の形態の重症度スコア出力装置を実現するためのプログラムが組み込まれ、これにより端末103や端末104は、後述するような重症度スコアを表す画像を形成し表示する。
【0019】
また、端末103や端末104によって出力された重症度スコアを表す画像は、データベースサーバー100によって記録される。また、この重症度スコアを表す画像は、Webサーバー102を介して院内又は外部の端末で参照することもできる。
【0020】
<2>重症度スコア出力装置
図2は、本実施の形態の重症度スコア出力装置10の機能ブロック図である。実際には、上述したように本実施の形態の重症度スコア出力装置10は、端末103や端末104等に組み込まれたプログラム等によって実現される。
【0021】
重症度スコア出力装置10は、ゾーニング部11と、重症度スコア形成部12と、画像出力部13と、を有する。
【0022】
ゾーニング部11は、重症度スコアを、スコアの大きさに基づいて複数のゾーンに区分けする。具体的には、ゾーニング部11は、図3に示すように、重症度スコアのグラフ表示領域を、重度ゾーン、中度ゾーン、軽度ゾーンに区分けする。なお、グラフ表示領域は、縦軸が重症度スコアであり、横軸が時間である。区分けされた重度ゾーン、中度ゾーン、軽度ゾーンは、異なる色で表示される。
【0023】
実施の形態の例では、基本的には、SOFAスコアが9点以下の領域を軽度ゾーン、11点以上の領域を重度ゾーン、9点と11点の間の領域を中度ゾーンとしている。なお、この重度ゾーン、中度ゾーン、軽度ゾーンを区分けするSOFAスコアの値は適宜設定可能である。
【0024】
加えて、ゾーニング部11は、患者に施された処置に応じてゾーンの区分けを変更する。例えば、患者に薬剤が投与された場合や、輸血が行われた場合には、重度ゾーンが下方に拡大するように、ゾーンの区分けが変更される。図3において、段差となっている箇所がゾーンの区分けの変更箇所である。このゾーンの区分けの変更については、後で詳しく説明する。
【0025】
重症度スコア形成部12は、異なる期間における患者の重症度スコアを取得し、当該異なる期間における重症度スコアを時間方向に並べる。具体的に説明する。重症度スコア形成部12は、患者の生体情報、及び機器情報を入力し、これらに基づいてSOFAスコアを算出する。入力される患者の生体情報、及び機器情報は、図4の中段の表部分に表示されているような、動脈血液ガス分析結果(PaO2/FiO2)すなわちP/F比、人工呼吸器の補助の有無情報、血小板数、ビリルビン値、平均動脈圧、意識レベル(GCS)、クレアチニン値、尿量である。
【0026】
重症度スコア形成部12は、これらの入力情報に基づいて、呼吸系、凝固系、肝臓、循環系、中枢神経系、腎臓の臓器障害のスコアを算出し、それらのスコアの合計値であるSOFAスコアを算出する。このSOFAスコアの算出処理は、従来と同様の処理である。
【0027】
本実施の形態の重症度スコア形成部12は、図4に示したように、呼吸系、凝固系、肝臓、循環系、中枢神経系、腎臓の臓器障害のスコアを積み上げた積み上げ棒グラフを作成する。積み上げ棒グラフは、呼吸系、凝固系、肝臓、循環系、中枢神経系、腎臓の臓器障害のそれぞれのスコアがそれぞれ色分けされている。これにより、医療従事者は、棒グラフ上でスコアの内容を認識できる。
【0028】
また、本実施の形態の重症度スコア形成部12は、従来のSOFAの算出とは、データ収集期間が異なる。これを、図5及び図6を用いて説明する。図5は、従来のデータ収集を示したものであり、図6は、本実施の形態の重症度スコア形成部12によるデータ収集を示したものである。
【0029】
図5に示したように、従来のSOFAスコアを算出する日時は、医師等の医療従事者によって決められる。SOFAスコアは、呼吸系、凝固系、肝臓、循環系、中枢神経系、腎臓それぞれについて、24時間以内で最も悪い値を抽出し、それらのスコアを合計して求められる。そのため、医療従事者が決めるSOFAスコアを算出する日時の間隔(前回の算出日時から今回の算出日時までの間隔)が24時間を超える場合には、図5に示したように、データを収集できないデータ非収集期間が存在する。この結果、データ非収集期間内に患者の容態が悪化した場合には、それがSOFAスコアに反映されないので、患者の容態の悪化を見落とされてしまうといった不都合が生じる。
【0030】
これに対して、図6に示したように、本実施の形態の重症度スコア形成部12は、毎日、決まった時間にSOFAスコアを算出する。本実施の形態の例では、0時にSOFAスコアを算出する。このように、本実施の形態では、24時間間隔の決まった時間にSOFAスコアを算出するので、データを収集できないデータ非収集期間が存在しない。よって、患者の容態の悪化の見落しを防止できる。ちなみに、隣り合うデータ収集期間は一部が重なっていてもよい。
【0031】
重症度スコア形成部12は、1つのデータ収集期間で収集したデータに基づいて1つのSOFAスコア及びそれに基づく積み上げ棒グラフを作成する。重症度スコア形成部12は、経時的にそれを繰り返すことで、複数のデータ収集期間で収集したデータに基づいて複数のSOFAスコア及びそれに基づく積み上げ棒グラフを作成する。
【0032】
画像出力部13は、時間方向に並べられた重症度スコアのそれぞれが、区分けされた複数のゾーンのどのゾーンに属するかが識別可能な画像を出力する。本実施の形態の場合、画像出力部13は、ゾーニング部11によって得られたゾーン分けされたゾーン領域情報(重度ゾーン、中度ゾーン、軽度ゾーン)と、重症度スコア形成部12によって得られた複数期間のSOFAスコア及びその積み上げ棒グラフと、生体情報及び機器情報と、を入力する。そして、画像出力部13は、これらを図4に示したような画像として表示部に出力する。なお、画像は印刷部に出力してもよい。
【0033】
図4の出力画像について詳しく説明する。図4の画像では、ある患者の重症度スコアの経時的変化が表されている。画像において、上段はグラフ表示領域、中段は数値表示領域、下段は投薬及び輸血表示領域となっている。
【0034】
本実施の形態で特徴的なのは、グラフ表示領域である。グラフ表示領域は、ゾーニング部11によって区分けされたゾーンを背景にして、重症度スコア形成部12によって形成された積み上げ棒グラフが時間方向に並べて配置されている。これにより、医療従事者は、患者の重症度合いを速やかに認識できるようになる。つまり、積み上げ棒グラフの上端がどのゾーンに属するかによって患者の経時的な重症度の変化を速やかに認識できる。
【0035】
また、本実施の形態は、隣り合う積み上げ棒グラフの上端を直線で繋ぐ。このようにすることで、医療従事者は、折れ線グラフの傾きに基づいて、症状の悪化又は改善のスピードを把握できるようになる。
【0036】
さらに、本実施の形態で特徴的な点は、患者に施された処置に応じてゾーンの区分けを変更することである。例えば、血小板数は輸血したときにスコアが改善する方向に変動する。しかし、それは輸血に起因する一時的なスコアの改善であって患者の重症度が改善しているとは言い難い。そこで、そのような患者のスコアが一時的に改善する処置を行った場合には、患者の重症度スコアが重症度の重いゾーンに属する方向にゾーンの区分けを変更する。具体的には、図3から分かるように重度ゾーンを拡大し、軽度ゾーンを縮小する。
【0037】
輸血と同様に、中枢神経系のスコアは、患者に薬剤を投与したときは一時的に改善する。しかし、それは薬剤の投与に起因する一時的なスコアの改善であって患者の重症度が改善しているとは言い難い。そこで、薬剤を投与した場合には、患者の重症度スコアが重症度の重いゾーンに属する方向にゾーンの区分けを変更する。具体的には、図3から分かるように重度ゾーンを拡大し、軽度ゾーンを縮小する。
【0038】
また、患者に処置が施されたときには患者の重症度スコアが重症度の重いゾーンに属する方向にゾーンの区分けを変更するとともに、患者への処置が終了されてから所定時間経過後にゾーンの区分けを変更前に戻すようにすると好ましい。この様子は、図3からも分かる。つまり、図3の重度ゾーンは、薬剤の投与や輸血が施されたときには拡大されており、薬剤の投与や輸血が終了した後は元に戻されている。
【0039】
より詳しく説明する。時点1では、利尿剤が投与され、この利尿剤は尿量に影響するためゾーンを下方に移動する。時点2では、輸血が行われ、輸血は血小板数、循環系、尿量等に影響するためゾーンを下方に移動する。時点3では、輸血の終了に伴いゾーンを上方に移動する(戻す)。時点4では、輸血終了の1日経過後にゾーングを上方へ移動する。時点5では、昇圧剤の投与が開始されたのでゾーンを下方へ移動する。ここで、薬剤の投与や輸血による、ゾーンの移動タイミング及び移動幅、復帰時間等は、ユーザーによって適宜設定され得る。
【0040】
<3>まとめ
以上説明したように、本実施の形態によれば、重症度スコア出力装置10は、重症度スコア(SOFAスコア)をスコアの大きさに基づいて複数のゾーンに区分けするゾーニング部11と、異なる期間における患者の重症度スコア(SOFAスコア)を取得し、当該異なる期間における重症度スコア(SOFAスコア)を時間方向に並べる重症度スコア形成部12と、時間方向に並べられた重症度スコア(SOFAスコア)のそれぞれが、区分けされた複数のゾーンのどのゾーンに属するかが識別可能な画像を出力する画像出力部13と、を有する。
【0041】
これにより、医療従事者に患者の重症度の改善傾向又は悪化傾向を分かり易く把握させることができるようになる。つまり、従来は、単に表形式で表されていた重症度スコア(SOFAスコア)を、どのゾーンに属するかで重症度の分類を行うことができるので、重症度の改善傾向又は悪化傾向を分かり易く把握できるようになる。
【0042】
また、患者に施された処置に応じてゾーンの区分けを変更するようにしたので、処置によって一時的に改善した重症度スコア(SOFAスコア)による影響を受けずに、的確な重症度のゾーン分類を行うことができるゾーンを形成できる。
【0043】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0044】
図7は、データ収集期間内の一部のデータが欠落している場合の表示例を示す。図7では、11月1日のデータ収集期間において、ビリルビン値及び平均動脈圧のデータを収集できなかった例が示されている。この場合、一部のデータが欠落した日時の積み上げ棒グラフは、データが欠落していない積み上げ棒グラフと区別できるように、表示形態を変えて表示する。図7の例では、積み上げ棒グラフが点線で表示されている。このように、一部のデータが欠落した日時の積み上げ棒グラフを表示することにより、その積み上げ棒グラフを表示しない場合と比較して、非常に悪いスコアがある場合に、その見落としを防ぐのに有利である。ただし、一部のデータが欠落した日時の積み上げ棒グラフは、SOFAスコアの増減傾向を把握する上ではノイズとなり得るので、折れ線グラフで結ばないようにすることが好ましい。
【0045】
上述の実施の形態では、24時間毎に重症度スコア(SOFAスコア)を算出し、それを積み上げ棒グラフ形式で表示する場合について説明したが、重症度スコア(SOFAスコア)の算出間隔は24時間よりも短くてもよい(つまりデータ収集時間が重なっていてもよい)。その場合の表示画像の例を図8に示した。
【0046】
上述の実施の形態では、SOFAスコアのグラフを、呼吸系、凝固系、肝臓、循環系、中枢神経系、腎臓の臓器障害のそれぞれのスコアがそれぞれ色分けされた積み上げ棒グラフの形式で表示する場合について述べたが、これに限らない。SOFAスコアのグラフは、単なる棒グラフでもよく、または棒グラフは表示せずに図4の折れ線グラフを表示してもよい。
【0047】
上述の実施の形態では、重症度スコアのグラフ表示領域を、重度ゾーン、中度ゾーン及び軽度ゾーンの3つに区分けする場合について述べたが、これに限らず、重度ゾーン及び軽度ゾーンの2つに区分けしてもよく、4つ以上のゾーンに区分けしてもよい。
【0048】
上述の実施の形態では、積み上げ棒グラフの背景色を変えることでゾーン分けを行ったが、本開示はこれに限らない。例えば、積み上げ棒グラフがどのゾーンに属するかに応じて積み上げ棒グラフの色を変えてもよい。ただし、上述の実施の形態のように、背景色によりゾーン分けを行うと、患者に処置が施されたときにゾーンの区分けを変更したことを医療従事者が認識できるといったメリットがある。
【0049】
上述の実施の形態では、重症度スコアとしてSOFAを用いた場合について述べたが、本開示の重症度スコア出力方法及び重症度スコア出力装置は、重症度スコアとしてSOFA以外にも、例えばQuick SOFA、APACHE、APACHE II、EWSなどを用いた場合にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示の重症度スコア出力方法及び重症度スコア出力装置は、医療従事者に患者の重症度の改善傾向又は悪化傾向を分かり易く把握させることができる方法及び装置として有用である。
【符号の説明】
【0051】
10 重症度スコア出力装置
11 ゾーニング部
12 重症度スコア形成部
13 画像出力部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8