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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090767
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/188 20210101AFI20240627BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20240627BHJP
   H01M 50/553 20210101ALI20240627BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20240627BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20240627BHJP
【FI】
H01M50/188
H01M50/176
H01M50/553
H01M50/184 A
H01M50/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206862
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】永野 泰章
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011GG02
5H011HH02
5H011JJ02
5H043AA19
5H043CA04
(57)【要約】
【課題】高い品質の電池を安定して製造できる電池の製造方法を提供すること。
【解決手段】蓋体10、端子部材20におけるシール樹脂部材30との接触範囲の少なくとも一部にはそれぞれ、凹凸部15a、凹凸部26aが形成されている。電池1を製造する際には、蓋体10に対してシール樹脂部材30および端子部材20を取り付ける。その際、端子口13の中に管状部32が位置しそのさらに内部に柱状部22が位置する状態とする。また、柱状部22よび管状部32のそれぞれ一部が蓋体10の内面12側に突出する状態とする。さらに、シール樹脂部材30のうち少なくとも管状部32の先端部37および凹凸部15a、凹凸部26aに接している部分を昇温させて軟化させる。加えて、軟化している状態にて管状部32の先端部37を蓋体10の内面12に向けて加圧することにより、そこに抜け止め形状部33を形成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素と、前記発電要素を収納するとともに端子口が形成されている外装体と、前記外装体の内部で前記発電要素に接続されるとともに、前記端子口を貫通して部分的に前記外装体の外部に突出している端子部材と、前記端子口にて前記外装体と前記端子部材との間の隙間を塞いでいるシール樹脂部材とを有する電池を製造する電池の製造方法であって、
前記端子部材として、
前記端子口の中に位置する柱状部と、
前記柱状部と繋がって前記外装体の外部に位置し、外部に露出する露出面が形成されている在外部とを有するものを用い、
前記シール樹脂部材として、
前記露出面を露出させつつ前記在外部を前記外装体から離間させて保持する保持部と、
前記保持部と繋がっており、前記端子口の壁面と前記柱状部との間に位置し、前記端子口の箇所における前記外装体の厚さより長い管状形状の管状部とを有するものを用い、
前記外装体および前記端子部材の少なくとも一方における前記シール樹脂部材との接触範囲の少なくとも一部に表面が凹凸形状である凹凸部が形成されており、
前記外装体に対して前記シール樹脂部材および前記端子部材を取り付けて、
前記端子口の中に前記管状部が位置しそのさらに内部に前記柱状部が位置するとともに、
前記外装体の外面側にて前記在外部が前記保持部に保持され、
前記柱状部および前記管状部のそれぞれ一部が前記外装体の内面側に突出する状態とし、
前記シール樹脂部材のうち少なくとも前記管状部のうち前記外装体の内面側に突出している部分および前記凹凸部に接している部分を昇温させて軟化させ、
軟化している状態にて前記管状部のうち前記外装体の内面側に突出している部分を前記外装体の内面に向けて加圧することにより、前記管状部の樹脂の一部が前記外装体の内面上に広がった抜け止め形状部を形成する電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電池の製造方法であって、
前記凹凸部が前記端子口の壁面と前記柱状部の表面との両方に形成されている電池の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の電池の製造方法であって、前記シール樹脂部材の昇温を、
前記外装体および前記端子部材の少なくとも一方を昇温させ、
昇温した前記外装体または前記端子部材から前記シール樹脂部材へ熱伝導を起こさせることにより行う電池の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電池の製造方法であって、前記シール樹脂部材として、
樹脂に繊維材を配合した複合樹脂の成形品を用いる電池の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の電池の製造方法であって、前記シール樹脂部材として、
成形ゲート痕が前記外装体との接触範囲内または前記端子部材との接触範囲内にあるものを用いる電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、外装体の端子口にて、外装体と端子部材との間の隙間を塞いでいるシール樹脂部材を有する電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池には、端子部材と外装体との間の隙間を塞ぐため、その箇所にシール部材が設けられているものがある。そのような電池として、例えば、特許文献1に記載されているものを挙げることができる。この文献では、電池ケースの蓋体の端子装着孔と、端子装着孔へと通された集電端子との間に位置する絶縁材を、蓋体および集電端子と一体成形(インサート成形)により形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-86813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シール樹脂部材を、外装体等の他の部材と一体成形により形成する方法では、次のような問題があった。すなわち、例えば、一体成形の際に、シール樹脂部材となる材料の充填圧力が高すぎた場合、他の部材に変形等が生じてしまう可能性があった。他方、シール樹脂部材となる材料の充填圧力が低すぎた場合には、シール樹脂部材が適切に形成されず、外装体の気密性を適切に確保できない可能性があった。つまり、シール樹脂部材を、外装体や端子部材等の他の部材と一体成形する方法では、高い品質の電池を安定して製造することは容易ではないという問題があった。
【0005】
本開示技術の課題とするところは、高い品質の電池を安定して製造できる電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における電池の製造方法は、発電要素と、発電要素を収納するとともに端子口が形成されている外装体と、外装体の内部で発電要素に接続されるとともに、端子口を貫通して部分的に外装体の外部に突出している端子部材と、端子口にて外装体と端子部材との間の隙間を塞いでいるシール樹脂部材とを有する電池を製造する電池の製造方法であって、端子部材として、端子口の中に位置する柱状部と、柱状部と繋がって外装体の外部に位置し、外部に露出する露出面が形成されている在外部とを有するものを用い、シール樹脂部材として、露出面を露出させつつ在外部を外装体から離間させて保持する保持部と、保持部と繋がっており、端子口の壁面と柱状部との間に位置し、端子口の箇所における外装体の厚さより長い管状形状の管状部とを有するものを用い、外装体および端子部材の少なくとも一方におけるシール樹脂部材との接触範囲の少なくとも一部に表面が凹凸形状である凹凸部が形成されており、外装体に対してシール樹脂部材および端子部材を取り付けて、端子口の中に管状部が位置しそのさらに内部に柱状部が位置するとともに、外装体の外面側にて在外部が保持部に保持され、柱状部および管状部のそれぞれ一部が外装体の内面側に突出する状態とし、シール樹脂部材のうち少なくとも管状部のうち外装体の内面側に突出している部分および凹凸部に接している部分を昇温させて軟化させ、軟化している状態にて管状部のうち外装体の内面側に突出している部分を外装体の内面に向けて加圧することにより、管状部の樹脂の一部が外装体の内面上に広がった抜け止め形状部を形成する電池の製造方法である。
【0007】
上記態様における電池の製造方法では、シール樹脂部材の管状部のうち外装体の内面側に突出している部分を加圧する加圧力は、それほど高いものでなくてよい。これにより、外装体や端子部材等を変形させることなく、電池を製造できる。よって、高い品質の電池を安定して製造できる電池の製造方法が実現されている。
【0008】
上記態様の電池の製造方法ではさらに、凹凸部が端子口の壁面と柱状部の表面との両方に形成されていることが望ましい。このようにすることで、外装体とシール樹脂部材との接触範囲、および、端子部材とシール樹脂部材との接触範囲をともに、適切に密閉できるからである。
【0009】
上記態様の電池の製造方法ではさらに、シール樹脂部材の昇温を、外装体および端子部材の少なくとも一方を昇温させ、昇温した外装体または端子部材からシール樹脂部材へ熱伝導を起こさせることにより行うことが望ましい。このようにすることで、シール樹脂部材のうちの凹凸部に接触している範囲を適切に昇温させて軟化させ、シール樹脂部材の樹脂の一部を凹凸部へと適切に充填できるからである。これにより、シール樹脂部材によって、より確実に外装体の気密性を高めることができる。
【0010】
上記態様の電池の製造方法ではさらに、シール樹脂部材として、樹脂に繊維材を配合した複合樹脂の成形品を用いることが望ましい。このようにすることで、シール樹脂部材の耐熱性を高めることができるからである。これにより、シール樹脂部材の熱変形や損傷を抑制できる。
【0011】
上記態様の電池の製造方法ではさらに、シール樹脂部材として、成形ゲート痕が外装体との接触範囲内または端子部材との接触範囲内にあるものを用いることが望ましい。このようにすることで、バリ等が発生しやすい成形ゲート痕を、外装体との接触範囲内または端子部材との接触範囲内に隠すことができる。これにより、成形ゲート痕にバリ等が生じていた場合にも、これがシール樹脂部材から分離して、露出面等に付着してしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本開示技術によれば、高い品質の電池を安定して製造できる電池の製造方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る電池の外観斜視図である。
図2】電池の外部端子の断面図である。
図3】蓋体、端子部材、シール樹脂部材の組み付け前を示す斜視図である。
図4】蓋体に、端子部材、シール樹脂部材を取り付ける様子を説明する図である。
図5】蓋体に、端子部材、シール樹脂部材を取り付けた状態を示す図である。
図6】シール樹脂部材に抜け止め形状部を形成する治具を説明する図である。
図7】シール樹脂部材に抜け止め形状部を形成している様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示技術を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態では、リチウムイオン二次電池としての電池1について説明する。電池1は、概略、図1に示されるように、外装体2の内部に発電要素3を収納したものである。発電要素3は、正負の電極板を積層してなるものである。外装体2は、箱体4と蓋体10とで構成されている。外装体2を構成する箱体4および蓋体10はともに、導電性を有する材質のものである。本形態における箱体4および蓋体10はともに、金属製である。具体的に、本形態における電池1においては、箱体4および蓋体10の材質として、例えば、アルミニウムまたはアルミ合金を用いることができる。外装体2の内部には、電解液5が収容されている。
【0015】
電池1は全体として平板角形状の外形のものである。その上部の蓋体10の長手方向両端付近には、正負の外部端子6、7が設けられている。外部端子6、7ではそれぞれ、端子部材20が、シール樹脂部材30を介して蓋体10に取り付けられている。この点、後に詳述する。端子部材20は、導電性を有する材質のものである。外部端子6の端子部材20、外部端子7の端子部材20はそれぞれ、外装体2の内部で、発電要素3を構成する正負の電極板のどちらかに接続されている。これにより、電池1は、外部端子6、7の端子部材20を介して充電または放電することができる。
【0016】
図2は、電池1の外部端子6、7の位置における断面図である。図2には、蓋体10の長手方向の断面を示している。図2に示すように、蓋体10は板状の部材である。蓋体10は、その厚み方向の端面として、外面11と内面12とを有している。図2において、蓋体10の内面12よりも下側が、外装体2の内部である。蓋体10には、厚み方向に貫通する貫通孔である端子口13が形成されている。蓋体10の端子口13の外面11側には、外面11よりも凹んだ嵌め込み部14が設けられている。
【0017】
端子部材20は、在外部21、柱状部22、発電要素接続部23を有している。在外部21は、外装体2の外部に位置している。在外部21は、外装体2の外部に露出する露出面25を有している。柱状部22は、端子口13の内側を通って蓋体10を貫通している。このため、柱状部22は、端子口13の中に位置している。発電要素接続部23は、外装体2の内部に位置している。発電要素接続部23は、発電要素3を構成する電極板に接続されている。在外部21は、柱状部22の外部側に繋がっている。発電要素接続部23は、柱状部22の内部側に繋がっている。在外部21は、蓋体10の厚み方向に延びている柱状部22に対し折れ曲がっており、柱状部22との接続箇所から蓋体10の外面11に沿って延びた形状をしている。本形態における電池1においては、端子部材20の材質として、例えば、正極側を構成するものである場合にはアルミニウムを、負極側を構成するものである場合には銅を用いることができる。
【0018】
シール樹脂部材30の材質は、絶縁性、および、電解液5に対する耐性を有する熱可塑性樹脂である。シール樹脂部材30は、射出成形により製造された成形品である。シール樹脂部材30は、保持部31、管状部32、抜け止め形状部33を有している。保持部31は、外装体2の外部に位置している。本形態の保持部31は、蓋体10の嵌め込み部14内にはめ込まれている。保持部31は、底部35と側部36とを有している。底部35は、端子部材20の在外部21と蓋体10との間に位置している。側部36は、在外部21の周囲を一周、囲っている。これにより、保持部31は、端子部材20の在外部21を、蓋体10から離間させつつ保持している。また、保持部31は、側部36の内側にて、端子部材20の在外部21の露出面25を露出させている。
【0019】
管状部32は、蓋体10の端子口13の壁面15の中に位置している。つまり、管状部32は、蓋体10の端子口13の壁面15と、端子部材20の柱状部22との間に位置している。抜け止め形状部33は、外装体2の内部に位置している。抜け止め形状部33は、管状部32よりも、蓋体10の内面12に沿って広がった形状をしている。つまり、抜け止め形状部33は、蓋体10の端子口13よりも太い。これにより、シール樹脂部材30は、蓋体10の端子口13の箇所に保持されている。
【0020】
本形態の蓋体10の端子口13の壁面15には、凹凸部15aが形成されている。蓋体10の端子口13の壁面15は、蓋体10におけるシール樹脂部材30との接触範囲である。凹凸部15aは、端子口13の壁面15に沿って1周、連続して形成されている。また、本形態の端子部材20の柱状部22の側面26には、凹凸部26aが形成されている。端子部材20の柱状部22の側面26は、端子部材20におけるシール樹脂部材30との接触範囲である。凹凸部26aは、柱状部22の側面26に沿って1周、連続して形成されている。つまり、本形態では、蓋体10および端子部材20におけるシール樹脂部材30との接触範囲にはそれぞれ、凹凸部15aおよび凹凸部26aが形成されている。
【0021】
蓋体10の凹凸部15aは、1mm未満の高さの突起が複数、設けられてなるものである。このため、凹凸部15aは、表面が凹凸形状をしている。凹凸部15aにおける複数の突起の微小な隙間には、シール樹脂部材30を構成する樹脂の一部が充填されている。これにより、蓋体10とシール樹脂部材30との接触範囲は密閉されている。端子部材20の凹凸部26aについても、蓋体10の凹凸部15aと同様である。よって、外装体2の気密性は高いものである。また、蓋体10の凹凸部15aとシール樹脂部材30との間、および、端子部材20の凹凸部26aとシール樹脂部材30との間にはそれぞれ、アンカー効果が生じる。よって、蓋体10とシール樹脂部材30との密着強度、および、端子部材20とシール樹脂部材30との密着強度は高い。これにより、電池1では、外部端子6、7の箇所での絶縁および密閉を、長期にわたって適切に維持できる。
【0022】
蓋体10の凹凸部15a、端子部材20の凹凸部26aは、凹凸形状を設ける対象となる素材表面に、その表面積を増大させる処理を施すことにより形成できる。すなわち、凹凸形状を設ける対象となる素材表面に、アンカー効果を生じさせるアンカー処理を施すことで、蓋体10の凹凸部15a、端子部材20の凹凸部26aを形成できる。具体的には、例えば、レーザーを用い、凹凸形状を設ける対象となる素材表面に、複数の柱状の突起を形成する処理を行うことで設けることができる。また、このような処理は、電子ビームやイオンビームを用いることにより行うこともできる。また凹凸形状は、スパッタリング、薬品または放電を用いたエッチング加工、ゾルゲル法、切削加工、研削加工によっても形成できる。
【0023】
次に、電池1の製造方法について説明する。本形態の電池1は、箱体4に蓋体10を組み付けることで外装体2を構成し、外装体2の内部に電解液5を注入することで製造される。また、蓋体10には、箱体4に組み付けられる前に、外部端子6、7が設けられるとともに、発電要素3が組み付けられる。すなわち、電池1の製造工程において、蓋体10には、外部端子6、7を構成する端子部材20、シール樹脂部材30の組み付けが行われる。端子部材20、シール樹脂部材30の蓋体10への組み付けは、これら各部材を取り付けて、シール樹脂部材30を昇温させて抜け止め形状部33を形成することで行う。
【0024】
図3には、蓋体10へ組み付けられる前の、端子部材20、シール樹脂部材30を示している。端子部材20、シール樹脂部材30が取り付けられる前の蓋体10の端子口13の壁面15には、前述した凹凸部15aが形成されている。また、抜け止め形状部33が形成される前のシール樹脂部材30の管状部32の長さLは、蓋体10の端子口13の箇所における厚さTよりも長い。
【0025】
端子部材20は、蓋体10へ取り付けられる前には、在外部21が、柱状部22と同じ方向に延びた形状をしている。また、蓋体10へ取り付けられる前の端子部材20の柱状部22の側面26には、前述した凹凸部26aが形成されている。シール樹脂部材30は、蓋体10へ取り付けられる前には、抜け止め形状部33が形成されていない。管状部32の先端部37の太さは、管状部32の大きさと同じかそれよりも細い。
【0026】
図4および図5により、蓋体10に、端子部材20およびシール樹脂部材30を取り付ける手順について説明する。図4に示すように、シール樹脂部材30は、蓋体10の外面11側から、蓋体10へと取り付ける。端子部材20は、蓋体10の内面12側から、蓋体10へと取り付ける。端子部材20の柱状部22は、蓋体10の内面12側より、シール樹脂部材30の管状部32へと挿入されている。これにより、端子部材20の柱状部22は、シール樹脂部材30の管状部32の中に位置している。端子部材20の在外部21は、シール樹脂部材30の保持部31よりも外部へと突き出ている。
【0027】
次に、図5に示すように、シール樹脂部材30を、蓋体10の嵌め込み部14へと嵌め込むことで、シール樹脂部材30を蓋体10へと取り付ける。これにより、シール樹脂部材30の管状部32は、蓋体10の端子口13へと、その外部側から挿入される。ここで、前述したように、抜け止め形状部33が形成される前のシール樹脂部材30の管状部32の長さLは、蓋体10の端子口13の箇所における厚さTよりも長い。このため、管状部32の先端部37は、蓋体10の内面12よりも突き出ている。
【0028】
さらに、図5に示すように、柱状部22がシール樹脂部材30の管状部32へと挿入された端子部材20について、在外部21を柱状部22に対して曲げる曲げ加工を行う。これにより、端子部材20の在外部21は、露出面25を露出させた状態で、シール樹脂部材30の保持部31に保持される。図5の状態において、蓋体10の凹凸部15a、端子部材20の凹凸部26aにはまだ、シール樹脂部材30の樹脂が充填されていない。
【0029】
図6および図7には、シール樹脂部材30に抜け止め形状部33を形成する手順を示している。本形態では、抜け止め形状部33の形成に、図6に示す治具90を用いる。本形態の治具90は、シール樹脂部材30に抜け止め形状部33を形成した後、外部端子6、7から除去される。治具90は、例えば、金属性のものである。なお、治具90の材質は、シール樹脂部材30の融点よりも高い融点を有するものであればよい。本形態の治具90は、金属製のものである。
【0030】
治具90には、貫通孔91、凹部92が設けられている。治具90は、端子部材20を貫通孔91の内側に通過させた状態で、蓋体10の内面12側に配置されている。凹部92は、抜け止め形状部33の形状に対応した形状である。つまり、蓋体10の内面12へと投影したときの治具90の凹部92の大きさは、シール樹脂部材30の管状部32よりも大きい。また、治具90の凹部92の深さは、管状部32の先端部37の蓋体10の内面12からの突き出し長さよりも短い。なお、治具90は、端子部材20への脱着を可能とするため、適宜、分割された複数の部材により構成されたものであればよい。
【0031】
そして、本形態では、いずれかの金属部材を加熱しつつ、図6に矢印で示すように、治具90の凹部92を、管状部32の先端部37に押し付ける。加熱する金属部材は、端子部材20、蓋体10、治具90のうちの少なくともひとつである。すなわち、端子部材20、蓋体10、治具90のうち、ひとつだけを加熱してもよい。あるいは、端子部材20、蓋体10、治具90のうち、複数のものを加熱することとしてもよい。金属部材を加熱することで、加熱された金属部材が昇温し、昇温した金属部材からシール樹脂部材30へと熱伝導が生じる。これにより、シール樹脂部材30の管状部32のうち、蓋体10の内面12側に突出している先端部37を昇温させて軟化させる。さらに、シール樹脂部材30のうち、蓋体10の凹凸部15aおよび端子部材20の凹凸部26aと接触している部分を昇温させて軟化させる。
【0032】
治具90の凹部92を管状部32の先端部37に押し付けることで、軟化している状態の管状部32の先端部37を、蓋体10の内面12に向けて加圧する。軟化している状態の管状部32の先端部37は、治具90によって加圧されることで、図7に示すように、凹部92の内面に沿って変形する。つまり、シール樹脂部材30の管状部32の先端部37は、蓋体10の内面12上に広がった形状へと変形する。その後、金属部材の加熱を終了するとともに、治具90を除去する。これにより、シール樹脂部材30に抜け止め形状部33を形成する。
【0033】
シール樹脂部材30のうち、蓋体10の凹凸部15aと接触している部分については、軟化している状態にて管状部32の先端部37が加圧されることで、凹凸部15aにおける隙間へと進入する。シール樹脂部材30のうち、凹凸部15aの隙間へと進入した部分は、金属部材の加熱が終了されることで硬化する。蓋体10の凹凸部15aにおける微小な隙間にシール樹脂部材30の一部が充填されて硬化することで、蓋体10とシール樹脂部材30との接触範囲が密閉される。
【0034】
また、シール樹脂部材30のうち、端子部材20の凹凸部26aと接触している部分についても、軟化している状態にて管状部32の先端部37が加圧されることで、凹凸部26aにおける隙間へと進入する。シール樹脂部材30のうち、凹凸部26aの隙間へと進入した部分は、金属部材の加熱が終了されることで硬化する。端子部材20の凹凸部26aにおける微小な隙間にシール樹脂部材30の一部が充填されて硬化することで、端子部材20とシール樹脂部材30との接触範囲が密閉される。
【0035】
ここで、本形態の電池1の製造方法においては、成形品のシール樹脂部材30を用いている。つまり、シール樹脂部材30として、すでに保持部31および管状部32が形成されており、管状部32が、端子口13の箇所における蓋体10の厚さTよりも長さLの長い形状のものを用いている。そして、シール樹脂部材30を昇温させて軟化させつつ、管状部32の先端部37を蓋体10の内面12に向けて加圧して、抜け止め形状部33を形成している。これにより、例えば、同じ形状のものを一体成形によって製造するよりも、高い品質の電池を安定して製造することができる。すなわち、一体成形では、本形態とは異なり、軟化させた樹脂を、金型内における金属部材の周囲に充填する際に、金属部材を変形させてしまう可能性がある。また例えば、一体成形では、蓋体10の凹凸部15aや端子部材20の凹凸部26aのような微小な隙間へ、軟化させた樹脂が適切に充填できない可能性もある。さらに、一体成形では、露出させたい金属材料の部分に、軟化した樹脂が回り込んで付着してしまう可能性もある。
【0036】
これに対し、本形態においては、蓋体10の内面12側に突出した状態の管状部32の先端部37を昇温させて軟化させ、そこを加圧することで抜け止め形状部33を形成している。よって、抜け止め形状部33を確実に形成することができる。また、抜け止め形状部33を形成する際の加圧力は、軟化したシール樹脂部材30の一部を凹凸部15aおよび凹凸部26aの隙間へと充填させつつ、管状部32の先端部37を押しつぶせることができる程度である。つまり、本形態における加圧力それほど高いものではなくてよい。このため、本形態では、蓋体10や端子部材20等の金属部材を変形させてしまうようなことはない。また、加圧力が低いことで、各部材における残留応力についても低減できる。さらに、露出面25に軟化した樹脂が回り込んで付着してしまうこともない。よって、本形態では、高い品質の電池1を安定して製造できる。
【0037】
また、本形態では、成形品のシール樹脂部材30を部分的に軟化させる程度の加熱で済むため、一体成形を採用した場合のように全体が高温になってしまうことがない。このため、本形態では、加熱後の冷却時間は短時間でよく、電池1の生産性が高い。さらに、本形態では、一体成形を採用した場合と比較して、設備が安い。このため、本形態では、電池1を安価に生産できる。
【0038】
本形態においては、蓋体10として、シール樹脂部材30との接触範囲に凹凸部15aが形成されたものを用いるとともに、端子部材20として、シール樹脂部材30との接触範囲に凹凸部26aが形成されたものを用いている。これにより、蓋体10とシール樹脂部材30との接触範囲、端子部材20とシール樹脂部材30との接触範囲のどちらにおいても、適切に密閉された電池1を製造できる。ただし、凹凸部は、蓋体10におけるシール樹脂部材30との接触範囲、端子部材20におけるシール樹脂部材30との接触範囲のどちらか一方だけに設けることとしてもよい。凹凸部が設けられた部材とシール樹脂部材30との接触範囲を適切に密閉できるからである。
【0039】
本形態においては、シール樹脂部材30の昇温を、蓋体10および端子部材20の少なくとも一方を昇温させ、昇温した蓋体10または端子部材20からシール樹脂部材30へ熱伝導を起こさせることにより行うことが好ましい。すなわち、シール樹脂部材30の昇温を、蓋体10および端子部材20の少なくとも一方を加熱することにより起こさせる。シール樹脂部材30のうち、蓋体10の凹凸部15a、端子部材20の凹凸部26aに接触している箇所を、適切に昇温させ、軟化させることができるからである。これにより、軟化したシール樹脂部材30を、凹凸部15aおよび凹凸部26aの隙間へ、適切に充填できる。なお、凹凸部を、蓋体10におけるシール樹脂部材30との接触範囲、端子部材20におけるシール樹脂部材30との接触範囲のどちらか一方だけに設ける場合、凹凸部を有する方の部材を加熱により昇温させることが好ましい。
【0040】
本形態においては、シール樹脂部材30として、グラスファイバー等の繊維材を配合した複合樹脂の成形品を用いることが好ましい。シール樹脂部材30の耐熱性を高めることができるからである。例えば、本形態の電池1では、箱体4に蓋体10を組み付ける際に、これらは溶接によって接合される。また、端子部材20の在外部21の露出面25には、電池1の外部への電流経路を形成するための部材を溶接によって接合する場合がある。つまり、シール樹脂部材30は、電池1に組み付けられた後に高温になる場合がある。そのような場合に、シール樹脂部材30の耐熱性が高いことで、シール樹脂部材30の変形や損傷を低減できる。
【0041】
なお、本形態の外部端子6、7のような構造を一体成形により形成する場合、シール樹脂部材に繊維材を配合すると、シール樹脂部材における繊維材の分布に偏りが生じてしまいやすい傾向にある。つまり、一体成形では、シール樹脂部材の表面ほど、内部と比較して繊維材の密度が低くなりやすい。このため、一体成形では、シール樹脂部材の表面の耐熱性が低下してしまう可能性がある。これに対し、本形態においては、表面にも繊維材が均等に分布した成形品のシール樹脂部材30を用いることができる。その繊維材の分布は、シール樹脂部材30を軟化させ、抜け止め形状部33を形成した程度では変わらない。つまり、製造された電池1においても、シール樹脂部材30においては、繊維材が均等に分布している。すなわち、本形態では、繊維材が配合されたシール樹脂部材30を用いることで、溶接時等に高温になりやすいシール樹脂部材30の表面についても、耐熱性が高く、変形や損傷が適切に抑制される。
【0042】
本形態においては、成形品であるシール樹脂部材30として、成形ゲート痕が、蓋体10との接触範囲内、または、端子部材20との接触範囲内にあるものを用いることが好ましい。図2には、蓋体10との接触範囲内に成形ゲート痕38があるシール樹脂部材30を示している。シール樹脂部材30においては、成形ゲート痕38の付近に、バリ等が形成されていることがある。しかし、図2の例では、成形ゲート痕38が蓋体10との接触範囲内にあることで、例えば、シール樹脂部材30から分離した成形ゲート痕38付近のバリが、端子部材20の露出面25に付着してしまうことを防止できる。また、例えば、シール樹脂部材30から分離した成形ゲート痕38付近のバリが、製造された電池1内に混入されてしまうこと等も防止できる。
【0043】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば、電池1は、発電要素3、外装体2、端子部材20、シール樹脂部材30を有する。外装体2は、箱体4と蓋体10とにより構成されており、発電要素3を収納している。蓋体10には、端子口13が形成されている。端子部材20は、外装体2の内部に位置する発電要素接続部23にて発電要素3に接続されているとともに、端子口13を貫通して部分的に外装体2の外部に突出している。シール樹脂部材30は、端子口13にて蓋体10と端子部材20との間の隙間を塞いでいる。電池1の製造には、端子部材20として、柱状部22と、在外部21とを有するものを用いる。柱状部22は、端子口13の中に位置する部分である。在外部21は、柱状部22と繋がっており、外装体2の外部に位置する部分である。また、在外部21は、外装体2の外部に露出する露出面25が形成されている。電池1の製造には、シール樹脂部材30として、保持部31、管状部32を有するものを用いる。保持部31は、露出面25を露出させつつ在外部21を蓋体10から離間させて保持する部分である。管状部32は、保持部31と繋がっており、端子口13の壁面15と柱状部22との間に位置する部分である。また、シール樹脂部材30として、端子口13の箇所における蓋体10の厚さTよりも長さLの長い管状部32を有するものを用いる。蓋体10および端子部材20の少なくとも一方におけるシール樹脂部材30との接触範囲の少なくとも一部には、表面が凹凸形状である凹凸部(凹凸部15a、凹凸部26a)が形成されている。電池1を製造する際には、蓋体10に対してシール樹脂部材30および端子部材20を取り付ける。その際、端子口13の中に管状部32が位置しそのさらに内部に柱状部22が位置する状態とする。また、蓋体10の外面11側にて在外部21が保持部31に保持され、柱状部22よび管状部32のそれぞれ一部が蓋体10の内面12側に突出する状態とする。さらに、シール樹脂部材30のうち少なくとも管状部32のうち蓋体10の内面12側に突出している部分である先端部37および凹凸部15a、凹凸部26aに接している部分を昇温させて軟化させる。加えて、軟化している状態にて管状部32の先端部37を蓋体10の内面12に向けて加圧することにより、管状部32の樹脂の一部が蓋体10の内面12上に広がった抜け止め形状部33を形成する。このため、本形態の電池1の製造では、シール樹脂部材30の管状部32の先端部37を加圧する加圧力は、それほど高いものではなくてよい。これにより、蓋体10や端子部材20等の金属部材を変形させることなく、電池1を製造できる。よって、高い品質の電池1を安定して製造できる電池の製造方法が実現されている。
【0044】
本実施の形態および実施例は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、上記の実施形態では、蓋体10の凹凸部15aを、端子口13の壁面15に設けた構成について説明した。しかし、蓋体10に凹凸部15aを設ける場合、凹凸部15aの位置は、蓋体10とシール樹脂部材30とを密閉できる範囲であればよく、シール樹脂部材30との接触範囲であればよい。具体的には、例えば、凹凸部15aを、蓋体10の外面11側における端子口13の外縁に沿って環状に設けることとしてもよい。また、蓋体10の凹凸部15aを、端子口13の壁面15と、蓋体10の外面11側における端子口13の外縁とに設けることとしてもよい。端子部材20についても同様である。
【0045】
また上記の実施形態では、外装体2のうち、蓋体10に外部端子6、7を設けた構成について具体的に説明した。しかし、例えば、外部端子6、7は、外装体2に設けられていればよい。すなわち、外部端子6、7は、例えば、箱体4に設けられていてもよい。また上記形態の適用対象は、電池種(ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池等の種別)については特段の限定はない。また、上記形態で示した具体的な材質等は、単なる一例であり、適宜、変更できる。
【符号の説明】
【0046】
1 電池
2 外装体
3 発電要素
4 箱体
10 蓋体
11 内面
12 外面
13 端子口
15 壁面
15a 凹凸部
20 端子部材
21 在外部
22 柱状部
23 発電要素接続部
25 露出面
26a 凹凸部
30 シール樹脂部材
31 保持部
32 管状部
33 抜け止め形状部
37 先端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7