(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090776
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】カートリッジ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
B41J2/175 131
B41J2/175 119
B41J2/175 153
B41J2/175 169
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206876
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長島 巧
(72)【発明者】
【氏名】小泉 義弘
(72)【発明者】
【氏名】大屋 瞬
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056FA10
2C056KC02
2C056KC05
2C056KD08
(57)【要約】
【課題】より効率的に液体収容部に液体を注入できる技術を提供する。
【解決手段】印刷装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されるカートリッジにおいて、カートリッジは、カートリッジ装着部に対して水平方向である挿入方向に挿入された挿入完了の後に、挿入方向の奥側を回転支点として、カートリッジのうち挿入方向の手前側部分を、重力方向成分を有する回転装着方向に移動させる装着動作によってカートリッジ装着部に装着され、カートリッジは、外殻を形成する本体部と、本体部の内部に位置し、印刷装置に供給する液体を収容する液体収容部と、本体部を貫通して液体収容部と連通する液体注入口と、液体収容部と連通し、カートリッジ装着部の液体導入部に液体を供給する液体供給部と、を有する液体収容体と、液体収容体に取り付けられたアダプターであって、液体導入部が挿通される挿入開口部を有するアダプターと、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されるカートリッジであって、
前記カートリッジは、前記カートリッジ装着部に対して水平方向である挿入方向に挿入された挿入完了の後に、前記挿入方向の奥側を回転支点として、前記カートリッジのうち前記挿入方向の手前側部分を、重力方向成分を有する回転装着方向に移動させる装着動作によって前記カートリッジ装着部に装着され、
前記カートリッジは、
外殻を形成する本体部と、
前記本体部の内部に位置し、前記印刷装置に供給する液体を収容する液体収容部と、
前記本体部を貫通して前記液体収容部と連通する液体注入口と、
前記液体収容部と連通し、前記カートリッジ装着部の液体導入部に前記液体を供給する液体供給部と、を有する液体収容体と、
前記液体収容体に取り付けられたアダプターであって、前記液体導入部が挿通される挿入開口部を有するアダプターと、を備える、カートリッジ。
【請求項2】
請求項1に記載のカートリッジであって、
前記本体部は、前記カートリッジ装着部に前記カートリッジが装着された装着状態において、
前記本体部のうち前記挿入方向の奥側に位置する前壁と、
前記前壁と交差し、前記アダプターが位置する側とは反対側に位置する上壁と、
前記前壁と前記上壁とが交わる収容体角部と、を有し、
前記液体注入口は、前記収容体角部に形成される、カートリッジ。
【請求項3】
請求項1に記載のカートリッジであって、
前記液体注入口の直径は、前記液体導入部の内径よりも大きい、カートリッジ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のカートリッジであって、さらに、
前記液体注入口を塞ぐ栓体を備え、
前記栓体は、前記装着動作において、前記カートリッジ装着部に干渉しない、カートリッジ。
【請求項5】
請求項4に記載のカートリッジであって、
前記栓体は、前記液体注入口に取り付けられた状態において、前記液体収容部側に位置する栓底部を有し、
前記栓底部は、溝部を有する、カートリッジ。
【請求項6】
請求項4に記載のカートリッジであって、
前記栓体は、弾性部材によって形成されている、カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カートリッジの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体収容体と、液体収容体に取り付けられるアダプターと、を備えたカートリッジが知られている(特許文献1)。この技術では、カートリッジは、印刷装置のカートリッジ装着部に対して、水平方向である挿入方向に挿入された後に、挿入方向の奥側を始点として重力方向成分を有する接続方向に回転移動させることで装着される。液体収容体は、液体を収容する液体収容部と、液体収容部の液体を印刷装置の液体導入部に供給する液体供給部と、を有する。液体供給部には、液体を流通させる内部流路を開閉する弁機構が配置されている。弁機構は、カートリッジ装着部にカートリッジが装着された装着状態において、液体供給部のうち液体導入部側に位置する供給先端部から順に、弁座と、弁体と、付勢部材と、を有する。弁座は、円環状の弾性部材である。弁体は、柱状部材であり、弁座に形成された弁孔を塞ぐ。付勢部材は、弁体を弁座側に付勢する。カートリッジ装着部に対するカートリッジの装着動作において、液体導入部が弁体を弁座から離れる方向に押すことで、弁機構が開弁して、液体収容部に収容された液体が印刷装置側に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、液体収容部に液体を注入する場合に、液体供給部の弁機構を開弁して液体を注入する必要がある。よって、より効率的に液体収容部に液体を注入できる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本開示の一形態によれば、カートリッジが提供される。印刷装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されるカートリッジにおいて、前記カートリッジは、前記カートリッジ装着部に対して水平方向である挿入方向に挿入された挿入完了の後に、前記挿入方向の奥側を回転支点として、前記カートリッジのうち前記挿入方向の手前側部分を、重力方向成分を有する回転装着方向に移動させる装着動作によって前記カートリッジ装着部に装着され、前記カートリッジは、外殻を形成する本体部と、前記本体部の内部に位置し、前記印刷装置に供給する液体を収容する液体収容部と、前記本体部を貫通して前記液体収容部と連通する液体注入口と、前記液体収容部と連通し、前記カートリッジ装着部の液体導入部に前記液体を供給する液体供給部と、を有する液体収容体と、前記液体収容体に取り付けられたアダプターであって、前記液体導入部が挿通される挿入開口部を有するアダプターと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】カートリッジ装着部を+Z方向側から見た図。
【
図4】液体導入部と液体供給部との詳細を説明するための図。
【
図5】カートリッジ装着部に対するカートリッジの着脱過程を説明するための図。
【
図6】挿入完了状態におけるカートリッジおよびカートリッジ装着部を示す断面図。
【
図7】装着状態におけるカートリッジおよびカートリッジ装着部を示す断面図。
【
図11】液体注入口に栓体が装着されたカートリッジの部分斜視図。
【
図14】取付状態のカートリッジとカートリッジ装着部とを示す第1断面図。
【
図16】取付状態のカートリッジとカートリッジ装着部とを示す第2断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
A-1.印刷システムの構成:
図1は、印刷システム1の概略構成を示す斜視図である。
図1には、互いに直交する3つの空間軸であるXYZ軸が描かれている。X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向は、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を示している。X軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を、それぞれ+X方向,+Y方向,+Z方向とする。X軸,Y軸,Z軸の向いている方向と逆の方向が、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向である。X軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向を、それぞれ-X方向,-Y方向,-Z方向とする。X軸,Y軸,Z軸に沿った方向で正負を問わないものを、それぞれX方向,Y方向,Z方向と呼ぶ。
【0008】
本実施形態では、印刷システム1の使用状態において、X軸およびY軸が水平面に沿った軸であり、Z軸が重力方向に沿った軸である。以下においては、重力方向を-Z方向とし、反重力方向を+Z方向とする。印刷システム1の前面側から後面側に向かう方向を-Y方向とし、後面側から前面側に向かう方向を+Y方向とする。また、印刷システム1を前面側から見たときに、右側から左側に向かう方向を+X方向とし、左側から右側に向かう方向を-X方向とする。なお、「印刷システム1の使用状態」とは、水平面に印刷システム1が設置された状態を指す。これ以降に示す図および説明についても同様とする。
【0009】
印刷システム1は、印刷装置10と、印刷装置10に液体としてのインクを供給するカートリッジ4と、を備える。
【0010】
本実施形態では、印刷装置10は、液体としてのインクを吐出ヘッド22から吐出するインクジェットプリンターである。印刷装置10は、カートリッジ装着部6と、制御部31と、キャリッジ20と、吐出ヘッド22と、駆動機構30と、を備える。また、印刷装置10は、印刷装置10の動作をユーザーが操作するための操作ボタン15を備える。
【0011】
カートリッジ装着部6は、+Y方向側にある第1装置壁67を有する。第1装置壁67は、カートリッジ4の収容室61の出入口である挿抜開口部674を有する。カートリッジ4は、挿抜開口部674を介して、カートリッジ装着部6の収容室61に収容されたり取り外されたりする。本実施形態では、装着のためにカートリッジ装着部6にカートリッジ4が挿入される挿入方向D1は、-Y方向である。また、カートリッジ4がカートリッジ装着部6から取り外される取り外し方向D4は、+Y方向である。よって、カートリッジ装着部6のうち、-Y方向側を奥側とも呼び、+Y方向側を手前側とも呼ぶ。
【0012】
カートリッジ装着部6には、1以上のカートリッジ4が着脱可能に装着される。本実施形態では、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクに対応して4種類のカートリッジ4が1つずつ、すなわち、合計4つのカートリッジ4がそれぞれカートリッジ装着部6に装着されている。ブラックのインクを収容するカートリッジ4を第1カートリッジ4Kとも呼び、シアンのインクを収容するカートリッジ4を第2カートリッジ4Cとも呼ぶ。また、マゼンタのインクを収容するカートリッジ4を第3カートリッジ4Mとも呼び、イエローのインクを収容するカートリッジ4を第4カートリッジ4Yとも呼ぶ。本実施形態では、複数のカートリッジ4K,4C,4M,4Yの配列方向は、X方向である。なお、カートリッジ装着部6の収容室61に収容可能なカートリッジ4の種類および数は、これに限られるものではない。
【0013】
印刷装置10は、+Y方向側の前面に交換用カバー13を有する。交換用カバー13は、開閉可能に構成されている。交換用カバー13を開くことで、カートリッジ装着部6の開口が現れて、カートリッジ4の着脱が可能となる。カートリッジ装着部6にカートリッジ4が装着されると、インクを流通させる液体流通管としてのチューブ24を介して、キャリッジ20に設けられた吐出ヘッド22にインクが供給される。なお、他の実施形態では、印刷装置10の図示しないポンプ機構によって、カートリッジ4内のインクを吸引することで、インクが吐出ヘッド22に供給されてもよい。チューブ24は、インクの種類ごとに設けられている。
【0014】
吐出ヘッド22には、インクの種類ごとにノズル220が設けられている。吐出ヘッド22は、ノズル220から印刷用紙2に向かってインクを吐出して文字や画像等のデータを印刷する。本実施形態では、印刷装置10は、カートリッジ装着部6がキャリッジ20の動きとは連動しない、いわゆる「オフキャリッジタイプ」と呼ばれるプリンターである。これに対して、キャリッジ20にカートリッジ装着部6が設けられ、キャリッジ20と共にカートリッジ装着部6が移動する、いわゆる「オンキャリッジタイプ」と呼ばれるプリンターにも本開示の技術は適用できる。
【0015】
制御部31は、印刷装置10の各部の制御や、カートリッジ4との信号の授受を行う。キャリッジ20は、吐出ヘッド22を印刷用紙2に対して相対的に移動させる。
【0016】
駆動機構30は、制御部31からの制御信号に基づいてキャリッジ20を往復移動させる。駆動機構30は、タイミングベルト32と、駆動モーター34と、を備える。タイミングベルト32を介して駆動モーター34の動力をキャリッジ20に伝達することによって、キャリッジ20がX方向に沿った方向である主走査方向に往復移動する。また、印刷装置10は、印刷用紙2を副走査方向に移動させるための搬送機構を備える。印刷が行われる際には、搬送機構によって印刷用紙2が+Y方向である副走査方向に移動し、前面カバー11上に印刷完了後の印刷用紙2が出力される。
【0017】
A-2.カートリッジ装着部の詳細構成:
図2は、カートリッジ装着部6の斜視図である。
図3は、カートリッジ装着部6を+Z方向側から見た図である。
図2および
図3では、理解の容易のために、カートリッジ装着部6の一部の構成の図示は省略している。カートリッジ装着部6について、X方向を幅方向、Y方向を奥行方向、Z方向を高さ方向とも呼ぶ。以下において、特に状態についての記載がない場合には、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着されていない初期配置状態のときのカートリッジ装着部6を前提に各構成要素について説明する。
【0018】
カートリッジ装着部6は、カートリッジ4が収容される収容室61を有する。本実施形態では、収容室61は、略直方体形状である。収容室61のうちで、各カートリッジ4K,4C,4M,4Yを収容する部分であるスロット61K,61C,61M,61Yの形状は、
図1に示す各カートリッジ4K,4C,4M,4Yの外観形状に概ね対応している。
【0019】
図2に示すように、カートリッジ装着部6は、収容室61を形成する6つの装置壁62~67を有する。本開示において「壁」とは、単一の壁に加えて、複数の壁によって構成された壁を含む概念である。第1装置壁67は、カートリッジ4を収容室61に挿入したり取り外したりする際に通過させる挿抜開口部674を形成する。第2装置壁62は、Y方向において第1装置壁67と対向し、収容室61の-Y方向側の壁を形成する。第2装置壁62は、印刷装置10の使用状態において、Z方向に沿った水平面に概ね垂直な壁である。
【0020】
装置上壁63は、収容室61の+Z方向側の壁を形成する。装置底壁64は、Z方向において装置上壁63と対向し、収容室61の-Z方向側の壁を形成する。装置底壁64は、支持部材610によって形成されている。装置底壁64は、スロット61K,61C,61M,61Yごとに形成される装置開口部614を有する。本実施形態では、装置開口部614は、スロット61K,61C,61M,61Yに応じて4つ形成されている。装置上壁63および装置底壁64は、第1装置壁67と第2装置壁62とに交差する。本開示において、「交わる」や「交差する」とは、以下の状態(i)~(iii)のいずれかであることを意味する。
(i)2つの構成要素が相互に交差し実際に交わる状態
(ii)一方の構成要素を延ばした場合に他方の構成要素に交わる状態
(iii)相互の構成要素をそれぞれ延ばした場合に互いの構成要素が交わる状態
【0021】
第1装置側壁65は、収容室61の+X方向側の壁を形成する。第2装置側壁66は、X方向において第1装置側壁65と対向し、収容室61の-X方向側の壁を形成する。第1装置側壁65および第2装置側壁66はそれぞれ、第1装置壁67、第2装置壁62、装置上壁63、および、装置底壁64と交差する。
【0022】
図2および
図3に示すように、カートリッジ装着部6は、さらに、支持部材610と、液体導入部642と、液体貯留部699と、装置側位置決め部644と、装置側端子部670と、係合形成体677と、を有する。
【0023】
支持部材610は、装置底壁64を形成する主壁613と、第1支持側壁611と、第2支持側壁612と、を有する。主壁613は、-Z方向側に位置する凹形状の底部を形成する。主壁613のうち、+Y方向側に位置する第1装置壁67側の端部には、装置開口部614が形成されている。装置開口部614は、Z方向に沿った方向である主壁613の厚み方向に主壁613を貫通する。第1支持側壁611は、主壁613の+X方向側から+Z方向に立ち上がる。第2支持側壁612は、主壁613の-X方向側から+Z方向に立ち上がる。第1支持側壁611と第2支持側壁612とは、X方向において対向する。
【0024】
液体導入部642は、カートリッジ4の液体供給部442から供給される液体としてのインクを受け入れる。液体導入部642は、
図2に示すように、導入部側中心軸CA1を有する。液体導入部642は、支持部材610に対して収容室61を挟んで反対側に位置する。
【0025】
図4は、カートリッジ装着部6の液体導入部642とカートリッジ4の液体供給部442との詳細を説明するための図である。
図4では、液体導入部642と液体供給部442とが接続されていない状態を図示している。液体供給部442の詳細は、後述する。液体導入部642は、液体であるインクを流通させる内部流路661と、内部流路661を区画する導入部本体660と、内部流路661を開閉する装置流路弁機構680と、を有する。液体導入部642は、内径L2を有する。内径L2は、内部流路661の流路径である。
【0026】
導入部本体660は、液体導入部642の外殻を形成する。内部流路661は、液体貯留部699と連通する。装置流路弁機構680は、内部流路661内に配置される。装置流路弁機構680は、導入部本体660の一部である装置側弁座681と、装置側弁体683と、シール部材685と、装置側付勢部材687と、を有する。
【0027】
装置側弁座681は、シール部材685を介して、装置側弁体683に当接したり、離間したりする部分である。装置側弁体683は、導入部側中心軸CA1に沿って延びる円柱状部材である。装置側弁体683は、径方向外側に広がる円環状の開閉部分683aを有する。開閉部分683aは、導入部側中心軸CA1に沿った方向に装置側弁座681と対向する。開閉部分683aのうち装置側弁座681と対向する側にはシール部材685が配置されている。シール部材685は、円環状である。装置側付勢部材687は、開閉部分683aを装置側弁座681に向けて付勢する。装置側付勢部材687は、開閉部分683aのうち装置側弁座681が配置された側とは反対側に配置された圧縮コイルバネである。
【0028】
液体導入部642と液体供給部442とが接続されていない状態、すなわち、装置流路弁機構680の閉状態では、装置側付勢部材687の付勢力によって開閉部分683aがシール部材685を介して装置側弁座681に当接する。これにより、内部流路661が非連通状態となる。一方で、液体導入部642と液体供給部442とが接続された状態、すなわち、装置流路弁機構680の開状態では、装置側弁体683が液体供給部442の後述するカートリッジ側弁体483に押圧されることで、装置側弁座681から離れる方向に変位する。これにより、装置流路弁機構680が開弁して、内部流路661が連通状態となることで、カートリッジ4に収容されたインクが、液体供給部442を介して、液体導入部642に供給される。カートリッジ4側から印刷装置10側にインクが供給される際には、カートリッジ4においてインクを収容する液体収容部450の気液交換が行われる。具体的には、例えば、液体供給部442から液体導入部642にインクが供給される一方で、液体貯留部699に収容された空気が気泡となって液体導入部642、液体供給部442を流通して液体収容部450に流通することで、気液交換が行われる。
【0029】
液体貯留部699は、液体導入部642を介してカートリッジ4から供給された液体を貯留する。液体貯留部699は、予め定めた圧力に維持されている。予め定めた圧力は、例えば、負圧である。液体貯留部699を負圧に維持することで、液体貯留部699内のインクの液面と吐出ヘッド22との水頭差によってインクが吐出ヘッド22に供給される。具体的には、液体貯留部699内のインクの液面が低下するに伴って、カートリッジ4に収容されたインクが液体導入部642を介して補充される。これにより、液体貯留部699内のインクの液面は一定に維持される。
【0030】
図2に示す装置側位置決め部644は、カートリッジ4のうち、後述の
図8に示すカートリッジ側供給部位置決め部448に受け入れられることで、カートリッジ4の液体供給部442の液体導入部642に対する動きを規制する。本実施形態では、装置側位置決め部644は、略直方体形状の突起である。
【0031】
装置側端子部670は、カートリッジ装着部6にカートリッジ4を装着した状態において、カートリッジ4と印刷装置10とを電気的に接続するために設けられる機構である。装置側端子部670は、後述の
図8に示すカートリッジ4のカートリッジ側端子521と接触する装置側端子671を有する。
【0032】
係合形成体677は、支持部材610よりも+Y方向側に位置する第1装置壁67に形成されている。また、係合形成体677は、挿抜開口部674よりも-Z方向側に位置する。係合形成体677には、各スロット61K,61C,61M,61Yに対応する装着係合部であって、弾性を有する図示しない装着係合部が4つ配置されている。
【0033】
A-3.カートリッジ装着部に対するカートリッジの着脱過程の説明:
図5は、カートリッジ装着部6に対するカートリッジ4の着脱過程を説明するための図である。
図5において、4種類のカートリッジ4のうち、第2カートリッジ4Cは、カートリッジ装着部6への挿入が完了した「挿入完了状態」を示している。挿入完了状態とは、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に挿入されているが、カートリッジ4の液体供給部442とカートリッジ装着部6の液体導入部642とは接続されていない状態である。また、
図5において、第1カートリッジ4K、第3カートリッジ4M、第4カートリッジ4Yは、カートリッジ装着部6への装着が完了した「装着状態」を示している。装着状態とは、挿入完了の後に、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着されて、液体としてのインクを印刷装置10に供給できる状態である。
【0034】
図6は、挿入完了状態におけるカートリッジ4およびカートリッジ装着部6を示す断面図である。
図7は、装着状態におけるカートリッジ4およびカートリッジ装着部6を示す断面図である。
図6および
図7はいずれも、導入部側中心軸CA1を通るYZ平面を切断面とした場合の断面を模式的に図示している。
【0035】
カートリッジ装着部6にカートリッジ4を装着する装着動作では、まず、
図6に示すように、カートリッジ装着部6に対して水平方向である挿入方向D1にカートリッジ4を挿入する。具体的には、第1装置壁67の挿抜開口部674を介して、挿入方向D1である-Y方向にカートリッジ4を移動させて、カートリッジ装着部6の収容室61にカートリッジ4を挿入する。これにより、カートリッジ4は、カートリッジ装着部6の予め定めた位置まで挿入されて、挿入完了状態となる。予め定めた位置は、カートリッジ4のカートリッジ側端子521と、カートリッジ装着部6の装置側端子671との接触が完了する位置である。
【0036】
図7に示すように、挿入完了の後に、カートリッジ装着部6のうち挿入方向D1の奥側を回転支点698として、カートリッジ4のうち挿入方向D1の手前側部分を、重力方向成分を有する回転装着方向D2に移動させる。カートリッジ4のうち挿入方向D1の手前側とは、カートリッジ4の本体後壁47側である。これにより、装置側端子671とカートリッジ側端子521との接触が維持された状態において、カートリッジ装着部6の液体導入部642とカートリッジ4の液体供給部442とが接続されて、装着状態となる。
図5に示すように、カートリッジ装着部6の第1装置壁67側に設けられた係合形成体677にカートリッジ4が係合することで、装着状態は保持される。
【0037】
カートリッジ4をカートリッジ装着部6から取り外す取り外し動作では、まず、カートリッジ装着部6のうち挿入方向D1の奥側を回転支点698として、カートリッジ4のうち挿入方向D1の手前側部分を、反重力方向成分を有する接続解除方向D3に移動させる。この回転移動の際に、
図5に示す係合形成体677による係合が解除されて、
図6に示す挿入完了状態となる。次に、カートリッジ装着部6に対して挿入方向D1とは反対方向である取り外し方向D4にカートリッジ4を移動させる。これにより、カートリッジ装着部6からカートリッジ4が取り出される。
【0038】
A-4.カートリッジの詳細構成:
図8は、カートリッジ4の斜視図である。カートリッジ4について、X方向は幅方向、Y方向は奥行方向、Z方向は高さ方向である。これ以降の図において、カートリッジ4について各図に付したXYZ方向は、
図6に示した挿入完了状態を基準とする。カートリッジ4の外形は、略直方体形状である。本実施形態では、カートリッジ4の外形について、Y方向の寸法が最も大きく、Z方向の寸法、X方向の寸法の順に小さい。
【0039】
カートリッジ4は、液体収容体401と、アダプター402と、を備える。
【0040】
液体収容体401は、外殻を形成する本体部41と、液体収容部450と、液体注入口455と、液体供給部442と、を備える。
【0041】
本体部41は、本体前壁42と、本体後壁47と、本体上壁43と、本体底壁44と、本体第1側壁45と、本体第2側壁46と、を有する。本体前壁42は、本体部41の-Y方向側の壁を形成する。本体後壁47は、Y方向において本体前壁42と対向し、本体部41の+Y方向側の壁を形成する。本体上壁43は、本体部41の+Z方向側の壁を形成する。本体上壁43は、本体前壁42に接続された最上壁431と、最上壁431に接続された傾斜壁433と、傾斜壁433と本体後壁47とにそれぞれ接続された端壁435と、を有する。最上壁431は、挿入方向D1に平行な壁である。最上壁431は、本体上壁43を形成する3つの壁431,433,435のうち、挿入完了状態および装着状態において、重力方向で最も高い側に位置する。つまり、最上壁431は、本体上壁43を形成する3つの壁431,433,435のうち、挿入完了状態および装着状態において、最も+Z方向側に位置する壁である。傾斜壁433は、本体後壁47側に向かうに従って、本体底壁44側に位置するように、挿入方向D1に対して傾斜する壁である。端壁435は、挿入完了状態および装着状態において、最上壁431および傾斜壁433よりも重力方向で低い側である-Z方向側に位置する。本体底壁44は、Z方向において本体上壁43と対向し、本体部41の-Z方向側の壁を形成する。つまり、本体底壁44は、
図6に示す挿入完了状態において、液体導入部642が位置する側の壁である。本体上壁43および本体底壁44は、本体前壁42と本体後壁47とに交差する。本体第1側壁45は、本体部41の-X方向側の壁を形成する。本体第2側壁46は、X方向において本体第1側壁45と対向し、本体部41の+X方向側の壁を形成する。本体第1側壁45および本体第2側壁46はそれぞれ、本体前壁42と、本体後壁47と、本体上壁43と、本体底壁44と、に交差する。本体部41は、さらに、挿入方向D1の奥側に位置する本体前壁42と、本体前壁42と交差し、アダプター402が位置する本体底壁44側とは反対側に位置する本体上壁43の最上壁431と、が交わる収容体角部423を有する。
【0042】
液体収容部450は、印刷装置10に供給する液体としてのインクを収容するための液体容器である。液体収容部450は、本体部41の内部に位置する。具体的には、液体収容部450は、本体部41の内壁によって区画される内部空間に形成されている。
図4に示すように、液体収容部450は、収容した液体としてのインクを流出させるための流出開口部432を有する。流出開口部432の形状は、概ね円筒形状である。本実施形態では、流出開口部432は、本体底壁44のうち、本体後壁47が位置する+Y方向側に形成されている。
【0043】
液体注入口455は、液体収容部450に液体としてのインクを補充するための孔である。液体注入口455の詳細は、後述する。
【0044】
液体供給部442は、カートリッジ装着部6の液体導入部642に液体としてのインクを供給するための部材である。液体供給部442は、流出開口部432に挿通されている。液体供給部442は、供給部側中心軸CA2を有する。液体供給部442は、本体底壁44からアダプター402側に突出し、供給部側中心軸CA2に沿って延びる筒状部材である。本実施形態では、
図6に示すように、供給部側中心軸CA2は、挿入完了状態において、Z軸に沿った軸である。また、
図7に示すように、装着状態において、供給部側中心軸CA2は、導入部側中心軸CA1と平行であり、Z軸に対して傾斜している。
図4に示すように、液体供給部442は、先端を形成する供給先端部442e1と、基端を形成する供給基端部442e2と、を有する。供給先端部442e1は、挿入完了状態および装着状態において、液体導入部642側に位置し、外部に向かって開口する。供給基端部442e2は、液体収容部450内に位置する。
【0045】
液体供給部442は、液体であるインクを流通させる供給部流路461と、供給部流路461を区画する供給部本体460と、供給部流路461を開閉するカートリッジ側弁機構480と、を有する。
【0046】
供給部本体460は、液体供給部442の外殻を形成する。供給部流路461は、液体収容部450と連通する。カートリッジ側弁機構480は、供給部流路461内に配置される。カートリッジ側弁機構480は、カートリッジ側弁座481と、カートリッジ側弁体483と、カートリッジ側付勢部材487と、を有する。供給部側中心軸CA2に沿った方向について、供給先端部442e1に近い側から順に、カートリッジ側弁座481と、カートリッジ側弁体483と、カートリッジ側付勢部材487と、が配置されている。
【0047】
カートリッジ側弁座481は、カートリッジ側弁体483に当接したり、離間したりする部分である。カートリッジ側弁座481は、円環状の部材である。カートリッジ側弁座481は、例えば、合成ゴムやエラストマーなどの弾性部材によって形成されている。カートリッジ側弁座481の外周面は、供給部流路461の内周面に対して気密に取り付けられている。カートリッジ側弁座481には、供給部側中心軸CA2に沿った方向に貫通するカートリッジ側弁孔489が形成されている。カートリッジ側弁体483は、供給部側中心軸CA2に沿って延びる概ね円柱状の部材である。カートリッジ側付勢部材487は、カートリッジ側弁体483をカートリッジ側弁座481に向かう方向に付勢する。カートリッジ側付勢部材487は、例えば、圧縮コイルバネである。
【0048】
液体導入部642と液体供給部442とが接続されていない状態、すなわち、供給部流路461の閉状態では、カートリッジ側付勢部材487の付勢力によってカートリッジ側弁体483がカートリッジ側弁座481に当接して、カートリッジ側弁孔489を塞ぐ。これにより、供給部流路461が非連通状態となる。一方で、液体導入部642と液体供給部442とが接続された状態、すなわち、供給部流路461の開状態では、カートリッジ側弁体483は、カートリッジ側弁座481から離れる方向に変位する。これにより、カートリッジ側弁機構480が開弁して、供給部流路461が連通状態となることで、カートリッジ4の液体収容部450に収容されたインクが、液体供給部442を介して、液体導入部642の内部流路661に供給される。
【0049】
図6および
図7に示すように、アダプター402は、液体収容体401と印刷装置10とを電気的および物理的に接続する機構を備えた連結部材である。
図8に示すように、アダプター402は、液体収容体401の本体底壁44に取り付けられている。アダプター402は、カートリッジ装着部6に対するカートリッジ4の装着動作において、液体収容体401と一体に移動する。アダプター402は、外殻を形成する5つの壁42c,44c~47cと、供給部位置決め部448と、端子配置部500と、供給部配置室465と、挿入開口部446と、を有する。
【0050】
5つの壁42c,44c~47cは、アダプター前壁42c、アダプター後壁47c、アダプター底壁44c、アダプター第1側壁45c、および、アダプター第2側壁46cである。アダプター前壁42cは、アダプター402の-Y方向側の壁を形成する。アダプター後壁47cは、Y方向においてアダプター前壁42cと対向し、アダプター402の+Y方向側の壁を形成する。アダプター底壁44cは、Z方向において液体収容体401の本体底壁44と対向する。アダプター底壁44cは、アダプター前壁42cとアダプター後壁47cとに交差する。アダプター第1側壁45cは、アダプター402の-X方向側の壁を形成する。アダプター第2側壁46cは、X方向においてアダプター第1側壁45cと対向し、アダプター402の+X方向側の壁を形成する。アダプター第1側壁45cおよびアダプター第2側壁46cはそれぞれ、アダプター前壁42cと、アダプター後壁47cと、アダプター底壁44cと、に交差する。以下において、各壁42c,44c~47cのうちで、装着状態のときにカートリッジ装着部6の収容室61側に位置する面を外面、外面とは反対側の面を内面と呼ぶ。
【0051】
供給部位置決め部448は、
図7に示すように、カートリッジ装着部6の装置側位置決め部644を受け入れる。供給部位置決め部448は、アダプター底壁44cの外面側から内面側に向けて窪んだ凹部である。
【0052】
端子配置部500は、
図8に示すように、アダプター前壁42cとアダプター底壁44cとが交差するコーナー部89に配置されている。端子配置部500は、回路基板50によって構成される。回路基板50には、
図8において視認できる面としての表面に配置された複数のカートリッジ側端子521と、表面とは反対側の裏面に配置された図示しない記憶装置と、を有する。
図2に示す装置側端子671と接触することで電気的に接続可能な複数のカートリッジ側端子521は、配線を介して記憶装置に電気的に接続されている。記憶装置は、カートリッジ4に関する情報、例えば、インクの色やインクの残量を記憶する。
【0053】
供給部配置室465は、液体供給部442を収容するために設けられた空間である。供給部配置室465は、アダプター底壁44cの内面と、アダプター第1側壁45cの内面と、アダプター第2側壁46cの内面と、に囲まれた部分によって形成されている。挿入開口部446は、液体供給部442の先端部である供給先端部442e1を外部に露出させる。挿入開口部446は、アダプター底壁44cの内面と外面とを貫通するように形成された孔である。供給部配置室465と挿入開口部446とはそれぞれ、アダプター底壁44c側からカートリッジ4を見た場合に、液体供給部442と重なる位置関係に配置される。つまり、供給部側中心軸CA2を通るように、供給部配置室465と挿入開口部446とが配置される。
【0054】
A-5.液体注入口の詳細構成:
図9は、液体注入口455の詳細を説明するための図である。
図10は、
図9の領域A1の拡大図である。液体注入口455は、本体部41を貫通して液体収容部450と連通する。液体注入口455から液体収容部450にインクを補充する場合、例えば、図示しない液体注入部材を液体注入口455に挿入した状態で、インクを注入する。液体注入部材は、補充用のインクを収容した液体補給容器内のインクを外部に流出させるための部材であり、例えば、液体注入針や液体注入チューブである。このようにすれば、
図4に示すカートリッジ側弁機構480を開弁することなく、液体収容部450にインクを補充することができる。
【0055】
なお、液体注入部材の外形は、
図10に示す液体注入口455の直径L1より小さくてもよい。このようにすると、液体注入口455に液体注入部材を挿入した際に、液体注入口455の内面455iと液体注入部材の外面との間に大気を連通させるための隙間を形成することができる。これにより、液体注入口455が、インクの注入に伴う気液交換のための大気連通口としての役割を兼ねることができる。さらに、この場合、本体部41において、液体注入口455とは異なる位置に大気連通口を別途形成しなくてもよい。そのため、液体注入口455とは別に大気連通口を形成することにより、液体収容部450に収容されたインクが大気連通口から外部に漏出することを防止することができる。
【0056】
また、液体注入部材の先端開口径は、
図4に示す液体導入部642の内径L2より大きくてもよい。カートリッジ側弁機構480を開弁して液体供給部442からインクを補充する場合、単位時間当たりのインクの注入量は、液体導入部642の内径L2に概ね依存する。よって、液体注入部材の先端開口径を液体導入部642の内径L2よりも大きくすることで、液体注入口455からインクを補充する場合に、液体供給部442からインクを補充する場合よりも単位時間当たりのインクの注入量を増やすことができる。ここで、液体注入部材の先端開口径を大きくするには、液体注入部材の外形を大きくすればよく、液体供給部材の外形を大きくするには、
図10に示す液体注入口455の直径L1を大きくする必要がある。そこで、液体注入口455の直径L1は、
図4に示す液体導入部642の内径L2より大きくてもよい。このようにすれば、液体注入口455の直径L1を液体導入部642の内径L2以下にする場合と比べて、より径の大きい先端開口径を有する液体注入部材を液体注入口455に挿入することができる。これにより、単位時間当たりのインクの注入量を増やすことができる。よって、液体収容部450にインクを補充する際に要する時間を短縮することができる。
【0057】
本実施形態では、液体注入口455は、収容体角部423に形成されている。換言すると、
図6および
図7に示すように、カートリッジ4の挿入完了状態および装着状態において、液体注入口455は、重力方向に沿ったZ方向で最も高い位置に形成されている。これにより、液体収容部450に収容されたインクが液体注入口455から外部に漏出する可能性を低減することができる。さらに、本体後壁47の上端部程度の高さ位置の液面となるように液体注入口455からインクを注入した場合であっても、液体注入口455が本体後壁47よりも上方に位置するため、インクが液体注入口455から溢れ出す可能性を低減することができる。
【0058】
上記第1実施形態によれば、液体注入口455から液体収容部450に液体としてのインクを補充することができる。つまり、カートリッジ側弁機構480を開弁することなく、液体収容部450にインクを補充することができる。これにより、液体収容部450へのインクの注入効率を向上させることができる。さらに、液体収容部450に収容されたインクの残量が予め定められた量以下となった場合に、液体収容部450へのインクの再注入を容易に行うことができる。
【0059】
また、上記第1実施形態によれば、カートリッジ4のカートリッジ側弁機構480を開弁することなく、液体注入口455に液体注入部材を挿入して、インクを注入することで、液体収容部450にインクを補充することができる。このようにすると、液体注入部材は、カートリッジ側弁機構480を開弁させるための部材を備える必要がない。よって、液体注入部材の構成を簡素化することができる。
【0060】
B.第2実施形態:
図11は、液体注入口455に栓体8が装着されたカートリッジ4aの部分斜視図である。
図11において、カートリッジ4aについて付したXYZ方向は、
図6に示す挿入完了状態を基準としている。本実施形態では、カートリッジ4aは、さらに、液体注入口455を塞ぐ栓体8を備える。他の構成要素については、第1実施形態と同一である。第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すと共に説明を省略する。
【0061】
図12は、第2実施形態における栓体8の第1斜視図である。
図13は、第2実施形態における栓体8の第2斜視図である。
図14は、挿入完了状態におけるカートリッジ4aであって、液体注入口455に栓体8が取り付けられた取付状態におけるカートリッジ4aと、カートリッジ装着部6とを示す断面図である。
図15は、
図14の領域A2の拡大図である。
図16は、装着状態におけるカートリッジ4aであって、取付状態におけるカートリッジ4aと、カートリッジ装着部6とを示す断面図である。
図14から
図16までの各図はいずれも、導入部側中心軸CA1を通るYZ平面を切断面とした場合の断面を模式的に示している。
【0062】
栓体8は、液体注入口455に着脱可能に取り付けられる。
図12に示すように、栓体8は、栓胴部81と、栓頂部83と、栓底部85と、を有する。
図11および
図15に示すように、栓胴部81は、液体注入口455の内面455iに接触して液体注入口455を塞ぐ。栓胴部81の外周形状は、液体注入口455の内面455iによって形成される内周形状に沿った形状である。栓頂部83は、栓胴部81から突出した凸部である。栓頂部83は、取付状態において、収容室61側に位置する。栓頂部83は、液体注入口455に栓体8を取り付けたり、液体注入口455から栓体8を取り外したりするときに、ユーザーが把持する部分である。栓体8に栓頂部83を設けることで、液体注入口455に栓体8を着脱しやすくできる。栓底部85は、取付状態において、液体収容部450側に位置する。栓底部85は、取付状態において、液体収容部450と対向する栓底面850を有する。本実施形態では、
図13に示すように、栓底面850は、平面状である。
【0063】
栓体8は、例えば、合成ゴムなどの弾性部材によって形成されている。弾性部材によって栓体8を形成することで、液体注入口455に対して栓体8を容易に着脱できる。さらに、液体注入口455に栓体8を繰り返し着脱する場合に、液体注入口455が破損する可能性を低減することができる。
【0064】
図14および
図16に示すように、栓体8は、装着動作において、カートリッジ装着部6に干渉しない。具体的には、
図15に示すように、取付状態において、液体注入口455よりも外部に突出している栓頂部83の外形は、カートリッジ4とカートリッジ装着部6との隙間640より小さい。換言すると、液体注入口455からの栓体8の突出高さは、カートリッジ装着部6の内壁6iであって、収容室61を形成する内壁6iと、カートリッジ4aの外壁4uと、の離間距離よりも小さい。このようにすれば、カートリッジ装着部6に対してカートリッジ4aを着脱する際に、栓体8が、カートリッジ4の挿抜動作を阻害することを防ぐことができる。
【0065】
上記第2実施形態によれば、
図11に示すように、液体注入口455を栓体8によって塞ぐことができる。そのため、液体収容部450に収容されたインクが液体注入口455から外部に漏出する可能性をさらに低減することができる。
【0066】
なお、栓体8の外形の少なくとも一部は、液体注入口455の直径L1に応じて定まる。よって、
図4に示す液体注入口455の直径L1は、予め定められた上限値未満であることが好ましい。液体注入口455の直径L1の上限値は、例えば、装着動作において、栓体8とカートリッジ装着部6とが干渉しない状態とすることを可能とする寸法である。
【0067】
C.第3実施形態:
図17は、第3実施形態における栓体8aの斜視図である。本実施形態では、栓底部85が溝部87を有する。他の構成については、第2実施形態と同一である。上記実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すと共に説明を省略する。
【0068】
溝部87は、取付状態において、栓底部85のうちで最も液体収容部450側に位置する栓底面850から栓胴部81に向かう方向に窪む。本実施形態では、栓底部85は、複数の溝部87を有する。複数の溝部87は、予め定められた間隔ごとに平行に配列されている。溝部87の形状は、栓胴部81と栓底部85との境界面815を底面とする有底箱状である。溝部87は、底面としての境界面815と、側面としての溝側面875と、が稜線を挟んで形成する溝角部877を有する。溝角部877は、毛管力によって液体としてのインクを保持する。なお、溝部87の数、形状、および形成位置は、これに限られるものではない。
【0069】
上記第3実施形態によれば、栓体8は、取付状態において液体収容部450側に位置する栓底部85に溝部87を有する。この溝部87は、毛管力によってインクを保持することが可能な溝角部877を有する。これにより、液体注入口455から栓体8を取り外す際に、栓底部85に付着したインクが、カートリッジ4aの周囲に付着したり飛散したりする可能性を低減することができる。
【0070】
D.他の実施形態:
D-1:他の実施形態1:
他の実施形態では、カートリッジ4,4aは、液体注入口455とは別に、液体収容部450と外部とを連通させる大気連通口を備えてもよい。この場合、液体注入口455から液体収容部450にインクを注入する際に、大気連通口によって液体収容部450の気液交換が行われる。大気連通口は、液体供給部442とは異なる位置に配置されており、例えば、液体収容部450を形成する本体部41の壁42~47のいずれかに形成される。このような形態であれば、液体注入口455の内面455iと液体注入部材の外面との間に大気を連通させるための隙間を形成する必要がない。そのため、液体注入口455の内面455iと液体注入部材の外面との間に形成された隙間により気液交換を行う場合と比べて、液体注入口455とは異なる位置に設けられた大気連通口により気液交換を行う場合には、液体注入部材の先端開口径を大きくすることができる。これにより、単位時間当たりのインクの注入量をさらに増やすことができる。よって、液体収容部450へのインクの注入効率をさらに向上させることができる。
【0071】
D-2.他の実施形態2:
他の実施形態では、カートリッジ4,4aは、2以上の液体注入口455を備えてもよい。このような形態であれば、液体収容部450に対して、2以上の液体注入口455から同時にインクを注入することができる。これにより、単位時間当たりのインクの注入量をさらに増やすことができる。よって、液体収容部450へのインクの注入効率をさらに向上させることができる。
【0072】
D-3.他の実施形態3:
上記実施形態では、
図9に示すように、液体注入口455は、収容体角部423に形成されていた。しかし、本開示は、これに限られるものではない。液体注入口455は、液体収容部450を形成する本体部41の壁42~47のいずれかに形成されていればよく、例えば、最上壁431に形成されていてもよい。液体注入口455を最上壁431に形成する場合、カートリッジ4,4aの挿入完了状態および装着状態において、液体収容部450に収容されたインクの液面よりも重力方向に沿ったZ方向で高い位置に液体注入口455を配置しやすくできる。よって、このような形態であっても、液体収容部450に収容されたインクが液体注入口455から漏出する可能性を低減することができる。また、液体注入口455を本体部41の最上壁431以外の壁42,44,45,46,433,435に形成する場合であっても、液体注入口455に栓体8を装着する等によって、液体収容部450に収容されたインクが液体注入口455から漏出する可能性を低減することができる。
【0073】
D-4.他の実施形態4:
他の実施形態では、
図10に示す液体注入口455の直径L1は、
図4に示す液体導入部642の内径L2以下であってもよい。このような形態であっても、カートリッジ4,4aのカートリッジ側弁機構480を開弁することなく、液体収容部450にインクを補充することができる。よって、液体供給部442からインクを補充する場合よりもインクの注入効率を向上させることができる。
【0074】
D-5.他の実施形態5:
他の実施形態では、カートリッジ4aは、栓体8,8aを備えなくてもよい。この場合、例えば、カートリッジ4aの挿入完了状態および装着状態において、液体収容部450に収容されたインクの液面よりも重力方向で高い位置に液体注入口455を形成する。このような形態であれば、栓体8,8aを液体注入口455に装着せずとも、液体収容部450に収容されたインクが液体注入口455から外部に漏出する可能性を低減することができる。
【0075】
D-6.他の実施形態6:
他の実施形態では、栓体8は、例えば、液体注入部材を押し当てることで開く切れ目を有していてもよい。このような形態であれば、液体注入口455から栓体8,8aを取り外すことなく、液体注入口455から液体収容部450にインクを注入することができる。
【0076】
D-7.他の実施形態7:
他の実施形態では、液体収容体401とアダプター402とは、ブロー成形などによって一体成形されていてもよい。
【0077】
F.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0078】
(1)本開示の一形態によれば、カートリッジが提供される。印刷装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されるカートリッジにおいて、前記カートリッジは、前記カートリッジ装着部に対して水平方向である挿入方向に挿入された挿入完了の後に、前記挿入方向の奥側を回転支点として、前記カートリッジのうち前記挿入方向の手前側部分を、重力方向成分を有する回転装着方向に移動させる装着動作によって前記カートリッジ装着部に装着され、前記カートリッジは、外殻を形成する本体部と、前記本体部の内部に位置し、前記印刷装置に供給する液体を収容する液体収容部と、前記本体部を貫通して前記液体収容部と連通する液体注入口と、前記液体収容部と連通し、前記カートリッジ装着部の液体導入部に前記液体を供給する液体供給部と、を有する液体収容体と、前記液体収容体に取り付けられたアダプターであって、前記液体導入部が挿通される挿入開口部を有するアダプターと、を備える。この形態によれば、液体供給部の弁機構を開弁することなく、液体注入口から液体収容部に液体を注入することができる。そのため、より効率的に液体収容部に液体を注入することができる。
【0079】
(2)上記形態において、前記本体部は、前記カートリッジ装着部に前記カートリッジが装着された装着状態において、前記本体部のうち前記挿入方向の奥側に位置する前壁と、前記前壁と交差し、前記アダプターが位置する側とは反対側に位置する上壁と、前記前壁と前記上壁とが交わる収容体角部と、を有し、前記液体注入口は、前記収容体角部に形成されてもよい。この形態によれば、カートリッジの装着動作時において、液体注入口を重力方向において最も高い位置に形成することができる。これにより、液体収容部に収容された液体が液体注入口から外部に漏出する可能性を低減できる。
【0080】
(3)上記形態において、前記液体注入口の直径は、前記液体導入部の内径よりも大きくてもよい。この形態によれば、液体供給部の弁機構を開弁することで液体収容部に液体を注入する場合と比べて、単位時間当たりのインクの注入量を増やすことができる。よって、より一層効率的に液体収容部に液体を注入することができる。
【0081】
(4)上記形態において、前記液体注入口を塞ぐ栓体を備え、前記栓体は、前記装着動作において、前記カートリッジ装着部に干渉しない形態であってもよい。この形態によれば、カートリッジ装着部へのカートリッジの装着動作を阻害することなく、液体収容部に収容された液体が液体注入口から外部に漏出する可能性を低減できる。
【0082】
(5)上記形態において、前記栓体は、前記液体注入口に取り付けられた状態において、前記液体収容部側に位置する栓底部を有し、前記栓底部は、溝部を有してもよい。この形態によれば、栓底部に付着した液体の少なくとも一部を溝部によって保持することができる。これにより、液体注入口から栓体を取り外す際に、栓底部に付着した液体がカートリッジの周囲に飛散する可能性を低減できる。
【0083】
(6)上記形態において、前記栓体は、弾性部材によって形成されていてもよい。この形態によれば、弾性部材によって栓体を形成することで、液体注入口に対して栓体を容易に着脱することができる。さらに、液体注入口に栓体を繰り返し着脱する場合に、液体注入口が破損する可能性を低減することができる。
【0084】
上述した本開示の各形態の有する複数の構成要素はすべてが必須のものではなく、上述の課題の一部又は全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部又は全部を達成するために、適宜、前記複数の構成要素の一部の構成要素について、その変更、削除、新たな他の構成要素との差し替え、限定内容の一部削除を行うことが可能である。また、上述の課題の一部又は全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部又は全部を達成するために、上述した本開示の一形態に含まれる技術的特徴の一部又は全部を上述した本開示の他の形態に含まれる技術的特徴の一部又は全部と組み合わせて、本開示の独立した一形態とすることも可能である。
【0085】
本開示は、カートリッジ以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、カートリッジを備える印刷装置、カートリッジの製造方法、カートリッジへの液体の充填方法などの形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0086】
1…印刷システム、2…印刷用紙、4,4a…カートリッジ、4C…第2カートリッジ、4K…第1カートリッジ、4M…第3カートリッジ、4Y…第4カートリッジ、4u…カートリッジの外壁、6…カートリッジ装着部、6i…カートリッジ装着部の内壁、8,8a…栓体、10…印刷装置、11…前面カバー、13…交換用カバー、15…操作ボタン、20…キャリッジ、22…吐出ヘッド、24…チューブ、30…駆動機構、31…制御部、32…タイミングベルト、34…駆動モーター、41…本体部、42…本体前壁、42c…アダプター前壁、43…本体上壁、44…本体底壁、44c…アダプター底壁、45…本体第1側壁、45c…アダプター第1側壁、46…本体第2側壁、46c…アダプター第2側壁、47…本体後壁、47c…アダプター後壁、50…回路基板、61…収容室、61C,61K,61M,61Y…スロット、62…第2装置壁、63…装置上壁、64…装置底壁、65…第1装置側壁、66…第2装置側壁、67…第1装置壁、81…栓胴部、83…栓頂部、85…栓底部、87…溝部、89…コーナー部、220…ノズル、401…液体収容体、402…アダプター、423…収容体角部、431…最上壁、432…流出開口部、433…傾斜壁、435…端壁、442…液体供給部、442e1…供給先端部、442e2…供給基端部、446…挿入開口部、448…供給部位置決め部、450…液体収容部、455…液体注入口、 455i…液体注入口の内面、460…供給部本体、461…供給部流路、465…供給部配置室、480…カートリッジ側弁機構、481…カートリッジ側弁座、483…カートリッジ側弁体、487…カートリッジ側付勢部材、489…カートリッジ側弁孔、500…端子配置部、521…カートリッジ側端子、610…支持部材、611…第1支持側壁、612…第2支持側壁、613…主壁、614…装置開口部、640…隙間、642…液体導入部、644…装置側位置決め部、660…導入部本体、661…内部流路、670…装置側端子部、671…装置側端子、674…挿抜開口部、677…係合形成体、680…装置流路弁機構、681…装置側弁座、683…装置側弁体、683a…開閉部分、685…シール部材、687…装置側付勢部材、698…回転支点、699…液体貯留部、815…境界面、850…栓底面、875…溝側面、877…溝角部、CA1…導入部側中心軸、CA2…供給部側中心軸、D1…挿入方向、D2…回転装着方向、D3…接続解除方向、D4…取り外し方向、L1…液体注入口の直径、L2…液体導入部の内径