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特開2024-90783屈曲構造体及びこれを用いた外科用器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090783
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】屈曲構造体及びこれを用いた外科用器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/29 20060101AFI20240627BHJP
   B25J 18/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61B17/29
B25J18/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206889
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】早川 悠暉
(72)【発明者】
【氏名】平田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】石山 雄太
【テーマコード(参考)】
3C707
4C160
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707BS20
3C707HT04
4C160GG24
4C160GG32
4C160NN02
4C160NN07
(57)【要約】
【課題】小径化を図ることが可能な屈曲構造体を提供する。
【解決手段】屈曲伸展を行う屈曲部11と、屈曲部11の屈曲伸展に応じて動作する可動側端部に設けられた可動部13と、屈曲部11及び可動部13を挿通し、可動部13上に位置する端部17aを有した屈曲伸展を行わせるための操作ワイヤー17と、可動部13に取り付けられ可動部13上の操作ワイヤー17の端部17aを保持するケース部27と、を備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲伸展を行う屈曲部と、
前記屈曲部の前記屈曲伸展に応じて動作する可動側端部に設けられた可動部と、
前記屈曲部及び前記可動部を挿通し前記可動部上に位置する端部を有した前記屈曲伸展を行わせるための操作ワイヤーと、
前記可動部に取り付けられ前記可動部上の前記操作ワイヤーの端部を保持する保持部材と、
を備えた屈曲構造体。
【請求項2】
請求項1の屈曲構造体であって、
前記保持部材は、前記可動部との間で保持する凹部を有する、
屈曲構造体。
【請求項3】
請求項1又は2の屈曲構造体であって、
前記可動部は、軸方向の寸法が異なる複数の周方向部を備え、
前記操作ワイヤーは、周方向に複数設けられそれぞれ前記周方向部上に前記端部が位置する、
屈曲構造体。
【請求項4】
請求項3の屈曲構造体であって、
前記屈曲部内に位置し一方の端部が前記可動部内に位置する芯材を備え、
前記可動部は、前記軸方向の寸法が相対的に大きい前記周方向部で前記芯材の前記一方の端部を保持する、
屈曲構造体。
【請求項5】
請求項1又は2の屈曲構造体を用いた外科用器具であって、
前記屈曲構造体に取り付けられるエンドエフェクターを備え、
前記エンドエフェクターは、前記可動部に取り付けられ前記保持部材として機能するケース部を備えた、
外科用器具。
【請求項6】
請求項5の外科用器具であって、
前記エンドエフェクターは、
相互間が開閉される一対のジョーと、
前記一対のジョーの少なくとも一方を回転自在に支持し前記ケース部内に支持されるジョーホルダーと、
を備えた外科用器具。
【請求項7】
請求項6の外科用器具であって、
前記可動部は、軸方向の寸法が異なる複数の周方向部を備え、
前記操作ワイヤーは、周方向に複数設けられそれぞれ前記周方向部上に前記端部が位置し、
前記ジョーホルダーは、前記軸方向の寸法が相対的に小さい前記周方向部に位置する前記操作ワイヤーの前記端部上に位置すると共に、前記軸方向の寸法が相対的に大きい前記周方向部に位置する前記操作ワイヤーの前記端部に径方向において隣接する、
外科用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットやマニピュレーター等に供される屈曲構造体及びこれを用いた外科用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の屈曲構造体としては、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0003】
この屈曲構造体では、屈曲伸展を行う屈曲部としての外筒の先端に可動部が設けられている。外筒は、操作ワイヤーとしての駆動ワイヤーによって屈曲伸展が行われるようになっている。駆動ワイヤーは、外筒内を挿通して、端部が可動部に支持されている。端部の支持は、可動部に設けられた接続孔内に端部全体が収納されて行われている。
【0004】
かかる構造では、駆動ワイヤーが破断した場合でも、駆動ワイヤーの端部を可動部の接続孔内に保持することができる。
【0005】
しかし、屈曲構造体の外径を小径化する場合には、接続孔を可動部の外周に開放する必要が生じることがあり、駆動ワイヤーの断線時に端部が脱落するおそれがある。このため、従来の屈曲構造体では、小径化に限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-073298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、屈曲構造体の小径化に限界があった点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、屈曲伸展を行う屈曲部と、前記屈曲部の前記屈曲伸展に応じて動作する可動側端部に設けられた可動部と、前記屈曲部及び前記可動部を挿通し前記可動部上に位置する端部を有した前記屈曲伸展を行わせるための操作ワイヤーと、前記可動部に取り付けられ前記可動部上の前記操作ワイヤーの端部を保持する保持部材と、を備えた屈曲構造体を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記屈曲構造体を用いた外科用器具であって、前記屈曲構造体に取り付けられるエンドエフェクターを備え、前記エンドエフェクターは、前記可動部に取り付けられて前記保持部材として機能するケース部を備えた、
外科用器具を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、屈曲構造体の小径化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1に係る屈曲構造体を用いた外科用器具としての鉗子を示す正面図である。
図2図2は、図1の鉗子を示す断面図である。
図3図3(A)は、図2の鉗子の可動部周辺を拡大して示す断面図、図3(B)は、図3(A)に対して周方向で90°ずれた断面図である
図4図4は、図3の可動部を表面側から見た斜視図である。
図5図5は、図3の可動部を底面側から見た斜視図である。
図6図6は、図3の可動部の平面図である。
図7図7は、図3の可動部の底面図である。
図8図8は、図2の屈曲構造体の可動部周辺を示す斜視図である。
図9図9は、図8の可動部周辺を示す平面図である。
図10図10は、図1の鉗子のエンドエフェクターのケース部を示す斜視図である。
図11図11は、図10のケース部の側面図である。
図12図12は、図11のXII-XII線に係る断面図である。
図13図13は、図2の鉗子のエンドエフェクターのジョーホルダーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
屈曲構造体の小径化を図ることを可能にするという目的を、可動部に取り付けた保持部材によって可動部上の操作ワイヤーの端部を保持することで実現した。
【0013】
図のように、屈曲構造体5は、屈曲部11と、可動部13と、操作ワイヤー17と、保持部材27とを備える。
【0014】
屈曲部11は、屈曲伸展を行う部分である。可動部13は、屈曲部11の屈曲伸展に応じて動作する可動側端部に設けられた部材である。操作ワイヤー17は、屈曲部11及び可動部13を挿通し、可動部13上に位置する端部17aを有した屈曲伸展を行わせるための部材である。保持部材27は、可動部13に取り付けられ、可動部13上の操作ワイヤー17の端部17aを保持する部材である。
【0015】
保持部材27は、操作ワイヤー17の端部17aを保持するものであればよく、カバーやクリップ等を可動部13に対して後付けし或いは一体に設けたものとすることが可能である。一体に設ける場合は、例えばヒンジ等によって保持部材を可動部13に結合すればよい。何れにしても、保持部材27は、可動部13との間で保持する凹部35a、35bを有してもよい。
【0016】
可動部13は、軸方向の寸法が異なる複数の周方向部21a、21bを備え、操作ワイヤー17は、周方向に複数設けられ、それぞれ周方向部21a、21b上に端部17aが位置してもよい。
【0017】
屈曲構造体5は、芯材15を備えてもよい。芯材15は、屈曲部11内に位置し、一方の端部が可動部13内に位置する。この場合、可動部13は、軸方向の寸法が相対的に大きい周方向部21aで芯材15の一方の端部を保持してもよい。
【0018】
かかる屈曲構造体5は、各種のロボットやマニピュレーターに適用可能であるが、例えば外科用器具1に用いることが可能である。
【0019】
外科用器具1は、屈曲構造体5に取り付けられるエンドエフェクター7を備える。エンドエフェクター7は、屈曲構造体5の可動部13に取り付けられ、保持部材として機能するケース部27を備えてもよい。
【0020】
エンドエフェクター7は、種々のものを採用可能であるが、一対のジョー29と、ジョーホルダー31とを備えたものであってもよい。一対のジョー29は、相互間が開閉されるものである。ジョーホルダー31は、少なくとも一方のジョー15を回転自在に支持し、ケース部27内に支持される。一対のジョー15は、片開きの場合、一方が回転自在にケース部27に支持され、両開きの場合、双方が回転自在にケース部27に支持される。
【0021】
ジョーホルダー31は、軸方向の寸法が相対的に小さい周方向部21bに位置する操作ワイヤー17の端部17a上に位置すると共に、軸方向の寸法が相対的に大きい周方向部21aに位置する操作ワイヤー17の端部17aに径方向において隣接してもよい。
【実施例0022】
[鉗子]
図1は、本発明の実施例1に係る屈曲構造体を用いた外科用器具としての鉗子を示す正面図である。図2は、図1の鉗子を示す断面図である。図3(A)は、図2の鉗子の可動部周辺を拡大して示す断面図、図3(B)は、図3(A)に対して周方向で90°ずれた断面図である。
【0023】
本実施例の鉗子1は、図1及び図2のように、手術支援ロボットや手術支援マニピュレーター等に用いられる外科用器具であり、シャフト3と、屈曲構造体5と、エンドエフェクター7とを備える。
【0024】
なお、本実施例では、外科用器具の一例として鉗子1を示すが、屈曲構造体5を適用可能な外科容器具は、屈曲伸展を行うものであれば、鉗子1に限定されるものではない。また、屈曲構造体5は、外科用器具以外にも、屈曲伸展を行うロボットやマニピュレーター等の各種の機器に適用することが可能である。
【0025】
シャフト3は、円筒状に形成されており、例えば軸周り回転可能に手術支援ロボットや手術支援マニピュレーター等に結合される。シャフト3の先端には、屈曲構造体5が設けられている。なお、シャフト3の形状は特に限定されるものではない。
【0026】
屈曲構造体5は、関節機能を有し、鉗子1における屈曲伸展を可能とする部分である。本実施例の屈曲構造体5は、基部9と、屈曲部11と、可動部13と、芯材15と、操作ワイヤー17とを備えている。
【0027】
基部9は、屈曲部11の一端(固定側端部)を受ける構成である。基部9は、樹脂や金属等によって形成された柱状体、特に段付き状の円柱体である。この基部9は、シャフト3の先端に嵌合して取り付けられている。この基部9には、屈曲部11の一端が溶接等によって取り付けられている。ただし、基部9には、屈曲部11の一端が当接するだけでもよい。
【0028】
なお、基部9は、屈曲部11の軸方向の一端を受け、シャフト3の端部に結合できればよく、屈曲構造体5が適用される機器に応じて材質、形状、構造は自由に設定できる。軸方向は、鉗子1の軸心に沿った方向をいう。
【0029】
屈曲部11は、図2図3(B)のように、複数のウェーブワッシャー11aを軸方向に積層すると共に積層状態を溶接等によって保持したものである。この屈曲部11は、屈曲伸展によって基部9に受けられた軸方向の一端に対して軸方向の他端(可動側端部)が動作する。
【0030】
なお、屈曲部11は、屈曲や伸展が可能であれば特に限定されるものではなく、コイルばねやベローズ等とすることも可能である。この屈曲部11の先端には、可動部13が設けられている。
【0031】
図4は、可動部を表面側から見た斜視図、図5は、可動部を底面側から見た斜視図、図6は、可動部の平面図、図7は、可動部の底面図である。
【0032】
可動部13は、図3(A)及び(B)のように、屈曲部11の軸方向の他端(可動側端部)を受ける構成である。この可動部13は、樹脂や金属等によって形成された柱状体、特に円柱体となっている。本実施例において、可動部13は、屈曲部11の他端上に載置された状態で、屈曲部11の他端に溶接等によって取り付けられている。ただし、可動部13は、屈曲部11の他端が当接するだけでもよい。
【0033】
なお、可動部13は、屈曲部11の軸方向の他端を受けることができればよく、屈曲構造体5が適用される機器に応じて材質、形状、構造は自由に設定できる。
【0034】
本実施例の可動部13は、図3(A)~図7のように、中心部に軸方向の貫通孔19が設けられている。この貫通孔19の周囲には、軸方向の寸法が異なる複数の周方向部21a及び21bを備えている。本実施例において、周方向部21aは、相対的に軸方向の寸法が大きく、周方向部21bは相対的に軸方向の寸法が小さい。
【0035】
本実施例において、周方向部21aは、貫通孔19の縁部19aに一体に二つ設けられている。これら周方向部21aは、周方向で180°異なる位置に配置されている。なお、周方向部21aの数や配置間隔は任意であり、1つ又は3つ以上の周方向部21aを設けてもよい。貫通孔19の縁部19aは、貫通孔19を区画する環状の部分である。
【0036】
各周方向部21aは、平面視が扇形環の柱状となっている。ただし、周方向部21aの平面形状は、任意であり、矩形状等の他の形状であってもよい。なお、平面視とは、軸方向から見た状態をいう。
【0037】
周方向部21aの表面23aは、貫通孔19の縁部19aの表面23bと面一に構成されている。ただし、周方向部21aの表面23aと縁部19aの表面23bとは面一である必要はない。縁部19aの表面23b及び周方向部21aの表面23aは、軸方向における屈曲部11に対する反対側の表面をいう。
【0038】
かかる周方向部21aは、軸方向で貫通孔19の縁部19aから屈曲部11側へ突出している。周方向部21aの屈曲部11側の端部には、周方向部21bが設けられている。
【0039】
周方向部21bは、周方向部21aにそれぞれ一体に二つ設けられている。これにより、周方向部21bは、周方向で180°異なる位置に配置されている。なお、周方向部21bも、周方向部21aに応じて数や配置間隔を任意に設定できる。
【0040】
各周方向部21bは、平面視が扇形環の板状となっている。なお、周方向部21bの平面形状は、任意であり、矩形状等の他の形状であってもよい。周方向部21bの表面23cは、周方向部21aの表面21aに対して、軸方向で屈曲部11側に位置している。
【0041】
周方向部21bは、軸方向において、貫通孔19の縁部19aとの間に隙間がある。これにより、可動部13の内部13aは、外部に対して開放されている。可動部13の内部13aは、芯材15の一方の端部が挿入される空間部となっている。周方向において、周方向部21bは、周方向部21aから突出し、隣接する周方向部21bに対して間隔を空けて配置されている。
【0042】
かかる可動部13には、周方向部21a及び21bに操作ワイヤー17を挿通するための挿通孔25a及び25bがそれぞれ設けられている。挿通孔25a及び25bは、それぞれ周方向部21a及び21bを軸方向で貫通している。
【0043】
挿通孔25aは、周方向部21aと貫通孔19の縁部19aとの間で平面視において閉じられた孔となっている。また、挿通孔25aは、周方向部21aの貫通孔19の縁部19aから軸方向に突出する部分において、径方向の内側が開放された平面視で凹状の孔となっている。挿通孔25bは、全体として径方向の内側が開放された平面視で凹状の孔となっている。なお、径方向は、鉗子1の径に沿った方向をいう。
【0044】
芯材15は、図2及び図3のように、屈曲部11と共に屈曲伸展が可能な部材である。本実施例の芯材15は、多重コイルばね、特に二重コイルばねとなっている。ただし、芯材15は、密着コイルばねや可撓性の柱状体等とすることも可能である。
【0045】
多重コイルばねは、少なくとも二つのコイルばねの一方の巻部間に他方の巻部が嵌合して配置されたものであり、屈曲部11の圧縮を抑制可能となっている。なお、多重コイルばねは、三つ以上のコイルばねを用いたものであってもよい。
【0046】
かかる芯材15は、基部9及び屈曲部11を挿通し、一端が可動部13の内部13aに位置している。この状態で、芯材15の一端は、貫通孔19の縁部19aに軸方向で突き当てられ、周方向部21aに径方向で保持される。
【0047】
図8は、屈曲構造体の可動部周辺を示す斜視図、図9は、図8の可動部周辺を示す平面図である。
【0048】
図2図3(B)の操作ワイヤー17は、軸方向に引かれることによって、屈曲部11に屈曲伸展を行わせるためのものである。本実施例の操作ワイヤー17は、屈曲構造体5の周方向の4か所に90度毎に設けられている。これら操作ワイヤー17の何れか一つ又は複数が可動部13に対して基部9側に引かれると、屈曲部11を屈曲させて可動部13を動作させることができる。
【0049】
なお、軸方向に操作とは、軸方向で操作ワイヤー17の相対的な引き及び引き戻しを行うことを意味する。操作ワイヤー17の数や配置間隔は任意に設定可能である。
【0050】
各操作ワイヤー17は、撚り線、単線、ピアノ線、多関節ロッド、鎖、紐、糸、縄等で構成できる。この操作ワイヤー17は、屈曲部11及び可動部13を挿通し、可動部13上に位置する端部17aを有する。
【0051】
すなわち、操作ワイヤー17は、屈曲部11に設けられた挿通孔25cを挿通し、可動部13において挿通孔25a又は25bを挿通する。操作ワイヤー17の端部17aは、スリーブ等の端部処理具がカシメ等によって取り付けられたものである。
【0052】
この端部17aは、図3(A)及び(B)並びに図8及び図9のように、操作ワイヤー17の他の部分よりも平面視で膨出した形状を有している。これにより、端部17aは、可動部13の挿通孔25a及び25bよりも平面視で膨出し、可動部13の周方向部21a及び21bの表面23a及び23c上に載置されている。従って、端部17aは、可動部13上に位置している。
【0053】
なお、端部17aは、可動部13の表面23a及び23c上に載置される場合の他、周方向部21a及び21bに設けた軸方向の凹部に一部が入り込んだ状態も含む。凹部は、その底部に挿通孔25a及び25bが開口する。
【0054】
かかる操作ワイヤー17の端部17aは、保持部材であるエンドエフェクター7のケース部27によって保持される。
【0055】
図10は、ケース部を示す斜視図、図11は、図10のケース部の側面図、図12は、図11のX-X線に係る断面図である。
【0056】
本実施例のエンドエフェクター7は、図1図3(B)のように、ケース部27と、一対のジョー29と、ジョーホルダー31と、カム部33とを備えている。なお、エンドエフェクター7は、カム式で一対のジョー29が開閉するが、リンク式であってもよい。
【0057】
ケース部27は、可動部13に取り付けられ、保持部材として機能する。保持部材は、可動部13に取り付けられ、可動部13上の操作ワイヤー17の端部17aを保持するものをいう。ここでの保持は、径方向及び軸方向での保持をいい、操作ワイヤー17が破断した場合に端部17aが脱落しない程度のものをいう。なお、保持部材は、ケース部27とは別のカバーやクリップ等としてもよい。
【0058】
ケース部27は、図3(A)及び(B)並びに図10図12のように、全体として円筒状に形成されているが、可動部13に取り付けられるものであれば、特に限定されるものではない。本実施例のケース部27は、軸方向の一端部27aが可動部13に対応した形状を有する。この一端部27aが可動部13に嵌合する。この結果、ケース部27の一端部27aが可動部13の表面23a及び23cに突き当てられる。なお、ケース部27は、可動部13全体を覆う形状であってもよい。
【0059】
ケース部27の一端部27aは、可動部13との間で保持する凹部35a及び35bを有する。
【0060】
凹部35aは、平面視において閉じられた軸方向での凹状である。この凹部35aは、周方向部21a上の操作ワイヤー17の端部17aを内部に入れ込んで保持する。
【0061】
凹部35bは、ケース部27の一端部27aの軸方向の突出部27bの径方向の内側に設けられている。この凹部35bは、軸方向及び径方向の凹状となっている。この凹部35bは、周方向部21b上の端部17aを径方向及び軸方向の外側から押さえるようにして保持する。なお、凹部35bは、径方向の内側からの端部17aの保持を行わないが、この保持は、図8及び図9のように、貫通孔19の縁部19aによって行われる。
【0062】
従って、操作ワイヤー17が破断しても端部17aの脱落を抑制できる。また、可動部13側に操作ワイヤー17の端部17aを保持する必要がないので、屈曲構造体5の小径化を図ることが可能となる。
【0063】
かかるケース部27は、図1及び図2のように、一対のジョー29を回転自在に支持して開閉可能とする。本実施例のケース部27は、図10図12のように、軸方向の先端側にスリット37が設けられ、スリット37を挟んだ径方向の一側及び他側にジョー29を支持する支持壁部39が区画されている。
【0064】
このケース部27は、スリット37に沿った径方向の両側でそれぞれ開口する支持凹部41を有する。
【0065】
図1及び図2の一対のジョー29は、相互間が開閉されるものであり、本実施例において、閉じ動作によって把持を行うグリッパとして構成されている。これらジョー29は、同一形状に形成され、表裏が逆になって配置されている。ただし、ジョー29は、同一形状である必要はない。各ジョー29は、本体部43と、アーム45と、回転軸部47とを備えている。
【0066】
本体部43は、棒状に形成され、開閉動作を行う部分である。本体部43の軸方向の基端には、アーム45を介して回転軸部47が設けられている。
【0067】
回転軸部47は、ケース部27の支持凹部41に滑りによって回転自在に係合する。なお、回転軸部47及び支持凹部41の形状は、回転軸部47を支持凹部41で滑りによって軸周り回転自在に支持できる限り任意に設定できる。
【0068】
アーム45は、板状に形成されている。アーム45は、図10及び図11に示すケース部27のスリット37内に入れ込まれている。このアーム45は、ジョーホルダー31に対して結合され、ジョーホルダー31によってジョー29を開閉操作可能とする。
【0069】
図13は、ジョーホルダーを示す斜視図である。
【0070】
ジョーホルダー31は、図1及び図2の一対のジョー29の双方に相対回転自在に結合されると共にケース部27に対して相対的に往復移動可能な部材である。ジョーホルダー31は、図13のように、対向するホルダー板部51を有する。ホルダー板部51間には、一対のジョー29のアーム45が配置される。
【0071】
ジョーホルダー31の各ホルダー板部51には、開口部51aが設けられている。この開口部51aに対応して、ジョー15のアーム45には、図示しない孔が設けられている。このアーム45の孔と開口部51aとにわたって軸49が挿入されている。従って、ジョーホルダー31には、ジョー15が回転自在に係合する。
【0072】
ホルダー板部51間を結合するホルダーベース53には、軸方向に突出した接続部55が設けられている。接続部55は、筒状に形成され、プッシュプルケーブル等の操作部材(図示せず)が接続される。この操作部材によって、ジョーホルダー31は、軸方向に往復移動が可能となる。
【0073】
この往復移動によって、ジョーホルダー31は、結合部分である軸49を介してジョー29に回転中心周りの力を作用させる。
【0074】
かかるジョーホルダー31は、図3(A)及び(B)のように、ケース部27内において、軸方向の寸法が相対的に小さい周方向部21bに位置する操作ワイヤー17の端部17a上に位置する。また、ジョーホルダー31は、ケース部27内において、軸方向の寸法が相対的に大きい周方向部21aに位置する操作ワイヤー17の端部17aに径方向において隣接する。
【0075】
従って、本実施例では、ジョーホルダー31を軸方向で可動部13側に偏倚させて配置でき、鉗子1の軸方向の寸法を小さくすることが可能となる。
【0076】
カム部33は、図2のように、ケース部27とジョー29との間に設けられ、ジョーホルダー31の往復移動に応じてジョー29を回転させて開閉させる。
【0077】
カム部33は、種々の形態を採用可能であるが、本実施例においてケース部27に取り付けられるカムピン59と、ジョー29に設けられたカム溝61からなっている。
【0078】
カムピン59は、図10に示すケース部27の貫通孔63に取り付けられ、先端がケース部27のスリット37内に突出する。スリット37内では、図2のようにカムピン59の先端がカム溝61内に係合する。カムピン59は、円柱形状であるが、特に限定されるものではない。
【0079】
カム溝61は、各ジョー29のアーム45に設けられている。カム溝61は、回転中心周りの弧状に形成されている。なお、カム溝61は、凹部からなるが、貫通孔でもよい。このカム溝61に沿ってカムピン59が相対的に移動することにより、ジョー29に開閉動作を行わせる。
【0080】
[組付け]
本実施例の鉗子1を組付ける際は、図8及び図9のように、屈曲構造体5に操作ワイヤー17を組付けておく。操作ワイヤー17は、可動部13を挿通させ、端部17aを可動部13上に位置させる。
【0081】
この屈曲構造体5に対して、図3(A)及び(B)のようにエンドエフェクター7が取り付けられる。
【0082】
エンドエフェクター7を取り付ける際は、ケース部27の一端部27aに屈曲構造体5の可動部13を嵌合させる。これによって、ケース部27の一端部27aが可動部13に対して突き当てられる。このとき、ケース部27の一端部27aの凹部35a及び35bが、可動部13上の端部17aに係合して可動部13との間で端部17aを保持する。
【0083】
このように、本実施例では、保持部材であるエンドエフェクター7のケース部27によって操作ワイヤー17の端部17aを保持することができる。従って、可動部13側に操作ワイヤー17の端部17aを保持する必要がなく、屈曲構造体5の小径化を図ることが可能となる。
【0084】
操作ワイヤー17の端部17aの保持は、ケース部27に設けられた凹部35a及び35bによって行うので、ケース部27の取付け時に容易に行うことができる。
【0085】
また、本実施例では、ケース部27を保持部材として利用するため、部品点数を削減して構成を簡素化することができる。
【0086】
屈曲構造体5にエンドエフェクター7を取り付けた状態では、屈曲構造体5の芯材15の端部が可動部13の内部13aに位置する。本実施例では、この芯材15の端部を相対的に軸方向の寸法が大きい周方向部21aによって保持することができる。
【0087】
しかも、本実施例では、エンドエフェクター7のジョーホルダー31が軸方向の寸法が相対的に小さい周方向部21bに位置する操作ワイヤー17の端部17a上に位置すると共に、周方向部21aに位置する操作ワイヤー17の端部17aに径方向において隣接する。このため、鉗子1の軸方向の寸法を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 鉗子(外科用器具)
3 シャフト
5 屈曲構造体
7 エンドエフェクター
9 基部
11 屈曲部
13 可動部
15 芯材
17 操作ワイヤー
17a 端部
21a、21b 周方向部
27 ケース部
29 ジョー
31 ジョーホルダー
35a、35b 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13