IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンディスプレイの特許一覧

<>
  • 特開-表示装置及び表示装置の製造方法 図1
  • 特開-表示装置及び表示装置の製造方法 図2
  • 特開-表示装置及び表示装置の製造方法 図3
  • 特開-表示装置及び表示装置の製造方法 図4
  • 特開-表示装置及び表示装置の製造方法 図5
  • 特開-表示装置及び表示装置の製造方法 図6
  • 特開-表示装置及び表示装置の製造方法 図7
  • 特開-表示装置及び表示装置の製造方法 図8
  • 特開-表示装置及び表示装置の製造方法 図9
  • 特開-表示装置及び表示装置の製造方法 図10
  • 特開-表示装置及び表示装置の製造方法 図11A
  • 特開-表示装置及び表示装置の製造方法 図11B
  • 特開-表示装置及び表示装置の製造方法 図12
  • 特開-表示装置及び表示装置の製造方法 図13
  • 特開-表示装置及び表示装置の製造方法 図14
  • 特開-表示装置及び表示装置の製造方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090794
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】表示装置及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/18 20230101AFI20240627BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240627BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240627BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20240627BHJP
   H10K 71/00 20230101ALI20240627BHJP
   H10K 85/00 20230101ALI20240627BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240627BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240627BHJP
   H10K 101/30 20230101ALN20240627BHJP
   H10K 101/40 20230101ALN20240627BHJP
【FI】
H10K50/18
H10K50/15
H10K50/16
H10K50/17
H10K71/00
H10K85/00
H10K59/10
G09F9/30 365
H10K101:30
H10K101:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206916
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞名垣 暢人
(72)【発明者】
【氏名】青木 逸
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC06
3K107CC22
3K107DD72
3K107DD75
3K107DD78
3K107FF04
3K107FF19
5C094BA27
5C094CA23
5C094DA13
5C094FB01
5C094JA01
5C094JA05
(57)【要約】
【課題】長寿命化を可能とする。
【解決手段】一実施形態によれば、表示装置は、陽極と、前記陽極に対向する陰極と、前記陽極と前記陰極との間に位置する有機層と、を備え、前記有機層は、正孔注入層と、正孔輸送層と、電子ブロッキング層と、発光層と、正孔ブロッキング層と、電子輸送層と、電子注入層と、を含み、前記電子ブロッキング層及び前記正孔ブロッキング層の少なくとも一方は、前記陽極と前記陰極との間の全抵抗を100%としたときに、厚さ方向に、10%以上、30%以下の抵抗を有している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、
前記陽極に対向する陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に位置する有機層と、を備え、
前記有機層は、正孔注入層と、正孔輸送層と、電子ブロッキング層と、発光層と、正孔ブロッキング層と、電子輸送層と、電子注入層と、を含み、
前記電子ブロッキング層及び前記正孔ブロッキング層の少なくとも一方は、前記陽極と前記陰極との間の全抵抗を100%としたときに、厚さ方向に、10%以上、30%以下の抵抗を有している、表示装置。
【請求項2】
前記正孔ブロッキング層と前記発光層とのポテンシャル障壁であるΔE2_LUMO、及び、前記電子ブロッキング層と前記発光層とのポテンシャル障壁であるΔE2_HOMOの少なくとも一方は、0.1eV以上0.5eV以下であり、
前記電子注入層及び前記電子輸送層と、前記正孔ブロッキング層とのポテンシャル障壁であるΔE1_LUMO、及び、前記正孔注入層及び前記正孔輸送層と、前記電子ブロッキング層とのポテンシャル障壁であるΔE1_HOMOの少なくとも一方は、0.3eV以下である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記発光層は、青光を放つように構成されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記発光層は、緑色を放つように構成されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記発光層は、赤色を放つように構成されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
陽極を形成し、
前記陽極の上に有機層を形成し、
前記有機層の上に陰極を形成する、表示装置の製造方法において、
前記有機層を形成する工程は、
正孔注入層を形成する工程と、正孔輸送層を形成する工程と、電子ブロッキング層を形成する工程と、発光層を形成する工程と、正孔ブロッキング層を形成する工程と、電子輸送層を形成する工程と、電子注入層を形成する工程と、を含み、
前記電子ブロッキング層及び前記正孔ブロッキング層の少なくとも一方は、前記陽極と前記陰極との間の全抵抗を100%としたときに、厚さ方向に、10%以上、30%以下の抵抗を有するように形成する、表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記有機層は、
前記正孔ブロッキング層と前記発光層とのポテンシャル障壁であるΔE2_LUMO、及び、前記電子ブロッキング層と前記発光層とのポテンシャル障壁であるΔE2_HOMOの少なくとも一方が0.1eV以上0.5eV以下であり、
前記電子注入層及び前記電子輸送層と、前記正孔ブロッキング層とのポテンシャル障壁であるΔE1_LUMO、及び、前記正孔注入層及び前記正孔輸送層と、前記電子ブロッキング層とのポテンシャル障壁であるΔE1_HOMOの少なくとも一方が0.3eV以下であるように形成する、請求項6に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記発光層は、青光を放つように形成する、請求項6に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記発光層は、緑色を放つように形成する、請求項6に記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記発光層は、赤色を放つように形成する、請求項6に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、陽極と、陽極に対向する陰極と、陽極と陰極との間に位置する有機層と、を備えている。有機層は、発光層の他に、正孔輸送層や電子輸送層などの機能層を含んでいる。
このような表示素子において、発光特性を改善することが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-80044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、長寿命化が可能な表示装置及び表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、表示装置は、
陽極と、
前記陽極に対向する陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に位置する有機層と、を備え、
前記有機層は、正孔注入層と、正孔輸送層と、電子ブロッキング層と、発光層と、正孔ブロッキング層と、電子輸送層と、電子注入層と、を含み、
前記電子ブロッキング層及び前記正孔ブロッキング層の少なくとも一方は、前記陽極と前記陰極との間の全抵抗を100%としたときに、厚さ方向に、10%以上、30%以下の抵抗を有している。
【0006】
一実施形態によれば、表示装置の製造方法は、
陽極を形成し、
前記陽極の上に有機層を形成し、
前記有機層の上に陰極を形成する、表示装置の製造方法において、
前記有機層を形成する工程は、
正孔注入層を形成する工程と、正孔輸送層を形成する工程と、電子ブロッキング層を形成する工程と、発光層を形成する工程と、正孔ブロッキング層を形成する工程と、電子輸送層を形成する工程と、電子注入層を形成する工程と、を含み、
前記電子ブロッキング層及び前記正孔ブロッキング層の少なくとも一方は、前記陽極と前記陰極との間の全抵抗を100%としたときに、厚さ方向に、10%以上、30%以下の抵抗を有するように形成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態の表示装置DSPを示す斜視図である。
図2図2は、図1に示した表示領域DAにおける画素PXのレイアウトの一例を示す図である。
図3図3は、図2に示した各画素の構成の一例を示す図である。
図4図4は、図3に示した表示素子201,202,203の製造方法の一例を説明するための図である。
図5図5は、表示素子201におけるエネルギーバンドの一例を示す図である。
図6図6は、表示素子201における印加電圧と電流密度との関係の一例を示す図である。
図7図7は、表示素子201における時間経過に伴う発光輝度の変化の様子を示す図である。
図8図8は、表示素子201における印加電圧と電流密度との関係の一例を示す図である。
図9図9は、表示素子201における時間経過に伴う発光輝度の変化の様子を示す図である。
図10図10は、表示素子201における印加電圧と電流密度との関係の一例を示す図である。
図11A図11Aは、表示素子201における時間経過に伴う発光輝度の変化の様子を示す図である。
図11B図11Bは、発光層における電流経路の局在化を説明するための図である。
図12図12は、表示素子201における印加電圧と電流密度との関係の一例を示す図である。
図13図13は、表示素子201における時間経過に伴う発光輝度の変化の様子を示す図である。
図14図14は、表示素子201における印加電圧と電流密度との関係の一例を示す図である。
図15図15は、表示素子201における時間経過に伴う発光輝度の変化の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0010】
図1は、実施形態の表示装置DSPを示す斜視図である。
【0011】
表示装置DSPは、基板SUB1、SUB2を備えている。基板SUB1、SUB2は、ガラス基板や樹脂フィルムをベースとして構成されている。基板SUB1は、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAを囲む周辺領域FAと、を有している。表示領域DAは、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。基板SUB2は、表示領域DAに重畳している。周辺領域FAは、配線基板PCSなどを接続するための端子領域EAを有している。端子領域EAは、基板SUB1のうち、基板SUB2よりも外側に位置している。
【0012】
配線基板PCSには、映像信号や駆動信号を出力する駆動素子DRVが設けられている。駆動素子DRVからの信号は、配線基板PCSを介して、表示領域DAの画素PXに入力される。画素PXの各々は、映像信号及び各種制御信号に基づいて発光する。各画素PXからの出射光LTは、基板SUB2を透過し、画像として観察される。
【0013】
図2は、図1に示した表示領域DAにおける画素PXのレイアウトの一例を示す図である。
【0014】
表示領域DAは、画素PXとして、青光を放つように構成された画素PXB、緑光を放つように構成された画素PXG、及び、赤光を放つように構成された画素PXRを有している。画素PXR及び画素PXBは、第1方向X及び第2方向Yに沿って交互に配置されている。画素PXG及び画素PXBは、第1方向X及び第2方向Yに沿って交互に配置されている。
なお、画素PXのレイアウトは、図示した例に限らない。
【0015】
図3は、図2に示した各画素の構成の一例を示す図である。
【0016】
画素PXBは表示素子201を備え、画素PXGは表示素子202を備え、画素PXRは表示素子203を備えている。表示素子201,202,203は、発光素子としての有機発光ダイオード(OLED)であり、有機EL素子と称する場合がある。
【0017】
表示素子201は、陽極AE1と、有機層OR1と、陰極CEと、を備えている。陰極CEは、陽極AE1に対向している。有機層OR1は、陽極AE1と陰極CEとの間に位置している。
【0018】
有機層OR1は、正孔注入層HILと、正孔輸送層HTL1と、電子ブロッキング層EBLと、発光層B-EMLと、正孔ブロッキング層HBLと、電子輸送層ETLと、電子注入層EILと、を備えている。発光層B-EMLは、青光を放つように構成されている。
【0019】
正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL1、及び、電子ブロッキング層EBLは、この順に積層され、陽極AE1と発光層B-EMLとの間に位置している。正孔輸送層HTL1は、厚さT1を有している。電子ブロッキング層EBLは、発光層B-EMLに接している。
【0020】
正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETL、及び、電子注入層EILは、この順に積層され、発光層B-EMLと陰極CEとの間に位置している。正孔ブロッキング層HBLは、発光層B-EMLに接している。
【0021】
図示した例では、高屈折率層HNL1は陰極CEの上に位置し、低屈折率層LNLは高屈折率層HNL1の上に位置し、封止層SELは低屈折率層LNLの上に位置している。高屈折率層HNL1は、厚さT11を有している。高屈折率層HNL1の屈折率は、低屈折率層LNLの屈折率より大きい。高屈折率層HNL1及び低屈折率層LNLの積層体は、発光層B-EMLから放たれた光の取り出し効率を向上させる光学調整層(キャップ層)としての役割を有している。封止層SELは、表示素子201を封止する役割を有している。
【0022】
一例では、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL1、電子ブロッキング層EBL、正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETL、電子注入層EIL、陰極CE、高屈折率層HNL1、低屈折率層LNL、及び、封止層SELは、表示素子201,202,203に亘って配置された共通層である。発光層B-EMLは、表示素子201に配置された個別層である。
【0023】
表示素子202は、陽極AE2と、有機層OR2と、陰極CEと、を備えている。陽極AE2は、陽極AE1から離間している。陰極CEは、陽極AE2に対向している。有機層OR2は、陽極AE2と陰極CEとの間に位置している。
【0024】
有機層OR2は、正孔注入層HILと、正孔輸送層HTL1と、正孔輸送層HTL2と、電子ブロッキング層EBLと、発光層G-EMLと、正孔ブロッキング層HBLと、電子輸送層ETLと、電子注入層EILと、を備えている。発光層G-EMLは、緑光を放つように構成されている。発光層G-EMLは、表示素子202に配置された個別層である。
【0025】
正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL1、正孔輸送層HTL2、及び、電子ブロッキング層EBLは、この順に積層され、陽極AE2と発光層G-EMLとの間に位置している。正孔輸送層HTL1、HTL2は、例えば同一材料で形成され、厚さT2を有している。厚さT2は、厚さT1より大きい。電子ブロッキング層EBLは、発光層G-EMLに接している。
【0026】
正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETL、及び、電子注入層EILは、この順に積層され、発光層G-EMLと陰極CEとの間に位置している。正孔ブロッキング層HBLは、発光層G-EMLに接している。
【0027】
図示した例では、高屈折率層HNL1は陰極CEの上に位置し、高屈折率層HNL2は高屈折率層HNL1の上に位置し、低屈折率層LNLは高屈折率層HNL2の上に位置し、封止層SELは低屈折率層LNLの上に位置している。高屈折率層HNL1、HNL2は、例えば同一材料で形成され、厚さT12を有している。厚さT12は、厚さT11より大きい。高屈折率層HNL1、HNL2及び低屈折率層LNLの積層体は、発光層G-EMLから放たれた光の取り出し効率を向上させる光学調整層としての役割を有している。封止層SELは、表示素子202を封止する役割を有している。
【0028】
表示素子203は、陽極AE3と、有機層OR3と、陰極CEと、を備えている。陽極AE3は、陽極AE1、AE2から離間している。陰極CEは、陽極AE3に対向している。有機層OR3は、陽極AE3と陰極CEとの間に位置している。
【0029】
有機層OR3は、正孔注入層HILと、正孔輸送層HTL1と、正孔輸送層HTL2と、電子ブロッキング層EBLと、発光層R-EMLと、正孔ブロッキング層HBLと、電子輸送層ETLと、電子注入層EILと、を備えている。発光層R-EMLは、赤光を放つように構成されている。発光層R-EMLは、表示素子203に配置された個別層である。
【0030】
正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL1、正孔輸送層HTL2、及び、電子ブロッキング層EBLは、この順に積層され、陽極AE3と発光層R-EMLとの間に位置している。正孔輸送層HTL1、HTL2は、厚さT3を有している。一例では、厚さT3は、厚さT2より大きい。電子ブロッキング層EBLは、発光層R-EMLに接している。
【0031】
正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETL、及び、電子注入層EILは、この順に積層され、発光層R-EMLと陰極CEとの間に位置している。正孔ブロッキング層HBLは、発光層R-EMLに接している。
【0032】
図示した例では、高屈折率層HNL1は陰極CEの上に位置し、高屈折率層HNL2は高屈折率層HNL1の上に位置し、低屈折率層LNLは高屈折率層HNL2の上に位置し、封止層SELは低屈折率層LNLの上に位置している。高屈折率層HNL1、HNL2は、厚さT13を有している。一例では、厚さT13は、厚さT13より大きい。高屈折率層HNL1、HNL2及び低屈折率層LNLの積層体は、発光層R-EMLから放たれた光の取り出し効率を向上させる光学調整層としての役割を有している。封止層SELは、表示素子203を封止する役割を有している。
【0033】
正孔注入層HILは陽極AE1、AE2、AE3から正孔輸送層に正孔を注入し、正孔輸送層HTL1、HTL2は注入された正孔を発光層EMLに輸送する。電子ブロッキング層EBLは、陰極CEから注入された電子を発光層EMLに留め、電子が正孔輸送層HTL1、HTL2に漏れ出すのを抑制する。
電子注入層EILは陰極CEから電子輸送層ETLに電子を注入し、電子輸送層ETLは注入された電子を発光層EMLに輸送する。正孔ブロッキング層HBLは、陽極から注入された正孔を発光層EMLに留め、正孔が電子輸送層ETLに漏れ出すのを抑制する。
【0034】
正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTL1、HTL2について、陽極AE1、AE2、AE3からの正孔注入障壁(陽極の仕事関数と正孔輸送層の材料のHOMO準位との差)を低減することにより、正孔をスムーズに流すことができる。
電子注入層EIL及び電子輸送層ETLについては、陰極CEからの電子注入障壁(陰極の仕事関数と電子輸送層の材料のLUMO準位との差)の低減することにより、電子をスムーズに流すことができる。
【0035】
有機層OR1、OR2、OR3での発光は、発光層EMLの材料の最高占有分子軌道(HOMO、一般にイオン化ポテンシャルとして計測される)へ注入された正孔と、最低非占有分子軌道(LUMO、一般に電子親和力として測定される)へ注入された電子によって生成された励起子の励起エネルギーが緩和するときに光を放出することによって得られる。
【0036】
図4は、図3に示した表示素子201,202,203の製造方法の一例を説明するための図である。
【0037】
まず、導電材料をパターニングすることにより、互いに離間した陽極AE1、AE2、AE3を形成する(ステップST1)。陽極AE1は画素PXBに配置され、陽極AE2は画素PXGに配置され、陽極AE3は画素PXRに配置される。陽極AE1、AE2、AE3は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)などで形成された透明電極、及び、銀(Ag)などで形成された反射電極の積層体である。
その後、隣り合う陽極AE1、AE2、AE3の間にはリブが形成される。リブは、有機絶縁膜であってもよいし、無機絶縁膜であってもよい。
【0038】
続いて、画素PXB、PXG、PXRに亘って正孔注入層HILを形成する(ステップST2)。正孔注入層HILは、陽極AE1、AE2、AE3の上に配置される。
【0039】
続いて、画素PXB、PXG、PXRに亘って正孔輸送層HTL1を形成する(ステップST3)。正孔輸送層HTL1は、正孔注入層HILの上に配置される。
【0040】
続いて、画素PXG、PXRに正孔輸送層HTL2を形成する(ステップST4)。正孔輸送層HTL2は、画素PXG、PXRにおいて、正孔輸送層HTL1の上に配置される。このとき、図3に示したように、画素PXRにおける正孔輸送層HTL2は、画素PXGにおける正孔輸送層HTL2より厚くなるように形成される。
【0041】
続いて、画素PXB、PXG、PXRに亘って電子ブロッキング層EBLを形成する(ステップST5)。電子ブロッキング層EBLは、画素PXBにおける正孔輸送層HTL1の上に配置され、また、画素PXG、PXRにおける正孔輸送層HTL2の上に配置される。
【0042】
続いて、画素PXBにおいて、発光層B-EMLを形成する(ステップST6)。発光層B-EMLは、ホスト材料及び青光を放つドーパントを共蒸着することで形成する。発光層B-EMLは、陽極AE1の直上において、電子ブロッキング層EBLの上に配置される。
【0043】
続いて、画素PXGにおいて、発光層G-EMLを形成する(ステップST7)。発光層G-EMLは、ホスト材料及び緑光を放つドーパントを共蒸着することで形成する。発光層G-EMLは、陽極AE2の直上において、電子ブロッキング層EBLの上に配置される。
【0044】
続いて、画素PXRにおいて、発光層R-EMLを形成する(ステップST8)。発光層R-EMLは、ホスト材料及び赤光を放つドーパントを共蒸着することで形成する。発光層R-EMLは、陽極AE3の直上において、電子ブロッキング層EBLの上に配置される。
【0045】
なお、発光層B-EML、G-EML、R-EMLの形成順序は、図4に示す例に限らない。また、赤色の色度はCIEx=0.635、CIEy=0.315であり、緑色の色度はCIEx=0.227、CIEy=0.717であり、青色の色度はCIEx=0.141、CIEy=0.05である。赤色はCIEx、緑色はCIEy、青色はCIEyが画素の設計に重要な役割を果たす。
【0046】
続いて、画素PXB、PXG、PXRに亘って正孔ブロッキング層HBLを形成する(ステップST9)。正孔ブロッキング層HBLは、画素PXBにおける発光層B-EMLの上に配置され、画素PXGにおける発光層G-EMLの上に配置され、画素PXRにおける発光層R-EMLの上に配置される。
【0047】
続いて、画素PXB、PXG、PXRに亘って電子輸送層ETLを形成する(ステップST10)。電子輸送層ETLは、正孔ブロッキング層HBLの上に配置される。
【0048】
続いて、画素PXB、PXG、PXRに亘って電子注入層EILを形成する(ステップST11)。電子注入層EILは、電子輸送層ETLの上に配置される。
【0049】
続いて、画素PXB、PXG、PXRに亘って陰極CEを形成する(ステップST12)。陰極CEは、電子注入層EILの上に配置される。陰極CEは、例えば、マグネシウム(Mg)及び銀(Ag)の合金で形成する。
【0050】
続いて、画素PXB、PXG、PXRに亘って高屈折率層HNL1を形成する(ステップST13)。高屈折率層HNL1は、陰極CEの上に配置される。
【0051】
続いて、画素PXG、PXRに高屈折率層HNL2を形成する(ステップST14)。高屈折率層HNL2は、画素PXG、PXRにおいて、高屈折率層HNL1の上に配置される。このとき、図3に示したように、画素PXRにおける高屈折率層HNL2は、画素PXGにおける高屈折率層HNL2より厚くなるように形成される。
【0052】
続いて、画素PXB、PXG、PXRに亘って低屈折率層LNLを形成する(ステップST15)。低屈折率層LNLは、画素PXBにおける高屈折率層HNL1の上に配置され、また、画素PXG、PXRにおける高屈折率層HNL2の上に配置される。
【0053】
続いて、画素PXB、PXG、PXRに亘って封止層SELを形成する(ステップST16)。封止層SELは、低屈折率層LNLの上に配置される。
【0054】
少なくとも、発光層B-EML、G-EML、R-EML、電子輸送層ETL、及び、電子注入層EILは、複数の材料を同時に蒸着することで形成された共蒸着層である。
【0055】
ところで、上記の製造工程において、電子ブロッキング層EBL及び正孔ブロッキング層HBLの少なくとも一方は、陽極AE1、AE2、AE3と陰極CEとの間の全抵抗を100%としたときに、厚さ方向に、10%以上、30%以下の抵抗を有するように形成される。電子ブロッキング層EBL及び正孔ブロッキング層HBLの少なくとも一方において、上記の範囲の抵抗値は、例えば、材料の移動度、ポテンシャル障壁ΔE、ダイオードファクターn、キャパシタ、キャリア数、膜厚などで制御される。
【0056】
図5は、表示素子201におけるエネルギーバンドの一例を示す図である。
陽極AE1からの正孔注入及び正孔輸送をより効果的に行わせるため、陽極AE1のフェルミ準位から発光層B-EMLのHOMO準位まで、各層の界面で、階段状のポテンシャル障壁となるように、正孔注入材料及び正孔輸送材料を選定する。このような階段状のポテンシャル障壁を、スタガ状構造とする。
【0057】
同様に、陰極CEからの電子注入及び電子輸送をより効果的に行わせるために、陰極CEのフェルミ準位から発光層B-EMLのLUMO準位まで、各層の界面で、階段状のポテンシャル障壁となるように、電子注入材料及び電子輸送材料を選定する。階段状のポテンシャル障壁とすることで、発光層B-EMLへのキャリア注入性が改善され、発光性能が向上する。
【0058】
図中のポテンシャル障壁ΔE1_LUMO、ΔE2_LUMOは、隣接する材料間のLUMOエネルギー差に相当する。また、図中のポテンシャル障壁ΔE1_HOMO、ΔE2_HOMOは、隣接する材料間のHOMOエネルギー差に相当する。
【0059】
一例では、電子注入層EIL及び電子輸送層ETLと正孔ブロッキング層HBLとのポテンシャル障壁を、ΔE1_LUMOとする。正孔ブロッキング層HBLと発光層B-EMLとのポテンシャル障壁を、ΔE2_LUMOとする。
正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTL1と電子ブロッキング層EBLとのポテンシャル障壁を、ΔE1_HOMOとする。電子ブロッキング層EBLと発光層B-EMLとのポテンシャル障壁を、ΔE2_HOMOとする。
【0060】
ポテンシャル障壁ΔE2_LUMO、及び、ΔE2_HOMOの少なくとも一方は、0.1eV以上、0.5eV以下であることが望ましい。ポテンシャル障壁ΔE2_LUMO、及び、ΔE2_HOMOを、特に区別しない場合は、単に、ΔE2と呼ぶこととする。ΔE2が0.1eVより小さい(ΔE2<0.1eV)場合、発光層B-EMLからキャリアが流れやすくなってしまう。ΔE2を上記の範囲にするには、発光層B-EMLを形成する際に、発光層B-EMLをワイドギャップ化させることが可能な材料(以下、ワイドギャップ化材料という)を共蒸着すればよい。あるいは、ΔE2を上記の範囲にするには、適切な材料を選定することや、膜厚を適切な厚さにすることが挙げられる。
【0061】
ポテンシャル障壁ΔE1_LUMO、及び、ポテンシャル障壁ΔE1_HOMOの少なくとも一方は、0.3eV以下であることが望ましい。ポテンシャル障壁ΔE1_LUMOは、電子注入層EILと接する陰極CEの仕事関数が3.5eVであることを想定している。
【0062】
発明者は、表示素子201について発光層B-EMLに接する電子ブロッキング層EBL及び正孔ブロッキング層HBLを高抵抗化することで、長寿命化が実現できることを見出した。
【0063】
初期状態から電流を流し続ける劣化試験を行い、初期状態の発光輝度が5%減少した時の初期状態と劣化後の輝度比はLT95として定義される。
【0064】
LT95≒exp((qV/n´KT)-(qV/nKT)-(T95/τ))
95/τ≒qV/ΔnKT
ここで、qは電荷であり、Vは電圧であり、nはダイオードファクターであり、Kはボルツマン係数であり、Tは温度であり、T95はLT95に達する時間である。(qV/nKT)は初期状態の出力であり、(qV/n´KT)は劣化試験後の出力である。
【0065】
有機EL素子の発光再結合は、数μ秒単位を1つの周期として繰り返されている。有機EL素子の初期状態と劣化試験後とでは、有機分子の部分的な破壊により周期が異なる。LT95は、初期状態の輝度と劣化試験後の輝度とを比較した比であり、初期状態と劣化試験後とで発光周期を比較しても定性的な特徴は損なわれない。電圧Vは、抵抗値Rに依存する。このため、上記の式に基づくと、LT95に達する時間T95は、抵抗値Rに依存することがわかる。
【0066】
まず、発明者は、正孔ブロッキング層HBLの抵抗値が異なる条件で表示素子201を形成し、効果の検証を行った。なお、この実験では、正孔ブロッキング層HBLを含むすべての有機層は、ポイントソース蒸着によって形成した。
【0067】
ポイントソース蒸着とは、蒸着すべき材料を収容した点状の蒸着源と基板とを対向配置し、蒸着源を加熱し、蒸着源から放射された材料の蒸気が基板に付着し、基板上に薄膜を形成する手法である。なお、ポイントソース蒸着で共蒸着層を形成する場合には、互いに異なる材料を収容した複数の点状の蒸着源を用意し、基板を回転させながら、蒸着源を加熱し、それぞれの蒸着源から放射された材料の蒸気が互いに混ざり合って基板に付着することで共蒸着層が得られる。
【0068】
図6は、表示素子201における印加電圧と電流密度との関係の一例を示す図である。
図の横軸は印加電圧(V)であり、図の縦軸は電流密度(mA/cm)である。
図中のAは、陽極AE1と陰極CEとの間の全抵抗を100%としたときに、正孔ブロッキング層HBLが10%以上の抵抗値を有するように形成された実施形態1の結果を示している。
図中のBは、正孔ブロッキング層HBLが10%未満の抵抗値を有するように形成された比較例1の結果を示している。
一例として、陽極AE1と陰極CEとの間の全抵抗が309kΩ/cmのとき、実施形態1では、正孔ブロッキング層HBLは82kΩ/cmの抵抗値(26.5%相当)を有し、比較例1では、正孔ブロッキング層HBLは26kΩ/cmの抵抗値(8%相当)を有している。
【0069】
図7は、表示素子201における時間経過に伴う発光輝度の変化の様子を示す図である。ここに示す結果は、表示素子201に一定の電流を連続的に流したときに得られる輝度の経時変化に相当するものである。
図の横軸は経過時間であり、図の縦軸は相対輝度である。相対輝度は、経過時間0時間の輝度を1としたときの相対値として示している。
図中のAは、実施形態1(正孔ブロッキング層HBLが10%以上の抵抗値を有する)の結果を示している。
図中のBは、比較例1(正孔ブロッキング層HBLが10%未満の抵抗値を有する)の結果を示している。
図7に示すように、実施形態1によれば、時間の経過とともに輝度が低下するものの、いずれの時間においても比較例1よりも高い輝度が得られることが確認された。つまり、実施形態1によれば、比較例1よりも長寿命化を実現できることが確認された。
【0070】
次に、発明者は、正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLの抵抗値が異なる条件で表示素子201を形成し、効果の検証を行った。なお、この実験では、正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLを含むすべての有機層は、ポイントソース蒸着によって形成した。
【0071】
図8は、表示素子201における印加電圧と電流密度との関係の一例を示す図である。
図の横軸は印加電圧(V)であり、図の縦軸は電流密度(mA/cm)である。
図中のAは、陽極AE1と陰極CEとの間の全抵抗を100%としたときに、正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLが10%以上の抵抗値を有するように形成された実施形態2の結果を示している。
図中のBは、正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLが10%未満の抵抗値を有するように形成された比較例2の結果を示している。
一例として、陽極AE1と陰極CEとの間の全抵抗が309kΩ/cmのとき、実施形態2では、正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLは82kΩ/cmの抵抗値(26.5%相当)を有し、比較例2では、正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLは26kΩ/cmの抵抗値(8%相当)を有している。
【0072】
図9は、表示素子201における時間経過に伴う発光輝度の変化の様子を示す図である。
図の横軸は経過時間であり、図の縦軸は相対輝度である。相対輝度は、経過時間0時間の輝度を1としたときの相対値として示している。
図中のAは、実施形態2(正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLが10%以上の抵抗値を有する)の結果を示している。
図中のBは、比較例2(正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLが10%未満の抵抗値を有する)の結果を示している。
図9に示すように、実施形態2によれば、時間の経過とともに輝度が低下するものの、いずれの時間においても比較例2よりも高い輝度が得られることが確認された。つまり、実施形態2によれば、比較例2よりも長寿命化を実現できることが確認された。
【0073】
次に、発明者は、正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLの抵抗値が異なる条件で表示素子201を形成し、効果の検証を行った。なお、この実験では、正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLを含むすべての有機層は、リニアスキャン蒸着によって形成した。
【0074】
リニアスキャン蒸着とは、蒸着すべき材料を収容した直線状の蒸着源と基板とを対向配置し、蒸着源及び基板を相対的に移動させながら、蒸着源を加熱し、蒸着源から放射された材料の蒸気が基板に付着し、基板上に薄膜を形成する手法である。なお、リニアスキャン蒸着で共蒸着層を形成する場合には、互いに異なる材料を収容した複数の直線状の蒸着源を用意し、固定された蒸着源に対して基板を移動させながら(あるいは固定された基板に対して蒸着源を移動させながら)、蒸着源を加熱し、それぞれの蒸着源から放射された材料の蒸気が互いに混ざり合って基板に付着することで共蒸着層が得られる。当該蒸着工程は最も普及しているポイントソース蒸着に比べて、大型基板上に蒸着する大量生産に使われる製法である。
【0075】
図10は、表示素子201における印加電圧と電流密度との関係の一例を示す図である。
図の横軸は印加電圧(V)であり、図の縦軸は電流密度(mA/cm)である。
図中のAは、陽極AE1と陰極CEとの間の全抵抗を100%としたときに、正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLが10%以上の抵抗値を有するように形成された実施形態3の結果を示している。
図中のBは、正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLが10%未満の抵抗値を有するように形成された比較例3の結果を示している。
一例として、陽極AE1と陰極CEとの間の全抵抗が309kΩ/cmのとき、実施形態3では、正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLは82kΩ/cmの抵抗値(26.5%相当)を有し、比較例3では、正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLは26kΩ/cmの抵抗値(8%相当)を有している。
【0076】
図11Aは、表示素子201における時間経過に伴う発光輝度の変化の様子を示す図である。
図の横軸は経過時間であり、図の縦軸は相対輝度である。相対輝度は、経過時間0時間の輝度を1としたときの相対値として示している。
図中のAは、実施形態3(正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLが10%以上の抵抗値を有する)の結果を示している。
図中のBは、比較例3(正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLが10%未満の抵抗値を有する)の結果を示している。
図11Aに示すように、実施形態3によれば、時間の経過とともに輝度が低下するものの、いずれの時間においても比較例3よりも高い輝度が得られることが確認された。つまり、実施形態3によれば、比較例3よりも長寿命化を実現できることが確認された。
ここで発明者は生産装置として普及しているリニアスキャン蒸着では、ポイントソース蒸着と比較して、次のような特性低下の原因が発生することを発見した。リニアスキャン蒸着では、共蒸着層の材料組成に濃度勾配が発生し、図11Bに記載のように電流が特定領域を流れる。その結果、有機層内の一部にのみ電流が集中することで寿命が著しく低下する現象が発生する。当該寿命低下の影響は青色が最も大きく50%を超える寿命の低下が発生する。次に赤色、緑色が影響を受けて10%から5%程度、寿命が低下する。
実施形態3記載の正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLの高抵抗化の効果は、生産装置として普及しているリニアスキャン蒸着工程特有の寿命低下に対しても改善する効果が得られることを示している。
実施形態1から実施形態2記載の正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLの高抵抗化の効果は、最も普及したポイントソース蒸着において長寿命化の効果があることを示している。さらに生産原理の異なる装置でも改善効果を示している。実施形態3において生産装置として普及したリニアスキャン蒸着においても長寿命化の効果が実証されている。
【0077】
これらの検証結果に基づくと、表示素子201において、正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLの少なくとも一方が、全抵抗の10%以上の抵抗値を有するように形成されることで、長寿命化できることが確認できた。当該、正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLの高抵抗化による長寿命化はポイントソース蒸着またはリニアスキャン蒸着のいずれにおいても効果を発揮する手法であることが確認できた。
【0078】
正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLの少なくとも一方を高抵抗化した場合に、長寿命化の効果が得られるものの、抵抗値の増加に伴って寿命の改善効果が飽和する傾向がみられる。
【0079】
そこで、発明者は、正孔ブロッキング層HBLをさらに高抵抗化した条件(電子ブロッキング層EBLの抵抗値は不変)で表示素子201を形成し、効果の検証を行った。なお、この実験では、正孔ブロッキング層HBLを含むすべての有機層は、ポイントソース蒸着によって形成した。
【0080】
図12は、表示素子201における印加電圧と電流密度との関係の一例を示す図である。
図中のAは、陽極AE1と陰極CEとの間の全抵抗を100%としたときに、正孔ブロッキング層HBLが30%以下の抵抗値を有するように形成された実施形態4の結果を示している。
図中のBは、正孔ブロッキング層HBLが30%を超える抵抗値を有するように形成された比較例4の結果を示している。
【0081】
図13は、表示素子201における時間経過に伴う発光輝度の変化の様子を示す図である。
図の横軸は経過時間であり、図の縦軸は相対輝度である。相対輝度は、経過時間0時間の輝度を1としたときの相対値として示している。
図中のAは、実施形態4(正孔ブロッキング層HBLが30%以下の抵抗値を有する)の結果を示している。
図中のBは、比較例4(正孔ブロッキング層HBLが30%を超える抵抗値を有する)の結果を示している。
図13に示すように、比較例4によれば、実施形態4と比較して、寿命の低下が確認された。
【0082】
また、発明者は、電子ブロッキング層EBLをさらに高抵抗化した条件(正孔ブロッキング層HBLの抵抗値は不変)で表示素子201を形成し、効果の検証を行った。なお、この実験では、電子ブロッキング層EBLを含むすべての有機層は、ポイントソース蒸着によって形成した。
【0083】
図14は、表示素子201における印加電圧と電流密度との関係の一例を示す図である。
図中のAは、陽極AE1と陰極CEとの間の全抵抗を100%としたときに、電子ブロッキング層EBLが30%以下の抵抗値R1を有するように形成された実施形態5の結果を示している。
図中のBは、電子ブロッキング層EBLが30%以下の抵抗値R2を有するように形成された実施形態6の結果を示している。但し、抵抗値R2は、抵抗値R1より大きい(R1<R2)。
図中のCは、電子ブロッキング層EBLが30%を超える抵抗値R3を有するように形成された比較例5の結果を示している(R1<R2<R3)。
【0084】
図15は、表示素子201における時間経過に伴う発光輝度の変化の様子を示す図である。
図の横軸は経過時間であり、図の縦軸は相対輝度である。相対輝度は、経過時間0時間の輝度を1としたときの相対値として示している。
図中のAは、実施形態5(正孔ブロッキング層HBLが抵抗値R1を有する)の結果を示している。
図中のBは、実施形態6(正孔ブロッキング層HBLが抵抗値R2を有する)の結果を示している。
図中のCは、比較例5(正孔ブロッキング層HBLが抵抗値R3を有する)の結果を示している。
図15に示すように、実施形態5よりも高抵抗化した正孔ブロッキング層HBLを有する実施形態6によれば、実施形態5と比較して、寿命の改善効果が得られた。一方で、
実施形態6よりもさらに高抵抗化した正孔ブロッキング層HBLを有する比較例5によれば、実施形態4、5と比較して、寿命の低下が確認された。
【0085】
これらの検証結果に基づくと、表示素子201において、正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLの少なくとも一方を高抵抗化したとき、寿命の改善効果を得る観点において、全抵抗の30%以下の抵抗値を有するように形成されることが望ましい。
【0086】
本実施形態においては、例えば、陽極AE1は第1陽極に相当し、有機層OR1は第1有機層に相当し、発光層B-EMLは第1発光層に相当し、陽極AE2は第2陽極に相当し、有機層OR2は第2有機層に相当し、発光層G-EMLは第2発光層に相当し、陽極AE3は第3陽極に相当し、有機層OR3は第3有機層に相当し、発光層R-EMLは第3発光層に相当する。
なお、上記の実施形態においては、主に青色の表示素子201の正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLの少なくとも一方を高抵抗化することについて説明したが、緑色の表示素子202及び赤色の表示素子203についても、正孔ブロッキング層HBL及び電子ブロッキング層EBLの少なくとも一方を高抵抗化することに、上記したのと同様の効果(長寿命化)が得られる。
【0087】
以上説明したように、本実施形態によれば、長寿命化が可能な表示装置及び表示装置の製造方法を提供することができる。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
DSP…表示装置
PXB,PXG,PXR…画素
201,202,203…表示素子(有機EL素子)
AE1,AE2,AE3…陽極 CE…陰極
OR1,OR2,OR3…有機層
B-EML…発光層(青)
G-EML…発光層(緑)
R-EML…発光層(赤)
EBL…電子ブロッキング層 HBL…正孔ブロッキング層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15