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特開2024-90799水産物加工食品用油脂組成物及びこれを用いた水産物加工食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090799
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】水産物加工食品用油脂組成物及びこれを用いた水産物加工食品
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20240627BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20240627BHJP
【FI】
A23D9/00 518
A23L17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206921
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】591040144
【氏名又は名称】太陽油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】中堀 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】國本 昌太
(72)【発明者】
【氏名】岸 瑶介
【テーマコード(参考)】
4B026
4B042
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG02
4B026DG04
4B026DG06
4B026DH01
4B026DH02
4B026DH03
4B026DH05
4B026DP01
4B026DP03
4B026DX02
4B042AC02
4B042AC03
4B042AD08
4B042AD23
4B042AE08
4B042AG12
4B042AG16
4B042AG30
4B042AG68
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK06
4B042AP20
(57)【要約】
【課題】水産物加工食品への分散性がよく、また水産物加工食品に用いた場合に染み出しがなく、かつ色調が良い水産物加工食品を得ることができ、さらに、食感、口溶け及び旨味において優れる水産物加工食品用油脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)ヨウ素価が55以上の非エステル交換パーム分別低融点部と、(B)5~15℃で液体状である液体油と、(C)極度硬化油とを含み、前記油脂(A)と前記油脂(B)の合計質量が95質量%以上であり、前記油脂(A)の含有量が20質量%以上である、水産物加工食品用油脂組成物により上記課題が解決され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素価が55以上の非エステル交換パーム分別低融点部であるパーム系油脂(A)と、5~15℃で液体状である液体油(B)と、極度硬化油脂(C)とを含み、前記パーム系油脂(A)の含有量が20質量%以上であり、さらに前記パーム系油脂(A)と前記液体油(B)の合計質量が95質量%以上である、水産物加工食品用油脂組成物。
【請求項2】
前記液体油(B)の含有量が20質量%以上である、請求項1記載の水産物加工食品用油脂組成物。
【請求項3】
前記極度硬化油脂(C)の含有量が1質量%以上である、請求項1記載の水産物加工食品用油脂組成物。
【請求項4】
5℃におけるSFCが、2~25%である、請求項1記載の水産物加工食品用油脂組成物。
【請求項5】
前記極度硬化油脂(C)が脂肪酸組成としてベヘン酸を20質量%以上含む、請求項1記載の水産物加工食品用油脂組成物。
【請求項6】
前記液体油(B)がコーン油もしくはナタネ油を含む、請求項1記載の水産物加工食品用油脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の水産物加工食品用油脂組成物を含む水産物加工食品。
【請求項8】
水産物加工食品が、まぐろ、サケ、はまち、さば、及びイカからなる群より選択される水産物の粉砕物である、請求項7記載の水産物加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水産物加工食品に用いられる油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
まぐろ赤身肉やスモークサーモンなど水産物をサイレントカッター、フードプロセッサー等で粉砕し、油脂やショートニングを加えて練り合わせた水産物加工食品は、そのまま、もしくは寿司のネタやおにぎりの具などとして広く利用されている。これら水産物加工食品を製造する過程では、水産物の鮮度を保持するため、冷蔵温度帯(10℃)よりも低い温度条件下で加工されることが多い。そこで使用される油脂やショートニングは、分散性などを確保するために、このような温度条件下でも適度な柔らかさがあり、なめらかであることが作業場における重要な要素となっている。ただし、油脂やショートニングが柔らかすぎ、粘度が低くなると水産物へのなじみが悪くなったり、水産物加工食品から油脂が分離するなどの課題も想定される。また水産物加工食品として供される場合においては、これら油脂やショートニングの口どけ感が非常に重要である。また風味や旨味に対しても高いレベルの要求がある。
特許文献1には、水産物加工食品に用いる油脂組成物であって、分散性がよく、染み出しがなくかつ口溶けがよい油脂組成物を得るために、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるソルビタン脂肪酸エステルを添加することが報告されている。特許文献2には、魚由来の旨みを呈する油脂組成物として、魚の水性エキスから魚由来の成分を植物油脂で抽出してなる魚由来成分含有植物油脂と綿実油を含有する油脂組成物が開示されている。
また、特許文献3には、生鮮魚肉加工食品の風味や口溶けを良好にするため、特定の固体脂含量を達成するため、米油、菜種油、コーン油などの液体油脂を比較的多量に用いる油脂組成物が提案されている。
これらの方法により風味や口溶けは良好になるものの、まぐろの本来有する赤色の発色が弱くなるという問題がある。
一方、特許文献4は、冷解凍後水産加工食品の色と食感を改良するための油脂組成物として、構成脂肪酸の全てがラウリン酸及びミリスチン酸から選ばれる少なくとも1種である3飽和トリグリセリドを所定量含む油脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-002028号
【特許文献2】特開2018-139534号
【特許文献3】特開2015-070813号
【特許文献4】特開2019-118285号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水産物加工食品への分散性がよく、また水産物加工食品に用いた場合に染み出しがなく、かつ色調が良い水産物加工食品を得ることができる、水産物加工食品用油脂組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、前述の特性に加えてさらに、食感、口溶け及び旨味において優れる水産物加工食品用油脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、パーム系油脂と、5~15℃で液体状である液体油と、極度硬化油脂とを含む油脂組成物において、パーム系油脂としてヨウ素価が55以上の非エステル交換パーム分別低融点部を用い、さらに前記パーム系油脂と前記液体油とを特定量含む油脂組成物を、水産物加工食品の製造において用いることにより、上記課題を解決することを見いだし、本発明を完成した。
本発明は以下のとおりである。
〔1〕ヨウ素価が55以上の非エステル交換パーム分別低融点部であるパーム系油脂(A)と、5~15℃で液体状である液体油(B)と、極度硬化油脂(C)とを含み、前記パーム系油脂(A)の含有量が20質量%以上であり、さらに前記パーム系油脂(A)と前記液体油(B)の合計質量が95質量%以上である、水産物加工食品用油脂組成物。
〔2〕5~15℃で液体状である液体油(B)の含有量が20質量%以上である、前記〔1〕記載の水産物加工食品用油脂組成物。
〔3〕前記極度硬化油脂(C)の含有量が1質量%以上である、前記〔1〕または〔2〕記載の水産物加工食品用油脂組成物。
〔4〕5℃におけるSFCが、2~25%である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の水産物加工食品用油脂組成物。
〔5〕前記極度硬化油脂(C)が脂肪酸組成としてベヘン酸(C22-0)を20質量%以上含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の水産物加工食品用油脂組成物。
〔6〕前記液体油(B)がコーン油もしくはナタネ油を含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一に記載の水産物加工食品用油脂組成物。
〔7〕前記〔1〕~〔6〕のいずれか一に記載の水産物加工食品用油脂組成物を含む水産物加工食品。
〔8〕水産物加工食品が、まぐろ、サケ、はまち(ぶり、イナダ等含む)、さば、及びイカからなる群より選択される水産物の粉砕物である、前記〔7〕記載の水産物加工食品。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水産物加工食品用油脂組成物を用いることにより、水産物加工食品に用いた場合に、分散性がよく、また染み出しが生じず、かつ色調のよい水産物加工食品を得ることができる。また、さらに本発明の水産物加工食品用油脂組成物を用いることにより、食感、口溶け及び旨味において優れる水産物加工食品を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(水産物加工食品用油脂組成物)
本発明の水産物加工食品用油脂組成物は、まぐろやサケなど水産物をサイレントカッター、フードプロセッサー等で粉砕して製造するねぎとろ風の水産物加工食品に混合して用いて、水産物加工食品に適度な柔らかさとなめらかさ、口溶け感や旨味などを付与するための油脂組成物である。
本発明の水産物加工食品用油脂組成物は、パーム系油脂(A)と、5~15℃で液体状である液体油(B)と、極度硬化油脂(C)とを含み、パーム系油脂(A)が、ヨウ素価が55以上の非エステル交換パーム分別低融点部であり、前記パーム系油脂(A)の含有量が20質量%以上であり、前記パーム系油脂(A)と前記液体油(B)の合計質量が95質量%以上である。
【0008】
(ヨウ素価が55以上の非エステル交換パーム分別低融点部(パーム系油脂(A)))
油脂(A)としては、少なくとも、「ヨウ素価が55以上」の「非エステル交換パーム分別低融点部」を含む。便宜上、以後ヨウ素価が55以上の非エステル交換パーム分別低融点部をパーム系油脂(A)と記述する。
パーム分別低融点部とは、パーム油を分別して得られる低融点画分の油脂であり、通常56以上の範囲のヨウ素価(IV)を有するが、本発明においてはヨウ素価が55以上のパーム分別低融点部を用いる。パーム分別低融点部としては、構成脂肪酸としてオレイン酸を40%以上含むパーム分別低融点部が挙げられ、好ましくは、オレイン酸を40%以上含む、パームオレイン、パームダブルオレイン、またはパームスーパーオレイン、パームトップオレインまたはこれらの混合物が挙げられる。
パーム系油脂(A)のヨウ素価は55以上であり、56以上であることが好ましく、58以上がより好ましく、60以上がさらに好ましく、64以上が最も好ましい。
【0009】
上述したパーム系油脂(A)を、油脂組成物中に少なくとも20質量%含み、25質量%以上含むことが好ましく、30質量%以上含むことがさらに好ましく、40質量%以上含むことがよりさらに好ましく、50質量%以上含むことがなお好ましく、60質量%以上含むことが最も好ましい。パーム系油脂(A)の上限は90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の油脂組成物において、ヨウ素価が55以上の非エステル交換パーム分別低融点部を上述の量において含むことにより、油脂組成物を水産物加工食品に用いた場合に、分散性がよく、また染み出しが生じず、かつ色調がよく、さらに食感、口溶け及び旨味において優れる水産物加工食品を製造することができる。
【0010】
(5~15℃で液体状である液体油(B))
5~15℃で液体状である液体油(B)は低温環境(5~15℃程度)で液体状を保つ油脂を指す。5~15℃で液体状である液体油(B)はパーム系油脂ではない。5~15℃で液体状である液体油(B)は、水産物加工食品用油脂組成物全質量に対して、75質量%以下であることが好ましく、10~70質量%であることがより好ましく、15~70質量%であることがさらに好ましく、20~65質量%であることがよりさらに好ましい。20~50質量%であってもよい。5~15℃で液体状である液体油(B)の外観は、透明でも白濁した状態でも全体が液体状になっていれば問題ないが、より好ましくは濁りがなく、清澄な外観を有するものが望ましい。
5~15℃で液体状である液体油(B)は、コーン油、大豆油、ナタネ油、ハイオレイックナタネ油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、米油、綿実油、オリーブ油、亜麻仁油、えごま油、グレープシードオイル、チアシードオイル、パンプキンシードオイル、アボカドオイル、マカダミアナッツ油、ヘンプ油、アルガンオイル、アーモンド油、くるみ油または前記油脂の2種以上の混合油からなる群より選択される油脂であることが好ましい。
5~15℃で液体状である液体油として好ましくは、コーン油、ナタネ油、大豆油または前記油脂の混合油を含むかそれからなる。さらに好ましくは、コーン油、ナタネ油またはその混合油であり、最も好ましくはコーン油である。
上述した特定のパーム系油脂(A)と5~15℃で液体状である液体油(B)の合計質量は、油脂組成物質量に対して、少なくとも95質量%であり、好ましくは96~99質量%であり、より好ましくは97~99質量%であり、さらに好ましくは98~99質量%である。
【0011】
(極度硬化油脂(C))
極度硬化油脂は、原料油脂を極度硬化処理して得られた油脂である。
好ましい極度硬化油脂としては、パーム油、ハイエルシンナタネ油、ナタネ油、大豆油、牛脂、豚脂、魚油などを原料油脂としてこれを極度硬化処理して得られた油脂である。より好ましくは、パーム油、ハイエルシンナタネ油、ナタネ油、大豆油から選択される原料油脂の極度硬化油であり、さらに好ましくはハイエルシンナタネ油またはパーム油の極度硬化油であり、ハイエルシンナタネ油の極度硬化油が最も好ましい。
あるいは、極度硬化処理後の脂肪酸組成としてベヘン酸を20~60質量%含む油脂であることが好ましい。また融点が50℃以上の極度硬化油脂であることが好ましい。
極度硬化油脂(C)は、油脂組成物中に少なくとも0.5質量%含むことが好ましく、5質量%以下含むことが好ましい。1~3質量%含むことがより好ましく、2~3質量%含むこともまた好ましい。
【0012】
(その他のパーム系油脂(D))
その他のパーム系油脂は、極度硬化処理をしておらず、ヨウ素価が55未満のパーム系油脂あるいはエステル交換を行ったパーム系油脂である。
その他のパーム系油脂(D)としては、パーム油、パームステアリン、パームミッドフラクション、及びこれら1種または2種以上の混合油をエステル交換した油脂等が挙げられる。
ただし、本発明の水産物加工食品用油脂組成物にはエステル交換を行ったパーム系油脂あるいは、その他のパーム系油脂(D)を実質的に含まないことが好ましい。
【0013】
(その他の油脂)
本発明の水産物加工食品用油脂組成物は、油脂(A)~(C)あるいは油脂(A)~(D)以外の油脂を本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0014】
(SFC)
本発明の水産物加工食品用油脂組成物の固体脂含有量(SFC)は、5℃で2.0~25.0%であることにより、分散性、染み出しが良好になるため好ましい。さらに好ましくは2.0~15.0%であり、よりさらに好ましくは2.0~9.0%である。
また、15℃のSFCが、12.0%以下であることが外観(色調)の観点から好ましく、10.0%以下であることがより好ましく、8.0%以下がさらに好ましく、7.0%以下がよりさらに好ましく、5.0%以下がまた好ましく、0.5~3.0%であることがまたさらに好ましい。
また、35℃のSFCは3.0%以下であることが口溶けの観点から望ましいが、口溶けには油脂の種類による結晶サイズなども関連していると考えられる。
SFCは、例えば、日本油化学会編「基準油脂試験分析法」(2007年)に記載の「固体脂含量(NMR法)」により決定することができる。
【0015】
水産物加工食品用油脂組成物のトランス脂肪酸含量は、5質量%以下であることが好ましい。さらに3質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下である。
トランス脂肪酸含量は、例えば、日本油化学会編「基準油脂試験分析法」(2007年)に記載の「トランス脂肪酸含量(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」により決定することができる。
【0016】
本発明の水産物加工食品用油脂組成物は、さらに、加温して完全に融解させ、その後0~10℃前後になるまで急冷練りあわせを行い、ショートニングに調整して使用することができる。
【0017】
本明細書において、「水産物加工食品用油脂組成物」とは、まぐろやサケなど水産物を粉砕等の加工する際に加えられる油脂組成物のことを指す。
対象の水産物としては、まぐろ、サケ(あるいはサーモン)、はまち(ぶり、イナダ等含む)、さば、及びイカからなる群より選択される水産物の粉砕物が挙げられる。これらの中で、まぐろ、サケ(あるいはサーモン)が好ましく、さらにまぐろ赤身、スモークサーモンがより好ましく、まぐろ赤身が特に好ましい。
これら水産物加工食品は、そのまま食べたり、寿司のネタ、おにぎりの具などとして利用される。
【実施例0018】
<実施例1~7および比較例1~6>
(油脂組成物の調製)
表1に示した各原料油脂を以下のように準備した。
(パーム系油脂(A))
パームオレイン:パーム油を自然分別方法により高融点部と低融点部に2分割して得られた低融点部を脱色、脱臭することにより得た(ヨウ素価=56、オレイン酸含有量:42.4%)。
パームダブルオレイン:パームオレインを自然分別方法により高融点部と低融点部に2分割して得られた低融点部を脱色、脱臭することにより得た(ヨウ素価=64、オレイン酸含有量:46.0%)。
(5~15℃で液体状である液体油(B))
コーン油:コーン油を、脱色、脱臭することにより得た。
ナタネ油:ナタネ油を、脱色、脱臭することにより得た。
(極度硬化油脂(C))
ハイエルシンナタネ極度硬化油:ハイエルシンナタネ油の極度硬化処理を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点60℃、ベヘン酸含有量47.5%)。
パーム極度硬化油:パーム油の極度硬化処理を行い、脱色、脱臭することにより得た(融点58℃、ベヘン酸含有量0.1%)。
【0019】
(その他のパーム系油脂(D))
パーム油:パーム油を、脱色、脱臭することにより得た(ヨウ素価=52、オレイン酸含有量39.1%)。
エステル交換パームダブルオレイン:パームダブルオレインを、0.12%のナトリウムメチラートを触媒とし、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭することにより得た(ヨウ素価=64、オレイン酸含有量46.0%)
【0020】
(ショートニングの調整)
上記油脂組成物を加温し、完全に融解させた。これらをさらに0~10℃前後になるまで急冷練りあわせを行い、ショートニングを調整した。
【0021】
(調理方法)
冷凍状態のまぐろ赤身肉表面を水洗いしてから、40℃に温調した4%食塩水中に1~2分間浸し、5℃の冷蔵庫に入れて1時間温調した。まぐろ赤身肉を100gに切り分け、厚さ7mmにカットしてからフードプロセッサーに入れ、3秒間粉砕した。さらにショートニングに調整しておいた実施例1~7、比較例1~6の油脂組成物を25gフードプロセッサーに加え、3秒間混合した。これにより実施例1~7、比較例1~6のねぎとろ風水産物加工食品を得た。このときのショートニングの混合されやすさを作業性として評価し、5℃で1日間保管した後の染み出しを保存性として評価した。
また、実施例1~7、比較例1~6のねぎとろ風水産物加工食品をパネル(10人)により、外観(赤み)、食したときの食感(舌触り)、口溶け、旨味の違いの評価を下に示す評価基準に従い行った。
さらに、食感(舌触り)、口溶け、旨味は下記評価基準に則って10人のパネラーが官能評価した後平均値を算出し、その平均値が3.51超過=◎、3.5~3.1=〇、3.0~2.5=△、2.49以下=×と評価した。
結果を表1~2に示す。
【0022】
評価基準

【0023】
表1

【0024】
表2

【0025】
表1~2から分かるように、ヨウ素価が55以上の非エステル交換パーム分別低融点部であるパーム系油脂(A)と、5~15℃で液体状である液体油(B)と、極度硬化油脂(C)とを含み、前記パーム系油脂(A)の含有量が20質量%以上であり、さらに前記パーム系油脂(A)と前記液体油(B)の合計質量が95質量%以上である実施例1~7の油脂組成物を用いたねぎとろ風水産物加工食品は、油脂の分散性がよく、染み出しも生じず、外観(赤み)がよく、さらに食感(舌触り)、口溶け、旨味の評価において優れていた。一方、ヨウ素価が55以上の非エステル交換パーム分別低融点部であるパーム系油脂(A)の代わりにエステル交換パームダブルオレイン(IV=64)を含む比較例1の油脂組成物を用いた場合には、白みをおびた外観となり、口溶け及び旨味において劣っていた。また、ヨウ素価が55以上の非エステル交換パーム分別低融点部であるパーム系油脂(A)を含まず、5~15℃で液体状である液体油(B)のみ、あるいは5~15℃で液体状である液体油(B)と極度硬化油脂(C)からなる、比較例2及び4の油脂組成物を用いた場合には、外観は良いが、分散性と染み出しにおいて劣っており、さらに食感と旨味の評価が低かった。油脂(A)を含み、油脂(B)及び(C)を含まない場合(比較例3)には、口溶けの評価は良いが、分散性と染み出しにおいて劣っており、さらに食感の評価が低かった。油脂(B)と油脂(C)及びパーム系油脂を含むが、ヨウ素価が55以上の非エステル交換パーム分別低融点部(油脂(A))を20質量%以上含まない場合(比較例5及び6)には、白みをおびた外観であり、さらに口溶け及び旨味において劣っていた。