(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090802
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】制御装置、射出成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20240627BHJP
B29C 45/18 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206925
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】清家 幸治
(72)【発明者】
【氏名】天田 雅基
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AP05
4F206AR06
4F206JA07
4F206JE06
4F206JE10
4F206JF06
4F206JL02
4F206JM01
4F206JN03
4F206JP14
4F206JP30
4F206JQ88
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】成形材料を予備加熱することに起因して消費エネルギーが無駄に増加することを抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】溶融樹脂を射出する射出装置と、射出装置に成形材料を供給するとともに成形材料を温める予備加熱を実行することが可能な供給装置と、を備える射出成形装置の制御装置であって、射出装置における単位時間あたりに溶融樹脂を射出可能な可塑化に関する能力、及び、射出装置が消費するエネルギーと供給装置が消費するエネルギーとを用いて導き出された消費エネルギーの少なくともいずれかを考慮して予備加熱を実行するか否かを判断する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂を射出する射出装置と、当該射出装置に成形材料を供給するとともに当該成形材料を温める予備加熱を実行することが可能な供給装置と、を備える射出成形装置の制御装置であって、
前記射出装置における単位時間あたりに前記溶融樹脂を射出可能な可塑化に関する能力、及び、当該射出装置が消費するエネルギーと前記供給装置が消費するエネルギーとを用いて導き出された消費エネルギーの少なくともいずれかを考慮して前記予備加熱を実行するか否かを判断する、
制御装置。
【請求項2】
前記予備加熱を実行しない場合の前記可塑化に関する能力である実能力が、成形上必要な前記可塑化に関する能力である必要能力に満たない場合に当該予備加熱を実行すると判断する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記予備加熱を実行せずに射出成形を行っているときの前記射出装置の計量工程におけるスクリュの回転速度に基づいて前記実能力を算出する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記予備加熱を実行せずに射出成形を行っているときの前記射出装置の実際の計量時間と目標の計量時間とに基づいて当該予備加熱の実行を判断する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記予備加熱を実行する場合の前記消費エネルギーと当該予備加熱を実行しない場合の当該消費エネルギーとに基づいて当該予備加熱の実行を判断する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記予備加熱を実行せずに射出成形を行っているときの前記消費エネルギーの計測値と、当該予備加熱を実行しながら当該射出成形を行っているときの当該消費エネルギーの計測値とに基づいて前記予備加熱の実行を判断する、
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
溶融樹脂を射出する射出装置と、
前記射出装置に成形材料を供給するとともに当該成形材料を温める予備加熱を実行することが可能な供給装置と、
前記射出装置における単位時間あたりに前記溶融樹脂を射出可能な可塑化に関する能力、及び、当該射出装置が消費するエネルギーと前記供給装置が消費するエネルギーとを用いて導き出された消費エネルギーの少なくともいずれかを考慮して前記予備加熱を実行するか否かを判断する判断部と、
を備える射出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形における樹脂ペレットの予備加熱を行うことができる樹脂供給装置を備える射出成形装置が提案されている。
例えば、特許文献1に記載された射出成形装置は、樹脂ペレットを搬送し射出成形機に供給する樹脂供給装置と、樹脂供給装置から供給された樹脂ペレットを射出成形して樹脂成形品を得る射出成形機と、を備える。そして、樹脂供給装置は、樹脂ペレットの搬送方向に延在すると共に、樹脂ペレットを内側に収容し筒軸周りに回転自在に設けられた回転筒体と、回転筒体の内側で筒軸周りの螺旋状に設けられ回転筒体と一緒に筒軸周りに回転し樹脂ペレットを筒軸方向に移動させるスクリュー部と、を備える。また、樹脂供給装置は、回転筒体内を加熱する加熱手段と、回転筒体を筒軸周りに正逆両方向に回転させる回転制御部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶融樹脂を射出する射出装置(特許文献1においては射出成形機)に供給する前に成形材料(特許文献1においては樹脂ペレット)を予備加熱すると、高温の成形材料が射出装置のシリンダに投入されるため、成形材料はスクリュによって容易に可塑化されスクリュ前方に送られる。そのため、単位時間あたりに射出可能な溶融樹脂を射出装置が準備できる質量など可塑化に関する能力の向上が図れる。しかしながら、予備加熱を行うと、射出装置の消費エネルギーに加えて、樹脂供給装置が予備加熱を行うことに起因する消費エネルギーが加わるため、消費エネルギーが増加してしまう。
本発明は、成形材料を予備加熱することに起因して消費エネルギーが無駄に増加することを抑制することができる制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、溶融樹脂を射出する射出装置と、当該射出装置に成形材料を供給するとともに当該成形材料を温める予備加熱を実行することが可能な供給装置と、を備える射出成形装置の制御装置であって、前記射出装置における単位時間あたりに前記溶融樹脂を射出可能な可塑化に関する能力、及び、当該射出装置が消費するエネルギーと前記供給装置が消費するエネルギーとを用いて導き出された消費エネルギーの少なくともいずれかを考慮して前記予備加熱を実行するか否かを判断する、制御装置である。
また、他の観点から捉えると、本発明は、溶融樹脂を射出する射出装置と、前記射出装置に成形材料を供給するとともに当該成形材料を温める予備加熱を実行することが可能な供給装置と、前記射出装置における単位時間あたりに前記溶融樹脂を射出可能な可塑化に関する能力、及び、当該射出装置が消費するエネルギーと前記供給装置が消費するエネルギーとを用いて導き出された消費エネルギーの少なくともいずれかを考慮して前記予備加熱を実行するか否かを判断する判断部と、を備える射出成形装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、成形材料を予備加熱することに起因して消費エネルギーが無駄に増加することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る射出成形装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】制御装置の機能を示すブロック図の一例である。
【
図3】予備加熱制御部が行う予備加熱制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係る制御装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図5】予備加熱制御部が行う予備加熱制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】第3実施形態に係る制御装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図7】予備加熱制御部が行う予備加熱制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】第4実施形態に係る制御装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図9】予備加熱制御部が行う予備加熱制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】第5実施形態に係る制御装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図11】予備加熱制御部が行う予備加熱制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る射出成形装置1の概略構成の一例を示す図である。
図2は、制御装置40の機能を示すブロック図の一例である。
射出成形装置1は、型締装置(不図示)と、溶融樹脂を射出する射出装置10と、射出装置10に成形材料を供給する供給装置70と、装置全体を制御する制御装置40と、を備えている。これら型締装置、射出装置10、供給装置70、制御装置40については後で詳述する。また、以下の説明において、射出装置10が溶融樹脂を射出する側を前側とし、射出する側とは反対側を後側とする。
【0009】
また、射出成形装置1は、ユーザの入力操作を受け付ける操作部51と、操作受付画面や画像を表示する表示部52とを備えている。操作部51は、ボタン、スイッチ、タッチパネル等の入力装置であることを例示することができる。表示部52は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイであることを例示することができる。操作部51および表示部52は、一体的に構成されていても良い。
【0010】
射出成形装置1は、型閉じ工程、型締め工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、計量工程、型開き工程、および、突き出し工程を1サイクルとし、成形品を繰り返し製造する。型閉じ工程は、固定金型および可動金型で構成される金型装置を閉じる工程である。型締め工程は、金型装置を締める工程である。充填工程は、金型装置内に溶融樹脂を流し込む工程である。保圧工程は、流し込んだ樹脂に圧力をかける工程である。冷却工程は、保圧工程後に金型装置内で樹脂を固化させる工程である。計量工程は、次の成形品のための溶融樹脂を計量する工程である。型開き工程は、金型装置を開く工程である。突き出し工程は、型開き後の金型装置から成形品を突き出す工程である。なお、成形サイクルの短縮のため、計量工程は、冷却工程が行われている間に行われても良い。
【0011】
(型締装置)
型締装置は、固定金型が取り付けられる固定プラテンと、可動金型が取り付けられる可動プラテンとを備え、可動プラテンを進退させ、可動金型を固定金型に接離させることによって型閉じ、型締めおよび型開きを行う。型締装置の方式は特に限定されない。例えば、電動モータおよびトグル機構を用いたトグル式、流体圧シリンダを用いた直圧式、リニアモータおよび電磁石を用いた電磁式であることを例示することができる。
【0012】
(射出装置10)
射出装置10は、成形材料としての樹脂を加熱するためのシリンダ11と、シリンダ11の前端に配設されたノズル12とを有する。また、射出装置10は、シリンダ11内に、回転可能であり、かつ、回転軸方向に進退自在に配設されたスクリュ20と、シリンダ11を加熱する加熱源としてのヒータh11、h12およびh13と、シリンダ11の後側に配設された駆動装置60とを有する。
【0013】
スクリュ20は、スクリュ本体21と、スクリュ本体21より前側に配設された射出部22とを有し、後端の軸部を介して駆動装置60と連結される。
スクリュ本体21は、フライト部23と、フライト部23の前端に対して着脱自在に配設された圧力部材24とを有する。フライト部23は、棒状の本体部23aと、本体部23aの外周面から突出するように形成された螺旋状のフライト23bとを有し、フライト23bに沿って螺旋状のねじ溝26が形成されている。フライト部23の後端から前端にかけて、ねじ溝26の深さは一定であり、スクリュ圧縮比が一定であることを例示することができる。
【0014】
なお、スクリュ20は、圧力部材24を有することなく、スクリュ本体21の全体にわたってフライト部23が形成されていても良い。また、スクリュ本体21は、後端から前端にかけて、樹脂が供給される供給部と、供給された樹脂を圧縮させながら溶融させる圧縮部と、溶融された樹脂を一定量ずつ計量する計量部とに区別されていても良い。ねじ溝26の深さは、供給部が最も深く、計量部が最も浅く、圧縮部において後側から前側に向かうに従って浅くなっていると良い。
【0015】
射出部22は、先端に円錐形の部位を備えたヘッド部31と、ヘッド部31の後側に隣接させて形成されたロッド部32と、ロッド部32の周囲に配設された逆止リング33と、圧力部材24の前端に取り付けられたシールリング34とを有する。
計量工程時に、スクリュ20の後退に伴って、ロッド部32に対して逆止リング33が前側に移動させられ、シールリング34から離されると、射出部22の後側から前側に樹脂が送られる。また、射出工程時に、スクリュ20の前進に伴って、逆止リング33がロッド部32に対して後側に移動させられ、シールリング34に接触させられると、樹脂の逆流が防止される。
【0016】
シリンダ11の後部には、成形材料供給口としての樹脂供給口14が形成されている。樹脂供給口14は、スクリュ20をシリンダ11内の最も前側に位置させた状態において、ねじ溝26の後端部と対向する箇所に形成されている。樹脂供給口14には、シリンダ11内に樹脂を供給する供給装置70が取り付けられている。
【0017】
駆動装置60は、シリンダ11内でスクリュ20を回転させたり進退させたりする装置である。
駆動装置60は、シリンダ11内でスクリュ20を回転させる駆動源としての計量モータ61と、シリンダ11内でスクリュ20を回転軸方向に移動させる駆動源としての射出モータ62とを有する。計量モータ61および射出モータ62はサーボモータであることを例示することができる。
【0018】
射出モータ62とスクリュ20との間には、射出モータ62の回転運動をスクリュ20の直線運動に変換する運動変換機構等が設けられる。例えば、運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットとの間には、ボールやローラ等が設けられていることを例示することができる。スクリュ20を回転軸方向に移動させる駆動源は、射出モータ62には限定されず、例えば油圧シリンダ等でもよい。
【0019】
(供給装置70)
供給装置70は、成形材料(例えば樹脂ペレット)を収容するホッパ71と、ホッパ71の下端から水平方向に延びるフィードシリンダ72と、フィードシリンダ72の前端から下方に延びる筒状の案内部73とを有する。また、供給装置70は、フィードシリンダ72内において回転可能に配設されたフィードスクリュ74と、フィードスクリュ74を回転させるフィードモータ75とを有する。また、供給装置70は、フィードシリンダ72の周囲に配置されて、フィードシリンダ72を加熱する加熱源としてのヒータ76を有する。
【0020】
ホッパ71内からフィードシリンダ72内に供給された成形材料は、フィードスクリュ74の回転に伴ってフィードスクリュ74のねじ溝に沿って前進させられる。フィードスクリュ74の前端から案内部73内に送られた成形材料は、案内部73内を落下し、シリンダ11内に供給される。
【0021】
供給装置70は、フィードシリンダ72内に供給された成形材料を、射出装置10のシリンダ11内に供給する前にヒータ76によって温める予備加熱を実行することが可能な装置である。予備加熱により、成形材料は、溶融することがない温度、例えば、ガラス転移点以下の所定の温度に加熱されることを例示することができる。
【0022】
なお、フィードシリンダ72は、必ずしもシリンダ11と平行に延びている必要はなく、例えばシリンダ11に対して斜めに延びていても良い。また、フィードシリンダ72は、出口側が入口側よりも高くても良い。
【0023】
(制御装置40)
制御装置40は、CPU41と、制御プログラム等を格納するROM42と、演算結果等を格納する読書き可能なRAM43と、ハードディスク等の記憶部44と、入力インターフェイス(I/F)45と、出力インターフェイス(I/F)46とを有する。制御装置40は、ROM42または記憶部44等に記憶されたプログラムをCPU41で実行させることにより、各種機能を実現する。
【0024】
図2に示すように、制御装置40は、成形品に関連する情報から成形条件を決定する成形条件決定部81を有する。また、制御装置40は、計量モータ61、射出モータ62、フィードモータ75等の駆動を制御するモータ制御部82と、ヒータh11~h13の作動を制御するヒータ制御部83と、ヒータ76の作動を制御する予備加熱制御部90とを有する。
【0025】
(射出成形装置1の動作)
以下に、制御装置40によって制御される射出成形装置1の動作について説明する。
先ず、成形条件決定部81が、成形品に関連する情報を取得する。成形品に関連する情報は、成形品を成形する際に用いる、容積等を含む金型情報や、成形品に用いられる成形材料の情報であることを例示することができる。成形品に関連する情報は、例えば操作部51を介して入力されることを例示することができる。そして、成形条件決定部81は、取得した成形品に関連する情報を用いて成形条件を決定する。成形条件は、計量時間等を含む成形サイクル情報、設定温度等であることを例示することができる。
【0026】
モータ制御部82は、成形条件決定部81が決定した成形条件に従って、射出モータ62、フィードモータ75等の駆動を制御する。また、ヒータ制御部83は、成形条件決定部81が決定した成形条件に従って、ヒータh11~h13の作動を制御する。
【0027】
例えば、計量工程では、モータ制御部82は、計量モータ61を駆動し、スクリュ20を回転させる。このとき、モータ制御部82は、フィードモータ75を駆動し、フィードスクリュ74を回転させる。モータ制御部82は、成形時にスクリュ20とフィードスクリュ74とを同期して回転させることを例示することができる。モータ制御部82は、スクリュ20の回転速度(以下、「スクリュ回転速度」と称する場合がある。)が、例えば予め決定された成形サイクルに応じて設定された回転速度になるように計量モータ61に供給する電流を制御する。また、モータ制御部82は、フィードスクリュ74の回転速度が、例えば予め決定された成形サイクルに応じて設定された回転速度になるようにフィードモータ75に供給する電流を制御する。
【0028】
供給装置70により、シリンダ11内に供給された成形材料は、樹脂供給口14で滞留することなく、スクリュ20によって直ちに前側に送られる。スクリュ20のねじ溝26内に成形材料が密に充填されることはなく、ねじ溝26内の成形材料の状態は疎の状態とされる。よって、供給装置70による成形材料の供給速度が速くなるほど、スクリュ20によって単位時間当たりに前側に送られる成形材料の量が増える。
【0029】
シリンダ11内に供給された成形材料は、スクリュ20の回転に伴ってスクリュ20のねじ溝26に沿って前進させられるとともに、ヒータh11~h13によって加熱され、溶融される。制御装置40のヒータ制御部83は、ヒータh11~h13の温度が、例えば予め決定された成形条件に応じて設定された温度になるようにヒータh11~h13に供給する電力を制御する。
【0030】
また、シリンダ11内に供給された成形材料は、スクリュ本体21における成形材料の圧力上昇開始位置からスクリュ本体21の前端にかけて、次第に加圧される。圧力上昇開始位置は、圧力部材24から後側に所定の距離だけ離れた位置にあり、スクリュ20の回転速度と、フィードスクリュ74の回転速度との比率(同期率)等に応じて変位する。圧力部材24から所定範囲内の距離に圧力上昇開始位置があると、成形材料の溶融状態が安定化し、成形品の重量が安定化する。
【0031】
スクリュ20のねじ溝26に沿って前進された成形材料は、圧力部材24とシリンダ11との間の流路を通過し、その間に混練された後、シリンダ11とロッド部32との間の流路を通過して前進させられる。その後、樹脂は、スクリュ20の前側に送られ、シリンダ前部に蓄積される。スクリュ20の前側に溶融樹脂が蓄積されるにつれ、スクリュ20は後退する。
【0032】
計量工程では、制御装置40のモータ制御部82は、スクリュ20の背圧が、例えば予め決定された成形条件に応じて設定された背圧になるように、射出モータ62に供給する電流を制御する。スクリュ20に背圧を加えることにより、スクリュ20の急激な後退が抑制され、成形材料の混練性が向上し、また、成形材料中のガスが後側に逃げ易くなる。
【0033】
モータ制御部82は、スクリュ20を後退させる間、位置センサ(不図示)でスクリュ20の位置を監視する。制御装置40は、スクリュ20が計量完了位置まで後退し、スクリュ20の前側に所定量の成形材料が蓄積されると、計量モータ61の駆動を停止する。これにより、スクリュ20の回転が停止し、計量工程が完了する。モータ制御部82は、計量工程の完了と同時に、フィードモータ75の駆動を停止し、フィードスクリュ74の回転を停止することを例示することができる。
【0034】
充填工程では、モータ制御部82は、射出モータ62を駆動し、スクリュ20を前進させ、型締め状態の金型装置内のキャビティ空間に溶融樹脂を押し込む。その際、モータ制御部82は、回転軸方向のスクリュ20の移動速度が、例えば予め決定された成形サイクルに応じて設定された移動速度となるように、射出モータ62に供給する電流を制御する。
【0035】
保圧工程では、モータ制御部82は、溶融樹脂の圧力が、例えば予め決定された成形条件に応じて設定された圧力になるように、射出モータ62に供給する電流を制御する。これにより、キャビティ空間に充填された溶融樹脂は冷却によって収縮するが、収縮分の溶融樹脂が補充される。
【0036】
次に、予備加熱制御部90によって制御される予備加熱について説明する。
予備加熱制御部90は、射出装置10における可塑化に関する能力(以下、「可塑化能力」と称する場合がある。)を考慮して予備加熱を実行するか否かを判断する。例えば、予備加熱制御部90は、予備加熱を実行しない場合の射出装置10における可塑化能力が、成形上必要な可塑化能力に満たない場合に予備加熱を実行すると判断する。
【0037】
より具体的には、予備加熱制御部90は、成形条件決定部81が決定した成形条件を満足するのに必要な可塑化に関する能力である必要能力Qtを算出する必要能力算出部91と、射出装置10の可塑化に関する能力である実能力Qaを算出する実能力算出部92とを有する。また、予備加熱制御部90は、実能力Qaを用いて予備加熱を実行するか否かを判断する判断部93と、判断部93が予備加熱を実行すると判断した場合に、予備加熱の条件を決定する予備加熱条件決定部94とを有する。
【0038】
必要能力算出部91は、上述した必要能力Qtを算出する。必要能力Qtは、射出装置10が準備する必要がある、単位時間あたりに射出可能な溶融樹脂の質量であり、単位はkg/hである。必要能力算出部91は、例えば予め定められた算出式に、成形条件に応じて設定されたスクリュ回転速度やシリンダ設定温度を代入することにより算出することを例示することができる。
【0039】
実能力算出部92は、射出装置10の実能力Qaを算出する。実能力Qaは、成形時に射出装置10が準備できる、単位時間あたりに射出可能な溶融樹脂の質量を算出している。単位はkg/hである。
ここで、記憶部44は、予め経験則に基づいて作成された、成形品に用いられる成形材料毎に、スクリュ回転速度、シリンダ設定温度等と、実能力Qaとの関係を記憶する。実能力算出部92は、記憶部44に記憶されたこの関係と、成形品に用いられる成形材料、成形条件に応じて設定されたスクリュ回転速度及びシリンダ設定温度を用いて実能力Qaを算出する。なお、記憶部44は、成形材料毎の、スクリュ回転速度、シリンダ設定温度等と実能力Qaとの関係を、マップの形で記憶しても良いし、算出式の形で記憶しても良い。なお、上述した例では、実能力Qaは、スクリュ20の回転速度やシリンダ11の温度に基づいて算出したが、特にかかる態様に限定されない。例えば、成形時に射出装置10が準備できるスクリュ20の回転速度やシリンダ11の温度を実能力Qaとしてみなして用いても良い。
【0040】
判断部93は、必要能力算出部91が算出した必要能力Qt及び実能力算出部92が算出した実能力Qaを用いて予備加熱を実行するか否かを判断する。判断部93は、例えば、実能力Qaが必要能力Qt以上(Qa≧Qt)である場合には予備加熱を実行しないと判断する。他方、判断部93は、例えば、実能力Qaが必要能力Qt未満(Qa<Qt)である場合には予備加熱を実行すると判断する。
【0041】
予備加熱条件決定部94は、判断部93が予備加熱を実行すると判断した場合に、予備加熱条件(例えば予備加熱温度Tp)を決定する。予備加熱条件決定部94は、先ず、必要能力Qtに対して実能力Qaが不足する不足能力Lq(=Qt-Qa)を算出する。
【0042】
ここで、記憶部44は、予め経験則に基づいて作成された、成形品に用いられる成形材料毎に、不足能力Lq、スクリュ回転速度、シリンダ設定温度等と、予備加熱温度Tpとの関係を記憶する。予備加熱条件決定部94は、記憶部44に記憶されたこの関係と、成形品に用いられる成形材料、不足能力Lq、成形条件に応じて設定された回転速度及びシリンダ設定温度を用いて予備加熱温度Tpを決定する。なお、記憶部44は、成形材料毎の、不足能力Lq、スクリュ回転速度、シリンダ設定温度等と予備加熱温度Tpとの関係を、マップの形で記憶しても良いし、算出式の形で記憶しても良い。
【0043】
図3は、予備加熱制御部90が行う予備加熱制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
予備加熱制御部90は、この処理を、例えば成形条件決定部81が決定した成形条件に関連する情報を取得したときに実行することを例示することができる。
予備加熱制御部90は、先ず、成形条件決定部81が決定した成形条件を満足する必要能力Qtを算出する(S301)。S301の処理は、必要能力算出部91が行う処理である。また、予備加熱制御部90は、射出装置10の実能力Qaを算出する(S302)。S302の処理は、実能力算出部92が行う処理である。
【0044】
そして、予備加熱制御部90は、S302の処理にて算出した実能力QaがS301の処理にて算出した必要能力Qt以上(Qa≧Qt)であるか否かを判断する(S303)。実能力Qaが必要能力Qt以上である場合(S303でYES)、予備加熱制御部90は、予備加熱を行わないと判断する(S304)。他方、実能力Qaが必要能力Qt以上ではない場合(S303でNO)、予備加熱制御部90は、予備加熱を実行すると判断する(S305)。これら、S303、S304、S305の処理は、判断部93が行う処理である。
【0045】
そして、予備加熱制御部90は、不足能力Lq(=Qt-Qa)を算出する(S306)。そして、予備加熱制御部90は、予備加熱条件(例えば予備加熱温度Tp)を決定する(S307)。S306、S307の処理は、予備加熱条件決定部94が行う処理である。
【0046】
そして、制御装置40は、予備加熱制御部90が予備加熱を実行しないと判断した場合には、予備加熱を実行することなく射出成形を行う。これにより、ホッパ71からフィードシリンダ72に供給された成形材料がヒータ76にて予備加熱されることなくシリンダ11に供給される。そして、射出装置10が、シリンダ11内において溶融した溶融樹脂を射出する。
【0047】
他方、予備加熱制御部90が予備加熱を実行すると判断した場合には、予備加熱を実行しながら射出成形を行う。これにより、ホッパ71からフィードシリンダ72に供給された成形材料がヒータ76にて予備加熱されて高温にされた後にシリンダ11に供給される。そして、射出装置10が、シリンダ11内において溶融した溶融樹脂を射出する。
【0048】
以上、説明したように、溶融樹脂を射出する射出装置10と、射出装置10に成形材料を供給するとともに成形材料を温める予備加熱を実行することが可能な供給装置70と、を備える射出成形装置1の制御装置40は、射出装置10における単位時間あたりに溶融樹脂を射出可能な可塑化能力を考慮して予備加熱を実行するか否かを判断する。それゆえ、射出成形装置1が射出成形を行う場合に必ず予備加熱を実行する構成と比較して、成形材料を予備加熱することに起因して消費エネルギーが無駄に増加することを抑制することができる。
【0049】
例えば、制御装置40は、予備加熱を実行しない場合の可塑化に関する能力である実能力Qaが、成形上必要な可塑化に関する能力である必要能力Qtに満たない場合に予備加熱を実行すると判断する。これにより、真に予備加熱が必要な場合だけ予備加熱を実行するので、消費エネルギーが無駄に増加することを抑制することができる。
【0050】
なお、上述した射出成形装置1においては、フィードシリンダ72の周囲に配置されたヒータ76にて、フィードシリンダ72内の成形材料を予備加熱する構成であるが、成形材料を予備加熱する態様は特に限定されない。例えば、ホッパ等のシリンダ11への成形材料の供給容器と、当該供給容器に成形材料を供給する容器との間の材料送り通路の周囲に配置されて、当該材料送り通路を通る成形材料を加熱するヒータであっても良い。また、ヒータの加熱方式も特に限定されない。例えば、高温の空気等の加熱ガスを送る熱風加熱式ヒータ、高周波誘電加熱等の電熱式ヒータ、ハロゲンランプやセラミックヒータ等の赤外線加熱式ヒータ、レーザ加熱式ヒータ等であることを例示することができる。
【0051】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態に係る制御装置240の概略構成の一例を示す図である。
第2実施形態に係る制御装置240は、第1実施形態に係る制御装置40に対して、予備加熱制御部90に相当する予備加熱制御部290が異なる。予備加熱制御部290は、第1実施形態に係る予備加熱制御部90に対して、射出成形中に予備加熱を実行するか否かを判断する点、及び、実能力算出部92に相当する実能力算出部292が異なる。以下、第1実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態と第2実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0052】
第2実施形態に係る記憶部44は、計量工程における移動平均回転速度V(rpm)と実能力Qaとの関係を記憶する。移動平均回転速度Vは、計量工程の開始から計量工程の完了までにおけるスクリュ回転速度の積算値を計量時間(計量工程の開始から計量工程の完了までの時間(秒))にて除することにより得た、1分間当たりのスクリュ回転速度である(V(rpm)=スクリュ回転速度の積算値/計量時間×60)。なお、記憶部44は、移動平均回転速度Vと実能力Qaとの関係を、マップの形で記憶しても良いし、算出式の形で記憶しても良い。
【0053】
第2実施形態に係る実能力算出部292は、計量モータ61の回転角度を計測し(例えば、検出するセンサ(例えばエンコーダ)の検出値を用いる)、計量工程における実際のスクリュ回転速度を算出し、1ショット毎の移動平均回転速度V(rpm)を算出する。そして、実能力算出部292は、記憶部44に記憶された、移動平均回転速度Vと実能力Qaとの関係と、算出した移動平均回転速度Vとを用いて、実能力Qaを算出する。
【0054】
図5は、予備加熱制御部290が行う予備加熱制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
予備加熱制御部290は、この処理を、例えば成形条件決定部81が決定した成形条件に関連する情報を取得するとともに、射出成形が開始された後に実行することを例示することができる。
予備加熱制御部290は、先ず、成形条件決定部81が決定した成形条件を満足する必要能力Qtを算出する(S501)。S501の処理は、
図3を用いて説明した予備加熱制御処理のS301の処理と同様の処理である。次に、予備加熱制御部290は、移動平均回転速度V(rpm)を算出する(S502)。そして、予備加熱制御部290は、S502にて算出した移動平均回転速度V(rpm)を用いて実能力Qaを算出する(S503)。S502、S503の処理は、実能力算出部292が行う処理である。
【0055】
そして、予備加熱制御部290は、S503の処理にて算出した実能力QaがS501の処理にて算出した必要能力Qt以上(Qa≧Qt)であるか否かを判断する(S504)。実能力Qaが必要能力Qt以上である場合(S504でYES)、予備加熱制御部290は、予備加熱を実行する必要はないと判断し、S502以降の処理を行う。S504の処理は、判断部93が行う処理である。
【0056】
他方、実能力Qaが必要能力Qt以上ではない場合(S504でNO)、予備加熱制御部290は、予備加熱を実行すると判断する(S505)。S505の処理は、判断部93が行う処理である。そして、予備加熱制御部290は、不足能力Lq(=Qt-Qa)を算出する(S506)。そして、予備加熱制御部290は、予備加熱条件(例えば予備加熱温度Tp)を決定する(S507)。S506、S507の処理は、
図3を用いて説明した予備加熱制御処理のS306、S307の処理と同様の処理であり、予備加熱条件決定部94が行う処理である。
【0057】
以上説明したように、第2実施形態に係る制御装置240は、先ず、予備加熱を実行することなく射出成形を開始する。そして、制御装置240は、予備加熱を実行せずに射出成形を行っているときの射出装置10の計量工程におけるスクリュ20の回転速度に基づいて実能力Qaを算出する。例えば、制御装置240は、予備加熱を実行せずに射出成形を行っているときの射出装置10の計量工程における移動平均回転速度V(スクリュ20の回転速度の平均値の一例)を基に実能力Qaを算出する。そして、制御装置240は、算出した移動平均回転速度Vを用いて算出した実能力Qaが必要能力Qt以上ではない場合に予備加熱を実行開始する。なお、制御装置240はスクリュ20の回転速度に基づいて実能力Qaを算出すると記載しているが、スクリュ20の回転速度「に基づいて」とは、スクリュ20の回転速度「を少なくとも考慮する」という意味であり、スクリュ20の回転速度以外の他の要素を考慮して算出することを含む。この実能力Qaの算出に限らず、「に基づいて」と記載している場合には、「を少なくとも考慮する」という意味である。
【0058】
それゆえ、射出成形装置1が射出成形を行う場合に必ず予備加熱を実行する構成と比較して、成形材料を予備加熱することに起因して消費エネルギーが無駄に増加することを抑制することができる。また、射出成形を継続しているときに、例えば周囲温度が変化すること等の影響により、射出装置10の可塑化能力が変わる場合がある。そして、射出成形開始後に射出装置10の可塑化能力が低下した場合においても、予備加熱を実行開始することで、成形に必要な溶融樹脂を射出することができる。その結果、真に必要な場合にのみ予備加熱を実行するので、予備加熱を実行することに起因して消費エネルギーが無駄に増加することを抑制することができる。
【0059】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係る制御装置340の概略構成の一例を示す図である。
第3実施形態に係る制御装置340は、第2実施形態に係る制御装置240に対して、予備加熱制御部290に相当する予備加熱制御部390が異なる。予備加熱制御部390は、第2実施形態に係る予備加熱制御部290に対して、判断部93に相当する判断部393が異なる。以下、第2実施形態と異なる点について説明する。第2実施形態と第3実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0060】
第3実施形態に係る判断部393は、計量工程の開始から計量工程の完了までに実際に要した実計量時間Taを計測するとともに、実計量時間Taと、成形条件に含まれる、目標の計量時間である目標計量時間Ttとを用いて、予備加熱を実行するか否かを判断する。例えば、判断部393は、実計量時間Taが目標計量時間Tt以下(Ta≦Tt)である場合には予備加熱を実行しないと判断する。他方、判断部393は、例えば、実計量時間Taが目標計量時間Ttよりも長い(Ta>Tt)場合には予備加熱を実行すると判断する。
【0061】
図7は、予備加熱制御部390が行う予備加熱制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
予備加熱制御部390は、この処理を、例えば成形条件決定部81が決定した成形条件に関連する情報を取得するとともに、射出成形が開始された後に実行することを例示することができる。
予備加熱制御部390は、先ず、成形条件決定部81が決定した成形条件を満足する必要能力Qtを算出する(S701)。S701の処理は、
図5を用いて説明した予備加熱制御処理のS501の処理と同様の処理である。次に、予備加熱制御部390は、実計量時間Taを計測する(S702)。そして、予備加熱制御部390は、S702にて計測した実計量時間Taが目標計量時間Tt以下(Ta≦Tt)であるか否かを判別する(S703)。実計量時間Taが目標計量時間Tt以下である場合(S703でYES)、予備加熱制御部390は、予備加熱を実行する必要はないと判断し、S702以降の処理を行う。他方、実計量時間Taが目標計量時間Ttよりも長い場合(S703でNO)、予備加熱制御部390は、予備加熱を実行すると判断する(S704)。S702、S703、S704の処理は、判断部393が行う処理である。
【0062】
そして、予備加熱制御部390は、移動平均回転速度V(rpm)を算出する(S705)。そして、予備加熱制御部390は、S705にて算出した移動平均回転速度V(rpm)を用いて実能力Qaを算出する(S706)。S705、S706の処理は、
図5を用いて説明した予備加熱制御処理のS502、S503の処理と同様の処理であり、実能力算出部292が行う処理である。
【0063】
そして、予備加熱制御部390は、不足能力Lq(=Qt-Qa)を算出する(S707)。そして、予備加熱制御部390は、予備加熱条件(例えば予備加熱温度Tp)を決定する(S708)。S707、S708の処理は、
図5を用いて説明した予備加熱制御処理のS506、S507の処理と同様の処理であり、予備加熱条件決定部94が行う処理である。
【0064】
以上説明したように、第3実施形態に係る制御装置340は、先ず、予備加熱を実行することなく射出成形を開始する。そして、制御装置340は、予備加熱を実行せずに射出成形を行っているときの射出装置10の実計量時間Ta(実際の計量時間の一例)と目標計量時間Tt(目標の計量時間の一例)とに基づいて予備加熱の実行を判断する。例えば、制御装置340は、予備加熱を実行せずに射出成形を行っているときの射出装置10の実計量時間Taが目標計量時間Ttよりも長い場合に、実能力Qaが必要能力Qtに満たないとして予備加熱を実行すると判断し、予備加熱を実行開始する。
【0065】
それゆえ、射出成形装置1が射出成形を行う場合に必ず予備加熱を実行する構成と比較して、成形材料を予備加熱することに起因して消費エネルギーが無駄に増加することを抑制することができる。また、射出成形を継続しているときに、例えば周囲温度が変化すること等の影響により、射出装置10の可塑化能力が変わる場合があるが、可塑化能力が低下した場合においても、予備加熱を実行開始することで、成形に必要な溶融樹脂を射出することができる。その結果、真に必要な場合にのみ予備加熱を実行するので、予備加熱を実行することに起因して消費エネルギーが無駄に増加することを抑制することができる。
【0066】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態に係る制御装置440の概略構成の一例を示す図である。
第4実施形態に係る制御装置440は、第1実施形態に係る制御装置40に対して、予備加熱制御部90に相当する予備加熱制御部490が異なる。予備加熱制御部490は、第1実施形態に係る予備加熱制御部90に対して、判断部93に相当する判断部493、及び、消費エネルギー計測部495を有する点が異なる。以下、第1実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態と第4実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0067】
消費エネルギー計測部495は、予備加熱が実行されることなく行われる射出成形時の射出成形装置1の消費エネルギーEnと、予備加熱が実行されながら行われる射出成形時の射出成形装置1の消費エネルギーEpとを計測する。消費エネルギーEn及び消費エネルギーEpは、射出成形を行うのに伴い、射出装置10及び供給装置70が消費するエネルギーであり、射出装置10が消費するエネルギーと供給装置70が消費するエネルギーとを用いて導き出された消費エネルギーである。例えば、消費エネルギーEn及び消費エネルギーEpは、射出装置10が消費するエネルギーと供給装置70が消費するエネルギーとの合計の消費エネルギーであることを例示することができる。つまり、消費エネルギーEnは、計量モータ61、射出モータ62、フィードモータ75、及び、ヒータh11~h13が作動する際に消費するエネルギーの合計である。他方、消費エネルギーEpは、計量モータ61、射出モータ62、フィードモータ75、ヒータh11~h13、及び、供給装置70のヒータ76が作動する際に消費するエネルギーの合計である。あるいは、消費エネルギーEn及び消費エネルギーEpは、射出装置10が消費するエネルギーと供給装置70が消費するエネルギーとを予め定められた関数に代入することにより得られた値であっても良い。また、消費エネルギーEn及び消費エネルギーEpは、射出装置10が消費するエネルギーを補正した後の値と、供給装置70が消費するエネルギーを補正した後の値とを合計することにより得られた値であっても良い。
なお、消費エネルギーEn及び消費エネルギーEpは、予備加熱を実行する場合と予備加熱を実行しない場合とで作動態様が変わり得る物(例えば、計量モータ61、ヒータh11~h13、ヒータ76等)が消費するエネルギーのみを考慮し、作動態様が変わらない物が消費するエネルギーは考慮しないで導き出された消費エネルギーであっても良い。
【0068】
判断部493は、消費エネルギーEnと消費エネルギーEpとを比較し、予備加熱を実行する時の消費エネルギーEpの方が、予備加熱を実行しない時の消費エネルギーEnよりも小さい場合には予備加熱を実行すると判断する。他方、判断部493は、予備加熱を実行しない時の消費エネルギーEnが、予備加熱を実行する時の消費エネルギーEp以下である場合には予備加熱を実行しないと判断する。
【0069】
ただし、判断部493は、予備加熱条件決定部94が予備加熱条件を決定するまでに長時間を要する場合は予備加熱を実行しないようにするために、ショット数や成形時間等の制限を設け、制限を超える場合は予備加熱を実行しないようにする。
【0070】
図9は、予備加熱制御部490が行う予備加熱制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
予備加熱制御部490は、この処理を、例えば成形条件決定部81が決定した成形条件に関連する情報を取得するとともに、予備加熱を実行することなく射出成形が開始された後に実行することを例示することができる。
【0071】
予備加熱制御部490は、先ず、予備加熱を実行しない時の消費エネルギーEnを計測する(S901)。S901の処理は、消費エネルギー計測部495が行う処理である。その後、予備加熱制御部490は、予備加熱を実行開始する(S902)。S902の処理は、判断部493が行う処理である。これにより、予備加熱制御部490は、成形条件を、予備加熱を実行する際の成形条件に変更する(S903)。例えば、予備加熱条件決定部94は、供給装置70のヒータ76の目標温度を予め定められた温度に設定する。また、成形条件決定部81は、例えば、計量モータ61の回転速度を低下させる。また、成形条件決定部81は、例えば、ヒータh11~h13の目標温度を低下させても良い。
【0072】
その後、予備加熱制御部490は、予備加熱を実行する時の消費エネルギーEpを計測する(S904)。S904の処理は、消費エネルギー計測部495が行う処理である。そして、予備加熱制御部490は、継続許容範囲内か否かを判断する(S905)。つまり、予備加熱制御部490は、予め定められたショット数や成形時間内であるか否かを判断する。継続許容範囲内である場合(S905でYES)、予備加熱制御部490は、S904にて計測した消費エネルギーEpがS901にて計測した消費エネルギーEnより小さいか否かを判断する(S906)。消費エネルギーEpが消費エネルギーEnより小さくない場合(S906でNO)、予備加熱制御部490は、未だ、予備加熱を実行する際の成形条件への変更が完了していない可能性があるので、S903以降の処理を行う。他方、消費エネルギーEpが消費エネルギーEnより小さい場合(S906でYES)、予備加熱制御部490は、そのまま射出成形を継続する(S907)。一方、継続許容範囲内ではない場合(S905でNO)、予備加熱制御部490は、予備加熱を停止して射出成形を行う(S908)。これらS905~S908の処理は、判断部493が行う処理である。
【0073】
以上説明したように、第4実施形態に係る制御装置440は、先ず、予備加熱を実行することなく射出成形を開始し、予備加熱を実行せずに射出成形を行っているときの消費エネルギーEnを計測する。その後、制御装置440は、予備加熱を実行開始し、予備加熱を実行しながら射出成形を行っているときの消費エネルギーEpを計測する。そして、制御装置440は、消費エネルギーEnと消費エネルギーEpとに基づいて予備加熱の実行を判断する。例えば、制御装置440は、消費エネルギーEnと消費エネルギーEpとを比較して予備加熱を実行するか否かを判断する。例えば、制御装置440は、消費エネルギーEpが消費エネルギーEnよりも小さい場合に予備加熱を実行すると判断し、そのまま予備加熱を継続する。他方、消費エネルギーEpが消費エネルギーEn以上である場合であって、継続許容範囲外である場合に、予備加熱を停止し、予備加熱を実行せずに射出成形を行う。
【0074】
それゆえ、射出成形装置1が射出成形を行う場合に必ず予備加熱を実行する構成と比較して、成形材料を予備加熱することに起因して消費エネルギーが無駄に増加することを抑制することができる。
【0075】
<第5実施形態>
図10は、第5実施形態に係る制御装置540の概略構成の一例を示す図である。
第5実施形態に係る制御装置540は、第1実施形態に係る制御装置40に対して、予備加熱制御部90に相当する予備加熱制御部590が異なる。予備加熱制御部590は、第1実施形態に係る予備加熱制御部90に対して、判断部93に相当する判断部593、及び、消費エネルギー算出部596を有する点が異なる。以下、第1実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態と第5実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0076】
第5実施形態に係る成形条件決定部81は、予備加熱を実行することなく行う射出成形時の成形条件と、予備加熱を実行しながら行う射出成形時の成形条件とのそれぞれを決定する。
【0077】
そして、消費エネルギー算出部596は、予備加熱が実行されることなく行われる射出成形時の射出成形装置1の消費エネルギーEnと、予備加熱が実行されながら行われる射出成形時の射出成形装置1の消費エネルギーEpとを算出する。消費エネルギーEnは、計量モータ61、射出モータ62、フィードモータ75、及び、ヒータh11~h13が作動する際に消費するエネルギーの合計である。他方、消費エネルギーEpは、計量モータ61、射出モータ62、フィードモータ75、ヒータh11~h13、及び、供給装置70のヒータ76が作動する際に消費するエネルギーの合計である。
【0078】
ここで、記憶部44は、予め経験則に基づいて作成された、予備加熱を実行することなく行う射出成形時の成形条件と消費エネルギーEnとの関係を記憶する。また、記憶部44は、予め経験則に基づいて作成された、予備加熱を実行しながら行う射出成形時の成形条件と消費エネルギーEpとの関係を記憶する。なお、記憶部44は、成形条件と、消費エネルギーEn又は消費エネルギーEpとの関係を、マップの形で記憶しても良いし、算出式の形で記憶しても良い。
消費エネルギー算出部596は、記憶部44に記憶された関係と、成形条件決定部81が決定した成形条件と、を用いて消費エネルギーEnと、消費エネルギーEpとを算出する。
【0079】
判断部593は、消費エネルギーEnと消費エネルギーEpとを比較し、予備加熱を実行する時の消費エネルギーEpの方が、予備加熱を実行しない時の消費エネルギーEnよりも小さい場合には予備加熱を実行すると判断する。他方、判断部593は、予備加熱を実行しない時の消費エネルギーEnが、予備加熱を実行する時の消費エネルギーEp以下である場合には予備加熱を実行しないと判断する。
【0080】
図11は、予備加熱制御部590が行う予備加熱制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
予備加熱制御部590は、この処理を、例えば成形条件決定部81が決定した成形条件に関連する情報を取得した後、射出成形を開始する前に実行することを例示することができる。
【0081】
予備加熱制御部590は、先ず、予備加熱を実行しない場合の消費エネルギーEnを算出する(S1101)。また、予備加熱制御部590は、予備加熱を実行する場合の消費エネルギーEpを算出する(S1102)。S1101、S1102の処理は、消費エネルギー算出部596が行う処理である。
【0082】
その後、予備加熱制御部590は、S1102にて算出した消費エネルギーEpがS1101にて算出した消費エネルギーEnより小さいか否かを判断する(S1103)。消費エネルギーEpが消費エネルギーEnより小さい場合(S1103でYES)、予備加熱制御部590は、予備加熱を実行すると判断する(S1104)。他方、消費エネルギーEpが消費エネルギーEn以上である場合(S1103でNO)、予備加熱制御部590は、予備加熱を実行しないと判断する(S1105)。これらS1103~S1105の処理は、判断部593が行う処理である。
【0083】
以上説明したように、第5実施形態に係る制御装置540は、射出成形を開始する前に、予備加熱を実行しない場合の消費エネルギーEnと、予備加熱を実行する場合の消費エネルギーEpを算出し、算出した消費エネルギーEnと消費エネルギーEpとに基づいて予備加熱の実行を判断する。例えば、制御装置540は、消費エネルギーEpが消費エネルギーEnよりも小さい場合に予備加熱を実行すると判断し、消費エネルギーEpが消費エネルギーEn以上である場合に、予備加熱を実行しないと判断する。
【0084】
それゆえ、射出成形装置1が射出成形を行う場合に必ず予備加熱を実行する構成と比較して、成形材料を予備加熱することに起因して消費エネルギーが無駄に増加することを抑制することができる。
【0085】
なお、制御装置540は、予備加熱を実行することなく射出成形を開始した後に、
図5を用いて説明した予備加熱制御処理を行い、実能力Qaが必要能力Qt以上ではない場合に、予備加熱を実行するようにしても良い。これにより、例えば周囲温度が変化すること等の影響により、射出装置10の可塑化能力が低下した場合においても、予備加熱を実行開始することで、成形に必要な溶融樹脂を射出することができる。
【0086】
あるいは、制御装置540は、予備加熱を実行することなく射出成形を開始した後に、
図7を用いて説明した予備加熱制御処理を行い、実計量時間Taが目標計量時間Ttよりも長くなった場合に、予備加熱を実行するようにしても良い。これにより、例えば周囲温度が変化すること等の影響により、射出装置10の可塑化能力が低下した場合においても、予備加熱を実行開始することで、成形に必要な溶融樹脂を射出することができる。
【符号の説明】
【0087】
1…射出成形装置、10…射出装置、20…スクリュ、40,240,340,440,540…制御装置、44…記憶部、60…駆動装置、61…計量モータ、62…射出モータ、70…供給装置、76,h11,h12,h13…ヒータ、90,290,390,490,590…予備加熱制御部、91…必要能力算出部、92…実能力算出部、93,393,493,593…判断部、94…予備加熱条件決定部、495…消費エネルギー計測部、596…消費エネルギー算出部