IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーウェーブの特許一覧

特開2024-90806ロボットシステム及びロボットシステムの位置補正方法
<>
  • 特開-ロボットシステム及びロボットシステムの位置補正方法 図1
  • 特開-ロボットシステム及びロボットシステムの位置補正方法 図2
  • 特開-ロボットシステム及びロボットシステムの位置補正方法 図3
  • 特開-ロボットシステム及びロボットシステムの位置補正方法 図4
  • 特開-ロボットシステム及びロボットシステムの位置補正方法 図5
  • 特開-ロボットシステム及びロボットシステムの位置補正方法 図6
  • 特開-ロボットシステム及びロボットシステムの位置補正方法 図7
  • 特開-ロボットシステム及びロボットシステムの位置補正方法 図8
  • 特開-ロボットシステム及びロボットシステムの位置補正方法 図9
  • 特開-ロボットシステム及びロボットシステムの位置補正方法 図10
  • 特開-ロボットシステム及びロボットシステムの位置補正方法 図11
  • 特開-ロボットシステム及びロボットシステムの位置補正方法 図12
  • 特開-ロボットシステム及びロボットシステムの位置補正方法 図13
  • 特開-ロボットシステム及びロボットシステムの位置補正方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090806
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ロボットシステム及びロボットシステムの位置補正方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/10 20060101AFI20240627BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B25J9/10 A
B25J13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206931
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】白取 寛章
(72)【発明者】
【氏名】澤開 貴博
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707KS06
3C707KS30
3C707KT01
3C707KT02
3C707KT03
3C707KT06
3C707KT09
3C707LT12
3C707LV19
(57)【要約】
【課題】支持部材に固定された撮像装置とワークとの位置関係が変化した場合に応じて、ワークの位置を補正できるロボットシステムを提供する。
【解決手段】ワーク2の位置決めにマスタワーク3を使用する。カメラ4は、支持部材5に固定された状態でワーク2及びマスタワーク3を捉えた画像を撮像する。カメラコントローラ7は、最初に前記画像より把握されるマスタワーク3に基づく基準位置を、ロボット座標系上の位置に変換し、変換した位置を初期位置として記録させる。また、前記画像より把握されるワーク2の位置をロボット座標系上の位置に変換し、その位置をワーク2の位置とする。カメラコントローラは、初期位置を記録させた以降に設定したワーク2の位置が実際の位置に一致しない状態になると、その時点で画像より把握される基準位置と初期位置とから、現時点のワーク位置座標系から初期位置を記録させた時点の基準座標系におけるワーク位置に変換する式Iを生成し、変換式Iを用いてワーク2の位置を補正する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと、
このロボットの作業対象であるワークと、
前記ワークの位置決めに使用する1つ以上のマーカと、
支持部材に固定された状態で、前記マーカ及び前記ワークを捉えた画像を撮像する撮像装置と、
最初に前記画像より把握される前記マーカに基づく基準位置を、前記ロボットの位置を基準とするロボット座標系上の位置に変換し、変換した位置を初期位置として記憶部に記録させる基準位置設定部と、
前記画像より把握される前記ワークの位置を、前記ロボット座標系上の位置に変換し、変換した位置を前記ワークの位置として設定するワーク位置設定部と、を備え、
前記基準位置設定部は、前記初期位置を記録させた以降に、前記ワーク位置設定部により設定される前記ワークの位置が実際のワークの位置に一致しない状態になると、その時点で前記画像より把握される前記基準位置と前記初期位置との差に基いて、現時点のワーク位置座標系を、前記初期位置を記録させた時点の基準座標系におけるワーク位置に変換するための変換式を生成し、
以降に、前記ワーク位置設定部は、前記変換式を用いて前記ワークの位置を補正するロボットシステム。
【請求項2】
前記マーカを3以上の複数配置し、
前記基準位置設定部は、前記複数のマーカの重心点を前記基準位置とする請求項1記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記ロボットの動作を制御する制御装置を備え、
前記基準位置設定部は、前記制御装置を介して、前記ロボットの手先による前記ワークへのアクセスが失敗したことが通知されると、前記変換式を生成する請求項1又は2記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記ロボットの手先による前記ワークへのアクセスが失敗すると、前記ワークへのアクセスを再実行させて、再実行の回数をカウントするカウンタをインクリメントし、前記ワークへのアクセスが成功すると前記カウンタをリセットし、前記カウンタの値が予め定めた上限値を超えると前記通知を行い、
前記基準位置設定部は、前記通知を受信すると前記変換式を生成する請求項3記載のロボットシステム。
【請求項5】
ロボットと、
このロボットの作業対象であるワークと、
前記ワークの位置決めに使用する1つ以上のマーカと、
支持部材に固定された状態で、前記マーカ及び前記ワークを捉えた画像を撮像する撮像装置と、を備えたロボットシステムにおいて実行されるもので、
最初に前記画像より把握される前記マーカに基づく基準位置を、前記ロボットの位置を基準とするロボット座標系上の位置に変換し、変換した位置を初期位置として記録させ、
前記画像より把握される前記ワークの位置を、前記ロボット座標系上の位置に変換し、変換した位置を前記ワークの位置として設定し、
前記初期位置を記録させた以降に、設定された前記ワークの位置が実際のワークの位置に一致しない状態になると、その時点で前記画像より把握される前記基準位置と前記初期位置との差に基いて、現時点のワーク位置座標系を、前記初期位置を記録させた時点の基準座標系におけるワーク位置に変換ための変換式を生成し、
以降に、前記変換式を用いて前記ワークの位置を補正するロボットシステムの位置補正方法。
【請求項6】
前記マーカを3以上の複数配置し、
前前記複数のマーカの重心点を前記基準位置とする請求項5記載のロボットシステムの位置補正方法。
【請求項7】
前記ロボットの手先による前記ワークへのアクセスが失敗した際に、前記変換式を生成する請求項5又は6記載のロボットシステムの位置補正方法。
【請求項8】
前記ロボットの手先による前記ワークへのアクセスが失敗すると、前記ワークへのアクセスを再実行させて、再実行の回数をカウントするカウント値をインクリメントし、前記ワークへのアクセスが成功すると前記カウント値をリセットし、前記カウント値が予め定めた上限値を超えると、前記変換式を生成する請求項7記載のロボットシステムの位置補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーカを用いてワークの位置決めを行うロボットシステム、及び当該システムの位置補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ロボットの作業対象であるワークの近傍にマーカを配置し、それらを含む画像をカメラにより撮像して、カメラの座標系において捉えたマーカの位置をロボットの位置を基準とする座標系の位置に変換することで、ワーク位置をロボットの座標系で把握して位置決めを行う技術が開示されている。この技術では、基板1上に設けた認識マーク2上方にCCDカメラ4を移動させ、認識マーク2の画像をビジョンコントローラ5に取り込んで、認識マーク2の重心を検出する。その後、CCDカメラ4、X又はY方向へX-Yロボット8により一定距離移動させ、再度認識マーク2の重心検出を行う。そして、得られた2つの重心間のビジョンコントローラ5のメモリ空間内での距離と実際のX-Yロボット8の移動距離から、キャリブレーション値を計算している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-208924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、CCDカメラ4をX-Yロボット8により一定距離移動させて、マーカの位置をキャリブレーションしている。しかしながら、特許文献1では、カメラを固定配置するようなシステムについて、実際にシステムを現場に配置した後で、経年的な環境の変化や外力が加わる等して、カメラとワークとの位置関係が変化した場合に対応することは考慮されていない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、支持部材に固定された撮像装置とワークとの位置関係が変化した場合に応じて、ワークの位置を補正できるロボットシステム、及び当該システムの位置補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のロボットシステムによれば、ロボットの作業対象であるワークの位置決めに1つ以上のマーカを使用する。撮像装置は、支持部材に固定された状態で、マーカ及びワークを捉えた画像を撮像する。基準位置設定部は、最初に前記画像より把握されるマーカに基づく基準位置を、ロボットの位置を基準とするロボット座標系上の位置に変換し、変換した位置を初期位置として記憶部に記録させる。ワーク位置設定部は、前記画像より把握されるワークの位置をロボット座標系上の位置に変換し、変換した位置をワークの位置として設定する。
【0007】
そして、基準位置設定部は、初期位置を記録させた以降に、ワーク位置設定部により設定されるワークの位置が実際のワークの位置に一致しない状態になると、その時点で画像より把握される基準位置と初期位置との差に基いて、現時点のワーク位置座標系から初期位置を記録させた時点の基準座標系におけるワーク位置に変換するための変換式を生成する。そして、以降にワーク位置設定部は、その変換式を用いてワークの位置を補正する。
【0008】
例えば、初期位置を記録させた以降に環境の変化等により支持部材が膨張又は収縮したり、支持部材に外力が加わる等して撮像装置の位置にずれが生じると、撮像装置の画像より把握されるワークの位置にもずれが生じてしまう。すると、ロボットは、ワークに対して所期の作業を行うことができなくなる。そこで、基準位置設定部が、現時点のワーク位置座標系から初期位置を記録させた時点の基準座標系におけるワーク位置に変換するための変換式を生成し、ワーク位置設定部が、その変換式を用いてワークの位置を補正すれば、ワークの位置をロボット座標系上で正しく位置付けるように補正できる。したがって、ロボットは、ワークに対する作業を継続することが可能になる。
【0009】
請求項2記載のロボットシステムによれば、マーカを3以上の複数配置して、基準位置設定部は、複数のマーカの重心点を基準位置とする。これにより、基準位置をより高い精度で設定できる。
【0010】
請求項3記載のロボットシステムによれば、基準位置設定部は、ロボットの動作を制御する制御装置を介して、ロボットの手先によるワークへのアクセスが失敗したことが通知されると変換式を生成する。ワークへのアクセスが失敗したことは、ワーク位置設定部により設定されるワークの位置が実際のワークの位置に一致しない状態になることを示している。したがって、基準位置設定部は、必要に応じてワークの位置を適切に補正できる。
【0011】
請求項4記載のロボットシステムによれば、制御装置は、ロボットの手先によるワークへのアクセスが失敗するとそのアクセスを再実行させて、再実行の回数をカウントするカウンタをインクリメントし、ワークへのアクセスが成功するとカウンタをリセットする。そして、カウンタの値が予め定めた上限値を超えると基準位置設定部に通知を行い、基準位置設定部は、その通知を受信すると変換式を生成する。これにより、基準位置設定部は、ロボットの手先によるワークへのアクセス失敗が確実となった場合に、変換式を生成するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態であり、ロボットシステムの構成を概略的に示す図
図2】オブジェクトワーク及びマスタワークの配置を示す斜視図
図3】カメラの位置が初期位置から変化した場合の、補正前と補正後におけるロボットの手先の位置を示す図
図4】ロボットシステムの構成を機能ブロック図
図5】マスタワークを1個だけ配置した場合のモデル的な平面図
図6】カメラの位置が当初よりずれた結果、画像で捉えられるオブジェクトワークの位置が変化したことを模式的に示す図
図7】マスタワークを4個配置した場合のモデル的な平面図
図8】変換行列式Iの一例を簡単に説明する式を示す図
図9】ロボットのアーム手先にキャリブレーションマーカを配置した状態を示す図
図10】カメラ座標系をロボット座標系に変換するパラメータを計算する処理を示すフローチャート
図11】カメラ座標系でのマスタワークの位置をロボット座標系に変換する処理を示すフローチャート
図12】ロボットシステムを実際に稼働させた場合の処理を示すフローチャート(その1)
図13】ロボットシステムを実際に稼働させた場合の処理を示すフローチャート(その2)
図14】第2実施形態であり、ロボットシステムを実際に稼働させた場合の処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1から図13を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態のロボットシステムは、例えば垂直6軸型のロボット1、ロボット1の作業対象であるオブジェクトワーク2、オブジェクトワーク2の位置決めに使用するマーカであるマスタワーク3、ロボット1の上方で撮像装置であるカメラ4を固定支持するための支持部材5等を備えている。尚、図1では、一部をモデル的に示している。カメラ4は、ロボット1の上方よりオブジェクトワーク2及びマスタワーク3を捉えた画像を撮像し、画像中に捉えた物体の距離を3次元的に計測できる所謂3Dカメラである。
【0014】
図2にも示すように、本実施形態では、円柱状である4個のマスタワーク3a~3dを用いている。そして、4個のマスタワーク3a~3dにより形成される概ね矩形のエリア内に、オブジェクトワーク2が位置するように当該ワーク3a~3dを配置する。尚、図2に示すオブジェクトワーク2は、実際にロボット1が作業対象とするものの形状ではなく、図3に示すように、直方体の角をロボット1が認識するワーク位置として示すためのものである。
【0015】
図4は、ロボットシステムの構成を示す機能ブロック図である。ロボット1のアームは、ロボットコントローラ6により制御される。カメラ用コントローラ7は、例えばパーソナルコンピュータ等であり、カメラ4が撮像した画像データを取得して位置決め処理等を行う。ロボットコントローラ6とカメラ用コントローラ7とは、互いに通信を行なう。以上がロボットシステム11を構成している。ロボットコントローラ6は制御装置に相当し、カメラ用コントローラ7は基準位置設定部及びワーク位置設定部に相当する。
【0016】
本実施形態は、図1に示すように、支持部材5の経年的な変化や、支持部材5が温度の影響を受ける等して部材の一部に膨張又は収縮したり、外力が加えられる等した結果、カメラ4の位置が当初よりずれることでカメラ座標上におけるオブジェクトワーク2の位置が変化し、ロボット1のアーム手先がオブジェクトワーク2に適切にアクセスできなくなる状態を解消するため、補正を行う。ここで、「オブジェクトワーク2に適切にアクセスできなくなる状態」とは、図3に示す補正前のように、位置ずれが発生した結果、例えばオブジェクトワーク2を手先で把持できなくなったり、ツールにより適切に加工できなくなること等を示す。
【0017】
図5は、マスタワーク3を1個だけ配置した場合のモデル的な平面図である。そして、図6は、カメラ4の位置が当初よりずれた結果、カメラ4の画像において捉えられるオブジェクトワーク2の位置が変化したことを模式的に示している。図7は、図1及び図2と同様に、4個のマスタワーク3a~3dを配置した場合の平面図である。
【0018】
上記の補正処理を概略的に説明する。カメラ4の初期位置において、マスタワーク3の位置を把握する座標系、マスタワーク位置座標系の行列をMとし、カメラ4の位置が初期位置よりずれた状態でのマスタワーク位置座標系の行列をAとする。図1図2において、マスタワーク3a~3dにより囲まれた領域内に示す3次元座標が、マスタワーク位置座標系である。座標系Aから座標系Mに変換するための行列をIとすると、
M=IA
I=MA-1
で示される。
そして、座標系Mでのワーク位置をW’とし、座標系Aでのワーク位置をWとすると、
W’=IW
によりワーク位置W’を得ることができる。
【0019】
ここで、説明を簡単にするため、2次元座標系における変換行列I、及び変換行列Iによる補正の具体例を示す。図8に示すように、
・座標(x,y)から座標(x’,y’)への並進移動及び回転を含んだ変換座標行列により示される両座標の関係は、(1)式となる。
・カメラの位置変化量が(tx=-1,ty=-1,θ=0)であれば、変換座標行列Iは(2)式で示される。
・カメラ位置変化後の座標系Aにおいて、検出したオブジェクトワークの位置Wが(x=0,y=0)であったとすると、補正後のワーク位置W’の座標は、(3)式に示すように(x’=-1,y’=-1)として求められる。
【0020】
次に、本実施形態の作用について説明する。図9は、ロボットシステム11を現場に設置した際に、カメラ4の座標系をロボット1の位置を基準とする座標系、つまりロボット座標系に変換するパラメータを計算するため、ロボット1のアーム手先にキャリブレーションマーカ8を配置した状態を示している。
【0021】
図10に示すように、カメラコントローラ7は、予め決められたカメラ4による画像の撮影回数Nを読み込む(S1)。そして、ロボットコントローラ6を介して、ロボット1のアーム手先、つまりキャリブレーションマーカ8を第P撮影位置に移動させると(S2)、その位置でカメラ4によりキャリブレーションマーカ8を撮影する(S3)。「P」は撮影回数をカウントするカウンタであり、各撮影回数に対応して、それぞれロボット1のアーム手先を移動させる位置が予め決められている。
【0022】
それから、カウンタPをインクリメントすると(S4)、カウンタPが撮影回数Nを超えたか否かを判断し(S5)、「P≦N」であれば(No)ステップS2に戻る。「P>N」になると(Yes)、カメラ座標からロボット座標に変換するためのキャリブレーションパラメータを計算し、カメラコントローラ7内部の記憶部であるメモリ等に記憶して保存する(S6)。
【0023】
図11は、カメラ座標系でのマスタワーク3a~3dの位置をロボット座標系に変換する処理を示す。カメラ4によりマスタワーク3a~3dを捉えた画像を撮影し(S11)、その画像より、カメラ座標系でのマスタワーク3の位置を取得する(S12)。次に、それらの位置を、キャリブレーションパラメータを用いてロボット座標系に変換すると(S13)、変換した座標位置をカメラコントローラ7のメモリに記録させて(S14)処理を終了する。
【0024】
尚、ステップS12における「マスタワーク3の位置」は、マスタワーク3が1つであれば、当該ワーク3そのものの重心位置である。しかし、本実施形態のように、マスタワーク3a~3dを使用する場合、それら4つのワーク3a~3dを各点として描かれる図形の重心を「マスタワーク3の位置」とする。これは、使用するマスタワーク3の数が「3」又は「5」以上の場合も同様である。「マスタワーク3の位置」は基準位置に相当する。
【0025】
図12及び図13は、ロボットシステム11を実際に稼働させた場合の処理を示す。カメラ4によりオブジェクトワーク2を捉えた画像を撮影すると(S21)、その画像より、カメラ座標系でのオブジェクトワーク2の位置を取得する(S22)。次に、それらの位置を、キャリブレーションパラメータを用いてロボット座標系に変換すると(S23)、変換した座標位置をカメラコントローラ7のメモリに記録させる(S24)。
【0026】
ロボット座標系でのオブジェクトワーク2の位置を、ロボットコントローラ6に送信すると(S25)、ロボットコントローラ6は、その位置にロボット1の手先を移動させて、ツールによりオブジェクトワーク2を把持させる(S26)。そして、把持が失敗したか否かを判断する(S27)。把持が成功していれば(No)ステップS1に戻る。把持が失敗していれば(Yes)、ステップS11~S14と同様の処理を行う(S28~S31)。但し、ステップS31でのマスタワーク3の位置は、カメラ4の位置変化後の位置である。
【0027】
続いて、図13に示すように、ステップS31で記録したマスタワーク3の位置座標と、ステップS14で記録したマスタワーク3の位置座標との差を用いて、ステップS31時点でのマスタワーク3の座標系から、ステップS14時点でのマスタワーク3の基準座標系におけるオブジェクトワーク2の位置に変換する座標変換式Iを計算し、カメラコントローラ7のメモリに記録させる(S32)。ステップS21~S23と同様の処理を行うと(S33~S35)、オブジェクトワーク2の位置を、座標変換式Iを用いて補正する(S36)。補正したオブジェクトワーク2の位置を、カメラコントローラ7のメモリに記録させると(S37)、その位置をロボットコントローラ6に送信する(S38)。
【0028】
以上のように本実施形態によれば、ロボット1の作業対象であるオブジェクトワーク2の位置決めにマスタワーク3を使用する。カメラ4は、支持部材5に固定された状態で、オブジェクトワーク2及びマスタワーク3を捉えた画像を撮像する。カメラコントローラ7は、最初に前記画像より把握されるマスタワーク3に基づく基準位置を、ロボット1の位置を基準とするロボット座標系上の位置に変換し、変換した位置を初期位置としてメモリに記録させる。また、前記画像より把握されるオブジェクトワーク2の位置をロボット座標系上の位置に変換し、変換した位置をオブジェクトワーク2の位置として設定する。
【0029】
そして、カメラコントローラ7は、初期位置を記録させた以降に、設定したオブジェクトワーク2の位置が実際のオブジェクトワーク2の位置に一致しない状態になると、その時点で画像より把握される基準位置と初期位置との差から、現時点のワーク位置座標系から初期位置を記録させた時点の基準座標系におけるオブジェクトワーク2の位置に戻すための変換式Iを生成する。以降は、その変換式Iを用いてオブジェクトワーク2の位置を補正する。
【0030】
これにより、初期位置を記録させた以降に環境の変化等で支持部材5が膨張又は収縮したり、支持部材5に外力が加わる等してカメラ4の位置にずれが生じても、オブジェクトワーク2の位置をロボット座標系上で正しく位置付けるように補正できる。したがって、ロボット1は、オブジェクトワーク2に対する作業を継続することが可能になる。また、4つのマスタワーク3a~3dを配置して、カメラコントローラ7は、ワーク3a~3dの重心点を基準位置とするので、基準位置をより高い精度で設定できる。
【0031】
また、カメラコントローラ7は、ロボットコントローラ6を介して、ロボット1の手先によるオブジェクトワーク2へのアクセスが失敗したことが通知されると変換式Iを生成する。したがって、必要となるタイミングでオブジェクトワーク2の位置を適切に補正できる。
【0032】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。第2実施形態では、ロボット1がオブジェクトワーク2の把持を失敗した場合、ロボットコントローラ6は、オブジェクトワーク2の把持動作を再実行;リトライさせる。そのため、図12に示すステップS26及びS27に替えて、図14に示す処理を実行する。再実行回数の上限として予め定めた回数Nを読み込むと(S41)、リトライ回数をカウントするカウンタSをゼロクリアする(S42)。そして、ステップS26、S27と同様の処理を行う(S43、S44)。
【0033】
ステップS43で「No」と判断するとステップS42に戻る。「Yes」と判断すると、オブジェクトワーク2の把持動作をリトライさせて(S45)、カウンタSをインクリメントする(S46)。そして、ステップS44と同様の判断を行い(S47)「Yes」と判断すると、カウンタSンカウント値が上限回数Nを超えたか否かを判断する(S48)。「No」と判断するとステップS45に戻り、「Yes」と判断すると、ステップS28~S38を実行する(S49)。
【0034】
以上のように第2実施形態によれば、ロボットコントローラ6は、ロボット1の手先によるオブジェクトワーク2へのアクセスが失敗するとそのアクセスをリトライさせて、再実行の回数をカウントするカウンタSをインクリメントしオブジェクトワーク2へのアクセスが成功するとカウンタSをリセットする。カウンタSの値が予め定めた上限値Nを超えるとカメラコントローラ7に通知を行い、カメラコントローラ7は変換式Iを生成する。これにより、ロボット1の手先によるオブジェクトワーク2へのアクセス失敗が確実となった場合に変換式Iを生成するようになる。
【0035】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
カメラコントローラの機能を、ロボットコントローラ6に持たせても良い。
カメラは、3Dカメラに限ることなく、例えば2つのカメラを用いて、それらにより計測される距離の差に基づいて、距離を3次元的に計測しても良い。
ロボットは、垂直6軸型に限らない。
【符号の説明】
【0036】
図面中、1はロボット、2はオブジェクトワーク、3はマスタワーク、4はカメラ、5は支持部材、6はロボットコントローラ、7はカメラコントローラ、11はロボットシステムを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14