(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090809
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】液圧制御ユニット及び車両
(51)【国際特許分類】
B60T 17/02 20060101AFI20240627BHJP
B60T 8/48 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B60T17/02
B60T8/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206937
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】三好 照剛
【テーマコード(参考)】
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D049AA01
3D049CC02
3D049HH12
3D049HH30
3D049JJ06
3D049JJ08
3D246AA11
3D246BA02
3D246DA01
3D246GB01
3D246GC14
3D246LA15Z
3D246LA17B
3D246LA43B
(57)【要約】
【課題】従来よりも設計の自由度が向上する車両用の液圧制御ユニットを得る。
【解決手段】本発明に係る車両用の液圧制御ユニットのポンプは、基体に形成された凹部に設けられており、圧縮されたブレーキ液を該ポンプから排出する排出流路が形成された排出部を備えている。前記排出部は、前記凹部の開口部を封止する第1部品と、前記凹部のうちの前記第1部品と比較して前記開口部から遠い側の領域に埋設されていて、少なくとも一部が前記第1部品に圧入された第2部品と、前記排出流路に設けられて、前記第1部品と前記第2部品とで保持された逆止弁と、を備えている。前記第1部品は、前記凹部の内周部に設けられた第1段部に当接している第2段部を備え、前記第2段部と比較して前記開口部に近い側の領域で前記基体の塑性変形部に押圧されており、前記塑性変形部と前記第1段部とで挟持されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(200)に搭載されるブレーキシステム(10)の液圧制御ユニット(100)であって、
ホイールシリンダ(24)とマスタシリンダ(21)とを連通させる内部流路(40)が形成された基体(101)と、
前記内部流路(40)のブレーキ液を移動させるポンプ(50)と、
を備え、
前記基体(101)は、内周部(102a)に第1段部(103)を有し、前記ポンプ(50)が設けられた凹部(102)を備え、
前記ポンプ(50)は、
前記凹部(102)に往復動自在に内蔵され、ブレーキ液を圧縮するプランジャ(51)と、
前記プランジャ(51)で圧縮されたブレーキ液を該ポンプ(50)から排出する排出流路(65)が形成された排出部(60)と、
を備え、
前記排出部(60)は、
前記凹部(102)に埋設されて、前記凹部(102)の開口部(102b)を封止する第1部品(61)と、
前記凹部(102)のうちの前記第1部品(61)と比較して前記開口部(102b)から遠い側の領域に埋設されていて、少なくとも一部が前記第1部品(61)に圧入された第2部品(62)と、
前記排出流路(65)に設けられて、前記内部流路(40)から前記ポンプ(50)へ向かうブレーキ液の流れを規制し、前記第1部品(61)と前記第2部品(62)とで保持された逆止弁(66)と、
を備え、
前記第1部品(61)は、
該第1部品(61)の外周部である第1外周部(61a)に、前記第1段部(103)に当接している第2段部(63)を備え、
前記第2段部(63)と比較して前記開口部(102b)に近い側の領域で、前記基体(101)の塑性変形部(104)に押圧されており、
前記排出部(60)は、前記第1部品(61)が前記塑性変形部(104)と前記第1段部(103)とで挟持されて、前記基体(101)に固定されている
液圧制御ユニット(100)。
【請求項2】
前記第2部品(62)の外周部である第2外周部(62a)と前記凹部(102)の前記内周部(102a)との間のブレーキ液の流れを抑制するシール部(80)を備えている
請求項1に記載の液圧制御ユニット(100)。
【請求項3】
前記第2部品(62)は、前記凹部(102)の軸方向の一部の領域において、前記凹部(102)に圧入されており、
前記第2部品(62)の前記凹部(102)に圧入されている部分(81)が、前記シール部(80)である
請求項2に記載の液圧制御ユニット(100)。
【請求項4】
前記シール部(80)は、前記第2外周部(62a)と前記内周部(102a)との間に設けられたシール部材(82)である
請求項2に記載の液圧制御ユニット(100)。
【請求項5】
前記凹部(102)は、前記第1段部(103)と比較して前記開口部(102b)から遠い側の領域に、前記第2部品(62)の前記開口部(102b)とは反対側の端部(62b)と対向する第3段部(105)を備え、
前記シール部(80)は、前記第2部品(62)の前記端部(62b)と前記第3段部(105)との間に設けられたシール部材(82)である
請求項2に記載の液圧制御ユニット(100)。
【請求項6】
前記凹部(102)は、前記第1段部(103)と比較して前記開口部(102b)から遠い側の領域に、前記第2部品(62)の前記開口部(102b)とは反対側の端部(62b)と対向する第3段部(105)を備え、
前記第2部品(62)の前記端部(62b)は、全周で前記第3段部(105)と当接しており、
前記端部(62b)の前記第3段部(105)と当接している部分が、前記シール部(80)である
請求項2に記載の液圧制御ユニット(100)。
【請求項7】
前記凹部(102)は、前記第1段部(103)と比較して前記開口部(102b)から遠い側の領域に、前記第2部品(62)の前記開口部(102b)とは反対側の端部(62b)と対向する第3段部(105)を備え、
前記第2部品(62)は、前記端部(62b)に、前記第3段部(105)と当接する少なくとも1つの凸部(64)を備えている
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット(100)。
【請求項8】
前記第1段部(103)と前記第2段部(63)とが当接している箇所を当接箇所(63a)とした場合、
前記排出流路(65)のうちの、前記プランジャ(51)で圧縮されたブレーキ液が流出する側の開口部である流出側開口部(65b)は、前記凹部(102)の軸方向において前記当接箇所(63a)と前記シール部(80)との間となる領域に開口しており、
前記排出流路(65)から当該領域に流出したブレーキ液が前記内部流路(40)に流入する構成である
請求項2~請求項6のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット(100)。
【請求項9】
前記第1段部(103)と前記第2段部(63)とが当接している箇所を当接箇所(63a)とした場合、
前記排出流路(65)のうちの、前記プランジャ(51)で圧縮されたブレーキ液が流出する側の開口部である流出側開口部(65b)は、前記凹部(102)の軸方向において前記塑性変形部(104)と前記当接箇所(63a)との間となる領域に開口しており、
前記排出流路(65)から当該領域に流出したブレーキ液が前記内部流路(40)に流入する構成である
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット(100)。
【請求項10】
前記第2部品(62)が樹脂で形成されている
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット(100)。
【請求項11】
前記第1部品(61)が金属で形成されている
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット(100)。
【請求項12】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット(100)を備えている
車両(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の液圧制御ユニット、及び、該液圧制御ユニットを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両には、ブレーキ液が充填されている液圧回路内のブレーキ液の圧力を制御する液圧制御ユニットを備えたものが存在する。液圧制御ユニットは、例えば、車両の運転手がブレーキレバー等の入力部を操作している状態において、液圧回路内のブレーキ液の圧力を増減させて、車輪に発生する制動力を調整し、アンチロックブレーキ制御を実行する。このような液圧制御ユニットは、液圧回路の一部を構成する流路、及び該流路のブレーキ液を移動させるポンプ等がユニット化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、従来の液圧制御ユニットは、ホイールシリンダとマスタシリンダとを連通させる内部流路が形成された基体と、基体の凹部に設けられ、内部流路のブレーキ液を移動させるポンプとを備えている。このポンプは、プランジャの往復動で圧縮されたブレーキ液をポンプ外へ排出する排出流路が形成された排出部を備えている。また、排出部は、凹部の開口部を封止する第1部品と、該第1部品と比較して前記開口部から遠い領域に設けられ、第1部品に圧入された第2部品と、第1部品及び第2部品によって保持され、排出流路でのブレーキ液の逆流を規制する逆止弁とを備えている。また、従来の液圧制御ユニットにおいては、第2部品の外周部に設けられた段部が凹部の段部と当接し、第1部品が基体の塑性変形部に押圧されている。すなわち、従来の液圧制御ユニットの排出部は、該塑性変形部と凹部の段部とで第1部品及び第2部品が挟持され、基体に固定された構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来の液圧制御ユニットの排出部は、塑性変形部と凹部の段部とで第1部品及び第2部品が挟持され、基体に固定された構成となっている。すなわち、従来の液圧制御ユニットにおいては、排出部が基体に固定される際、第2部品が、塑性変形部によって排出部を押圧する力を受ける構成となっている。このため、従来の液圧制御ユニットは、塑性変形部の押圧力に耐えられる部材で第2部品を形成する必要がある。したがって、従来の液圧制御ユニットは、第2部品を形成する部材が限定される等、液圧制御ユニットの設計の自由度が低下してしまうという課題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、従来よりも設計の自由度が向上する液圧制御ユニットを得ることを第1の目的とする。また、本発明は、このような液圧制御ユニットを備えた車両を得ることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液圧制御ユニットは、車両に搭載されるブレーキシステムの液圧制御ユニットであって、ホイールシリンダとマスタシリンダとを連通させる内部流路が形成された基体と、前記内部流路のブレーキ液を移動させるポンプと、を備え、前記基体は、内周部に第1段部を有し、前記ポンプが設けられた凹部を備え、前記ポンプは、前記凹部に往復動自在に内蔵され、ブレーキ液を圧縮するプランジャと、前記プランジャで圧縮されたブレーキ液を該ポンプから排出する排出流路が形成された排出部と、を備え、前記排出部は、前記凹部に埋設されて、前記凹部の開口部を封止する第1部品と、前記凹部のうちの前記第1部品と比較して前記開口部から遠い側の領域に埋設されていて、少なくとも一部が前記第1部品に圧入された第2部品と、前記排出流路に設けられて、前記内部流路から前記ポンプへ向かうブレーキ液の流れを規制し、前記第1部品と前記第2部品とで保持された逆止弁と、を備え、前記第1部品は、該第1部品の外周部である第1外周部に、前記第1段部に当接している第2段部を備え、前記第2段部と比較して前記開口部に近い側の領域で、前記基体の塑性変形部に押圧されており、前記排出部は、前記第1部品が前記塑性変形部と前記第1段部とで挟持されて、前記基体に固定されている。
【0008】
また、本発明に係る車両は、本発明に係る液圧制御ユニットを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る液圧制御ユニットにおいては、排出部が基体に固定される際、第1部品の第1段部が、塑性変形部によって排出部を押圧する力を受ける構成となっている。すなわち、本発明に係る液圧制御ユニットにおいては、第2部品は、塑性変形部によって排出部を押圧する力を受けない。このため、本発明に係る液圧制御ユニットは、従来の液圧制御ユニットと比べ、第2部品を形成する部材の選択の範囲が広がる等、液圧制御ユニットの設計の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットを備えたブレーキシステムが搭載される鞍乗型車両の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットを備えたブレーキシステムの構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットのポンプ及びモータの周辺を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの変形例のポンプ及びモータの周辺を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの変形例のポンプ及びモータの周辺を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの変形例のポンプ及びモータの周辺を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの変形例のポンプ及びモータの周辺を示す断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの変形例のポンプ及びモータの周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る液圧制御ユニット及び車両について、図面を用いて説明する。
なお、以下では、本発明に係る液圧制御ユニットが鞍乗型車両の一例である自動二輪車に搭載される例を説明するが、本発明に係る液圧制御ユニットは、自動二輪車以外の他の鞍乗型車両に搭載されてもよい。自動二輪車以外の他の鞍乗型車両とは、例えば、自転車(例えば、二輪車、三輪車等)、エンジン及び電動モータのうちの少なくとも1つを駆動源とする自動三輪車、及びバギー等である。また、自転車とは、ペダルに付与される踏力によって路上を推進することが可能な乗物全般を意味している。つまり、自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。また、自動二輪車又は自動三輪車は、いわゆるモータサイクルを意味し、モータサイクルには、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。また、本発明に係る液圧制御ユニットは、エンジン及び電動モータのうちの少なくとも1つを駆動源とする自動四輪車等、鞍乗型車両以外の他の車両に搭載されてもよい。
【0012】
また、以下では、2系統の液圧回路を備えている車両用ブレーキシステムに本発明に係る液圧制御ユニットを採用した例を説明しているが、本発明に係る液圧制御ユニットが採用される車両用ブレーキシステムの液圧回路の数は2系統に限定されない。本発明に係る液圧制御ユニットが採用される車両用ブレーキシステムは、1系統のみの液圧回路を備えていてもよく、また、3系統以上の液圧回路を備えていてもよい。
【0013】
また、以下で説明する構成、動作等は、一例であり、本発明は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。また、各図においては、同一の又は類似する部材又は部分に対して、同一の符号を付している場合又は符号を付すことを省略している場合がある。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0014】
実施の形態.
<車両用ブレーキシステムの構成及び動作>
本実施の形態に係る液圧制御ユニットを備えたブレーキシステムの構成及び動作について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットを備えたブレーキシステムが搭載される鞍乗型車両の構成を示す図である。
図2は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットを備えたブレーキシステムの構成を示す図である。
【0015】
図1及び
図2に示されるように、ブレーキシステム10は、車両の一例である鞍乗型車両200に搭載される。鞍乗型車両200は、例えば、エンジンを駆動源とする自動二輪車である。鞍乗型車両200は、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4と、を含む。
【0016】
ブレーキシステム10は、ブレーキレバー11と、ブレーキ液が充填されている第1液圧回路12と、ブレーキペダル13と、ブレーキ液が充填されている第2液圧回路14と、を含む。ブレーキレバー11は、ハンドル2に設けられており、運転手の手によって操作される。第1液圧回路12は、前輪3と共に回動するロータ3aに、ブレーキレバー11の操作量に応じた制動力を生じさせるものである。ブレーキペダル13は、胴体1の下部に設けられており、運転手の足によって操作される。第2液圧回路14は、後輪4と共に回動するロータ4aに、ブレーキペダル13の操作量に応じた制動力を生じさせるものである。
【0017】
なお、ブレーキレバー11及びブレーキペダル13は、ブレーキの入力部の一例である。例えば、ブレーキレバー11に換わるブレーキの入力部として、胴体1に設けられているブレーキペダル13とは別のブレーキペダルを採用してもよい。また、例えば、ブレーキペダル13に換わるブレーキの入力部として、ハンドル2に設けられているブレーキレバー11とは別のブレーキレバーを採用してもよい。また、第1液圧回路12は、後輪4と共に回動するロータ4aに、ブレーキレバー11の操作量、又は、胴体1に設けられているブレーキペダル13とは別のブレーキペダルの操作量に応じた制動力を生じさせるものであってもよい。また、第2液圧回路14は、前輪3と共に回動するロータ3aに、ブレーキペダル13の操作量、又は、ハンドル2に設けられているブレーキレバー11とは別のブレーキレバーの操作量に応じた制動力を生じさせるものであってもよい。
【0018】
第1液圧回路12と第2液圧回路14とは、同じ構成になっている。このため、以下では、代表して、第1液圧回路12の構成を説明する。
第1液圧回路12は、ピストン(図示省略)を内蔵しているマスタシリンダ21と、マスタシリンダ21に付設されているリザーバ22と、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ23と、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)を動作させるホイールシリンダ24と、を含む。
【0019】
液圧制御ユニット100の基体101には、ホイールシリンダ24とマスタシリンダ21とを連通させる内部流路40が形成されている。具体的には、内部流路40は、後述の液管15を介してマスタシリンダ21と連通しており、後述の液管16を介してホイールシリンダ24と連通している。本実施の形態では、基体101には、内部流路40として、主流路41、副流路42及び増圧流路43が形成されている。第1液圧回路12において、マスタシリンダ21及びホイールシリンダ24は、マスタシリンダ21と基体101に形成されているマスタシリンダポートMPとの間に接続される液管15、基体101に形成されている主流路41、及び、ホイールシリンダ24と基体101に形成されているホイールシリンダポートWPとの間に接続される液管16を介して連通する。また、ホイールシリンダ24のブレーキ液は、副流路42を介して、主流路41の途中部である主流路途中部41aに逃がされる。また、マスタシリンダ21のブレーキ液は、増圧流路43を介して、副流路42の途中部である副流路途中部42aに供給される。
【0020】
主流路41のうちの主流路途中部41aよりもホイールシリンダ24側の領域には、込め弁25が設けられている。込め弁25の開閉動作によって、主流路41における込め弁25の設置箇所の流路部分が開閉され、この領域を流通するブレーキ液の流量が制御される。副流路42のうちの副流路途中部42aよりも上流側の領域には、上流側から順に、弛め弁26と、ブレーキ液を貯留するアキュムレータ27とが設けられている。弛め弁26の開閉動作によって、副流路42における弛め弁26の設置箇所の流路部分が開閉され、この領域を流通するブレーキ液の流量が制御される。また、副流路42のうちの副流路途中部42aよりも下流側の領域には、副流路42内のブレーキ液に圧力を付与し、ブレーキ液を移動させるポンプ50が設けられている。すなわち、ポンプ50は、内部流路40のブレーキ液を移動させるものである。なお、以下では、副流路42のうち、ポンプ50よりも上流側となる部分を、第1副流路42bと称することがある。また、副流路42のうち、ポンプ50よりも下流側となる部分を、第2副流路42cと称することがある。
【0021】
主流路41のうちの主流路途中部41aよりもマスタシリンダ21側の領域には、切換弁28が設けられている。切換弁28の開閉動作によって、主流路41における切換弁28の設置箇所の流路部分が開閉され、この領域を流通するブレーキ液の流量が制御される。増圧流路43には、増圧弁29が設けられている。増圧弁29の開閉動作によって、増圧流路43における増圧弁29の設置箇所の流路部分が開閉され、増圧流路43を流通するブレーキ液の流量が制御される。
【0022】
また、主流路41のうちの切換弁28よりもマスタシリンダ21側の領域には、マスタシリンダ21のブレーキ液の液圧を検出するためのマスタシリンダ液圧センサ30が設けられている。また、主流路41のうちの込め弁25よりもホイールシリンダ24側の領域には、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を検出するためのホイールシリンダ液圧センサ31が設けられている。
【0023】
つまり、主流路41は、込め弁25を介してマスタシリンダポートMP及びホイールシリンダポートWPを連通させるものである。また、副流路42は、ホイールシリンダ24のブレーキ液を、弛め弁26を介してマスタシリンダ21に逃がす流路の一部又は全てと定義される流路である。また、増圧流路43は、マスタシリンダ21のブレーキ液を、増圧弁29を介して副流路42のうちのポンプ50の上流側に供給する流路の一部又は全てと定義される流路である。すなわち、副流路42及び増圧流路43も、マスタシリンダポートMP及びホイールシリンダポートWPを連通させるものである。
【0024】
込め弁25は、例えば、非通電状態から通電状態になると、その設置個所でのブレーキ液の流通を開放から閉鎖に切り替える電磁弁である。弛め弁26は、例えば、非通電状態から通電状態になると、その設置個所を介して副流路途中部42aへ向かうブレーキ液の流通を閉鎖から開放に切り替える電磁弁である。切換弁28は、例えば、非通電状態から通電状態になると、その設置個所でのブレーキ液の流通を開放から閉鎖に切り替える電磁弁である。増圧弁29は、例えば、非通電状態から通電状態になると、その設置個所を介して副流路途中部42aへ向かうブレーキ液の流通を閉鎖から開放に切り替える電磁弁である。
【0025】
第1液圧回路12のポンプ50と、第2液圧回路14のポンプ50とは、共通のモータ90によって駆動される。すなわち、モータ90は、ポンプ50の駆動源である。
【0026】
基体101と、基体101に設けられている各部材(込め弁25、弛め弁26、アキュムレータ27、切換弁28、増圧弁29、マスタシリンダ液圧センサ30、ホイールシリンダ液圧センサ31、ポンプ50、モータ90等)と、制御装置(ECU)106と、によって、液圧制御ユニット100が構成される。
【0027】
制御装置106は、込め弁25、弛め弁26、切換弁28、増圧弁29、及びモータ90を制御するものである。制御装置106は、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。また、制御装置106は、基体101に取り付けられていてもよく、また、基体101以外の他の部材に取り付けられていてもよい。また、制御装置106の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0028】
例えば、通常状態では、制御装置106によって、込め弁25、弛め弁26、切換弁28、及び増圧弁29が非通電状態に制御される。その状態で、ブレーキレバー11が操作されると、第1液圧回路12において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が前輪3のロータ3aに押し付けられて、前輪3が制動される。また、ブレーキペダル13が操作されると、第2液圧回路14において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が後輪4のロータ4aに押し付けられて、後輪4が制動される。
【0029】
制御装置106には、各センサ(マスタシリンダ液圧センサ30、ホイールシリンダ液圧センサ31、車輪速センサ、加速度センサ等)の出力が入力される。制御装置106は、その出力に応じて、込め弁25、弛め弁26、切換弁28、増圧弁29、及びモータ90の動作を司る指令を出力して、減圧制御動作、増圧制御動作等を実行する。
【0030】
例えば、制御装置106は、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧の過剰又は過剰の可能性が生じた場合に、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を減少させる減圧制御動作を実行する。その際、制御装置106は、第1液圧回路12において、込め弁25を通電状態に制御し、弛め弁26を通電状態に制御し、切換弁28を非通電状態に制御し、増圧弁29を非通電状態に制御しつつ、モータ90を駆動する。これにより、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液は、主流路41を通って副流路42に流入し、ホイールシリンダ24の液圧が減少する。そして、ホイールシリンダ24から副流路42に流入したブレーキ液は、弛め弁26を通ってアキュムレータ27に流入し、該アキュムレータ27に蓄えられる。また、アキュムレータ27に蓄えられたブレーキ液は、モータ90によって駆動されるポンプ50によって、マスタシリンダ21に戻される。
【0031】
また、制御装置106は、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧の過剰又は過剰の可能性が生じた場合に、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を減少させる減圧制御動作を実行する。その際、制御装置106は、第2液圧回路14において、込め弁25を通電状態に制御し、弛め弁26を通電状態に制御し、切換弁28を非通電状態に制御し、増圧弁29を非通電状態に制御しつつ、モータ90を駆動する。これにより、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液は、主流路41を通って副流路42に流入し、ホイールシリンダ24の液圧が減少する。そして、ホイールシリンダ24から副流路42に流入したブレーキ液は、弛め弁26を通ってアキュムレータ27に流入し、該アキュムレータ27に蓄えられる。また、アキュムレータ27に蓄えられたブレーキ液は、モータ90によって駆動されるポンプ50によって、マスタシリンダ21に戻される。
【0032】
また、例えば、制御装置106は、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧の不足又は不足の可能性が生じた場合に、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を増加させる増圧制御動作を実行する。その際、制御装置106は、第1液圧回路12において、込め弁25を非通電状態に制御し、弛め弁26を非通電状態に制御し、切換弁28を通電状態に制御し、増圧弁29を通電状態に制御しつつ、モータ90を駆動する。これにより、モータ90によって駆動されるポンプ50によって、第1液圧回路12のマスタシリンダ21のブレーキ液は、主流路41及び増圧流路43を通って、副流路途中部42aから副流路42に流入する。副流路42に流入したブレーキ液は、主流路途中部41aから主流路41に流入し、込め弁25を通って第1液圧回路12のホイールシリンダ24に流入する。これにより、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加する。
【0033】
また、制御装置106は、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧の不足又は不足の可能性が生じた場合に、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を増加させる増圧制御動作を実行する。その際、制御装置106は、第2液圧回路14において、込め弁25を非通電状態に制御し、弛め弁26を非通電状態に制御し、切換弁28を通電状態に制御し、増圧弁29を通電状態に制御しつつ、モータ90を駆動する。これにより、モータ90によって駆動されるポンプ50によって、第2液圧回路14のマスタシリンダ21のブレーキ液は、主流路41及び増圧流路43を通って、副流路途中部42aから副流路42に流入する。副流路42に流入したブレーキ液は、主流路途中部41aから主流路41に流入し、込め弁25を通って第2液圧回路14のホイールシリンダ24に流入する。これにより、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加する。
【0034】
つまり、液圧制御ユニット100は、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を制御して、第1液圧回路12の減圧制御動作(換言するとアンチロックブレーキ動作)を実行することが可能である。また、液圧制御ユニット100は、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を制御して、第2液圧回路14の減圧制御動作(換言するとアンチロックブレーキ動作)を実行することが可能である。また、液圧制御ユニット100は、第1液圧回路12のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を制御して、第1液圧回路12の増圧制御動作を実行することが可能である。また、液圧制御ユニット100は、第2液圧回路14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を制御して、第2液圧回路14の増圧制御動作を実行することが可能である。
【0035】
<液圧制御ユニットの構成>
本実施の形態に係る液圧制御ユニットの構成について説明する。
図3は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットのポンプ及びモータの周辺を示す断面図である。この
図3に示されているポンプ50は、第1液圧回路12のポンプ50である。第2液圧回路14のポンプ50の構成は、第1液圧回路12のポンプ50の構成と同様である。
【0036】
液圧制御ユニット100は、上述のように、基体101を備えている。基体101は、例えばアルミニウム合金等の金属で形成されている。また、液圧制御ユニット100は、上述のように、ポンプ50及びモータ90等を備えている。
【0037】
モータ90は、基体101に設けられており、出力軸91と、偏心部92とを備えている。出力軸91は、モータ90のロータ及びステータによって回転駆動するものである。なお、
図3は、出力軸91の回転中心と垂直な断面で液圧制御ユニット100を切断した図となっており、ロータ及びステータが図示されない観察方向となっている。偏心部92は、出力軸91に設けられ、該出力軸91の回転中心に対して偏心回転運動するものである。
【0038】
ポンプ50は、次のように、基体101に設けられている。基体101は、凹部102を備えている。また、凹部102は、内周部102aに、段部103を有している。ここで、段部103が、本発明の第1段部に相当する。ポンプ50は、この凹部102に設けられている。ポンプ50は、プランジャ51、スプリング56、及び排出部60を備えている。
【0039】
プランジャ51は、往復動自在に、凹部102に内蔵されている。具体的には、プランジャ51は、凹部102のうちの、排出部60と比較して該凹部102の開口部102bから遠い側の領域に、内蔵されている。プランジャ51は、排出部60側の端部とは反対側の端部である端部51aが、モータ90の偏心部92に当接している。また、プランジャ51は、スプリング56によって、モータ90の偏心部92に向かって押圧されている。詳しくは、スプリング56は、自然長よりも短い状態で、プランジャ51と排出部60とで挟持されている。そして、スプリング56が自然長に戻ろうとする反力により、プランジャ51は、モータ90の偏心部92に向かって押圧されている。モータ90の偏心部92の外周面が排出部60に近づいてくるにしたがって、プランジャ51は排出部60側に押されていく。また、モータ90の偏心部92の外周面が排出部60から遠ざかっていく際、スプリング56によって偏心部92に向かって押圧されているプランジャ51は、偏心部92に当接した状態を維持する。これにより、プランジャ51は、凹部102内において往復動する。
【0040】
なお、プランジャ51を構成する部品の数は特に限定されないが、本実施の形態では、プランジャ51は、3つの部品で構成されている。具体的には、プランジャ51は、モータ側部品52、中間部品53、及び圧縮室側部品54を備えている。モータ側部品52は、端部51aを有する部品である。中間部品53は、モータ側部品52の端部51aとは反対側の端部に取り付けられている。圧縮室側部品54は、中間部品53のモータ側部品52が取り付けられている端部とは反対側の端部に、取り付けられている。
【0041】
プランジャ51は、上述の往復動により、内部流路40の第1副流路42bから圧縮室58へ流入したブレーキ液を圧縮する。圧縮室58の構成は特に限定されないが、本実施の形態では、凹部102におけるプランジャ51と排出部60との間となる領域が、圧縮室58となっている。
【0042】
また、本実施の形態では、プランジャ51に形成された流入流路55によって、第1副流路42bから圧縮室58へブレーキ液が流入する構成となっている。換言すると、プランジャ51には、第1副流路42bをポンプ50に向かって流れてきたブレーキ液が流入し、該ブレーキ液を圧縮室58へ導く流入流路55が形成されている。なお、第1副流路42bをポンプ50に向かって流れてきたブレーキ液が、プランジャ51のモータ側部品52の外周側を通って偏心部92の配置空間へ流れることを抑制するため、本実施の形態では、プランジャ51のモータ側部品52の外周面と基体101との間が、Oリング等のシール部材57でシールされている。
【0043】
また、本実施の形態では、プランジャ51は、流入流路55に設けられ、圧縮室58から第1副流路42bへ向かうブレーキ液の流れを規制する逆止弁70を備えている。すなわち、本実施の形態では、逆止弁70は、ポンプ50の構成要素となっている。しかしながら、逆止弁70は、ポンプ50の構成要素である必要はない。換言すると、逆止弁70は、プランジャ51の外部に設けられていてもよい。例えば、逆止弁70は、アキュムレータ27に設けられていてもよい。また、例えば、逆止弁70は、第1副流路42bにおけるアキュムレータ27とポンプ50との間となる領域に設けられていてもよい。
【0044】
プランジャ51で圧縮された圧縮室58のブレーキ液は、排出部60に形成された排出流路65から、ポンプ50の外部へ排出される。すなわち、排出部60には、プランジャ51で圧縮されたブレーキ液をポンプ50から排出する排出流路65が形成されている。この排出部60は、第1部品61と、第2部品62と、逆止弁66とを備えている。
【0045】
第1部品61は、凹部102に埋設されて、凹部102の開口部102bを封止するものである。第1部品61は、例えば、アルミニウム合金等の金属で形成されている。第1部品61は、外周部61aに、凹部102の段部103に当接している段部63を備えている。ここで、外周部61aが、本発明の第1外周部に相当する。段部63が、本発明の第2段部に相当する。また、基体101は、凹部102の開口部周縁を塑性変形させて形成した塑性変形部104を備えている。そして、第1部品61は、段部63と比較して開口部102bに近い側の領域で、基体101の塑性変形部104に押圧されている。すなわち、第1部品61は、塑性変形部104と段部103とで挟持されて、基体101に固定されている。なお、
図3は、塑性変形部104が形成される前の基体101を示している。このため、
図3では、塑性変形部104を、想像線で示している。
【0046】
ここで、本実施の形態では、第1部品61は、該第1部品61の全周にわたって、塑性変形部104で押圧されている。このため、塑性変形部104は、シール部としても機能する。また、本実施の形態では、段部103は凹部102の内周部102aの全周にわたって設けられており、段部63は第1部品61の外周部61aの全周にわたって設けられている。すなわち、段部103と段部63とが当接している箇所である当接箇所63aは、第1部品61の全周にわたって存在する。このため、当接箇所63aは、シール部としても機能する。
【0047】
第2部品62は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂で形成されている。第2部品62は、凹部102の軸方向に、第1部品61と並んでいる。凹部102の軸方向とは、凹部102が延びる方向であり、
図3では紙面左右方向となっている。また、第2部品62は、凹部102のうちの第1部品61と比較して開口部102bから遠い側の領域に埋設されている。また、第2部品62は、少なくとも一部が第1部品61に圧入されている。具体的には、第2部品62の第1部品61側の端部が、第1部品61に圧入されている。すなわち、第2部品62は、第1部品61に固定されている。逆止弁66は、排出流路65に設けられて、内部流路40(より詳しくは第2副流路42c)からポンプ50へ向かうブレーキ液の流れを規制するものである。逆止弁66は、第1部品61と第2部品62とで保持されている。
【0048】
ここで、上述のように、第2部品62は、第1部品61に固定されている。また、上述のように、逆止弁66は、第1部品61と第2部品62とで保持されている。また、上述のように、第1部品61は、塑性変形部104と段部103とで挟持されて、基体101に固定されている。すなわち、本実施の形態に係る液圧制御ユニット100においては、排出部60は、第1部品61、第2部品62及び逆止弁66がユニット化されている。そして、排出部60は、第1部品61が塑性変形部104と段部103とで挟持されて、基体101に固定されている。
【0049】
本実施の形態では、排出流路65は、次のように排出部60に形成されている。液圧制御ユニット100は、第2部品62の外周部62aと凹部102の内周部102aとの間のブレーキ液の流れを抑制するシール部80を備えている。ここで、外周部62aが、本発明の第2外周部に相当する。具体的には、第2部品62は、凹部102の軸方向の一部の領域において、凹部102に圧入されている。以下、凹部102に圧入されている当該部分を圧入部81と称する。本実施の形態では、圧入部81がシール部80となっている。そして、排出流路65のうちの、プランジャ51で圧縮されたブレーキ液が流入する側の開口部である流入側開口部65aは、圧縮室58に開口している。また、排出流路65のうちの、プランジャ51で圧縮されたブレーキ液が流出する側の開口部である流出側開口部65bは、凹部102の軸方向において当接箇所63aとシール部80との間となる領域に開口している。凹部102の軸方向において当接箇所63aとシール部80との間となるこの領域には、第2副流路42cが連通している。
【0050】
より具体的に排出流路65を説明すると、排出流路65のうちの流入側開口部65aを有する部分は、凹部102の軸方向に沿って第2部品62を貫通する貫通孔で形成されている。排出流路65のうちの流出側開口部65bを有する部分は、第2部品62の第1部品61側の端部及び第1部品61の第2部品62側の端部のうちの少なくとも一方に形成された溝で形成されている。当該溝は、流入側開口部65aを有する上述の貫通孔に一端が開口し、凹部102の軸方向において当接箇所63aとシール部80との間となる領域に他端が開口している。凹部102の軸方向において当接箇所63aとシール部80との間となる領域は、シール部80によって、当該領域から圧縮室58へ流れるブレーキ液の流れが抑制されている。また、凹部102の軸方向において当接箇所63aとシール部80との間となる領域は、当接箇所63aによって、当該領域から凹部102の外部へブレーキ液が流れ出ることも抑制されている。このため、排出流路65を通って、凹部102の軸方向において当接箇所63aとシール部80との間となる領域に流出したブレーキ液は、当該領域に連通する第2副流路42cに流入する。
【0051】
また、本実施の形態では、逆止弁66は、次のように排出流路65に設けられている。逆止弁66は、弁座67、弁体68、及びスプリング69を備えている。弁座67は、流入側開口部65aを有する上述の貫通孔に設けられている。弁体68は、例えば球状をしており、弁座67に近づく方向及び弁座67から遠ざかる方向に移動自在に設けられている。弁体68が弁座67に近づいて該弁座67に接触した状態においては、弁体68は、排出流路65を閉鎖する。また、弁体68が弁座67から離れた状態においては、弁体68は、排出流路65を開放する。スプリング69は、第1部品61に形成された凹部に収納され、弁体68を弁座67に向かって付勢する。
【0052】
このように構成されたポンプ50においては、モータ90の偏心部92の外周面が圧縮室58に近づいてくるにしたがって、プランジャ51が排出部60に向かって押されていく。これにより、圧縮室58の容積が減少していく。また、モータ90の偏心部92の外周面が排出部60から遠ざかっていく際、スプリング56によって偏心部92に向かって押圧されているプランジャ51は、モータ90の偏心部92の外周面に追従して動く。したがって、圧縮室58の容積が増加していく。
【0053】
副流路42の第1副流路42bにブレーキ液が流入した際、第1副流路42bのブレーキ液は、プランジャ51に形成された流入流路55に流入する。例えば、減圧制御動作時、ホイールシリンダ24のブレーキ液が、主流路41及び第1副流路42bを通って、流入流路55に流入する。また、増圧制御動作時、マスタシリンダ21のブレーキ液が、主流路41、増圧流路43及び第1副流路42bを通って、流入流路55に流入する。
【0054】
この際、圧縮室58の容積が増加していく段階においては、逆止弁70を基準として圧縮室58側に存在するブレーキ液の圧力は低い。このため、流入流路55に流入したブレーキ液は、逆止弁70を開放状態とする。この結果、流入流路55に流入したブレーキ液は、逆止弁70を通って、圧縮室58に流入する。一方、圧縮室58の容積が減少していく段階においては、逆止弁70を基準として圧縮室58側に存在するブレーキ液の圧力が高くなる。このため、流入流路55に流入したブレーキ液は、逆止弁70を開放状態にできない。この結果、流入流路55に流入したブレーキ液は、圧縮室58に流入しない。
【0055】
圧縮室58に流入したブレーキ液は、圧縮室58の容積が減少していくにしたがって圧縮され、排出部60の排出流路65及び逆止弁66を通って、副流路42の第2副流路42cに圧送される。例えば、減圧制御動作時、第2副流路42cに流入したブレーキ液は、主流路41を通って、マスタシリンダ21に戻される。また、増圧制御動作時、第2副流路42cに流入したブレーキ液は、主流路41を通って、ホイールシリンダ24に流入する。
【0056】
ここで、従来の車両用の液圧制御ユニットにおいても、第1部品、第2部品及び逆止弁がユニット化された排出部を備えたものが存在する。このような従来の液圧制御ユニットは、第2部品の外周部に設けられた段部が凹部の段部と当接し、第1部品が基体の塑性変形部に押圧されている。すなわち、従来の液圧制御ユニットの排出部は、塑性変形部と凹部の段部とで第1部品及び第2部品が挟持され、基体に固定された構成となっている。したがって、従来の液圧制御ユニットにおいては、排出部が基体に固定される際、第2部品が、塑性変形部によって排出部を押圧する力を受ける構成となっている。このため、従来の液圧制御ユニットは、塑性変形部の押圧力に耐えられる部材で第2部品を形成する必要がある。したがって、従来の液圧制御ユニットは、第2部品を形成する部材が限定される等、液圧制御ユニットの設計の自由度が低下してしまうという課題があった。
【0057】
一方、本実施の形態に係る液圧制御ユニット100においては、上述のように、第1部品61の段部63が、塑性変形部104によって排出部60を押圧する力を受ける構成となっている。すなわち、本実施の形態に係る液圧制御ユニット100においては、第2部品62は、塑性変形部104によって排出部60を押圧する力を受けない。このため、本実施の形態に係る液圧制御ユニット100は、従来の液圧制御ユニットと比べ、第2部品62を形成する部材の選択の範囲が広がる等、液圧制御ユニット100の設計の自由度が向上する。
【0058】
<液圧制御ユニットの効果>
本実施の形態に係る液圧制御ユニット100の効果について説明する。
【0059】
本実施の形態に係る液圧制御ユニット100は、鞍乗型車両200に搭載されるブレーキシステム10の液圧制御ユニットである。液圧制御ユニット100は、ホイールシリンダ24とマスタシリンダ21とを連通させる内部流路40が形成された基体101と、内部流路40のブレーキ液を移動させるポンプ50とを備えている。基体101は、内周部102aに段部103を有し、ポンプ50が設けられた凹部102を備えている。ポンプ50は、凹部102に往復動自在に内蔵され、ブレーキ液を圧縮するプランジャ51と、プランジャ51で圧縮されたブレーキ液をポンプ50から排出する排出流路65が形成された排出部60とを備えている。排出部60は、第1部品61と、第2部品62と、逆止弁66とを備えている。第1部品61は、凹部102に埋設されて、凹部102の開口部102bを封止するものである。第2部品62は、凹部102のうちの第1部品61と比較して開口部102bから遠い側の領域に埋設されていて、少なくとも一部が第1部品61に圧入されている。逆止弁66は、排出流路65に設けられて、内部流路40からポンプ50へ向かうブレーキ液の流れを規制し、第1部品61と第2部品62とで保持されている。第1部品61は、外周部61aに、段部103に当接している段部63を備えている。また、第1部品61は、段部63と比較して開口部102bに近い側の領域で、基体101の塑性変形部104に押圧されている。そして、排出部60は、第1部品61が塑性変形部104と段部103とで挟持されて、基体101に固定されている。
【0060】
このように構成された液圧制御ユニット100においては、上述のように、第2部品62は、塑性変形部104によって排出部60を押圧する力を受けない。このため、このように構成された液圧制御ユニット100は、従来の液圧制御ユニットと比べ、第2部品62を形成する部材の選択の範囲が広がる等、液圧制御ユニット100の設計の自由度が向上する。
【0061】
好ましくは、第2部品62は樹脂で形成されている。上述のように、本実施の形態に係る液圧制御ユニット100の第2部品62は、塑性変形部104によって排出部60を押圧する力を受けない。このため、第2部品62を樹脂で形成することもできる。第2部品62を樹脂で形成することにより、第2部品62を金属で形成する場合と比べ、第2部品62を軽量化でき、第2部品62のコストを低減できる。換言すると、第2部品62を樹脂で形成することにより、第2部品62を金属で形成する場合と比べ、液圧制御ユニット100を軽量化でき、液圧制御ユニット100のコストを低減できる。
【0062】
好ましくは、第1部品61は金属で形成されている。上述のように、本実施の形態に係る液圧制御ユニット100の排出部60は、第1部品61が塑性変形部104と段部103とで挟持されて、基体101に固定されている。このため、第1部品61を剛性の高い金属で形成することにより、排出部60の基体101への固定の確実性が向上する。
【0063】
<変形例>
図4は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの変形例のポンプ及びモータの周辺を示す断面図である。この
図4に示されているポンプ50は、第1液圧回路12のポンプ50である。第2液圧回路14のポンプ50の構成は、第1液圧回路12のポンプ50の構成と同様である。
【0064】
シール部80は、
図3で示した圧入部81に限定されない。
図4に示すように、第2部品62の外周部62aと凹部102の内周部102aとの間にシール部材82を設けてもよい。そして、当該シール部材82をシール部80としてもよい。圧入部81をシール部80とする場合、第2部品62の圧入部81部分には、高い加工精度が求められる。一方、シール部材82をシール部80とする場合、圧入部81をシール部80とする場合と比べ、第2部品62に求められる加工精度は低いものとなる。このため、シール部材82をシール部80とすることにより、液圧制御ユニット100の製造が容易となる。一方、圧入部81をシール部80とすることにより、液圧制御ユニット100の部品数を低減することができる。
【0065】
図5は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの変形例のポンプ及びモータの周辺を示す断面図である。この
図5に示されているポンプ50は、第1液圧回路12のポンプ50である。第2液圧回路14のポンプ50の構成は、第1液圧回路12のポンプ50の構成と同様である。
【0066】
シール部材82をシール部80とする場合、
図5に示す位置にシール部材82を設けてもよい。具体的には、凹部102は、段部103と比較して開口部102bから遠い側の領域に、第2部品62の開口部102bとは反対側の端部62bと対向する段部105を備えている。ここで、段部105が、本発明の第3段部に相当する。そして、シール部材82は、第2部品62の端部62bと段部105との間に設けられている。第2部品62の端部62bと段部105との間のブレーキ液の流れを抑制することにより、第2部品62の外周部62aと凹部102の内周部102aとの間のブレーキ液の流れを抑制することもできる。このため、第2部品62の端部62bと段部105との間に設けられているシール部材82も、シール部80とすることができる。
【0067】
また、第2部品62の端部62bと段部105との間に設けられているシール部材82をシール部80とすることにより、次のような効果を得ることもできる。運転手がブレーキの入力部(ブレーキレバー11及びブレーキペダル13)を操作した際、マスタシリンダ21のブレーキ液は、主流路41、増圧流路43及び第2副流路42cを通って、逆止弁66の位置まで、排出部60の排出流路65に流入する。このブレーキ液によって、第2部品62には、該第2部品62が第1部品61から抜ける方向の力が作用する。この際、第2部品62の端部62bと段部105との間に設けられているシール部材82をシール部80とすることにより、当該力をシール部材82で受けることができる。この結果、第2部品62が第1部品61から抜けることを抑制でき、液圧制御ユニット100の信頼性が向上する。
【0068】
図6は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの変形例のポンプ及びモータの周辺を示す断面図である。この
図6に示されているポンプ50は、第1液圧回路12のポンプ50である。第2液圧回路14のポンプ50の構成は、第1液圧回路12のポンプ50の構成と同様である。
【0069】
図6に示す液圧制御ユニット100においては、第2部品62の端部62bは、全周で段部105と当接している。これにより、第2部品62の端部62bと段部105との間のブレーキ液の流れを抑制することができ、第2部品62の外周部62aと凹部102の内周部102aとの間のブレーキ液の流れを抑制することができる。すなわち、
図6に示す液圧制御ユニット100においては、第2部品62の端部62bの段部105に当接している部分が、シール部80となっている。このようにシール部80を構成しても、ブレーキの入力部が操作された際に、第2部品62に作用する第1部品61から抜ける方向の力を、シール部80で受けることができる。このため、このようにシール部80を構成しても、液圧制御ユニット100の信頼性が向上する。
【0070】
図7は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの変形例のポンプ及びモータの周辺を示す断面図である。この
図7に示されているポンプ50は、第1液圧回路12のポンプ50である。第2液圧回路14のポンプ50の構成は、第1液圧回路12のポンプ50の構成と同様である。
【0071】
図7に示す液圧制御ユニット100においては、第2部品62は、端部62bに、段部105と当接する少なくとも1つの凸部64を備えている。これにより、ブレーキの入力部が操作された際に、第2部品62に作用する第1部品61から抜ける方向の力を、凸部64で受けることができる。このため、第2部品62に凸部64を設けることにより、
図3及び
図4に示す構成のシール部80を備えた液圧制御ユニット100においても、液圧制御ユニット100の信頼性が向上する。
【0072】
図8は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの変形例のポンプ及びモータの周辺を示す断面図である。この
図8に示されているポンプ50は、第1液圧回路12のポンプ50である。第2液圧回路14のポンプ50の構成は、第1液圧回路12のポンプ50の構成と同様である。
【0073】
図3~
図7に示した液圧制御ユニット100では、排出流路65の流出側開口部65bは、凹部102の軸方向において当接箇所63aとシール部80との間となる領域に開口していた。そして、
図3~
図7に示した液圧制御ユニット100では、排出流路65から当該領域に流出したブレーキ液が、内部流路40(より詳しくは第2副流路42c)に流入する構成となっていた。一方、
図8に示す液圧制御ユニット100においては、排出流路65の流出側開口部65bは、凹部102の軸方向において塑性変形部104と当接箇所63aとの間となる領域に開口している。また、
図8に示す液圧制御ユニット100においては、第2副流路42cは、凹部102の軸方向において塑性変形部104と当接箇所63aとの間となる領域に連通している。
【0074】
凹部102の軸方向において塑性変形部104と当接箇所63aとの間となる領域は、当接箇所63aによって、当該領域から圧縮室58へ流れるブレーキ液の流れが抑制されている。また、凹部102の軸方向において塑性変形部104と当接箇所63aとの間となる領域は、塑性変形部104によって、当該領域から凹部102の外部へブレーキ液が流れ出ることも抑制されている。このため、排出流路65を通って、凹部102の軸方向において塑性変形部104と当接箇所63aとの間となる領域に流出したブレーキ液は、当該領域に連通する第2副流路42cに流入することができる。また、
図8に示すように、凹部102の軸方向において塑性変形部104と当接箇所63aとの間となる領域に流出側開口部65bが開口する構成にすることにより、シール部80を設けない構成とすることも可能となる。このため、
図8に示すように液圧制御ユニット100を構成することにより、液圧制御ユニット100のコストを低減することができる。
【0075】
以上、本実施の形態に係る液圧制御ユニット100について説明したが、本発明に係る液圧制御ユニットは、本実施の形態の説明に限定されない。本発明に係る液圧制御ユニットは、本実施の形態の一部のみが実施されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 胴体、2 ハンドル、3 前輪、3a ロータ、4 後輪、4a ロータ、10 ブレーキシステム、11 ブレーキレバー、12 第1液圧回路、13 ブレーキペダル、14 第2液圧回路、15 液管、16 液管、21 マスタシリンダ、22 リザーバ、23 ブレーキキャリパ、24 ホイールシリンダ、25 込め弁、26 弛め弁、27 アキュムレータ、28 切換弁、29 増圧弁、30 マスタシリンダ液圧センサ、31 ホイールシリンダ液圧センサ、40 内部流路、41 主流路、41a 主流路途中部、42 副流路、42a 副流路途中部、42b 第1副流路、42c 第2副流路、43 増圧流路、50 ポンプ、51 プランジャ、51a 端部、52 モータ側部品、53 中間部品、54 圧縮室側部品、55 流入流路、56 スプリング、57 シール部材、58 圧縮室、60 排出部、61 第1部品、61a 外周部、62 第2部品、62a 外周部、62b 端部、63 段部、63a 当接箇所、64 凸部、65 排出流路、65a 流入側開口部、65b 流出側開口部、66 逆止弁、67 弁座、68 弁体、69 スプリング、70 逆止弁、80 シール部、81 圧入部、82 シール部材、90 モータ、91 出力軸、92 偏心部、100 液圧制御ユニット、101 基体、102 凹部、102a 内周部、102b 開口部、103 段部、104 塑性変形部、105 段部、106 制御装置、200 鞍乗型車両、MP マスタシリンダポート、WP ホイールシリンダポート。