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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090810
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】車両用制輪子
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/06 20060101AFI20240627BHJP
   B61H 1/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F16D65/06 J
B61H1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206939
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 啓佑
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA06
3J058AA17
3J058BA47
3J058CA03
3J058CA06
3J058FA21
(57)【要約】
【課題】摩擦材の台板への固定力を向上させることができる車両用制輪子を提供する。
【解決手段】実施形態の車両用制輪子1は、摩擦面11が車輪踏面に押し付けられることで車輪を制動させるための摩擦材10と、摩擦材10を支持する支持面21と、支持面21に設けられて摩擦材10の内部で摩擦材10を保持する爪部50と、を有する台板20と、を備える。爪部50は、台板20の長手方向に延びる軸及び摩擦材10の厚さ方向に延びる軸を含む断面視(XZ断面視)で、支持面21から離れた位置で屈曲した形状である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦面が車輪踏面に押し付けられることで車輪を制動させるための摩擦材と、
前記摩擦材を支持する支持面と、前記支持面に設けられて前記摩擦材の内部で前記摩擦材を保持する爪部と、を有する台板と、を備え、
前記爪部は、前記台板の長手方向に延びる軸及び前記摩擦材の厚さ方向に延びる軸を含む断面視で、前記支持面から離れた位置で屈曲又は湾曲した形状である、
車両用制輪子。
【請求項2】
前記支持面は、前記断面視で、前記摩擦面に沿って湾曲しており、
前記爪部の一部は、前記断面視で、前記支持面に沿う形状である、
請求項1に記載の車両用制輪子。
【請求項3】
前記爪部は、前記台板の一部が切り曲げられて湾曲するように形成される、
請求項1又は2に記載の車両用制輪子。
【請求項4】
前記台板は、
背面に取付部が設けられる背面板と、
前記背面板における前記背面と反対側の固定面に固定され、前記背面板を補強する補強板と、を備え、
前記爪部は、前記補強板の一部が切り曲げられて形成される、
請求項3に記載の車両用制輪子。
【請求項5】
前記補強板には、前記補強板の一部が切り曲げられることで孔が形成される、
請求項4に記載の車両用制輪子。
【請求項6】
前記補強板に形成される孔は、前記背面板が存在する領域に形成される、
請求項5に記載の車両用制輪子。
【請求項7】
前記背面板は、前記背面板における前記背面に、前記台板を位置決めするための台板位置決め部を備え、
前記台板位置決め部は、前記背面板の一部が切り曲げられて形成され、
前記背面板には、前記背面板の一部が切り曲げられることで孔が形成され、
前記背面板に形成される孔は、前記補強板が存在する領域において、前記補強板に形成される孔とは異なる位置に形成される、
請求項6に記載の車両用制輪子。
【請求項8】
前記爪部は、前記台板の長手方向に沿って複数設けられる、
請求項1又は2に記載の車両用制輪子。
【請求項9】
複数の前記爪部の各々は、前記断面視で、前記台板の中央から離れる方向に屈曲又は湾曲している、
請求項8に記載の車両用制輪子。
【請求項10】
前記爪部は、第1爪部であり、
前記台板には、前記支持面に設けられて前記摩擦材の内部で前記摩擦材を保持する、前記第1爪部と異なる第2爪部が設けられ、
前記第2爪部は、前記台板の幅方向に沿うように屈曲又は湾曲している、
請求項1又は2に記載の車両用制輪子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制輪子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車輪踏面に押し付けられることで車輪を制動させるための車両用制輪子が知られている。例えば、特許文献1には、台金に摩擦材が固定された車両用制輪子が開示されている。台金と摩擦材との固定力を確保するために、台金は、摩擦材が固定される部分の面(支持面)に爪部を有する。爪部は、支持面に対して屈曲して斜めに真っ直ぐ延びた形状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-204626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、制動時に制輪子が車輪に引っ張られると、爪部でひっかかっている摩擦材側(例えば、爪部が延びた先端側)が破損してしまう場合がある。この場合、台金(台板)から摩擦材が脱落してしまう可能性が高い。そのため、摩擦材の台板への固定力を向上させる上で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、摩擦材の台板への固定力を向上させることができる車両用制輪子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の態様は以下の構成を有する。
(1)本発明の態様に係る車両用制輪子は、摩擦面が車輪踏面に押し付けられることで車輪を制動させるための摩擦材と、前記摩擦材を支持する支持面と、前記支持面に設けられて前記摩擦材の内部で前記摩擦材を保持する爪部と、を有する台板と、を備え、前記爪部は、前記台板の長手方向に延びる軸及び前記摩擦材の厚さ方向に延びる軸を含む断面視で、前記支持面から離れた位置で屈曲又は湾曲した形状である。
【0007】
この構成によれば、爪部が前記断面視で支持面に対して屈曲して斜めに真っ直ぐ延びた形状である場合と比較して、支持面と爪部との間に摩擦材が強固に保持される。したがって、摩擦材の台板への固定力を向上させることができる。
【0008】
(2)上記(1)に記載の車両用制輪子では、前記支持面は、前記断面視で、前記摩擦面に沿って湾曲しており、前記爪部の一部は、前記断面視で、前記支持面に沿う形状であってもよい。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)に記載の車両用制輪子では、前記爪部は、前記台板の一部が切り曲げられて湾曲するように形成されてもよい。
【0010】
(4)上記(3)に記載の車両用制輪子では、前記台板は、背面に取付部が設けられる背面板と、前記背面板における前記背面と反対側の固定面に固定され、前記背面板を補強する補強板と、を備え、前記爪部は、前記補強板の一部が切り曲げられて形成されてもよい。
【0011】
(5)上記(4)に記載の車両用制輪子では、前記補強板には、前記補強板の一部が切り曲げられることで孔が形成されてもよい。
【0012】
(6)上記(5)に記載の車両用制輪子では、前記補強板に形成される孔は、前記背面板が存在する領域に形成されてもよい。
【0013】
(7)上記(6)に記載の車両用制輪子では、前記背面板は、前記背面板における前記背面に、前記台板を位置決めするための台板位置決め部を備え、前記台板位置決め部は、前記背面板の一部が切り曲げられて形成され、前記背面板には、前記背面板の一部が切り曲げられることで孔が形成され、前記背面板に形成される孔は、前記補強板が存在する領域において、前記補強板に形成される孔とは異なる位置に形成されてもよい。
【0014】
(8)上記(1)から(7)の何れかに記載の車両用制輪子では、前記爪部は、前記台板の長手方向に沿って複数設けられてもよい。
【0015】
(9)上記(8)に記載の車両用制輪子では、複数の前記爪部の各々は、前記断面視で、前記台板の中央から離れる方向に屈曲又は湾曲していてもよい。
【0016】
(10)上記(1)から(9)の何れかに記載の車両用制輪子では、前記爪部は、第1爪部であり、前記台板には、前記支持面に設けられて前記摩擦材の内部で前記摩擦材を保持する、前記第1爪部と異なる第2爪部が設けられ、前記第2爪部は、前記台板の幅方向に沿うように屈曲又は湾曲していてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、摩擦材の台板への固定力を向上させることができる車両用制輪子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の車両用制輪子の側面図である。
図2図1の矢視IIから見た図である。
図3図2の矢視III-IIIにおける断面を含む図である。
図4図1の矢視IV-IVにおける断面を含む図である。
図5】実施形態の第1変形例に係る爪部の断面図である。
図6】実施形態の第2変形例に係る爪部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、車両用制輪子として、鉄道車両用の制輪子を挙げて説明する。以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を意味するのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も含むものとする。以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0020】
<車両用制輪子>
図1は、実施形態の車両用制輪子1の側面図である。図2は、図1の矢視IIから見た図である。
図1及び図2を併せて参照し、車両用制輪子1は、摩擦材10と、台板20と、を備える。図1においては、摩擦材10を二点鎖線で示している。図2においては、摩擦材10の図示を省略している。
【0021】
以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。例えば、車両用制輪子1を車両に搭載した場合、X方向、Y方向及びZ方向は、車両の各方向に対して以下の関係となる。X方向は、車両の前後方向と一致する。Y方向は、車両の幅方向と一致する。Z方向は、X方向及びY方向に直交する車両の高さ方向(重力方向)と一致する。以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印側をプラス(+)側とし、矢印とは反対側をマイナス(-)側として説明する。+Z側は重力方向の上側に相当し、-Z側は重力方向の下側に相当する。
【0022】
<摩擦材>
摩擦材10は、車輪踏面に倣うような略円弧形状になっている。摩擦材10は、車輪踏面に押し当てられて摩擦力による制動力を発生する。例えば、摩擦材10の材質は、鋳鉄(金属の一例)、合成樹脂(樹脂の一例)、焼結体等である。
【0023】
例えば、摩擦材10は、金属及び樹脂等を含む材料で形成されてもよい。例えば、摩擦材10は、合成樹脂を結合材とし、この結合材に炭素粉、鉄粉粉等の摩擦調整材を混合して形成されてもよい。例えば、摩擦材10は、金属ブロック又はセラミックスブロック等を含んで形成されてもよい。例えば、摩擦材10の形成材料は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0024】
摩擦材10は、車輪踏面に押し付けられて摩擦する摩擦面11と、摩擦面11とは反対側の裏面12と、を有する。摩擦材10は、摩擦面11が車輪踏面に押し付けられることで車輪を制動させる。例えば、摩擦材10は、裏面12が台板20に圧着されることで製造される。
【0025】
<台板>
台板20は、摩擦材10を支持する支持面21と、支持面21に設けられて摩擦材10の内部で摩擦材10を保持する爪部50(第1爪部に相当)と、を有する。爪部50は、台板20の長手方向に延びる軸及び摩擦材10の厚さ方向に延びる軸を含む断面視で、支持面21から離れた位置で屈曲した形状である。台板20の長手方向に延びる軸は、Z方向に沿う軸に相当する。摩擦材10の厚さ方向に延びる軸は、X方向に沿う軸に相当する。以下、台板20の長手方向に延びる軸及び摩擦材10の厚さ方向に延びる軸を含む断面を「XZ断面」ともいう。
【0026】
支持面21は、摩擦材10の裏面12が接する面である。支持面21は、XZ断面視で、摩擦材10の摩擦面11に沿って湾曲している。
【0027】
例えば、台板20の材質は、鋳鉄等の金属である。例えば、台板20は、板金で形成される。例えば、台板20は、金属及び樹脂等を含む材料で形成されてもよい。例えば、台板20の形成材料は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0028】
台板20は、背面板30と、背面板30を補強する補強板40と、を備える。
本実施形態の背面板30は、板金で形成される。背面板30は、取付部31が設けられる背面32と、背面32とは反対側の固定面33と、を有する。取付部31は、車両用制輪子1を支持するための制輪子頭(不図示)が取り付けられる部分に相当する。背面板30における固定面33は、摩擦材10を支持する支持面21としても機能する。
【0029】
本実施形態の補強板40は、板金で形成される。補強板40は、背面板30における背面32と反対側の固定面33に固定される。例えば、補強板40は、背面板30における固定面33に溶接等で結合される。
【0030】
<爪部(第1爪部)>
図3は、図2の矢視III-IIIにおける断面を含む図である。図3において、車輪の回転方向(車輪の回転力の方向の一例)を矢印で示す。
図1から図3を併せて参照し、爪部50は、摩擦材10の内部で台板20における支持面21に設けられる。爪部50は、摩擦材10の内部で摩擦材10を保持する。爪部50の一部は、XZ断面視で、台板20における支持面21に沿う形状である。爪部50は、台板20の一部が切り曲げられて滑らかに湾曲するように形成される。爪部50は、補強板40の一部が切り曲げられて形成される。
【0031】
図1及び図3において、摩擦材10の内部を通り且つ摩擦面11に沿って湾曲する仮想線VLを一点鎖線で示す。XZ断面視で、仮想線VLは、補強板40の一面41(+X側の面)よりも+X側に離れた位置にある。爪部50は、XZ断面視で、補強板40の一部が切り曲げられた後に仮想線VLに向かって斜めに延びる第1延在部51と、第1延在部51が延びた先から仮想線VLに沿うように延びる第2延在部52(爪部50の一部に相当)と、を備える。第2延在部52は、XZ断面視で、第1延在部51が延びた先から曲がるとともに第1延在部51が延びた先に繋がっている。
【0032】
爪部50は、台板20の長手方向(Z方向に相当)に沿って複数設けられる。図1の例では、台板20の長手方向に沿って、8個(複数の一例)の爪部50が示される。図1の例では、台板20の長手方向(Z方向に相当)の片側に4個ずつ合計8個の爪部50が示される。図2の例では、台板20の幅方向(Y方向に相当)の片側に8個ずつ合計16個の爪部50が示される。
【0033】
図1を参照し、複数の爪部50の各々は、XZ断面視で、台板20の中央(長手方向中央に相当)から離れる方向に屈曲している。例えば、複数の爪部50は、XZ断面視で、台板20の中央に向かう方向に屈曲している爪部50を含んでもよい。
【0034】
図1の例では、8個の爪部50のうち、+Z側から2番目及び-Z側から2番目の2個の爪部50の各々が、台板20の長手方向中央に向かう方向(Z方向内側に相当)に屈曲している。すなわち、8個の爪部50のうち、+Z側から2番目及び-Z側から2番目の2個を除く、6個の爪部50の各々が、台板20の長手方向中央から離れる方向(Z方向外側に相当)に屈曲している。図2の例では、16個の爪部50のうち、+Z側から2番目及び-Z側から2番目の4個を除く、12個の爪部50の各々が、台板20の長手方向中央から離れる方向(Z方向外側に相当)に屈曲している。
【0035】
<第2爪部>
図4は、図1の矢視IV-IVにおける断面を含む図である。図4は、制輪子が金属ブロック70を有する場合の一例を示す。図4においては、摩擦材10を二点鎖線で示している。
図4を併せて参照し、台板20には、支持面21に設けられて摩擦材10の内部で摩擦材10を保持する第2爪部60が設けられる。第2爪部60は、第1爪部50とは異なる爪部である。第2爪部60は、台板20の幅方向(Y方向に相当)に沿うように屈曲している。図4の断面視で、第2爪部60は、補強板40の一部が切り曲げられて斜めに延びた後に台板20の幅方向外側に向かって延びている。図4の断面視で、第2爪部60の延びた先は、金属ブロック70の凹部側面に接触している。
【0036】
図1を参照し、第2爪部60は、台板20の長手方向(Z方向に相当)に間隔をあけて複数設けられる。図1の例では、台板20の長手方向に間隔をあけて、2個(複数の一例)の第2爪部60が示される。図1の例では、台板20の長手方向(Z方向に相当)の片側に1個ずつ合計2個の第2爪部60が示される。図1の例では、第2爪部60は、複数の第1爪部50のうちZ方向外側から1番目及び2番目の2個の第1爪部50の間に設けられる。図2の例では、台板20の幅方向(Y方向に相当)の片側に2個ずつ合計4個の第2爪部60が示される。
【0037】
複数の第2爪部60の各々は、図4の断面視で、台板20の幅方向中央から離れる方向に屈曲している。図2の例では、4個の第2爪部60の各々が、台板20の幅方向中央(Y方向外側に相当)から離れる方向に屈曲している。
【0038】
<台板位置決め部>
図1を参照し、背面板30は、背面板30における背面32に、台板20を位置決めするための台板位置決め部34を備える。台板位置決め部34は、車両用制輪子1を支持するための制輪子頭(不図示)に対して台板20を位置決めするための爪部である。台板位置決め部34は、背面板30の一部が切り曲げられて形成される。台板位置決め部34は、Y方向から見て、背面板30の一部が切り曲げられて斜めに延びた後に台板20の長手方向中央に向かう方向に屈曲している。
【0039】
台板位置決め部34は、台板20の長手方向(Z方向に相当)に間隔をあけて複数設けられる。図1の例では、台板20の長手方向に間隔をあけて、2個(複数の一例)の台板位置決め部34が示される。図1の例では、台板20の長手方向(Z方向に相当)の片側に1個ずつ合計2個の台板位置決め部34が示される。図1の例では、台板位置決め部34は、複数の第1爪部50のうちZ方向外側から1番目の第1爪部50の近傍に設けられる。
【0040】
<補強板に形成される孔>
図1から図4を併せて参照し、補強板40には、補強板40の一部が切り曲げられることで孔45,46が形成される。補強板40に形成される孔45,46には、第1爪部50を形成するための孔45と、第2爪部60を形成するための孔46と、が含まれる。補強板40に形成される孔45,46は、背面板30が存在する領域に形成される。補強板40に形成される孔45,46は、背面板30によって-X側から塞がれる。
【0041】
<背面板に形成される孔>
図1を参照し、背面板30には、背面板30の一部が切り曲げられることで孔35が形成される。背面板30に形成される孔35は、台板位置決め部34を形成するための孔である。背面板30に形成される孔35は、補強板40が存在する領域において、補強板40に形成される孔45,46とは異なる位置に形成される。背面板30に形成される孔35は、補強板40によって+X側から塞がれる。
【0042】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態に係る車両用制輪子1は、摩擦面11が車輪踏面に押し付けられることで車輪を制動させるための摩擦材10と、摩擦材10を支持する支持面21と、支持面21に設けられて摩擦材10の内部で摩擦材10を保持する爪部50と、を有する台板20と、を備える。爪部50は、台板20の長手方向に延びる軸及び摩擦材10の厚さ方向に延びる軸を含む断面視(XZ断面視)で、支持面21から離れた位置で屈曲した形状である。
【0043】
この構成によれば、爪部50がXZ断面視で支持面21に対して屈曲して斜めに真っ直ぐ延びた形状である場合と比較して、支持面21と爪部50との間に摩擦材10が強固に保持される。したがって、摩擦材10の台板20への固定力を向上させることができる。
【0044】
本実施形態に係る支持面21は、XZ断面視で、摩擦面11に沿って湾曲している。爪部50の一部は、XZ断面視で、支持面21に沿う形状である。
この構成によれば、制動時に車輪の回転力によって摩擦材10が引っ張られても、爪部50の一部が回転力の方向Rに沿っているため、爪部50の先端を起点とした爪部50の基端にかかる回転モーメントを抑制できる。従って、摩擦材10の台板20への固定力を更に向上させることができる。
【0045】
本実施形態に係る爪部50は、台板20の一部が切り曲げられて湾曲するように形成される。
この構成によれば、一枚の台板20を曲げること(曲げ加工)により爪部50を形成することができる。そのため、爪部50を作製するために台板20に別の部材を溶接等で結合する場合と比較して、製造負担を軽減しやすい。加えて、爪部50が屈曲して角ができる場合と比較して、応力(例えば、車輪から伝わる回転力)を分散できる。そのため、摩擦材10の台板20への固定力を更に向上させることができる。
【0046】
本実施形態に係る台板20は、背面32に取付部31が設けられる背面板30と、背面板30における背面32と反対側の固定面33に固定され、背面板30を補強する補強板40と、を備える。爪部50は、補強板40の一部が切り曲げられて形成される。
この構成によれば、一枚の補強板40を曲げること(曲げ加工)により爪部50を形成することができる。そのため、爪部50を作製するために補強板40に別の部材を溶接等で結合する場合と比較して、製造負担を軽減しやすい。
【0047】
本実施形態に係る補強板40には、補強板40の一部が切り曲げられることで孔45が形成される。
この構成によれば、背面板30に孔をあけて摩擦材10との固定面積を増やすことなく、補強板40の一部が切り曲げられて形成される爪部50により必要な固定力を確保することができる。
【0048】
本実施形態に係る補強板40に形成される孔45、46は、背面板30が存在する領域に形成される。
この構成によれば、摩擦材10の形成時に背面板30の孔から裏面12に摩擦材10の形成材料が流出してしまう事態を防ぐことができる。
【0049】
本実施形態に係る背面板30は、背面板30における背面32に、台板20を位置決めするための台板位置決め部34を備える。台板位置決め部34は、背面板30の一部が切り曲げられて形成される。背面板30には、背面板30の一部が切り曲げられることで孔35が形成される。背面板30に形成される孔35は、補強板40が存在する領域において、補強板40に形成される孔45,46とは異なる位置に形成される。
この構成によれば、台板位置決め部34により台板20の位置決めを行いつつ、摩擦材10の形成時に裏面12に摩擦材10の形成材料が流出してしまう事態を防ぐことができる。したがって、製造負担を軽減することができる。
【0050】
本実施形態に係る爪部50は、台板20の長手方向に沿って複数設けられる。
この構成によれば、複数の爪部50により、摩擦材10の台板20への固定力を更に向上させることができる。
【0051】
本実施形態に係る複数の爪部50の各々は、XZ断面視で、台板20の中央から離れる方向に屈曲している。
この構成によれば、制動時に車輪がいずれの方向に回転しても、車輪から伝わる回転力を上流の爪部50で分散できる。したがって、摩擦材10の台板20への固定力を更に向上させることができる。
【0052】
本実施形態に係る爪部50は、第1爪部50である。台板20には、支持面21に設けられて摩擦材10の内部で摩擦材10を保持する、第1爪部50と異なる第2爪部60が設けられる。第2爪部60は、台板20の幅方向に沿うように屈曲している。
例えば、制輪子が金属ブロック70を有する場合は、第2爪部60を金属ブロック70の幅方向の位置決めに使用することができる。一方、制輪子が金属ブロック70を有しない場合は、第2爪部60により摩擦材10の幅方向の力に対する固定力向上に貢献することができる。したがって、台板20の構造を変えることなく、それぞれの制輪子に合った役割を果たすことができる。
【0053】
<変形例>
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0054】
上述した実施形態では、爪部は、台板の長手方向に延びる軸及び摩擦材の厚さ方向に延びる軸を含む断面視で、支持面から離れた位置で屈曲した形状である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、爪部は、前記断面視で、支持面から離れた位置で湾曲した形状であってもよい。例えば、図5に示すように、爪部150は、XZ断面視で、T字形状であってもよい。例えば、爪部の形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0055】
上述した実施形態では、支持面は、前記断面視で、摩擦面に沿って湾曲しており、爪部の一部は、前記断面視で、支持面に沿う形状である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、爪部の一部は、前記断面視で、支持面に沿う形状でなくてもよい。例えば、図6に示すように、爪部250は、XZ断面視で、全体として弧状に湾曲した形状であってもよい。例えば、支持面に対する爪部の形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0056】
上述した実施形態では、爪部は、台板の一部が切り曲げられて湾曲するように形成される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、一枚の台板を曲げること(曲げ加工)により爪部を形成することに限らない。例えば、爪部を作製するために台板に別の部材を溶接等で結合してもよい。例えば、爪部が屈曲して角ができるように形成されてもよい。例えば、爪部の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0057】
上述した実施形態では、台板は、背面に取付部が設けられる背面板と、背面板における背面と反対側の固定面に固定され、背面板を補強する補強板と、を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、台板は、背面板を備え、補強板を備えなくてもよい。例えば、補強板の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0058】
上述した実施形態では、爪部は、補強板の一部が切り曲げられて形成される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、一枚の補強板を曲げること(曲げ加工)により爪部を形成することに限らない。例えば、爪部を作製するために補強板に別の部材を溶接等で結合してもよい。例えば、爪部は、背面板の一部が切り曲げられて形成されてもよい。例えば、爪部を作製するために背面板に別の部材を溶接等で結合してもよい。例えば、背面板又は補強板に対する爪部の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0059】
上述した実施形態では、補強板には、補強板の一部が切り曲げられることで孔が形成される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、必要な固定力を確保するために背面板に孔をあけて摩擦材との固定面積を増やしてもよい。例えば、背面板又は補強板に対する孔の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0060】
上述した実施形態では、補強板に形成される孔は、背面板が存在する領域に形成される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、補強板に形成される孔は、背面板が存在しない領域に形成されてもよい。例えば、補強板に形成される孔の形成場所は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0061】
上述した実施形態では、背面板は、背面板における背面に、台板を位置決めするための台板位置決め部を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、背面板は、台板位置決め部を備えなくてもよい。例えば、台板位置決め部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0062】
上述した実施形態では、台板位置決め部は、背面板の一部が切り曲げられて形成される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、台板位置決め部を作製するために背面板に別の部材を溶接等で結合してもよい。例えば、背面板に対する台板位置決め部の形成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0063】
上述した実施形態では、背面板には、背面板の一部が切り曲げられることで孔が形成され、背面板に形成される孔は、補強板が存在する領域において、補強板に形成される孔とは異なる位置に形成される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、背面板に形成される孔は、補強板が存在しない領域に形成されてもよい。例えば、背面板に形成される孔の形成場所は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0064】
上述した実施形態では、爪部は、台板の長手方向に沿って複数設けられる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、爪部は、1つのみ設けられてもよい。例えば、爪部の設置数は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0065】
上述した実施形態では、複数の爪部の各々は、前記断面視で、台板の中央から離れる方向に屈曲している例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、複数の爪部の各々は、前記断面視で、台板の中央から離れる方向に湾曲していてもよい。例えば、複数の爪部の各々は、前記断面視で、台板の中央に向かう方向に屈曲又は湾曲していてもよい。例えば、複数の爪部の各々が曲がる方向は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0066】
上述した実施形態では、爪部は、第1爪部であり、台板には、支持面に設けられて摩擦材の内部で摩擦材を保持する、第1爪部と異なる第2爪部が設けられる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、台板には、第1爪部が設けられ、第2爪部が設けられなくてもよい。例えば、第2爪部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0067】
上述した実施形態では、第2爪部は、台板の幅方向に沿うように屈曲している例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第2爪部は、台板の幅方向に沿うように湾曲していてもよい。例えば、第2爪部が曲がる態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0068】
上述した実施形態では、車両用制輪子として、鉄道車両用の制輪子の例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、本発明は、鉄道車両以外の車両に適用してもよい。例えば、本発明は、自転車、自動二輪車、四輪自動車、建設車両、産業車両などに適用してもよい。
【0069】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは可能である。また、上述した各変形例を組み合わせても構わない。
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0070】
1…車両用制輪子、10…摩擦材、11…摩擦面、20…台板、21…支持面、30…背面板、31…取付部、32…背面、33…固定面、34…台板位置決め部、35…背面板に形成される孔、40…補強板、45,46…補強板に形成される孔、50…第1爪部(爪部)、60…第2爪部、150…爪部、250…爪部
図1
図2
図3
図4
図5
図6