(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090813
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】自由角度鋼板削孔装置
(51)【国際特許分類】
E21B 7/00 20060101AFI20240627BHJP
B23B 41/00 20060101ALI20240627BHJP
B23B 45/00 20060101ALI20240627BHJP
B23B 45/14 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
E21B7/00 Z
B23B41/00 Z
B23B45/00 A
B23B45/14
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206942
(22)【出願日】2022-12-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-21
(71)【出願人】
【識別番号】514261878
【氏名又は名称】株式会社コマツレンタル宮崎
(74)【代理人】
【識別番号】240000039
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正典
【テーマコード(参考)】
2D129
3C036
【Fターム(参考)】
2D129AB07
2D129BA03
2D129DA18
2D129DC23
3C036AA00
3C036EE18
(57)【要約】
【課題】排水桝内での削孔作業を、熟練を要することなく、安全性及び施工性に優れ、施工現場に応じて簡便かつ経済的に行うことができる自由角度鋼板削孔方法及び装置を提供する。
【解決手段】クランプ8をクランプシャフト8aとクランプハンドル8bを備えた一対の万力6で形成し、万力6の側面に穿孔した窓孔6bと一対のドリルユニット取付台座1に穿孔したL字溝孔1cとの間をボルト・ナット6cで締結可能にし、一対の万力6間をドリルユニット取付台座1が摺動して傾斜動及び前後動可能に設ける。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔ビットを用いて集水桝の鋼板に削孔する削孔方法であって、前記削孔ビットを前記鋼板の設置勾配に応じて削孔角度を可変に保持しつつ固定し、前記鋼板の削孔面に対して前記削孔ビットを接離及び摺動操作して削孔することを特徴とする自由角度鋼板削孔方法。
【請求項2】
削孔ビットが鋼板の削孔面に臨設されたドリルユニットを備えた取付台座と、該取付台座を集水桝の枠又は近傍に固定するクランプと、ドリルユニットを着脱自在に保持する磁着部を備えたことを特徴とする自由角度鋼板削孔装置。
【請求項3】
削孔ビットが鋼板に対して前後進及び角度可変に保持されていることを特徴とする請求項1記載の自由角度鋼板削孔方法又は請求項2記載の自由角度鋼板削孔装置。
【請求項4】
削孔ビットの削孔面に対する可変角度が0~90度であることを特徴とする請求項1の自由角度鋼板削孔方法又は請求項2又は請求項3記載の自由角度鋼板削孔装置。
【請求項5】
クランプが一対の万力であり、これら万力の間を傾斜動及び前後動可能に設けられたドリルユニット取付台座を備えたことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の自由角度鋼板削孔装置。
【請求項6】
ドリルユニット取付台座に、ドリルユニットが上下左右方向に移動可能かつ位置決め固定可能に形成された補助アタッチメントを備えたことを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の自由角度鋼板削孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路面に降った雨水等が滞留しないように設置されている金属製排水用集水枡の任意の側面に、現場条件に応じた位置及び角度で自由に排水孔を開設するための削孔方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既設道路橋の橋面舗装構造は、従来、不透水性舖装が主流であったため、降雨処理対策は、路面勾配に沿って舗装表面上の排水方式で集水枡により排水処理を行い橋梁の保全が図られている。
【0003】
近年、既設道路橋の保全と交通情勢から、従来の不透水性舗装から透水性舖装への工法技術転換が実行推進されている。これらの工法変更により従来の不透水性舗装の全面切削剥ぎ取りの必要が生じ、透水性舗装にすることにより路面を透水した降雨は、舗装体下面の橋梁コンクリート床版上面を流水するため、集水枡の側面に新たな排水路を設置する必要が生じる。
【0004】
道路橋の排水用集水枡は、排水工指針により設計設置されており、橋梁構造と交通に支障のないように配置されている。また、集水枡の形状構造も基準に従い設置され排水機能を果たしている。集水枡の材質は基本的には金属製であり、集水枡の雨水流入部の設置面の高さは橋梁舗装面の高さと同一面である
【0005】
このような集水桝として、例えば特許文献1に示されているようなものがある。一方、削孔装置として、錐軸の先端にモータによって回転する回転軸を取り付け、この回転軸の先端部に円筒状のコアーボディを取付け、錐軸にコアーボディの周囲を囲む円筒状の防音カバーをスライド自在に取付け、防音カバーの先端開口周囲に軟弾性材料で成形された断面円弧型の円環状の吸盤を取り付け、防音カバーに給水管及び排水管を接続したコンクリート削孔装置(特許文献2参照。)。既存のマンホールと管路との接続部分を開口し、この開口部に免振材等を充填する作業において、管路内側に固定部材によって駆動部を固定し、L型シャフトを回転させながら、このL型シャフトの先端側に固定されたガイド部材にエンドミル装置本体を取付け、ピニオン・ラック機構によりドリル本体をガイド部材に沿って摺動し、連続的に管路周縁部を開口するもの(特許文献3参照。)がある。
【0006】
上述のような排水路を増設する場合、金属製集水桝の壁面に透水孔を削孔して排水を図る必要があるが、集水桝内は作業スペースが狭く限られた空間内であるため、所望する壁面の削孔位置に孔を正しく開通することが困難であり、従来この作業は、ガス式のトーチバーナーを用いた溶射によって行なわれていた。
【0007】
しかしながら、溶射による透水孔加工作業には下記の課題がある。
(1)火気を使用するので、作業者の火傷や火災が発生する危険がある。
(2)溶射温度が高温のため、削孔位置に接近して作業することができないので、正確性及び仕上げ性に欠ける。
(3)大量のCO2が排出される。
(4)作業準備、加熱時間、削孔の仕上げ作業を要するので、施工に長時間を要する。
(5)雨天時には作業できない。
(6)作業に熟練を要する。
【0008】
そこで、本出願人は、先に特許文献5をもって、上述の課題を持つ集水桝壁面の削孔作業を、熟練した作業者を要することなく、安全性及び施工性に優れ、経済的に削孔作業を行うことができる自由角度鋼板削孔装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4022863号公報
【特許文献2】実開昭63-9389号公報
【特許文献3】特開2004-332515号公報
【特許文献4】実用新案登録第3155703号公報
【特許文献5】実用新案登録第3196593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献5所載の装置によれば、上記課題を解消できるばかりでなく、削孔作業に際し、ドリルユニットを単独に分離して削孔すべき壁面の所要位置において取付台座に磁着固定するようにしたので、削孔ビットが削孔位置に簡単かつ確実に位置決めされ、例えば、狭い集水枡の限られたスペース内でも削孔作業を簡易に行うことができるという利点がある。
【0011】
しかしながら、上記装置は、移動式の大型台車を桝外の路面にセットするアウトリガーの固定等に時間や手間を要する点、解体輸送が困難で輸送費用が嵩み、削孔数が少ない場合には施工コストが割高になる点。また、現場内小運搬に不向きであるという大型装置特有の課題があり、さらに能率の良い削孔方法や使いやすい装置の改善が嘱望されていた。
本発明は、上述の課題を持つ排水桝内での削孔作業を、熟練を要することなく、安全性及び施工性に優れ、施工現場に応じて簡便かつ経済的に行うことができる自由角度鋼板削孔方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明に係る自由角度鋼板削孔方法は、削孔ビットを用いて集水桝の鋼板に削孔する削孔方法であって、前記削孔ビットを前記鋼板の設置勾配に応じて削孔角度を可変に保持しつつ固定し、前記鋼板の削孔面に対して前記削孔ビットを接離及び摺動操作して削孔することを特徴とする。また、本発明に係る自由角度鋼板削孔装置は、削孔ビットが鋼板の削孔面に臨設されたドリルユニットを備えた取付台座と、該取付台座を集水桝の枠又は近傍に固定するクランプと、ドリルユニットを着脱自在に保持する磁着部を備えたことを特徴とする。また、削孔ビットが鋼板に対して前後進及び角度可変に保持されていることを特徴とする。さらに、削孔ビットの削孔面に対する可変角度が0~90度であることを特徴とする。さらにまた、クランプが一対の万力であり、これら万力の間を傾斜動及び前後動可能に設けられたドリルユニット取付台座を備えたことを特徴とする。加えて、ドリルユニット取付台座に、ドリルユニットが上下左右方向に移動可能かつ位置決め固定可能に形成された補助アタッチメントを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自由角度鋼板削孔方法及び装置によれると以下の優れた効果がある。
(1)鋼板壁面への削孔作業に際し、ドリルユニットが削孔すべき壁面の所要位置において取付台座に磁着固定するようにしたので、削孔位置及び削角度を自由に決めることができ、例えば、狭い集水枡の内の限られたスペース内でも削孔作業を簡易に行うことができる。
(2)ドリルユニットの取付台座を集水桝の枠にクランプで固定するようにしたことで、装置の小型化かつ軽量化が可能となり、携行が簡便になり輸送コストを低減でき、曳いては削孔コストが低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る削孔方法を具現化する装置の基本的構造を模式的に示す概念図である。
【
図2】本発明に係る自由角度鋼板削孔装置の一実施例を示す斜視図である。
【
図3】
図2の装置にドリルユニットを取付けた状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る自由角度鋼板削孔装置の取付け台座の一実施例を示す斜視図である。
【
図5】
図4の取付け台座を集水枡に設置した状態を示す斜視図である。
【
図6】取付け台座の他の実施例を示す斜視図である。
【
図7】従来の自由角度鋼板削孔装置を示す斜視図である。
【
図9】本発明に係る自由角度鋼板削孔装置の他の実施を示すに2方向斜視図である。
【
図10】補助受架台を示す(a)は斜視図、(b)自由角度鋼板削孔装置を搭載した状態を示す斜視図である。
【
図11】補助アタッチメントボードの正面図である。
【
図12】取付け台座の他の実施例を示す(a)斜視図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0015】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を説明する。
尚、
図7に示す従来の自由角度鋼板削孔装置(以下、単に削孔装置という)と
図8に示す削孔作業、
図9に示す削孔装置についても説明するが、便宜上、同様の構成要素には同一の参照符号を付して説明する。
【0016】
まず、
図7に従来の削孔装置を示す。この削孔装置は、移動可能なキャスターと、ドリルユニット2用のバッテリー12を搭載するバッテリー載置台13備え、手押しハンドル付きの移動式大型台車18の先端側にドリルユニット装着部Sを有する構成とされており、
図8に示す集水枡14の壁面14aにドリルユニット装着部Sを臨ませた台車は、そのドリルユニット磁着面6a及び7aにドリルユニット2を固定した状態の時、削孔ビット3aが削孔位置Hに指向するような関係位置にアウトリガーにより路面表層Cを剥離した路面基層B上に固定されて集水枡14の四方の壁面14a、14b、14c及び14dのいずれの面にも集水枡14の内側又は外側から自由に透水用貫通15を穿設することができる。すなわち、削孔位置Hは集水枡14の設置状況や道路面の剥離状態に応じて適宜簡便に設定できるようにされている。
【0017】
図1乃至
図6において、2は駆動モータの回転軸(図示せず)に削孔ビット3aを具備したドリルユニットであり、6及び7はこのドリルユニット2を、例えば、
図8に示すような、路肩の暗渠(排水路)17を閉蓋する縁石16の所定箇所に設置された集水枡14の鋼板製の壁面14a、14b、14c又は14dに対して任意の角度で支持するドリルユニット着座部として機能する鉄板で、これらの垂直板6及び傾斜可動板7は、集水枡14への取付台座1と一体的に構成されている。すなわち、垂直板6及び可動傾斜板7にはドリルユニット2の削孔ビット3aが削孔すべき壁面14aの削孔位置Hに臨むように設
けたドリルユニット磁着面6a及び7aが設けられている。
尚、図中、1a及び1bはドリルユニット取付台座1から直角方向に延出された集水枡14の枠部分への嵌合バーであり、ドリルユニット取付台座1の集水枡14への取り付け位置決めを正確かつ容易にできるようにされている。
【0018】
ドリルユニット2には電磁石製の磁着部5が一体的に設けられ、電磁石に通電又は遮電することで、前記ユニット磁着面6a及び7aに着脱自在に磁着して支持固定される。ドリルユニット2には、この通電をオンオフするスイッチが設けられており、ドリルユニット2を所望のドリルユニット磁着面6a及び7aに当接させた状態でスイッチの切り替えを行うことで着脱できるようにされている。
【0019】
また、ドリルユニット2は削孔ビット3aをスライドさせるドリル摺動部3と削孔ビット送りハンドル4からなる摺動操作部を具備し、削孔ビット送りハンドル4を手動又は自動で操作して進退させることで削孔ビット3aを削孔するベき壁面14a、14b、14c又は14dに接離することができる。つまり、ドリル摺動部3が移動し、移動するにつれて削孔ビット3aの先端が壁面14a、14b、14c又は14dの削孔位置Hに切り込んで所要口径の透水用貫通孔15が削孔できるようにされている。
【0020】
例えば、
図2に示すように、集水枡14の削孔しようとする任意の壁面14aが垂直面である場合、その上端辺縁に垂直板6を立設し、その取付台座1を集水桝14の枠にクランプ8で固定し、対面する辺縁に台座ブロック9を介して挟持固定したクランプ8のフック10と垂直板6のフック10をターンバックル11で緊締固定する。そして、
図3に示すように、この垂直板6の磁着面6aにドリルユニット2を磁着して削孔作業を行うことができる。
【0021】
また、
図4に示す装置のように、集水枡14の削孔しようとする任意の壁面14aが垂直面又は任意の勾配を持った傾斜面である場合、取付台座1となる一対の支持側板の間に支軸7bによりドリルユニット装着面が角度可変となる可動傾斜板7を取り付け、ドリルユニット2の磁着角度が、削孔面に対して0~90度、すなわち、平行状態から直角状態まで可変可能にすることで対応できる。
【0022】
すなわち、
図5に示すように、集水枡14の削孔しようとする任意の壁面14aが垂直面又は傾斜面である場合、その上端辺縁に傾斜可動板7が立設するように、取付台座部1を載置し、その嵌合バー1a及び1bをクランプ8で固定し、対面する辺縁に台座ブロック9を介して挟持固定したクランプ8のフック10と取付台座部1のフック10をターンバックル10で緊締固定する。そして、傾斜可動板7の磁着面7aにドリルユニット2を磁着して、支軸7b廻りに所望する傾斜角度に応じて傾斜可動板7を回動させた後、前後のストッパー7cで傾斜可動板7を固定してその移動を規制する。これにより、集水枡14の壁面14a、14b、14c又は14dが如何なる勾配をもっていても削孔作業を行うことができる。尚、壁面14a、14b、14c又は14dが垂直面だけで構成されている場合、
図6に示すように、直角に折曲して2面の磁着面6aを持つ垂直板6に取付台座部1を付けた簡易な器具でも十分に所期の効果を得ることができる。尚、図中6bは集水枡14の枠に予め形成されている牽吊リングフック14eの逃げ窓口である。
以上、本発明によれば、その磁着面6a又は7aに固定したドリルユニット2を集水枡14の壁面が14a、14b、14c又は14dの傾斜角度に応じて自由に位置決めすることができ、所望の削孔角を簡単に決めることができる。