(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090818
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】シートベルト装着確認装置
(51)【国際特許分類】
B60R 22/48 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
B60R22/48 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206950
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】509054119
【氏名又は名称】株式会社BREAK
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 雅彦
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018QA01
3D018QA02
3D018QA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両への設置が容易で、低価格なシートベルト装着確認装置を提供する。
【解決手段】本発明のシートベルト装着確認装置は、表示装置を備え、ダッシュボードに装着する主装置と、2列以上の後部座席シートのそれぞれの下部に設置される子機から構成され、搭乗者の着座状態を検知する着座センサと、シートベルトの装着状態を検知するシートベルト装着センサが後部座席シートの各座席に設けられ、子機は、着座センサからの着座状態信号とシートベルト装着センサからのシートベルト装着信号の情報を含む、座席毎の座席状態信号を主装置に無線で送信する。主装置は着座状態を表示装置に表示し、シートベルトが未装着かつ車速が一定値を超えた場合に警告音を発生し、シートベルトが装着されると警告音と当該座席の表示を消去する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2列以上の後部座席シートを有する自動車において、表示装置を備え、ダッシュボードに装着する主装置と、それぞれの前記後部座席シートの下部に設置される子機から構成され、
搭乗者の着座状態を検知する着座センサと、シートベルトの装着状態を検知するシートベルト装着センサが前記後部座席シートの各座席に設けられ、
前記子機は、前記着座センサからの着座信号と前記シートベルト装着センサからのシートベルト装着信号の情報を含む座席毎の座席状態信号を、前記主装置に無線で送信し、
前記主装置は前記無線を受信し、前記着座状態を前記表示装置に前記座席別に表示し、シートベルトが未装着のまま車速が一定値を超えた場合には警告音を発生するように構成されている
シートベルト装着確認装置。
【請求項2】
前記着座信号と前記シートベルト装着信号の少なくとも一方が前記子機に有線で送信される、請求項1に記載のシートベルト装着確認装置。
【請求項3】
前記無線の方式がWi-Hiである、請求項2に記載のシートベルト装着確認装置。
【請求項4】
前記子機はバッテリーと振動センサを内蔵し、前記自動車のエンジンが停止中は前記子機はスリープ状態にされ、前記エンジンが始動した時に、前記振動センサが検出した前記エンジンの振動により前記子機はスタンバイ状態にされる、請求項2または3に記載のシートベルト装着確認装置。
【請求項5】
前記主装置が当該座席の前記表示を消去した後、前記子機がスリープ状態にされる、請求項4に記載のシートベルト装着確認装置。
【請求項6】
前記主装置が前記着座状態を前記表示装置に前記座席別に表示した後、シートベルトが装着されると当該座席の前記表示を消去するようにされている、請求項1に記載のシートベルト装着確認装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の搭乗者が着座してシートベルトを装着したかどうかを確認し、未装着の場合には警告を発するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2020年9月以降、道路交通法により、後部座席にもシートベルトの装着義務が課せられ、未装着の場合には着席者へ警告を発するシステムの搭載が義務付けられている。これに対応するため、搭乗者の着座状態を検出し、さらに後部座席のシートベルトのバックルに着脱を検知するセンサを取り付け、着座状態とシートベルトの装着状態を示す信号を運転席のダッシュボードに送信し、シートベルトが未装着の場合は搭乗者に警告することが一般的に行われている。
【0003】
自動車の車種でセダンのように後部座席シートが1列のみの場合には、後部座席シートの前後への移動は足元のスペースを調整する程度に限られる。従って、各席の着座状態やシートベルトの装着状態を示す座席状態信号は、通常、座席からダッシュボードまで床下に配線したワイアハーネスを介して送信される。一方、ワゴンやミニバンのように後部座席シートが2列以上あり、かつ座席シートの前後への大きな移動や、折り畳んで床下への収納が可能な車種の場合は、座席状態信号の送信をワイアハーネスで行うことは困難になる。このため、座席状態信号を座席からダッシュボードに無線で送信する方式が開示されている(特許文献1~2)。また、多数列の後部座席シートを有する乗り物の場合は、着座状態とシートベルトの装着状態は、通常異なる方式で検出、送信する方式が採用されているが、このような場合は、検知・情報処理システムが全体として複雑化する(特許文献3~4)。
【0004】
例えば特許文献1には、各席の着座状態を圧電センサで検出し、発生した電圧を電波でダッシュボードの警報装置に送信し、シートベルトの装着状態は通常の方法で検出して有線でダッシュボードに送信し、両者を照らし合わせることにより誤警報をなくす方法が記載されている。また特許文献2では、着座センサおよびシートベルト装着センサの両方をRFIDタグで構成し、その無線信号をダッシュボード内の情報処理装置に送信してそれを表示するとともに、情報処理装置から搬送波を送信してRFIDタグを給電する構成のシートベルト装着情報システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開第2015―51736号公報
【特許文献2】特開第2009―90963号公報
【特許文献3】特開第2019―69725号公報
【特許文献4】特開第2020―1683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のシートベルト装着確認装置は、着座信号とシートベルト装着信号が情報処理部に別系統で送信されていたり(特許文献1、3~4)、各座席の近くの床に複数のアンテナを設置することが必要であったり、双方向の通信を用いるためシステムの構成が複雑である(特許文献2~3)等の理由により、装置の車両への設置が煩雑で、装置・設置コストが高くなるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(装置の構成)
本発明のシートベルト装着確認装置は、運転席のダッシュボードに設置される主装置と、後部座席シート各列の下部に1台づつ設置される子機から構成される。主装置には表示装置が付属している。
【0008】
図1に示すように、後部座席シート1の各座席には、着座を検知する着座センサ2と、シートベルトの装着状態を検知するシートベルト装着センサ4が設けられ、子機10は着座センサ2からの着座信号とシートベルト装着センサ4からのシートベルト装着信号を座席毎に統合して座席状態信号を生成し、各座席の座席状態信号を個別の無線チャンネルで主装置20(
図2)に送信する。
【0009】
一方主装置20は、子機から発信された座席状態信号を基に着座状態とシートベルト装着状態を判別し、着座した座席の位置が視覚的に判別可能なように表示装置25に表示する。主装置20はダッシュボード内部にも外部にも設置が可能なようにされており、その電源は車両本体から供給されるように構成されている。
【0010】
(シートベルト装着確認のシーケンスの概要)
自動車のエンジンを始動してダッシュボードの電源がオンになると、主装置の電源もオンになり、表示装置25の全座席の表示が一定時間点灯して主装置20が正常に動作を開始したことを運転者に知らせる。子機10はエンジンの始動に伴う車両固有の振動を検知すると、電源がスリープ状態からスタンバイ状態になるように構成されている。ある座席に搭乗者が座ると着座センサ2がそれを検知し、検出信号が子機10に送られ、子機10はその席が着座状態であるという信号を無線で主装置20に送信し、主装置20はこれを受信して、表示装置25の該当する座席位置を点灯させる。
【0011】
着座した搭乗者がシートベルトを装着すると、表示された点灯表示は消える。もし搭乗者がシートベルトを装着せずに車両が走り出した場合、車両本体から信号が供給される車速の値が一定値を超えると、主装置20はこれを検知して警告音を発生する。警告音により搭乗者がシートベルトを装着すると警告音は消去される。搭乗者が途中で下車、あるいは一時的に外に出る際にシートベルト装着を解除した場合、あるいは停車してエンジンを停止した場合には初期状態に戻る。
【0012】
本発明のシートベルト装着確認装置は以下のように構成される。
2列以上の後部座席シートを有する自動車において、表示装置を備え、ダッシュボードに装着する主装置と、それぞれの前記後部座席シートの下部に設置される子機から構成され、
搭乗者の着座状態を検知する着座センサと、シートベルトの装着状態を検知するシートベルト装着センサが前記後部座席シートの各座席に設けられ、
前記子機は、前記着座センサからの着座信号と前記シートベルト装着センサからのシートベルト装着信号の情報を含む座席毎の座席状態信号を、前記主装置に無線で送信し、
前記主装置は前記無線を受信し、前記着座状態を前記表示装置に前記座席別に表示し、シートベルトが未装着のまま車速が一定値を超えた場合には警告音を発生するように構成されている。
さらに、前記主装置が前記着座状態を前記表示装置に前記座席別に表示した後、シートベルトが装着されると当該座席の前記表示を消去するようにしてもよい。
【0013】
前記着座信号と前記シートベルト装着信号の少なくとも一方は、前記子機に有線で送信されることが好ましい。
【0014】
前記無線の方式がWi-Hiであることが好ましい。
【0015】
前記子機はバッテリーと振動センサを内蔵し、前記自動車のエンジンが停止中は前記子機はスリープ状態にされ、前記エンジンが始動した時に、前記振動センサが検出した前記エンジンの振動により前記子機はスタンバイ状態にされてもよい。また、前記主装置が当該座席の前記表示を消去した後、前記子機がスリープ状態にされてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のシートベルト装着確認装置では、座席毎の着座情報とシートベルト装着情報を座席毎に信号化し、この座席毎の装着情報を各後部座席シートで一括して子機から主装置へ一方向で無線送信するため、従来の無線を用いたシステムに比べて構成を簡略化することが可能となる。そのため、車両への設置が容易で、低価格な装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、後部座席シートのセンサの配置と本発明によるシートベルト装着確認装置の子機の配置を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明によるシートベルト装着確認装置の主装置と表示装置の外観図である。
【
図3】
図3は、本発明による子機の構成要素を説明するブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明による主装置の構成要素を説明するブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明によるシートベルト装着確認装置の動作のシーケンスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施例によって本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
図1に示すように、各後部座席シート1には、各座席の表面付近に搭乗者の着座を検知する着座センサ2が設置されている。本実施例では、着座センサ2として感圧フィルム等を用いた荷重センサを用いている。
図3は子機10の構成要素のブロック図を示す。着座により着座センサ2で発生したアナログ信号は、ワイアハーネスを介して着座信号受信部12に送られ、子機10に入力される。子機10は1列が2~3席からなる各後部座席シートの下部に1台づつ設置されている。着座センサ2と子機10を任意で助手席の下部に設置してもよい。
【0020】
一方、各座席のシートベルトのバックルには、バックルの着脱状態を検知するシートベルト装着センサ4が付属している。このセンサは、バックル内に組込まれたリードスイッチにより、対向するシートベルトのタングの出入りを磁気的に検知する方式のものである。シートベルト装着センサ4で検知されたオンオフ状態の信号が、ワイアハーネスを介して子機10のシートベルト装着信号受信部14に入力される。なお、本実施例では、着座信号とシートベルト装着信号はワイアハーネスを介して子機10に送信しているが、簡便な無線方式(例えばRFID)を用いて信号を子機10に送ってもよい。
【0021】
これらの着座信号とシートベルト装着信号は、座席状態信号として無線信号生成部16で纏めて符号化され、座席毎に個別のチャンネルを用いて子機10のアンテナから主装置20に無線送信される。座席の位置はチャンネル番号によって識別される。本実施例では無線方式として2.4GHzのWi-Hiを用いているが、FM無線、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)等の他の方式の無線を用いることもできる。しかし、2.4GHzのWi-Hiを用いた方が、省電力、通信速度の点で好ましい。
【0022】
本実施例のような、通常の方法で検出した着座信号とシートベルト装着信号を有線で子機10に送信し、これを符号化して無線送信する方法は、例えばRFIDの信号を直接ダッシュボードへ送信する方法(特許文献2)に比べて、通信の安定性や信頼性をより高めることができる。また、RFIDに電波で供電する必要もなく、子機10から主装置20への一方向通信だけで機能するため、子機10および主装置20の構成の簡略化が可能となる
【0023】
子機10の各センサからの出力信号の検知、符号化等の信号処理回路の電源は、子機10に内蔵されたバッテリー18により供給されている。自動車のエンジンが停止している間はスリープ状態にされ、バッテリー18の消費電力を最小にしているが、エンジンを始動した時に、内蔵された振動センサ(3D加速度センサ)17がエンジンの固有の振動を検知し、これにより子機10はスタンバイ状態となる。エンジンが停止され振動が無くなった時にはスリープ状態に戻る。さらに、後述するように、搭乗者が全員シートベルトの装着を完了、あるいは警告音により搭乗者がシートベルトを装着して警告音が消去されて着座表示が消えた後にも子機10がスリープ状態に戻るようにすれば、バッテリーの消費電力をさらに低減することができる。また、バッテリー18の残量が一定値以下になった場合は、表示装置25に点灯または点滅で運転者に警告するようにすることが望ましい。なお、本実施例では子機10の電源にバッテリーを用いたが、これに限定されることはなく、ワイアハーネスにより床下から電源を供給してもよい。この場合は、子機10は車両の電源のオンとともにオンになるので、振動センサ17と上記のようなスリープ状態の設定は省略できる。
【0024】
主装置20(
図2)は、ダッシュボードの内部に取り付けるのが好ましいが、ケースに収容して外付けにしてもよい。電源は車両電源30を利用し、これがオンになった時に同時にオンになる。表示部25はコネクタ/ケーブルにより主装置20と連結され、表示信号を受信する。
図4は主装置20の構成を示すブロック図である。子機10から発信された無線信号を、内蔵するアンテナ21で受信し、信号受信部22で電気信号に変換し、受信した着座状態とシートベルト装着状態を情報処理部23で判別し、座席状態を表示装置25に表示する。さらに、主装置20は、車両本体の車速センサの信号27を有線で受信できるようにされており、シートベルト未装着の搭乗者がいる場合、車速が一定速度、例えば40km/時を超えた時に警告音生成部28で警告音を発生するようにされている。
【0025】
表示装置25はダッシュボードの運転者が確認しやすい位置に取り付けられる。表示装置25は、各座席の空間的な位置に対応させてLED(発光ダイオード)を配列し、その点灯あるいは点滅、消灯によって状態を表示することが好ましい。
【0026】
図5に子機10と主装置20の動作のシーケンスを示すフローチャートを示す。これを参照して、標準的な動作のシーケンスについて以下に説明する。
1. 車両の電源が入った時に(S201)、表示装置25の全座席のLEDが一定時間(数秒間)点灯し(S202)、主装置25の電源が入ったことを運転者に知らせる。
2. 子機10は車両のエンジンの振動を検知して(S102)、スリープ状態(S101)からスタンバイ状態(S103)に移行する。
3. 搭乗者が後部座席に着座すると、子機10は荷重センサ2によりこれを検知して(S104)、主装置20に、表示装置25の該当する座席位置のLEDを点灯するように信号を送信し(S105)、これを受信した主装置20は当該LEDを点灯させる(S204)。
【0027】
4-1. 搭乗者がシートベルトを装着し、子機10がシートベルトの装着を検出すると(S107)、主装置20にシートベルト装着の信号を送信し(S108)、主装置20はこれを受信して(S207)、表示装置25の点灯したLEDは消灯する(S208)。シートベルトが未装着あるいは装着の仕方が不完全な場合は(S207、No)、該当座席のLEDは点灯したままとなる。
4-2. 搭乗者がシートベルトを未装着のまま運転者が車両を発進させ、車速が一定値(例えば40km/時)を超えると(S205)、主装置20はこの信号を検知して警告音を発生する(S206)。警告音により搭乗者がシートベルトを装着すると、(4-1)のシーケンスに移行する。
【0028】
5. エンジンを停止せずに停車して搭乗者が下車した場合は、子機10はスタンバイ状態(S103)に戻る。また、同一の搭乗者が再度または別の搭乗者が乗車した時には、(3)のシーケンスに戻る。
6. 車両が停車してエンジンが停止すると(S209)、上記のシーケンスは終了する。
【0029】
本発明の説明は上記実施例に基づいてなされたが、本発明はそれに限定されず、本発明の精神と添付の請求の範囲の範囲内で種々の変更、及び修正をすることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0030】
1 後部座席シート
2 着座センサ
4 シートベルト装着センサ
10 子機
12 着座信号受信部
14 シートベルト装着信号受信部
16 無線信号生成部
17 振動センサ
18 バッテリー
21 アンテナ
20 主装置
22 信号受信部
23 情報処理部
25 表示装置
27 車速センサ
28 警告音生成部
30 車両電源