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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090821
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】水素製造システムおよび水素製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/042 20210101AFI20240627BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240627BHJP
   C25B 15/027 20210101ALI20240627BHJP
【FI】
C25B1/042
C25B9/00 A
C25B15/027
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206956
(22)【出願日】2022-12-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健
(72)【発明者】
【氏名】浅野 耕司
(72)【発明者】
【氏名】中桐 基裕
(72)【発明者】
【氏名】小城 育昌
(72)【発明者】
【氏名】原 伸英
(72)【発明者】
【氏名】勝田 理史
(72)【発明者】
【氏名】島田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】水谷 安伸
(72)【発明者】
【氏名】申 ウソク
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BB03
4K021BB05
4K021BC01
4K021BC05
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】水素製造システムおよび水素製造方法において、水素製造時の電気エネルギーコストの低減を図ると共に二酸化炭素の発生を抑制する。
【解決手段】600℃以上の熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて水蒸気を加熱する熱交換器と、電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスする熱中立点の電位より低い電圧を高温水蒸気電解セルに印加して、600℃以上の水蒸気を電解して水素を製造する高温水蒸気電解装置と、水蒸気により高温水蒸気電解装置を加熱する加熱装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
600℃以上の熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて水蒸気を加熱する熱交換器と、
電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスする熱中立点の電位より低い電圧を高温水蒸気電解セルに印加して、600℃以上の前記水蒸気を電解して水素を製造する高温水蒸気電解装置と、
前記水蒸気により前記高温水蒸気電解装置を加熱する加熱装置と、
を備える水素製造システム。
【請求項2】
前記加熱装置は、前記高温水蒸気電解装置の運転温度より高い温度の前記水蒸気により前記高温水蒸気電解装置を加熱する、
請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項3】
前記加熱装置は、前記高温水蒸気電解装置が水素を製造するときに吸熱反応により損失する熱エネルギーを補う、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項4】
前記高温水蒸気電解装置は、OCVより高く、前記熱中立点の電位より低い電圧を前記高温水蒸気電解セルに印加することで前記水蒸気を電解して水素を製造する、
請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項5】
前記高温水蒸気電解装置は、水素の製造に必要なモル数以上のモル数の水蒸気が供給される、
請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項6】
前記高温水蒸気電解装置は、電解質層と、水素ガス拡散電極層と、酸素ガス拡散電極層とを有し、前記加熱装置は、前記水蒸気により前記水素ガス拡散電極層を加熱し、前記水蒸気と加熱空気の少なくともいずれか一方により前記酸素ガス拡散電極層を加熱する、
請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項7】
前記加熱装置は、前記高温水蒸気電解装置に供給される前記水蒸気の温度が前記高温水蒸気電解装置の運転温度より高い温度となるように前記水蒸気の流量と前記熱媒体の流量の少なくともいずれか一方を制御する、
請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項8】
前記熱エネルギーを発生可能な熱源としては、高温ガス炉があり、前記熱交換器は、高温ガス炉で生成された高温ヘリウムの熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して水蒸気を加熱する、
請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項9】
600℃以上の熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて水蒸気を加熱する熱交換器と、
高温水蒸気電解セルに電圧を印加して前記水蒸気を電解して水素を製造する高温水蒸気電解装置と、
前記水蒸気により前記高温水蒸気電解装置を加熱する加熱装置と、
を備え、
前記高温水蒸気電解装置は、水素の製造に必要なモル数以上のモル数の水蒸気が供給される、
水素製造システム。
【請求項10】
600℃以上の熱エネルギーを発生させる工程と、
前記熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して水蒸気を600℃以上に過熱する工程と、
前記水蒸気により高温水蒸気電解セルを加熱する工程と、
前記高温水蒸気電解セルに電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスする熱中立点の電位より低い電圧を前記高温水蒸気電解セルに印加することで前記水蒸気を電解して水素を製造する工程と、
を有する水素製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素製造システムおよび水素製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素製造技術の一つとして、高温水蒸気電解法がある。電解法は、原料が安価であり、水素製造プロセスにおいて二酸化炭素(CO)が発生しないというメリットがある。しかし、電解法は、電気分解により水素を生成するものであるため、電気エネルギーのコストが高いという課題がある。そこで、700℃以上の高温水蒸気を電気分解することで、電気分解に要する電気エネルギーを減少する高温水蒸気電解法が考えられる。
【0003】
ところが、700℃以上の高温水蒸気を生成することは困難であり、従来、ボイラや電気炉などにより水を昇温して水蒸気を生成し、この水蒸気を電気分解して水素を生成している。また、水の分解は、吸熱反応であり、1モルの水を電気分解するときに、外部から286キロジュールの熱を供給する必要がある。そのため、従来、水の電気分解時の吸熱と水蒸気の顕熱を高温水蒸気電解セルのジュール熱で補いながら、水蒸気を700℃~900℃として電気分解している。このような従来の水素製造装置として、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-041202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高温水蒸気電解法による水素製造装置は、高温水蒸気を利用することによって水の電気分解にかかる電気エネルギーを減少させることができる。しかし、現実に、従来の水素製造装置は、水の電気分解の運転温度に相当する温度の高温水蒸気の生成エネルギーを必要な電気エネルギーにより賄うと共に、水の電気分解の吸熱反応も電気エネルギーで賄っている。すなわち、従来の高温水蒸気電解セルは、水電解の吸熱と水電解セルの発熱がバランスする熱中立点の電位、または、熱中立点における電位以上の電位で運転しており、電気エネルギーを多く消費する。高温水蒸気電解法による水素製造は、コストの大半が電力であり、この電力を再生可能エネルギーでその大半を賄うことができれば、二酸化炭素を削減することができる。しかし、再生可能エネルギーは、電力の供給が不安定であるため、大規模で安定的な水素製造に適用することは困難である。一方で、火力発電システムにより生成した電気エネルギーは、二酸化炭素の発生が伴ってしまう。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、水素製造時の電気エネルギーコストの低減を図ると共に二酸化炭素の発生を抑制する水素製造システムおよび水素製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の水素製造システムは、600℃以上の熱エネルギーにより加熱された熱媒体を用いて水蒸気を加熱する熱交換器と、電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスする熱中立点の電位より低い電圧を高温水蒸気電解セルに印加して、600℃以上の前記水蒸気を電解して水素を製造する高温水蒸気電解装置と、前記水蒸気により前記高温水蒸気電解装置を加熱する加熱装置と、を備える。
【0008】
また、本開示の水素製造方法は、600℃以上の熱エネルギーを発生させる工程と、前記熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して水蒸気を600℃以上に過熱する工程と、前記水蒸気により高温水蒸気電解セルを加熱する工程と、前記高温水蒸気電解セルに電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスする熱中立点の電位より低い電圧を前記高温水蒸気電解セルに印加付与することで前記水蒸気を電解して水素を製造する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の水素製造システムおよび水素製造方法によれば、水素製造時の電気エネルギーコストの低減を図ることができると共に、二酸化炭素の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態の水素製造システムを表す概略構成図である。
図2図2は、高温水蒸気電解装置における電圧と熱エネルギーとの関係を表すグラフである。
図3図3は、高温水蒸気電解装置における無負荷運転から熱中立点における電位より低い1.1V運転に移行したときの高温水蒸気電解セルの温度変化を表すグラフである。
図4図4は、高温水蒸気電解装置における無負荷運転から熱中立点における電位より低い1.1V運転に移行したときの高温水蒸気電解セルの電圧変化を表すグラフである。
図5図5は、高温水蒸気電解装置の空気極への流体の条件を変化させたときの高温水蒸気電解セルに流れる電流変化を表すグラフである。
図6図6は、高温水蒸気電解装置における水蒸気利用率に対するOCV、熱中立点における電位より低い電圧として例えば1.1VとOCVとのポテンシャル差の関係を表す表である。
図7図7は、高温水蒸気電解装置の水素極に供給する水蒸気濃度を変化させたときの電流変化を表すグラフである。
図8図8は、第2実施形態の水素製造システムを表す概略構成図である。
図9図9は、第3実施形態の水素製造システムを表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
[第1実施形態]
<水素製造システム>
図1は、第1実施形態の水素製造システムを表す概略構成図である。
【0013】
第1実施形態において、図1に示すように、水素製造システム10は、熱源11と、熱交換器12と、固体電解質型の高温水蒸気電解装置(SOEC)13と、加熱装置14とを備える。
【0014】
熱源11は、高温ガス炉であり、900℃以上の熱エネルギーを発生可能である。なお、熱源11は、高温ガス炉に限定されるものではなく、600℃以上の熱エネルギーを発生可能なものであればよい。熱源としては、例えば、電気炉、ヘリオスタット式太陽熱集光装置、ボイラおよびボイラ排熱、ガスタービン排熱などを適用してもよい。
【0015】
熱源11としての高温ガス炉は、燃料の被覆にセラミックス材料を使用し、冷却材をヘリウムとし、減速材を黒鉛とする原子炉である。高温ガス炉は、900℃以上の熱媒体としてのヘリウムガスを生成可能である。熱源11としての高温ガス炉は、循環経路L11が連結される。循環経路L11は、熱源11の他に、中間熱交換器21が連結される。中間熱交換器21は、供給経路L12の一端部および戻り経路L13の一端部が連結される。
【0016】
中間熱交換器21は、循環経路L11を流れる1次ヘリウム(1次熱媒体)と供給経路L12のおよび戻り経路L13を流れる2次ヘリウム(2次熱媒体)との間で熱交換を行う。すなわち、中間熱交換器21は、循環経路L11を流れる、例えば、950℃の1次ヘリウムにより供給経路L12のおよび戻り経路L13を流れる2次ヘリウムを、例えば、900℃に加熱する。
【0017】
供給経路L12は、他端部に供給ヘッダ22が連結される。戻り経路L13は、他端部に戻りヘッダ23が連結される。戻り経路L13は、循環機24が設けられる。水素製造システム10は、熱源11で発生した900℃以上の熱エネルギーで加熱された熱媒体としての2次ヘリウムを用いて水素を製造するものである。
【0018】
高温水蒸気電解装置13は、固体電解質型電解セルとしての高温水蒸気電解セル51を用い、約700℃~900℃の高温で水電解により水素製造するものである。高温水蒸気電解装置13は、電解質層51aと、多孔質水素電極層51bと、多孔質酸素電極層51cとを有する。
【0019】
蒸気発生器31は、2次ヘリウムの熱エネルギーにより水を加熱して水蒸気を生成する。蒸気発生器31は、水供給経路L31が連結されると共に、第1水蒸気供給経路L32の一端部が連結される。熱交換器12は、第1熱交換器32と、第2熱交換器33とを有する。第2熱交換器33は、水素側熱交換器34と、酸素側熱交換器35とを有する。第1熱交換器32は、第1水蒸気供給経路L32の他端部が連結されると共に、第2水蒸気供給経路L33の一端部が連結される。第2水蒸気供給経路L33は、他端部が水素側熱交換器34に連結される。水素側熱交換器34は、水素側水蒸気供給経路L34の一端部が連結される。
【0020】
第1熱交換器32は、2次ヘリウムの熱エネルギーにより水蒸気を過熱して過熱水蒸気を生成する。第2熱交換器33を構成する水素側熱交換器34は、2次ヘリウムの熱エネルギーにより過熱水蒸気をさらに過熱する。また、第2熱交換器33を構成する酸素側熱交換器35は、2次ヘリウムの熱エネルギーにより加熱空気をさらに加熱する。水蒸気供給経路L32、L33にて、水蒸気の流れ方向の上流側に第1熱交換器32が配置され、第1熱交換器32より下流側に第2熱交換器33が配置される。第2熱交換器33としての水素側熱交換器34と酸素側熱交換器35は、隣接して配置される。水素側熱交換器34と酸素側熱交換器35から高温水蒸気電解セルの多孔質水素電極層51bおよび多孔質酸素電極層51cに高温水蒸気を供給するため、隣接して設置することで放熱を軽減できる。水素側熱交換器34は、2次ヘリウムの熱エネルギーにより過熱水蒸気を過熱し、酸素側熱交換器35は、2次ヘリウムの熱エネルギーにより加熱空気を加熱する。
【0021】
高温水蒸気電解装置13にて、高温水蒸気電解セル51は、水素側水蒸気供給経路L34および酸素側水蒸気供給経路L43の他端部が連結される。水素側水蒸気供給経路L34は、多孔質水素電極層51bの入口側に連結され、酸素側水蒸気供給経路L43は、多孔質酸素電極層51cの入口側に連結される。多孔質水素電極層51bは、水素側水蒸気供給経路L34から供給された過熱水蒸気により加熱される。高温水蒸気電解装置13は、水素ガス排出経路L35と酸素ガス排出経路L44が連結される。高温水蒸気電解装置13は、多孔質水素電極層51bの出口側に水素ガス排出経路L35が連結され、多孔質酸素電極層51cの出口側に酸素ガス排出経路L44が連結される。水素ガス排出経路L35は、熱回収器36およびコンデンサ37が設けられる。熱回収器36は、発生した水素の熱を回収し、例えば、第1水蒸気供給経路L32を流れる水蒸気を加熱する。熱回収器38は、発生した酸素の熱を回収し、空気を加熱する。コンデンサ37は、高温水蒸気電解セル51から水素と共に排出される余剰の水蒸気を冷却して水とする。高温水蒸気電解セル51の多孔質水素電極層51bで水素が生成するため、コンデンサ37で水蒸気を凝縮させることで、水蒸気と水素が分離されることになり、高純度の水素が精製される。なお、コンデンサ37で発生した水は、循環経路L36により蒸気発生器31に戻される。
【0022】
また、熱回収器38は、気体供給経路L41の一端部が連結される。気体供給経路L41は、他端部が大気開放される。気体供給経路L41は、循環機41が設けられる。熱回収器38は、気体供給経路L42により酸素側熱交換器35に連結される。循環機41が駆動すると、気体(空気)は、気体供給経路L41を通して熱回収器38に供給され、酸素ガス排出経路L44を流れる気体により加熱される。加熱された気体は、気体供給経路L42により酸素側熱交換器35でさらに加熱されて多孔質酸素電極層51cに供給される。加熱された気体は、多孔質酸素電極層51cに供給されて加熱すると共に、生成された酸素を酸素ガス排出経路L44に排出する。
【0023】
また、高温水蒸気電解装置13は、電力供給経路L51が接続され、外部から電力(電気エネルギー)が供給可能である。詳細は後述するが、高温水蒸気電解装置13は、電力供給経路L51から、ジュール熱による発熱と吸熱がバランスする熱中立点の電位より低い電圧が印加されて水蒸気を電解して水素を製造する。
【0024】
高温水蒸気電解装置13は、2次ヘリウムの熱エネルギーにより加熱された水蒸気を用いると共に、電力供給経路L51から供給された電気エネルギーを用いて水素を製造する。加熱装置14は、2次ヘリウムの熱エネルギーにより過熱された水蒸気を用いて高温水蒸気電解装置13の高温水蒸気電解セル51を加熱する。詳細は後述するが、加熱装置14は、高温水蒸気電解装置13の運転温度より高い温度の過熱水蒸気により高温水蒸気電解装置13を加熱することで、高温水蒸気電解装置13が水素を製造するときに吸熱反応により損失する熱エネルギーを補う。
【0025】
供給ヘッダ22は、熱媒体供給経路L14により第2熱交換器33が連結される。熱媒体供給経路L14は、下流端部が2つに分岐し、一方が水素側熱交換器34に連結され、他方が酸素側熱交換器35に連結される。第2熱交換器33は、熱媒体供給経路L15により蒸気発生器31に連結される。熱媒体供給経路L15は、上流端部が2つに分岐し、一方が水素側熱交換器34に連結され、他方が酸素側熱交換器35に連結される。蒸気発生器31は、熱媒体供給経路L16により戻りヘッダ23に連結される。すなわち、供給ヘッダ22の2次ヘリウムは、熱媒体供給経路L14により第2熱交換器33(水素側熱交換器34、酸素側熱交換器35)に供給されて水蒸気等を加熱し、第2熱交換器33から熱媒体供給経路L15により蒸気発生器31に供給されて水を加熱し、蒸気発生器31から熱媒体供給経路L16により戻りヘッダ23に戻される。
【0026】
また、供給ヘッダ22は、熱媒体供給経路L17により第1熱交換器32が連結される。第1熱交換器32は、熱媒体供給経路L18により戻りヘッダ23が連結される。すなわち、供給ヘッダ22の2次ヘリウムは、熱媒体供給経路L17により第1熱交換器32に供給されて水蒸気を過熱し、熱媒体供給経路L18により戻りヘッダ23に戻される。
【0027】
加熱装置14は、少なくとも水蒸気を加熱する熱交換器12と循環機24とから構成される。加熱装置14は、特に、第2熱交換器33としての水素側熱交換器34および酸素側熱交換器35により構成される。加熱装置14は、循環機24により2次ヘリウムが循環することで、第2熱交換器33(水素側熱交換器34、酸素側熱交換器35)により加熱された過熱水蒸気等を高温水蒸気電解セル51(多孔質水素電極層51b、多孔質酸素電極層51c)に供給し、高温水蒸気電解セル51を加熱する。
【0028】
高温水蒸気電解セル51は、水素側水蒸気供給経路L34から高温の過熱水蒸気が多孔質水素電極層51bに供給される。高温水蒸気電解セル51は、電力供給経路L51から電力が供給されることで、多孔質水素電極層51bおよび多孔質酸素電極層51cに電圧が印加される。高温水蒸気電解セル51は、電圧が印加されることで、水蒸気が多孔質水素電極層51bで電気分解され、水素が発生する。発生した水素は、水素ガス排出経路L35に排出される。一方、多孔質水素電極層51bで電気分解されて発生した酸素イオンは、電解質層51aを透過し、多孔質酸素電極層51cで酸素が発生し、発生した酸素が酸素ガス排出経路L44に排出される。
【0029】
高温水蒸気電解装置13は、下記式に応じた電気分解反応に基づいて水素と酸素が生成される。
O→H+1/2O
【0030】
また、熱媒体供給経路L14は、2つに分岐した一方が水素側熱交換器34に連結され、他方が酸素側熱交換器35に連結される。熱媒体供給経路L14は、水素側熱交換器34と酸素側熱交換器35に至る各分岐管にそれぞれ流量調整弁61、62が設けられる。第2水蒸気供給経路L33は、流量調整弁63が設けられ、気体供給経路L42は、流量調整弁64が設けられる。水素側温度調節器65は、水素側水蒸気供給経路L34を流れる過熱水蒸気(熱媒体)の温度が所定温度になるように流量調整弁61、63の開度を制御する。酸素側温度調節器66は、酸素側水蒸気供給経路L43を流れる加熱気体(熱媒体)の温度が所定温度になるように流量調整弁62、64の開度を制御する。温度センサ67は、高温水蒸気電解セル51の温度を計測し、水素側温度調節器65および酸素側温度調節器66に出力する。水素側温度調節器65および酸素側温度調節器66は、温度センサ67が計測した高温水蒸気電解セル51の温度に基づいて流量調整弁61、62、63、64の開度を制御する。
【0031】
<水素製造方法の原理>
図2は、高温水蒸気電解装置における電圧と熱エネルギーとの関係を表すグラフ、図3は、高温水蒸気電解装置における無負荷運転から熱中立点における電位より低い1.1V運転に移行したときの高温水蒸気電解セルの温度変化を表すグラフ、図4は、高温水蒸気電解装置における無負荷運転から熱中立点における電位より低い1.1V運転に移行したときの高温水蒸気電解セルの電圧変化を表すグラフである。
【0032】
高温水蒸気電解装置13は、燃料電池(SOFC)の反応の逆反応であり、下記式(1)(2-1)(2-2)に示すような反応により蒸気を電気分解して水素と酸素を発生させる。
ΔH=ΔG+TΔS・・・・・(1)
ΔH:エンタルピー[kJ/mol]
ΔG:ギブス自由エネルギー[kJ/mol](電気エネルギーに相当)
TΔS:エントロピー[kJ/mol](熱エネルギーに相当)
SOEC水素極:HO+2e → H+O2-・・・・(2-1)
SOEC酸素極:O2- → 1/2O+2e・・・・・(2-2)
E=ΔH/2F・・・・・(3)
F:ファラデー定数
【0033】
水の電気分解は、吸熱反応であるため、一般的な高温水蒸気電解装置は、ジュール熱による発熱と吸熱がバランスする熱中立点における電位と同等の電圧(電位)1.3V以上で運転する。熱中立点は、上記式(3)で与えられ、エンタルピーによって変わるが、800℃における熱中立点は、理論値として約1.29Vとなり、実際の高温水蒸気電解装置は、放熱による熱ロスがあるため、吸熱とバランスさせるには熱中立点における電位より高い電圧で運転する。なお、水の温度が高くなると、熱中立点の電位も高くなる。
【0034】
図2に示すように、高温水蒸気電解に伴う吸熱は、電圧の上昇に応じて一次関数(比例)で下降する。電気分解に伴って発生するジュール発熱は、電圧の上昇に応じて二次関数で上昇する。そのため、ジュール発熱と吸熱を合わせた熱収支は、電圧の上昇に応じて下降してから上昇する。
【0035】
従来の水素製造システムは、高温の熱源(高温ガス炉)11が存在しないことから、熱中立点における電位以上で、高温水蒸気電解装置で発生するジュール発熱による水を電気分解するときの吸熱反応を補っている。すなわち、従来の高温水蒸気電解装置は、熱中立点N以上の電圧で運転している。
【0036】
一方、第1実施形態の水素製造システム10は、熱源(高温ガス炉)11を有することから、熱源11で発生した600℃以上の熱エネルギーにより加熱された高温ヘリウムを用いて水蒸気および高温水蒸気電解装置13(高温水蒸気電解セル51)を加熱し、水を電気分解するときの吸熱反応を補うことができる。そのため、水素製造システム10は、熱中立点N以下である運転点NLの電圧で運転する。運転点NLでは、熱源11から高温熱を供給するため、必要以上に電気エネルギーを熱エネルギー(ジュール発熱)に変換することなく、水の電気分解に用いる電気エネルギーを低減することができる。
【0037】
具体的に、水素製造システム10は、高温水蒸気電解装置15の運転温度より高い温度の水蒸気により高温水蒸気電解装置15を加熱すると共に、高温水蒸気電解装置13(高温水蒸気電解セル51)に対して発熱と吸熱がバランスする熱中立点より低い電圧を付与して水蒸気を電解し、水素を製造する。すなわち、加熱装置14は、高温水蒸気電解装置15が水素を製造するときに吸熱反応により損失する熱エネルギーを補う。
【0038】
ここで、熱中立点より低い電圧とは、高温水蒸気電解装置15に対する無負荷電圧(OCV=Open circuit voltage)から熱中立点での電圧(N)未満の範囲で電圧である。好ましくは、1.0V~1.2Vの範囲の電圧である。
【0039】
すなわち、水素製造システム10は、前述した式(1)のTΔSで表される吸熱を熱源11の2次ヘリウムにより製造する水蒸気から供給することで、電気エネルギーの消費を低減する。つまり、図3および図4に示すように、時間t1にて、高温水蒸気電解装置15を無負荷運転から1.1V運転に移行すると、高温水蒸気電解装置15を熱中立点における電位以下の電圧であるため、高温水蒸気電解セル51の電気抵抗で消費されるジュール熱が低下する、しかし、高温水蒸気電解セル51のジュール熱が小さくなると吸熱が勝るため、時間t1から時間t2にかけて、高温水蒸気電解セル51の温度が低下していき、高温水蒸気電解セル51に流れる電流が小さく(図4参照)なり、高温水蒸気電解セル51に流れる電流に比例して水素製造量が低下する。図3および図4は、無負荷運転から1.1V運転に移行したときの実施形態であり、高温水蒸気電解装置を熱中立点における電位以下での運転する場合においては、図3のように、水蒸気温度を後で高くしてもよく、高温水蒸気電解装置13の温度よりも予め高い温度の水蒸気を供給してもよい。
【0040】
そこで、水素製造システム10は、吸熱リッチとなる熱中立点以下の電圧で高温水蒸気電解装置15を運転するとき、時間t2にて、高温水蒸気電解セル51の運転温度よりも高い温度の水蒸気を高温水蒸気電解セル51に供給する。すると、高温水蒸気電解セル51は、時間t2から時間t3にかけて、吸熱分を熱補償する運転を行うこととなり、高温水蒸気電解セル51の温度低下を抑制し、高温水蒸気電解セル51に流れる電流が初期電流に復帰するため、水素製造量の低下を抑制する。第1実施形態の水素製造システム10は、従来に比べて、消費する電気エネルギーのうちTΔSに相当する吸熱分のエネルギーを熱源11から供給するため、高温水蒸気電解セル51で消費する電気エネルギーが少なくなる。
【0041】
図5は、高温水蒸気電解装置の空気極への流体の条件を変化させたときの高温水蒸気電解セルに流れる電流変化を表すグラフである。
【0042】
一般的な水素製造システムは、上述したように、熱中立点における電位以上の電圧で運転することで、電気抵抗によるジュール熱で、高温水蒸気電解セルそのものの自己発熱による吸熱を賄うため、酸素極に熱供給することは不要であった。ここで、従来、高温水蒸気電解セルの酸素極に対して空気を供給するが、空気の供給目的は熱供給でなく、高温水蒸気電解セルの酸素極で発生する酸素の排出である。
【0043】
第1実施形態の水素製造システム10は、水電解時の吸熱を高温の水蒸気などにより補う必要があり、高温水蒸気電解セル51の酸素極に熱供給する必要がある。これは、上述した式(2-2)にて、酸素極ではエントロピーが増加する反応となるため、酸素極での吸熱反応が大きいものと思われる。そのため、熱中立点における電位より低い電圧で運転する高温水蒸気電解セル51は、酸素極に高温水蒸気電解セル51の運転温度以上の水蒸気もしくは空気を供給することによって積極的に熱供給し、酸素極の表面で生成する酸素を排出することで酸素分圧が下げることとなり、ネルンスト式より電流が流れやすくなる。
【0044】
すなわち、図5に示すように、酸素極に供給する熱媒体の種類に応じて高温水蒸気電解セル51の電流が変化する。例えば、熱媒体が過熱水蒸気(蒸気リッチ/水蒸気、酸素、窒素)であると、電流が高くなる。一方、熱媒体が加熱空気(蒸気ゼロ/酸素、窒素)であると、電流が過熱水蒸気より低くなる。そして、熱媒体がない(熱媒体ゼロ)と、電流が加熱空気よりさらに低くなる。図5は、酸素極側に流れる酸素の分圧による電解電流の変化であり、蒸気リッチ側は酸素分圧が低く、熱媒体ゼロは酸素のみの高酸素分圧側である。式(4)のネルンスト式より酸素分圧が小さくなると、ポテンシャルも小さくなるので、高温水蒸気電解セルに印加する電位とのポテンシャル差が大きくなり、電解電流が大きくなる。
【0045】
図6は、高温水蒸気電解装置における水蒸気利用率に対するOCV、熱中立点における電位より低い電圧として例えば1.1VとOCVとのポテンシャル差の関係を表す表、図7は、高温水蒸気電解装置の水素極に供給する水蒸気濃度を変化させたときの電流変化を表すグラフである。
【0046】
一般的な水素製造システムは、供給するエネルギーを下げたいため、高温水蒸気電解セルに供給する水蒸気量を最小限とし、極力少ない水蒸気量で水素を製造することを目標とする。一般的な水素製造システムにて、供給する水蒸気に対して水素製造に用いられる水蒸気である水蒸気利用率の目標は、80%以上である。
【0047】
一方、第1実施形態の水素製造システム10は、高温水蒸気電解セル51に対して熱源11により高温の熱を大量に供給することができるため、水蒸気利用率を上げる必要がない。そこで、水素製造システム10は、水素製造に必要なモル数以上の水蒸気を高温水蒸気電解セル51に供給する。高温水蒸気電解セル51に大量の水蒸気を供給する場合、下記式(4)のネルンスト式より水蒸気分圧が増えることによって、OCVが低下することになり、高温水蒸気電解セル51に印加される電圧とのポテンシャル差が大きくなり、電流が流れやすくなる効果がある。
E=E+RT/zF・LN(aH×aO1/2/aHO)・・・・・(4)
【0048】
図6は、高温水蒸気電解セル51に供給する水蒸気の温度が750℃のとき、水素分圧および酸素分圧と水分圧とOCVとの関係、また、高温水蒸気電解セル51に印加する電圧が1.1Vの場合、OCVと1.1Vとのポテンシャル差をまとめたものである。図6に示すように、水蒸気利用率が低下するほどOCVが低下するため、高温水蒸気電解セル51に印加する電圧1.1Vとのポテンシャル差が大きくなることがわかる。ポテンシャル差が大きくなるため、高温水蒸気電解セル51に流れる電流も大きくなり、結果として水素製造量が増加することになる。
【0049】
また、図7に示すように、高温水蒸気電解セル51の水素極に供給する水蒸気濃度が低下するほど、電流が低下する。例えば、水蒸気濃度が65%(HO/N+H+HO:65%)であると、電流が高い。水蒸気濃度が50%(HO/N+H+HO:50%)、水蒸気濃度が30%(HO/N+H+HO:30%)、20%(HO/N+H+HO:20%)、10%(HO/N+H+HO:10%)、5%(HO/N+H+HO:5%)と低下すると、電流も低下する。
【0050】
<水素製造方法>
本実施形態の水素製造方法は、600℃以上の熱エネルギーを発生させる工程と、熱エネルギーにより加熱された2次ヘリウム(熱媒体)を使用して水蒸気を600℃以上に過熱する工程と、水蒸気により高温水蒸気電解セル51を加熱する工程と、高温水蒸気電解セル51に発熱と吸熱がバランスする熱中立点の電位より低い電圧を高温水蒸気電解セル51に印加することで水蒸気を電解して水素を製造する工程とを有する。
【0051】
具体的に説明すると、図1に示すように、熱源11としての高温ガス炉は、例えば、950℃の1次ヘリウムを生成する。高温の1次ヘリウムは、循環経路L11を流れ、中間熱交換器21にて、戻り経路L13を流れる2次ヘリウムと交換を行い、2次ヘリウムを、例えば、890℃まで加熱する。中間熱交換器21で熱交換された2次ヘリウムは、供給経路L12を流れ、供給ヘッダ22に、例えば、890℃程度で供給される。
【0052】
循環機24が駆動すると、高温の2次ヘリウムが中間熱交換器21で加熱されながら循環する。供給ヘッダ22の2次ヘリウムは、熱媒体供給経路L14により第2熱交換器33に供給されて水蒸気を過熱し、第2熱交換器33から熱媒体供給経路L15により蒸気発生器31に供給される。蒸気発生器31は、水供給経路L31などから供給された水を高温の2次ヘリウムにより加熱して水蒸気を生成する。また、供給ヘッダ22の2次ヘリウムは、熱媒体供給経路L17により第1熱交換器32に供給され、第1熱交換器32は、蒸気発生器31から供給された水蒸気を過熱する。
【0053】
すなわち、蒸気発生器31は、水供給経路L31から供給された水を、例えば、180℃に加熱して水蒸気を生成する。水蒸気は、第1水蒸気供給経路L32により第1熱交換器32に供給され、ここで600℃に過熱され、第2水蒸気供給経路L33により水素側熱交換器34に供給される。水蒸気は、水素側熱交換器34により、例えば、850℃に過熱され、850℃の高温水蒸気として水素側水蒸気供給経路L34により高温水蒸気電解セル51の多孔質水素電極層51bに供給される。
【0054】
一方、循環機41が駆動すると、気体(空気)が気体供給経路L41により熱回収器38に供給され、熱回収器38は、多孔質酸素電極層51cから生成する高温の酸素等により加熱される。加熱された気体は、気体供給経路L42により酸素側熱交換器35に供給される。気体は、酸素側熱交換器35により、例えば、800℃に加熱され、800℃の高温気体として高温水蒸気電解セル51の多孔質酸素電極層51cに供給される。
【0055】
高温水蒸気電解セル51にて、多孔質水素電極層51bは、水素側熱交換器34から供給された過熱水蒸気により加熱され、多孔質酸素電極層51cは、酸素側熱交換器35から供給された高温気体により加熱される。また、高温水蒸気電解セル51電力供給経路L51から供給された電力により電圧が印加され、多孔質水素電極層51bに供給された過熱水蒸気を電気分解し、水素と酸素を生成する。
【0056】
このとき、高温水蒸気電解セル51は、過熱水蒸気および加熱気体により高温水蒸気電解セル51の運転温度(例えば、750℃)より高い温度(例えば、800℃)で加熱される。また、高温水蒸気電解セル51は、電力供給経路L51から電力が供給され、多孔質水素電極層51bおよび多孔質酸素電極層51cに熱中立点における電位より低い電圧、具体的には、1.0V~1.2Vの電圧が印加される。すると、多孔質水素電極層51bの過熱水蒸気は、多孔質水素電極層51bで電気分解されて水素が生成され、生成された水素は、水素ガス排出経路L35に排出される。一方、多孔質水素電極層51bで電気分解されて発生した酸素イオンは、電解質層51aを透過し、多孔質酸素電極層51cで酸素が生成し、生成された酸素は、酸素ガス排出経路L44に排出される。
【0057】
高温水蒸気電解セル51は、水素の製造に必要なモル数以上のモル数の水蒸気が供給されることから、生成された水素と共に余剰の水蒸気を水素ガス排出経路L35に排出する。また、高温水蒸気電解セル51は、生成された酸素と共に供給された気体(空気)を酸素ガス排出経路L44に排出する。コンデンサ37は、水蒸気や高温気体を冷却して水とし、循環経路L36により蒸気発生器31に供給する。コンデンサ37で水蒸気を凝縮させるので、水素の純度を上げることができる。
【0058】
また、加熱装置14は、高温水蒸気電解セル51を、高温水蒸気電解セル51の運転温度(例えば、750℃)より高い温度(例えば、800℃)の過熱水蒸気および加熱気体により加熱する必要がある。そこで、温度センサ67は、高温水蒸気電解セル51の温度を計測し、水素側温度調節器65および酸素側温度調節器66に出力する。水素側温度調節器65は、水素側水蒸気供給経路L34を流れる水蒸気の温度が、例えば、800℃以上になるように流量調整弁61、63の開度を制御する。また、酸素側温度調節器66は、酸素側水蒸気供給経路L43を流れる気体の温度が、例えば、800℃以上になるように流量調整弁62、64の開度を制御する。
【0059】
ここで、水素側水蒸気供給経路L34を流れる水蒸気の温度、および酸素側水蒸気供給経路L43を流れる気体の温度は、高温水蒸気電解セル51が想定される運転温度(例えば750℃)になるように制御するものであり、温度センサ67で計測し、水素側温度調節器65および酸素側温度調節器66に出力し、それぞれ流量調整弁61、63および流量調整弁62、64の開度を調整することで、高温水蒸気電解セル51の運転温度を制御している。
【0060】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態の水素製造システムを表す概略構成図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0061】
図8に示すように、水素製造システム10Aは、第1実施形態と同様に、熱源11と、熱交換器12と、高温水蒸気電解装置13と、加熱装置14とを備える。第2実施形態の水素製造システム10Aは、第1実施形態に対して、高温水蒸気電解装置13を構成する多孔質酸素電極層51cへの熱媒体の供給構成を変更するものである。
【0062】
第2水蒸気供給経路L33は、他端部が水蒸気ヘッダ71に連結される。水蒸気ヘッダ71は、水素側水蒸気分岐経路L71および酸素側水蒸気分岐経路L72の一端部が連結される。水素側熱交換器34は、水素側水蒸気分岐経路L71の他端部が連結されると共に、水素ガス排出経路L35の一端部が連結される。酸素側熱交換器35は、酸素側水蒸気分岐経路L72の他端部が連結されると共に、酸素ガス排出経路L44の一端部が連結される。また、水素ガス排出経路L35は、熱回収器36およびコンデンサ37が設けられる。酸素ガス排出経路L44は、熱回収器38およびコンデンサ39が設けられる。コンデンサ37、39で発生した水は、循環経路L36、L45により蒸気発生器31に戻される。
【0063】
第1熱交換器32は、2次ヘリウムの熱エネルギーにより水蒸気を過熱して過熱水蒸気を生成する。第2熱交換器33における水素側熱交換器34は、2次ヘリウムの熱エネルギーにより過熱水蒸気を更に過熱する。また、第2熱交換器33における酸素側熱交換器35は、2次ヘリウムの熱エネルギーにより過熱水蒸気を更に過熱する。水蒸気供給経路L32、L33にて、水蒸気の流れ方向の上流側に第1熱交換器32が配置され、第1熱交換器32より下流側に水蒸気ヘッダ71が配置され、水蒸気ヘッダ71より下流側に第2熱交換器33が配置される。第2熱交換器33としての水素側熱交換器34と酸素側熱交換器35は、水蒸気供給経路L33の下流側に並列に配置される。
【0064】
高温水蒸気電解装置13にて、高温水蒸気電解セル51は、水素ガス排出経路L35および酸素ガス排出経路L44の他端部が連結される。水素ガス排出経路L35は、多孔質水素電極層51bの入口側に連結され、酸素ガス排出経路L44は、多孔質酸素電極層51cの入口側に連結される。そのため、多孔質水素電極層51bおよび多孔質酸素電極層51cは、共に過熱水蒸気が供給される。
【0065】
水素製造システム10Aは、第1熱交換器32に過熱された水蒸気を水蒸気ヘッダ71で分岐して水素側熱交換器34と酸素側熱交換器35に供給して過熱し、高温水蒸気電解セル51に供給する。そのため、高温水蒸気電解セル51は、過熱水蒸気により高温水蒸気電解セル51の運転温度(例えば、750℃)より高い温度(例えば、800℃)で加熱されることとなる。水素製造システム10Aでは、システム構成の簡素化を図ることができる。
【0066】
本実施形態における水素製造システム10Aは、酸素側熱交換器35に供給する熱媒体が過熱水蒸気であるため、第1実施形態と異なり、熱回収器38の下流にコンデンサ39を配置する。高温水蒸気電解セルの多孔質水素電極層51bから生成された水素と共に供給された水蒸気を水素ガス排出経路L35に排出し、多孔質酸素電極層51cから生成された酸素と共に供給された水蒸気を酸素ガス排出経路L44に排出する。コンデンサ37、39で冷却して蒸気を凝縮することによって、それぞれ水素、酸素の純度を上げることができる。特にコンデンサ39によって高純度の酸素を回収することができる。なお、水素製造システム10Aにおけるその他の構成は、第1実施形態の水素製造システム10と同様であり、説明は省略する。
【0067】
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態の水素製造システムを表す概略構成図である。なお、上述した第1実施形態および第2実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0068】
図9に示すように、水素製造システム10Bは、第1実施形態と同様に、熱源11と、熱交換器12と、高温水蒸気電解装置13と、加熱装置14とを備える。第3実施形態の水素製造システム10Bは、第1実施形態に対して、高温水蒸気電解装置13を構成する多孔質酸素電極層51cへの熱媒体の供給構成を変更するものである。
【0069】
第2水蒸気供給経路L33は、他端部が水蒸気ヘッダ71に連結される。水蒸気ヘッダ71は、水素側水蒸気分岐経路L71および酸素側水蒸気分岐経路L72の一端部が連結される。水素側熱交換器34は、水素側水蒸気分岐経路L71の他端部が連結されると共に、水素ガス排出経路L35の一端部が連結される。酸素側熱交換器35は、酸素側水蒸気分岐経路L72の他端部が連結されると共に、酸素ガス排出経路L44の一端部が連結される。また、酸素側水蒸気分岐経路L72は、流量調整弁64より上流側に気体供給経路L42の他端部が連結される。そして、酸素側水蒸気分岐経路L72は、気体供給経路L42の連結部より上流側に逆止弁72が設けられる。逆止弁72は、酸素側熱交換器35側かにら水蒸気ヘッダ71側への加熱空気の逆流を防止する。
【0070】
高温水蒸気電解装置13にて、高温水蒸気電解セル51は、水素ガス排出経路L35および酸素ガス排出経路L44の他端部が連結される。水素ガス排出経路L35は、多孔質水素電極層51bの入口側に連結され、酸素ガス排出経路L44は、多孔質酸素電極層51cの入口側に連結される。そのため、多孔質水素電極層51bは、過熱水蒸気が供給され、多孔質酸素電極層51cは、過熱水蒸気と加熱空気が供給される。
【0071】
水素製造システム10Bは、第1熱交換器32に過熱された水蒸気を水蒸気ヘッダ71で分岐して水素側熱交換器34と酸素側熱交換器35に供給して過熱し、高温水蒸気電解セル51に供給すると共に、気体(空気)を酸素側熱交換器35に供給して加熱し、高温水蒸気電解セル51の多孔質酸素電極層51cに供給する。そのため、高温水蒸気電解セル51は、過熱水蒸気および加熱気体により高温水蒸気電解セル51の運転温度(例えば、750℃)より高い温度(例えば、800℃)で加熱されることとなる。
【0072】
なお、水素製造システム10Bにおけるその他の構成は、第1実施形態の水素製造システム10および第2実施形態の水素製造システム10Aと同様であり、説明は省略する。
【0073】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る水素製造システムは、600℃以上の熱エネルギーにより加熱された2次ヘリウム(熱媒体)を用いて水蒸気を加熱する熱交換器12と、電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスする熱中立点の電位より低い電圧を高温水蒸気電解セル51に印加して、600℃以上の水蒸気を電解して水素を製造する高温水蒸気電解装置13と、水蒸気により高温水蒸気電解装置13を加熱する加熱装置14とを備える。
【0074】
第1の態様に係る水素製造システムによれば、高温水蒸気電解装置13に対して熱中立点の電位より低い電圧を高温水蒸気電解セル51に印加すると共に、600℃以上の2次ヘリウムで加熱された水蒸気により高温水蒸気電解装置13を加熱することで、水素を製造する。そのため、火力発電システムなどにより生成した電気エネルギーの使用量を低減して二酸化炭素の発生を抑制することができると共に、水素製造時の電気エネルギーコストの低減を図ることができる。
【0075】
第2の態様に係る水素製造システムは、第1の態様に係る水素製造システムであって、さらに、加熱装置14は、高温水蒸気電解装置15の運転温度より高い温度の水蒸気により高温水蒸気電解装置15を加熱する。これにより、高温水蒸気電解セル51は、吸熱分を熱補償する運転を行うこととなり、高温水蒸気電解セル51の温度低下を抑制し、電流の低下を抑制し、水素製造量の低下を抑制することができ、その結果、消費する電気エネルギーを低減することができる。
【0076】
第3の態様に係る水素製造システムは、第1の態様または第2の態様に係る水素製造システムであって、さらに、加熱装置14は、高温水蒸気電解装置13が水素を製造するときに吸熱反応により損失する熱エネルギーを補う。これにより、外部から高温水蒸気電解装置13への熱エネルギーの供給量を減少させることができる。
【0077】
第4の態様に係る水素製造システムは、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係る水素製造システムであって、さらに、高温水蒸気電解装置13は、OCVより高く、熱中立点の電位より低い電圧を前記高温水蒸気電解セル51に印加することで水蒸気を電解して水素を製造する。これにより、電気エネルギーの使用量を低減してエネルギーコストの低減を図ることができる。
【0078】
第5の態様に係る水素製造システムは、第1の態様から第4の態様のいずれか一つに係る水素製造システムであって、さらに、高温水蒸気電解装置15は、水素の製造に必要なモル数以上のモル数の水蒸気が供給される。これにより、高温水蒸気電解装置15における水蒸気利用率が低下することとなり、水素製造量の低下を抑制することができる。
【0079】
第6の態様に係る水素製造システムは、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係る水素製造システムであって、さらに、高温水蒸気電解装置15は、電解質層51aと、多孔質水素電極層51bと、多孔質酸素電極層51cとを有し、加熱装置14は、水蒸気により多孔質水素電極層51bを加熱し、水蒸気と加熱空気の少なくともいずれか一方により多孔質酸素電極層51cを加熱する。これにより、高温水蒸気電解装置15を効率良く加熱することができる。
【0080】
第7の態様に係る水素製造システムは、第1の態様から第6の態様のいずれか一つに係る水素製造システムであって、加熱装置14は、高温水蒸気電解装置13の運転温度が想定する温度となるように、高温水蒸気電解装置13に供給される水蒸気の温度が高温水蒸気電解装置15の運転温度より高い温度となるように水蒸気の流量と2次ヘリウムの流量の少なくともいずれか一方を制御する。これにより、加熱装置14は、高温水蒸気電解装置13を適切に加熱することができる。
【0081】
第8の態様に係る水素製造システムは、第1の態様から第7の態様のいずれか一つに係る水素製造システムであって、熱エネルギーを発生可能な熱源11としては、高温ガス炉があり、熱交換器12は、高温ガス炉で生成された高温ヘリウムの熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して水蒸気を加熱する。これにより、二酸化炭素の発生量を低減することができる。
【0082】
第9の態様に係る水素製造方法は、600℃以上の熱エネルギーを発生させる工程と、熱エネルギーにより加熱された2次ヘリウム(熱媒体)を使用して水蒸気を600℃以上に過熱する工程と、水蒸気により高温水蒸気電解セル51を加熱する工程と、高温水蒸気電解セル51に電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスする熱中立点の電位より低い電圧を高温水蒸気電解セル51に印加することで水蒸気を電解して水素を製造する工程とを有する。これにより、火力発電システムなどにより生成した電気エネルギーの使用量を低減して二酸化炭素の発生を抑制することができると共に、エネルギーコストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0083】
10、10A、10B 水素製造システム
11 熱源
12 熱交換器
13 高温水蒸気電解装置
14 加熱装置
21 中間熱交換器
22 供給ヘッダ
23 戻りヘッダ
24 循環機
31 蒸気発生器
32 第1熱交換器
33 第2熱交換器
34 水素側熱交換器
35 酸素側熱交換器
36、38 熱回収器
37、39 コンデンサ
41 循環機
51 高温水蒸気電解セル
51a 電解質層
51b 多孔質水素電極層
51c 多孔質酸素電極層
61、62、63、64 流量調整弁
65 水素側温度調節器
66 酸素側温度調節器
67 温度センサ
71 水蒸気ヘッダ
72 逆止弁
L11 循環経路
L12 供給経路
L13 戻り経路
L14、L15、L16、L17、L18 熱媒体供給経路
L31 水供給経路
L32 第1水蒸気供給経路
L33 第2水蒸気供給経路
L34 水素側水蒸気供給経路
L35 水素ガス排出経路
L36 循環経路
L41、L42 気体供給経路
L43 酸素側水蒸気供給経路
L44 酸素ガス排出経路
L45 循環経路
L51 電力供給経路
L71 水素側水蒸気分岐経路
L72 酸素側水蒸気分岐経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
600℃以上の熱エネルギーにより熱媒体が加熱されてこの加熱された前記熱媒体を用いて水蒸気を加熱する熱交換器と、
電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスして熱収支が0となる熱中立点の電圧より低い電圧を高温水蒸気電解セルに印加して、600℃以上の前記水蒸気を電解して水素を製造する高温水蒸気電解装置と、
を備える水素製造システム。
【請求項2】
前記熱交換器は、水蒸気供給経路に設けられる第1熱交換器と、前記水蒸気供給経路における前記第1熱交換器より下流側に設けられる第2熱交換器とを有する、
請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項3】
前記熱交換器は、前記高温水蒸気電解装置の運転温度より高い温度の前記水蒸気により前記高温水蒸気電解装置を加熱する、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項4】
前記熱交換器は、前記高温水蒸気電解装置が水素を製造するときに吸熱反応により損失する熱エネルギーを補う、
請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項5】
前記高温水蒸気電解装置は、OCVより高く、前記熱中立点の電圧より低い電圧を前記高温水蒸気電解セルに印加することで前記水蒸気を電解して水素を製造する、
請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項6】
前記高温水蒸気電解装置は、水素の製造に必要なモル数以上のモル数の水蒸気が供給される、
請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項7】
前記高温水蒸気電解装置は、電解質層と、水素ガス拡散電極層と、酸素ガス拡散電極層とを有し、前記熱交換器は、前記水蒸気により前記水素ガス拡散電極層を加熱し、前記水蒸気と加熱空気の少なくともいずれか一方により前記酸素ガス拡散電極層を加熱する、
請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項8】
前記熱交換器は、前記高温水蒸気電解装置に供給される前記水蒸気の温度が前記高温水蒸気電解装置の運転温度より高い温度となるように前記水蒸気の流量と前記熱媒体の流量の少なくともいずれか一方を制御する、
請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項9】
前記熱エネルギーを発生可能な熱源としては、高温ガス炉があり、前記熱交換器は、高温ガス炉で生成された高温ヘリウムの熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して水蒸気を加熱する、
請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項10】
600℃以上の熱エネルギーを発生させる工程と、
前記熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して水蒸気を600℃以上に過熱する工程と、
前記水蒸気により高温水蒸気電解セルを加熱する工程と、
前記高温水蒸気電解セルに電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスして熱収支が0となる熱中立点の電圧より低い電圧を前記高温水蒸気電解セルに印加することで前記水蒸気を電解して水素を製造する工程と、
を有する水素製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
600℃以上の熱エネルギーにより熱媒体が加熱されてこの加熱された前記熱媒体を用いて水蒸気を加熱する熱交換器と、
電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスして熱収支が0となる熱中立点の電圧より低い電圧を高温水蒸気電解セルに印加して、600℃以上の前記水蒸気を電解して水素を製造する高温水蒸気電解装置と、
前記高温水蒸気電解セルが想定される運転温度になるように、前記高温水蒸気電解セルに供給する前記水蒸気の流量を制御する温度調節器と、
を備える水素製造システム。
【請求項2】
600℃以上の熱エネルギーにより熱媒体が加熱されてこの加熱された前記熱媒体を用いて水蒸気を加熱する熱交換器と、
電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスして熱収支が0となる熱中立点の電圧より低い電圧を高温水蒸気電解セルに印加して、600℃以上の前記水蒸気を電解して水素を製造する高温水蒸気電解装置と、
前記高温水蒸気電解セルが想定される運転温度になるように、前記熱交換器に供給する前記熱媒体の流量を制御する温度調節器と、
を備える水素製造システム。
【請求項3】
前記熱交換器は、水蒸気供給経路に設けられる第1熱交換器と、前記水蒸気供給経路における前記第1熱交換器より下流側に設けられる第2熱交換器とを有する、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項4】
前記熱交換器は、前記高温水蒸気電解装置の運転温度より高い温度の前記水蒸気により前記高温水蒸気電解装置を加熱する、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項5】
前記熱交換器は、前記高温水蒸気電解装置が水素を製造するときに吸熱反応により損失する熱エネルギーを補う、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項6】
前記高温水蒸気電解装置は、OCVより高く、前記熱中立点の電圧より低い電圧を前記高温水蒸気電解セルに印加することで前記水蒸気を電解して水素を製造する、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項7】
前記高温水蒸気電解装置は、水素の製造に必要なモル数以上のモル数の水蒸気が供給される、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項8】
前記高温水蒸気電解装置は、電解質層と、水素ガス拡散電極層と、酸素ガス拡散電極層とを有し、前記熱交換器は、前記水蒸気により前記水素ガス拡散電極層を加熱し、前記水蒸気と加熱空気の少なくともいずれか一方により前記酸素ガス拡散電極層を加熱する、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項9】
前記熱交換器は、前記高温水蒸気電解装置に供給される前記水蒸気の温度が前記高温水蒸気電解装置の運転温度より高い温度となるように前記水蒸気の流量と前記熱媒体の流量の少なくともいずれか一方を制御する、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項10】
前記熱エネルギーを発生可能な熱源としては、高温ガス炉があり、前記熱交換器は、高温ガス炉で生成された高温ヘリウムの熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して水蒸気を加熱する、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項11】
600℃以上の熱エネルギーを発生させる工程と、
前記熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して水蒸気を600℃以上に過熱する工程と、
前記水蒸気により高温水蒸気電解セルを加熱する工程と、
前記高温水蒸気電解セルが想定される運転温度になるように、前記高温水蒸気電解セルに供給する前記水蒸気の流量を制御する工程と、
前記高温水蒸気電解セルに電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスして熱収支が0となる熱中立点の電圧より低い電圧を前記高温水蒸気電解セルに印加することで前記水蒸気を電解して水素を製造する工程と、
を有する水素製造方法。
【請求項12】
600℃以上の熱エネルギーを発生させる工程と、
前記熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して熱交換器により水蒸気を600℃以上に過熱する工程と、
前記水蒸気により高温水蒸気電解セルを加熱する工程と、
前記高温水蒸気電解セルが想定される運転温度になるように、前記熱交換器に供給する前記熱媒体の流量を制御する工程と、
前記高温水蒸気電解セルに電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスして熱収支が0となる熱中立点の電圧より低い電圧を前記高温水蒸気電解セルに印加することで前記水蒸気を電解して水素を製造する工程と、
を有する水素製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
600℃以上の熱エネルギーにより熱媒体が加熱されてこの加熱された前記熱媒体を用いて水蒸気を加熱する熱交換器と、
電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスして熱収支が0となる熱中立点の電圧より低い電圧を高温水蒸気電解セルに印加して、600℃以上の前記水蒸気を電解して水素を製造する高温水蒸気電解装置と、
前記高温水蒸気電解セルが想定される運転温度になるように、前記高温水蒸気電解セルに供給する前記水蒸気の流量を制御する温度調節器と、
を備え、
前記高温水蒸気電解装置は、水素の製造に必要なモル数以上のモル数の水蒸気が供給される、
水素製造システム。
【請求項2】
600℃以上の熱エネルギーにより熱媒体が加熱されてこの加熱された前記熱媒体を用いて水蒸気を加熱する熱交換器と、
電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスして熱収支が0となる熱中立点の電圧より低い電圧を高温水蒸気電解セルに印加して、600℃以上の前記水蒸気を電解して水素を製造する高温水蒸気電解装置と、
前記高温水蒸気電解セルが想定される運転温度になるように、前記熱交換器に供給する前記熱媒体の流量を制御する温度調節器と、
を備える水素製造システム。
【請求項3】
前記熱交換器は、水蒸気供給経路に設けられる第1熱交換器と、前記水蒸気供給経路における前記第1熱交換器より下流側に設けられる第2熱交換器とを有する、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項4】
前記熱交換器は、前記高温水蒸気電解装置の運転温度より高い温度の前記水蒸気により前記高温水蒸気電解装置を加熱する、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項5】
前記熱交換器は、前記高温水蒸気電解装置が水素を製造するときに吸熱反応により損失する熱エネルギーを補う、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項6】
前記高温水蒸気電解装置は、OCVより高く、前記熱中立点の電圧より低い電圧を前記高温水蒸気電解セルに印加することで前記水蒸気を電解して水素を製造する、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項7】
前記高温水蒸気電解装置は、水素の製造に必要なモル数以上のモル数の水蒸気が供給される、
請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項8】
前記高温水蒸気電解装置は、電解質層と、水素ガス拡散電極層と、酸素ガス拡散電極層とを有し、前記熱交換器は、前記水蒸気により前記水素ガス拡散電極層を加熱し、前記水蒸気と加熱空気の少なくともいずれか一方により前記酸素ガス拡散電極層を加熱する、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項9】
前記熱交換器は、前記高温水蒸気電解装置に供給される前記水蒸気の温度が前記高温水蒸気電解装置の運転温度より高い温度となるように前記水蒸気の流量と前記熱媒体の流量の少なくともいずれか一方を制御する、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項10】
前記熱エネルギーを発生可能な熱源としては、高温ガス炉があり、前記熱交換器は、高温ガス炉で生成された高温ヘリウムの熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して水蒸気を加熱する、
請求項1または請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項11】
600℃以上の熱エネルギーを発生させる工程と、
前記熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して水蒸気を600℃以上に過熱する工程と、
前記水蒸気により高温水蒸気電解セルを加熱する工程と、
前記高温水蒸気電解セルが想定される運転温度になるように、前記高温水蒸気電解セルに供給する前記水蒸気の流量を制御する工程と、
前記高温水蒸気電解セルに電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスして熱収支が0となる熱中立点の電圧より低い電圧を前記高温水蒸気電解セルに印加することで前記水蒸気を電解して水素を製造する工程と、
を有し、
前記高温水蒸気電解セルは、水素の製造に必要なモル数以上のモル数の水蒸気が供給される、
水素製造方法。
【請求項12】
600℃以上の熱エネルギーを発生させる工程と、
前記熱エネルギーにより加熱された熱媒体を使用して熱交換器により水蒸気を600℃以上に過熱する工程と、
前記水蒸気により高温水蒸気電解セルを加熱する工程と、
前記高温水蒸気電解セルが想定される運転温度になるように、前記熱交換器に供給する前記熱媒体の流量を制御する工程と、
前記高温水蒸気電解セルに電流印加に伴うジュール発熱と電解反応に伴う吸熱がバランスして熱収支が0となる熱中立点の電圧より低い電圧を前記高温水蒸気電解セルに印加することで前記水蒸気を電解して水素を製造する工程と、
を有する水素製造方法。