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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090828
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】テレビ共聴システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/18 20060101AFI20240627BHJP
   H04N 21/61 20110101ALI20240627BHJP
【FI】
H04B1/18 Z
H04N21/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206967
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000227892
【氏名又は名称】日本アンテナ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 保男
(74)【代理人】
【識別番号】110002767
【氏名又は名称】弁理士法人ひのき国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 暁弘
(72)【発明者】
【氏名】小野 豊
(72)【発明者】
【氏名】比留間 利通
【テーマコード(参考)】
5C164
5K062
【Fターム(参考)】
5C164FA03
5C164FA04
5C164FA14
5C164TA02S
5C164TA04S
5C164TA05S
5C164TA22S
5C164TA23P
5K062AA06
5K062AB09
5K062AC01
5K062AD03
5K062AE04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】分配器の分配損失が、高域までほぼフラットの少ない分配損失を呈する特性になるテレビ共聴システムを提供する。
【解決手段】テレビ共聴システムにおいて、ウィルキンソン分配器SP1、SP3~SP5における分配損失の周波数特性は、ほぼフラットの線形の特性になる。これにより、AMP1~AMP15の増幅器の定格出力レベルをダウンしても、住戸のテレビ端子Ta~Tdから出力される共聴信号が規定値のレベルを満足するようになる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも地上デジタルテレビ放送信号および衛星デジタル放送信号とからなる共聴信号を所定レベルになるよう増幅する増幅器と、該増幅器から出力される共聴信号を複数に分配する分配器とを組合わせた構成が、nを2以上の正の整数とした時にn段縦続に接続され、
最終段の前記構成における分配器で分配された共聴信号のそれぞれを複数の住戸のそれぞれに引き込むことができ、引き込まれた該住戸のテレビ端子から共聴信号が出力され、前記構成のn段目までの各段の分配器がウィルキンソン回路で構成されたウィルキンソン分配器とされていることを特徴とするテレビ共聴システム。
【請求項2】
少なくとも地上デジタルテレビ放送信号および衛星デジタル放送信号とからなる共聴信号を所定レベルになるよう増幅する1段目増幅器と、
該1段目増幅器から出力される共聴信号を複数に分配する第1分配器と、
該第1分配器で分配された共聴信号のそれぞれを所定レベルになるよう増幅する複数台の2段目増幅器と、
該2段目増幅器のそれぞれから出力される共聴信号を複数に分配する第2分配器と、
該第2分配器で分配された共聴信号のそれぞれを所定レベルになるよう増幅する複数台の3段目増幅器と、
該3段目増幅器のそれぞれから出力される共聴信号を複数に分配する第3分配器とを備え、
該第3分配器で分配された共聴信号のそれぞれを複数の住戸のそれぞれに引き込むことができて、引き込まれた該住戸のテレビ端子から共聴信号が出力されるようになり、前記第1分配器ないし前記第3分配器がウィルキンソン回路で構成されたウィルキンソン分配器とされていることを特徴とするテレビ共聴システム。
【請求項3】
前記1段目増幅器と前記第1分配器との間に第1分岐器が接続されていることを特徴とする請求項2に記載のテレビ共聴システム。
【請求項4】
前記第1分配器ないし前記第3分配器における分配端子の少なくとも1つの分配端子が終端されていることを特徴とする請求項2に記載のテレビ共聴システム。
【請求項5】
前記2段目増幅器のそれぞれから出力される共聴信号が、分岐器で複数に分岐されると共に、該分岐器に縦続に接続された前記第2分配器で複数に分配され、
該分岐器で分岐された共聴信号のそれぞれを所定レベルになるよう増幅する複数台の第2の3段目増幅器と、
該第2の3段目増幅器のそれぞれから出力される共聴信号を複数に分配する第2の第3分配器とがさらに備えられており、
該第2の第3分配器で分配された共聴信号のそれぞれを複数の住戸のそれぞれに引き込むことができて、引き込まれた該住戸のテレビ端子から共聴信号が出力されるようになり、前記第2の第3分配器もウィルキンソン回路で構成されたウィルキンソン分配器とされていることを特徴とする請求項2に記載のテレビ共聴システム。
【請求項6】
少なくとも地上デジタルテレビ放送信号および衛星デジタル放送信号とからなる共聴信号を所定レベルになるよう増幅する1段目増幅器と、
該1段目増幅器から出力される共聴信号を複数に分配する第1分配器と、
該第1分配器で分配された共聴信号のそれぞれを所定レベルになるよう増幅する前記第1分配器の分配数と同数台の2段目増幅器と、
該2段目増幅器のそれぞれから出力される共聴信号を複数に分配する前記第1分配器の分配数と同数の第2分配器と、
該第2分配器で分配された共聴信号のそれぞれを所定レベルになるよう増幅する前記第2分配器の分配数と前記第1分配器の分配数とを乗算した数と同数の3段目増幅器と、
該3段目増幅器のそれぞれから出力される共聴信号を複数に分配する前記3段目増幅器と同数台の第3分配器とを備え、
該第3分配器で分配された共聴信号のそれぞれを前記第3分配器の分配数と前記第2分配器の分配数と前記第1分配器の分配数とを乗算した数の住戸にそれぞれ引き込むことができて、引き込まれた該住戸のテレビ端子から共聴信号が出力されるようになり、前記第1分配器ないし前記第3分配器がウィルキンソン回路で構成されたウィルキンソン分配器とされていることを特徴とするテレビ共聴システム。
【請求項7】
前記2段目増幅器のそれぞれから出力される共聴信号が、前記第1分配器の分配数と同数の分岐器で複数に分岐されると共に、該分岐器に縦続に接続された前記第2分配器で複数に分配され、
該分岐器で分岐された共聴信号のそれぞれを所定レベルになるよう増幅する前記分岐器の分岐数と前記第1分配器の分配数とを乗算した数と同数台の第2の3段目増幅器と、
該第2の3段目増幅器のそれぞれから出力される共聴信号を複数に分配する前記第2の3段目増幅器と同数の第2の第3分配器とがさらに備えられており、
さらに、該第2の第3分配器で分配された共聴信号のそれぞれを前記第2の第3分配器の分配数と前記分岐器の分岐数と前記第1分配器の分配数とを乗算した数の住戸のそれぞれに引き込むことができて、引き込まれた該住戸のテレビ端子から共聴信号が出力されるようになり、前記第2の第3分配器もウィルキンソン回路で構成されたウィルキンソン分配器とされていることを特徴とする請求項6に記載のテレビ共聴システム。
【請求項8】
前記第1分配器と、前記第2分配器と、前記第3分配器および前記第2の第3分配器とのいずれか1つの分配器が、ウィルキンソン分配器とされていないことを特徴とする請求項2ないし請求項7のいずれかに記載のテレビ共聴システム。
【請求項9】
前記共聴信号が、UHFアンテナで受信された地上デジタルテレビ放送信号と、衛星デジタル放送アンテナで受信された衛星デジタル放送信号とを混合して構成されていることを特徴とする請求項2ないし請求項7のいずれかに記載のテレビ共聴システム。
【請求項10】
前記共聴信号が、ケーブルテレビの地上デジタルテレビ放送信号が含まれている下り信号と、衛星デジタル放送アンテナで受信された衛星デジタル放送信号とを混合して構成されていることを特徴とする請求項2ないし請求項7のいずれかに記載のテレビ共聴システム。
【請求項11】
前記共聴信号が、UHFアンテナで受信された地上デジタルテレビ放送信号と、FMアンテナで受信されたFM放送信号と、衛星デジタル放送アンテナで受信された衛星デジタル放送信号とを混合して構成されていることを特徴とする請求項2ないし請求項7のいずれかに記載のテレビ共聴システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分配損失が少ないと共に、周波数に対してほぼフラットの線形の特性とされる分配器として、低出力で低利得の増幅器を用いることができるテレビ共聴システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のテレビ共聴システムの一例を特許文献1に挙げるが、特許文献1に記載されたテレビ共聴システムはケーブルテレビ(CATV)を利用しており、伝送路において伝送できる周波数帯の上限周波数は、2150MHzまでとされている。また、従来からCATVを利用しないテレビ共聴システムも用いられており、CATVを利用しないテレビ共聴システムの一例を図16に示す。図16は、CATVを利用しないテレビ共聴システムの構成を示す機能ブロック図である。
図16に示す従来のテレビ共聴システム100は、数十ないし数百の世帯を住戸とする集合住宅等に設置され、伝送路において伝送できる周波数帯の上限周波数は、2602MHzまでとされている。従来のテレビ共聴システム100において、屋上等に設置されたUHFアンテナ111で受信されたUHFの地上デジタルテレビ放送信号(470~710MHz)は、混合器(DM)101の第1入力端子に入力される。また、DM101の第2入力端子には、屋上等に設置された衛星デジタル放送受信用のBS/CSアンテナ112で受信されて中間周波数の帯域に変換されたBS/CS-IF信号が入力される。DM101で地上デジタルテレビ放送信号と衛星デジタル放送のBS/CS-IF信号とが混合されて、テレビ共聴システム100で伝送される共聴信号とされる。この共聴信号は、破線で囲まれている集合住宅内に引き込まれて増幅器(AMP)101に入力され所定のレベルになるよう増幅されて出力される。AMP101で増幅された共聴信号は分配数4の分配器(SP)101に入力され、SP101の4つの分配端子から出力される。SP101で4分配されて4つの分配端子から出力される共聴信号は、AMP102,AMP103,AMP104,AMP105にそれぞれ入力されて、所定レベルになるよう増幅されて、それぞれ出力されている。
【0003】
AMP105で増幅された共聴信号は、分岐数4の分岐器(BR)102の入力端子に入力されて4分岐され、出力端子からの共聴信号が分配数6のSP103に入力される。BR102の4つの分岐端子はAMP106,AMP107,AMP108,AMP109の入力側にそれぞれ接続されて、BR102で4分岐された共聴信号が所定レベルになるよう増幅されて、それぞれ出力される。BR102の出力端子はSP103に接続されて、出力端子から出力された共聴信号はSP103で6分配される。SP103の6つの分配端子はAMP110,AMP111,AMP112,AMP113,AMP114,AMP115の入力側にそれぞれ接続されて、SP103で分配された共聴信号が所定レベルになるよう増幅されて、それぞれ出力される。
AMP112で増幅された共聴信号は、分配数4のSP104に入力されて4分配される。SP104の1つの分配端子は住戸Dmに接続されており、SP104で4分配された共聴信号の1つが住戸Dmに引き込まれて、住戸Dm内の分配数4のSP105に入力される。SP105の4つの分配端子には、それぞれテレビ端子Ta,テレビ端子Tb,テレビ端子Tc,テレビ端子Tdが接続されており、SP105で4分配された共聴信号がテレビ端子Ta~テレビ端子Tdからそれぞれ出力される。テレビ端子Ta~テレビ端子Tdにテレビジョンやレコーダーを接続することにより、テレビ放送などを視聴したり録画したりすることができる。
【0004】
上記説明した従来のテレビ共聴システム100は、AMP101が1段目増幅器とされ、AMP101に縦続されてAMP102~AMP105の4台の2段目増幅器が接続されている。また、AMP102~AMP105に縦続されて10台のAMP106~AMP115の3段目増幅器が接続されているが、AMP102~AMP104に縦続されている3段目増幅器は省略して示している。さらに、SP104の4つの分配端子はそれぞれ異なる住戸Dmに接続されているが、3つの分配端子の接続は省略して示している。
以上の通りであるから、従来のテレビ共聴システム100により共聴信号を伝送できる住戸Dmの数である世帯数の上限は、4×10×4=160世帯数とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-4357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
日本における衛星デジタル放送の歴史は、BSアナログ放送開始、BSデジタル放送開始、110°CS放送開始と続き、それに対するBS・CS中間周波数信号(BS・CS-IF信号)を伝送する周波数帯も順次更新され、最高伝送周波数が1335MHz→1550MHz→2150MHz→2602MHzと拡張されてきた。そして、2018年12月1日から高度広帯域衛星デジタル放送(ISDB-S3,4K8K放送,BS・CS左旋放送)の本放送が開始されている。高度広帯域衛星デジタル放送では、2224MHzないし3224MHzの周波数帯とされるBS・CS左旋IF信号がさらに追加されている。このため、従来のテレビ共聴システム100において、高度広帯域衛星デジタル放送のBS・CS左旋IF信号を伝送するには、伝送路とされる同軸ケーブル、増幅器、分岐器・分配器、受信者端子、直列ユニット等の受信設備の全てを2224MHz~3224MHzの周波数帯を伝送可能な機器に改修する必要がある。
この改修では、増幅器を3224MHzまでのテレビ放送信号を増幅可能な増幅器に交換する。また、周波数帯域が拡張されることから従来のテレビ共聴システム100における同軸ケーブルをそのまま利用すると拡張された高域の伝送損失が増大することになる。しかし、同軸ケーブルが細い配管内や狭い空間内に敷設されていることから、拡張された高域の伝送損失が少ない同軸ケーブルに交換することは困難とされている。このような場合には、同軸ケーブルを交換することに代えて同軸ケーブルにおける高域の伝送損失を補償するように高出力で高利得の増幅器に交換したり、増幅器を縦続する段数を増やす方法が採用されることになる。これにより、従来のテレビ共聴システム100を改修して伝送可能な周波数帯域を3224MHzまでとすることができる。
【0007】
この場合、高出力で高利得の増幅器は消費電力量が大きく高価になると云う問題点があった。特に、大規模の集合住宅の場合には増幅器の数が多くなるため、消費電力量がより大きくより経費がかかると云う問題点があった。さらに、高利得・高出力の増幅器は筐体サイズが大きくなることから、設置場所も大きく確保する必要があると云う問題点もあった。さらにまた、分配器の周波数特性が後述するように周波数に対して非線形で急峻な右肩下がりの特性となることから、非線形の伝送機器と線形の伝送機器とが混在することになり、改修されたテレビ共聴システムの周波数特性を平坦にすることが困難になるという問題点もあった。このため、改修されたテレビ共聴システムの周波数特性を平坦に近づけるために増幅器において周波数に対する細かな利得の調整作業を行なわなければならないという問題点もあった。
【0008】
ここで、分配器の周波数特性が周波数に対して非線形になる理由を以下に説明する。テレビ共聴システムに使用されている分配器は、図17(a)に示す回路構成の分配器SPとされている。図17(a)に示す分配器SPは分配数2の2分配器であり、広帯域で一定のインピーダンスにできることからフェライトコアを用いた高周波トランスを使用している。すなわち、入力端子INに入力された信号はコンデンサC101を介して整合コイルL101に入力される。フェライトコアに巻かれた整合コイルL101と分配コイルL102とで高周波トランスが構成され、両コイルの中点同士が接続されて、分配コイルL102の両端に2分配された信号が出力される。分配コイルL102の一端から出力される分配された信号は、コンデンサC102を介して出力端子OUT1から出力され、分配コイルL102の他端から出力される分配された信号は、コンデンサC103を介して出力端子OUT2から出力される。分配器SPでは整合コイルL101、分配コイルL102で出力端子OUT1,OUT2の特性インピーダンスが75Ωになるように設計されており、整合コイルL101および分配コイルL102はコア巻きコイルで作成されている。コア巻きコイルとすると、磁性体の特性を生かして広帯域(特に10~770MHz)で一定の値でインピーダンス変換することができる。また、分配コイルL102は広帯域で出力端子OUT1と出力端子OUT2とのアイソレーションを大きく確保することができる。これは、テレビ放送信号がアナログ放送の時代は、ゴースト障害などの影響を軽減するために出力端子のアイソレーションが必要だったが、現在のようにテレビ放送信号がデジタル放送の場合は出力端子のアイソレーションが高くなくても障害は生じない。
なお、コア巻きコイルは高帯域(2150M~3224MHz)では巻き線の浮遊容量の影響により特性インピーダンスが変わってしまい、入出力端子の特性インピーダンスが不整合になってしまう。特に周波数が高くなるにつれて影響が大きくなるため、分配器SPの分配損失は、図17(b)に示すグラフのように周波数に対して非線形で急峻な右肩下がりの特性となる。図17(b)に示す分配器SPの分配損失の周波数特性は、横軸が3224MHzまでの周波数[MHz]とされ、縦軸が分配損失[dB]とされている。
【0009】
従来のテレビ共聴システム100において、分配器SP101,SP103~SP105の分配損失が上述したように、周波数に対して非線形で急峻な右肩下がりの特性となっている場合のテレビ共聴システム100の伝送レベルの様子を図18(a)(b)(c)(d)に示す。図18(a)は分配器SP101~SP105の分配損失の周波数特性を示すグラフであり、図18(b)は伝送路とされる同軸ケーブルのケーブル損失の周波数特性を示すグラフであり、図18(c)はAMP101~AMP115の増幅器のゲインの周波数特性を示すグラフであり、図18(d)はテレビ端子Ta~Tdから出力される共聴信号の出力レベルの周波数特性を示すグラフである。これらの図において、10~55MHzの帯域はケーブルテレビ(CATV)における上り信号で用いられる帯域であり、70~770MHzの帯域はUHFアンテナ111で受信された地上デジタルテレビ放送信号の帯域であり、1032~3224MHzの帯域はBS/CSアンテナ112からBS/CS-IFとして出力される衛星デジタル放送信号の帯域である。
【0010】
分配器SP101~SP105の分配損失の周波数特性は図18(a)に示すように、周波数に対して非線形で急峻な右肩下がりの特性となる。また、共聴信号が伝送される同軸ケーブルのケーブル損失の周波数特性は図18(b)に示すように、周波数に対して線形で右肩下がりの特性となる。さらに、AMP101~AMP115の増幅器のゲインの周波数特性は図18(c)に示すように、10~55MHzのCATVの上り信号の帯域において約30dBのゲインが得られ、70~770MHzのUHFの帯域において約40dBのゲインが得られ、1032~3224MHzのBS/CS-IFの帯域において約35dBから約45dBに右肩上がりにほぼ線形に上昇するゲイン特性とされており、それぞれブロック毎にゲイン調整が可能とされている。さらにまた、テレビ端子Ta~Tdから出力される共聴信号の出力レベルの周波数特性は、混合器DM101から出力される共聴信号のレベルに、図18(a)ないし図18(c)に示す特性を合算させた特性とされ、その結果、図18(d)に示す周波数特性とされる。図18(d)に示す出力レベルの周波数特性を参照すると約2150~3224MHzの高域において右肩下がりの特性となっていることが分かる。この原因は、分配器SP101~SP105の分配損失が図18(a)に示す周波数特性となっていることが原因である。このため、AMP101~AMP115の増幅器のゲインとされる定格出力レベルによっては、テレビ端子Ta~Tdから出力される共聴信号の出力レベルが規定値を満足しないようになって良好な受信を行えなくなる可能性がある。
【0011】
このことを、従来のテレビ共聴システム100におけるレベル計算の事例を挙げて説明する。
図19に示すレベル計算の事例は、AMP101~AMP115の増幅器の定格出力レベルを通常必要とされる出力レベルに設定している。すなわち、AMP101~AMP115の増幅器の定格出力レベルをUHFの帯域において105dBμV、BS/CS-IFの帯域において103/113dBμVとした事例である。なお、定格出力レベルは増幅機の機種により異なっている。図19に示す事例を参照すると、「8」欄の4分配器、「14」欄の6分配器、「19」欄の4分配器、「21」欄の4分配器が図17(a)に示すコア巻きコイル型とされていることから、周波数に対して非線形で急峻な右肩下がりの特性となっていることが分かる。図19に示す事例では、AMP101~AMP115の増幅器の定格出力レベルが高出力で高利得の増幅器とされているため、最下欄の「テレビ端子出力」の計算値の出力レベルがUHFの帯域における規定値である50~81dBμVを満足していると共に、BS/CS-IFの帯域における規定値である52~81dBμV(BS・広帯域CS)/54~81dBμV(高度BS・CS)を満足している。
また、図20に示すレベル計算の事例は、AMP101~AMP115の増幅器の定格出力レベルを通常必要とされる出力レベルより10dBダウンさせた出力レベルと設定している。すなわち、AMP101~AMP115の増幅器の定格出力レベルをUHFの帯域において95dBμV、BS/CS-IFの帯域において93/103dBμVと10dBダウンさせた事例である。図20に示す事例を参照すると、「8」欄の4分配器、「14」欄の6分配器、「19」欄の4分配器、「21」欄の4分配器が図17(a)に示すコア巻きコイル型とされていることから、周波数に対して非線形で急峻な右肩下がりの特性となっていることが分かる。図20に示す事例では、AMP101~AMP115の増幅器の定格出力レベルが10dBダウンされているため、AMP101~AMP115の増幅器の出力レベルが約10dBダウンしている。このことから、最下欄の「テレビ端子出力」の計算値の出力レベルはUHFの帯域における規定値である50~81dBμVを満足すると共に、BS/CS-IFの帯域における規定値である52~81dBμV(BS・広帯域CS)を満足しているものの、破線の楕円で囲って示すように3224MHzにおいて54~81dBμV(高度BS・CS)の規定値を満足しなくなっていることが分かる。
上記説明したように、従来のテレビ共聴システム100では、低消費電力とされる定格出力レベルが10dBダウンさせた増幅器を用いることができないという問題点があった。
【0012】
上述したいくつかの問題点は、いずれも分配器の分配損失特性が周波数に対して非線形で急峻な右肩下がりの特性となっていることに起因していることが分かる。
そこで、本発明は、テレビ共聴システムにおける分配器の分配損失が少ないと共に、周波数に対してほぼフラットの線形の特性になるようにしたテレビ共聴システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のテレビ共聴システムは、少なくとも地上デジタルテレビ放送信号および衛星デジタル放送信号とからなる共聴信号を所定レベルになるよう増幅する増幅器と、該増幅器から出力される共聴信号を複数に分配する分配器とを組合わせた構成が、nを2以上の正の整数とした時にn段縦続に接続され、最終段の前記構成における分配器で分配された共聴信号のそれぞれを複数の住戸のそれぞれに引き込むことができ、引き込まれた該住戸のテレビ端子から共聴信号が出力され、前記構成のn段目までの各段の分配器がウィルキンソン回路で構成されたウィルキンソン分配器とされていることを主要な特徴としている。
また、本発明の他のテレビ共聴システムは、少なくとも地上デジタルテレビ放送信号および衛星デジタル放送信号とからなる共聴信号を所定レベルになるよう増幅する1段目増幅器と、該1段目増幅器から出力される共聴信号を複数に分配する第1分配器と、該第1分配器で分配された共聴信号のそれぞれを所定レベルになるよう増幅する複数台の2段目増幅器と、該2段目増幅器のそれぞれから出力される共聴信号を複数に分配する第2分配器と、該第2分配器で分配された共聴信号のそれぞれを所定レベルになるよう増幅する複数台の3段目増幅器と、該3段目増幅器のそれぞれから出力される共聴信号を複数に分配する第3分配器とを備え、該第3分配器で分配された共聴信号のそれぞれを複数の住戸のそれぞれに引き込むことができて、引き込まれた該住戸のテレビ端子から共聴信号が出力されるようになり、前記第1分配器ないし前記第3分配器がウィルキンソン回路で構成されたウィルキンソン分配器とされていることを主要な特徴としている。
上記本発明の他のテレビ共聴システムにおいて、前記1段目増幅器と前記第1分配器との間に第1分岐器が接続されていてもよい。
また、上記本発明の他のテレビ共聴システムにおいて、前記第1分配器ないし前記第3分配器における分配端子の少なくとも1つの分配端子が終端されていてもよい。
さらに、上記本発明の他のテレビ共聴システムにおいて、前記2段目増幅器のそれぞれから出力される共聴信号が、分岐器で複数に分岐されると共に、該分岐器に縦続に接続された前記第2分配器で複数に分配され、該分岐器で分岐された共聴信号のそれぞれを所定レベルになるよう増幅する複数台の第2の3段目増幅器と、該第2の3段目増幅器のそれぞれから出力される共聴信号を複数に分配する第2の第3分配器とがさらに備えられており、該第2の第3分配器で分配された共聴信号のそれぞれを複数の住戸のそれぞれに引き込むことができて、引き込まれた該住戸のテレビ端子から共聴信号が出力されるようになり、前記第2の第3分配器もウィルキンソン回路で構成されたウィルキンソン分配器とされている。
【0014】
本発明のさらに他のテレビ共聴システムは、少なくとも地上デジタルテレビ放送信号および衛星デジタル放送信号とからなる共聴信号を所定レベルになるよう増幅する1段目増幅器と、該1段目増幅器から出力される共聴信号を複数に分配する第1分配器と、該第1分配器で分配された共聴信号のそれぞれを所定レベルになるよう増幅する前記第1分配器の分配数と同数台の2段目増幅器と、該2段目増幅器のそれぞれから出力される共聴信号を複数に分配する前記第1分配器の分配数と同数の第2分配器と、該第2分配器で分配された共聴信号のそれぞれを所定レベルになるよう増幅する前記第2分配器の分配数と前記第1分配器の分配数とを乗算した数と同数台の3段目増幅器と、該3段目増幅器のそれぞれから出力される共聴信号を複数に分配する前記3段目増幅器と同数の第3分配器とを備え、該第3分配器で分配された共聴信号のそれぞれを前記第3分配器の分配数と前記第2分配器の分配数と前記第1分配器の分配数とを乗算した数の住戸にそれぞれ引き込むことができて、引き込まれた該住戸のテレビ端子から共聴信号が出力されるようになり、前記第1分配器ないし前記第3分配器がウィルキンソン回路で構成されたウィルキンソン分配器とされていることを主要な特徴としている。
また、本発明のさらに他のテレビ共聴システムにおいて、前記2段目増幅器のそれぞれから出力される共聴信号が、前記第1分配器の分配数と同数の分岐器で複数に分岐されると共に、該分岐器に縦続に接続された前記第2分配器で複数に分配され、該分岐器で分岐された共聴信号のそれぞれを所定レベルになるよう増幅する前記分岐器の分岐数と前記第1分配器の分配数とを乗算した数と同数台の第2の3段目増幅器と、該第2の3段目増幅器のそれぞれから出力される共聴信号を複数に分配する前記第2の3段目増幅器と同数の第2の第3分配器とがさらに備えられており、さらに、該第2の第3分配器で分配された共聴信号のそれぞれを前記第2の第3分配器の分配数と前記分岐器の分岐数と前記第1分配器の分配数とを乗算した数の住戸のそれぞれに引き込むことができて、引き込まれた該住戸のテレビ端子から共聴信号が出力されるようになり、前記第2の第3分配器もウィルキンソン回路で構成されたウィルキンソン分配器とされている。
【0015】
上記本発明のテレビ共聴システムにおいて、前記第1分配器と、前記第2分配器と、前記第3分配器および前記第2の第3分配器とのいずれか1つの分配器が、ウィルキンソン分配器とされていなくてもよい。
また、上記本発明のテレビ共聴システムにおいて、前記共聴信号が、UHFアンテナで受信された地上デジタルテレビ放送信号と、衛星デジタル放送アンテナで受信された衛星デジタル放送信号とを混合して構成されていてもよい。
さらに、上記本発明のテレビ共聴システムおよび他のテレビ共聴システムにおいて、前記共聴信号が、ケーブルテレビの地上デジタルテレビ放送信号が含まれている下り信号と、衛星デジタル放送アンテナで受信された衛星デジタル放送信号とを混合して構成されていてもよい。
さらに、上記本発明のテレビ共聴システムおよび他のテレビ共聴システムにおいて、前記共聴信号が、UHFアンテナで受信された地上デジタルテレビ放送信号と、FMアンテナで受信されたFM放送信号と、衛星デジタル放送アンテナで受信された衛星デジタル放送信号とを混合して構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のテレビ共聴システムでは、分配器がウィルキンソン回路で構成されたウィルキンソン分配器とされている。ウィルキンソン分配器は、1/4波長変成器の原理を使い、基板パターン上で1/4波長でインピーダンスの整合を取っており、広帯域化されたウィルキンソン分配器における分配損失の周波数特性は、周波数に対してほぼフラットの線形の特性になることが分かった。これにより、本発明のテレビ共聴システムでは、テレビ共聴システムで使用している高出力・高利得の増幅器を低出力・低利得の増幅器に変更してもテレビ端子からの出力レベルが規定値を満足するようになる。このため、テレビ共聴システムのコストを削減できる。さらに、テレビ共聴システムの全体の消費電力を減らすことができ、年間の電気使用量を削減できるため、集合住宅等の住居者の管理費の低減を図ることができる。さらにまた、増幅器を低出力・低利得にすることでダウンサイジングとなり、設置場所を省スペース化することができる。
また、ウィルキンソン分配器における分配損失の周波数特性はほぼフラットになるため、テレビ共聴システムでのレベル調整の工数を減らすことができ、テレビ共聴システムを施工する際に作業員の工数を削減することが可能となる。さらに、ウィルキンソン分配器における分配損失の周波数特性はほぼフラットになるため、テレビ共聴システムでのレベル調整の機器を省略することができるようになる。
以上のことから、衛星デジタル放送サービスが帯域が拡張されたことに伴う従来の既存とされるテレビ共聴システムの周波数拡張工事を容易に行うことができ、テレビ端子からの出力レベルが規定値を満足しないことを極力減少させることができる。この場合、既存のテレビ共聴システムにおける敷設済みの交換できない同軸ケーブルのケーブル損失が補償されるようになると共に、テレビ端子からの出力レベルを安定して確保できるため、改修工事の際にレベル調整を容易に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施例のテレビ共聴システムの構成を示す機能ブロック図である。
図2】本発明の実施例のテレビ共聴システムのウィルキンソン分配器が利用しているウィルキンソン回路の原理を示す回路図である。
図3】本発明の実施例のテレビ共聴システムにおける分配数4のウィルキンソン分配器の構成を示す回路図である。
図4】本発明の実施例のテレビ共聴システムにおける分配数4のウィルキンソン分配器の回路パターンを示す図である。
図5】本発明の実施例のテレビ共聴システムにおける分配数6のウィルキンソン分配器の構成を示す回路図である。
図6】本発明の実施例のテレビ共聴システムにおける伝送レベルの様子を示す図である。
図7】本発明の第2実施例のテレビ共聴システムの構成を示す機能ブロック図である。
図8】本発明の第3実施例のテレビ共聴システムの構成を示す機能ブロック図である。
図9】本発明の実施例にかかる分配数4のウィルキンソン分配器の分配損失および端子間結合損失の周波数特性を従来の分配器と対比して示すグラフおよび図表である。
図10】本発明の実施例にかかる分配数4のウィルキンソン分配器の入力端子および出力端子の反射損失の周波数特性を従来の分配器と対比して示すグラフおよび図表である。
図11】本発明の実施例にかかる分配数6のウィルキンソン分配器の分配損失および端子間結合損失の周波数特性を従来の分配器と対比して示すグラフおよび図表である。
図12】本発明の実施例にかかる分配数6のウィルキンソン分配器の入力端子および出力端子の反射損失の周波数特性を従来の分配器と対比して示すグラフおよび図表である。
図13】本発明の実施例のテレビ共聴システムにおけるレベル計算の事例を示す図表である。
図14】本発明の実施例のテレビ共聴システムにおけるレベル計算の他の事例を示す図表である。
図15】本発明の実施例のテレビ共聴システムにおけるレベル計算のさらに他の事例を示す図表である。
図16】従来のテレビ共聴システムの構成を示す機能ブロック図である。
図17】従来の分配器の回路構成および分配損失の周波数特性を示す図である。
図18】従来のテレビ共聴システムにおける伝送レベルの様子を示す図である。
図19】従来のテレビ共聴システムにおけるレベル計算の事例を示す図表である。
図20】従来のテレビ共聴システムにおけるレベル計算の他の事例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施例のテレビ共聴システム>
本発明の第1実施例のテレビ共聴システム1の構成を示す機能ブロック図を図1に示す。
図1に示す本発明の第1実施例のテレビ共聴システム1は、数十ないし数百の住戸の集合住宅等に設置され、各住戸に地上デジタルテレビ放送信号および衛星デジタル放送信号を配信している。第1実施例のテレビ共聴システム1は、地上デジタルテレビ放送を受信するUHFアンテナ11と衛星デジタル放送とされるBS/CS放送を受信するBS/CSアンテナ12とを備え、図示しないが両アンテナが屋上等に設置されている。UHFアンテナ11で受信されたUHF帯の地上デジタルテレビ放送信号(470~710MHz)は、前置増幅器(PAMP)1で増幅され混合器(DM)1の第1入力端子に入力される。また、BS/CSアンテナ12で受信されたBS/CS放送信号は中間周波数信号(BS/CS-IF信号)に周波数変換されPAMP2で増幅されて、DM1の第2入力端子に入力される。DM1で地上デジタルテレビ放送信号とBS/CS-IF信号とが混合されて共聴信号とされる。この共聴信号は、破線で囲まれている集合住宅内に引き込まれて増幅器(AMP)1に入力され所定のレベルになるよう増幅されて出力される。なお、PAMP1,PAMP2はUHFアンテナ11およびBS/CSアンテナ12とAMP1との間の同軸ケーブルが長い場合に受信された信号のレベルを確保するために設けられている。AMP1で増幅された共聴信号は後述するウィルキンソン分配器とされる分配数4の分配器(SP)1に入力され、SP1で4分配された共聴信号は4つの分配端子からそれぞれ出力される。SP1の4つの分配端子からそれぞれ出力される共聴信号は、AMP2,AMP3,AMP4,AMP5にそれぞれ入力されて、所定レベルになるよう増幅されて出力されている。
【0019】
AMP5で増幅された共聴信号は、分岐数4の分岐器(BR)2に入力されて4分岐され、BR2の出力端子からの共聴信号がウィルキンソン分配器とされる分配数6のSP3に入力されて6分配される。このように、SP3はBR2に縦続接続されている。BR2の4つの分岐端子はAMP6,AMP7,AMP8,AMP9の入力側にそれぞれ接続されて、BR2で4分岐された共聴信号のそれぞれが所定レベルになるよう増幅されて、それぞれ出力されている。BR2の出力端子はSP3に接続されて、出力端子から出力された共聴信号はSP3で6分配される。SP3の6つの分配端子はAMP10,AMP11,AMP12,AMP13,AMP14,AMP15の入力側にそれぞれ接続されて、SP3で6分配された共聴信号のそれぞれが所定レベルになるよう増幅されて、それぞれ出力されている。
AMP12で増幅された共聴信号は、ウィルキンソン分配器とされる分配数4のSP4に入力されて4分配される。SP4の1つの分配端子は住戸Dmに接続されており、SP4で分配された共聴信号が住戸Dmに引き込まれて、住戸Dm内のウィルキンソン分配器とされる分配数4のSP5に入力される。SP5の4つの分配端子には、それぞれテレビ端子Ta,テレビ端子Tb,テレビ端子Tc,テレビ端子Tdが接続されており、SP5で分配された共聴信号がテレビ端子Ta~テレビ端子Tdから出力される。テレビ端子Ta~テレビ端子Tdにテレビジョンやレコーダーを接続することにより、テレビ放送などを視聴したり録画したりすることができる。
【0020】
上記説明した第1実施例のテレビ共聴システム1は、AMP1が1段目増幅器とされ、1段目増幅器のAMP1に縦続されているAMP2~AMP5の4台が2段目増幅器とされている。また、2段目増幅器のAMP2~AMP5のそれぞれに縦続されている10台のAMP6~AMP15が3段目増幅器とされている。この場合、2段目増幅器のAMP2~AMP4に縦続されている3段目増幅器以降の構成は、2段目増幅器のAMP5に3段目増幅器のAMP6~AMP15が縦続されている構成と同様とされており、省略して示されている。さらに、3段目増幅器のAMP6~AMP11,AMP13~AMP15のそれぞれに縦続されている構成は、3段目増幅器のAMP12に縦続されている構成と同様とされており、省略して示されている。さらにまた、SP4の4つの分配端子はそれぞれ異なる住戸Dmに接続されているが、3つの分配端子の接続構成は省略して示されている。
本発明の第1実施例のテレビ共聴システム1は、以上の通りの構成とされているから、本発明の第1実施例のテレビ共聴システム1により共聴信号を伝送できる住戸Dmの数である世帯数の上限は、SP1の分配数×(BR2の分岐数+SP3の分配数)×SP4=4×10×4=160世帯数とされる。
なお、本発明の第1実施例のテレビ共聴システム1においては、1段目増幅器が1台、2段目増幅器が4台、3段目増幅器は2段目増幅器のそれぞれに10台ずつ縦続されていることから、3段目増幅器は4×10=40台とされている。このように、本発明の第1実施例のテレビ共聴システム1においては、合計45台の増幅器が使用されている。
【0021】
<ウィルキンソン分配器>
ここで、本発明の第1実施例のテレビ共聴システム1に用いられているSP1,SP3,SP4,SP5のウィルキンソン分配器について説明する。ウィルキンソン分配器は、ウィルキンソン回路で構成された分配器とされている。ウィルキンソン回路は、3端子型高周波2分配器として知られている。分布定数型のウィルキンソン回路30の原理を示す回路を図2に示す。
図2に示すように、ウィルキンソン回路30は、入力端子IN31と第1出力端子OUT32との間に接続された分布定数線路W1と、入力端子IN31と第2出力端子OUT33との間に接続された分布定数線路W2と、第1出力端子OUT32と第2出力端子OUT33との間に接続されたアイソレーション抵抗Rとから構成されている。このウィルキンソン回路30の使用中心周波数をFoとすると、分布定数線路W1と分布定数線路W2の電気長は使用中心周波数Foの1/4波長としているから、使用中心周波数Foにおける位相遅延量θoは90°となる。また、ウィルキンソン回路30に接続される入出力インピーダンスをZoとすると、分配比を1:1の均等分配とした場合、分布定数線路W1と分布定数線路W2の特性インピーダンスをZsとすると特性インピーダンスZsは√2×Zoになる。分布定数線路W1と分布定数線路W2は、いわゆるQマッチング回路として作用しているので、出力端子側のインピーダンスZoを特性インピーダンスZsである分布定数線路W1あるいは分布定数線路W2を介して見た入力端子IN200側のインピーダンスをZxとすると、Qマッチング回路の動作原理から、
Zx=Zs /Zo=( √2×Zo)/Zo=2Zo
となる。従って、入力端子IN200から見た合成インピーダンスは、この2ZoのインピーダンスZxが並列に接続されているので1/2のインピーダンスZoとなって入力端子IN200のインピーダンスZoと整合する。また、ウィルキンソン回路30におけるアイソレーション抵抗Rの値は、均等分配のウィルキンソン回路において最大の出力端子間アイソレーションが得られるとして知られている2Zoとなる。
このように、ウィルキンソン回路30は、分布定数線路W1および分布定数線路W2からなる1/4波長インピーダンス変成器とアイソレーション抵抗Rとから構成されている。
【0022】
ウィルキンソン回路30で構成された分配数4のウィルキンソン分配器40の回路構成の一例を図3に示す。
図3に示すように、分配数4のウィルキンソン分配器40は入力端子INと4つの出力端子OUT1,OUT2,OUT3,OUT4を備えており、出力端子OUT1~OUT4が分配端子とされる。入力端子INと出力端子OUT1~OUT4のすべてが同じインピーダンスZoとされている。入力端子INには2本のインピーダンスZ1の第1分布定数線路の始端が並列に接続され、第1分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R1が接続されている。2本の第1分布定数線路の終端にインピーダンスZ2の第2分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第2分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R2が接続されている。アイレーション抵抗R2の一端に2本のインピーダンスZ3の第3分布定数線路の始端が並列に接続され、第3分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R3が接続されている。2本の第3分布定数線路の終端にインピーダンスZ4の第4分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第4分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R4が接続されている。また、アイソレーション抵抗R2の他端に2本のインピーダンスZ5の第5分布定数線路の始端が並列に接続され、第5分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R5が接続されている。2本の第5分布定数線路の終端にインピーダンスZ6の第6分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第6分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R6が接続されている。
アイソレーション抵抗R4の一端が第1出力端子OUT1に接続され、アイソレーション抵抗R4の他端が第2出力端子OUT2に接続され、アイソレーション抵抗R6の一端が第3出力端子OUT3に接続され、アイソレーション抵抗R6の他端が第4出力端子OUT4に接続されている。
【0023】
ウィルキンソン分配器40の第1分布定数線路ないし第6分布定数線路の電気長は使用中心周波数Foの1/4波長とされており、使用中心周波数Foにおける位相遅延量θoは90°となっている。インピーダンスZ3とインピーダンスZ5とは同じインピーダンスとされると共に、インピーダンスZ4とインピーダンスZ6は同じインピーダンスとされ、アイソレーション抵抗R3とアイソレーション抵抗R5とは同じ抵抗値とされると共に、アイソレーション抵抗R4とアイソレーション抵抗R6とは同じ抵抗値とされる。そして、入力端子INと出力端子OUT1~OUT4とのインピーダンスZoは、75Ωとされる。また、ウィルキンソン分配器40においては、図2に示すウィルキンソン回路30を2段ずつ接続して構成されている。すなわち、1段目において2本の第1分布定数線路(インピーダンスZ1)に2本の第2分布定数線路(インピーダンスZ2)がそれぞれ縦続接続されており、2段目において2本の第3分布定数線路(インピーダンスZ3)に2本の第4分布定数線路(インピーダンスZ4)がそれぞれ縦続接続されていると共に、2本の第5分布定数線路(インピーダンスZ5)に2本の第6分布定数線路(インピーダンスZ6)がそれぞれ縦続接続されている。このように、ウィルキンソン回路30を2段ずつ接続して構成することにより、ウィルキンソン分配器40を広帯域化している。
【0024】
ウィルキンソン分配器40の第1分布定数線路ないし第6分布定数線路は、ストリップラインで構成することができ、ストリップラインで構成した分配数4のウィルキンソン分配器41の構成の一例を図4に示す。
図4に示す分配数4のウィルキンソン分配器41は、ウィルキンソン分配器40と同じ回路構成とされており、インピーダンスZ1~Z6の第1分布定数線路ないし第6分布定数線路が、U字状に折り返されたストリップラインで構成されている。第1分布定数線路ないし第6分布定数線路における各線路の終端間にはアイソレーション抵抗R1~R6がそれぞれ接続されている。各ストリップラインの幅は、ストリップラインで構成する第1分布定数線路ないし第6分布定数線路のインピーダンスZ1~Z6に応じた幅とされている。また、U字状に折り返されたストリップラインとするのは、分配数4のウィルキンソン分配器41を小型化するためである。
【0025】
次に、ウィルキンソン回路30で構成された分配数6のウィルキンソン分配器50の回路構成の一例を図5に示す。
図5に示すように、分配数6のウィルキンソン分配器50は入力端子INと6つの出力端子OUT1,OUT2,OUT3,OUT4,OUT5,OUT6を備えており、出力端子OUT1~OUT6が分配端子とされる。入力端子INと出力端子OUT1~OUT6のすべてが同じインピーダンスZoとされている。入力端子INには2本のインピーダンスZ1の第1分布定数線路の始端が並列に接続され、第1分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R1が接続されている。2本の第1分布定数線路の終端にインピーダンスZ2の第2分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第2分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R2が接続されている。アイソレーション抵抗R2の一端に2本のインピーダンスZ3の第3分布定数線路の始端が並列に接続され、第3分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R3が接続されている。2本の第3分布定数線路の終端にインピーダンスZ4の第4分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第4分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R4が接続されている。
アイソレーション抵抗R4の一端に2本のインピーダンスZ7,Z7’の第7分布定数線路の始端が並列に接続され、第7分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R7が接続されている。2本の第7分布定数線路の終端にインピーダンスZ8,Z8’の第8分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第8分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R8が接続されている。また、アイソレーション抵抗R4の他端に2本のインピーダンスZ9,Z9’の第9分布定数線路の始端が並列に接続され、第9分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R9が接続されている。2本の第9分布定数線路の終端にインピーダンスZ10,Z10’の第10分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第10分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R10が接続されている。アイソレーション抵抗R8の一端が第1出力端子OUT1に接続され、アイソレーション抵抗R8の他端およびアイソレーション抵抗R10の一端が第2出力端子OUT2に接続され、アイソレーション抵抗R10の他端が第3出力端子OUT3に接続されている。
【0026】
また、アイソレーション抵抗R2の他端に2本のインピーダンスZ5の第5分布定数線路の始端が並列に接続され、第5分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R5が接続されている。2本の第5分布定数線路の終端にインピーダンスZ6の第6分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第6分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R6が接続されている。
さらに、アイソレーション抵抗R6の一端に2本のインピーダンスZ11,Z11’の第11分布定数線路の始端が並列に接続され、第11分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R11が接続されている。2本の第11分布定数線路の終端にインピーダンスZ12,Z12’の第12分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第12分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R12が接続されている。さらにまた、アイソレーション抵抗R6の他端に2本のインピーダンスZ13,Z13’の第13分布定数線路の始端が並列に接続され、第13分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R13が接続されている。2本の第13分布定数線路の終端にインピーダンスZ14,Z14’の第14分布定数線路の始端がそれぞれ接続され、第14分布定数線路の終端間にアイソレーション抵抗R14が接続されている。アイソレーション抵抗R12の一端が第4出力端子OUT4に接続され、アイソレーション抵抗R12の他端およびアイソレーション抵抗R14の一端が第5出力端子OUT5に接続され、アイソレーション抵抗R14の他端が第6出力端子OUT6に接続されている。
【0027】
ウィルキンソン分配器50の第1分布定数線路ないし第14分布定数線路の電気長は使用中心周波数Foの1/4波長とされており、使用中心周波数Foにおける位相遅延量θoは90°となっている。インピーダンスZ3とインピーダンスZ6とは同じインピーダンスとされると共に、インピーダンスZ4とインピーダンスZ7とは同じインピーダンスとされ、インピーダンスZ5とインピーダンスZ8とは同じインピーダンスとされる。また、インピーダンスZ7とインピーダンスZ9とインピーダンスZ11とインピーダンスZ13とは同じインピーダンスとされると共に、インピーダンスZ7’とインピーダンスZ9’とインピーダンスZ11’とインピーダンスZ13’とは同じインピーダンスとされ、インピーダンスZ8とインピーダンスZ10インピーダンスZ12とインピーダンスZ14とは同じインピーダンスとされ、インピーダンスZ8’とインピーダンスZ10’インピーダンスZ12’とインピーダンスZ14’とは同じインピーダンスとされる。さらに、アイソレーション抵抗R3とアイソレーション抵抗R5とは同じ抵抗値とされると共に、アイソレーション抵抗R4とアイソレーション抵抗R6とは同じ抵抗値とされる。さらにまた、アイソレーション抵抗R7とアイソレーション抵抗R9とアイソレーション抵抗R11とアイソレーション抵抗R13とは同じ抵抗値とされると共に、アイソレーション抵抗R8とアイソレーション抵抗R10とアイソレーション抵抗R13とアイソレーション抵抗R15とは同じ抵抗値とされる。そして、入力端子INと出力端子OUT1~OUT6とのインピーダンスZoは、75Ωとされる。
【0028】
さらにまた、ウィルキンソン分配器50においては、図2に示すウィルキンソン回路30を2段ずつ接続して構成されている。すなわち、1段目において2本の第1分布定数線路(インピーダンスZ1)に2本の第2分布定数線路(インピーダンスZ2)がそれぞれ縦続接続されており、2段目において2本の第3分布定数線路(インピーダンスZ3)に2本の第4分布定数線路(インピーダンスZ4)がそれぞれ縦続接続されていると共に、2本の第5分布定数線路(インピーダンスZ5)に2本の第6分布定数線路(インピーダンスZ6)がそれぞれ縦続接続されている。さらに、3段目において2本の第7分布定数線路(インピーダンスZ7,Z7’)に2本の第8分布定数線路(インピーダンスZ8,Z8’)がそれぞれ縦続接続されていると共に、2本の第9分布定数線路(インピーダンスZ9,Z9’)に2本の第10分布定数線路(インピーダンスZ10,Z10’)がそれぞれ縦続接続されている。3段目においてはさらに、2本の第11分布定数線路(インピーダンスZ11,Z11’)に2本の第12分布定数線路(インピーダンスZ12,Z12’)がそれぞれ縦続接続されていると共に、2本の第13分布定数線路(インピーダンスZ13,Z13’)に2本の第14分布定数線路(インピーダンスZ14,Z14’)がそれぞれ縦続接続されている。このように、ウィルキンソン回路30を2段ずつ接続して構成することにより、ウィルキンソン分配器50を広帯域化している。
なお、ウィルキンソン分配器50の第1分布定数線路ないし第14分布定数線路は、ストリップラインで構成することができる。
【0029】
上述したウィルキンソン分配器40,50は高域の減衰特性が小さく、1/4波長インピーダンス変成器とアイソレーション抵抗Rとを多段に縦続接続する構成とすることにより、広帯域化されている。この場合、低域のアイソレーションの性能を確保するには回路サイズが大きくなるが、地上デジタルテレビ放送および衛星デジタル放送はデジタル放送とされていることから、低域のアイソレーションの性能は確保されなくてもよく、このことから回路サイズが大きくならずに済む。なお、従来のテレビ放送はアナログ放送とされていることから、低域のアイソレーションの性能を確保しなければならず、分配器としてウィルキンソン分配器を使用することは考えられなかった。このように、テレビ放送の環境の変化により、ウィルキンソン分配器をテレビ共聴システムに組込んでもシステムとして問題ないことを見出したのである。
本発明の第1実施例のテレビ共聴システム1に用いられているウィルキンソン分配器とされたSP1,SP3,SP4,SP5の分配損失の周波数特性を図6(a)に示す。図6(a)に示すウィルキンソン分配器の分配損失の周波数特性は、横軸が3224MHzまでの周波数[MHz]とされ、縦軸が分配損失[dB]とされている。図6(a)を参照すると、10MHz~3224MHzに渡り分配損失は高域に向かって若干増えるもののほぼ一定のフラットな周波数特性となっている。この場合、分配数4のウィルキンソン分配器40とされるSP1,SP4,SP5の分配損失は約6~8dBとなり、分配数6のウィルキンソン分配器50とされるSP3の分配損失は約8~11dBとなる。
【0030】
本発明の第1実施例のテレビ共聴システム1において、分配器SP1,SP3~SP5の分配損失が上述したように、周波数に対してほぼ一定のフラットな周波数特性となっている場合の第1実施例のテレビ共聴システム1の伝送レベルの様子を図6(a)(b)(c)(d)に示す。図6(a)は分配器分配器SP1,SP3~SP5の分配損失の周波数特性を示すグラフであり、図6(b)は伝送路とされる同軸ケーブルのケーブル損失の周波数特性を示すグラフであり、図6(c)はAMP1~AMP15の増幅器のゲインの周波数特性を示すグラフであり、図6(d)はテレビ端子Ta~Tdから出力される共聴信号の出力レベルの周波数特性を示すグラフである。これらの図において、10~470MHzの帯域はケーブルテレビ(CATV)において用いられる帯域であり第1実施例のテレビ共聴システム1では使用されていない。また、470~770MHzの帯域はUHFアンテナ11で受信された地上デジタルテレビ放送信号の帯域であり、1032~3224MHzの帯域はBS/CSアンテナ12からBS/CS-IFとして出力される衛星デジタル放送信号の帯域である。
【0031】
分配器SP1,SP3~SP5の分配損失の周波数特性は図6(a)に示すように、周波数に対してほぼ一定のフラットな周波数特性となる。また、共聴信号が伝送される同軸ケーブルのケーブル損失の周波数特性は図6(b)に示すように、周波数に対して線形で右肩下がりの特性となる。さらに、AMP1~AMP15の増幅器のゲインの周波数特性は図6(c)に示すように、10~55MHzのCATVの上り信号の帯域において約30dBのゲインが得られ、70~770MHzの地上デジタルテレビ放送信号を含む帯域において約40dBのゲインが得られ、1032~3224MHzのBS/CS-IFの帯域において約35dBから約45dBに右肩上がりにほぼ線形に上昇するゲイン特性とされている。さらにまた、テレビ端子Ta~Tdから出力される共聴信号の出力レベルの周波数特性は、混合器DM1から出力される共聴信号のレベルに、図6(a)ないし図6(c)に示す特性を合算させた特性とされ、その結果、図6(d)に示す周波数特性とされる。図6(d)に示す出力レベルの周波数特性を参照すると約1032~3224MHzの高域においてほぼ一定のフラットな周波数特性となっていることが分かる。このため、テレビ端子Ta~Tdから出力される共聴信号の出力レベルは規定値を十分に満足するようになって良好な受信を行えるようになる。
【0032】
<第2実施例のテレビ共聴システム>
本発明の第2実施例のテレビ共聴システム2の構成を示す機能ブロック図を図7に示す。
図7に示す本発明の第2実施例のテレビ共聴システム2は、数十ないし数百の住戸の集合住宅等に設置され、CATV(ケーブルテレビ)が導入されたテレビ共聴システム2とされている。第2実施例のテレビ共聴システム2では、各住戸にCATVからの信号(以下、「CATV信号」という)および衛星デジタル放送信号を配信している。CATV信号には地上デジタルテレビ放送信号が含まれている。
図7に示す第2実施例のテレビ共聴システム2は、衛星デジタル放送とされるBS/CS放送を受信するBS/CSアンテナ12を備え、図示しないがBS/CSアンテナ12が屋上等に設置されている。また、第2実施例のテレビ共聴システム2は、CATV信号における下り信号(以下、「CATV下り信号」という。)が入力されている。CATV下り信号(70~770MHz)は、CATV局1010から幹線に設置されている増幅装置や分岐器などの幹線機器1011を介してCATVの幹線に送出されている。このCATV下り信号は、幹線に挿入されている分岐器などにより分岐され、さらに、タップオフ1012および保安器1013を介して第2実施例のテレビ共聴システム2が設置されている棟内に引き込まれている。そして、保安器1013までのメンテナンスはCATV局1010が行うが、保安器1013以降のメンテナンスは加入者が行うこととされている。CATV下り信号には、地上デジタルテレビ放送信号が含まれている。
【0033】
保安器1013の出力されるCATV下り信号は分波・混合器(DM)1の第1入力端子に入力される。また、BS/CSアンテナ12で受信されたBS/CS放送信号は中間周波数信号(BS/CS-IF信号)に周波数変換されて、DM1の第2入力端子に入力される。DM1で地上デジタルテレビ放送信号を含むCATV信号とBS/CS-IF信号とが混合されて共聴信号とされる。この共聴信号は破線で囲まれている集合住宅内に引き込まれて、双方向の増幅器(AMP)1に入力され所定のレベルになるよう増幅されて出力される。AMP1で増幅された共聴信号は前述したウィルキンソン分配器とされる分配数4の分配器(SP)1に入力され、SP1で4分配された共聴信号は4つの分配端子からそれぞれ出力される。SP1の4つの分配端子からそれぞれ出力される共聴信号は、双方向のAMP2,AMP3,AMP4,AMP5にそれぞれ入力されて、所定レベルになるよう増幅されて出力されている。
【0034】
AMP5で増幅された共聴信号は、分岐数4の分岐器(BR)2に入力されて4分岐され、BR2の出力端子からの共聴信号がウィルキンソン分配器とされる分配数6のSP3に入力されて6分配される。このように、SP3はBR2に縦続接続されている。BR2の4つの分岐端子は双方向のAMP6,AMP7,AMP8,AMP9の入力側にそれぞれ接続されて、BR2で4分岐された共聴信号のそれぞれが所定レベルになるよう増幅されて、それぞれ出力されている。BR2の出力端子はSP3に接続されて、出力端子から出力された共聴信号はSP3で6分配される。SP3の6つの分配端子は双方向のAMP10,AMP11,AMP12,AMP13,AMP14,AMP15の入力側にそれぞれ接続されて、SP3で6分配された共聴信号のそれぞれが所定レベルになるよう増幅されて、それぞれ出力されている。
AMP12で増幅された共聴信号は、ウィルキンソン分配器とされる分配数4のSP4に入力されて4分配される。SP4の1つの分配端子は住戸Dmに接続されており、SP4で分配された共聴信号が住戸Dmに引き込まれて、住戸Dm内のウィルキンソン分配器とされる分配数4のSP5に入力される。SP5の4つの分配端子には、それぞれテレビ端子Ta,テレビ端子Tb,テレビ端子Tc,テレビ端子Tdが接続されており、SP5で分配された共聴信号がテレビ端子Ta~テレビ端子Tdから出力される。テレビ端子Ta~テレビ端子Tdにテレビジョンやレコーダーを接続することにより、テレビ放送などを視聴したり録画したりすることができる。
【0035】
また、テレビ端子Ta~テレビ端子TdにはCATV上り信号(10~55MHz)を入力することができ、テレビ端子Ta~テレビ端子Tdに入力されたCATV上り信号はSP5-SP4-AMP12-SP3-BR2-AMP5-SP1-AMP1の経路で第2実施例のテレビ共聴システム2で上っていく。この経路内の双方向のAMP12,AMP5,AMP1により所定レベルになるよう増幅されてDM1の出力側に入力される。DM1では、CATV上り信号が分波されて保安器1013に向けて出力され、保安器1013および幹線を介してCATV局1010で受信される。
【0036】
上記説明した第2実施例のテレビ共聴システム2は、AMP1が1段目増幅器とされ、1段目増幅器のAMP1に縦続されているAMP2~AMP5の4台が2段目増幅器とされている。また、2段目増幅器のAMP2~AMP5のそれぞれに縦続されている10台のAMP6~AMP15が3段目増幅器とされている。この場合、2段目増幅器のAMP2~AMP4に縦続されている3段目増幅器以降の構成は、2段目増幅器のAMP5に3段目増幅器のAMP6~AMP15が縦続されている構成と同様とされており、省略して示されている。さらに、3段目増幅器のAMP6~AMP11,AMP13~AMP15のそれぞれに縦続されている構成は、3段目増幅器のAMP12に縦続されている構成と同様とされており、省略して示されている。さらにまた、SP4の4つの分配端子はそれぞれ異なる住戸Dmに接続されているが、3つの分配端子の接続構成は省略して示されている。
本発明の第2実施例のテレビ共聴システム2は、以上の通りの構成とされているから、本発明の第2実施例のテレビ共聴システム2により共聴信号を伝送できる住戸Dmの数である世帯数の上限は、SP1の分配数×(BR2の分岐数+SP3の分配数)×SP4=4×10×4=160世帯数とされる。
なお、本発明の第2実施例のテレビ共聴システム2においても、1段目増幅器が1台、2段目増幅器が4台、3段目増幅器が40台とされている。このように、本発明の第2実施例のテレビ共聴システム2においては、合計45台の増幅器が使用されている。
【0037】
<第3実施例のテレビ共聴システム>
本発明の第3実施例のテレビ共聴システム3の構成を示す機能ブロック図を図8に示す。
図8に示す本発明の第3実施例のテレビ共聴システム3は、数十ないし数百の住戸の集合住宅等に設置され、各住戸にFM放送信号と地上デジタルテレビ放送信号および衛星デジタル放送信号を配信している。第3実施例のテレビ共聴システム3は、FM放送を受信するFMアンテナ13と地上デジタルテレビ放送を受信するUHFアンテナ11と衛星デジタル放送とされるBS/CS放送を受信するBS/CSアンテナ12とを備え、図示しないが3つのアンテナが屋上等に設置されている。FMアンテナ13で受信されたFM放送信号(76~95MHz)は混合器(DM)2の第1入力端子に入力され、UHFアンテナ11で受信されたUHF帯の地上デジタルテレビ放送信号(470~710MHz)は、DM2の第2入力端子に入力される。DM2でFM放送信号と地上デジタルテレビ放送信号とが混合されてDM1の第1入力端子に入力される。また、BS/CSアンテナ12で受信されたBS/CS放送信号は中間周波数信号(BS/CS-IF信号)に周波数変換されて、DM1の第2入力端子に入力される。DM1でFM放送信号および地上デジタルテレビ放送信号とBS/CS-IF信号とが混合されて共聴信号とされる。この共聴信号は、破線で囲まれている集合住宅内に引き込まれて増幅器(AMP)1に入力され所定のレベルになるよう増幅されて出力される。AMP1で増幅された共聴信号は後述するウィルキンソン分配器とされる分配数4の分配器(SP)1に入力され、SP1で4分配された共聴信号は4つの分配端子からそれぞれ出力される。SP1の4つの分配端子からそれぞれ出力される共聴信号は、AMP2,AMP3,AMP4,AMP5にそれぞれ入力されて、所定レベルになるよう増幅されて出力されている。
【0038】
AMP5で増幅された共聴信号は、分岐数4の分岐器(BR)2に入力されて4分岐され、BR2の出力端子からの共聴信号がウィルキンソン分配器とされる分配数6のSP3に入力されて6分配される。このように、SP3はBR2に縦続接続されている。BR2の4つの分岐端子はAMP6,AMP7,AMP8,AMP9の入力側にそれぞれ接続されて、BR2で4分岐された共聴信号のそれぞれが所定レベルになるよう増幅されて、それぞれ出力されている。BR2の出力端子はSP3に接続されて、出力端子から出力された共聴信号はSP3で6分配される。SP3の6つの分配端子はAMP10,AMP11,AMP12,AMP13,AMP14,AMP15の入力側にそれぞれ接続されて、SP3で6分配された共聴信号のそれぞれが所定レベルになるよう増幅されて、それぞれ出力されている。
AMP12で増幅された共聴信号は、ウィルキンソン分配器とされる分配数4のSP4に入力されて4分配される。SP4の1つの分配端子は住戸Dmに接続されており、SP4で分配された共聴信号が住戸Dmに引き込まれて、住戸Dm内のウィルキンソン分配器とされる分配数4のSP5に入力される。SP5の4つの分配端子には、それぞれテレビ端子Ta,テレビ端子Tb,テレビ端子Tc,テレビ端子Tdが接続されており、SP5で分配された共聴信号がテレビ端子Ta~テレビ端子Tdから出力される。テレビ端子Ta~テレビ端子Tdにテレビジョンやレコーダーを接続することにより、FM放送やテレビ放送などを視聴したり録画したりすることができる。
【0039】
上記説明した第3実施例のテレビ共聴システム3は、AMP1が1段目増幅器とされ、1段目増幅器のAMP1に縦続されているAMP2~AMP5の4台が2段目増幅器とされている。また、2段目増幅器のAMP2~AMP5のそれぞれに縦続されている10台のAMP6~AMP15が3段目増幅器とされている。この場合、2段目増幅器のAMP2~AMP4に縦続されている3段目増幅器以降の構成は、2段目増幅器のAMP5に3段目増幅器のAMP6~AMP15が縦続されている構成と同様とされており、省略して示されている。さらに、3段目増幅器のAMP6~AMP11,AMP13~AMP15のそれぞれに縦続されている構成は、3段目増幅器のAMP12に縦続されている構成と同様とされており、省略して示されている。さらにまた、SP4の4つの分配端子はそれぞれ異なる住戸Dmに接続されているが、3つの分配端子の接続構成は省略して示されている。
本発明の第3実施例のテレビ共聴システム3は、以上の通りの構成とされているから、本発明の第3実施例のテレビ共聴システム3により共聴信号を伝送できる住戸Dmの数である世帯数の上限は、SP1の分配数×(BR2の分岐数+SP3の分配数)×SP4=4×10×4=160世帯数とされる。
なお、本発明の第3実施例のテレビ共聴システム3においても、1段目増幅器が1台、2段目増幅器が4台、3段目増幅器が40台とされている。このように、本発明の第3実施例のテレビ共聴システム3においては、合計45台の増幅器が使用されている。
【0040】
<分配器の電気的特性の対比>
次に、本発明の実施例において採用されているウィルキンソン分配器と従来採用されているコア巻きコイル分配器との電気的特性を対比して図9図12に示す。図9(a)(b)は図3図4に示す4分配器の分配損失の周波数特性を対比して示す図表とグラフであり、図9(c)(d)は4分配器の端子間結合損失の周波数特性を対比して示す図表とグラフであり、図10(a)(b)は4分配器の反射損失(入力)の周波数特性を対比して示す図表とグラフであり、図10(c)(d)は4分配器の反射損失(出力)の周波数特性を対比して示す図表とグラフである。これらの図においては、分配数4のウィルキンソン分配器40である4分配器をWS4P、分配数6のウィルキンソン分配器50である6分配器をWS6Pとし、コア巻きコイルの4分配器をCW4P、6分配器をCW6Pとして示している。また、図11(a)(b)は6分配器の分配損失の周波数特性を対比して示す図表とグラフであり、図11(c)(d)は6分配器の端子間結合損失の周波数特性を対比して示す図表とグラフであり、図12(a)(b)は6分配器の反射損失(入力)の周波数特性を対比して示す図表とグラフであり、図12(c)(d)は6分配器の反射損失(出力)の周波数特性を対比して示す図表とグラフである。
【0041】
まず、図9(a)(b)(c)(d)および図10(a)(b)(c)(d)に示す4分配器のWS4P,CW4Pの電気的特性について説明する。図9(a)(b)に示すように、10MHz(m1)における分配損失はWS4Pで-8.0dB、CW4Pで-7.5dBとされ、470MHz(m2)における分配損失はWS4Pで-6.2dBと良好になり、CW4Pで-7.2dBとされ、3.2GHz(m3)における分配損失はWS4Pで-6.5dBと若干増加するが、CW4Pでは-12.2dBと急激に増加していることが分かる。このように、ウィルキンソン分配器WS4Pにおいては、m2近傍において最も良好な分配損失となり、m3の高域になっても分配損失は若干増加するものの、周波数に対して高域までほぼフラットな周波数特性となっていることが分かる。これに対して、コア巻きコイル分配器CW4Pにおいては、m2の中域を超えると分配損失が急激に増加していく周波数特性となることが分かる。
また、図9(c)(d)に示すように、10MHz(m10)におけるOUT1とOUT3との間の端子間結合損失はWS4Pで-7.9dBであるが、CW4Pでは-23.3.7Bと良好とされ、470MHz(m11)における端子間結合損失はWS4Pで-13.7dBであるが、CW4Pで-39.8dBとより良好になり、3.2GHz(m12)における端子間結合損失はWS4Pで-13.8dB、CW4Pで-29.2dBとされている。このように、端子間結合損失は、m10からm11の低域においてはコア巻きコイル分配器CW4Pはウィルキンソン分配器WS4Pよりかなり良好な周波数特性を示しており、m11からm12の中域から高域に渡りコア巻きコイル分配器CW4Pはウィルキンソン分配器WS4Pより良好な周波数特性となっていることが分かる。
【0042】
さらに、図10(a)(b)に示すように、10MHz(m4)における入力端子の反射損失(入力)はWS4Pで-4.5dB、CW4Pで-16.7dBとされ、470MHz(m5)における反射損失(入力)はWS4Pで-16.8dBと良好になり、CW4Pで-26.2dBとされ、3.2GHz(m6)における反射損失(入力)はWS4Pで-15.6dB、CW4Pで-10.3dBとされている。このように、コア巻きコイル分配器CW4Pの反射損失(入力)は、m4からm5までの低域においてウィルキンソン分配器WS4Pの反射損失(入力)より良好となるが、m5からm6までの帯域においてはウィルキンソン分配器WS4Pの反射損失(入力)がコア巻きコイル分配器CW4Pの反射損失(入力)より良好な周波数特性となる帯域があることが分かる。
さらにまた、図10(c)(d)に示すように、10MHz(m7)におけるOUT2の反射損失(出力)はWS4Pで-4.5dB、CW4Pで-14.6dBとされ、470MHz(m8)における反射損失(出力)はWS4Pで-19.3dB、CW4Pで-29.0dBと良好になり、3.2GHz(m9)における反射損失(出力)はWS4Pで-19.3dB、CW4Pで-21.1dBとされている。このように、コア巻きコイル分配器CW4Pの反射損失(出力)は、m7からm8までの低域においてウィルキンソン分配器WS4Pの反射損失(出力)より良好となるが、m5からm6までの帯域においてはウィルキンソン分配器WS4Pの反射損失(出力)がコア巻きコイル分配器CW4Pの反射損失(出力)よりほぼ良好な周波数特性となることが分かる。
【0043】
次に、図11(a)(b)(c)(d)および図12(a)(b)(c)(d)に示す6分配器のWS6P,CW6Pの電気的特性について説明する。図11(a)(b)に示すように、10MHz(m1)における分配損失はWS6Pで-10.9dB、CW6Pで-9.5dBとされ、470MHz(m2)における分配損失はWS6Pで-8.2dBと良好になり、CW6Pで-9.9dBとされ、3.2GHz(m3)における分配損失はWS6Pで-9.5dBと若干増加するが、CW6Pでは-15.8dBと急激に増加していることが分かる。このように、ウィルキンソン分配器WS6Pにおいては、m2近傍において最も良好な分配損失となり、m3の高域になっても分配損失は若干増加するものの、周波数に対してm3の高域までほぼフラットな周波数特性となっていることが分かる。これに対して、コア巻きコイル分配器CW6Pにおいては、m2の中域を超えると分配損失が急激に増加していく周波数特性となることが分かる。
また、図11(c)(d)に示すように、10MHz(m10)におけるOUT2とOUT4との間の端子間結合損失はWS6Pで-10.6dBであるが、CW6Pでは-20.3dBと良好とされ、470MHz(m11)における端子間結合損失はWS6Pで-18.4dBと良好になるが、CW6Pで-34.6dBとより良好になり、3.2GHz(m12)における端子間結合損失はWS6Pで-19.9dB、CW6Pで-18.4dBとされている。このように、端子間結合損失は、m10からm11の低域においてはコア巻きコイル分配器はウィルキンソン分配器より良好な周波数特性を示しており、m11からm12の中域から高域にわたってはウィルキンソン分配器とコア巻きコイル分配器とはほぼ同様の周波数特性となっていることが分かる。
【0044】
さらに、図12(a)(b)に示すように、10MHz(m4)における入力端子の反射損失(入力)はWS6Pで-3.0dB、CW6Pで-10.9dBとされ、470MHz(m5)における反射損失(入力)はWS6Pで-14.6dBと良好になり、CW6Pで-14.3dBとされ、3.2GHz(m6)における反射損失(入力)はWS6Pで-16.0dB、CW6Pで-15.4dBとされている。このように、m5までの低域においてコア巻きコイル分配器はウィルキンソン分配器よりおおむね良好な反射損失(入力)となるが、m5を超えるとウィルキンソン分配器はコア巻きコイル分配器よりおおむね良好な反射損失(入力)の周波数特性となることが分かる。
さらにまた、図12(c)(d)に示すように、10MHz(m7)におけるOUT2の反射損失(出力)はWS6Pで-3.0dB、CW6Pで-10.8dBとWS6Pよりかなり良好とされ、470MHz(m8)における反射損失(出力)はWS6Pで-12.3dB、CW6Pで-20.3dBといずれも良好とされ、3.2GHz(m9)における反射損失(出力)はWS6Pで-11.2dB、CW6Pで-12.6dBとされている。このように、反射損失(出力)は、m7からm8の低域においてはコア巻きコイル分配器はウィルキンソン分配器より良好な周波数特性を示しており、m8からm9の中域から高域にわたってはウィルキンソン分配器とコア巻きコイル分配器とはほぼ同様の周波数特性となっていることが分かる。
以上のように、ウィルキンソン分配器においては、分配数によらず3.2GHzの高域になっても分配損失は若干増加するものの、周波数に対して高域までほぼフラットな周波数特性となっているのに対して、コア巻きコイル分配器においては、470MHzの中域を超えると分配損失が急激に増加していく周波数特性となる。これにより、本発明の実施例にかかるテレビ共聴システムにおいてウィルキンソン分配器を採用すると、コア巻きコイル分配器を採用した際に生じる上述した種々の問題を解決できるようになる。この場合、増幅器の定格出力を所定量ダウンしても後述するようにテレビ端子からの出力レベルが規定値を満足するようになる。また、本発明の実施例にかかるテレビ共聴システムでは伝送されるテレビ放送信号がデジタルのテレビ放送信号とされることから、分配器の出力端子間のアイソレーションとされる端子間結合損失が良好な周波数特性とされなくても障害が生じることはない。
【0045】
<レベル計算の事例>
本発明の実施例にかかるテレビ共聴システムにおいて、テレビ端子からの出力レベルが規定値を満足すること、特に、本発明の実施例にかかるテレビ共聴システムの全体の消費電力を減らせるように、増幅器の定格出力を5dB,10dBとダウンしてもテレビ端子からの出力レベルが規定値を満足するようになることを、本発明の実施例にかかるテレビ共聴システムにおけるレベル計算の事例を挙げて説明する。
図13に示すレベル計算の事例は、AMP1~AMP15の増幅器の定格出力レベルを通常必要とされる出力レベルに設定している。すなわち、AMP1~AMP15の増幅器の定格出力レベルをUHFの帯域において105dBμV、BS/CS-IFの帯域において103/113dBμVとした事例である。ここで、増幅器の縦続された段数が3段とされている場合は、歪を発生しないように定格出力レベルを通常必要とされる出力レベルより5dBダウンさせることが推奨されている。そのため、AMP1~AMP15の増幅器の定格出力レベルをUHFの帯域において100dBμV、BS/CS-IFの帯域において98/108dBμVの値を超えない様にしなければならない。図13に示す「6」、「10」、「17」欄の増幅器の出力レベルを調整している。なお、定格出力レベルは増幅機の機種により異なっている。図13に示す事例を参照すると、「8」欄の4分配器、「14」欄の6分配器、「19」欄の4分配器、「21」欄の4分配器がウィルキンソン分配器とされていることから、図6(a)に示すように10MHz~3224MHzに渡り分配損失はほぼ一定のフラットな周波数特性となっている。図13に示す事例では、AMP1~AMP15の増幅器の定格出力レベルが高出力で高利得の増幅器とされているため、最下欄の「テレビ端子出力」の計算値の出力レベルがUHFの帯域における規定値である50~81dBμVを十分に満足していると共に、BS/CS-IFの帯域における規定値である52~81dBμV(BS・広帯域CS)/54~81dBμV(高度BS・CS)を十分に満足していることが分かる。
また、図14に示すレベル計算の事例は、AMP1~AMP15の増幅器の定格出力レベルを通常必要とされる出力レベルより5dBダウンさせた出力レベルと設定している。すなわち、AMP1~AMP15の増幅器の定格出力レベルをUHFの帯域において100dBμV、BS/CS-IFの帯域において98/108dBμVと5dBダウンさせた事例である。上記の例と同様に増幅器の縦続された段数が3段とされているため、AMP1~AMP15の増幅器の定格出力レベルをUHFの帯域において95dBμV、BS/CS-IFの帯域において93/103dBμVの値を超えない様にしなければならない。図14に示す「6」、「10」、「17」欄の増幅器の出力レベルを調整している。図14に示す事例を参照すると、「8」欄の4分配器、「14」欄の6分配器、「19」欄の4分配器、「21」欄の4分配器がウィルキンソン分配器とされていることから、図6(a)に示すように10MHz~3224MHzに渡り分配損失はほぼ一定のフラットな周波数特性となっている。図14に示す事例では、AMP1~AMP15の増幅器の定格出力レベルが5dBダウンされているため、AMP1~AMP15の増幅器の出力レベルが約5dBダウンされている。このようにしても、最下欄の「テレビ端子出力」の計算値の出力レベルはUHFの帯域における規定値である50~81dBμVを十分に満足すると共に、BS/CS-IFの帯域における規定値である52~81dBμV(BS・広帯域CS)/54~81dBμV(高度BS・CS)を満足していることが分かる。
なお、AMP1~AMP15の増幅器の定格出力レベルの一般的な増幅器の消費電力は20W程度となる。また、通常必要とされる出力レベルより5dBダウンさせた出力レベルとすると、消費電力は13W程度なので、AMP1~AMP15の増幅器の消費電力は少なくとも20%以上低減される。
【0046】
さらに、図15に示すレベル計算の事例は、AMP1~AMP15の増幅器の定格出力レベルを通常必要とされる出力レベルより10dBダウンさせた出力レベルと設定している。これは、増幅器の定格出力レベルを通常必要とされる出力レベルよりダウンさせることにより、本発明の実施例にかかるテレビ共聴システムの全体の消費電力を低減させることができるからである。すなわち、AMP1~AMP15の増幅器の定格出力レベルをUHFの帯域において95dBμV、BS/CS-IFの帯域において93/103dBμVと10dBダウンさせた事例である。上記の例と同様に増幅器の縦続された段数が3段とされているため、AMP1~AMP15の増幅器の定格出力レベルをUHFの帯域において90dBμV、BS/CS-IFの帯域において88/98dBμVの値を超えない様にしなければならない。図15に示す「6」、「10」、「17」欄の増幅器の出力レベルを調整している。図15に示す事例を参照すると、「8」欄の4分配器、「14」欄の6分配器、「19」欄の4分配器、「21」欄の4分配器がウィルキンソン分配器とされていることから、図6(a)に示すように10MHz~3224MHzに渡り分配損失はほぼ一定のフラットな周波数特性となっている。図15に示す事例では、AMP1~AMP15の増幅器の定格出力レベルが10dBダウンされているため、AMP1~AMP15の増幅器の出力レベルが約10dBダウンされている。このようにしても、最下欄の「テレビ端子出力」の計算値の出力レベルはUHFの帯域における規定値である50~81dBμVを十分に満足すると共に、BS/CS-IFの帯域における規定値である52~81dBμV(BS・広帯域CS)/54~81dBμV(高度BS・CS)を満足していることが分かる。
なお、AMP1~AMP15の増幅器の定格出力レベルを通常必要とされる出力レベルより10dBダウンさせた出力レベルとすると、AMP1~AMP15の増幅器の消費電力は少なくとも40%以上低減される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上説明した本発明にかかるテレビ共聴システムは、地上デジタル放送およびCS/BSの衛星放送のテレビ共聴システムとしたり、CATVから送られてくる地上デジタル放送信号が含まれているCATV下り信号およびCS/BSの衛星放送のテレビ共聴システムとすることができる。また、FM放送信号をテレビ共聴システムで伝送してもよい。
以上説明した本発明にかかるテレビ共聴システムにおける増幅器は、共同受信システム用の増幅器を用いるようにしたが、増幅器の定格出力をダウンさせた際には、共同受信システム用の増幅器に替えて家庭用受信機器のブースターを利用できる場合がある。家庭用受信機器のブースターが利用できる場合は、テレビ共聴システムを構築する費用や維持費を低減することができる。
また、上述したように本発明にかかるテレビ共聴システムにおける増幅器の定格出力をダウンさせた際には、本発明にかかるテレビ共聴システムの全体の消費電力量を低減することができることから、年間の維持経費が低減される割合を大きくすることができる。
なお、本発明にかかるテレビ共聴システムで使用されているウィルキンソン分配器は公知の分配器であるが、端子間結合損失の周波数特性の問題で障害が発生することがあることから、テレビ放送信号を伝送するテレビ共聴システムに使用することは考えられていなかった。本発明は、テレビ放送がデジタル放送となったことに注目してなされた発明であり、図17に示す分配器SPとされるコイル巻き分配器を使用するテレビ共聴システムと比較して、本発明にかかるテレビ共聴システムは上述した特徴的な作用効果を奏することができる。
以上説明した本発明にかかるテレビ共聴システムにおいては、増幅器を縦続する段数を3段としたが2段または4段以上のn段の増幅器を縦続接続するようにしてもよい。この場合、各段の増幅器には増幅器から出力される共聴信号を複数に分配する分配器が接続される。
以上説明した本発明にかかるテレビ共聴システムにおいて、共聴信号を増幅するAMP1を1段目増幅器、AMP1から出力される共聴信号を複数に分配するSP1を第1分配器、SP1で分配された共聴信号をそれぞれ増幅するAMP2~AMP5を2段目増幅器、AMP2~AMP5からそれぞれ出力される共聴信号を複数に分配するSP3を第2分配器、SP3で分配された共聴信号をそれぞれ増幅するAMP10~AMP15を3段目増幅器、AMP10~AMP15からそれぞれ出力される共聴信号を複数に分配するSP4を第3分配器とすることができる。また、BR2で分岐された共聴信号をそれぞれ増幅するAMP6~AMP9を第2の3段目増幅器、AMP6~AMP9からそれぞれ出力される共聴信号を複数に分配するSP4を第2の第3分配器とすることができる。
また、本発明にかかるテレビ共聴システムにおいて、SP1,SP3,SP4のすべての分配器をウィルキンソン分配器としたが、これに限ることはなく、SP1,SP3,SP4のいずれか1つはウィルキンソン分配器としなくてもよい。このようにしても、本発明のテレビ共聴システムでは、テレビ共聴システムで使用している高出力・高利得の増幅器を低出力・低利得の増幅器に変更した場合でもテレビ端子からの出力レベルが規定値を満足するようになる。さらに、AMP1とSP1との間に分岐器が接続されていてもよい。さらにまた、SP1,SP3,SP4における分配端子の少なくとも1つの分配端子が終端されていてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 テレビ共聴システム、2 テレビ共聴システム、3 テレビ共聴システム、11 UHFアンテナ、12 BS/CSアンテナ、13 FMアンテナ、30 ウィルキンソン回路、40 ウィルキンソン分配器、41 ウィルキンソン分配器、50 ウィルキンソン分配器、100 テレビ共聴システム、1010 CATV局、1011 幹線機器、1012 タップオフ、1013 保安器、111 UHFアンテナ、112 BS/CSアンテナ
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