(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090831
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の削孔方法、切削ビット及び削孔装置
(51)【国際特許分類】
B28D 1/14 20060101AFI20240627BHJP
B25D 17/02 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B28D1/14
B25D17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206972
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510111227
【氏名又は名称】工建テック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514185323
【氏名又は名称】株式会社エフビーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小原 孝之
(72)【発明者】
【氏名】山本 和範
(72)【発明者】
【氏名】中山 茂
(72)【発明者】
【氏名】上田 拓己
(72)【発明者】
【氏名】奈良 壮士
(72)【発明者】
【氏名】沼口 雅英
(72)【発明者】
【氏名】関根 晋作
【テーマコード(参考)】
2D058
3C069
【Fターム(参考)】
2D058AA14
2D058BA04
2D058BA11
2D058CA05
2D058CB04
3C069AA04
3C069BA09
3C069BB01
3C069BB02
3C069BB04
3C069BC01
3C069BC04
3C069CA10
3C069DA06
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】コンクリート構造物に形成される取付け孔に対するアンカ部材又は補強部材などの定着性能が高く、かつ施工速度が速く施工コストを低減可能な削孔方法を提案する。
【解決手段】コンクリート構造物に取付け部材を取り付けるための取付け孔を形成するコンクリート構造物の削孔方法の一態様であって、ビット本体の先端面に設けられ、少なくとも先端面の外縁を含む領域に形成された刃部と、ビット本体の外周面に設けられた少なくとも1つの超硬チップであって、ビット本体の中心軸線と超硬チップの外側端との距離Aは、中心軸線と刃部の外側端との距離Bより大きい超硬チップと、を備える切削ビットを用意する準備ステップと、切削ビットを、中心軸線を中心とする回転とコンクリート構造物に対する打撃とを併用可能なドリルに装着し、ドリルを用いてコンクリート構造物に取付け孔を形成すると同時に、超硬チップによって、取付け孔の内周面に凹溝を形成する目粗し処理を行う削孔ステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物に取付け部材を取り付けるための取付け孔を形成するコンクリート構造物の削孔方法であって、
ビット本体の先端面に設けられ、少なくとも前記先端面の外縁を含む領域に形成された刃部と、
前記ビット本体の外周面に設けられた少なくとも1つの超硬チップであって、前記ビット本体の中心軸線と前記超硬チップの外側端との距離Aは、前記中心軸線と前記刃部の外側端との距離Bより大きい超硬チップと、
を備える切削ビットを用意する準備ステップと、
前記切削ビットを、前記中心軸線を中心とする回転と前記コンクリート構造物に対する打撃とを併用可能なドリルに装着し、前記ドリルを用いて前記コンクリート構造物に前記取付け孔を形成すると同時に、前記超硬チップによって、前記取付け孔の内周面に凹溝を形成する目粗し処理を行う削孔ステップと、
を含むコンクリート構造物の削孔方法。
【請求項2】
前記削孔ステップの前に、前記コンクリート構造物に対して前記切削ビットが所定の位置及び向きとなるように、前記ドリルを固定スタンドによって支持する位置決めステップを含む請求項1に記載のコンクリート構造物の削孔方法。
【請求項3】
コンクリート構造物に取付け部材を取り付ける取付け孔を形成するための切削ビットであって、
ビット本体の先端面に設けられ、少なくとも前記先端面の外縁を含む領域に形成された刃部と、
前記ビット本体の外周面に設けられた少なくとも1つの超硬チップであって、前記ビット本体の中心軸線と前記超硬チップの外側端との距離Aは、前記中心軸線と前記刃部の外側端との距離Bより大きい超硬チップと、
を備える切削ビット。
【請求項4】
前記刃部は、前記先端面の中心部を通り前記先端面の外縁まで延在する稜線を有する山形に形成され、
前記少なくとも1つの超硬チップは、前記ビット本体の外周面のうち、前記稜線が延在する前記先端面の外縁を含む第1外周面とは周方向において異なる第2外周面に設けられ、
前記中心軸線と前記少なくとも1つの超硬チップが設けられた前記第2外周面との距離をCとしたとき、次の(1)式の関係を満たすように構成された請求項3に記載の切削ビット。
C<B<A (1)
【請求項5】
前記第1外周面と前記第2外周面との間に形成された第3外周面に凹部が形成され、該凹部に流体噴射孔が形成されている請求項4に記載の切削ビット。
【請求項6】
前記刃部は超硬合金で構成され、
前記超硬チップが設けられた前記第2外周面は、鉄系材料で構成されている請求項4に記載の切削ビット。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれか1項に記載の切削ビットと、
前記切削ビットが装着された、前記中心軸線を中心とする回転と前記コンクリート構造物に対する打撃とを併用可能なドリルと、
を備える削孔装置。
【請求項8】
前記コンクリート構造物に対して前記切削ビットが所定の位置及び向きに支持されるように前記ドリルを支持するための固定スタンドをさらに備える請求項7に記載の削孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンクリート構造物の削孔方法、該削孔方法に適用可能な切削ビット、及び該切削ビットを備える削孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人等は、先に、既設のコンクリート構造物にアンカ部材を取り付けるための施工方法として、ダイヤモンドコアビットによりアンカ部材挿入用の前処理孔を穿設するコア削孔ステップと、該前処理孔の内周面とほぼ同径の外周面を有し、該外周面に複数個の超硬チップを突設してなる切削ビットを回転させながら前処理孔に挿入して前処理孔の内周面に螺旋状凹溝を形成する目粗しステップと、を行い、さらに、前処理孔に無機系又は有機系の材料からなる充填剤を充填すると共に、アンカ部材を押し込んで、アンカ部材を前処理孔に付着固定させるステップと、を行う施工方法を提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のアンカ施工方法は、前処理孔の内周面に螺旋状凹溝を形成するため、アンカ部材の高い定着性能を発揮できる。しかし、削孔ステップがコア削孔ステップ及び目粗しステップの2段階になるため、一般に用いられる削岩機による削孔作業と比較して削孔速度が非常に遅くなる。そのため、施工歩掛が低くなり、施工コストが割高となる問題がある。
【0005】
本開示は、上述する事情に鑑みてなされたもので、コンクリート構造物にアンカ部材や補強部材を取り付ける場合に、コンクリート構造物に形成される取付け孔に対するアンカ部材などの定着性能が高く、かつ施工速度が速く施工コストを低減可能な削孔方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係るコンクリート構造物の削孔方法の一態様は、コンクリート構造物に取付け部材を取り付けるための取付け孔を形成するコンクリート構造物の削孔方法であって、ビット本体の先端面に設けられ、少なくとも前記先端面の外縁を含む領域に形成された刃部と、前記ビット本体の外周面に設けられた少なくとも1つの超硬チップであって、前記ビット本体の中心軸線と前記超硬チップの外側端との距離Aは、前記中心軸線と前記刃部の外側端との距離Bより大きい超硬チップと、を備える切削ビットを用意する準備ステップと、前記切削ビットを、前記中心軸線を中心とする回転と前記コンクリート構造物に対する打撃とを併用可能なドリルに装着し、前記ドリルを用いて前記コンクリート構造物に前記取付け孔を形成すると同時に、前記超硬チップによって、前記取付け孔の内周面に凹溝を形成する目粗し処理を行う削孔ステップと、を含む。
【0007】
また、本開示に係る切削ビットの一態様は、コンクリート構造物に取付け部材を取り付ける取付け孔を形成するための切削ビットであって、ビット本体の先端面に設けられ、少なくとも前記先端面の外縁を含む領域に形成された刃部と、前記ビット本体の外周面に設けられた少なくとも1つの超硬チップであって、前記ビット本体の中心軸線と前記超硬チップの外側端(ビット本体の径方向外側端)との距離Aは、前記中心軸線と前記刃部の外側端(ビット本体の径方向外側端)との距離Bより大きい超硬チップと、を備える。
【0008】
さらに、本開示に係る削孔装置の一態様は、上述の切削ビットと、前記切削ビットが装着された、前記中心軸線を中心とする回転と前記コンクリート構造物に対する打撃とを併用可能なドリルと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るコンクリート構造物の削孔方法、切削ビット及び削孔装置の一態様によれば、コンクリート構造物に対する取付け孔の形成と取付け孔の内周面への凹溝の形成とを同時に行うことができる。これによって、施工時間を低減できるため、施工歩掛を高め、施工コストを低減できる。また、目粗し処理によって、取付け孔の内周面に凹溝が形成されるため、取付け孔に固定された取付け部材の引抜き耐力を高く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るコンクリート構造物の削孔方法を示す工程図である。
【
図2】一実施形態に係る切削ビットを示す斜視図である。
【
図3】
図2に図示された切削ビットを
図2中の矢印X方向から視認した平面図である。
【
図4】一実施形態に係る切削ビット及び該切削ビットによってコンクリート構造物に形成される取付け孔を示す模式的斜視図である。
【
図5A】一実施形態に係る削孔装置であって、固定スタンドによってコンクリート構造物の壁面に固定された削孔装置を示す模式的正面図である。
【
図5B】
図5Aに図示されている削孔装置を用いて、削孔処理及び目粗し処理を行うステップを示す模式的正面図である。
【
図5C】コンクリート構造物に形成された取付け孔に定着剤を充填するステップを示す模式図である。
【
図5D】コンクリート構造物に形成された取付け孔に取付け部材を挿入するステップを示す模式図である。
【
図6】一実施形態に係る削孔方法及び比較例としての削孔方法を試験的に行うための試験体を示す説明図である。
【
図7】一実施形態に係る削孔方法で得られた試験結果(引抜き耐力)を示すグラフである。
【
図8】比較例としての削孔方法で得られた試験結果(引抜き耐力)を示すグラフである。
【
図9】比較例としての別な削孔方法で得られた試験結果(引抜き耐力)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、これらの実施形態に記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状及びその相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係るコンクリート構造物の削孔方法の工程図である。
図2は、本削孔方法を可能とする一実施形態に係る切削ビット10Aの斜視図であり、
図3は、切削ビット10Aを
図2中の矢印X方向から視認した平面図である。
【0013】
図1に示されている一実施形態に係る削孔方法は、既設コンクリート構造物に取付け部材を取り付けるための取付け孔を形成するための削孔方法である。削孔対象となるコンクリート構造物は、内部に鉄筋が埋設された鉄筋コンクリート構造物であってもよい。また、取付け孔に挿入されて固定される取付け部材は、例えば、コンクリート構造物をその基盤に定着させるためのアンカ部材、又はコンクリート構造物の強度を増加させるためにコンクリート構造物に埋設される補強部材等である。
本実施形態に係る削孔方法は、少なくとも、本削孔方法を可能とする切削ビット10を用意する準備ステップS10と、削孔ステップS14とを必須とする。
【0014】
まず、用意すべき切削ビット10は、
図2に示されている切削ビット10Aのように、先端面14に刃部16が形成されているビット本体12を有する。刃部16は、少なくとも先端面14の外縁14aを含む領域に形成されている。即ち、刃部16は、少なくとも先端面14の外縁14aまで延在するように形成されることで、削孔ステップS14において、切削ビット10が中心軸線Oを中心として回転して削孔を行うとき、中心軸線Oと外縁14aとの距離Bを半径とする取付け孔を形成することができる。
【0015】
また、切削ビット10Aは、その外周面18に少なくとも1つの超硬チップ20が設けられている。
図3に示されているように、ビット本体12の中心軸線Oと超硬チップ20の外側端(ビット本体12の径方向外側端)との距離Aは、中心軸線Oと刃部16の外側端(先端面14の外縁14aの位置に等しい。)との距離Bより大きくなるように構成されている(B<A)。
【0016】
次に、削孔ステップS14において、切削ビット10Aをその中心軸線Oを中心とする回転とコンクリート構造物に対する打撃とを併用可能なドリルに装着し、このドリルを用いてコンクリート構造物に取付け孔を形成すると同時に、超硬チップ20によって、取付け孔の内周面に凹溝を形成する目粗し処理を行う。
【0017】
図4は、
図2及び
図3に示されている切削ビット10Aとは別な実施形態に係る切削ビット10B及び切削ビット10Bによってコンクリート構造物100に形成される取付け孔102の形状を説明する模式的斜視図である。
図4に示されているように、削孔ステップS14において、切削ビット10が回転しながらコンクリート構造物100に進入して取付け孔102を形成する。その際に、超硬チップ20は、取付け孔102の内部で夫々螺旋状の軌跡104を描くため、取付け孔102の内周面に軌跡104に沿った螺旋状凹溝を形成する目粗し処理が行われる。
【0018】
本削孔方法によれば、削孔ステップS14において、先端部に切削ビット10Aが装着され、切削ビット10Aをその中心軸線Oを中心とする回転とコンクリート構造物100に対する打撃とを併用可能なドリルを用い、上記回転と上記打撃とを併用させることで、取付け孔102の形成(削孔処理)と取付け孔102の内周面への凹溝の形成(目粗し処理)とが同時に行われる。これによって、施工時間を低減できるため、施工歩掛を高め、施工コストを低減できる。また、取付け孔の内周面に凹溝を形成する目粗し処理が行われるため、取付け孔に充填された定着剤などによって固定された取付け部材の引抜き耐力を高く維持できる。
【0019】
図4に例示されている切削ビット10Bは、ビット本体12の外周面18に、中心軸線Oの方向において同一位置であってかつ周方向に等間隔に3個の超硬チップ20a、20b及び20cが設けられている。
削孔ステップS14において、切削ビット10Bが装着されたドリルを用いる場合、切削ビット10Bが回転しながらコンクリート構造物100に進入し、コンクリート構造物100の壁面に開口102aを有する取付け孔102を形成する。その際、超硬チップ20a~20cは、取付け孔102の内部で夫々螺旋状の軌跡104a~104cを描くため、取付け孔102の内周面に軌跡104a~104cに沿った螺旋状凹溝を形成する目粗し処理が行われる。
【0020】
超硬チップ20は、例えば超硬合金で構成され、あるいはダイヤモンドチップ、ハイス等を用いてもよい。超硬チップ20の形状は、例えば、
図2に示されているように、ビット本体12の外周面18から径方向外側へ突出した半球状の突出片であってもよく、あるいは円錐状の突出片であってもよい。
【0021】
図2に例示されている実施形態では、2個の超硬チップ20がビット本体12の外周面18の周方向の異なる位置に180度の間隔で設けられている。超硬チップ20の外周面18における設置位置及び個数は、切削ビット10の形状や取付け孔102の内周面に形成したい凹溝の数に応じて適宜選択される。
【0022】
図2及び
図3に示されている実施形態において、
図2に図示された超硬チップ20の各々の周方向位置と同一位置で、かつ中心軸線Oの方向の異なる位置の外周面18に(即ち、二点鎖線20’の位置に)、2個以上の超硬チップ20を設けるようにしてもよい。さらに、外周面18の周方向で3か所以上の異なる位置に超硬チップ20を設けてもよい。
【0023】
図5A~
図5Dは、一実施形態に係る削孔装置50を用いて、コンクリート構造物100に取付け孔102を形成し、取付け孔102に取付け部材110を固定するステップまでを順に示す模式図である。このうち
図5A及び
図5Bは、取付け孔102を形成するステップを示している。
図5A及び
図5Bに示されているように、削孔装置50は、切削ビット10と、切削ビット10が装着されるドリル52とを備えている。ドリル52は、中心軸線Oを中心とする切削ビット10の回転とコンクリート構造物100に対する切削ビット10による打撃とを併用可能に構成されている。
【0024】
削孔ステップS14において、削孔装置50を用い、中心軸線Oを中心とする切削ビット10の回転とコンクリート構造物100に対する打撃とを併用させて削孔することで、取付け孔102の形成と取付け孔102の内周面への螺旋状の軌跡104a~104cに沿う凹溝105の形成とを同時に行うことができる。これによって、施工時間を低減できるため、施工歩掛を高め、施工コストを低減できる。また、取付け孔102の内周面に凹溝105を形成する目粗し処理が行われるため、取付け孔102に充填された定着剤108によって取付け孔102に固定された取付け部材110の引抜き耐力を高く維持できる。
【0025】
図5Aに示されている実施形態に係るドリル52は、切削ビット10によるコンクリート構造物100に対する打撃力を発生させるためにエアホース54を備えている。ドリル52には、エアコンプレッサ(不図示)から圧縮空気aがエアホース54を介して供給され、この圧縮空気aを動力として、コンクリート構造物100に対する打撃力が切削ビット10に伝達される。別な実施形態では、油圧を動力として打撃力を切削ビット10に伝達する方式であってもよい。
図5Aに例示されている実施形態では、切削ビット10はロッド56を介してドリル52に接続されており、ドリル52の回転及びコンクリート構造物100に対する打撃力はロッド56を介して切削ビット10に伝達される。
【0026】
一般に削岩機として用いられている削孔装置は、切削ビットの回転とコンクリート構造物100に対する打撃を併用可能であるため、本実施形態に係る削孔装置50として用いることができる。
【0027】
一実施形態では、
図5Aに示されているように、削孔装置50は、ドリル52を支持するための固定スタンド60を備えている。固定スタンド60によってドリル52及びドリル52に装着された切削ビット10は、コンクリート構造物100に対して所定の位置及び向きとなるように支持されるため、ドリル52に装着された切削ビット10によって、取付け孔102を所定の位置及び向きに正確に形成でき、かつ削孔作業を効率化できる。
【0028】
図5Aに例示されている実施形態では、ベース盤62に長尺のポール64が固定され、ベース盤62はアンカボルト(不図示)などによってコンクリート構造物100の壁面に固定され、ポール64はコンクリート構造物100の壁面に直交するように配置されている。ドリル52は接続具66を介してクランプ68に取り付けられ、クランプ68はポール64に矢印方向にスライド可能に組み付けられている。かかる構成により、ドリル52は、コンクリート構造物100の壁面に対してほぼ直角方向に進退可能になっている。
【0029】
一実施形態に係るコンクリート構造物100の削孔方法は、
図1に示されているように、削孔ステップS14の前に、切削ビット10がコンクリート構造物100に対して所定の位置及び向きとなるように、ドリル52が固定スタンド60によって支持される位置決めステップS12を有する。
このように、ドリル52が固定スタンド60によって固定されるため、ドリル52に装着された切削ビット10によって、取付け孔102を所定の位置及び向きに正確に形成できると共に、削孔作業を効率化できる。
【0030】
図1に例示されている削孔方法では、位置決めステップS12において、まず、コンクリート構造物100の壁面に固定スタンド60を設置し(ステップS12a)、次に、ドリル52を固定スタンド60に設置する(ステップS12b)。そして、ポール64に対してクランプ68をスライドさせ、コンクリート構造物100の壁面に対するドリル52の距離を調整した後、切削ビット10をドリル52に装着し、切削ビット10をコンクリート構造物100に対して所定の位置及び向きとなるように位置決めする。
これによって、コンクリート構造物100に対する切削ビット10の位置決めを円滑に行うことができる。
【0031】
一実施形態では、
図2に示されているように、切削ビット10Aの刃部16は、ビット本体12の先端面14において、山形に形成されている。該山形形状は、先端面14の中心部を通り、かつ先端面14の外縁14aまで延在する稜線22を有している。そして、超硬チップ20は、ビット本体12の外周面18のうち、稜線22が外周面18まで延在する先端面14の外縁14aを含む第1外周面18aとは周方向において異なる第2外周面18bに設けられている。
さらに、
図3に示されているように、中心軸線Oと超硬チップ20が設けられた第2外周面18bとの距離をCとしたとき、次の(1)式の関係を満たすように構成されている。
C<B<A (1)
【0032】
本実施形態によれば、切削ビット10Aの刃部16が先端面14の外縁14aまで延在する稜線22を有する山形に形成されているため、半径が距離Bと等しい取付け孔102を確実に形成できる。
【0033】
また、超硬チップ20が設けられた第2外周面18bは、刃部16が延在する先端面14の外縁14aを含む第1外周面18aとは、ビット本体12の外周面18の周方向において異なる位置にあり、ビット本体12の中心軸線Oと超硬チップ20の外側端(中心軸線Oと直交する径方向の外側端)との距離Aと、中心軸線Oと第1外周面18aとの距離Bと、中心軸線Oと第2外周面18bとの距離Cとは、C<B<Aの関係にある。このうち、C<Bの関係を有することで、削孔中、取付け孔102の内部で超硬チップ20の径方向の動きが活発化され、取付け孔102の内周面における凹溝105の形成を効率良く行うことができる。また、B<Aの関係を有するため、超硬チップ20による凹溝105の形成を確実に行うことができる。
【0034】
さらに、切削ビット10の刃部16が稜線22を有する山形に形成されているため、稜線22が外周面18に達する外縁14aを含む第1外周面18aとは周方向において異なる外周面18(第2外周面18b)に超硬チップ20を設けるためのスペースを確保できる。このように、ビット本体12の外周面18における超硬チップ20の配置場所を確保しやすくなる。
【0035】
図2に図示されている実施形態では、ビット本体12の先端面14において、稜線22を挟んでその両側に形成されている傾斜面は、少し内側に窪んだ凹曲面を有している。即ち、稜線22に対して直交する断面において、上記傾斜面は内側に窪んだ円弧状を有している。これによって、稜線22の突出量を両側の傾斜面に対して増加でき、刃部16の切削性能を高めることができる。
なお、別な実施形態では、稜線22の両側に形成される傾斜面を平面状に形成することもできる。即ち、該傾斜面は、稜線22に対して直交する断面において直線となるように形成される。
【0036】
図3に図示されている実施形態では、稜線22は直線状を有し、かつ中心軸線Oと交わる位置に配置されている。これによって、ビット本体12の先端面14で稜線22の長さを最大にすることができるため、取付け孔102を所定の径を有するように確実に形成できる。
また、
図3に図示されている実施形態では、稜線22は中心軸線Oに対して直交している。これによって、コンクリート構造物100に対する切削強度を高めることができる。
【0037】
一実施形態では、
図2及び
図3に示されているように、ビット本体12の外周面18において、第1外周面18aと第2外周面18bとの間に第3外周面18cが形成されている。第3外周面18cには、第1外周面18a及び第2外周面18bに対して外周面18の径方向内側に窪んだ凹部24が形成され、凹部24に流体噴射孔26が形成されている。そして、流体噴射孔26から例えば空気又は水等の流体を噴射可能に構成されている。
【0038】
この実施形態によれば、流体噴射孔26から空気又は水等の流体を噴射することにより、取付け孔102の底部付近に溜まった削り屑を取付け孔102の外部へ排出できる。
【0039】
図3に図示されている実施形態では、ビット本体12の中心部に中心軸線Oに沿って流体噴射孔28が形成され、流体噴射孔26は流体噴射孔28に連通するように構成されている。エアホース54からドリル52に供給されて、切削ビット10がコンクリート構造物100に打撃力を与える動力源となる圧縮空気aの一部は、流体噴射孔28及び26を介して凹部24から噴出するように構成されている。これによって、取付け孔102に溜まった削り屑を排出するための動力源を別に備える必要がない。
【0040】
図3に図示されている実施形態では、ビット本体12の外周面18のうち、第1外周面18aと第2外周面18bとの間のスペースにおいて、流体噴射孔26が開口する凹部24が形成された第3外周面18cのほかに、流体噴射孔26が形成されていない凹部24が形成された第4外周面18dを有する。そして、第3外周面18cの周方向幅Dは第4外周面18dの周方向幅Eより大きく形成されている。これによって、第3外周面18cにおける流体噴射孔26の形成が容易になる。
【0041】
一実施形態では、刃部16は超硬合金で構成され、超硬チップ20が設けられた第2外周面18bは、鉄系材料で構成されている。超硬チップ20は鉄系材料で構成されたビット本体12の第2外周面18bに設けられるため、例えば、溶接や接着剤を用いて超硬チップ20をビット本体12に固着するのが容易である。
【0042】
図2に図示されている切削ビット10Aでは、ビット本体12の先端面14は超硬合金で構成され、外周面18は鉄系材料で構成されている。これによって、刃部16の硬度を増加して切削性能を向上できると共に、超硬チップ20の外周面18への固着や、凹部24の形成及び凹部24への流体噴射孔26の形成が容易になる。
【0043】
図1に例示された実施形態では、削孔処理及び目粗し処理を行うステップS14の後で、形成された取付け孔102に定着剤108を注入する(ステップS16)。
図5CはステップS16を示す模式図である。
図5Cにおいて、コンクリート構造物100に形成された取付け孔102に注入ホース106が挿入され、注入ホース106から定着剤108が取付け孔102に充填される。定着剤108として、例えば、エポキシ樹脂と硬化剤とを混合した接着剤などが用いられる。
【0044】
ステップS16の後で、定着剤108が充填された取付け孔102に取付け部材110が挿入される(ステップS18)。
図5Dは、ステップS18を示す模式図である。
取付け部材110は、例えば、補強用鉄筋やアンカ部材である。取付け孔102に取付け部材110を所定位置まで挿入され、取付け孔102は入口開口まで定着剤108が充満する。こうして、定着剤108が固化し、コンクリート構造物100に取付け部材110が一体化する定着処理が行われる(ステップS20)。
【実施例0045】
以下、一実施形態に係る削孔方法及び比較例としての削孔方法を行って、引抜き耐力を計測した試験例について説明する。
図6は本試験に用いた試験体の模式的断面図である。
図6に示されているように、試験体114に取付け孔102が下向きに形成され、取付け孔102に定着剤108(プレスタコンT-U)を充填し、取付け部材110を取付け孔102に挿入し、定着剤108を固化させて取付け部材110を取付け孔102に定着させた。そして、取付け部材110に引張力を加えたときの引張り荷重を計測した。
【0046】
取付け部材110として、円形(呼び径22mm)のTSタイプのアンカ鉄筋(材質;SD345)を用いた。TSタイプとは、
図5Dに示されているように、ストレート鉄筋の端部にテーパコーン112が装着されているアンカ鉄筋を指す。テーパコーン112は、先端側に形成される底面112aを有し、底面112aはアンカ鉄筋の呼び径より大きい33mmの直径を有している。定着長Lはアンカ鉄筋の呼び径の3倍に設定されている。
【0047】
図7~
図9は、本実施形態に係る削孔方法及び比較例としての削孔方法を行って得られた試験結果を示すグラフである。
図7~
図9において、横軸は、取付け部材110に引張り荷重を加えたときの取付け部材110の引張り方向の変位を示し、縦軸は、横軸の各変位を生じたときの引張り荷重の値(引抜き耐力)を示している。
図7に図示されているno.1~no.3の試験例は、本実施形態に係る削孔方法を行って得た引抜き耐力を示している。即ち、切削ビット10の中心軸線Oを中心とする回転とコンクリート構造物に対する打撃とを併用可能なドリルを用いて、削孔処理及び目粗し処理を同時に行い、直径40mm、目粗し径(凹溝径)43mmの取付け孔102を形成したときの引抜き耐力を示している。
【0048】
図8に図示されているno.4~no.6の試験例は、特許文献1に記載されているように、ダイヤモンドコアビットによりアンカ部材挿入用の前処理孔を穿設した後、該前処理孔の内周面とほぼ同径の外周面に、
図2に示されているように、複数個の超硬チップを突設した切削ビットを回転させながら前処理孔に挿入して前処理孔の内周面に螺旋状凹溝を形成するようにして、直径40mm、目粗し径(凹溝径)43mmの取付け孔102を形成した比較例(比較例1)の引抜き耐力を示している。
図9に図示されているno.7~no.9の試験例は、ダイヤモンドコアビットによりアンカ部材挿入用の前処理孔を穿設し、目粗し処理をせずに、直径40mmの取付け孔102を形成した比較例(比較例2)の引抜き耐力を示している。
【0049】
図7に示されている本実施形態では、3例とも、引抜き耐力は最大でアンカ鉄筋(材質;SD345)の母材強度(490N/mm
2)まで達することを確認した後、試験を中止した。
図8に示されている比較例1では、3例のうち、no.4以外は、上記実施形態の場合と同様に、最大引抜き耐力はアンカ鉄筋の母材強度まで達した後、試験を中止したが、no.4のみは引抜き耐力がアンカ鉄筋の母材強度まで到達する前に固着状態が解除され、引抜きが発生したことが確認された。
図9に示されている比較例2では、3例の中で引抜き耐力にバラツキが発生し、3例のいずれも引抜き耐力がアンカ鉄筋の母材強度まで到達する前に固着状態が解除され、引き抜が発生したことが確認された。
【0050】
以上の試験結果から、
図7に示されている本実施形態の削孔方法は、
図8に示されている比較例1とほぼ同等の引抜き耐力を得られることが確認された。これに対して、
図9に示され、目粗し処理を行わない比較例2は、本実施形態及び比較例1と比べて、引抜き耐力が劣ることが確認された。
なお、削孔処理及び目粗し処理を同時に行う本実施形態の削孔方法は、削孔処理及び目粗し処理を2段階に分けて行う比較例1の削孔方法と比べて、施工時間を低減できるため、施工歩掛を高め、施工コストを低減できるという長所を有している。
【0051】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0052】
1)一態様に係るコンクリート構造物の削孔方法は、コンクリート構造物(100)に取付け部材(110)を取り付けるための取付け孔(102)を形成するコンクリート構造物の削孔方法であって、ビット本体(12)の先端面(14)に設けられ、少なくとも前記先端面(14)の外縁(14a)を含む領域に形成された刃部(16)と、前記ビット本体(12)の外周面(18)に設けられた少なくとも1つの超硬チップ(20)であって、前記ビット本体(12)の中心軸線(O)と前記超硬チップ(20)の外側端との距離Aは、前記中心軸線(O)と前記刃部(16)の外側端との距離Bより大きい超硬チップ(20)と、を備える切削ビット(10)を用意する準備ステップ(S10)と、前記切削ビット(10)を、前記中心軸線(O)を中心とする回転と前記コンクリート構造物(100)に対する打撃とを併用可能なドリル(52)に装着し、前記ドリル(52)を用いて前記コンクリート構造物(100)に前記取付け孔(102)を形成すると同時に、前記超硬チップ(20)によって、前記取付け孔(102)の内周面に凹溝(105)を形成する目粗し処理を行う削孔ステップ(S14)と、を含む。
【0053】
このような構成によれば、準備ステップ(S10)において、ビット本体(12)の先端面(14)の少なくとも外縁(14a)に形成された刃部(16)と、ビット本体(12)の外周面(18)に設けられた超硬チップ(20)と、を備える上記切削ビット(10)を用意し、削孔ステップ(S14)において、この切削ビット(10)をその中心軸線(O)を中心とする回転とコンクリート構造物(100)に対する打撃とを併用可能なドリル(52)に装着し、このドリル(52)を用いてコンクリート構造物(100)に取付け孔(102)を形成するため、取付け孔(102)の形成(削孔処理)と取付け孔(102)の内周面への凹溝(105)の形成(目粗し処理)とが同時に行われる。そのため、施工時間を低減でき、施工歩掛を高めることができるため、施工コストを低減できる。また、取付け孔(102)の内周面に超硬チップ(20)の螺旋状の軌跡(104)に沿って凹溝(105)が形成されるため、取付け孔(102)に充填された定着剤(108)などによって固定された取付け部材(110)の引抜き耐力を高く維持できる。
【0054】
2)別な態様に係るコンクリート構造物の削孔方法は、1)に記載のコンクリート構造物の削孔方法において、前記削孔ステップ(S14)の前に、前記コンクリート構造物(100)に対して前記切削ビット(10)が所定の位置及び向きとなるように、前記ドリル(52)を固定スタンド(60)によって支持する位置決めステップ(S12)を含む。
【0055】
このような構成によれば、ドリル(52)に装着された切削ビット(10)がコンクリート構造物(100)に対して所定の位置及び向きとなるように、ドリル(52)が固定スタンド(60)に固定されるため、取付け孔(102)を所定の位置及び向きに正確に形成できると共に、削孔作業を効率化できる。
【0056】
3)さらに別な態様に係る切削ビットは、コンクリート構造物(100)に取付け部材(110)を取り付ける取付け孔(102)を形成するための切削ビット(10)であって、ビット本体(12)の先端面(14)に設けられ、少なくとも前記先端面(14)の外縁(14a)を含む領域に形成された刃部(16)と、前記ビット本体(12)の外周面(18)に設けられた少なくとも1つの超硬チップ(20)であって、前記ビット本体(12)の中心軸線(O)と前記超硬チップ(20)の外側端(ビット本体の径方向外側端)との距離Aは、前記中心軸線(O)と前記刃部(16)の外側端(ビット本体の径方向外側端)との距離Bより大きい超硬チップ(20)と、を備える。
【0057】
上記構成を有する切削ビット(10)を用意し、削孔ステップ(S14)において、この切削ビット(10)をその中心軸線(O)を中心とする回転とコンクリート構造物(100)に対する打撃とを併用可能なドリル(52)に装着し、このドリル(52)を用いてコンクリート構造物(100)に取付け孔(102)を形成する削孔ステップ(S14)を行う。この削孔ステップ(S14)によって、取付け孔(102)の形成と取付け孔(102)の内周面への凹溝(105)の形成とを同時に行ことができるため、施工時間を低減でき、施工歩掛を高め、施工コストを低減できる。また、取付け孔(102)の内周面に超硬チップ(20)の螺旋状の軌跡(104)に沿った凹溝(105)が形成されるため、取付け孔(102)に充填された定着剤(108)などによって固定された取付け部材(110)の引抜き耐力を高く維持できる。
【0058】
4)さらに別な態様に係る切削ビットは、3)に記載の切削ビットにおいて、前記刃部(16)は、前記先端面(14)の中心部を通り前記先端面(14)の外縁(14a)まで延在する稜線(22)を有する山形に形成され、前記少なくとも1つの超硬チップ(20)は、前記ビット本体(12)の外周面(18)のうち、前記稜線(22)が延在する前記先端面(14)の外縁(14a)を含む第1外周面(18a)とは周方向において異なる第2外周面(18b)に設けられ、前記中心軸線(O)と前記少なくとも1つの超硬チップ(20)が設けられた前記第2外周面(18b)との距離をCとしたとき、次の(1)式の関係を満たすように構成される。
C<B<A (1)
【0059】
このような構成によれば、切削ビット(10)の刃部(16)が先端面(14)の外縁(14a)まで延在する稜線(22)を有する山形形状を有するため、所定の直径を有する取付け孔(102)を確実に形成できる。また、切削ビット(10)の刃部(16)が稜線(22)を有する山形に形成されるため、ビット本体(12)の外周面(18)において、該稜線(22)の外縁(14a)が形成される第1外周面(18a)とは周方向において異なる第2外周面(18b)に、超硬チップ(20)の取付け場所を確保できる。こうして、ビット本体(12)の外周面(18)に超硬チップ(20)の配置場所を確保しやすくなる。
【0060】
さらに、ビット本体(12)の中心軸線(O)と第1外周面(18a)との距離Bと、該中心軸線(O)と第2外周面(18b)との距離Cとは、C<Bの関係にあるため、削孔中、取付け孔(102)の内部で第2外周面(18b)に設けられた超硬チップ(20)の径方向の動きが活発化されるため、取付け孔(102)の内周面に対する凹溝(105)の形成を効率良く行うことができる。また、ビット本体(12)の中心軸線(O)と超硬チップ(20)の外側端(ビット本体の径方向外側端)との距離Aと、距離Bとは、B<Aの関係にあるため、超硬チップ(20)による凹溝(105)の形成を確実に行うことができる。
【0061】
5)さらに別な態様に係る切削ビットは、4)に記載の切削ビットにおいて、前記第1外周面(18a)と前記第2外周面(18b)との間に形成された第3外周面(18c)に凹部(24)が形成され、該凹部(24)に流体噴射孔(26)が形成されている。
【0062】
このような構成によれば、第3外周面(18c)に形成された凹部(24)に流体噴射孔(26)を形成し、この流体噴射孔(26)から空気又は水等の流体を噴射することにより、取付け孔(102)に残留する削り屑を取付け孔(102)の外部に排出できる。
【0063】
6)さらに別な態様に係る切削ビットは、4)又は5)に記載の切削ビットにおいて、前記刃部(16)は超硬合金で構成され、前記超硬チップ(20)が設けられた前記第2外周面(18b)は、鉄系材料で構成されている。
【0064】
このような構成によれば、超硬チップ(20)は鉄系材料で構成されたビット本体(12)の外周面(18)に設けられるため、超硬チップ(20)のビット本体(12)への固着が容易になり、かつ固着強度を高く維持できる。
【0065】
7)さらに別な態様に係る削孔装置は、3)乃至6)のいずれかに記載の切削ビット(10)と、前記切削ビット(10)が装着された、前記中心軸線(O)を中心とする回転と前記コンクリート構造物(100)に対する打撃とを併用可能なドリル(52)と、を備える。
【0066】
このような構成によれば、上述の切削ビット(10)を、該切削ビット(10)の中心軸線(O)を中心とする回転とコンクリート構造物(100)に対する切削ビット(10)による打撃とを併用可能なドリル(52)に装着し、このドリル(52)を用いて削孔することで、取付け孔(102)の形成と取付け孔(102)の内周面への凹溝(105)の形成を同時に行うことができる。これによって、施工時間を低減できるため、施工歩掛を高め、施工コストを低減できる。また、取付け孔(102)の内周面に凹溝(105)が形成されるため、取付け孔(102)に充填された定着剤(108)などによって固定された取付け部材(110)の引抜き耐力を高く維持できる。
【0067】
8)さらに別な態様に係る削孔装置は、7)に記載の削孔装置において、前記コンクリート構造物(100)に対して前記切削ビット(10)が所定の位置及び向きに支持されるように前記ドリル(52)を支持するための固定スタンド(60)をさらに備える。
【0068】
このような構成によれば、ドリル(52)に装着された切削ビット(10)がコンクリート構造物(100)に対して所定の位置及び向きとなるように、ドリル(52)が固定スタンド(60)によって支持されるため、取付け孔(102)を所定の位置及び向きに正確に形成できると共に、削孔作業を効率化できる。