(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090833
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20240627BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/097 365
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206976
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三辻 昌昂
(72)【発明者】
【氏名】神吉 伸通
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA08
2H500CA06
2H500CA12
2H500EA32B
2H500EA39B
2H500EA41B
2H500EA42B
2H500EA42C
2H500EA44B
(57)【要約】
【課題】低温定着性及び耐ホットオフセット性に優れ、定着温度幅が拡大したトナーを提供する。
【解決手段】非晶性ポリエステル系樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、及びワックスを含むトナーであり、前記非晶性ポリエステル系樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物にアミン化合物が縮合したアミン変性ポリエステル樹脂(A)を含有し、前記アルコール成分が脂肪族ジオールを60モル%以上含有し、前記結晶性ポリエステル樹脂の酸価が20mgKOH/g以上である、トナー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶性ポリエステル系樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、及びワックスを含むトナーであり、
前記非晶性ポリエステル系樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物にアミン化合物が縮合したアミン変性ポリエステル樹脂(A)を含有し、
前記アルコール成分が脂肪族ジオールを60モル%以上含有し、
前記結晶性ポリエステル樹脂の酸価が20mgKOH/g以上である、トナー。
【請求項2】
前記アミン変性ポリエステル樹脂(A)が、アミン化合物由来の構成単位を0.5質量%以上10質量%以下含む、請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記アミン化合物が、N-メチルジエタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、及び2-ジブチルアミノエタノールからなる群より選ばれる、請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記アミン変性ポリエステル樹脂(A)に対する前記結晶性ポリエステル樹脂の質量比(結晶性ポリエステル樹脂/アミン変性ポリエステル樹脂(A))が0.03以上0.4以下である、請求項1~3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
前記ワックスの含有量が1質量%以上10質量%以下である、請求項1~4のいずれかに記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化に対応したトナーの開発が求められている。一般に最低定着温度を下げ、高温オフセット発生温度を上げることにより、定着温度幅が広がり、省エネルギー化、高速定着化の要求を満たすことができる。
【0003】
特許文献1では、アミノ基を有する樹脂(N)、該樹脂(N)以外の非晶性樹脂(A)、及び該樹脂(N)以外の結晶性樹脂(C)を含有する、トナー用結着樹脂が記載されている。
特許文献2では、酸基を有する結晶性樹脂(C)とポリアルキレンイミンとを縮合させて得られる樹脂組成物(C-P)と、非晶性樹脂(A)とを含有する、トナー用結着樹脂組成物が記載されている。
特許文献3では、着色剤と、酸基を有する非晶性ポリエステル系樹脂とアミン化合物とを縮合させてなる樹脂組成物と、脂肪族モノカルボン酸化合物を20モル%以上含むカルボン酸成分と、2価以上の脂肪族アルコールを90モル%以上含むアルコール成分との縮合物を含有するエステル組成物(CI)及び脂肪族モノアルコールを20モル%以上含むアルコール成分と、2価以上の脂肪族カルボン酸化合物を90モル%以上含むカルボン酸成分との縮合物を含有するエステル組成物(CII)から選ばれる1種以上であるエステル組成物とを含む、静電荷像現像用トナーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-85932号公報
【特許文献2】特開2020-24360号公報
【特許文献3】特開2021-47403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1~3に記載のトナーは低温定着性に優れるものの、耐ホットオフセット性には改善の余地があった。
本発明は、低温定着性及び耐ホットオフセット性に優れ、定着温度幅が拡大したトナーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、アミン変性ポリエステル樹脂(A)を含有する非晶性ポリエステル系樹脂、酸価が20mgKOH/g以上である結晶性ポリエステル樹脂、及びワックスを含むトナーにより、上記の課題が解決されることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の[1]に関する。
[1]非晶性ポリエステル系樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、及びワックスを含むトナーであり、
前記非晶性ポリエステル系樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物にアミン化合物が縮合したアミン変性ポリエステル樹脂(A)を含有し、
前記アルコール成分が脂肪族ジオールを60モル%以上含有し、
前記結晶性ポリエステル樹脂の酸価が20mgKOH/g以上である、トナー。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温定着性及び耐ホットオフセット性に優れ、定着温度幅が拡大したトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[トナー]
本発明のトナーは、非晶性ポリエステル系樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、及びワックスを含むトナーであり、前記非晶性ポリエステル系樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物にアミン化合物が縮合したアミン変性ポリエステル樹脂(A)を含有し、前記アルコール成分が脂肪族ジオールを60モル%以上含有し、前記結晶性ポリエステル樹脂の酸価が20mgKOH/g以上である、トナーである。
以上の構成を有することで、低温定着性及び耐ホットオフセット性に優れ、定着温度幅が拡大したトナーが得られる。その理由は定かではないが、次のように考えられる。
【0010】
結晶性ポリエステル樹脂は、トナーの結着樹脂である非晶性樹脂中で微分散化されることで、トナーの定着時に非晶性樹脂を可塑化しやすくするため、トナーの低温定着性を向上することが知られている。しかし、非晶性樹脂が脂肪族アルコールをアルコール成分の主成分とする非晶性ポリエステル樹脂である場合、該非晶性ポリエステル樹脂は、芳香族アルコールをアルコール成分の主成分とする非晶性ポリエステル樹脂に比べ親水性が高いため、疎水的な結晶性ポリエステル樹脂と親和性が低く、トナー中での結晶性ポリエステル樹脂の微分散が難しいという課題があった。
本発明のトナーは、結着樹脂として、酸基を有する結晶性ポリエステル樹脂と、脂肪族アルコールをアルコール成分の主成分とする非晶性ポリエステル樹脂にアミン化合物が縮合したアミン変性ポリエステル樹脂(A)を含む非晶性ポリエステル系樹脂を含有する。そのため、結晶性ポリエステル樹脂の酸基とアミン変性ポリエステル樹脂(A)のアミノ基が酸塩基相互作用を形成することで、結晶性ポリエステル樹脂を非晶性ポリエステル系樹脂中に微分散させることができ、トナーの低温定着性が向上すると考えられる。また、結晶性ポリエステル樹脂が非晶性ポリエステル系樹脂中で微分散することで、結晶性ポリエステル樹脂と同じく疎水性であるワックスも非晶性ポリエステル系樹脂中に微分散化することが可能となり、トナーの定着時に微分散化したワックスがより均一にトナー表面にブリードアウトすることで、耐ホットオフセット性が向上すると考えられる。そして、低温定着性及び耐ホットオフセット性が向上した結果、定着温度幅が拡大すると考えられる。
【0011】
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
樹脂が結晶性であるか非晶性であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4以下の樹脂である。非晶性樹脂とは、吸熱ピークが観測されないか、観測される場合は、結晶性指数が1.4超、又は0.6未満の樹脂である。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。なお、吸熱の最大ピーク温度とは、実施例に記載の測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度のことを指す。
明細書中、ポリエステル樹脂のカルボン酸成分には、その例示の化合物のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含まれる。
明細書中、「結着樹脂組成物」とは、縮合物を含むトナー中に含まれる樹脂成分を意味する。
【0012】
本発明のトナーは、非晶性ポリエステル系樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、及びワックスを含む。トナーは、例えば、非晶性ポリエステル系樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、及びワックスを含むトナー母粒子と外添剤とを含有する。
【0013】
〔非晶性ポリエステル系樹脂〕
非晶性ポリエステル系樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物にアミン化合物が縮合したアミン変性ポリエステル樹脂(A)を含有する。
【0014】
<アミン変性ポリエステル樹脂(A)>
アミン変性ポリエステル樹脂(A)は、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステル樹脂に、アミン化合物が縮合したアミン変性ポリエステル樹脂であり、ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分が脂肪族ジオールを60モル%以上含有する。
【0015】
(アルコール成分)
アルコール成分が含有する脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)等が挙げられる。
中でも、アルコール成分は、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを含むことが好ましく、より好ましくはエチレングリコール及び1,2-プロパンジオールから選ばれる1種以上を含み、更に好ましくは1,2-プロパンジオールを含む。
アルコール成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、脂肪族ジオール以外に他のアルコールを含んでもよい。他のアルコールとしては、芳香族ジオール、脂環式ジオール等のジオール、3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
【0016】
芳香族ジオールとしては、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
脂環式ジオールとしては、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールAの炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド(平均付加モル数2以上12以下)付加物等が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ソルビタン等が挙げられる。
他のアルコールは、1種を単独で又は2種以上を用いてもよい。
【0017】
アルコール成分中の脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、60モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下、さらに好ましくは100モル%である。
【0018】
(カルボン酸成分)
カルボン酸成分としては、例えば、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。
【0019】
ジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、ペンタン二酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸が挙げられる。
炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸としては、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸等が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0020】
3価以上の多価カルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸が挙げられる。これらの中でも、トリメリット酸が好ましい。
【0021】
芳香族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、好ましくは75モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは85モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、好ましくは95モル%以下、より好ましくは93モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。
3価以上の多価カルボン酸の量は、カルボン酸成分中、トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、好ましくは5モル%以上、より好ましくは7モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、そして、好ましくは25モル%以下より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは15モル%以下である。
【0022】
アルコール成分のヒドロキシ基(OH基)に対するカルボン酸成分のカルボキシ基(COOH基)の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0023】
(アミン化合物)
アミン化合物としては、例えば、ヒドロキシアルキル基を有する第三級アミン、カルボキシアルキル基を有する第三級アミン等が挙げられる。
ヒドロキシアルキル基を有する第三級アミンとしては、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジプロピルアミノエタノール、2-ジイソプロピルアミノエタノール、2-ジブチルアミノエタノール、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、3-ジエチルアミノ-1-プロパノール、3-ジプロピルアミノ-1-プロパノール、3-ジイソプロピルアミノ-1-プロパノール、3-ジブチルアミノ-1-プロパノール、4-ジメチルアミノ-1-ブタノール、4-ジエチルアミノ-1-ブタノール、4-ジプロピルアミノ-1-ブタノール、4-ジイソプロピルアミノ-1-ブタノール、4-ジブチルアミノ-1-ブタノール、3-ジメチルアミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジエチルアミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジプロピルアミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジイソプロピルアミノ-1,2-プロパンジオール等が挙げられる。
カルボキシアルキル基を有する第三級アミンとしては、N,N-ジメチルグリシン、N,N-ジエチルグリシン、N,N-ジプロピルグリシン、N,N-ジイソプロピルグリシン、N,N-ジブチルグリシン、N-メチルイミノジ酢酸、N-エチルイミノジ酢酸、N-プロピルイミノジ酢酸、N-イソプロピルイミノジ酢酸、N-ブチルイミノジ酢酸、1-ピロリジン酢酸、1-ピペリジン酢酸、ニトリロトリ酢酸、N-(2-カルボキシエチル)イミノジ酢酸、3-ジメチルアミノプロピオン酸、3-ジエチルアミノプロピオン酸、3-ジプロピルアミノプロピオン酸、3-ジイソプロピルアミノプロピオン酸、3-ジブチルアミノプロピオン酸、N-メチル-3,3’-イミノジプロピオン酸、N-エチル-3,3’-イミノジプロピオン酸、N-プロピル-3,3’-イミノジプロピオン酸、N-イソプロピル-3,3’-イミノジプロピオン酸、N-ブチル-3,3’-イミノジプロピオン酸、3-(1-ピロリジン)プロピオン酸、3-(1-ピペリジン)プロピオン酸、3,3’,3’’-ニトリロトリプロピオン酸等が挙げられる。
これらの中でも、アミン化合物は、非晶性ポリエステル樹脂に導入するためのヒドロキシアルキル基を有する第三級アミンであることが好ましく、N-メチルジエタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、及び2-ジブチルアミノエタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることがより好ましく、N-メチルジエタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、又は2-ジブチルアミノエタノールであることが更に好ましい。
【0024】
アミン変性ポリエステル樹脂(A)中のアミン化合物由来の構成単位の含有量は、トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。アミン変性ポリエステル樹脂(A)の質量は、反応により生じる水の質量を除いた質量を基準とする。
【0025】
<アミン変性ポリエステル樹脂(A)の製造方法>
アミン変性ポリエステル樹脂(A)は、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分を重縮合して非晶性ポリエステル樹脂を得る工程Aと、非晶性ポリエステル樹脂の酸基とアミン化合物の水酸基とを縮合する工程Bを含む方法で製造することができる。
また、工程Aに代えて、又は工程Aで得られた非晶性ポリエステル樹脂に加えて、別途用意した非晶性ポリエステル樹脂を用いてもよい。
【0026】
工程Aでは、必要に応じて、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)、酸化ジブチル錫、チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)等のエステル化触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.01質量部以上5質量部以下;没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸と同じ。)等のエステル化助触媒をアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対し0.001質量部以上0.5質量部以下用いて重縮合してもよい。
また、重縮合にフマル酸等の不飽和結合を有するモノマーを使用する際には、必要に応じてアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上0.5質量部以下のラジカル重合禁止剤を用いてもよい。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、4-tert-ブチルカテコールが挙げられる。
重縮合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
【0027】
工程Bでは、非晶性ポリエステル樹脂の酸基とアミン化合物との縮合を加熱し、減圧等により脱水反応により生じる水を系外に取り出すことで行うことができる。
縮合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下、更に好ましくは210℃以下である。なお、縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
【0028】
アミン変性ポリエステル樹脂(A)の製造において、アミン化合物の仕込み量は、トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、非晶性ポリエステル系樹脂の原料の合計100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。なお、非晶性ポリエステル系樹脂の原料の合計とは、上記アルコール成分及びカルボン酸成分の合計を意味する。また、別途用意した非晶性ポリエステル系樹脂を用いた場合は、アルコール成分、カルボン酸成分、及び非晶性ポリエステル系樹脂の合計を意味する。
【0029】
アミン変性ポリエステル樹脂(A)を得た後にアミン変性ポリエステル樹脂(A)を含む反応混合物をスチーミングする工程を含んでもよい。反応混合物をスチーミングすることにより、縮合物中に含まれる未反応のアミン化合物を効率よく除くことができる。
スチーミングは、反応系内に水蒸気を導入することで行ってもよく、反応系にイオン交換水を滴下することにより反応系内で水蒸気を発生させて行ってもよい。操作の簡便性の観点から、反応系にイオン交換水を滴下することにより反応系内で水蒸気を発生させることが好ましい。反応混合物からアミン化合物を効率よく分離するために、水蒸気又はイオン交換水の供給量は、アミン変性ポリエステル樹脂(A)の総量100質量部に対して、好ましくは1質量部以上10質量部以下である。
【0030】
<アミン変性ポリエステル樹脂(A)の物性>
アミン変性ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
アミン変性ポリエステル樹脂(A)の軟化点は、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは105℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下である。
【0031】
アミン変性ポリエステル樹脂(A)の酸価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、更に好ましくは35mgKOH/g以下である。
【0032】
アミン変性ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度、軟化点、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
アミン変性ポリエステル樹脂(A)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られたガラス転移温度、軟化点、及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
【0033】
アミン変性ポリエステル樹脂(A)の含有量は、トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、トナー中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、そして、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
【0034】
非晶性ポリエステル系樹脂は、アミン変性ポリエステル樹脂(A)の他に、非晶性ポリエステル系樹脂を含有してもよい。このような非晶性ポリエステル系樹脂としては、トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、アミン変性ポリエステル樹脂(A)よりも高い軟化点を有する非晶性ポリエステル樹脂及び変性されたポリエステル系樹脂が挙げられる。変性されたポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂のウレタン変性物、ポリエステル樹脂のエポキシ変性物、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントとを含む複合樹脂が挙げられる。
【0035】
〔結晶性ポリエステル樹脂>
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合物である結晶性ポリエステル樹脂である。トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、結晶性ポリエステル樹脂の軟化点は、アミン変性ポリエステル樹脂(A)の軟化点よりも低いことが好ましい。
【0036】
アルコール成分としては、α,ω-脂肪族ジオールが好ましい。
α,ω-脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
α,ω-脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールが挙げられる。これらの中でも、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましく、1,6-ヘキサンジオールがより好ましい。
【0037】
α,ω-脂肪族ジオールの量は、アルコール成分中、好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、100mol%以下であり、更に好ましくは100mol%である。
【0038】
アルコール成分は、α,ω-脂肪族ジオールとは異なる他のアルコール成分を含有していてもよい。他のアルコール成分としては、例えば、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール等のα,ω-脂肪族ジオール以外の脂肪族ジオール;ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールが挙げられる。これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0039】
カルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、直鎖脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは4以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が挙げられる。これらの中でも、フマル酸、セバシン酸、テトラデカン二酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0040】
脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上であり、そして、100mol%以下であり、更に好ましくは100mol%である。
【0041】
カルボン酸成分は、脂肪族ジカルボン酸とは異なる他のカルボン酸成分を含有していてもよい。他のカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0042】
アルコール成分の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0043】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分を重縮合させる工程により製造してもよい。
アルコール成分及びカルボン酸成分を重縮合させる工程は、アミン変性ポリエステル樹脂(A)の製造方法において記載した工程Aと同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0044】
<結晶性ポリエステル樹脂の物性>
結晶性ポリエステル樹脂の軟化点は、トナーの保存性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、トナーの保存性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは75℃以下である。
【0045】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、20mgKOH/g以上、より好ましくは23mgKOH/g以上、更に好ましくは25mgKOH/g以上であり、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、更に好ましくは35mgKOH/g以下である。
【0046】
結晶性ポリエステル樹脂の軟化点及び融点は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、後述の実施例に記載の方法により求められる。なお、結晶性ポリエステル樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点及び融点の値がそれぞれ前記範囲内であることが好ましい。
【0047】
結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、トナー中、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0048】
非晶性ポリエステル系樹脂に対する前記結晶性ポリエステル樹脂の質量比(結晶性ポリエステル樹脂/非晶性ポリエステル系樹脂)は、トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.08以上であり、そして、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。
【0049】
アミン変性ポリエステル樹脂(A)に対する前記結晶性ポリエステル樹脂の質量比(結晶性ポリエステル樹脂/アミン変性ポリエステル樹脂(A))は、トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.08以上であり、そして、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。
【0050】
非晶性ポリエステル系樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、トナーの低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、トナー中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
【0051】
〔ワックス〕
本発明のトナーは、上記非晶性ポリエステル系樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂に加えて、ワックスを含有する。
【0052】
ワックスとしては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス又はそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。
【0053】
ワックスの融点は、耐ホットオフセット性を向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
ワックスの含有量は、耐ホットオフセット性を向上させる観点から、トナー中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下で、更に好ましくは5質量%以下ある。
【0054】
〔着色剤〕
本発明のトナーは、着色剤を含有してもよい。着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等の全てを使用することができる。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー(例えば、ピグメントブルー15:3)、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾイエローが挙げられる。トナーは、黒トナー、黒以外のカラートナーのいずれであってもよい。
着色剤の含有量は、トナー中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
【0055】
〔荷電制御剤〕
本発明のトナーは、荷電制御剤を含有してもよい。荷電制御剤は、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。これらの中でも、正帯電性荷電制御剤が好ましい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロン(登録商標)N-01」、「ボントロン(登録商標)N-04」、「ボントロン(登録商標)N-07」、「ボントロン(登録商標)N-09」、「ボントロン(登録商標)N-11」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロン(登録商標)P-51」(オリヱント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」、「FCA-201-PS」(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
【0056】
負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファスト(登録商標)ブラック3804」、「ボントロン(登録商標)S-31」、「ボントロン(登録商標)S-32」、「ボントロン(登録商標)S-34」、「ボントロン(登録商標)S-36」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業株式会社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット株式会社製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロン(登録商標)E-81」、「ボントロン(登録商標)E-84」、「ボントロン(登録商標)E-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「TN-105」(保土谷化学工業株式会社製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE PX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。これらの荷電制御剤は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0057】
荷電制御剤の含有量は、トナー中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0058】
〔その他添加剤〕
トナーは、その他添加剤として、更に、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜含有してもよい。
【0059】
本発明のトナー中、トナー母粒子の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下、好ましくは99質量%以下である。
【0060】
トナー母粒子の体積中位粒径(D50)は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0061】
〔外添剤〕
本発明のトナーには、流動性を向上させるために、更に外添剤を含有させてもよい。外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化亜鉛等の無機材料の微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。これらの外添剤の中では、シリカが好ましく、疎水化処理剤で処理された疎水性シリカがより好ましい。
【0062】
疎水化処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシランが挙げられる。これらの中でもヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0063】
外添剤を用いて、トナー母粒子の表面処理を行う場合、本発明のトナー中の該外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性の観点から、トナー母粒子100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。
【0064】
〔トナーの製造方法〕
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、懸濁重合法、乳化凝集法等の公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。
溶融混練法では、非晶性ポリエステル系樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、及びワックスと、必要に応じて、着色剤等の特性改良剤等とを均一分散した後、公知の方法により溶融混練、冷却、粉砕、分級することにより、体積中位粒径(D50)2μm以上15μm以下のトナーを得ることができる。
【0065】
本発明のトナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる。当該トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【実施例0066】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
【0067】
[測定]
〔樹脂の軟化点、結晶性指数、融点、ガラス転移温度〕
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
【0068】
(2)結晶性指数
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(1)として、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(1)(℃))により、結晶性指数を求めた。
【0069】
(3)融点及びガラス転移温度
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(2)とした。結晶性樹脂の時には該ピーク温度を融点とした。
また、非晶性樹脂の場合にピークが観測されるときはそのピークの温度を、ピークが観測されずに段差が観測されるときは該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の低温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0070】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070:1992に従って測定した。但し、測定溶媒をアセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))とした。
【0071】
〔トナー母粒子の体積中位粒径D50〕
トナー母粒子の体積中位粒径D50は以下の通り測定した。
・測定機:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマンコールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」(花王株式会社製、HLB:13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLにトナー測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を作製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径D50を求めた。
【0072】
[樹脂の製造]
製造例A1(樹脂A-1)
1,2-プロパンジオール2699.0gを窒素導入管を装備した脱水管、95℃の熱水を流した精留塔、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、テレフタル酸4491.6g、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)39.2gを添加し、180℃まで昇温し、180℃で1時間反応させた。その後、5℃/hで235℃まで段階昇温を行い、235℃で1時間反応させた。その後、160℃まで冷却し、2-ジエチルアミノエタノール(日本乳化剤株式会社製、商品名:アミノアルコール2A)138.4gを添加し、160℃まで昇温し1時間反応させた。その後、10℃/hで210℃まで段階昇温を行い、トリメリット酸無水物649.4gを添加し1時間反応させた。その後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて所望の軟化点に達するまで減圧反応させ、アミン変性ポリエステル樹脂(A)として樹脂A-1を得た。物性を表1に示す。
【0073】
製造例A2及びA3(樹脂A-2及びA-3)
2-ジエチルアミノエタノールをN-メチルジエタノールアミン(日本乳化剤株式会社製、商品名:アミノアルコールMDA)又は2-ジブチルアミノエタノール(日本乳化剤株式会社製、商品名:アミノアルコール2B)へ変更した他は製造例A1と同様にして、アミン変性ポリエステル樹脂(A)として樹脂A-2及びA-3を得た。物性を表1に示す。
【0074】
製造例A4(樹脂A-4)
1,2-プロパンジオール2283.4gを窒素導入管を装備した脱水管、95℃の熱水を流した精留塔、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、テレフタル酸3520.6g、リサイクルペット(ウツミリサイクルシステムズ株式会社製、商品名:UK-31)1357.3g、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)39.2gを添加し、180℃まで昇温し、180℃で1時間反応させた。その後、5℃/hで235℃まで段階昇温を行い、235℃で1時間反応させた。その後、160℃まで冷却し、N-メチルジエタノールアミン(日本乳化剤株式会社製、商品名:アミノアルコールMDA)142.6g添加し、160℃まで昇温し1時間反応させた。その後、10℃/hで210℃まで段階昇温を行い、トリメリット酸無水物678.7gを添加し1時間反応させた。その後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて所望の軟化点に達するまで減圧反応させ、アミン変性ポリエステル樹脂(A)として樹脂A-4を得た。物性を表1に示す。
【0075】
製造例A5(樹脂A-5)
各成分の配合量を表1に示すように変更した他は製造例A2と同様にして、変性ポリエステル樹脂として樹脂A-5を得た。物性を表1に示す。
【0076】
比較製造例A1(樹脂A-11)
1,2-プロパンジオール2856.4gを窒素導入管を装備した脱水管、95℃の熱水を流した精留塔、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、テレフタル酸4456.4g、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)40.0gを添加し、180℃まで昇温し、180℃で1時間反応させた。その後、5℃/hで235℃まで段階昇温を行い、235℃で1時間反応させた。その後、210℃まで冷却し、トリメリット酸無水物687.2gを添加し1時間反応させた。その後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて所望の軟化点に達するまで減圧反応させ、非晶性ポリエステル樹脂として樹脂A-11を得た。物性を表1に示す。
【0077】
【0078】
製造例B1(樹脂B-1)
1,6-ヘキサンジオール2950.0gを窒素導入管を装備した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、セバシン酸を5050.0g、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)36.0gを添加し、140℃まで昇温した。1時間反応させた後、150℃まで昇温し1時間反応させた。その後、10℃/hで200℃まで段階昇温していき、8.0kPaにて所望の軟化点に達するまで減圧反応させて、結晶性ポリエステル樹脂として樹脂B-1を得た。物性を表2に示す。
【0079】
【0080】
[トナーの製造]
実施例1~5及び比較例1
表3に示す非晶性ポリエステル系樹脂A-1~A-5又は非晶性ポリエステル樹脂A-11を90質量部、結晶性ポリエステル樹脂として樹脂B-1を10質量部、着色剤「Regal330R」(CABOT株式会社製、カーボンブラック)8質量部、離型剤「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、パラフィンワックス(融点75℃))5質量部、正帯電性荷電制御剤「FCA-201-PS」(藤倉化成株式会社製)15質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて回転数1500r/min(周速度21.6m/sec)で3分間撹拌した後、同方向回転二軸押出機(株式会社池貝製、商品名:PCM-30、軸の直径2.9cm、軸の断面積7.06cm2)を用いて溶融混練した。ロールの回転速度は200r/min(周速度0.30m/sec)、バレル設定温度は100℃であり、混練物の供給速度は10kg/hであった。
得られた混練物を冷却ロールで圧延冷却した後、ハンマーミルを用いて1mm程度に粗粉砕した。得られた粗粉砕物を気流式ジェットミル(日本ニューマチック株式会社製、商品名:IDS)により微粉砕及び分級し、体積中位粒径(D50)が7.0μmのトナー母粒子を得た。
【0081】
得られたトナー母粒子100質量部と、外添剤として疎水性シリカ「TG-820F」(キャボット・スペシャリティー・ケミカルズ・インク社製、個数平均粒径:8nm)0.5質量部、疎水性シリカ「NA-50Y」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒径:30nm)2.0質量部、及びポリテトラフルオロエチレン微粒子「KTL-500F」(株式会社喜田村製、個数平均粒径:500nm)0.4質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて2100r/min(周速度29m/sec)で3分間混合して、トナーを得た。
【0082】
[トナーの評価]
〔低温定着性及び耐ホットオフセット性〕
複写機「AR-505」(シャープ株式会社製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置に各トナーを実装し、未定着の状態で印刷物を得た(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。その後、総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度300mm/sec)を用い、定着ロールの温度を80℃から240℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、各温度で未定着状態の印刷物の定着試験を行った。得られた印刷物の画像部分にセロハン粘着テープ「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆株式会社製、幅:18mm、JIS Z1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に90%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とした。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れる。結果を表3に示す。
また、上記で得られた定着画像を目視で判断し、ホットオフセットが見られた定着ロールの最低温度をホットオフセット温度とした。なお、定着紙には、「CopyBond SF-70NA」(シャープ株式会社製、75g/m2)を使用した。ホットオフセット温度が高いほど、耐ホットオフセット性に優れる。結果を表3に示す。
定着温度幅は、上記で得た最低定着温度とホットオフセット温度の差とした。
【0083】
【0084】
実施例及び比較例の結果から、非晶性ポリエステル系樹脂としてアミン変性ポリエステル樹脂を含む実施例のトナーが、低温定着性及び耐ホットオフセット性に優れ、定着温度幅を拡大することが分かった。
一方、アミン変性ポリエステル樹脂に代えて非晶性ポリエステル樹脂を含む比較例のトナーは、低温定着性及び耐ホットオフセット性のいずれも改善せず、定着温度幅が著しく狭かった。