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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090836
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B62D 24/02 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
B62D24/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206979
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宮丸 範之
(72)【発明者】
【氏名】小松 茂
(72)【発明者】
【氏名】早川 和希
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA22
3D203BC34
3D203CA07
(57)【要約】
【課題】キャビンがサスペンション機構を介して機体に支持された作業車において、キャビンが下限位置(上限位置)でショック少なく止められるように構成する。
【解決手段】機体及びキャビンのうちの一方に取り付けられたストッパー部材30と、機体及びキャビンのうちの他方に取り付けられた受け部36とが備えられる。ストッパー部材30は、機体及びキャビンのうちの一方に取り付けられた第1弾性体31と、第1弾性体31に接続されて受け部36と当たる第2弾性体32とを有する。第2弾性体32は、硬度が第1弾性体31の硬度よりも低く、且つ、受け部36に当たる第2弾性体32の当たり部32aの面積が、第2弾性体32の第1弾性体31に接続された接続端部32bの面積よりも小さくなる形状に形成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置により支持された機体と、
作業者が搭乗する運転部と、
前記運転部を収容するキャビンと、
前記キャビンを前記機体に支持するサスペンション機構と、
前記機体及び前記キャビンのうちの一方に取り付けられたストッパー部材と、
前記機体及び前記キャビンのうちの他方に取り付けられた受け部とが備えられて、
前記サスペンション機構の伸縮により、前記ストッパー部材と前記受け部とが当たり、前記ストッパー部材が圧縮されることによって、前記キャビンにおける前記機体に対する下限位置と、前記キャビンにおける前記機体に対する上限位置とのうちの、少なくとも一方が決められ、
前記ストッパー部材は、前記機体及び前記キャビンのうちの一方に取り付けられた第1弾性体と、前記第1弾性体に接続されて前記受け部と当たる第2弾性体とを有し、
前記第2弾性体は、硬度が前記第1弾性体の硬度よりも低く、且つ、前記受け部に当たる前記第2弾性体の当たり部の面積が、前記第2弾性体の前記第1弾性体に接続された接続端部の面積よりも小さくなる形状に形成されている作業車。
【請求項2】
前記第1弾性体における前記サスペンション機構の伸縮方向に沿った方向の長さが、前記第2弾性体における前記サスペンション機構の伸縮方向に沿った方向の長さよりも長い請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記第2弾性体の当たり部が、前記サスペンション機構の伸縮方向に沿った方向と直交する面と平行な平面に形成されている請求項1に記載の作業車。
【請求項4】
前記サスペンション機構の伸縮方向に沿った方向と直交する面での前記第2弾性体の断面積が、前記第2弾性体の当たり部に近い側の部分ほど小さくなっている請求項1に記載の作業車。
【請求項5】
前記サスペンション機構の伸縮方向に沿った方向から視て、前記第2弾性体の外周部は円形であり、
前記第2弾性体の外周部の半径が、前記第2弾性体の当たり部に近い側の部分ほど小さくなっている請求項4に記載の作業車。
【請求項6】
前記サスペンション機構の伸縮方向に沿った方向から視て、前記第1弾性体の外周部は円形であり、
前記第1弾性体の外周部の半径が、前記第2弾性体の接続端部の外周部の半径と同じである請求項5に記載の作業車。
【請求項7】
前記第2弾性体に、前記第2弾性体の当たり部と前記第2弾性体の接続端部とに亘って貫通する開口部が形成されている請求項6に記載の作業車。
【請求項8】
前記第1弾性体に、前記第2弾性体の接続端部に接続された前記第1弾性体の接続端部から、前記機体及び前記キャビンのうちの一方に取り付けられた前記第1弾性体の取付端部に向けて、底部を有する凹部が形成されている請求項7に記載の作業車。
【請求項9】
前記第1弾性体の凹部の底部と前記機体及び前記キャビンのうちの一方とに亘って、ボルトが取り付けられて、前記第1弾性体が前記機体及び前記キャビンのうちの一方に取り付けられている請求項8に記載の作業車。
【請求項10】
前記第1弾性体及び前記第2弾性体が、ウレタンである請求項1~9のうちのいずれか一項に記載の作業車。
【請求項11】
前記第2弾性体が、発泡ウレタンである請求項10に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が搭乗する運転部を収容するキャビンが設けられた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の一例であるトラクタでは、特許文献1に開示されているように、キャビンがサスペンション機構を介して機体に支持されるように構成されたものがある。これにより、作業車が不整地を走行して機体が振動しても、作業者が搭乗する運転部の振動が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-268664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャビンがサスペンション機構を介して機体に支持されて、キャビンが機体に対して上下動するように構成された場合、キャビンにおける機体に対する下限位置を決めるストッパー構造、又は、キャビンにおける機体に対する上限位置を決めるストッパー構造を備える必要がある。
【0005】
本発明は、キャビンがサスペンション機構を介して機体に支持された作業車において、キャビンが下限位置(上限位置)でショック少なく止められるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業車は、走行装置により支持された機体と、作業者が搭乗する運転部と、前記運転部を収容するキャビンと、前記キャビンを前記機体に支持するサスペンション機構と、前記機体及び前記キャビンのうちの一方に取り付けられたストッパー部材と、前記機体及び前記キャビンのうちの他方に取り付けられた受け部とが備えられて、前記サスペンション機構の伸縮により、前記ストッパー部材と前記受け部とが当たり、前記ストッパー部材が圧縮されることによって、前記キャビンにおける前記機体に対する下限位置と、前記キャビンにおける前記機体に対する上限位置とのうちの、少なくとも一方が決められ、前記ストッパー部材は、前記機体及び前記キャビンのうちの一方に取り付けられた第1弾性体と、前記第1弾性体に接続されて前記受け部と当たる第2弾性体とを有し、前記第2弾性体は、硬度が前記第1弾性体の硬度よりも低く、且つ、前記受け部に当たる前記第2弾性体の当たり部の面積が、前記第2弾性体の前記第1弾性体に接続された接続端部の面積よりも小さくなる形状に形成されている。
【0007】
本発明によると、サスペンション機構の伸縮により、キャビンが下限位置(上限位置)の近くに達すると、ストッパー部材において、第2弾性体と受け部とが当たり、以下の説明のように第1弾性体及び第2弾性体が圧縮されることにより、キャビンが下限位置(上限位置)で停止する。
【0008】
本発明によると、第2弾性体と受け部とが当たれば、第2弾性体の硬度が第1弾性体の硬度よりも低いことにより、主に第2弾性体が圧縮されて、キャビンの移動が主に第2弾性体により吸収される。
本発明によると、受け部に当たる第2弾性体の当たり部の面積が、第2弾性体の第1弾性体に接続された接続端部の面積よりも小さいので、第2弾性体の当たり部と受け部とが当たり始めた初期の時点では、キャビンの移動速度の減速は小さい。
【0009】
第2弾性体が十分に圧縮されると、次に主に第1弾性体が圧縮される。キャビンの移動が主に第1弾性体により吸収されるのであり、第1弾性体の硬度が第2弾性体の硬度よりも高いことにより、キャビンの移動速度が比較的大きく減速されて、キャビンが下限位置(上限位置)で停止する。
【0010】
本発明によると、キャビンが下限位置(上限位置)の近くに達した初期の段階では、第2弾性体の硬度が第1弾性体の硬度よりも低い点、及び、第2弾性体の当たり部の面積が比較的小さい点によって、主に第2弾性体によりキャビンの移動速度が比較的小さく減速されながら、キャビンの移動がショック少なく吸収される。次に主に第1弾性体によりキャビンの移動速度が比較的大きく減速されて、キャビンが下限位置(上限位置)で停止する。
以上のように、ストッパー部材(第1弾性体及び第2弾性体)により、キャビンを下限位置(上限位置)でショック少なく停止させることができるようになって、作業車の乗り心地を向上させることができる。
【0011】
本発明において、前記第1弾性体における前記サスペンション機構の伸縮方向に沿った方向の長さが、前記第2弾性体における前記サスペンション機構の伸縮方向に沿った方向の長さよりも長いと好適である。
【0012】
本発明によると、第1弾性体におけるサスペンション機構の伸縮方向に沿った方向の長さが比較的長いものになるので、キャビンの移動を第1弾性体により十分に吸収するという面で有利であり、作業車の乗り心地を向上させながら、キャビンを下限位置(上限位置)で停止させる機能を高めることができる。
【0013】
本発明において、前記第2弾性体の当たり部が、前記サスペンション機構の伸縮方向に沿った方向と直交する面と平行な平面に形成されていると好適である。
【0014】
本発明によると、キャビンが下限位置(上限位置)の近くに達して、第2弾性体の当たり部と受け部とが当たる際、第2弾性体の当たり部が偏り少なく均等に受け部に当たり易くなり、第2弾性体が機能を十分に発揮し易くなるので、第2弾性体によりキャビンの移動速度を比較的小さく減速しながら、キャビンの移動をショック少なく吸収するという面で有利である。
【0015】
本発明において、前記サスペンション機構の伸縮方向に沿った方向と直交する面での前記第2弾性体の断面積が、前記第2弾性体の当たり部に近い側の部分ほど小さくなっていると好適である。
【0016】
本発明によると、第2弾性体の当たり部と受け部とが当たり始めてから、第2弾性体と受け部との当たりが進行するのに伴って、受け部の位置での第2弾性体の断面積が次第に大きくなり、キャビンの移動速度の減速が次第に大きくなるのであり、第2弾性体によりキャビンの移動速度を比較的小さく減速しながら、キャビンの移動をショック少なく吸収するという面で有利である。
【0017】
本発明において、前記サスペンション機構の伸縮方向に沿った方向から視て、前記第2弾性体の外周部は円形であり、前記第2弾性体の外周部の半径が、前記第2弾性体の当たり部に近い側の部分ほど小さくなっていると好適である。
【0018】
本発明によると、ストッパー部材において、サスペンション機構の伸縮方向に沿った方向から視て、第2弾性体の外周部は円形であることにより、第2弾性体の生産が行い易くなるので、生産コストの低減の面で有利である。
【0019】
本発明によると、第2弾性体の外周部の半径が、第2弾性体の当たり部に近い側の部分ほど小さくなっており、第2弾性体が先細り状となっている。
これにより、キャビンが下限位置(上限位置)の近くに達して、第2弾性体の当たり部と受け部とが当たる際、第2弾性体の当たり部が偏り少なく均等に受け部に当たり易くなり、第2弾性体が機能を十分に発揮し易くなるので、第2弾性体によりキャビンの移動速度を比較的小さく減速しながら、キャビンの移動をショック少なく吸収するという面で有利である。
【0020】
本発明において、前記サスペンション機構の伸縮方向に沿った方向から視て、前記第1弾性体の外周部は円形であり、前記第1弾性体の外周部の半径が、前記第2弾性体の接続端部の外周部の半径と同じであると好適である。
【0021】
本発明によると、ストッパー部材において、サスペンション機構の伸縮方向に沿った方向から視て、第1弾性体の外周部は円形であることにより、第1弾性体の生産が行い易くなるので、生産コストの低減の面で有利である。
【0022】
本発明によると、第1弾性体の外周部の半径が、第2弾性体の接続端部の外周部の半径と同じであり、比較的大きなものとなっている。サスペンション機構の伸縮方向に沿った方向での第1弾性体の各部において、第1弾性体の外周部の半径は同じである。
【0023】
これにより、第2弾性体が十分に圧縮されてから第1弾性体が圧縮される際、キャビンの移動が第1弾性体により十分に吸収されるので、第2弾性体が十分に圧縮された後に、キャビンが遅れること少なく下限位置(上限位置)で停止するのであり、作業車の乗り心地を向上させながら、キャビンを下限位置(上限位置)で停止させる機能を高めることができる。
【0024】
本発明において、前記第2弾性体に、前記第2弾性体の当たり部と前記第2弾性体の接続端部とに亘って貫通する開口部が形成されていると好適である。
【0025】
本発明によると、第2弾性体が円筒状に形成され、第2弾性体の当たり部がリング状に形成されるので、キャビンが下限位置(上限位置)の近くに達して、第2弾性体の当たり部と受け部とが当たる際、第2弾性体の当たり部が偏り少なく均等に受け部に当たるようにするという面で有利であり、第2弾性体によりキャビンの移動速度を比較的小さく減速しながら、キャビンの移動をショック少なく吸収するという面で有利である。
【0026】
本発明において、前記第1弾性体に、前記第2弾性体の接続端部に接続された前記第1弾性体の接続端部から、前記機体及び前記キャビンのうちの一方に取り付けられた前記第1弾性体の取付端部に向けて、底部を有する凹部が形成されていると好適である。
【0027】
本発明によると、第2弾性体の接続端部に接続された第1弾性体の接続端部に、凹部が形成されており、第2弾性体の開口部から第1弾性体の凹部につながる状態となる。第2弾性体の接続端部での断面積と、第1弾性体の接続端部での断面積とにおいて、差が小さなものであり、第2弾性体の接続端部から第1弾性体の接続端部への断面積の変化が小さいものとなる。
【0028】
これにより、キャビンが下限位置(上限位置)の近くに達した際、第2弾性体が十分に圧縮されて第1弾性体の圧縮に移行する際、キャビンの移動の吸収が滑らかに行われるので、作業車の乗り心地を向上させながら、キャビンを下限位置(上限位置)で停止させる機能を高めるという面で有利である。
【0029】
本発明において、前記第1弾性体の凹部の底部と前記機体及び前記キャビンのうちの一方とに亘って、ボルトが取り付けられて、前記第1弾性体が前記機体及び前記キャビンのうちの一方に取り付けられていると好適である。
【0030】
本発明によると、第1弾性体の接続端部に凹部が形成された場合、第1弾性体の凹部を有効に利用して、第1弾性体を機体及びキャビンのうちの一方に取り付けることができるので、ストッパー部材の取付構造の簡素化を図ることができる。
【0031】
本発明によると、キャビンが下限位置(上限位置)に達した際、第2弾性体が十分に圧縮されて第1弾性体が圧縮され、第1弾性体が十分に圧縮されても、キャビンが下限位置(上限位置)で停止しなかった場合、受け部とボルトとが当たることにより、キャビンが停止することが期待できる。
【0032】
本発明において、前記第1弾性体及び前記第2弾性体が、ウレタンであると好適である。
【0033】
本発明によると、第1弾性体及び第2弾性体をウレタンにより簡素に構成することができるので、生産コストの低減の面で有利である。
【0034】
本発明において、前記第2弾性体が、発泡ウレタンであると好適である。
【0035】
本発明によると、第2弾性体が発泡ウレタンであることにより、第2弾性体の硬度を第1弾性体の硬度よりも低く設定することが容易に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】トラクタの左側面図である。
図2】トラクタの後部の背面図である。
図3】トラクタの後部の平面図である。
図4】左のサスペンション機構の付近の左側面図である。
図5】左のサスペンション機構の付近の正面図である。
図6】左のサスペンション機構における上限ストッパー部材及び下限ストッパー部材の付近の縦断背面図である。
図7】下限ストッパー部材の平面図及び断面図である。
図8】発明の実施の第1別形態において、下限ストッパー部材の断面図である。
図9】発明の実施の第2別形態において、下限ストッパー部材の断面図である。
図10】発明の実施の第3別形態において、下限ストッパー部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1図10に作業車の一例であるトラクタが示されている。図1図10において、Fは前方向を示し、Bは後方向を示し、Uは上方向を示し、Dは下方向を示し、Rは右方向を示し、Lは左方向を示している。
【0038】
(トラクタの全体構成)
図1に示すように、右及び左の前輪1(走行装置に相当)と右及び左の後輪2(走行装置に相当)により、機体3が支持されている。機体3は、エンジン4、エンジン4の後部に連結されたクラッチハウジング5、クラッチハウジング5の後部に連結されたミッションケース6、エンジン4の前部に連結された前部フレーム7等を有している。
【0039】
前輪1が前部フレーム7に支持されている。図2及び図3に示すように、右及び左の後車軸ケース19が、ミッションケース6(機体3)の後部に連結され、ミッションケース6(機体3)の後部から右及び左の横外方に向けて延出されるように設けられており、後輪2が後車軸ケース19に支持されている。
【0040】
図1に示すように、機体3の前部にボンネット8が設けられて、ボンネット8によりエンジン4が覆われている。作業者が搭乗する運転部9が機体3の後部に設けられて、キャビン10に運転部9が収容されており、運転座席11と前輪1を操向操作する操縦ハンドル12とが、運転部9に設けられている。
【0041】
(作業装置の支持に関する構成)
図1,2,3に示すように、ミッションケース6(機体3)の後部に、1本のトップリンク13と右及び左のロアリンク14とが、上下に揺動可能に設けられ、後方に向けて延出されており、トップリンク13及びロアリンク14により、3点リンク型式のリンク機構18が構成されている。ロータリ耕耘装置(図示せず)やプラウ装置(図示せず)等の作業装置が、リンク機構18に接続されて支持される。
【0042】
PTO軸20がミッションケース6(機体3)の後部に設けられており、PTO軸20の動力が、リンク機構18に支持された作業装置に、伝動軸(図示せず)を介して伝達される。平板状の右及び左のカバー部材21が、ミッションケース6(機体3)の後部に連結され、カバー部材22が右及び左のカバー部材21に亘って連結されており、PTO軸20の横外方及び上方が、カバー部材21,22により覆われている。
【0043】
ミッションケース6(機体3)の後部の上部に、右及び左のリフトアーム15が上下に揺動可能に設けられている。右及び左の昇降シリンダ16が、リフトアーム15とカバー部材21とに亘って接続されており、昇降シリンダ16が、カバー部材21を介してミッションケース6(機体3)に接続されている。
【0044】
リフトアーム15とロアリンク14とに亘って、連係ロッド17が接続されている。昇降シリンダ16によりリフトアーム15が昇降操作されることによって、ロアリンク14(リンク機構18)が昇降操作されて、作業装置が昇降操作される。
【0045】
(キャビンの支持構造の概要)
図1,2,3に示すように、キャビン10の前部の右部及び左部が、右及び左の防振ゴム23により、クラッチハウジング5(機体3)に支持されている。キャビン10の後部の右部が、右のサスペンション機構24により機体3に支持され、キャビン10の後部の左部が、左のサスペンション機構24により機体3に支持されている。
【0046】
これにより、キャビン10の前部の下部(防振ゴム23)を支点として、キャビン10の後部が、サスペンション機構24により機体3に対して上下動する状態となる。
キャビン10の機体3に対する上下動を許容し、キャビン10の機体3に対する左右動を規制する右及び左のラテラルロッド25が、以下の説明のように設けられている。
【0047】
上限ストッパー部材29が、以下の説明のように設けられており、キャビン10における機体3に対する上限位置が、上限ストッパー部材29により決められる。下限ストッパー部材30が、以下の説明のように設けられており、キャビン10における機体3に対する下限位置が、下限ストッパー部材30により決められる。
【0048】
以上の構成により、前輪1(走行装置)及び後輪2(走行装置)により支持された機体3と、作業者が搭乗する運転部9と、運転部9を収容するキャビン10とが備えられる。キャビン10を機体3に支持するサスペンション機構24が備えられる。
【0049】
(サスペンション機構、ラテラルロッド、上限ストッパー部材及び下限ストッパー部材を支持する支持部材の構成)
図1,2,3に示すように、右及び左の支持部材26が設けられている。図4及び図5に示すように、支持部材26は、本体部26a、基板部26b、天板部26c、取付部26d,26e及び補強部26f等を有しており、右及び左の支持部材26は左右対称の形状に構成されている。
【0050】
支持部材26において、平板状の基板部26bが本体部26aの下部に連結され、平板状の天板部26cが本体部26aの上部に連結されている。天板部26cは本体部26aから後方に向けて延出されて、補強部26fが、本体部26a、基板部26b及び天板部26cに亘って連結されている。取付部26dが、上方に向けて天板部26cの後部に連結され、取付部26eが、横外方に向けて本体部26aに連結されている。
【0051】
図1及び図2に示すように、右及び左の固定部材27が設けられている。図2及び図4に示すように、固定部材27は、平板状の基板部27aと、基板部27aに連結された取付部27b等を有しており、右及び左の固定部材27は、互いに左右対称形状に構成されている。
【0052】
支持部材26の基板部26bが後車軸ケース19の上面部に当て付けられて、固定部材27の基板部27aが後車軸ケース19の下面部に当て付けられている。4本のボルト28が、支持部材26の基板部26bと固定部材27の基板部27aとに亘って取り付けられ締め付けられて、支持部材26及び固定部材27が後車軸ケース19に取り付けられている。
【0053】
図1,2,3に示すように、右及び左の規制ロッド38が設けられている。右(左)の規制ロッド38が、右(左)のロアリンク14(リンク機構18)と、右(左)の固定部材27の取付部27bとに亘って接続されており、規制ロッド38によりリンク機構18の左右方向の変位(振れ)が規制される。
【0054】
(サスペンション機構の構成)
図1,2,3に示すように、右及び左のフレーム39が、キャビン10の下部の右部及び左部に前後方向に沿って連結され、右及び左のフレーム33が、キャビン10の後部の右部(左部)とフレーム39の後部とに亘って連結されており、フレーム39,33がキャビン10の一部となっている。右及び左の後輪フェンダー34が、フレーム39,33に取り付けられている。右及び左の取付部35が、フレーム33に連結されて後方に向けて延出されている。
【0055】
図1図4に示すように、サスペンション機構24は、サスペンションバネ24a及びダンパー24b等を有して構成されている。右のサスペンション機構24が、右の取付部35と右の支持部材26の取付部26dとに亘って接続されている。左のサスペンション機構24が、左の取付部35と左の支持部材26の取付部26dとに亘って接続されている。
【0056】
図2に示すように、右のサスペンション機構24は、背面視で、右のリフトアーム15及び右の昇降シリンダ16に対して右の横外側に配置されて、キャビン10の後部の右部と右の後車軸ケース19とに亘って接続されている。右のサスペンション機構24の下部が、右の後車軸ケース19を介してミッションケース6(機体3)の後部に接続されている。
【0057】
左のサスペンション機構24は、背面視で、左のリフトアーム15及び左の昇降シリンダ16に対して左の横外側に配置されて、キャビン10の後部の左部と左の後車軸ケース19とに亘って接続されている。左のサスペンション機構24の下部が、左の後車軸ケース19を介してミッションケース6(機体3)の後部に接続されている。
【0058】
(ラテラルロッドの構成)
図4及び図5に示すように、右及び左の取付部37が設けられており、取付部37が、フレーム39の後部に連結されて、フレーム39から下方に向けて延出されている。
【0059】
右及び左のラテラルロッド25が設けられている。右のラテラルロッド25が、右の取付部37と右の支持部材26の取付部26eとに亘って接続されており、右の支持部材26の本体部26a及び右のサスペンション機構24に対して前側に配置されている。
【0060】
左のラテラルロッド25が、左の取付部37と左の支持部材26の取付部26eとに亘って接続されており、左の支持部材26の本体部26a及び左のサスペンション機構24に対して前側に配置されている。
【0061】
運転部9に作業者が搭乗していない状態において、右及び左のサスペンション機構24の設定により、右及び左のラテラルロッド25が、取付部37から右及び左の横外側の斜め下向きに延出される姿勢となる。作業者が運転部9に搭乗すると、作業者の体重によりサスペンション機構24が少し収縮して、右及び左のラテラルロッド25が水平に近い姿勢となる。
【0062】
前述の状態において、キャビン10の後部の右部(左部)が上下動した場合(右(左)のサスペンション機構24が伸縮した場合)、右(左)のラテラルロッド25が、右(左)の支持部材26の取付部26eを支点として、水平に近い姿勢から上下に揺動する状態となる。これにより、右(左)のラテラルロッド25により、キャビン10の機体3に対する上下動が許容され、キャビン10の機体3に対する左右動が規制される。
【0063】
(上限ストッパー部材の構成)
図2及び図3に示すように、右及び左の受け部36が設けられている。図4,5,6に示すように、受け部36は、板材がチャンネル状に折り曲げられて形成された第1部分36aと、第1部分36aの下部に連結された平板状の第2部分36bとを有している。
【0064】
受け部36が、フレーム39の後部に連結され、フレーム39から横外方に向けて延出されて、キャビン10(フレーム39)に取り付けられている。平板状のカバー40が、受け部36の第1部分36aの後部に連結されている。
【0065】
図2及び図3に示すように、右の上限ストッパー部材29が右の支持部材26に設けられ、左の上限ストッパー部材29が左の支持部材26に設けられている。図4,5,6に示すように、上限ストッパー部材29は、ロッド部29aと、当たり部29bとを有している。
【0066】
上限ストッパー部材29のロッド部29aが、支持部材26の天板部26cに連結されている。受け部36の第1部分36aに、円形の開口部36cが開口されている。上限ストッパー部材29のロッド部29aが、支持部材26の天板部26cから、受け部36の第2部分36bの横外方を通り、受け部36の開口部36cを通って、上方に向けて延出されている。上限ストッパー部材29の当たり部29bは、半円状に形成されて、受け部36の開口部36cよりも大径であり、ロッド部29aの上端部に連結されている。
【0067】
右(左)の上限ストッパー部材29の当たり部29bの位置が、キャビン10の後部の右部(左部)における機体3に対する上下動の上限位置である。
右(左)のサスペンション機構24が伸長して、キャビン10の後部の右部(左部)が機体3に対して上昇した場合、右(左)の上限ストッパー部材29の当たり部29bと右(左)の受け部36の第1部分36aとが当たることにより、キャビン10の後部の右部(左部)が上限位置で停止する。
【0068】
(下限ストッパー部材の構成)―1
図1,2,3に示すように、右の下限ストッパー部材30(ストッパー部材に相当)及び左の下限ストッパー部材30(ストッパー部材に相当)が設けられている。
【0069】
下限ストッパー部材30は、支持部材26の天板部26cにおいて、上限ストッパー部材29よりもフレーム39(キャビン10)に近い部分に取り付けられており、受け部36の第2部分36bの下方に位置している。下限ストッパー部材30は、支持部材26及び後車軸ケース19を介して機体3に取り付けられている。
【0070】
図4及び図5に示すように、下限ストッパー部材30は、側面視で、ラテラルロッド25(取付部37)と、サスペンション機構24(支持部材26の取付部26d)との間に設けられている。カバー40が、下限ストッパー部材30の後方に位置しており、下限ストッパー部材30の後部が保護されている。
【0071】
以上の構成により、機体3及びキャビン10のうちの一方に取り付けられた下限ストッパー部材30(ストッパー部材)と、機体3及びキャビン10のうちの他方に取り付けられた受け部36とが備えられる。
【0072】
(下限ストッパー部材の構成)―2
図7に示すように、下限ストッパー部材30は、第1弾性体31と第2弾性体32とを有している。第1弾性体31はウレタンで一体的に形成され、第2弾性体32はウレタン(発泡ウレタン)により一体的に形成されている。第1弾性体31と第2弾性体32とが接着されて、下限ストッパー部材30が構成されている。
【0073】
下限ストッパー部材30において、ウレタンの発泡度合いの差により、第2弾性体32の硬度が第1弾性体31の硬度よりも低いものに設定されており、第2弾性体32が第1弾性体31よりも軟らかいものとなっている。
この場合、第1弾性体31の硬度は、90~100(デュロメータA、瞬時)が好ましい。第2弾性体32の硬度は、68~88(アスカーC、瞬時)が好ましい。
【0074】
(下限ストッパー部材の構成)―3
図7に示すように、下限ストッパー部材30の第1弾性体31において、上下方向A1(サスペンション機構24の伸縮方向に沿った方向に相当)から視て、第1弾性体31の外周部は円形である。第1弾性体31の上下方向A1での全ての部分において、第1弾性体31の外周部の半径B11は同じである。
【0075】
第1弾性体31の上端部が接続端部31aであり、第1弾性体31の下端部が取付端部31bである。第1弾性体31の接続端部31a及び取付端部31bは、上下方向A1と直交する面C1と平行な平面に形成されている。第1弾性体31の接続端部31aから取付端部31bに向けて、底部を有する凹部31cが、第1弾性体31に形成されている。第1弾性体31の凹部31cの底部と取付端部31bとに亘って貫通する開口部31dが第1弾性体31に開口されている。
【0076】
以上の構成により、第1弾性体31に、第2弾性体32の接続端部32bに接続された第1弾性体31の接続端部31aから、機体3及びキャビン10のうちの一方に取り付けられた第1弾性体31の取付端部31bに向けて、底部を有する凹部31cが形成されている。
【0077】
上下方向A1から視て、第1弾性体31の凹部31cの内周部と開口部31dの内周部とは円形であり、第1弾性体31の凹部31cと開口部31dとが同芯状に形成されている。第1弾性体31の凹部31cの内周部の半径B12が、第1弾性体31の開口部31dの内周部の半径B13よりも大きい。
【0078】
上下方向A1と直交する面C1での第1弾性体31の断面積について、第1弾性体31における凹部31cの部分の断面積は、上下方向A1での各部分で同じであり、第1弾性体31における開口部31dの部分の断面積は、上下方向A1での各部分で同じである。第1弾性体31における凹部31cの部分の断面積は、第1弾性体31における開口部31dの部分の断面積よりも小さい。
【0079】
(下限ストッパー部材の構成)―4
図7に示すように、下限ストッパー部材30の第2弾性体32において、上下方向A1から視て、第2弾性体32の外周部は円形である。第2弾性体32の上端部が当たり部32aであり、第2弾性体32の下端部が接続端部32bである。第2弾性体32の当たり部32a及び接続端部32bは、上下方向A1と直交する面C1と平行な平面に形成されている。
【0080】
上下方向A1から視て、第2弾性体32の接続端部32bの外周部の半径B22が、第1弾性体31の外周部の半径B11と同じである。第2弾性体32の当たり部32aの外周部の半径B21が、第2弾性体32の接続端部32bの外周部の半径B22よりも小さいのであり、第2弾性体32の外周部の半径が、第2弾性体32の当たり部32aに近い側の部分ほど小さくなっている。
【0081】
第2弾性体32の当たり部32aと接続端部32bとに亘って貫通する開口部32cが第2弾性体32に開口されている。上下方向A1から視て、第2弾性体32の開口部32cの内周部は円形であり、第2弾性体32の開口部32cの内周部の半径B23は、第2弾性体32の当たり部32aの外周部の半径B21よりも小さく、第2弾性体32の接続端部32bの外周部の半径B22よりも小さい。第1弾性体31の凹部31cの内周部の半径B12と、第2弾性体32の開口部32cの内周部の半径B23とは同じである。
【0082】
第2弾性体32において、第2弾性体32の外周部の半径が第2弾性体32の当たり部32aに近い側の部分ほど小さくなっている点、並びに、第2弾性体32の開口部32cの内周部の半径B23が開口部32cの全ての部分で同じある点により、上下方向A1と直交する面C1での第2弾性体32の断面積が、第2弾性体32の当たり部32aに近い側の部分ほど小さくなっている。
【0083】
(下限ストッパー部材の構成)―5
図7に示すように、第1弾性体31の接続端部31aと第2弾性体32の接続端部32bとが、合わせられて接着されている。この場合、第1弾性体31の凹部31cと、第1弾性体31の開口部31dと、第2弾性体32の当たり部32aと、第2弾性体32の接続端部32bと、第2弾性体32の開口部32cとが、同芯状である。
【0084】
第1弾性体31の外周部の半径B11と第2弾性体32の接続端部32bの外周部の半径B22とが同じであり、第1弾性体31の凹部31cの内周部の半径B12と第2弾性体32の開口部32cの内周部の半径B23とが同じである。
【0085】
これにより、面C1での断面積について、第1弾性体31における凹部31cの部分の断面積と、第2弾性体32の接続端部32bの断面積とは同じである。第1弾性体31における開口部31dの部分の断面積は、第2弾性体32の接続端部32bの断面積よりも大きい。
【0086】
第1弾性体31における上下方向A1の長さL1(第1弾性体31の接続端部31aと取付端部31bとに亘る長さ)が、第2弾性体32における上下方向A1の長さL2(第2弾性体32の当たり部32aと接続端部32bとに亘る長さ)よりも、長いものに設定されている。
【0087】
以上の構成により、下限ストッパー部材30(ストッパー部材)は、機体3及びキャビン10のうちの一方に取り付けられた第1弾性体31と、第1弾性体31に接続されて受け部36と当たる第2弾性体32とを有している。
【0088】
第2弾性体32は、硬度が第1弾性体31の硬度よりも低く、且つ、受け部36(第2部分36b)に当たる第2弾性体32の当たり部32aの面積が、第2弾性体32の第1弾性体31に接続された接続端部32bの面積よりも小さくなる形状に形成されている。
【0089】
第2弾性体32の当たり部32aが、上下方向A1(サスペンション機構24の伸縮方向に沿った方向)と直交する面C1と平行な平面に形成されている。
上下方向A1(サスペンション機構24の伸縮方向に沿った方向)と直交する面C1での第2弾性体32の断面積が、第2弾性体32の当たり部32aに近い側の部分ほど小さくなっている。
【0090】
(下限ストッパー部材の支持部材への取付構造)
図6に示すように、支持部材26の天板部26cは、上下方向A1と直交する面C1と平行な平面に形成されており、下限ストッパー部材30において、第1弾性体31の取付端部31bが、支持部材26の天板部26cに乗せられている。カラー41が、第2弾性体32の開口部32c及び第1弾性体31の凹部31cから、第1弾性体31の開口部31dに挿入されている。
【0091】
カラー41は、円筒状の本体部41aと、本体部41aの上端部に連結されたリング状の天板部41bとを有している。カラー41が第1弾性体31の開口部31dに挿入されると、カラー41の天板部41bが第1弾性体31の凹部31cの底部に接触し、カラー41の本体部41aの下端部が支持部材26の天板部26cに接触する。
【0092】
前述の状態において、ボルト42が、第2弾性体32の開口部32c及び第1弾性体31の凹部31cから、カラー41に挿入されて、支持部材26の天板部26cの開口部26gを通って下方に出ている。ボルト42の下端部にナット43が取り付けられて、ボルト42及びナット43が締め付けられている。これにより、下限ストッパー部材30が、支持部材26に取り付けられ、支持部材26及び後車軸ケース19を介して機体3に取り付けられている。
【0093】
第1弾性体31の接続端部31aとボルト42の頭部との間隔W3が、第2弾性体32における上下方向A1の長さL2(第2弾性体32の当たり部32aと接続端部32bとに亘る長さ)よりも、短いものとなっている。
【0094】
下限ストッパー部材30が支持部材26に取り付けられた状態において、カラー41により、ボルト42を必要以上に締め付けることはできないのであり、ボルト42の締め付け過ぎにより、第1弾性体31が圧し潰されることはない。
【0095】
以上の構成により、第1弾性体31の凹部31cの底部と機体3及びキャビン10のうちの一方とに亘って、ボルト42が取り付けられて、第1弾性体31が機体3及びキャビン10のうちの一方に取り付けられている。
【0096】
(キャビンにおける機体に対する下限位置が下限ストッパー部材により決められる状態)―1
図6に示すように、下限ストッパー部材30(第2弾性体32の当たり部32a)と、受け部36の第2部分36bとの間に、間隔W1が存在する。上限ストッパー部材29の当たり部29bと、受け部36の第1部分36aとの間に、間隔W2が存在する。作業者が運転部9に搭乗した状態(ラテラルロッド25が水平に近い状態)では、間隔W1が間隔W2よりも小さくなっている。
【0097】
これにより、サスペンション機構24の伸縮によりキャビン10が機体3に対して上下動した場合、上限ストッパー部材29の当たり部29bと受け部36の第1部分36aとが当たる上限規制状態があり、下限ストッパー部材30の第2弾性体32と受け部36の第2部分36bとが当たる下限規制状態がある。下限規制状態と上限規制状態とを比較すると、下限規制状態が上限規制状態よりも早期に生じ易く、下限規制状態が上限規制状態よりも頻繁に生じ易い。
【0098】
(キャビンにおける機体に対する下限位置が下限ストッパー部材により決められる状態)―2
図6に示すように、右(左)のサスペンション機構24の収縮により、キャビン10の右部(左部)が機体3に対して下降した場合、右(左)の下限ストッパー部材30の第2弾性体32の当たり部32aと、右(左)の受け部36の第2部分36bとが当たる。
【0099】
受け部36の第2部分36bは、上下方向A1と直交する面C1と平行な平面に形成されている。下限ストッパー部材30において、第2弾性体32の外周部の半径が、第2弾性体32の当たり部32aに近い側の部分ほど小さくなっており、第2弾性体32が先細り状となっている。
【0100】
これにより、下限ストッパー部材30の第2弾性体32の当たり部32aと受け部36の第2部分36bとが当たる際、第2弾性体32の当たり部32aが偏り少なく均等に受け部36の第2部分36bに当たり易い。
【0101】
キャビン10が機体3に対してさらに下降すると、下限ストッパー部材30において、第2弾性体32の硬度が第1弾性体31の硬度よりも低いことにより(第2弾性体32が第1弾性体31よりも軟らかいことにより)、主に第2弾性体32が圧縮されて、キャビン10の下降が主に第2弾性体32により吸収される。
【0102】
上下方向A1と直交する面C1での第2弾性体32の断面積が、第2弾性体32の当たり部32aに近い側の部分ほど小さくなっている。これにより、第2弾性体32と受け部36の第2部分36bとが当たり始めた初期の時点では、第2弾性体32の断面積が小さいことにより、キャビン10の下降速度の減速は小さい。第2弾性体32と受け部36の第2部分36bとの当たりが進行するのに伴って、受け部36の第2部分36bの位置での第2弾性体32の断面積が次第に大きくなるのであり、キャビン10の下降速度の減速が次第に大きくなる。
【0103】
(キャビンにおける機体に対する下限位置が下限ストッパー部材により決められる状態)―3
図6に示すように、キャビン10が機体3に対してさらに下降し、下限ストッパー部材30において、第2弾性体32が十分に圧縮されると、次に主に第1弾性体31が圧縮され、キャビン10の下降が主に第1弾性体31により吸収される。
【0104】
下限ストッパー部材30において、第1弾性体31の硬度が第2弾性体32の硬度よりも高いことによって(第1弾性体31が第2弾性体32よりも硬いことによって)、キャビン10の下降速度が比較的大きく減速される。
【0105】
第1弾性体31の接続端部31aの外周部と第2弾性体32の接続端部32bの外周部とが一致し、第1弾性体31の凹部31cの内周部と第2弾性体32の開口部32cの内周部とが一致している。面C1(図7参照)での断面積について、第1弾性体31の接続端部31aの断面積と第2弾性体32の接続端部32bの断面積とが同じである。
【0106】
これにより、下限ストッパー部材30において、第2弾性体32が十分に圧縮されてから、第1弾性体31の圧縮に滑らかに移行するのであり、キャビン10の下降の吸収が滑らかに行われる。
【0107】
下限ストッパー部材30において、第1弾性体31が圧縮されても、第1弾性体31の凹部31cの底部がカラー41の天板部41bから離れるのであり、カラー41及びボルト42の影響を受けること少なく、第1弾性体31の圧縮が行われる。
【0108】
下限ストッパー部材30において、第1弾性体31が圧縮されることによって、キャビン10の下降速度が比較的大きく減速されて、キャビン10が下限位置で停止するのであり、キャビン10の機体3に対する下限位置が下限ストッパー部材30により決められた状態となる。
【0109】
この状態において、キャビン10が機体3に対してさらに下降して、第1弾性体31がさらに圧縮されようとしても、受け部36の第2部分36bとボルト42とが当たることにより、キャビン10が停止する。
【0110】
以上の構成により、サスペンション機構24の伸縮により、下限ストッパー部材30(ストッパー部材)と受け部36とが当たり、下限ストッパー部材30(ストッパー部材)が圧縮されることによって、キャビン10における機体3に対する下限位置と、キャビン10における機体3に対する上限位置とのうちの、少なくとも一方が決められる。
【0111】
(発明の実施の第1別形態)
図8に示すように、下限ストッパー部材30の第2弾性体32において、第2弾性体32の上下中間部と接続端部32bとに亘る部分が半径B22に形成され、第2弾性体32の上下中間部(半径B22)から当たり部32a(半径B21)に向けて、半径が次第に小さくなるように形成されてもよい。
【0112】
(発明の実施の第2別形態)
図9に示すように、下限ストッパー部材30の第2弾性体32において、第2弾性体32の接続端部32b(半径B22)から上下中間部に向けて、半径が次第に小さくなるように形成され、第2弾性体32の上下中間部と当たり部32aとに亘る部分が半径B21に形成されてもよい。
【0113】
(発明の実施の第3別形態)
図10に示すように、下限ストッパー部材30の第2弾性体32において、第2弾性体32の開口部32cの半径B23が、第2弾性体32の接続端部32b(半径B12)から当たり部32aに向けて、次第に大きくなるように形成されてもよい。
【0114】
(発明の実施の第4別形態)
サスペンション機構24の伸縮方向に沿った方向(上下方向A1)から視て、第1弾性体31の外周部が三角形状又は四角形状等の多角形形状に形成されてもよい。
サスペンション機構24の伸縮方向に沿った方向(上下方向A1)から視て、第2弾性体32の外周部が三角形状又は四角形状等の多角形形状に形成されてもよい。
【0115】
(発明の実施の第5別形態)
カラー41及びボルト42が廃止されて、下限ストッパー部材30の第1弾性体31の取付端部31bに、平板状の取付部材(図示せず)が接着され、取付部材が支持部材26の天板部26cに取り付けられるように構成してもよい。
【0116】
前述の構成によると、第1弾性体31の凹部31c及び開口部31dが廃止され、第2弾性体32の開口部32cが廃止されてもよい。
前述の構成によると、第1弾性体31の開口部31dが廃止され、第1弾性体31の凹部31cが取付端部31bまで設けられてもよい。これにより、凹部31cに代わり、第2弾性体32の開口部32cの内周部の半径B23と同じ半径B12を有する開口部(図示せず)が、第1弾性体31の接続端部31aと取付端部31bとに亘って開口される。
【0117】
(発明の実施の第6別形態)
下限ストッパー部材30(第1弾性体31の取付端部31b)が、受け部36の第2部分36bの下面部に下向きに取り付けられ、支持部材26の天板部26cが受け部となってもよい。
【0118】
前述の構成によると、下限ストッパー部材30(第1弾性体31)が、キャビン10(フレーム39)に取り付けられ、受け部(支持部材26)が、後車軸ケース19を介して機体3に取り付けられる。
【0119】
(発明の実施の第7別形態)
上限ストッパー部材29のロッド部29aが上方に十分に延出され、下限ストッパー部材30と同じ第1弾性体31及び第2弾性体32が、上限ストッパー部材29の当たり部29bに下向きに取り付けられてもよい。
【0120】
前述の構成によると、上限ストッパー部材29が、支持部材26及び後車軸ケース19を介して機体3に取り付けられる。第1弾性体31及び第2弾性体32を有する上限ストッパー部材29と、第1弾性体31及び第2弾性体32を有する下限ストッパー部材30とが備えられる。
【0121】
(発明の実施の第8別形態)
上限ストッパー部材29のロッド部29aが上方に十分に延出され、下限ストッパー部材30と同じ第1弾性体31及び第2弾性体32を有する上限ストッパー部材29が、受け部36の第1部分36aに上向きに取り付けられてもよい。この場合、図6に示す上限ストッパー部材29の当たり部29bが受け部となる。
【0122】
前述の構成によると、上限ストッパー部材29が受け部36を介してキャビン10に取り付けられ、受け部(図6に示す上限ストッパー部材29の当たり部29b)が、支持部材26及び後車軸ケース19を介して機体3に取り付けられる。第1弾性体31及び第2弾性体32を有する上限ストッパー部材29と、第1弾性体31及び第2弾性体32を有する下限ストッパー部材30とが備えられる。
【0123】
(発明の実施の第9別形態)
第1弾性体31及び第2弾性体32を有する上限ストッパー部材29が備えられ、下限ストッパー部材30が廃止されてもよい、第1弾性体31及び第2弾性体32を有する下限ストッパー部材30が備えられ、上限ストッパー部材29が廃止されてもよい。
【0124】
以上の構成及び(発明の実施の第7別形態)(発明の実施の第8別形態)の構成によって、サスペンション機構24の伸縮により、上限ストッパー部材29(下限ストッパー部材30)と受け部36とが当たり、上限ストッパー部材29(下限ストッパー部材30)が圧縮されることによって、キャビン10における機体3に対する下限位置と、キャビン10における機体3に対する上限位置とのうちの、少なくとも一方が決められる。
【0125】
(発明の実施の第10別形態)
キャビン10の後部の右部及び左部が、右及び左の防振ゴム23によりミッションケース6(機体3)の後部に支持され、キャビン10の前部の右部及び左部が、右及び左のサスペンション機構24によりクラッチハウジング5(機体3)に支持されるように構成してもよい。
【0126】
キャビン10の後部の右部及び左部が、右及び左のサスペンション機構24によりミッションケース6(機体3)の後部に支持され、キャビン10の前部の右部及び左部が、右及び左のサスペンション機構24によりクラッチハウジング5(機体3)に支持されるように構成してもよい。
【0127】
(発明の実施の第11別形態)
サスペンション機構24の伸縮方向が、上下方向A1ではなく、機体3から斜め前方上方に設定されてもよく、機体3から斜め後方上方に設定されてもよく、機体3から斜め右横方上方に設定されてもよく、機体3から斜め左横方上方に設定されてもよい。
【0128】
前述の構成によると、サスペンション機構24の伸縮方向に沿った方向も、機体3から斜め前方上方の方向となり、機体3から斜め後方上方の方向となり、機体3から斜め右横方上方の方向となり、機体3から斜め左横方上方の方向となる。
【0129】
(発明の実施の第12別形態)
前輪1に代えて、クローラ型式の走行装置(図示せず)が、前の走行装置として設けられてもよい。後輪2に代えて、クローラ型式の走行装置(図示せず)が、後の走行装置として設けられてもよい。前輪1及び後輪2が、一つのクローラ型式の走行装置(図示せず)によって構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、トラクタばかりではなく、キャビンを搭載したコンバイン等の農業用の作業車、キャビンを搭載したバックホウやホイルローダ等の建設用の作業車にも適用できる。
【符号の説明】
【0131】
1 前輪(走行装置)
2 後輪(走行装置)
3 機体
9 運転部
10 キャビン
24 サスペンション機構
30 ストッパー部材
31 第1弾性体
31a 接続端部
31b 取付端部
31c 凹部
32 第2弾性体
32a 当たり部
32b 接続端部
32c 開口部
36 受け部
42 ボルト
A1 方向
B11 半径
B22 半径
C1 面
L1 長さ
L2 長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10