(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090838
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A01K89/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206981
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BJ05
2B108BJ08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】装置全体の大型化を招かずに各種センサや回路基板などの電気部品を配置可能な魚釣用リールを提供することにある。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールに該釣糸を案内可能なガイド部を有するロータと、該スプールの中心軸と略同軸で該ロータを回転可能に軸支するリール本体と、リール状態を検出するリール状態検出部と、該リール状態検出部の出力を取得する制御部を含む電気回路を有する回路基板と、を備え、該回路基板は、前記リール本体の前記ロータと対向する位置に配置されるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールに該釣糸を案内可能なガイド部を有するロータと、該スプールの中心軸と略同軸で該ロータを回転可能に軸支するリール本体と、リール状態を検出するリール状態検出部と、該リール状態検出部の出力を取得する制御部を含む電気回路を有する回路基板と、を備える魚釣用リールであって、
該回路基板は、前記リール本体の前記ロータと対向する位置に配置されることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールに該釣糸を案内可能なガイド部を有するロータと、該スプールの中心軸と略同軸で該ロータを回転可能に軸支するリール本体と、該ロータの回転を検出するロータ回転検出部と、該スプールの回転を検出するスプール回転検出部と、を有するリール状態検出部と、を備える魚釣用リールであって、
該リール状態検出部は、前記リール本体の前記ロータと対向する位置に配置されることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項3】
釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールに該釣糸を案内可能なガイド部を有するロータと、該ロータ上に設けられ、該ガイド部の案内可能・不能を選択可能にされるベール部と、前記スプールの中心軸と略同軸で該ロータを回転可能に軸支するリール本体と、該ロータの回転を検出するロータ回転検出部又は該スプールの回転を検出するスプール回転検出部の少なくともいずれかを有するリール状態検出部と、該リール状態検出部の出力を取得する制御部と該リール状態検出部を有する回路基板と、を備える魚釣用リールであって、
該回路基板は、前記リール本体の前記ロータと対向する位置に配置されることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項4】
前記リール状態検出部は、磁気式、光学式、又は静電容量検知式のいずれかの非接触により検出可能に構成される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記ロータ回転検出部と前記スプール回転検出部とは、異なる検知方式である、請求項4に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
前記スプールは、被検出用の永久磁石を有し、前記スプール回転検出部は、磁気式検出部であり、
前記ロータは、反射率の異なる光学式被検出部を有し、前記ロータ回転検出部は、光学式検出部である、請求項5に記載の魚釣用リール。
【請求項7】
前記ベール部の前記ガイド部の案内可能・不能を検出するベール反転検出部をさらに有し、該ベール反転検出部は、前記回路基板上に設けられる、請求項1から6までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子基板を有する魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、釣糸を巻回・放出可能な様々な魚釣用リールが知られている。このような魚釣用リールを用いて釣りを行う場合、ルアーや餌を投擲した際に、釣糸がどの程度放出されたかは、釣り人の感覚に頼らざるを得ない状況となっている。
【0003】
このような魚釣用リールとして、特許文献1では、釣り糸をスプールに巻取る際に作動する駆動体の所定作動量に対応する釣り糸の巻取り量を把握可能なデータにして、釣り糸の巻取り時に記憶手段に保持すると共に、投出された仕掛を所定位置から引寄せる際に、釣り糸の巻取りが完了するまでの駆動体の作動量を計測し、この計測結果、及び、記憶手段に保持されたデータに基づいて、前記所定位置と当該装置との距離を報知する制御手段を備えるスピニングリールのカウンタ装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係るカウンタ装置では、ハンドル軸やロータ軸の回転部に取り付け、その回転を検出及び演算することで、釣糸を巻き取った長さを表示することができると共に、該カウンタ装置はスピニングリールに対して着脱可能にされている。しかしながら、装着後のスピニングリールは、カウンタ装置の分だけ大型化し、重量を増大させるだけでなく、糸絡みトラブル発生リスクを高めることとなり、ユーザの利便性を妨げてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装置全体の大型化を招かずに各種センサや回路基板等の電気部品を配置可能な魚釣用リールを提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールに該釣糸を案内可能なガイド部を有するロータと、該スプールの中心軸と略同軸で該ロータを回転可能に軸支するリール本体と、リール状態を検出するリール状態検出部と、該リール状態検出部の出力を取得する制御部を含む電気回路を有する回路基板と、を備え、該回路基板は、前記リール本体の前記ロータと対向する位置に配置されるように構成される。
【0008】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールに該釣糸を案内可能なガイド部を有するロータと、該スプールの中心軸と略同軸で該ロータを回転可能に軸支するリール本体と、該ロータの回転を検出するロータ回転検出部と、該スプールの回転を検出するスプール回転検出部と、を有するリール状態検出部と、を備え、該リール状態検出部は、前記リール本体の前記ロータと対向する位置に配置されるように構成される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールに該釣糸を案内可能なガイド部を有するロータと、該ロータ上に設けられ、該ガイド部の案内可能・不能を選択可能にされるベール部と、前記スプールの中心軸と略同軸で該ロータを回転可能に軸支するリール本体と、該ロータの回転を検出するロータ回転検出部又は該スプールの回転を検出するスプール回転検出部の少なくともいずれかを有するリール状態検出部と、該リール状態検出部の出力を取得する制御部と該リール状態検出部を有する回路基板と、を備え、該回路基板は、前記リール本体の前記ロータと対向する位置に配置されるように構成される。
【0010】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記リール状態検出部は、磁気式、光学式、又は静電容量検知式のいずれかの非接触により検出可能に構成される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記ロータ回転検出部と前記スプール回転検出部とは、異なる検知方式であるように構成される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記スプールは、被検出用の永久磁石を有し、前記スプール回転検出部は、磁気式検出部であり、前記ロータは、反射率の異なる光学式被検出部を有し、前記ロータ回転検出部は、光学式検出部であるように構成される。
【0013】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、前記ベール部の前記ガイド部の案内可能・不能を検出するベール反転検出部をさらに有し、該ベール反転検出部は、前記回路基板上に設けられるように構成される。
【発明の効果】
【0014】
上記実施形態によれば、装置全体の大型化を招かずに各種センサや回路基板等の電気部品を配置可能な魚釣用リールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1の基本構成について説明する図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1の基本構成について説明する図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1の電気部品等について説明する図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1における回路基板105の配置について説明する図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1のスプール回転検出部101の詳細について説明する図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1のロータ回転検出部102の詳細について説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1のベール反転検出部103の詳細について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る魚釣用リールの実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0017】
まず、
図1ないし7を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リールについて、スピニングリールを例として説明する(以下、魚釣用リールとする)。
図1、
図2は、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1のロータ回転軸を通る面で破断した断面図であり、
図1はベールを閉じた状態、
図2はベールを開いた状態をそれぞれ示すものである。
【0018】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、スプール2と、ロータ3と、ベール4と、ラインガイド5と、ピニオンギア6と、ドライブギア7と、フレーム(リール本体)8と、回路基板105(
図5に図示)と、リール状態検出部10と、を含むように構成される。以降の説明では、スプール2の中心軸方向を軸方向と定義するものとする。
【0019】
次に、
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1の基本構成について説明する。本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1のスプール2は、略円筒上に形成され、糸巻き部に釣糸を巻回可能であり、メインシャフト14周りに回転可能に軸支される。スプール2は、公知のドラグ機構でメインシャフト14に保持される。これにより、スプール2に対して所定以上のトルクが発生した場合、スプール2はメインシャフト14に対して空転可能とすることで、釣糸に過大な張力が発生するのを回避することができる。
【0020】
メインシャフト14は、従来公知のオシレータ機構によって軸方向に往復運動をさせるようにしてもよい。これにより、ロータ3の回転に応じてラインガイド5との軸方向の相対位置を適宜変化させることができ、糸巻き部に釣糸を均等に巻き付けることができる。
【0021】
ロータ3は、ピニオンギア6と一体に取り付けられると共に、フレーム8に対して(相対)回転可能に軸支される。ロータ3には、ベール4を介してラインガイド5が保持される。ラインガイド5は釣糸を案内し、スプール2の周囲を回転することで、スプール2に釣糸を巻回することができる。
【0022】
ベール4は、開状態又は閉状態となることできるようにしてロータ3に軸支される。
図1に示すように、ベール4が閉状態のときは、ラインガイド5は釣糸を案内可能にされ、ロータ3を回転させることで釣糸をスプール2に巻回させることができる。他方で、
図2に示すように、ベール4が開状態のときは、ラインガイド5は釣糸を案内不能な状態となり、スプール2に巻回された釣糸は放出可能となる。
【0023】
ロータ3の(根元側)端部には、ピニオンギア6が一体に固定され、ピニオンギア6は、軸受けを介してフレーム8に対して回転可能に軸支される。ロータ3には、ピニオンギア6とドライブギア7とにより回転運動が伝達される。魚釣用リール1の使用者は、ドライブギア7に一体となって固定された図示しないハンドルを操作することで、ロータ3を回転させることができ、これにより釣糸をスプール2に巻回させることができる。
【0024】
次に、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1についてさらに説明する。本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、魚釣用リール1の状態(リール状態)の情報を検出するリール状態検出部10を備える。リール状態検出部10は、リール本体8に対するスプール2の回転運動を検出するスプール回転検出部101と、リール本体8に対するロータ3の回転運動を検出するロータ回転検出部102と、を有するように構成される。また、ベール4の反転状態を検出するベール反転検出部103を有するように構成してもよい。その他、釣糸に発生する張力やリールの重力方向に対する姿勢等を検出してもよい。
【0025】
検出したリール状態の情報は、必要に応じて演算処理を行い、LCDやスピーカー等の出力部(手段)に出力することで、魚釣用リール1の使用者にリール状態を報知することができる。使用者に報知可能な情報として、放出した釣糸の長さや釣糸の巻き取り・引き出し速度、投擲(キャスト)回数等、従来公知の様々な情報を出力可能に構成され、その種類について特段限定されるものではない。
【0026】
当該リール状態の情報は、フラッシュROMやSDカード等の記録部(手段)に保存することで、使用状態のログを取る(記録する)ことができる。また、無線通信部(手段)や有線通信部(手段)を介して、携帯電話やパーソナルコンピュータ、ウェアラブル端末、魚群探知機等の外部機器等にリール状態の情報を送信することができる。
【0027】
次に、
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1の電気部品等について説明する。既述のリール状態検出部10で検出した情報を演算処理するために、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、図示のように、電気部品を構成要素として、スプール回転検出部101と、ロータ回転検出部102と、ベール反転検出部103と、制御部(マイコン)104と、回路基板105と、上記各電気部品に給電する給電手段106を備える。
【0028】
スプール回転検出手部101は、スプール2の回転に応じて電気信号を発出する(出力する)ことができるが、より詳細については後述する。ロータ回転検出手部102は、ロータ3の回転に応じて電気信号を発出する(出力する)ことができるが、同様に詳細については後述する。ベール反転検出部103は、ベール4の開閉状態に応じて電気信号を発出する(出力する)ことができるが、同様に、詳細については後述する。
【0029】
制御部(マイコン)104は、各リール状態検出部から発出(出力)された信号を取得することができ、当該信号を必要に応じて演算、記憶し、演算結果を出力することができる。回路基板105は、制御部(マイコン)104を含む電気部品を保持することができる。また、各電気部品を必要に応じて電気的に接続する電子回路が印刷等により形成されている。
【0030】
給電部(手段)106は、これらの各電気部品に給電することができる。ボタン電池等の1次電池、リチウムポリマー電池等の二次電池、外部から給電可能な無線給電部(手段)や有線給電部(手段)が含まれるが、これらに限定されるものではない。給電部(手段)106は、回路基板105上に配置してもよいし、魚釣用リール1内の別の場所に配置するようにしてもよい。回路基板105上に配置することで、装置全体の小型化や組立て性の向上が実現可能である。また、回路基板外に配置した場合は、電池体積の確保をし易くなり、電池容量の大型化を実現し易い。また、リールの表面近くに配置することで、外部からの給電が行ないやすくなる。
【0031】
また、必要に応じて出力部(手段)や通信部(手段)、記録部(手段)を有するように構成してもよい。出力部(手段)は、制御部(マイコン)104で演算したリール状態を使用者に報知するためのものであり、LEDやLCD等の表示部(手段)やスピーカー等の発音部(手段)が含まれる。通信部(手段)は、制御部(マイコン)104で演算したリール状態を外部機器に送信するためのものであり、USBコネクタ等の有線通信部(手段)やBLE等の無線通信部(手段)が含まれる。記録部(手段)は、制御部(マイコン)104で演算したリール状態のログを記録するためのものであり、SDカード等のリムーバブルメディアやフラッシュメモリなどの内蔵メディアが含まれる。これらの各構成要素は、回路基板上に配置することで、装置全体の小型化が実現できる。あるいは、視認性の向上や取り外し容易とする等、固有の必要性に応じて、回路基板外の魚釣用リール内に配置し、回路基板内のマイコンと電気的に接続するように構成してもよい。
【0032】
次に、
図4を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1における回路基板105の配置について説明する。本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1では、回路基板105及びリール状態検出部10をリール本体8におけるロータと対向する位置に配置するとよい。
図4は、本発明におけるロータ対向位置(対向部)を説明するための図である。ロータ対向位置(対向部)とは、リール本体(フレーム)8における、ロータ3ないしはピニオンギア6と対向する箇所を指し、ロータ3の内周面と対向する外筒位置(部)A1、ピニオンギア6の外周面と対向する内筒位置(部)A2、ロータの円板面と対向する天板位置(部)A3の3つの位置を含むように構成される。
【0033】
スプール回転検出部は、外筒位置(部)A2又は天板位置(部)A3に設けるとよい。これにより、リール本体に対してスプールが相対回転する箇所に近接させてスプール回転検出部を配置することができる。また、ロータ回転検出部は、外筒位置(部)A1、内筒位置(部)A2、天板位置(部)A3のいずれかに設けることができる。これにより、リール本体に対してロータが相対回転する箇所に近接させてロータ回転検出部を配置することができる。
【0034】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1においては、回路基板を天板位置(部)A3に配置している。ロータ対向位置(部)の内、天板位置(部)A3のみが平面ないし略平面形状であるため、当該位置に回路基板105を配置することで、平板ないし略平板状に形成した回路基板105を用いることができ、かつ回路基板105の低コスト化を実現することができる。また、回路基板105及びリール状態検出部10をリール本体側に配置できるため、これらの部品への給電が行ない易い。
【0035】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1においては、回路基板105上にスプール回転検出部101とロータ回転検出部102とを配置している。これにより、これらの各検出部を回路基板外に配置し、フレキシブルケーブルやリード線で電気的に接続させる場合と比して、低コスト化や装置全体の小型化を達成することが可能となる。また、回路基板上にベール反転検出部103を配置してもよい。後述するように、ベール反転検出部103を既述のロータ対向位置(部)に配置することで、ベール反転の有無を検出することができる。回路基板105を天板位置(部)A3に配置することで、ベール反転検出部103も回路基板105上に配置することができる。このようにして、回路基板を天板位置(部)に配置することにより、リール状態を検出する各種検出部を回路基板上に搭載させることが容易となり、装置全体の小型化や低コスト化を達成することが可能となる。
なお、天板位置(部)A3の中央部には、ピニオンギア6とロータ3とが貫通するため、回路基板105を環状に形成し、その開口部にピニオンギア6を配置することで、より効率的に回路基板の面積を確保することができる。これにより、回路基板上により多くの電気部品を配置することが可能となる。
【0036】
なお、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1においては、回路基板をロータ対向位置(部)以外の箇所に設け、スプール回転検出部とロータ回転検出部とをロータ対向位置(部)に設けるようにしてもよい。この場合は、それぞれの検出部と回路基板は、フレキシブルケーブルやリード線等で電気的に接続する。これにより、コストダウンや小部品化は実現できなくなる一方、回路基板の面積の制約が少なくなり、回路基板の大型化をすることで、より多くの電気部品を回路基板上に配置できる。スプール回転検出部とロータ回転検出部とをロータ対向位置(部)に設けることで、各検出部による検出対象を確実に検出することができる。また、スプール回転検出部とロータ回転検出部とを近接して配置できるため、各検出部の配線の共通化や組立性の向上を図ることができる。また、回路基板105は、カバー9によって覆われることで、水滴や塵が回路基板105内に侵入することを防止している。
【0037】
次に、
図5を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1のスプール回転検出部101の詳細について説明する。図示のように、スプール回転検出部101の構成を示すための分解斜視図であり、説明の簡略化のために一部の構成部材を省略している。スプール回転被検出部11がロータに対して軸方向に移動不能に構成され、メインシャフトを中心軸として回転可能に軸支されている。スプール回転被検出部112は、連結棒111を介して、スプール2の回転方向に一体となって回転する。他方で、オシレータ機構によってスプール2が軸方向に移動しても、スプール回転被検出部112は軸方向に移動しないように構成されている。
【0038】
スプール回転被検出部112は、スプール回転検出部101で検出可能な被検知部113を有している。本発明の一実施形態では、スプール回転検出部101はホール素子等の磁気センサであり、被検知部113は永久磁石である。スプール回転検出部101は、非接触式の検出手段であることが望ましく、これにより魚釣用リールを操作した際に余計な摺動摩擦が発生することを回避することができる。必要に応じて、永久磁石の個数を増やすことで、スプール2の回転を検出する分解能を細かく構成することができる。なお、リール本体内部の防水のために、天板位置(部)付近には、磁石及び磁性板で構成された磁気シール機構を配置してもよい。この場合、スプール回転検出部101は、磁気シール機構と被検知部113の間に配置するとよい。このように構成することで、被検知部113の永久磁石と磁気シール機構内の磁性板とにより、磁気回路を構成するようになるため、その間に配置したスプール回転検出部101には強い磁場を発生させることができる。これにより、スプール回転検出部101のS/N比向上、被検知部113の小型化、低コスト化を実現することが可能となる。
【0039】
スプール回転検出部101として、磁気式以外にも光学式センサや静電容量検出センサ等、従来公知の他の非接触センサを用いてもよい。また、ロータ3とカバー9は、スプール回転検出部101による検出を妨げることのないように構成する必要がある。本発明の一実施形態のように、磁気式センサを用いた場合、ロータ3とカバー9の材質として、樹脂や非鉄金属等の非磁性材料を用いることが望ましい。そして、上述のように、スプール回転検出部101を天板位置(部)A2に配置する。これにより、スプール2の回転(回動)に伴って被検知部113がスプール回転検出部101と対向する位置に近接すると、これを検知することができる。
【0040】
次に、
図2及び
図6を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1のロータ回転検出部102の詳細について説明する。
図6は、ロータ回転検出部102の構成を示すための分解斜視図であり、説明の簡略化のために一部の構成部材を省略している。ロータ3の円板面の裏には、ロータ回転被検出部121が配置される。ロータ回転検出部102は、フォトリフレクタなどの反射型の光学式センサであり、受光部と発光部が並んで配置されている。ロータ回転被検出部121は、黒面及び白面など、反射率の異なる2種類の面が周方向に分割されて等間隔に交互に配置される。
【0041】
これにより、ロータ3の回転(回動)に伴ってロータ回転被検出部121の白面及び黒面が交互にロータ回転検出部102と対向することとなる。本発明の一実施形態では、ロータ回転被検出部121は、180°ごとに2分割して白面および黒面に塗り分けているが、この分割数を細かくすることで、ロータ3の回転を検出する分解能を細かく構成することができる。
【0042】
また、カバー9は、スプール回転検出部101及びロータ回転検出部102による検出を妨げることがないよう構成する必要がある。本発明の一実施形態のように、光学式センサを用いた場合、カバー9の材質は、スプール回転検出部101及びロータ回転検出部102に用いる光の波長を透過する材質を採用するとよい。アクリルやポリカーボネート等の樹脂は、可視光や赤外光を透過率が高いため、好適である。
【0043】
次に、
図2、
図3及び
図7を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1のベール反転検出部103の詳細について説明する。
図7は、ベール反転検出部103の構成を示すための分解斜視図であり、説明の簡略化のために一部の構成部材を省略している。ベール反転被検出部131は、ロータ3に対して軸方向に直進移動可能に支持されている。ベール4をロータ3に対して回転移動させる際、カムや歯車等の公知の伝達機構を介在させることで、当該移動に伴い、ベール反転被検出部131が軸方向に移動する。本発明の一実施形態では、キックレバー132に設けられたカムと、付勢ばね(図示しない)との作用により、ベール4の開閉に伴ってベール反転被検出部131が軸方向に移動するように構成される。付勢ばねは、ベール反転被検出部131が軸方向下側に付勢されるように配置される。
【0044】
ベール反転検出部103は、ベール反転被検出部131の軸方向の移動を検出するように構成される。本発明の一実施形態のように、ベール反転検出部103としてフォトリフレクタ等の反射式の光学センサを用い、光軸が径方向外側に向かうように外筒位置(部)A3に配置している。また、ベール反転被検出部131の内周面には、黒面及び白面など、反射率の異なる2種類の面が軸方向に分割されて設けられている。そして、ベール反転検出部103の対向面には、ベールが開いた状態では黒面が、ベールが閉じた状態では白面が位置するように配置される。このようにして、ベール反転検出部103により、ベールの開閉状態を検出することができる。
【0045】
なお、ベール反転検出部103は、別の態様でもよく、上記態様に限定されるものではない。別の態様の場合、必ずしも非接触式の検出方法に限定されるものではない。通常のロータ回転時はベールが閉状態であるため、ベールの閉状態では非接触状態となり、ベールの開状態では接触状態となるようなリミットセンサを用いても、摺動摩擦の発生を回避することができる。
【0046】
なお、本発明の一実施形態では、リール状態検出部として、ロータ回転、スプール回転及びベール反転の各検出部を設けているが、他の検出部を設けても構わない。他の検出部として、例えば、釣糸張力の検出、リールの姿勢検出等が考えられ、いずれも従来公知の方法で検出することができる。
【0047】
次に、本発明の一実施形態に係る魚釣用リールによる効果について述べる。本発明の一実施形態に係る魚釣用リールによれば、装置全体の大型化を招くことなく、魚釣用リール内に電気部品を収納することが可能となる。本発明の一実施形態に係る魚釣用リールでは、リール状態の検出を行うために、リール状態検出部及び回路基板を用いている。これにより、リール状態の検出をしない場合に比して、回路基板の分だけ部品体積が増加する。しかしながら、回路基板を円板状に形成し、ロータの対向位置(部)(天板位置(部))に配置することで、後述する防水性、防塵性を確保しつつ、装置全体の体積増加を最小限なものとすることができる。このようにして、装置全体の大型化を招かずに、各種センサや回路基板等の電気部品を配置可能な魚釣用リールを提供することが可能となる。
【0048】
また、回路基板を天板位置(部)に配置することにより、防水処理の行い易い構成とすることができる。本発明の一実施形態に係る魚釣用リールでは、回路基板を囲むようにカバーを被せている。そして、カバーとリール本体との間に、防水パッキンや接着剤等の防水処理を施している。これにより、組立性を確保しながら、大型化を招くことなく防水処理のし易い構成を採用することが可能となる。また、魚釣用リールの内部ではグリス等の潤滑剤を大量に使用することが多い。特に、ピニオンギアやドライブギアの周囲はグリス等で満たされることが多いが、当該潤滑剤と回路基板とが近接すると、潤滑剤に混じった金属粉等の影響で、電気回路が誤作動することがある。本発明の一実施形態に係る魚釣用リールのように、ロータの対向位置(部)に回路基板を配置することで、潤滑剤と回路基板とを十分に離間させることが可能となる。
【0049】
また、本発明の一実施形態に係る魚釣用リールでは、回路基板上にリール状態検出部を配置でき、リール状態検出部として、スプール回転検出部、ロータ回転検出部、及びベール反転検出部を回路基板上に配置している。これにより、回路基板外にリール状態検出部を配置する場合に比して、装置全体の小型化や低コスト化を達成することができる。
【0050】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールでは、スプール回転検出部101及びロータ回転検出部102に、非接触式のセンサを用いている。これにより、余計な摺動摩擦を発生することなくリール状態を検出することができる。また、本発明の一実施形態では、スプール回転検出部101として磁気式センサを用い、ロータ回転検出センサとして光学式センサを用いている。このように、2つの検出部に異なる2つの検出原理を有するセンサを用いることで、各センサを近接させても検出結果が互いに干渉し合うことを的確かつ確実に防止することができる。また、スプール回転検出部に磁気式センサを用いることで、ロータに非鉄金属や樹脂等の非磁性材料を用いることができるため、材料選択の際の制約が比較的少ない構成を採用することができる。
【0051】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールに該釣糸を案内可能なガイド部を有するロータと、該スプールの中心軸と略同軸で該ロータを回転可能に軸支するリール本体と、リール状態を検出するリール状態検出部と、該リール状態検出部の出力を取得する制御部を含む電気回路を有する回路基板と、を備え、該回路基板は、該リール本体の該ロータと対向する位置に配置されるように構成される。
【0052】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールに該釣糸を案内可能なガイド部を有するロータと、該スプールの中心軸と略同軸で該ロータを回転可能に軸支するリール本体と、該ロータの回転を検出するロータ回転検出部と、該スプールの回転を検出するスプール回転検出部と、を有するリール状態検出部と、を備え、該リール状態検出部は、該リール本体の該ロータと対向する位置に配置されるように構成される。
【0053】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、釣糸を巻回可能なスプールと、該スプールに該釣糸を案内可能なガイド部を有するロータと、該ロータ上に設けられ、該ガイド部の案内可能・不能を選択可能にされるベール部と、前記スプールの中心軸と略同軸で該ロータを回転可能に軸支するリール本体と、該ロータの回転を検出するロータ回転検出部又は該スプールの回転を検出するスプール回転検出部の少なくともいずれかを有するリール状態検出部と、該リール状態検出部の出力を取得する制御部と該リール状態検出部を有する回路基板と、を備え、該回路基板は、該リール本体の該ロータと対向する位置に配置されるように構成される。
【0054】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、当該リール状態検出部は、磁気式、光学式、又は静電容量検知式のいずれかの非接触により検出可能に構成される。
【0055】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、当該ロータ回転検出部と当該スプール回転検出部とは、異なる検知方式であるように構成される。
【0056】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、当該スプールは、被検出用の永久磁石を有し、当該スプール回転検出部は、磁気式検出部であり、当該ロータは、反射率の異なる光学式被検出部を有し、前記ロータ回転検出部は、光学式検出部であるように構成される。
【0057】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、当該ベール部のガイド部の案内可能・不能を検出するベール反転検出部をさらに有し、該ベール反転検出部は、当該回路基板上に設けられるように構成される。
【0058】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1 魚釣用リール
2 スプール
3 ロータ
4 ベール
5 ラインガイド
6 ピニオンギア
7 ドライブギア
8 フレーム(リール本体)
9 カバー
10 リール状態検出部
11 スプール回転被検出部
14 メインシャフト
101 スプール回転検出部
102 ロータ回転検出部
103 ベール反転検出部
104 制御部(マイコン)
105 回路基板
106 給電部
111 連結部
112 スプール回転被検出部
113 被検知部
121 ロータ回転被検出部
131 ベール反転検出部
132 キックレバー