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  • 特開-モーア及びモーアを備えた作業機 図1
  • 特開-モーア及びモーアを備えた作業機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090841
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】モーア及びモーアを備えた作業機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/416 20060101AFI20240627BHJP
   A01D 34/64 20060101ALI20240627BHJP
   A01D 34/66 20060101ALI20240627BHJP
   A01D 34/68 20060101ALI20240627BHJP
   A01D 34/69 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A01D34/416
A01D34/64 H
A01D34/66 A
A01D34/68
A01D34/69
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206987
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌弘
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA12
2B083BA15
2B083CA02
2B083CA09
2B083CA22
2B083CA28
2B083DA03
2B083HA03
2B083HA17
(57)【要約】
【課題】エネルギ消費を抑制するとともに低騒音で草刈り作業が可能なモーアが要望されていた。
【解決手段】走行機体に装備されるモーアであって、下向きに開放されたモーアデッキ20と、モーアデッキ20の内部に位置して縦軸芯周りで回転する回転刃21A,21B,21Cと、が備えられ、回転刃21A,21B,21Cが紐状の樹脂材にて構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に装備されるモーアであって、
下向きに開放されたモーアデッキと、前記モーアデッキの内部に位置して縦軸芯周りで回転する回転刃と、が備えられ、
前記回転刃が紐状の樹脂材にて構成されているモーア。
【請求項2】
前記モーアデッキ内に前記回転刃が間隔をあけて複数備えられ、
前記モーアデッキは、上方を覆う天板部と、前記天板部の周縁部に沿って垂下する状態で設けられた周壁部と、を有し、
前記周壁部のうち後部側に位置する後周壁部は、前記回転刃の外端部の回転軌跡に沿うように波型状に形成されている請求項1に記載のモーア。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモーアが備えられた作業機であって、
前記走行機体に、走行装置と、前記走行装置を駆動する走行用電動モータと、前記回転刃を回転駆動する作業用電動モータと、が備えられている作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーア及びモーアを備えた作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
モーアは乗用型走行機体に装着されて草刈作業に使用される。走行機体はエンジンで駆動される場合が多く、モーアもエンジンの動力によって回転駆動されていた。そして、このようなモーアは、従来では、縦軸芯周りで回転する金属製のブレードを縦軸芯周りで高速で回転することにより、植立している草を刈るように構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-165366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近では、環境の悪化を考慮してエンジンに代えて電動モータ等を用いて走行機体が駆動される作業機が提案されている。このような電動式の作業機では、走行機体から発生する騒音は低く抑えられている。
【0005】
しかし、上記従来構成のように金属製のブレードを高速回転する構成のモーアでは、草刈り作業時において、金属製のブレードが高速回転するときの風切り音が生じて騒音が大きくなるという不利な面があった。又、大きな駆動力も必要であり、駆動装置が大型化する等、エネルギ消費が多くなる不利もある。
【0006】
そこで、エネルギ消費を抑制するとともに低騒音で草刈り作業が可能なモーア、並びに、そのようなモーアを備えた作業機が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るモーアの特徴構成は、走行機体に装備されるモーアであって、下向きに開放されたモーアデッキと、前記モーアデッキの内部に位置して縦軸芯周りで回転する回転刃と、が備えられ、前記回転刃が紐状の樹脂材にて構成されている点にある。
【0008】
本発明によれば、モーアの回転刃が紐状の樹脂材にて構成されているので、高速で回転しても風切り音は大きくならず、騒音は低く抑えられる。又、回転刃は軽量であるから回転駆動するときの消費エネルギも少なくて済む。その結果、例えば、電動駆動式に構成した場合であれば、小型の電動モータで対応可能であり、消費電力が少なく稼働時間を長く延ばすことも可能である。
【0009】
従って、エネルギ消費を抑制するとともに低騒音で草刈り作業が可能なモーアを提供できるに至った。
【0010】
本発明においては、前記モーアデッキ内に前記回転刃が間隔をあけて複数備えられ、前記モーアデッキは、上方を覆う天板部と、前記天板部の周縁部に沿って垂下する状態で設けられた周壁部と、を有し、前記周壁部のうち後部側に位置する後周壁部は、前記回転刃の外端部の回転軌跡に沿うように波型状に形成されていると好適である。
【0011】
本構成によれば、複数の回転刃を備えているので、一度に草刈りが行える作業幅が広くなり、作業効率が向上するものとなる。そして、後周壁部が回転刃の外端部の回転軌跡に沿う波板状に形成されるので、回転刃により切断作用を受ける草が径方向外方に逃げて切断できなくなることを回避して良好に刈ることができる。
【0012】
本発明においては、走行機体と、請求項1又は2に記載のモーアと、が備えられた作業機であって、前記走行機体に、走行装置と、前記走行装置を駆動する走行用電動モータと、前記回転刃を回転駆動する作業用電動モータと、が備えられていると好適である。
【0013】
本構成によれば、走行装置が走行用電動モータにて駆動されるので、例えば、エンジンで駆動する場合に比べて、機体の走行に伴って大きな騒音が発生することを回避できる。又、回転刃が作業用電動モータにて駆動されるので、回転刃を高速で回転駆動する際に大きな駆動騒音が発生することを回避できる。
【0014】
その結果、モーアにおいて、草を刈るために高速で回転する回転刃から大きな騒音が発生しないことに加えて、機体の走行駆動並びに回転刃の回転駆動において大きな駆動騒音も生じないので、全体として大きな騒音の発生を抑制可能な作業機を提供できるに至った。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】作業機の全体側面図である。
図2】モーアの横断平面図である。
図3】モーアの平面図である。
図4】別実施形態のモーアの平面図である。
図5】別実施形態のモーアの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」とし、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0017】
図1に本発明に係るモーアが装備された作業機を示している。
作業機は、前部に支持された左右一対の前輪11、及び、後部に支持された走行装置2としての左右一対の後輪12を備えた走行機体1を備えている。そして、走行機体1の下部で前輪11及び後輪12の間にモーアMが装備されている。モーアMは、四連リンク構造のリンク機構3を介して車体に吊り下げ支持された構造となっている。
【0018】
左右の後輪12の間にはバッテリ6を収納するバッテリ収納部4が設けられている。さらに、走行機体1には、運転座席13及びロプスフレーム14等が設けられている。
【0019】
この作業機は、電動駆動式の草刈り用作業機である。
前輪11は、キャスタータイプ車輪であり、後輪12は駆動輪である。それぞれの後輪12の内側に、左右一対の走行用電動モータ(以下、走行モータという)15が配置されている。走行モータ15の動力は減速機構16を介して後輪12に伝達される。各後輪12は独立的に駆動される。
【0020】
運転座席13の両側にそれぞれ左右の変速レバー17が配置されている。左右の走行モータ15は、左右の変速レバー17の操作に基づいて図示しない制御装置によって駆動制御される。すなわち、右の変速レバー17を中立位置に操作すると右の走行モータ15が停止状態となる。右の変速レバー17を前進側に操作すると、右の走行モータ15が前進側に回転し、右の変速レバー17を後進側に操作すると、右の走行モータ15が後進側に回転する。同様に、左の変速レバー17を中立位置、前進側及び後進側に操作すると、左の走行モータ15が前述した右の走行モータ15と同様な動作を行う。つまり右及び左の変速レバー17を操作することにより、右及び左の後輪12が互いに独立に前進側または後進側に駆動し、走行機体1は前進または後進、右旋回または左旋回する。左右の変速レバーの操作状態は図示しないポテンショメータによって検出され、制御装置に入力される。
【0021】
図2及び図3に示すように、モーアMは下向きに開放されたモーアデッキ20の内部に、縦軸心周りに回転駆動される3つの回転刃21A,21B,21Cが、中央の回転刃21Bが少し前方に偏位するよう平面視で三角配置されて軸支された構造となっている。これにより走行機体1が直進移動した際に、隣接する回転刃21A,21B,21Cの先端回動軌跡の左右端が前後に重複して、刈残しの無い状態で良好な草刈が行えるようになっている。
【0022】
モーアデッキ20は、上方を覆う天板部22と、天板部22の周縁部に沿って垂下する状態で設けられた周壁部23と、を有している。モーアデッキ20は、天板高さが全体的に同高さに設定されたフラットデッキに構成されるとともに、モーアデッキ20の右端部には排出口24が形成されている。
【0023】
モーアデッキ20の周壁部23のうちの後側に位置する後周壁部23aは、各回転刃21A,21B,21Cにおける先端回動軌跡に沿うように波板状に形成されている。各回転刃21A,21B,21Cが互いに連通した左右に長い一連の切断空間がモーアデッキ20に形成されている。
【0024】
回転刃21A,21B,21Cは、作業用電動モータ25(以下、作業モータという)によって回転駆動される。作業モータ25は、モーアMの前方側に位置しており、モーアデッキ20により支持されている。
【0025】
図3に示すように、作業モータ25の動力がモーアデッキ20の上部に配備された伝動ベルト29を介して各回転刃21A,21B,21Cに伝達される。すなわち、作業モータ25に備えられた出力プーリ25A、及び、各回転刃21A,21B,21Cに備えられたプーリ27A,27B,27Cのそれぞれに亘って伝動ベルト29が巻回され、各回転刃21A,21B,21Cは同じ方向(上面視で時計回り方向)に等速で回転駆動されるようになっている。
【0026】
図2に示すように、上記各回転刃21A,21B,21Cは、紐状の樹脂材にて構成されている。具体的には、ナイロン材からなる紐状部材Hを備えて構成されている。回転刃21A,21B,21Cの径方向内方側には、紐状部材Hを巻き付ける状態で保持する略円筒状のドラム部材30が備えられ、そのドラム部材30から径方向外方に向けて片持ち状に紐状部材Hが延びる構成となっている。紐状部材Hは、周方向に略180度の間隔をあけて離間する状態で2本備えられている。
【0027】
周知の構成であるから図示はしないが、ドラム部材30の内部には紐状部材Hが巻回された状態で収納されている。ドラム部材30の内部には、紐状部材Hを所定量ずつ繰出し可能な繰り出し機構(図示せず)が備えられている。繰り出し機構は、草刈り作業が行われるのに伴って紐状部材Hが摩耗した場合には、繰り出し機構が径方向外方側に向けて紐状部材Hを自動的に繰り出すことができるように構成されている。
【0028】
回転刃21A,21B,21Cは、高速で回転駆動されることにより、紐状部材Hが植立している草に対して切断作用を発揮して草を良好に刈ることができる。刈られたあとの草屑は回転刃21A,21B,21Cの回転力によって排出口24に向けて移送してモーアデッキの外方に排出させることができる。
【0029】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、作業モータ25が1台だけ備えられ、1台の作業モータ25により3つの回転刃21A,21B,21Cを駆動する構成としたが、この構成に代えて、図4に示すように、作業モータ25として3つのモータ25a,25b,25cを備えて、各モータ25a,25b,25cのそれぞれにより3つの回転刃21A,21B,21Cを各別に駆動する構成としてもよい。図4に示すものでは、3つのモータ25a,25b,25cをモーアデッキ20の天板部22の上側に設置するようにしているが、モーアデッキ20の天板部22の下側に設置するようにしてもよい。
【0030】
(2)上記実施形態では、作業モータ25の縦軸芯周りでの動力が伝動ベルト29を介して各回転刃21A,21B,21Cに動力が伝達される構成としたが、この構成に代えて、例えば、図5に示すように、作業モータ25の動力が前後向きの伝動軸32を介してモーアデッキ20の中央上面に配備されたベベルギヤケース33に伝達され、ベベルギヤケース33で縦軸芯周りの回転に変換された回転動力が中央の回転刃21Bの回転軸34に伝達され、さらに、伝動ベルト35によって左右の回転刃21A,21Cにも伝達される構成としてもよい。
【0031】
(3)上記実施形態では、3つの回転刃21A,21B,21Cを備える構成としたが、回転刃の個数は3個に限定されるものではなく、1個、2個、あるいは、4個以上備えるようにしてもよい。その場合、作業モータ25は1台でもよく、複数のモータを備えるものでもよい。
【0032】
(4)上記実施形態では、1つの回転刃に2本の紐状部材Hが備えられる構成としたが、紐状部材Hを1本だけ備えるものでもよく、3本以上備えるものでもよい。又、紐状部材Hとしては、ナイロン材に限らず、他の種類の樹脂材料であってもよい。
【0033】
(5)上記実施形態では、走行装置2を駆動する走行用電動モータ15と、回転刃21A,21B,21Cを駆動する作業用電動モータ25を備える構成としたが、この構成に代えて、1つの電動モータを備えて、その電動モータにより走行装置2と回転刃21A,21B,21Cとを共に駆動する構成としてもよい。又、電動モータに限らず、エンジンで駆動するものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、モーア及びモーアを備えた作業機に適用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 走行機体
2 走行装置
15 走行用電動モータ
20 モーアデッキ
21A,21B,21C 回転刃
22 天板部
23 周壁部
23a 後周壁部
25 作業用電動モータ
図1
図2
図3
図4
図5