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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090849
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】蓄熱体構造
(51)【国際特許分類】
   F28F 23/02 20060101AFI20240627BHJP
   F28D 20/02 20060101ALI20240627BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20240627BHJP
   F23L 15/02 20060101ALI20240627BHJP
   F23D 14/66 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F28F23/02 C
F28D20/02 E
F28D20/00 G
F23L15/02
F23D14/66 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207005
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】清木 晋
【テーマコード(参考)】
3K017
3K023
【Fターム(参考)】
3K017DC03
3K023QA18
3K023QC06
3K023SA00
(57)【要約】
【課題】高温側でも低温側でも効率的に熱を蓄熱することができる蓄熱体構造を提供する。
【解決手段】蓄熱体構造2は、流体の流れ方向に配置される高温側の蓄熱体3と低温側の蓄熱体4を備える。高温側の蓄熱体3は、流体の流路となる開口セルを有すると共に蓄熱材が充填された目封止セルを有する目封止ハニカム体11、多数の球状蓄熱体、又は流体の流路となる開口セルを有して目封止セルを有さない通常ハニカム体の少なくとも一つを備える。低温側の蓄熱体4は、流体の流路となる開口セルを有すると共に潜熱蓄熱材若しくは化学蓄熱材の少なくとも一方が充填された目封止セルを有する目封止ハニカム体12を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れ方向に配置される高温側の蓄熱体と低温側の蓄熱体を備え、
前記高温側の蓄熱体は、流体の流路となる開口セルを有すると共に蓄熱材が充填された目封止セルを有する目封止ハニカム体、多数の球状蓄熱体、又は流体の流路となる開口セルを有して目封止セルを有さない通常ハニカム体の少なくとも一つを備え、
前記低温側の蓄熱体は、流体の流路となる開口セルを有すると共に潜熱蓄熱材若しくは化学蓄熱材の少なくとも一方が充填された目封止セルを有する目封止ハニカム体を備える蓄熱体構造。
【請求項2】
前記高温側の蓄熱体が、前記目封止セルに顕熱蓄熱材が充填された前記目封止ハニカム体、前記多数の球状蓄熱体、又は前記通常ハニカム体の少なくとも一つを備えることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱体構造。
【請求項3】
前記高温側の蓄熱体と前記低温側の蓄熱体が互いに接することを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄熱体構造。
【請求項4】
前記高温側の蓄熱体が、前記目封止ハニカム体を備え、
高温側の前記目封止ハニカム体の目封止セルの位置と低温側の前記目封止ハニカム体の目封止セルの位置を揃えることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄熱体構造。
【請求項5】
高温側の前記目封止ハニカム体又は前記通常ハニカム体のハニカム壁には、ガラス及び酸化物セラミックスの少なくとも一方を含む被膜が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄熱体構造。
【請求項6】
低温側の前記目封止ハニカム体のハニカム壁には、ガラス及び酸化物セラミックスの少なくとも一方を含む被膜が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄熱体構造。
【請求項7】
前記蓄熱体構造には、燃焼排ガスと燃焼用空気が流れ方向を変えて交互に流入することを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄熱体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼排ガス等の流体の熱を効率的に蓄熱する蓄熱体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リジェネバーナシステムにおいては、各々が蓄熱槽を備える一対のバーナを交互に切り替えて燃焼させ、燃焼排ガスの熱を燃焼用空気の予熱として回収している。すなわち、一方のバーナが燃焼している間、他方のバーナは燃焼排ガスの出口の役割を果たし、燃焼排ガスが他方のバーナに連結した蓄熱槽を通過する。その際に燃焼排ガスと蓄熱槽内部の蓄熱体との間で熱交換が行われ、蓄熱体が燃焼排ガスの熱を蓄熱する。所定のサイクル時間が経過すると、バーナの役割が切り替わり、他方のバーナに供給された燃焼用空気が蓄熱槽を通過する。その際に燃焼用空気と高温の蓄熱体との間で熱交換が行われ、燃焼用空気が予熱される。このリジェネバーナシステムを使用することで、燃焼用空気を加熱することが可能となり、大きな省エネルギ効果を発揮することができる。
【0003】
リジェネバーナシステムの蓄熱槽における蓄熱体構造として、特許文献1には、蓄熱槽に多数の球状蓄熱体を収容したものが開示されている。燃焼排ガスが蓄熱槽を通過すると、燃焼排ガスと多数の球状蓄熱体との間で熱交換が行われ、多数の球状蓄熱体が燃焼排ガスの熱を蓄熱する。また、特許文献1には、多数の球状蓄熱体を使用する替わりにハニカム体を使用してもよいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-10801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、燃焼排ガスが蓄熱槽を通過する際、燃焼排ガスは高温から低温に温度が変化する。高温側では、燃焼排ガスと蓄熱体との温度差が大きいので、蓄熱体が燃焼排ガスの熱を効率的に蓄熱する。一方、低温側では、燃焼排ガスと蓄熱体との温度差が小さいので、蓄熱体が燃焼排ガスの熱を高温側ほど効率的に蓄熱できない。
【0006】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたもので、高温側でも低温側でも効率的に熱を蓄熱することができる蓄熱体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、流体の流れ方向に配置される高温側の蓄熱体と低温側の蓄熱体を備え、前記高温側の蓄熱体は、流体の流路となる開口セルを有すると共に蓄熱材が充填された目封止セルを有する目封止ハニカム体、多数の球状蓄熱体、又は流体の流路となる開口セルを有して目封止セルを有さない通常ハニカム体の少なくとも一つを備え、前記低温側の蓄熱体は、流体の流路となる開口セルを有すると共に潜熱蓄熱材若しくは化学蓄熱材の少なくとも一方が充填された目封止セルを有する目封止ハニカム体を備える蓄熱体構造である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、蓄熱体を高温側の蓄熱体と低温側の蓄熱体とに分け、低温側の蓄熱体に潜熱蓄熱材若しくは化学蓄熱材の少なくとも一方が目封じされた目封止ハニカム体を使用するので、温度差が小さい低温側でも効率的に熱を蓄熱することができる。また、低温側では、流体が低温になり体積が小さくなっているので、低温側の蓄熱体に目封止ハニカム体を使用しても、圧力損失が増大するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態の蓄熱体構造が適用されるリジェネバーナシステムの蓄熱槽の縦断面図である。
図2】高温側の蓄熱体の目封止ハニカム体の縦断面図(図1のII部拡大図)である。
図3】低温側の蓄熱体の目封止ハニカム体の縦断面図(図1のIII部拡大図)である。
図4】本発明の第2実施形態の蓄熱体構造が適用されるリジェネバーナシステムの蓄熱槽の縦断面図である。
図5】本発明の第3実施形態の蓄熱体構造における高温側の蓄熱体の通常ハニカム体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態の蓄熱体構造を説明する。ただし、本発明の蓄熱体構造は、種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
(第1実施形態)
【0011】
図1は、本発明の第1実施形態の蓄熱体構造が適用されるリジェネバーナシステムの蓄熱槽の縦断面図である。蓄熱槽1は、リジェネバーナシステムの一対のバーナ(一方のバーナと他方のバーナ)それぞれに設けられる。図1には、他方のバーナに設けられた蓄熱槽1のみを示す。一方のバーナが燃焼している間、他方のバーナは燃焼排ガスの出口の役割を果たす。燃焼排ガスは接続部5から蓄熱槽1内に流入し、蓄熱槽1内の蓄熱体構造2を上から下に流れた後、チャンバ6を経由し、接続管7から排出される。その際に燃焼排ガスと蓄熱槽1内部の蓄熱体構造2との間で熱交換が行われ、蓄熱体構造2が燃焼排ガスの熱を蓄熱する。所定のサイクル時間が経過すると、バーナの役割が切り替わり、他方のバーナに供給された燃焼用空気が接続管7から蓄熱槽1内に流入し、蓄熱体構造2を下から上に流れた後、接続部5からバーナに供給される。その際に燃焼用空気と高温の蓄熱体構造2との間で熱交換が行われ、燃焼用空気が予熱される。
【0012】
本実施形態の蓄熱体構造2は、燃焼排ガスの流れ方向に配置される高温側の蓄熱体3と低温側の蓄熱体4を備える。高温側の蓄熱体3と低温側の蓄熱体4は互いに接する。高温側の蓄熱体3と低温側の蓄熱体4は、蓄熱槽1に固定したグレーチング8に支持される。グレーチング8には、流体を通過させる多数の穴が形成される。
【0013】
本実施形態の蓄熱体構造2では、上から3段を高温側の蓄熱体3とし、残りの2段を低温側の蓄熱体4にしているが、上から1~4段を高温側の蓄熱体3とし、残りの4~1段を低温側の蓄熱体4にしてもよい。また、2段構成にし、上段を高温側の蓄熱体3とし、下段を低温側の蓄熱体4にしてもよい。
【0014】
図2は、高温側の蓄熱体3の目封止ハニカム体11の縦断面図である。高温側の蓄熱体3は、流体の流路となる開口セル11bを有すると共に蓄熱材13が充填された目封止セル11cを有する目封止ハニカム体11を備える。目封止ハニカム体11の外形は、例えば直方体状等である。目封止ハニカム体11は、ハニカム構造であり、セルを区画する格子状の隔壁(ハニカム壁)を有する本体11aを有する。本体11aには、複数の開口セル11bと複数の目封止セル11cが形成される。複数の開口セル11bと複数の目封止セル11cは、例えば市松模様状に交互に並べられる。複数の開口セル11bと複数の目封止セル11cは、不規則に配置されてもよい。複数の開口セル11bは、目封止ハニカム体11を流体の流れ方向に貫通する。開口セル11bと目封止セル11cの断面形状は、蓄熱量と伝熱面積を勘案して最適なものが選択され、例えば四角形、八角形、その他の多角形、円形、楕円形等である。開口セル11bと目封止セル11cの断面形状は同一でもよいし、異なっていてもよい。開口セル11bと目封止セル11cの断面積は同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0015】
目封止ハニカム体11の幅は、例えば30mm角~200mm角である。耐衝撃性を高くするためには100mm角以下がよく、蓄熱槽1へ設置する手間を考えると35mm角以上がよい。目封止ハニカム体11の高さは、例えば25mm~200mmであり、50mm~100mmが望ましい。高さが低すぎると、蓄熱材13の蓄熱量が小さくなる。高さが高すぎると、目封止セル11cに蓄熱材13を充填しにくくなる。
【0016】
目封止ハニカム体11の本体11aの材質には、セラミックスを用いるのが望ましく、例えばSiC、Si-SiC(SiC粒子に金属シリコンを含浸させたもの)、アルミナ、又はコージェライト等を用いるのが望ましい。特にSiC、Si-SiCは、熱伝導率が高く、熱膨張率が低く、強度が高いので、本体11aの材質として好適である。
【0017】
目封止ハニカム体11の本体11aは、例えば以下の製法によって製造される。まず、SiC、Si-SiC、アルミナ、又はコージェライト等のセラミックスの粉末、水、有機バインダ等を混ぜ、混錬して坏土を作製する。坏土を成形型に充填し、又は坏土を押出成形してハニカム成形体を作製する。得られたハニカム成形体を不活性ガス雰囲気中又は酸化雰囲気中で焼成することで、本体を製造することができる。
【0018】
本体11aの開口セル11bのハニカム壁には、被膜14を形成するのが望ましい。被膜14は、ガラス及び酸化物セラミックスの少なくとも一方を含む。ガラスは、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、リン酸ガラス等である。酸化物セラミックスは、ムライト、アルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア等である。
【0019】
ガラス及び酸化物セラミックスの少なくとも一方を含む被膜14は、例えば以下の製法によって形成される。加熱によりガラスとなる材料にナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属成分、アルカリ土類金属成分等を含有させることによりガラス質充填剤とする。また、ゾル状又はゲル状の酸化物セラミックスの粉末にバインダ等の添加剤、水や有機溶媒等の液体を添加してセラミックス質充填剤とする。そして、ガラス質充填剤及びセラミックス質充填剤の少なくとも一方を本体11aのハニカム壁に塗布若しくはスプレーし、又は本体11aの開気孔を脱気し、本体11aにこれらの充填剤を含浸させる。その後、本体11aを熱処理することで、本体11aのハニカム壁にガラス及び酸化物セラミックスの少なくとも一方を含む被膜14を形成することができる。
【0020】
目封止セル11cには、蓄熱材13として顕熱蓄熱材が充填される。顕熱蓄熱材の材質は、特に限定されるものではなく、例えばSiC、Si-SiC(SiC粒子に金属シリコンを含浸させたもの)、アルミナ、又はコージェライト等のセラミックスの粒、又は目封じ剤として使用されているセラミックスのスラリーを使用することができる。目封止セル11cにセラミックスの粒又はセラミックスのスラリーを充填した後、目封止セル11cは、閉塞体15によって閉塞される。目封止セル11cを目封じする方法は特に限定されるものではなく、例えば目封じ剤としてのSiCスラリーに本体11aの端面を浸漬し、目封じしようとするセル11c内にSiCスラリーを充填し、これを乾燥し、焼成する方法を挙げることができる。なお、顕熱蓄熱材に潜熱蓄熱材及び/又は化学蓄熱材を混合してもよい。
【0021】
図3は、低温側の蓄熱体4の目封止ハニカム体12の縦断面図である。低温側の蓄熱体4は、流体の流路となる開口セル12bを有すると共に潜熱蓄熱材若しくは化学蓄熱材の少なくとも一方が充填された目封止セル12cを有する目封止ハニカム体12を備える。目封止ハニカム体12の外形は、例えば直方体状等である。目封止ハニカム体12は、ハニカム構造であり、セルを区画する格子状の隔壁(ハニカム壁)を有する本体12aを有する。本体12aには、複数の開口セル12bと複数の目封止セル12cが形成される。複数の開口セル12bと複数の目封止セル12cは、例えば市松模様状に交互に並べられる。複数の開口セル12bと複数の目封止セル12cは、不規則に配置されてもよい。本体12a、開口セル12b、目封止セル12c、被膜14の構成は、高温側の蓄熱体3の目封止ハニカム体11と同一である。
【0022】
高温側の目封止ハニカム体11の目封止セル11cの位置と低温側の目封止ハニカム体12の目封止セル12cの位置は揃えられる。すなわち、高温側の目封止ハニカム体11の開口セル11bと低温側の目封止ハニカム体12の開口セル12bが繋がり、高温側の目封止ハニカム体11の目封止セル11cと低温側の目封止ハニカム体12の目封止セル12cが繋がる。
【0023】
目封止セル12cには、蓄熱材16として潜熱蓄熱材が充填される。潜熱蓄熱材は、固相から液相へ又はその逆の相変化を起こす際に必要とする潜熱を利用した蓄熱材である。潜熱蓄熱材の材質は、特に限定されるものではなく、例えば金属材料(銅、アルミニウム、ニッケル、鉄等)、塩化物、フッ化物、炭酸塩、硝酸塩、塩化物塩、アルカリ金属炭酸塩等が挙げられる。これらの2種以上を混合してもよい。多数の球状の潜熱蓄熱材を目封止セル12cに充填してもよいし、目封止セル12cの形状に合わせて成形した潜熱蓄熱材を目封止セル12cに充填してもよい。なお、潜熱蓄熱材に顕熱蓄熱材を混合してもよい。
【0024】
目封じセル12cには、潜熱蓄熱材の替わりに化学蓄熱材を充填してもよい。化学蓄熱材は、物質の可逆的な化学反応を利用した蓄熱材である。化学蓄熱材の材質は、特に限定されるものではなく、例えば金属酸化物、金属塩、金属複合酸化物、金属塩添加金属酸化物、ハロゲン化物等が挙げられる。多数の球状の化学蓄熱材を目封止セル12cに充填してもよいし、目封止セル12cの形状に合わせて成形した化学蓄熱材を目封止セル12cに充填してもよい。なお、化学蓄熱材と潜熱蓄熱材を混合してもよい。
【0025】
目封止セル12cは、閉塞体17によって閉塞される。閉塞体17の材質は特に限定されるものではなく、本体12aと同様にセラミックスであるのが望ましい。目封止セル12cを目封じする方法は上述のとおりである。
本実施形態の蓄熱体構造2の作用を説明する。
【0026】
本実施形態の蓄熱体構造2に上方から下方に向かって燃焼排ガスを流すと、燃焼排ガスは、高温側の蓄熱体3の目封止ハニカム体11の開口セル11bを上方から下方に向かって流れる。その際燃焼排ガスは目封止ハニカム体11と熱交換し、目封止ハニカム体11の本体11aと目封止セル11c内の顕熱蓄熱材が蓄熱し、燃焼排ガスが温度を下げる。
【0027】
その後、燃焼排ガスは低温側の蓄熱体4の目封止ハニカム体12の開口セル12bを上方から下方に向かって流れる。その際燃焼排ガスは目封止ハニカム体12と熱交換し、目封止ハニカム体12の本体12aが蓄熱し、目封止セル12c内の潜熱蓄熱材が固相から液相に変態し、熱エネルギを潜熱として蓄積する。
【0028】
所定のサイクル時間が経過すると、燃焼用空気が低温側の蓄熱体4の目封止ハニカム体12の開口セル12bを下方から上方に向かって流れる。その際燃焼用空気は目封止ハニカム体12と熱交換し、本体12aと潜熱蓄熱材に蓄熱された熱が燃焼用空気に伝わり、燃焼用空気が加熱される。これに伴い、放熱した潜熱蓄熱材は、液相から固相へと相変態を起こす。
【0029】
その後、加熱された燃焼用空気は、高温側の蓄熱体3の目封止ハニカム体11の開口セル11bを下方から上方に向かって流れる。その際燃焼用空気は目封止ハニカム体11と熱交換し、さらに加熱される。
本実施形態の蓄熱体構造の効果を説明する。
【0030】
蓄熱体3,4を高温側の蓄熱体3と低温側の蓄熱体4とに分け、低温側の蓄熱体4に潜熱蓄熱材若しくは化学蓄熱材の少なくとも一方が目封じされた目封止ハニカム体12を使用するので、温度差が小さい低温側でも効率的に熱を蓄熱することができる。また、低温側では、燃焼排ガスが低温になり体積が小さくなっているので、低温側の蓄熱体4に目封止ハニカム体12を使用しても、圧力損失が増大するのを抑制できる。
【0031】
高温側の蓄熱体3が目封止セル11cに顕熱蓄熱材が充填された目封止ハニカム体11を備えるので、高温側の蓄熱体3で効率的に蓄熱することができる。潜熱蓄熱材や化学蓄熱材は例えば1000℃以上の高温では使用しにくく、蓄放熱速度が遅い。目封止セル11cに顕熱蓄熱材を充填するので、サイクル時間が短くても効率的に熱を蓄熱することができる。
【0032】
高温側の蓄熱体3の目封止ハニカム体11の目封止セル11cの位置と低温側の蓄熱体4の目封止ハニカム体12の目封止セル12cの位置を揃えるので、燃焼排ガスや燃焼用空気が蛇行して、圧力損失が増大するのを抑制できる。
【0033】
高温側の蓄熱体3と低温側の蓄熱体4が互いに接するので、高温側の蓄熱体3から低温側の蓄熱体4に効率的に熱伝導することができ、より効率的に蓄熱することができる。
【0034】
高温側の蓄熱体3の目封止ハニカム体11のハニカム壁にガラス及び酸化物セラミックスの少なくとも一方を含む被膜14を形成するので、多孔質のハニカム壁が酸化するのを防止できる。
【0035】
低温側の蓄熱体3の目封止ハニカム体12のハニカム壁にガラス及び酸化物セラミックスの少なくとも一方を含む被膜14を形成するので、液体の潜熱蓄熱材が多孔質のハニカム壁を通して外へ漏れ出るのを防止することができる。
(第2実施形態)
【0036】
図4は、本発明の第2実施形態の蓄熱体構造21を示す。本実施形態の蓄熱体構造21も、燃焼排ガスの流れ方向に配置される高温側の蓄熱体22と低温側の蓄熱体4を備える。低温側の蓄熱体4の目封止ハニカム体12の構成は、第1実施形態の蓄熱体構造2の低温側の蓄熱体4の目封止ハニカム体12(図3参照)と同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0037】
第2実施形態の蓄熱体構造21では、高温側の蓄熱体22は、多数の球状蓄熱体23を備える。球状蓄熱体23は、例えば潜熱蓄熱材である。球状蓄熱体23の材質には、セラミックス、特に非酸化物セラミックスを用いるのが望ましい。非酸化物セラミックスには、炭化ケイ素等の炭化物セラミックス、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウム等の窒化物セラミックスを挙げることができる。炭化ケイ素、窒化ケイ素は、高温における機械強度が高いため、高温下で使用される蓄熱体として適している。炭化ホウ素、窒化ホウ素は硬度が非常に高いため、設置スペースに投入される蓄熱体として適している。その他の非酸化物セラミックスも硬度が高いため、同様である。
【0038】
球状蓄熱体23は、例えば以下の製法によって製造される。まず、セラミックスの粉末、水、有機バインダ等を混ぜ、混錬して坏土を作製する。坏土を円柱状に成形した後、球状化する。なお、坏土を転動造粒法により球状化してもよい。その後、球状化した成形体を不活性ガス雰囲気中で焼成することで、球状蓄熱体23を製造することができる。球状蓄熱体23の表面には、ガラス及び酸化物セラミックスの少なくとも一方を含む被膜を形成してもよい。
【0039】
第2実施形態の蓄熱体構造21によれば、第1実施形態の蓄熱体構造2と同様な効果を奏する他、以下の効果を奏する。
【0040】
高温側の蓄熱体22が多数の球状蓄熱体23を備えるので、目封じハニカム体11の場合より高温側の蓄熱体22の熱容量を増やすことができ、高温側の蓄熱体22の蓄熱量を増やすことができる。また、ヒートショックでの割れが少ないので、メンテナンス期間(次の保守点検までの期間)を長くすることができ、保守点検が容易である。
(第3実施形態)
【0041】
図5は、本発明の第3実施形態の蓄熱体構造における高温側の蓄熱体3の通常ハニカム体31の縦断面図を示す。第3実施形態の蓄熱体構造は、第1実施形態の蓄熱体構造2(図1参照)と同様に、燃焼排ガスの流れ方向に配置される高温側の蓄熱体3と低温側の蓄熱体4を備える。ただし、高温側の蓄熱体3と低温側の蓄熱体4との間には、流路方向に隙間が空けられる。
【0042】
第1実施形態の蓄熱体構造2における高温側の蓄熱体3は、目封止ハニカム体11を備えるのに対し、第3実施形態の蓄熱体構造における高温側の蓄熱体3は、通常ハニカム体31を備える。通常ハニカム体31は、セルを区画する格子状の隔壁(ハニカム壁)を有する本体31aを有する。本体31aには、複数の開口セル31bが形成されるが目封止セルは形成されない。本体31a、被膜14の構成は、第1実施形態の蓄熱体構造2における高温側の蓄熱体3の目封止ハニカム体11と同一である。
【0043】
低温側の蓄熱体の目封止ハニカム体の構成は、第1実施形態の蓄熱体構造2の低温側の目封止ハニカム体12(図3参照)と同一である。
【0044】
第3実施形態の蓄熱体構造によれば、高温側の蓄熱体3が開口セル31bを有して目封止セルを有さない通常ハニカム体31を備えるので、高温側の蓄熱体3で圧力損失が増大するのを抑制できる。また、高温側の蓄熱体3に熱伝導率が高くて比表面積が大きい通常ハニカム体31を使用するので、サイクル時間が短くても効率的に熱を蓄熱することができる。
【0045】
なお、高温側の蓄熱体3と低温側の蓄熱体4との間に流路方向に隙間があるので、高温側の蓄熱体3に目封止ハニカム体を使用し、高温側の蓄熱体3の目封止ハニカム体の目封止セルの位置と低温側の蓄熱体4の目封止ハニカム体の目封止セルの位置を異ならせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の蓄熱体構造を上記のように一対のバーナを交互に切り替えるツインリジェネバーナシステムに適用してもよいし、一つのバーナで燃焼排ガスと燃焼用空気の流れ方向を切り替えるセルフリジェネバーナシステムに適用してもよい。バーナによって加熱される炉は、直火式の加熱炉、均熱炉、坩堝炉等のいずれでもよい。また、本発明の蓄熱体構造をリジェネバーナシステムを使用した間接加熱方式のラジアントチューブに適用してもよい。さらに、本発明の蓄熱体構造を自動車の排ガスの熱を回収して排ガスを浄化する排気浄化装置や、自動車の排ガスの熱を回収してエンジン冷却水を加熱する自動車の空調システムに適用してもよい。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で他の実施形態に具現化できる。
【0048】
上記実施形態では、蓄熱体構造を垂直方向に流体が流れているが、蓄熱体構造を水平方向に流体が流れるようにしてもよい。
【0049】
上記実施形態では、高温側の蓄熱体と低温側の蓄熱体の外形が直方体状であるが、蓄熱槽の形状に合わせて円筒状、筒状等にすることができる。
【0050】
上記実施形態では、高温側の蓄熱体と低温側の蓄熱体が複数のハニカム体を備えているが、1つのハニカム体を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
2…蓄熱体構造
3…高温側の蓄熱体
4…低温側の蓄熱体
11…目封止ハニカム体
11b…開口セル
11c…目封止セル
12…目封止ハニカム体
12b…開口セル
12c…目封止セル
14…被膜
13…蓄熱材(顕熱蓄熱材)
16…蓄熱材(潜熱蓄熱材)
21…蓄熱体構造
22…高温側の蓄熱体
23…球状蓄熱体
31…通常ハニカム体
31b…開口セル
図1
図2
図3
図4
図5