(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090854
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】光モジュールの製造方法および調芯装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20240627BHJP
G02B 6/32 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G02B6/42
G02B6/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207013
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤村 康
(72)【発明者】
【氏名】光井 伸行
(72)【発明者】
【氏名】古川 将人
【テーマコード(参考)】
2H137
【Fターム(参考)】
2H137AB06
2H137BB02
2H137BB15
2H137BC02
2H137BC12
2H137BC51
2H137BC53
2H137CA06
2H137CB22
2H137CB32
2H137CC10
2H137DB09
2H137HA00
(57)【要約】
【課題】第2レンズおよび光ファイバの調芯を簡便に行う。
【解決手段】光モジュールの製造方法は、発光素子を搭載する筐体と、発光素子からの出射光を集光するレンズおよびレンズからの集光された光が入射する光ファイバを準備する工程と、レンズと光ファイバとの間に、第1ミラーを有するミラー部材を配置する工程と、第1ミラーにおいて反射された発光素子からの出射光を光点位置検出器に入射させる工程と、光点位置検出器からの検出信号に基づいて発光素子からの出射光の光軸の位置を算出する工程と、レンズを保持するレンズホルダを、算出された光軸の位置に基づいて筐体に固定する工程と、レンズによって集光された光が入射する光ファイバを保持する保持部を調芯して保持部をレンズホルダに固定する工程と、入射させる工程の後、固定する工程の前において、ミラー部材をレンズと光ファイバとの間から退避する工程と、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を搭載する筐体と、前記発光素子からの出射光を集光するレンズおよび前記レンズからの集光された光が入射する光ファイバを準備する工程と、
前記レンズと前記光ファイバとの間に、第1ミラーを有するミラー部材を配置する工程と、
前記第1ミラーにおいて反射された前記発光素子からの前記出射光を光点位置検出器に入射させる工程と、
前記光点位置検出器からの検出信号に基づいて前記発光素子からの前記出射光の光軸の位置を算出する工程と、
前記レンズを保持するレンズホルダを、前記算出された光軸の位置に基づいて前記筐体に固定する工程と、
前記レンズによって集光された光が入射する光ファイバを保持する保持部を調芯して前記保持部を前記レンズホルダに固定する工程と、
前記入射させる工程の後、前記固定する工程の前において、前記ミラー部材を前記レンズと前記光ファイバとの間から退避する工程と、
を含む、光モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記ミラー部材は、前記第1ミラーにおいて第1方向に反射された光のうち少なくとも一部を前記第1方向と異なる方向の第2方向に反射する第2ミラーを有し、
前記第2方向は前記筐体から離れる方向あるいは近づく方向である、請求項1に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記光軸の位置を算出する工程では、前記光点位置検出器を前記第2方向に移動させ、該方向に並ぶ第1位置および第2位置のそれぞれに対応する前記光点位置検出器からの前記検出信号である第1検出信号および第2検出信号に基づいて、前記光軸の位置を算出する、請求項2に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記光軸の位置を算出する工程では、前記ミラー部材を前記第2方向に移動させ、該方向に並ぶ第1位置および第2位置のそれぞれにおける前記ミラー部材からの前記光を前記光点位置検出器に入射させ、前記第1位置および前記第2位置にそれぞれ対応する前記検出信号である第1検出信号および第2検出信号に基づいて、前記光軸の位置を求める、請求項2に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記光点位置検出器はビームプロファイラである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記第1ミラーは全反射ミラーである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項7】
発光素子を搭載する筐体と、レンズホルダおよび光ファイバの光軸を調芯する調芯装置において、
前記レンズホルダと前記光ファイバとの間に配置された移動式のミラー部材と、
前記発光素子からの出射光が前記ミラー部材で反射された方向に配置された光点位置検出器と、を有する調芯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光モジュールの製造方法および調芯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、光軸調芯方法を開示する。その光軸調芯方法は、一点に集光する光を発生する第1の光学素子と、狭い入射面を有する第2の光学素子とを光学的に調芯する方法である。その光軸調芯方法では、まず、第2の光学素子と半導体位置検出器を光軸が平行で端面がほぼ同じ高さになるように支持台によって支持する。次に、第1の光学素子に位置検出器を対向させて、位置検出器の受光面に第1の光学素子の光を集光させる。第1の光学素子の集光点を位置検出器によって検知し、集光点と第2光学素子の位置の差を求める。第2光学素子と位置検出器を一体として第1光学素子に対して相対的に移動させて、第1光学素子の集光点に第2光学素子を対向させる。その後、第2の光学素子を第1の光学素子に対して光量が増大する方向に相対移動させることにより光学的に調芯する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体レーザといった発光素子を筐体内に内蔵してなる通信用の光モジュールが知られている。このような光モジュールでは、発光素子から出射される光をレンズを用いて集光し、その集光された光を光ファイバに入射させる。光を集光させる方式として、単一のレンズを用いる方式と、少なくとも2つのレンズを用いる方式とが存在する。少なくとも2つのレンズを用いる方式では、発光素子から出射される光を第1レンズを用いて平行化(コリメート)し、その平行化された光を第2レンズを用いて集光する。このような方式には、単一のレンズを用いる方式と比較して、発光素子と光ファイバとの光結合効率を高めることができるという利点がある。
【0005】
しかしながら、少なくとも2つのレンズを用いる方式では、発光素子に対し第1レンズを調芯固定した後、第1レンズが固定された筐体と第2レンズおよび光ファイバの三者間での相互の調芯、すなわち三体調心が必要となる。例えば、第2レンズを複数の位置に順に配置し、第2レンズの複数の位置それぞれにおいて光ファイバの調芯を行い、最も光結合効率が高い第2レンズおよび光ファイバの位置を求める方法が考えられるが、そのような方法は手間がかかる。したがって、第2レンズおよび光ファイバの調芯をより簡便に行うことができる方法が望まれる。
【0006】
本開示は、第2レンズおよび光ファイバの調芯をより簡便に行うことができる光モジュールの製造方法および調芯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る光モジュールの製造方法は、発光素子を搭載する筐体と、発光素子からの出射光を集光するレンズおよびレンズからの集光された光が入射する光ファイバを準備する工程と、レンズと光ファイバとの間に、第1ミラーを有するミラー部材を配置する工程と、第1ミラーにおいて反射された発光素子からの出射光を光点位置検出器に入射させる工程と、光点位置検出器からの検出信号に基づいて発光素子からの出射光の光軸の位置を算出する工程と、レンズを保持するレンズホルダを、算出された光軸の位置に基づいて筐体に固定する工程と、レンズによって集光された光が入射する光ファイバを保持する保持部を調芯して保持部をレンズホルダに固定する工程と、入射させる工程の後、固定する工程の前において、ミラー部材をレンズと光ファイバとの間から退避する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、第2レンズおよび光ファイバの調芯をより簡便に行うことができる光モジュールの製造方法および調芯装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る製造方法によって製造される光モジュールの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、光ファイバと、レンズホルダに保持された第2レンズ5との光結合の様子を示す断面図である。
【
図3】
図3は、光モジュールの製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、光モジュールの製造方法の一工程を示す図である。
【
図5】
図5は、光モジュールの製造方法の一工程を示す図である。
【
図6】
図6は、光モジュールの製造方法の一工程を示す図である。
【
図7】
図7は、光モジュールの製造方法の一工程を示す図である。
【
図8】
図8の(a)部は、第2レンズのX方向における最適位置からの変位(μm:理想的な第2レンズ位置からの位置ズレ量)と、発光素子と光ファイバとの間の光結合効率の変動量(dB)との関係を調べた結果を示すグラフである。
図8の(b)部は、第2レンズのY方向における最適位置からの変位(μm)と、発光素子と光ファイバとの間の光結合効率の変動量(dB)との関係を調べた結果を示すグラフである。
【
図9】
図9は、
図8の(b)部の一部を拡大して示すグラフである。
【
図10】
図10の(a)部は、ビームプロファイラに入射した光の実際の中心位置(横軸)と、ビームプロファイラから出力された検出信号に基づく光の中心位置(縦軸)との関係を4回調べた結果を示すグラフである。
図10の(b)部は、
図10の(a)部に示されたグラフから算出された誤差を示すグラフである。
【
図11】
図11は、光モジュールの製造方法の別の例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、光モジュールの製造方法の一工程を示す図である。
【
図13】
図13は、光モジュールの製造方法の一工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0011】
[1]本開示の一態様に係る光モジュールの製造方法は、発光素子を搭載する筐体と、発光素子からの出射光を集光するレンズおよびレンズからの集光された光が入射する光ファイバを準備する工程と、レンズと光ファイバとの間に、第1ミラーを有するミラー部材を配置する工程と、第1ミラーにおいて反射された発光素子からの出射光を光点位置検出器に入射させる工程と、光点位置検出器からの検出信号に基づいて発光素子からの出射光の光軸の位置を算出する工程と、レンズを保持するレンズホルダを、算出された光軸の位置に基づいて筐体に固定する工程と、レンズによって集光された光が入射する光ファイバを保持する保持部を調芯して保持部をレンズホルダに固定する工程と、入射させる工程の後、固定する工程の前において、ミラー部材をレンズと光ファイバとの間から退避する工程と、を含む。
【0012】
第1レンズと、第2レンズと、光ファイバとの間で三体調心を行う際、第1レンズから出射される光の光軸位置を計測し、その光軸位置を基準として、第2レンズを配置する位置を決定する方法が考えられる。このような方法によれば、第2レンズを複数の位置に順に配置する必要がなく、光ファイバの調芯が1回で済むので、第2レンズおよび光ファイバの調芯をより簡便に行うことができる。
【0013】
第1レンズから出射される光の光軸位置を計測する方法として、第1レンズから出射される光の光軸上に例えばビームプロファイラといった光点位置検出器を配置し、光点位置検出器からの検出信号に基づいて光軸位置を計測する方法が考えられる。しかしながら、光点位置検出器のサイズが大きいと、第1レンズから出射される平行光の光軸上に光点位置検出器を配置することが困難となることがある。そこで、上記の製造方法では、第1ミラーおよび第2ミラーを有するミラー部材を用いて、第1レンズから出射される平行光の少なくとも一部を光軸外に取り出す。このとき、平行光の少なくとも一部を、設計上の光軸に沿った方向(第2方向)に進行させ、光点位置検出器に入射させる。このような構成によって、光点位置検出器を平行光の光軸外に配置しつつ、光点位置検出器からの検出信号に基づいて平行光の実際の光軸の位置を算出することができる。したがって、上記の製造方法によれば、第2レンズおよび光ファイバの調芯をより簡便に行うことができる。
【0014】
[2]上記[1]の製造方法において、第2方向は筐体から離れる方向であってもよい。その場合であっても、光点位置検出器からの検出信号に基づいて平行光の実際の光軸の位置を算出することができ、第2レンズおよび光ファイバの調芯をより簡便に行うことができる。
【0015】
[3]上記[2]の製造方法の実際の光軸の位置を算出する工程では、光点位置検出器を設計上の光軸に沿った方向に移動させ、該方向に並ぶ第1位置および第2位置のそれぞれに対応する光点位置検出器からの検出信号である第1検出信号および第2検出信号に基づいて、実際の光軸の位置を算出してもよい。その場合、平行光の実際の光軸と設計上の光軸との成す角度、および設計上の光軸に対する実際の光軸の傾斜方向を考慮して、平行光の実際の光軸の位置をより精度良く求めることができる。したがって、発光素子と光ファイバとの光結合効率をより高めることができる。
【0016】
[4]上記[1]の製造方法において、第2方向は筐体に近づく方向であってもよい。その場合であっても、光点位置検出器からの検出信号に基づいて平行光の実際の光軸の位置を算出することができ、第2レンズおよび光ファイバの調芯をより簡便に行うことができる。
【0017】
[5]上記[4]の製造方法の実際の光軸の位置を算出する工程では、ミラー部材を設計上の光軸に沿った方向に移動させ、該方向に並ぶ第1位置および第2位置のそれぞれにおけるミラー部材からの平行光を光点位置検出器に入射させ、第1位置および第2位置にそれぞれ対応する検出信号である第1検出信号および第2検出信号に基づいて、実際の光軸の位置を求めるでもよい。その場合、平行光の実際の光軸と設計上の光軸との成す角度、および設計上の光軸に対する実際の光軸の傾斜方向を考慮して、平行光の実際の光軸の位置をより精度良く求めることができる。したがって、発光素子と光ファイバとの光結合効率をより高めることができる。
【0018】
[6]上記[1]から[5]の製造方法において、光点位置検出器はビームプロファイラであってもよい。その場合、平行光の実際の光軸の位置を精度良く求めることができる。
【0019】
[7]上記[1]から[6]の製造方法において、第1ミラーおよび第2ミラーは全反射ミラーであってもよい。その場合、第1レンズから出射される平行光のほぼ全部が光点位置検出器に入射するので、第1レンズから出射される平行光の一部が光点位置検出器に入射する場合と比較して、光点位置検出器に入射する平行光の光強度が大きくなる。したがって、光点位置検出器における光点位置の検出精度が向上し、平行光の実際の光軸の位置をより精度良く求めることができる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本実施形態に係る光モジュールの製造方法および調芯装置の具体例を、必要により図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本開示の一実施形態に係る製造方法によって製造される光モジュール1の構成を示す斜視図である。
図1には、理解の容易のためXYZ直交座標系が示されている。Y方向はX方向と交差(例えば直交)し、Z方向はX方向およびY方向の双方と交差(例えば直交)する。光モジュール1は、筐体2と、発光素子3と、第1レンズ4と、第2レンズ5と、レンズホルダ6(第2レンズ5を内包する)と、スリーブ7(保持部)と、を備える。筐体2は、略直方体といった外観を有し、Z方向に沿って延びている。
図1には筐体2がZ方向に長い場合を例示しているが、筐体2はX方向に長くてもよく、Y方向に長くてもよい。筐体2は、底板21と、壁部22と、蓋部(リッジ、不図示)とを有する。底板21、壁部22および蓋部は、例えば金属製である。底板21は、素子搭載面21aを有する。素子搭載面21aは、ZX平面に沿って延在している。壁部22は、素子搭載面21aを囲むように底板21の周縁部に設けられている。蓋部は、素子搭載面21aと対向して配置され、底板21とは反対側の壁部22の上端を塞ぐ。壁部22は、Z方向に並ぶ前端壁22aおよび後端壁22bと、X方向に並ぶ第1側壁22cおよび第2側壁22dとを含む。前端壁22aおよび後端壁22bはXY平面に沿って延在し、第1側壁22cおよび第2側壁22dはYZ平面に沿って延在している。
【0022】
筐体2は、フィードスルー23と、複数本のリードピン24とを更に有する。フィードスルー23は、第1側壁22cに設けられた開口22g(
図4を参照)を貫通して設けられ、例えばセラミックといった絶縁体の内部および表面に複数のパターン配線が形成されて成る。複数本のリードピン24は、X方向に沿って延在するとともにZ方向に並んで配置され、第1側壁22cの外側に設けられたフィードスルー23の複数のパターン配線にそれぞれ接合されている。
【0023】
発光素子3および第1レンズ4は、筐体2の内部、すなわち底板21、壁部22および蓋部に囲まれる空間内において、素子搭載面21a上に実装されている。発光素子3は、半導体レーザ素子であり、例えば端面発光型の波長可変レーザ素子である。発光素子3は、フィードスルー23の複数のパターン配線を介して、複数本のリードピン24と電気的に接続される。発光素子3への駆動信号は、光モジュール1の外部から複数本のリードピン24を介して発光素子3に供給される。発光素子3は、光出射端面3aから、Z方向に沿う光軸上に光L1を出力する。
【0024】
第1レンズ4は、光透過型のガラスレンズである。第1レンズ4は、発光素子3と光結合され、発光素子3から出射される光L1を平行光L2に変換する。ここで、平行光L2とは、光軸に垂直な面内におけるビームプロファイルの半値幅が光軸方向において厳密に一定である光に限られず、該半値幅が光軸方向において僅かに変化する光をも含む概念である。第1レンズ4と筐体2の前端壁22aとの間の平行光L2の光軸上には、例えば、アイソレータ、ビームスプリッタおよびビームシフタといった各種の光学部品が配置される。
【0025】
第2レンズ5は、光ファイバに向けて平行光L2を集光する光透過型のガラスレンズである。レンズホルダ6は、Z方向に沿った中心軸線を有する略円筒形状を呈しており、該円筒形状の内側に第2レンズ5を保持する。レンズホルダ6は、例えば金属製である。レンズホルダ6の第1端面6aは、筐体2の前端壁22aの外面に形成された突起部22eの端面22fに接合される。突起部22eは前端壁22aの開口22g(
図4を参照)の周囲に設けられており、レンズホルダ6の内側の孔は前端壁22aの開口22gと連通する。これにより、レンズホルダ6内の第2レンズ5が、筐体2内の第1レンズ4と光学的に結合される。
【0026】
スリーブ7は、Z方向に沿った中心軸線を有する略円筒形状を呈しており、例えば金属製である。スリーブ7の外周には、フランジ部71が設けられている。スリーブ7の内側の孔には、光ファイバの端部に取り付けられたフェルールが挿入される。スリーブ7の第1端面7aは、レンズホルダ6の第1端面6aとは反対側の第2端面6bに接合される。
図1は、スリーブ7がレンズホルダ6に接合される前の状態、すなわちスリーブ7がレンズホルダ6から離れた状態を示している。なお、スリーブ7に代えて、ピグテイルファイバの先端部(保持部)がレンズホルダ6の第2端面6bに接合されてもよい。
【0027】
図2は、光ファイバ8と、レンズホルダ6に保持された第2レンズ5との光結合の様子を示す断面図であって、第2レンズ5およびレンズホルダ6の、平行光L2の光軸を含む断面を示している。スリーブ7とレンズホルダ6との相対位置は、第2レンズ5の中心軸AX1が光ファイバ8の中心軸AX3と一致するように決定される。また、光ファイバ8の端面8aは、光ファイバ8の中心軸AX3に垂直な平面に対して僅かに(例えば6°)傾斜している。このため、第1レンズ4からの平行光L2の光軸中心AX2が、第2レンズ5の中心軸AX1に対して僅かにずれるように、レンズホルダ6と筐体2との相対位置が決定される。中心軸AX1に対する光軸中心AX2のずれの方向は、端面8aの法線ベクトルNVの中心軸AX1およびAX3に対する傾斜方向とは逆方向である。言い換えると、光軸中心AX2に対する中心軸AX1のずれの方向は、端面8aの法線ベクトルNVの中心軸AX1およびAX3に対する傾斜方向と一致する。このように、光軸中心AX2が中心軸AX1に対してずれを有することにより、光ファイバ8の端面8aに入射する際の平行光L2の光軸が、光ファイバ8の中心軸AX3に対して、法線ベクトルNVの傾斜方向とは逆方向に傾斜する。これにより、光ファイバ8への平行光L2の光入射効率を高めることができる。光軸中心AX2に対する中心軸AX1のずれ量δは、光ファイバ8の端面8aに入射する際の平行光L2の光軸に設定されるべき傾斜角に基づいて、光モジュール1の製造前に予め決定される。例えば、光ファイバ8の光軸に垂直な平面に対して端面8aが6°傾斜している場合、光軸中心AX2に対する中心軸AX1のずれ量δは、δ=f・tan2.8°(但し、fは第2レンズ5の焦点距離)として算出される。
【0028】
上記のように、第2レンズ5の中心軸AX1の位置は、光軸中心AX2の位置を基準とする所定位置に決定される。すなわち、筐体2に対するレンズホルダ6の位置は、筐体2から出射される平行光L2の光軸中心AX2の位置を基準とする所定位置に決定される。
【0029】
以上に説明した光モジュール1の製造方法について説明する。
図3は、光モジュール1の製造方法を示すフローチャートである。この製造方法では、工程ST1において、
図4に示されるように、発光素子3、第1レンズ4、およびその他の光学部品(例えば、アイソレータ、ビームスプリッタおよびビームシフタなど)を筐体2内に搭載する。次に、工程ST2において、
図5に示されるように、筐体2と、第2レンズ5を保持したレンズホルダ6(
図5では図示を省略)と、光ファイバ8とを調芯機Bにセットする。このとき、光ファイバ8をチャック機構CHによって保持し、光ファイバ8の端面8aを、筐体2の前端壁22aに形成された開口22gに対してZ方向(すなわち設計上の平行光L2の光軸中心AX2上)に配置する。
図5は、光ファイバ8がピグテイルファイバである場合を例示する。そして、工程ST3において、レンズホルダ6を筐体2の端面22fに沿って移動させる。その後、工程ST4において、レンズホルダ6を端面22fに押し付けることにより面合わせを行う。続いて、工程ST5において、カメラを用いて第2レンズ5を撮像し、第2レンズ5の画像から、第2レンズ5の中心位置を認識する。続いて、工程ST6において、別のカメラを用いて光ファイバ8の端面8aを撮像し、光ファイバ8の端面8aの画像から、光ファイバ8の中心位置および端面8aの傾斜方向を認識する。
【0030】
続いて、工程ST7Aにおいて、
図6に示されるように、ミラー部材10Aおよび光点位置検出器20を配置するとともに、発光素子3から光L1を出射させる。光L1は、第1レンズ4によって平行光L2に変換される。ミラー部材10Aは、光モジュール1の構成要素ではなく、光モジュール1の製造の際にのみ用いられる治具である。ミラー部材10Aは、第1ミラー11および第2ミラー12を有する。第1ミラー11は、第1レンズ4により変換された平行光L2のうち少なくとも一部を、平行光L2の設計上の光軸中心AX2と交差する方向D1(第1方向)に沿って反射する。方向D1は、例えばXY平面と平行な(すなわち、平行光L2の設計上の光軸中心AX2と垂直な)方向である。第2ミラー12は、第1ミラー11において反射された平行光L2のうち少なくとも一部を、平行光L2の設計上の光軸中心AX2に沿った方向D2(第2方向)に沿って反射する。本実施形態では、方向D2は、筐体2から離れる方向、すなわち筐体2からの平行光L2の出射方向である。そのため、本実施形態の第2ミラー12の法線ベクトルは、第1ミラー11の法線ベクトルと平行であり、且つ第1ミラー11の法線ベクトルに対して逆向きである。第1ミラー11および第2ミラー12は全反射ミラーであってもよい。或いは、第1ミラー11がビームスプリッタであり、第2ミラー12が全反射ミラーであってもよい。光点位置検出器20は、第2ミラー12に対して、平行光L2の設計上の光軸中心AX2に沿った方向すなわち方向D2に配置される。第2ミラー12において反射された平行光L2は、光点位置検出器20に入射する。
【0031】
光点位置検出器20は、入射光の光点位置(言い換えると、ビームプロファイルにおける光強度のピーク位置)を検出する。光点位置検出器20は、例えばビームプロファイラ、PSD(Position Sensing Device)、または光ファイバ調芯装置である。光ファイバ調芯装置は、第2ミラー12において反射された平行光L2に対して光ファイバの調芯を行い、光ファイバに入射する光量が最も大きいときの光ファイバの位置から光軸位置を検出するものである。
【0032】
工程ST8Aにおいて、第2ミラー12において反射された平行光L2を光点位置検出器20に入射させ、光点位置検出器20からの検出信号に基づいて、第2レンズ5が配置される光軸方向の位置における、平行光L2の光軸中心AX2の実際の位置を算出する。光軸中心AX2の実際の位置は、光点位置検出器20における平行光L2の入射中心の位置、および筐体2と光点位置検出器20との相対位置関係に基づいて、幾何学的に算出され得る。
【0033】
工程ST8Aでは、次のようにして平行光L2の光軸中心AX2の実際の位置を算出してもよい。
図7に示されるように、まず第1位置P1に光点位置検出器20を配置して、光点位置検出器20からの検出信号(第1検出信号)を取得し、その第1検出信号に基づいて、光点位置検出器20における平行光L2の入射中心の位置Paを知る。次に、光点位置検出器20を平行光L2の設計上の光軸中心AX2に沿った方向(すなわちZ方向)に移動させ、第1位置P1に対して該方向に並ぶ第2位置P2に光点位置検出器20を配置する。そして、光点位置検出器20からの検出信号(第2検出信号)を取得し、その第2検出信号に基づいて、光点位置検出器20における平行光L2の入射中心の位置Pbを知る。そして、位置Paと位置Pbとの距離、位置Paに対する位置Pbの変位方向、および光点位置検出器20の移動量Δzに基づいて、平行光L2の光軸中心AX2の実際の位置を算出する。この場合、平行光L2の設計上の光軸中心AX2と実際の光軸中心AX2との成す角度θ、および設計上の光軸中心AX2に対する実際の光軸中心AX2の傾斜方向を考慮して、光軸中心AX2の実際の位置を算出することができる。
【0034】
具体的には、実際の光軸中心AX2の角度θおよび傾斜方向は、例えば次のようにして算出される。第1位置P1と第2位置P2との間隔をΔz、光点位置検出器20が第1位置P1にあるときの位置Paの座標を(x1,y1)、光点位置検出器20が第2位置P2にあるときの位置Pbの座標を(x2,y2)とする。このとき、実際の光軸中心AX2のZ軸まわりの回転角φ(すなわち傾斜方向)は、φ=tan
-1(y2/x2)またはφ=tan
-1(y1/x1)、或いはこれらの平均値として算出可能である。また、実際の光軸中心AX2の角度θは、下記の数式(1)により算出可能である。
【数1】
【0035】
なお、上記の説明では、筐体2に近い第1位置P1に光点位置検出器20を配置したのちに、筐体2から遠い第2位置P2に光点位置検出器20を配置している。これに限られず、筐体2から遠い第2位置P2に光点位置検出器20を配置したのちに、筐体2に近い第1位置P1に光点位置検出器20を配置してもよい。
【0036】
続いて、ミラー部材10Aを光軸中心AX2外へ移動したのち、工程ST9において、レンズホルダ6を、実際の光軸中心AX2の位置を基準とする所定位置に移動する。言い換えると、第2レンズ5の中心軸AX1を、実際の光軸中心AX2の位置を基準とする所定位置(
図2を参照)に移動する。そして、工程ST10において、レンズホルダ6の第1端面6aを筐体2の端面22fに固定する。第1端面6aと端面22fとの固定方法は、例えばYAGレーザ溶接である。
【0037】
続いて、工程ST11において、光点位置検出器の情報を元に、光ファイバ8を移動させて光ファイバ8の光軸を光軸中心AX2に一致させる。そして、工程ST12において、光ファイバ8を少しずつ移動させながら、第2レンズ5からの集光された光の強度を光ファイバ8を通じて検出することにより、第2レンズ5と光ファイバ8の結合が最大になるように調芯を行う。最後に、工程ST13において、光ファイバ8を保持するスリーブ7の第1端面7a(またはピグテイルファイバの先端部)をレンズホルダ6の第2端面6bに固定する。第1端面7a(またはピグテイルファイバの先端部)と第2端面6bとの固定方法は、例えばYAGレーザ溶接である。また、ミラー部材10Aの退避は、工程ST8Aの後、工程ST10の前において、実施されれば良い。
【0038】
以上に説明した本実施形態による光モジュール1の製造方法によって得られる作用効果について説明する。光モジュール1では、第1レンズ4(発光素子に対し調心固定されている)、第2レンズ5、及び光ファイバ8の三者間での相互の調芯、すなわち三体調心が必要となる。例えば、第2レンズ5を複数の位置に順に配置し、第2レンズ5の複数の位置それぞれにおいて光ファイバ8の調芯を行い、最も光結合効率が高い第2レンズ5および光ファイバ8の位置を求める方法が考えられるが、そのような方法は手間がかかる。これに対し、本実施形態では、第1レンズ4から出射される平行光L2の光軸位置を計測し、その光軸位置を基準として、第2レンズ5を配置する位置を決定する。このような方法によれば、第2レンズ5を複数の位置に順に配置する必要がなく、光ファイバ8の調芯が1回で済むので、第2レンズ5および光ファイバ8の調芯をより簡便に行うことができる(言い換えると、第2レンズ5を内包するレンズホルダ6を調芯する必要が無く、光ファイバ8の調芯が短時間で済むため、全体の調心にかかる時間を短く、簡便行うことができる)。
【0039】
ここで、第1レンズ4から出射される平行光L2の光軸位置を計測する方法として、第1レンズ4から出射される平行光L2の光軸中心AX2上に例えばビームプロファイラといった光点位置検出器20を配置し、光点位置検出器20からの検出信号に基づいて光軸位置を計測する方法も考えられる。しかしながら、光点位置検出器20のサイズが大きいと、光点位置検出器20、または光点位置検出器20に接続される電源ケーブルなどの配線がチャック機構CH等と干渉し、第1レンズ4から出射される平行光L2の光軸中心AX2上に光点位置検出器20を配置することが困難となることがある。また、比較的大きな光点位置検出器20を移動させなければならず、また、光点位置検出器には電源ケーブル、通信ケーブル等が接続されているため、光点位置検出器の取付機構が複雑になること等の問題もある。そこで、本実施形態では、第1ミラー11および第2ミラー12を有するミラー部材10Aを用いて、第1レンズ4から出射される平行光L2の少なくとも一部を光軸中心AX2外に取り出す。このとき、平行光L2の少なくとも一部を、設計上の光軸中心AX2に沿った方向D2に進行させ、光点位置検出器20に入射させる。ミラー部材10Aの構造は単純であるため、ミラー部材10Aを光点位置検出器20よりも格段に小さく形成することは十分に可能である。また、ミラー部材10Aには電源ケーブルなどの配線を接続する必要も無い。したがって、平行光L2の光軸中心AX2上にミラー部材10Aを配置すること、およびミラー部材10Aを移動させる機構を実現することは極めて容易である。このような構成によって、光点位置検出器20を平行光L2の光軸中心AX2外に配置しつつ、光点位置検出器20からの検出信号に基づいて平行光L2の実際の光軸中心AX2の位置を算出することができる。したがって、本実施形態の製造方法によれば、第2レンズ5および光ファイバ8の調芯をより簡便に行うことができる。
【0040】
本実施形態のように、方向D2は筐体2から離れる方向であってもよい。その場合であっても、光点位置検出器20からの検出信号に基づいて平行光L2の実際の光軸中心AX2の位置を算出することができ、第2レンズ5および光ファイバ8の調芯をより簡便に行うことができる。
【0041】
本実施形態のように、工程ST8Aでは、光点位置検出器20を設計上の光軸中心AX2に沿った方向に移動させ、該方向に並ぶ第1位置P1および第2位置P2のそれぞれに対応する光点位置検出器20からの検出信号である第1検出信号および第2検出信号に基づいて、実際の光軸中心AX2の位置を算出してもよい。その場合、平行光L2の実際の光軸中心AX2と設計上の光軸中心AX2との成す角度θ、および設計上の光軸中心AX2に対する実際の光軸中心AX2の傾斜方向を考慮して、平行光L2の実際の光軸中心AX2の位置をより精度良く求めることができる。したがって、発光素子3と光ファイバ8との光結合効率をより高めることができる。
【0042】
上記の例では第1位置P1および第2位置P2の2箇所に光点位置検出器20を配置しているが、設計上の光軸中心AX2に沿った方向における3以上の箇所に光点位置検出器20を配置してもよい。3以上の箇所にそれぞれ対応する3つ以上の検出信号に基づいて実際の光軸中心AX2の位置を算出することにより、平行光L2の実際の光軸中心AX2の位置を更に精度良く求めることができる。なお、上記の例では光点位置検出器20のみを移動させているが、光点位置検出器20およびミラー部材10Aを同方向に同じ距離だけ移動させてもよい。
【0043】
本実施形態のように、光点位置検出器20はビームプロファイラであってもよい。その場合、光点位置検出器20における平行光L2の入射中心の位置を精度良く検出できるので、平行光L2の実際の光軸中心AX2の位置を精度良く求めることができる。
【0044】
前述したように、第1ミラー11および第2ミラー12は全反射ミラーであってもよい。その場合、第1レンズ4から出射される平行光L2のほぼ全部が光点位置検出器20に入射するので、第1レンズ4から出射される平行光L2の一部のみが光点位置検出器20に入射する場合と比較して、光点位置検出器20に入射する平行光L2の光強度が大きくなる。したがって、光点位置検出器20における光点位置の検出精度が向上し、平行光L2の実際の光軸中心AX2の位置をより精度良く求めることができる。
【0045】
上述したように、本実施形態では、第1レンズ4から出射される平行光L2の光軸位置を計測し、その光軸位置を基準として、第2レンズ5を配置する位置を決定する。第2レンズ5を複数の位置に順に配置し、第2レンズ5の複数の位置それぞれにおいて光ファイバ8の調芯を行い、最も光結合効率が高い第2レンズ5および光ファイバ8の位置を求める方法と比較して、本実施形態の方法では第2レンズ5の調芯精度が劣ることが懸念される。しかしながら、本実施形態であっても、発光素子3と光ファイバ8との間の十分な光結合効率を得ることができる。
【0046】
図8の(a)部は、第2レンズ5のX方向における最適位置からの変位(μm)と、発光素子3と光ファイバ8との間の光結合効率の変動量(dB)との関係を調べた結果を示すグラフである。
図8の(b)部は、第2レンズ5のY方向における最適位置からの変位(μm)と、発光素子3と光ファイバ8との間の光結合効率の変動量(dB)との関係を調べた結果を示すグラフである。
図9は、
図8の(b)部の一部を拡大して示すグラフである。なお、これらのグラフでは、第2レンズ5の変位に応じて光ファイバ8を最適位置に調芯している。
図8および
図9に示されるように、最適位置に対して第2レンズ5の中心が±20μmずれても、光結合効率の低下量は0.05dB未満である。また、
図10の(a)部は、ビームプロファイラに入射した光の実際の中心位置(横軸)と、ビームプロファイラから出力された検出信号に基づく光の中心位置(縦軸)との関係を4回調べた結果を示すグラフである。
図10の(b)部は、
図10の(a)部に示されたグラフから算出された誤差を示すグラフである。
図10の(b)部に示されるように、ビームプロファイラによる光の中心位置の検出誤差は±2μmの範囲内に収まっている。したがって、光点位置検出器20の光点位置検出精度を考慮しても、第2レンズ5の調芯を省略することは十分可能である。
[変形例]
【0047】
光モジュール1の製造方法の別の例について説明する。
図11は、光モジュール1の製造方法の別の例を示すフローチャートである。この製造方法の工程ST1~ST6については、上記実施形態と同じなので説明を省略する。
【0048】
工程ST6に続く工程ST7Bにおいて、
図12に示されるように、ミラー部材10Bおよび光点位置検出器20を配置するとともに、発光素子3から光L1を出射させる。光L1は、第1レンズ4によって平行光L2に変換される。ミラー部材10Bは、光モジュール1の構成要素ではなく、光モジュール1の製造の際にのみ用いられる治具である。ミラー部材10Bは、第1ミラー11および第2ミラー13を有する。第1ミラー11の構成は、上記実施形態と同じである。第2ミラー13は、第1ミラー11において反射された平行光L2のうち少なくとも一部を、平行光L2の設計上の光軸中心AX2に沿った方向D3(第2方向)に沿って反射する。本変形例では、方向D3は、筐体2に近づく方向、すなわち平行光L2の出射方向の逆方向である。そのため、本実施形態の第2ミラー13の法線は、第1ミラー11の法線と交差する。第1ミラー11および第2ミラー13は全反射ミラーであってもよい。或いは、第1ミラー11がビームスプリッタであり、第2ミラー13が全反射ミラーであってもよい。光点位置検出器20は、第2ミラー13に対して、平行光L2の設計上の光軸中心AX2に沿った方向に配置される。第2ミラー13において反射された平行光L2は、光点位置検出器20に入射する。光点位置検出器20の構成は、上記実施形態と同じである。
【0049】
工程ST8Bにおいて、第2ミラー13において反射された平行光L2を光点位置検出器20に入射させ、光点位置検出器20からの検出信号に基づいて、第2レンズ5が配置される光軸方向の位置における、平行光L2の光軸中心AX2の実際の位置を算出する。光軸中心AX2の実際の位置は、光点位置検出器20における平行光L2の入射中心の位置、および筐体2と光点位置検出器20との相対位置関係に基づいて、幾何学的に算出され得る。
【0050】
工程ST8Bでは、次のようにして平行光L2の光軸中心AX2の実際の位置を算出してもよい。
図13に示されるように、まず第1位置P3にミラー部材10Bを配置して、光点位置検出器20からの検出信号(第1検出信号)を取得する。そして、その第1検出信号に基づいて、光点位置検出器20における平行光L2の入射中心の位置Paを知る。次に、ミラー部材10Bを平行光L2の設計上の光軸中心AX2に沿った方向(すなわちZ方向)に移動させ、第1位置P3に対して該方向に並ぶ第2位置P4にミラー部材10Bを配置する。そして、光点位置検出器20からの検出信号(第2検出信号)を取得し、その第2検出信号に基づいて、光点位置検出器20における平行光L2の入射中心の位置Pbを知る。そして、位置Paと位置Pbとに基づいて、平行光L2の光軸中心AX2の実際の位置を算出する。
【0051】
前述したように、本変形例では、第2ミラー13における平行光L2の方向D3は、筐体2に近づく方向である。したがって、実際の光軸中心AX2が設計上の光軸中心AX2に対して角度θだけ傾斜している場合、
図13に示されるように、位置Pbは位置Paから角度θに応じた距離だけ離れる。故に、位置Paと位置Pbとの間の距離、および第1位置P3と第2位置P4との間の距離に基づいて、角度θを算出することができる。また、設計上の光軸中心AX2に対する実際の光軸中心AX2の傾斜方向(実際の光軸中心AX2のZ軸まわりの回転角φ)は、位置Paに対する位置Pbの変位方向によって知ることができる。よって、本変形例においても、平行光L2の設計上の光軸中心AX2と実際の光軸中心AX2との成す角度θ、および設計上の光軸中心AX2に対する実際の光軸中心AX2の傾斜方向を考慮して、光軸中心AX2の実際の位置を算出することができる。
【0052】
なお、上記の説明では、筐体2に近い第1位置P3にミラー部材10Bを配置したのちに、筐体2から遠い第2位置P4にミラー部材10Bを配置している。これに限られず、筐体2から遠い第2位置P4にミラー部材10Bを配置したのちに、筐体2に近い第1位置P3にミラー部材10Bを配置してもよい。
【0053】
続く工程ST9~ST13については、上記実施形態と同じなので説明を省略する。
【0054】
以上に説明した本変形例による光モジュール1の製造方法によって得られる作用効果について説明する。本変形例においても、上記実施形態と同様に、第2レンズ5および光ファイバ8の調芯をより簡便に行うことができる。また、本変形例では、方向D3は筐体2に近づく方向である。その場合であっても、光点位置検出器20からの検出信号に基づいて平行光L2の実際の光軸中心AX2の位置を算出することができ、第2レンズ5および光ファイバ8の調芯をより簡便に行うことができる。
【0055】
本変形例のように、工程ST8Bでは、ミラー部材10Bを設計上の光軸中心AX2に沿った方向に移動させ、該方向に並ぶ第1位置P3および第2位置P4のそれぞれにおけるミラー部材10Bからの平行光L2を光点位置検出器20に入射させ、第1位置P3および第2位置P4にそれぞれ対応する検出信号である第1検出信号および第2検出信号に基づいて、実際の光軸中心AX2の位置を求めるでもよい。その場合、平行光L2の実際の光軸中心AX2と設計上の光軸中心AX2との成す角度θ、および設計上の光軸中心AX2に対する実際の光軸中心AX2の傾斜方向を考慮して、平行光L2の実際の光軸中心AX2の位置をより精度良く求めることができる。したがって、発光素子3と光ファイバ8との光結合効率をより高めることができる。
【0056】
上記の例では第1位置P3および第2位置P4の2箇所にミラー部材10Bを配置しているが、設計上の光軸中心AX2に沿った方向における3以上の箇所にミラー部材10Bを配置してもよい。3以上の箇所にそれぞれ対応する3つ以上の検出信号に基づいて実際の光軸中心AX2の位置を算出することにより、平行光L2の実際の光軸中心AX2の位置を更に精度良く求めることができる。なお、上記の例ではミラー部材10Bのみを移動させているが、光点位置検出器20およびミラー部材10Bを同方向に同じ距離だけ移動させてもよい。
【0057】
本開示による光モジュールの製造方法および調芯装置は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では光点位置検出器としてビームプロファイラ、PSDおよび光ファイバ調芯装置を例示したが、光点位置検出器はこれらに限られず、入射光の光点位置を検出できるものであればよい。また、上記実施形態では発光素子として波長可変型の半導体レーザ素子を例示したが、発光素子はこれに限られず、光を出力するものであればよい。
【符号の説明】
【0058】
1…光モジュール
2…筐体
3…発光素子
3a…光出射端面
4…第1レンズ
5…第2レンズ
6…レンズホルダ
6a…第1端面
6b…第2端面
7…スリーブ
7a…第1端面
8…光ファイバ
8a…端面
10A,10B…ミラー部材
11…第1ミラー
12,13…第2ミラー
20…光点位置検出器
21…底板
21a…素子搭載面
22…壁部
22a…前端壁
22b…後端壁
22c…第1側壁
22d…第2側壁
22e…突起部
22f…端面
23…フィードスルー
24…リードピン
71…フランジ部
AX1,AX3…中心軸
AX2…光軸中心
CH…チャック機構
D1,D2,D3…方向
L1…光
L2…平行光
NV…法線ベクトル
P1,P3…第1位置
P2,P4…第2位置