(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090855
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】路面描画用灯具および車両用路面描画用灯具
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/26 20060101AFI20240627BHJP
E01F 9/50 20160101ALI20240627BHJP
【FI】
B60Q1/26 Z
E01F9/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207014
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕一
【テーマコード(参考)】
2D064
3K339
【Fターム(参考)】
2D064EA01
2D064EB17
3K339AA43
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA22
3K339CA30
3K339GB01
(57)【要約】
【課題】円滑な交通を支援する対人用ランプおよび車両用ランプを提供することを目的とする。
【解決手段】路面に光を照射する路面描画用灯具10a~10cであって、路面描画用灯具10a~10cは、光源12を備えており、光源12から光源12の光軸Cが路面と交差する地点である照射地点Pまでの距離をD0、距離D0における路面と平行な成分である平行距離Dx、距離D0における路面と垂直な成分である垂直距離Dyとすると、光源12は、平行距離Dxが0.5m~1.5m、垂直距離Dyが0.4m~1.0mとなる位置に設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に光を照射する路面描画用灯具であって、
前記路面描画用灯具は、光源を備えており、
前記光源から前記光源の光軸が路面と交差する地点である照射地点までの距離をD0、距離D0における路面と平行な成分である平行距離Dx、距離D0における路面と垂直な成分である垂直距離Dyとすると、
前記光源は、前記平行距離Dxが0.5m~1.5m、前記垂直距離Dyが0.4m~1.0mとなる位置に設けられている、
路面描画用灯具。
【請求項2】
前記光源を含む複数の灯具ユニットは、互いに前記平行距離Dxが異なる照射地点を照射するように構成されており、
前記平行距離Dxがより小さい前記灯具ユニットほど、前記垂直距離Dyが小さくなるように設けられる、
請求項1に記載の路面描画用灯具。
【請求項3】
さらに、前記路面描画用灯具は、灯具ユニットを有し、
前記灯具ユニットは、複数の前記光源と、複数の前記光源から出射された光を路面に投影させる共通の凸レンズを有し、
前記平行距離Dxがより大きい前記光源ほど、前記垂直距離Dyが小さくなるように設けられる、
請求項1に記載の路面描画用灯具。
【請求項4】
路面に設置され、鉛直方向に延びる支持部を有し、
前記光源は前記支持部に取り付けられている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の路面描画用灯具。
【請求項5】
路面に光を照射する車両用路面描画用灯具であって、
前記車両用路面描画用灯具は、光源と、車両に取り付けられるための取付部と、を備えており、
前記光源から前記光源の光軸が路面と交差する地点である照射地点までの距離をD0、距離D0における路面と平行な成分である平行距離Dx、距離D0における路面と垂直な成分である垂直距離Dyとすると、
前記取付部は、前記光源が前記平行距離Dxが0.5m~1.5mかつ前記垂直距離Dyが0.4m~1.0mとなる位置になるように、前記車両に取り付けられている、
車両用路面描画用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、路面描画用灯具および車両用路面描画用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載された路面描画用灯具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、より視認性が向上した路面描画用灯具および車両用路面描画用灯具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る路面描画用灯具は、路面に光を照射する路面描画用灯具であって、
前記路面描画用灯具は、光源を備えており、
前記光源から前記光源の光軸が路面と交差する地点である照射地点までの距離をD0、距離D0における路面と平行な成分である平行距離Dx、距離D0における路面と垂直な成分である垂直距離Dyとすると、
前記光源は、前記平行距離Dxが0.5m~1.5m、前記垂直距離Dyが0.4m~1.0mとなる位置に設けられている。
【0006】
本開示の一側面に係る車両用路面描画用灯具は、路面に光を照射する車両用路面描画用灯具であって、
前記車両用路面描画用灯具は、光源と、車両に取り付けられるための取付部と、を備えており、
前記光源から前記光源の光軸が路面と交差する地点である照射地点までの距離をD0、距離D0における路面と平行な成分である平行距離Dx、距離D0における路面と垂直な成分である垂直距離Dyとすると、
前記取付部は、前記光源が前記平行距離Dxが0.5m~1.5mかつ前記垂直距離Dyが0.4m~1.0mとなる位置になるように、前記車両に取り付けられている。
【0007】
本開示によれば、より視認性が向上した路面描画用灯具および車両用路面描画用灯具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る路面描画用灯具と路面描画用灯具を備える車両を例示する。
【
図3】
図3は、路面描画用灯具における路面描画の様子を例示する。
【
図4】
図4は、各平行距離Dxにおける垂直距離と指標Aとの関係を例示する。
【
図5】
図5は、各平行距離Dxにおける垂直距離と指標Aとの関係を例示する。
【
図6】
図6は、複数の路面描画灯具における路面描画の様子を例示する。
【
図7】
図7は、変形例1に係る路面描画用灯具と路面描画用灯具を備える車両200を例示する。
【
図8】
図8は、変形例1に係る路面描画用灯具における路面描画の様子を例示する。
【
図9】
図9は、変形例2に係る路面描画用灯具と路面描画用灯具が設けられる交通信号機を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0010】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」について適宜言及する。ここで、「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。以降に説明する図中に示した符号Uは上方向を示す。符号Dは下方向を示す。符号Fは前方向を示す。符号Bは後方向を示す。符号Lは左方向を示す。符号Rは右方向を示す。これらの方向は、車両に搭乗した運転手から見た方向に相当する。
【0011】
図1を参照して、車両100に設けられる本実施形態に係る路面描画用灯具10a~10cについて以下に説明する。
図1は、本実施形態に係る路面描画用灯具10a~10cと路面描画用灯具10a~10cを備える車両100を例示する。路面描画用灯具10a~10cは、路面に光を照射することで、例えば、車両100の情報を周囲の通行者に対して知らしめる。
【0012】
図2は、路面描画用灯具10aの断面図である。路面描画用灯具10b,10cについては、路面描画用灯具10aと同等の構成を備えているので、図示が省略されている。路面描画用灯具10aは、ハウジング11a,11bと、光源12と、リフレクタ13と、を備える。ハウジング11a,11bは、光源12およびリフレクタ13を内部に収容するように構成されている。光源12は、路面に像が投影されるための光を出射するように構成されている。リフレクタ13は、光源12から出射された光が路面に投影されるように、光の光路を変更するように構成されている。
【0013】
路面描画用灯具10aは、車両100の一部に取り付けるための取付部14を備える。取付部14は、締結によって車両100に対して固定されるように構成されている。取付部14における締結によって、路面描画用灯具10aは車両100に対して位置決めされる。
【0014】
図3は、路面描画用灯具10aにおける路面描画の様子を例示する。路面描画用灯具10b,10cについては、路面描画用灯具10aと同等の構成を備えているので、
図3における図示は省略されている。
図3に例示されるように、路面描画用灯具10aは、路面に向けて光を照射するように構成されている。ここで、光源12から光源12の光軸Cが路面と交差する地点である照射地点Pまでの距離を照射距離D0とする。照射距離D0は、路面描画用灯具10aを備える車両が平坦な路面に位置するときに定義される。さらに、距離D0における路面と平行な成分である平行距離Dxと、距離D0における路面と垂直な成分である垂直距離Dyを定義する。
【0015】
ここで、光源12は、平行距離Dxが0.5m~1.5m、垂直距離Dyが0.4m~1.0mとなる位置に設けられている。換言すると、取付部14は、光源12が平行距離Dxが0.5m~1.5mかつ垂直距離Dyが0.4m~1.0mとなる位置になるように、車両100に取り付けられている。さらに換言すると、車両100は、平行距離Dxが0.5m~1.5m、垂直距離Dyが0.4m~1.0mとなる位置に光源12が設けられている路面描画用灯具10aを有している。
【0016】
ところで、路面描画用灯具は、路面に光を照射して像を投影することによって、車両の周囲にいる交通他者に自車の存在または意図を知らしめることを目的として搭載されている。路面描画用灯具は、車両の搭乗者と車両の周囲にいる通行者とが互いに視認しにくい夜間等に使用されることが想定されていた。しかしながら、自動運転の普及等に伴い、例えば隊列走行時など、昼間でも路面描画用灯具を活用することが検討されてきている。
【0017】
夜間等に使用される路面描画用灯具と比較して、昼間に使用される路面描画用灯具は、比較的自車に近い位置に描画する。例えば、特許文献1のような夜間の進路変更等の自車情報を通行者に伝えるための路面描画には平行距離は3m以上が要されるところ、昼間の隊列走行時の路面描画において必要な平行距離Dxは0.5m~1.5mほどである。
【0018】
路面描画の視認性は、路面描画されている路面とその周囲の路面との輝度コントラストが大きいほど良い。しかしながら、昼間の路面描画は輝度コントラストが小さくなりやすいので、視認性が低下する。昼間に視認性の良い路面描画を行うためには、路面描画用灯具により投影される像が十分に明るいことが求められる。本発明者は、投影される像の水平面照度の大きさに着目した。
図4、
図5は、各平行距離Dxにおける垂直距離と指標Aとの関係を例示する。水平面照度Eは、平行距離Dxと垂直距離Dyを用い、光源からの光線が路面に対して傾斜する角度をθ、路面描画用灯具の光度Iを一定とすると、以下の式により表される。
I=E・(dx
2+dy
2)/sinθ=E・(Dx
2+Dy
2)
3/2/Dy
すなわち、指標A=(Dx
2+Dy
2)
3/2/Dyとすると、指標Aが小さいほど水平面照度Eは大きくなる。
【0019】
ここで、夜間の路面描画のように平行距離Dxが3~5mの場合には、
図4に示したように、垂直距離Dyが大きくなるほど指標Aが低くなる、つまり、垂直距離Dyが大きくなるほど像を明るくできる。これは、できるだけ真上から像を投影するほど像を視認しやすくなるという、当業者の一般的な常識と符合する。
【0020】
しかし、本開示が対象とする平行距離Dxが0.5~1.5mの場合には、
図5に示したように、平行距離Dxが3~5mの場合とは指標Aの変化の様子が異なることを見出した。つまり、垂直距離Dyの増加に伴って単調に指標Aが低下するのではなく、垂直距離Dyには指標Aが低くなる一定の範囲があることを見出した。つまり、平行距離Dxが3~5mである場合と、垂直距離Dyが0.5~1.5mの場合とは、光学的な設計の前提が異なる。
【0021】
本実施形態における路面描画用灯具10a~10cは、その光源12が設けられる位置が平行距離Dx0.5m~1.5m、垂直距離Dy0.4m~1.0mとなるように構成されている。このため、照射地点における像の照度は高くなり、像の視認性が向上した路面描画用灯具が提供される。
【0022】
また、本実施形態における路面描画用灯具10a~10cは、取付部14を備えているので、特に車両100に搭載されやすい路面描画用灯具である。このため、路面描画用灯具10a~10cは、車両用路面描画用灯具の一例となりうる。すなわち、取付部14は、光源12が垂直距離Dy0.4m~1.0mとなる位置になるように、車両100に取り付けられているので、照射地点Pにおける像の照度は高くなり、像の視認性が向上した車両用路面描画用灯具が提供される。
【0023】
図1および
図2に例示されるように、複数の路面描画用灯具10a~10cは、それぞれ光源を含む。すなわち、路面描画用灯具10a~10cは、灯具ユニットの一例である。複数の灯具ユニットに相当する複数の路面描画用灯具10a~10cは、互いに平行距離Dxが異なる照射地点を照射するように構成されていることが望ましい。
【0024】
ここで、
図1に例示されるように、複数の路面描画用灯具10a~10cは、垂直距離Dyが0.4m~1.0mの範囲で互いに異なる位置に設けられている。このとき、平行距離Dxがより小さい路面描画用灯具10a~10cほど、垂直距離Dyが小さくなるように設けられることが望ましい。例えば、
図1の例示では、路面描画用灯具10a、路面描画用灯具10b、路面描画用灯具10cの順に垂直距離Dyが大きい。この場合、
図6に例示されるように、平行距離Dxは、路面描画用灯具10a、路面描画用灯具10b、路面描画用灯具10cの順に大きいことが望ましい。
【0025】
本発明者は、平行距離Dxが小さくなるほど垂直距離Dyが小さいことが、照射地点Pにおける照度の観点から望ましいことを見出した。例えば、
図5に例示されるように、平行距離Dxが0.5mの場合、垂直距離Dyが0.4mで指標Aは最小値となる。平行距離Dxが1.0mの場合、垂直距離Dyが0.7mで指標Aは最小値となる。平行距離Dxが1.5mの場合、垂直距離Dyが1mで指標Aは最小値となる。平行距離Dxが2.0mの場合、垂直距離Dyが1.5mで指標Aは最小値となる。このように、平行距離Dxが小さいほど、指標Aが最小値となるような垂直距離Dyは小さいなる。
【0026】
上記の構成によれば、平行距離Dxが小さくなるほど垂直距離Dyが小さくなるように灯具ユニットである路面描画用灯具10a~10cが配置されるので、各々の光源12から投影される像の明るさが向上する。
【0027】
(変形例1)
図7は、変形例1に係る路面描画用灯具110と路面描画用灯具110を備える車両200を例示する。
図8は、変形例1に係る路面描画用灯具110における路面描画の様子を例示する。本例示では、路面描画用灯具110は車両200に1つだけ設けられており、路面描画用灯具110は、複数の光源112a~112cと、凸レンズ113と、を備えている。複数の光源112a~112cは、平行距離Dx0.4m~1.0mの範囲の互いに異なる地点に路面描画するための光を出射するように構成されている。凸レンズ113は、光軸方向かつ路面に垂直な方向における凸レンズの出射面の断面形状は、凸状である。凸レンズ113は、複数の光源112a~112cから出射された光を路面に投影させるように構成されている。凸レンズ113は、複数の光源112a~112cについて共通して用いられる。複数の光源112a~112cと凸レンズ113とは、灯具ユニットを構成する。すなわち、路面描画用灯具110は、灯具ユニットを有している。
【0028】
路面描画用灯具110の複数の光源112a~112cは、垂直距離Dy0.4m~1.0mの範囲で異なる位置に設けられている。
図7の例示では、光源112a、光源112b,光源112cの順に垂直距離Dyが大きくなるように配置されている。
図7および
図8に例示されるように、凸レンズ113の特性上、光源112a~112cから投影され焦点距離よりも遠い地点で結像する像は、倒立されて描画される。このため、平行距離Dxが異なる地点に像が投影される場合、平行距離Dxがより大きい光源112a~112cほど、垂直距離Dyが小さくなるように設けられることが望ましい。
【0029】
(変形例2)
図9は、変形例2に係る路面描画用灯具210と路面描画用灯具210が設けられる交通信号機300を例示する。路面描画用灯具210は、複数の光源212a~212cと、複数の凸レンズ213a~213cと、支持部214と、を備える。複数の光源212a~212cは、垂直距離Dyが0.4m~1.0mとなるように設けられ、平行距離Dxが0.5m~1.5mの範囲の互いに異なる地点に路面描画するための光を出射するように構成されている。本実施形態においては、光源212a~212cは交通信号機が照射する色の光を、路面にも投影するように構成されている。光源212a~212cは、垂直距離Dy0.4m~1.0mの範囲で異なる位置に設けられている。複数の凸レンズ213a~213cはそれぞれ、光源212a~212cから出射された光を路面に投影するように構成されている。支持部214は、路面に設置され、鉛直方向に延びている。本実施形態においては、支持部214は、交通信号機の柱を構成している。
【0030】
このように、路面描画用灯具210は車両などの移動体だけでなく、交通信号機等の交通インフラに対しても適用されてもよい。これにより、照射地点における像の照度は高くなり、像の視認性が向上した路面描画用灯具210が提供される。
【0031】
これまで説明した各構成は、本開示の理解を容易にするための例示にすぎない。各構成例は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や他の構成との組合せがなされうる。
【0032】
例えば、実施形態においては、光源から出射した光を路面に投影する手段の一例として凸レンズが例示されたが、別の光学系によって光源から出射した光を路面に投影するように構成してもよい。また、路面描画用灯具は、一つの凸レンズで複数の光源から出射した光を路面に投影する形態と一つの凸レンズで一つの光源から出射した光を路面に投影する形態とが組み合わされて構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10a,10b,10c,110,210 路面描画用灯具
11a,11b ハウジング
12,112a,112b,112c,212a,212b,212c 光源
13 リフレクタ
14 取付部
100,200 車両
113,213a,213b,213c 凸レンズ
214 支持部
300 交通信号機
C 光軸
Dx 平行距離
Dy 垂直距離