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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090860
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】決済装置
(51)【国際特許分類】
   G07G 1/00 20060101AFI20240627BHJP
   G06K 13/06 20060101ALI20240627BHJP
   G06K 7/08 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G07G1/00 311D
G06K13/06 Z
G06K7/08 050
G06K7/08 040
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207029
(22)【出願日】2022-12-23
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FeliCa
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 蒼詩
【テーマコード(参考)】
3E142
5B023
【Fターム(参考)】
3E142FA02
3E142GA07
3E142GA36
3E142KA20
5B023AA01
(57)【要約】
【課題】専用の装置を組み込むことなく、不正読取装置の不正組み付けを検出可能な構成を提供する。
【解決手段】スロット13に案内された磁気カード又は差込口14に差し込まれたICカードから決済情報を読み取るための不正読取装置が筐体11に組み付けられているか否かについて、決済媒体から非接触にて決済情報を読み取る際に磁界強度Hの変化を測定する測定部33aの測定結果に基づいて判定される。そして、不正読取装置が筐体11に組み付けられていると判定されると、報知部25により所定の報知が行われる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
決済カード用の案内部と決済媒体がかざされる読取面とが形成される筐体と、
前記案内部に案内された前記決済カードから決済情報を読み取る決済カード読取部と、
磁界強度を測定する測定部を有し、前記読取面にかざされた前記決済媒体に応じて前記測定部により測定される磁界強度の変化に基づいて前記決済媒体から非接触にて決済情報を読み取る非接触通信部と、
前記決済カード読取部又は前記非接触通信部により読み取られた決済情報を利用して決済処理を行う決済処理部と、
を備える決済装置であって、
前記案内部に案内された前記決済カードから決済情報を読み取るための不正読取装置が前記筐体に組み付けられているか否かについて、前記測定部の測定結果に基づいて判定する判定部と、
前記判定部により前記不正読取装置が前記筐体に組み付けられていると判定されると所定の報知を行う報知部と、
を備えることを特徴とする決済装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記測定部により測定される磁界強度が所定の閾値を下回る状態が一定時間継続する場合に、前記不正読取装置が前記筐体に組み付けられていると判定することを特徴とする請求項1に記載の決済装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記非接触通信部により前記決済媒体から非接触にて決済情報が読み取られている状態では、前記測定部の測定結果にかかわらず前記不正読取装置が前記筐体に組み付けられていると判定しないことを特徴とする請求項1に記載の決済装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、決済カード及び非接触用の決済媒体を利用した決済が可能な決済装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、クレジットカード等を使用したキャッシュレス決済の利用傾向が高まりつつあり、従来からの磁気カードを利用した決済に加えて、ICチップが設けられる接触式のICカードを利用した決済やNFC(Near Field Communication)機能を利用した非接触決済などの普及も著しい。その一方で、クレジットカード等から決済情報が不正に取得されて不正利用される被害も増加しており、特に、決済装置に対して不正に組み込んだスキミング装置によって磁気カードから決済情報を不正に取得するスキミング被害が多くなっている。例えば、磁気カード用のスリットや読取口などの案内部に合わせた形状のスキミング装置をその案内部に対して不正に組み付けていると、決済処理自体は通常通り実施されることもあり、その不正組み付けを利用者等では一見して発見し難いという問題がある。
【0003】
このようなスキミング被害を防止するための技術として、例えば、下記特許文献1に開示される自動取引装置が知られている。この自動取引装置では、接客パネルにおけるカード挿入口の上下に位置するように異物センサが取り付けられており、カード挿入口にスキミング装置を不正に取り付けると、このスキミング装置によって異物センサが覆われるため、異物センサによる光の遮断状態の検知をスキミング装置の不正取り付けの検出に利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-250711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような異物センサなど、スキミング装置を検出するための専用装置を別途組み込むような構成では、その専用装置の分だけ製造コストが増大するという問題だけでなく、小型化が要求されやすい決済装置には採用し難いという問題がある。この問題は、磁気カードだけでなく、接触式のICカードなども含めた決済カード全般にて生じる問題であり、スキミング装置等の不正読取装置から決済カードを保護する必要がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、専用の装置を組み込むことなく、不正読取装置の不正組み付けを検出可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、
決済カード用の案内部(13)と決済媒体(C)がかざされる読取面(12)とが形成される筐体(11)と、
前記案内部に案内された前記決済カードから決済情報を読み取る決済カード読取部(32)と、
磁界強度を測定する測定部(33a)を有し、前記読取面にかざされた前記決済媒体に応じて前記測定部により測定される磁界強度(H)の変化に基づいて前記決済媒体から非接触にて決済情報を読み取る非接触通信部(33)と、
前記決済カード読取部又は前記非接触通信部により読み取られた決済情報を利用して決済処理を行う決済処理部(21)と、
を備える決済装置(10)であって、
前記案内部に案内された前記決済カードから決済情報を読み取るための不正読取装置(S)が前記筐体に組み付けられているか否かについて、前記測定部の測定結果に基づいて判定する判定部(21)と、
前記判定部により前記不正読取装置が前記筐体に組み付けられていると判定されると所定の報知を行う報知部(25)と、
を備えることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、決済カード用の案内部に案内された決済カードから決済情報を読み取るための不正読取装置が筐体に組み付けられているか否かについて、決済媒体から非接触にて決済情報を読み取る際に磁界強度の変化を測定する測定部の測定結果に基づいて判定部により判定される。そして、判定部により不正読取装置が筐体に組み付けられていると判定されると報知部により所定の報知が行われる。
【0009】
測定部にて測定される磁界強度は、筐体近傍の金属体等に応じて変化する。このため、不正読取装置が筐体に対して不正に組み付けられている場合には、不正読取装置が筐体に組み付けられる前と比較して、その不正読取装置に応じて測定される磁界強度が変化する。すなわち、測定部の測定結果に基づいて不正読取装置が筐体に組み付けられているか否かについて判定でき、その判定結果に応じた所定の報知を行うことができる。特に、非接触決済に利用する測定部の測定結果を利用するため、異物センサなどの専用装置を別途組み込むことなく、不正読取装置の不正組み付けを検出することができる。
【0010】
請求項2の発明では、測定部により測定される磁界強度が所定の閾値を下回る状態が一定時間継続する場合に、不正読取装置が筐体に組み付けられていると判定部により判定される。
【0011】
このため、例えば、一時的に金属体等が決済装置に近づけられたために磁界強度が所定の閾値を下回ったとしても、その後に金属体等が決済装置から離されることで磁界強度が所定の閾値以上となって上記所定の報知がなされることもないので、不正読取装置の誤検出を防止することができる。
【0012】
請求項3の発明では、非接触通信部により決済媒体から非接触にて決済情報が読み取られている状態では、測定部の測定結果にかかわらず不正読取装置が筐体に組み付けられていると判定部により判定されない。
【0013】
例えば、非接触決済用の決済媒体、例えば、電子マネー用のカード等が読取面にかざされる場合には、その決済情報の通信時に磁界強度が変化するだけでなく、そのカード等と読取面との距離に応じて測定部にて測定される磁界強度が変化する場合がある。このため、決済媒体から非接触にて決済情報が読み取られている状態では、測定部の測定結果にかかわらず不正読取装置が筐体に組み付けられていると判定部にて判定しないことで、非接触決済用の決済媒体に起因する不正読取装置の誤検出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る決済装置を示す斜視図である。
図2図1の決済装置を示す平面図である。
図3図1の決済装置を示す側面図である。
図4図1の決済装置を差込口側から見た正面図である。
図5図1の決済端末の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
図6図6(A)は、決済媒体が筐体の上面にかざされていない状態でのアンテナ周りの磁界を概略的に説明する説明図であり、図6(B)は、決済媒体が筐体の上面にかざされたことで変化したアンテナ周りの磁界を概略的に説明する説明図である。
図7図7(A)は、不正読取装置が筐体に組み付けられていない状態でのアンテナ周りの磁界を概略的に説明する説明図であり、図7(B)は、不正読取装置が筐体に組み付けられたことで変化したアンテナ周りの磁界を概略的に説明する説明図である。
図8図8(A)は、不正読取装置が筐体に組み付けられていない状態にて計測される磁界強度の時間変化を説明する説明図であり、図8(B)は、計測途中で不正読取装置が筐体に組み付けられた場合の磁界強度の時間変化を説明する説明図である。
図9】決済装置の制御部によりなされる不正読取装置検出処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る決済装置を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る決済装置10は、購入者が複数の決済方式を選択可能なタッチパネル式の決済端末として構成されている。本実施形態では、複数の決済方式として、ICチップが設けられる接触式のICカードを利用した接触決済方式や磁気カードを利用した決済方式、NFC(Near Field Communication)機能を利用した非接触決済方式が採用されている。決済装置10は、購入者又は店員等がタッチ操作可能に店舗のカウンタ上に載置された状態で、上位機器となるPOS端末(図示略)に接続されて使用される。なお、磁気カード及び接触式のICカードは、接触式の「決済カード」の一例に相当し得る。
【0016】
図1図4に示すように、決済装置10は、その外郭を構成する筐体11における上面12の中央付近にタッチパネル23の操作面23aが配置され、この操作面23aに対して、購入者から見て右側となる位置に磁気カード用のスロット13が設けられ、購入者から見て手前側となる位置にICカード用の差込口14が設けられている。
【0017】
筐体11内には、決済装置10全体を制御する制御部21が設けられている。この制御部21は、マイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有し、半導体メモリ等からなる記憶部22とともに情報処理装置を構成している。記憶部22には、各種の決済処理を実行するためのプログラムや後述する不正読取装置検出処理を実行するためのプログラム等が制御部21により実行可能に予め格納されている。
【0018】
また、図5に示すように、決済装置10は、上述した制御部21及び記憶部22に加えて、タッチパネル23、操作部24、報知部25、外部インタフェース26、決済情報読取部30などを備えている。タッチパネル23は、公知のタッチパネル型の表示装置として構成されており、液晶表示器等の公知の表示デバイスとして構成される表示部と、この表示部の表示画面に重ねられて当該表示画面に対して押圧操作(接触)している範囲を操作面23aとして検出可能な透明性の操作パネルとを備えている。このタッチパネル23は、制御部21によって表示部の表示内容が制御される。操作部24は、上記操作パネルと筐体の側面等に設けられる1又は2以上のキーとを備えるように構成されることで、タッチパネル23の操作面23aに対するタッチ操作やキー操作に応じた信号を制御部21に出力するように構成される。
【0019】
報知部25は、LEDなどの発光部やスピーカ、ブザー等を備えており、制御部21による制御によって発光部の発光状態やスピーカの報音状態、ブザーの鳴動状態等が制御されることで、ユーザに対して決済処理等に関する報知を行うように構成されている。外部インタフェース26は、POS端末等の外部機器との間でのデータ通信を行うためのインタフェースとして構成されており、制御部21と協働して通信処理を行うように機能する。
【0020】
決済情報読取部30は、ICカード用の読取部(以下、ICカード読取部31ともいう)と、磁気カード用の読取部(以下、磁気カード読取部32ともいう)と、電子マネー(携帯アプリ,Felica等)や非接触式のクレジットカード用の非接触通信部33とを備えている。
【0021】
ICカード読取部31は、筐体11内の所定の位置に設けられるカード読取端子を備えて、差込口14を介してICカードが差し込まれることで、このICカードの外部接続端子に接続する上記カード読取端子を介して当該ICカードのICチップから読み取った決済情報を制御部21に出力するように構成されている。なお、ICカード読取部31は、「決済カード読取部」の一例に相当し、差込口14は、決済カード用の「案内部」の一例に相当し得る。
【0022】
磁気カード読取部32は、スロット13に案内(スワイプ)された磁気カードの磁気ストライプ(磁気記録部分)から読み取った決済情報を制御部21に出力するように構成されている。なお、磁気カード読取部32は、「決済カード読取部」の一例に相当し、スロット13は、決済カード用の「案内部」の一例に相当し得る。
【0023】
非接触通信部33は、上面12の内面側となる筐体11内に配置されるアンテナ34(図2参照)を利用し、アンテナ34周囲の上面12を所定の読取面として、この上面12(読取面)にかざされた電子マネー(携帯アプリ,Felica等)用の媒体や非接触式のICカードなどの決済媒体から読み取った決済情報を制御部21に出力するように構成されている。
【0024】
具体的には、非接触通信部33は、定期的にアンテナ34から磁界を発生させることで、かざした決済媒体に搭載されているコイルとの電磁誘導によってその決済媒体に対して電力供給を行うように機能する。そして、非接触通信部33は、アンテナ34を介して磁界強度Hを常時測定する測定部33aを有し(図5参照)、上面12にかざされた決済媒体の負荷変調に応じて測定部33aにより測定される磁界強度Hの変化に基づいてその決済媒体から非接触にて決済情報を読み取るように機能する。
【0025】
このように構成されることで、制御部21にてなされる決済処理では、ICカード読取部31、磁気カード読取部32、非接触通信部33のいずれか1つにて読み取られた決済情報を利用した処理(外部インタフェース26を介してPOS端末や決済サーバ等の外部機器との間で決済情報等のデータ通信を行うなどの処理)を行う。なお、上記決済処理を行う制御部21は、「決済処理部」の一例に相当し得る。
【0026】
次に、上述のように構成される決済装置10において、制御部21にてなされるスキミング装置等の不正読取装置を検出するための不正読取装置検出処理について、以下に説明する。
【0027】
アンテナ34から磁界が発生している状態では、筐体11に金属体等が近づけられることで、渦電流が発生して磁束が損失するために、磁界強度Hが変化する。例えば、図6(A)(B)に示すように、筐体11の上面12に決済媒体(図6(B)の符号C参照)が近づけられることで、磁界強度Hが変化する。なお、図6(A)は、決済媒体Cが筐体11の上面12にかざされていない状態でのアンテナ34周りの磁界を概略的に説明する説明図であり、図6(B)は、決済媒体Cが筐体11の上面12にかざされたことで変化したアンテナ34周りの磁界を概略的に説明する説明図である。
【0028】
その一方で、図7(A)(B)からわかるように、スロット13の案内方向一端側13a(又は案内方向他端側13b)となる筐体11の外面にスキミング装置として機能する不正読取装置(図7(B)の符号S参照)が不正に組み付けられた場合でも、磁界強度Hが変化する。なお、図7(A)は、不正読取装置Sが筐体11に組み付けられていない状態でのアンテナ34周りの磁界を概略的に説明する説明図であり、図7(B)は、不正読取装置Sが筐体11に組み付けられたことで変化したアンテナ34周りの磁界を概略的に説明する説明図である。同様に、差込口14の近傍に不正読取装置が不正に組み付けられた場合でも、磁界強度Hが変化する。
【0029】
このため、本実施形態では、非接触決済のためにアンテナ34周りの磁界強度Hが非接触通信部33の測定部33aにて常時測定されていることを利用して、制御部21にてなされる不正読取装置検出処理にて測定部33aの測定結果に基づいて不正読取装置を検出するための処理を行う。
【0030】
図8(A)に示すように、測定部33aにて計測される磁界強度Hは、定期的に実施される決済媒体と通信するための送信処理のタイミング(図8(A)の時間t1,t2,t3,t5参照)で、小さくなる方向にて所定時間振動する。その一方で、送信処理のタイミングと異なる時間にて計測される磁界強度Hは、筐体11に金属体等が近づけられていない場合にほぼ一定値Hoとなり、筐体11に金属体等が近づけられると一定値Hoよりも小さな値となる。具体的には、例えば、筐体11の上面12に決済媒体Cがかざされることで、磁界強度Hは、一時的に一定値Hoよりも小さな値となる(図8(A)の期間T1参照)。その際、非接触通信部33による送信処理によって(図8(A)の時間t3参照)、電力供給を受けた決済媒体の負荷変調に応じた磁界強度Hの変化が測定部33aによって計測され(図8(A)の時間t4参照)、この計測結果に基づいて決済情報が受信されるように読み取られる。
【0031】
そして、筐体11の外面に不正読取装置が不正に組み付けられると、図8(B)に示すように、磁界強度Hは、その組み付け直後から一定値Hoよりも小さな値が継続するように測定される(図8(B)の期間T2参照)。
【0032】
このため、本実施形態における不正読取装置検出処理では、図8(B)に示すように、上記一定値Hoを基準に設定される所定の閾値Hthを利用して、測定部33aにて計測される磁界強度Hが所定の閾値Hthを下回る状態が一定時間(例えば、10分又は1時間程度)継続する場合に、不正読取装置が筐体11に組み付けられていると判定して所定の報知を行う。
【0033】
以下、制御部21にてなされる不正読取装置検出処理について、図9に示すフローチャートを参照して詳述する。
非接触通信部33の測定部33aにて磁界強度Hが計測可能になることで制御部21にて不正読取装置検出処理が開始されると、ステップS101に示す閾値設定処理がなされる。この処理では、規定の期間(例えば、1分間)にて上記送信処理がなされない状態で測定部33aにて実際に計測される磁界強度Hの平均値を上述した一定値Hoとして、この一定値Hoよりもある程度小さい値が上述した所定の閾値Hthとして設定される。なお、所定の閾値Hthは、不正読取装置検出処理が実施されることに上述のようにして設定されることに限らず、例えば、予め記憶部22に記憶されている規定値と等しくなるように設定されてもよい。上記規定値は、決済装置10の工場出荷時に設定されてもよいし、店舗での決済装置10の初期設置時に測定部33aにて実測された磁界強度Hに応じて設定されてもよい。
【0034】
次に、ステップS103に示す磁界強度測定処理がなされ、測定部33aを利用して上述のように磁界強度Hが測定される。続いて、ステップS105に示す判定処理にて、決済媒体から決済情報が非接触で読み取られているか否かについて判定される。ここで、決済媒体の負荷変調による磁界変化が生じていない場合には、決済媒体から決済情報が読み取られていないと判定されて(S105でNo)、ステップS107に示す判定処理がなされる。その一方で、決済媒体が筐体11の上面12にかざされているために上述のように決済媒体の負荷変調による磁界変化が生じている場合には、決済媒体から決済情報が読み取られていると判定される(S105でYes)。この場合には、ステップS107の判定処理がなされることなく、上記ステップS103からの処理がなされて、測定部33aによる磁界強度Hの測定が継続される。
【0035】
ステップS107の判定処理では、不正読取装置の組み付けが検出されているか否かについて判定される。ここで、測定部33aにて計測される磁界強度Hが所定の閾値Hthを下回る状態が上記一定時間継続していない場合には、不正読取装置の組み付けが検出されていないと判定されて(S107でNo)、上記ステップS103からの処理がなされて、測定部33aによる磁界強度Hの測定が継続される。
【0036】
一方、図8(B)に示すように、測定部33aにて計測される磁界強度Hが所定の閾値Hthを下回る状態が上記一定時間継続すると、ステップS107にてYesと判定されて、不正読取装置の組み付けが検出されたと判定される。例えば、スロット13の案内方向一端側13aの近傍や差込口14の近傍に不正読取装置が不正に組み付けられた場合には、磁界強度Hが所定の閾値Hthを下回る状態が上記一定時間継続するために、ステップS107にてYesと判定される。なお、上記ステップS107の判定処理を行う制御部21は、「判定部」の一例に相当し得る。
【0037】
この場合には、ステップS109に示す報知処理がなされ、不正読取装置の組み付けの検出を示す所定の報知が報知部25によってなされる。この所定の報知では、不正読取装置の組み付けの検出を示すように、LEDが所定の発光色で点滅等することで視覚的に報知されるが、さらに、スピーカによるアナウンスやブザーによる警告音等で聴覚的に報知してもよい。また、不正読取装置の組み付けの検出を示す情報、例えば、「金属体が近くにあるか確認してください」などの文字情報を報知部として機能するタッチパネル23の表示部に画面表示することで視覚的に報知してもよい。
【0038】
上述のような報知を受けた店員等は、筐体11の外面に不正読取装置らしいものが不正に組み付けられていることを認識でき、その不正読取装置らしいものを取り外す等の対策をとることができる。
【0039】
なお、上記報知処理では、報知部25による所定の報知に加えて、不正読取装置の組み付けの検出を示す所定の検出情報を店舗情報や当該決済装置10を特定するための装置情報等とともに外部インタフェース26を介して管理サーバ等に送信するような報知を行ってもよい。これにより、管理サーバ等を管理している管理者等は、どの店舗のどの決済装置10に不正読取装置らしいものが不正に組み付けられていることを認識でき、その択策をとることができる。
【0040】
なお、案内やポップなどの紙の提示物は、測定部33aにて測定される磁界強度Hに影響を及ぼすこともないので、決済装置10の周囲に貼り付け等したとしても、不正読取装置の誤検出がなされることもない。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る決済装置10では、スロット13に案内された磁気カード又は差込口14に差し込まれたICカードから決済情報を読み取るための不正読取装置が筐体11に組み付けられているか否かについて、決済媒体から非接触にて決済情報を読み取る際に磁界強度Hの変化を測定する測定部33aの測定結果に基づいて判定される。そして、不正読取装置が筐体11に組み付けられていると判定されると(S107でYes)、報知部25により所定の報知が行われる(S109)。
【0042】
不正読取装置が筐体11に対して不正に組み付けられている場合には、不正読取装置が筐体11に組み付けられる前と比較して、その不正読取装置に応じて測定される磁界強度Hが変化するため、測定部33aの測定結果に基づいて不正読取装置が筐体11に組み付けられているか否かについて判定でき、その判定結果に応じた所定の報知を行うことができる。特に、非接触決済に利用する非接触通信部33における測定部33aの測定結果を利用するため、異物センサなどの専用装置を別途組み込むことなく、不正読取装置の不正組み付けを検出することができる。さらに、上述したように不正読取装置の不正組み付けを検出するための専用装置を別途組み込む必要がないため、比較的小型の決済装置であっても本発明を適用することができる。
【0043】
特に、測定部33aにより測定される磁界強度Hが所定の閾値Hthを下回る状態が一定時間継続する場合に、不正読取装置が筐体11に組み付けられていると判定される(S107でYes)。このため、例えば、一時的に金属体等が決済装置10に近づけられたために磁界強度Hが所定の閾値Hthを下回ったとしても、その後に金属体等が決済装置10から離されることで磁界強度Hが所定の閾値Hth以上となって上記所定の報知がなされることもないので、不正読取装置の誤検出を防止することができる。
【0044】
さらに、非接触通信部33により決済媒体から非接触にて決済情報が読み取られている状態では、ステップS105の判定処理にてYesと判定されて、ステップS107の判定処理がなされないため、測定部33aの測定結果にかかわらず不正読取装置が筐体11に組み付けられていると判定されない。
【0045】
例えば、非接触決済用の決済媒体、例えば、電子マネー用のカード等が読取面である上面12にかざされる場合には、その決済情報の通信時に磁界強度Hが変化するだけでなく、そのカード等と上面12との距離に応じて測定部33aにて測定される磁界強度Hが変化する場合がある。このため、決済媒体から非接触にて決済情報が読み取られている状態では(S105でYes)、測定部33aの測定結果にかかわらず不正読取装置が筐体11に組み付けられていると判定しないことで、非接触決済用の決済媒体に起因する不正読取装置の誤検出を防止することができる。
【0046】
なお、本発明は上記各実施形態及び変形例等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明は、ICカード読取部31、磁気カード読取部32及び非接触通信部33を備える決済装置10に適用されることに限らず、ICカード読取部31を備えずに磁気カード読取部32及び非接触通信部33を備える決済装置に適用されてもよいし、磁気カード読取部32を備えずにICカード読取部31及び非接触通信部33を備える決済装置に適用されてもよいし、さらに他の決済方式、例えば、QR決済方式等を備える決済装置に適用されてもよい。
【0047】
(2)磁気カード読取部32は、スロット13に案内(スワイプ)された磁気カードの磁気ストライプ(磁気記録部分)から決済情報を読み取るように構成されることに限らず、例えば、案内部として機能する案内口から差し込まれるようにして案内された磁気カードの磁気ストライプから決済情報を読み取るように構成されてもよい。
【0048】
(3)上記報知処理が行われる状態では、磁気カード読取部32及びICカード読取部を決済停止状態にして、非接触通信部33にて読み取られる決済情報を利用した決済処理を実施可能としてもよいし、全ての決済方式について決済停止状態にしてもよい。
【0049】
(4)不正読取装置の1つであるスキミング装置は、スロット13の案内方向一端側13a又は案内方向他端側13bとなる筐体11の位置に組み付けられるため、非接触通信部33にて利用可能な第2のアンテナをスロット13の案内方向一端側13a及び案内方向他端側13bを囲うように配置してもよい。これにより、不正読取装置がスロット13の案内方向一端側13a又は案内方向他端側13bとなる筐体11の位置に不正に組み付けられた場合には、測定部33aにて測定される磁界強度Hがより大きく変化するため、不正読取装置の不正組み付けの検出精度を高めることができる。
【0050】
10…決済装置
11…筐体
12…上面(読取面)
13…スロット(案内部)
13a…案内方向一端側
13b…案内方向他端側
14…差込口(案内部)
21…制御部(決済処理部,判定部)
25…報知部
30…決済情報読取部
31…ICカード読取部(決済カード読取部)
32…磁気カード読取部(決済カード読取部)
33…非接触通信部
33a…測定部
34…アンテナ
C…決済媒体
H…磁界強度
Hth…所定の閾値
S…不正読取装置
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9