(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090861
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】組付治具および組付方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20240627BHJP
B66B 7/08 20060101ALN20240627BHJP
【FI】
B66C13/00 H
B66B7/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207032
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 武優
【テーマコード(参考)】
3F305
【Fターム(参考)】
3F305BC02
3F305DA21
(57)【要約】
【課題】ロープとソケットとを固定する作業のために要するスペースを小さくするとともに作業場所の選択自由度を上げることが可能な組付治具、および組付方法を提供する。
【解決手段】組付治具は、ウェッジに巻き付けたロープをソケットの内部に引き込んで前記ソケットの内部に固定する際に用いられる組付治具であって、枠型の本体部と、第1端と、前記ロープに固定されてかつ前記第1端との距離を縮減可能に構成された第2端と、を有する引張手段を備え、前記本体部は、前記ソケットが固定される第1固定部と、前記第1固定部とは異なる位置に位置して前記引張手段の前記第1端が固定される第2固定部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェッジに巻き付けたロープをソケットの内部に引き込んで前記ソケットの内部に固定する際に用いられる組付治具であって、
枠型の本体部と、
第1端と、前記ロープに固定されてかつ前記第1端との距離を縮減可能に構成された第2端と、を有する引張手段を備え、
前記本体部は、前記ソケットが固定される第1固定部と、前記第1固定部とは異なる位置に位置して前記引張手段の前記第1端が固定される第2固定部と、を有する、
組付治具。
【請求項2】
前記本体部は、第1の短辺および前記第1の短辺に対向する第2の短辺を含む四角形状を有し、
前記第1固定部は、前記第1の短辺に位置し、
前記第2固定部は、前記第2の短辺に位置する、
請求項1に記載の組付治具。
【請求項3】
前記第1固定部は、前記ソケットが有する係合孔に挿入される係合突起を有する支持部を有する、
請求項1または2に記載の組付治具。
【請求項4】
前記第1固定部は、前記ソケットが前記係合突起から脱落するのを規制可能な規制部を有し、
前記係合突起と前記規制部とが対向して前記ソケットが前記係合突起から脱落するのを前記規制部が規制する規制状態と、前記ソケットが前記係合突起から脱落するのを前記規制部が規制しない非規制状態と、を切替可能なように、前記支持部および前記規制部は互いに相対移動可能に構成されている、
請求項3に記載の組付治具。
【請求項5】
前記規制部は、前記支持部に対して回動可能に固定されており、
前記規制部の回動運動によって、前記規制状態と前記非規制状態とが切り替わり、
前記規制状態においては、前記支持部と前記規制部とが前記ソケットを挟持する、
請求項4に記載の組付治具。
【請求項6】
前記引張手段は、滑車と、前記滑車に巻き付けられたチェーンと、前記滑車に対して相対移動せず前記第1端として機能する第1フックと、前記チェーンに固定されて前記第2端として機能する第2フックと、前記滑車を回転させるレバーと、を有するチェーンブロックであり、
前記第2フックが掛着される掛着部を有し、前記ロープに取り付けられる補助具をさらに備える、
請求項1または2に記載の組付治具。
【請求項7】
第1端と、前記第1端との距離を縮減可能に構成された第2端と、を有する引張手段と、第1固定部と、前記第1固定部とは異なる位置に位置して前記引張手段の前記第1端が固定される第2固定部と、を有する枠型の本体部と、を備える組付治具と、を用意する用意工程と、
ソケットの一端からロープを挿通したのち前記ロープの先端を前記ソケットの他端から挿通することで前記ロープの先端部にループ状の環部を形成する挿通工程と、
前記ソケットを前記第1固定部に固定する第1固定工程と、
前記挿通工程で形成された前記環部にウェッジを挿入する挿入工程と、
前記引張手段の前記第1端を前記第2固定部に固定する第2固定工程と、
前記第2端を前記ロープに固定する第3固定工程と、
前記挿通工程、前記第1固定工程、前記挿入工程、前記第2固定工程、および前記第3固定工程よりも後に、前記引張手段によって前記第1端と前記第2端との距離を縮減することで、前記ロープを引っ張り、前記ウェッジに前記ロープを巻き付けながら前記ロープを前記ソケットの内部に引き込んで前記ソケットの内部に固定する引張工程と、を有する、
組付方法。
【請求項8】
前記第1固定部は、前記ソケットが有する係合孔に挿入される係合突起を有する支持部を有し、
前記第1固定工程においては、前記係合突起を前記係合孔に挿入する、
請求項7に記載の組付方法。
【請求項9】
前記第1固定部は、前記ソケットが前記係合突起から脱落するのを規制可能な規制部を有し、
前記係合突起と前記規制部とが対向して前記ソケットが前記係合突起から脱落するのを前記規制部が規制する規制状態と、前記ソケットが前記係合突起から脱落するのを前記規制部が規制しない非規制状態と、を切替可能なように、前記支持部および前記規制部は互いに相対移動可能に構成されており、
前記第1固定工程においては、前記非規制状態において前記係合突起を前記係合孔に挿入した後、前記支持部および前記規制部を相対移動させて前記規制状態に切り替える、
請求項8に記載の組付方法。
【請求項10】
前記規制部は、前記支持部に対して回動可能に固定されており、
前記第1固定工程においては、前記規制部を回動運動させて前記規制状態に切り替え、
前記規制状態において、前記支持部と前記規制部とに前記ソケットを挟持させる、
請求項9に記載の組付方法。
【請求項11】
前記引張手段は、滑車と、前記滑車に巻き付けられたチェーンと、前記滑車に対して相対移動せず前記第1端として機能する第1フックと、前記チェーンに固定されて前記第2端として機能する第2フックと、前記滑車を回転させるレバーと、を有するチェーンブロックであり、
前記組付治具は、前記第2フックが掛着される掛着部を有し、前記ロープに取り付けられる補助具をさらに備え、
前記第2固定工程においては、前記第1フックを前記第2固定部に掛着し、
前記第3固定工程においては、前記第2フックを前記掛着部に掛着し、
前記引張工程においては、前記レバーを操作することで前記第1フックと前記第2フックとの距離を縮減する、
請求項7から10のいずれか一項に記載の組付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組付治具および組付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーンやエレベーター等の吊下物を吊るすために用いられるロープ(ワイヤーロープ)には、ロープと吊下物とを連結するためのソケット(ロープソケット)が取り付けられることが一般的である(例えば、特許文献1を参照)。ロープとソケットとの固定は、ロープをウェッジ(楔)に巻き付け、ウェッジに巻き付けたロープをソケットの内部に引き込むことによって行われる。
【0003】
ここで、硬く太いロープをソケットの内部に引き込む作業には大きな力を要する。このため、当該作業は、複数の作業員がロープを引っ張ったりソケットをハンマーで叩いたりすることで行われる場合があった。しかしながら、このような方法には、作業者の労力や安全性等に関する種々の問題があった。そこで、例えば特許文献1のような組付治具(据付治具)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば特許文献1のような組付治具は、作業台の上に設置された状態で使用される。そのため、ロープとソケットとを固定する作業のために、一定以上の高さの作業台を設置・固定するスペースを常に確保する必要があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされ、ロープとソケットとを固定する作業のために要するスペースを小さくするとともに作業場所の選択自由度を上げることが可能な組付治具、および組付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の態様1に係る組付治具は、ウェッジに巻き付けたロープをソケットの内部に引き込んで前記ソケットの内部に固定する際に用いられる組付治具であって、枠型の本体部と、第1端と、前記ロープに固定されてかつ前記第1端との距離を縮減可能に構成された第2端と、を有する引張手段を備え、前記本体部は、前記ソケットが固定される第1固定部と、前記第1固定部とは異なる位置に位置して前記引張手段の前記第1端が固定される第2固定部と、を有する。
【0008】
本発明の態様1によれば、作業台を用いる組付治具と比較して、ロープとソケットとを固定する作業のために要するスペースを小さくするとともに作業場所の選択自由度を上げることができる。
【0009】
また、本発明の態様2は、態様1の組付治具において、前記本体部は、第1の短辺および前記第1の短辺に対向する第2の短辺を含む四角形状を有し、前記第1固定部は、前記第1の短辺に位置し、前記第2固定部は、前記第2の短辺に位置する。
【0010】
また、本発明の態様3は、態様1または態様2の組付治具において、前記第1固定部は、前記ソケットが有する係合孔に挿入される係合突起を有する支持部を有する。
【0011】
また、本発明の態様4は、態様3の組付治具において、前記第1固定部は、前記ソケットが前記係合突起から脱落するのを規制可能な規制部を有し、前記係合突起と前記規制部とが対向して前記ソケットが前記係合突起から脱落するのを前記規制部が規制する規制状態と、前記ソケットが前記係合突起から脱落するのを前記規制部が規制しない非規制状態と、を切替可能なように、前記支持部および前記規制部は互いに相対移動可能に構成されている。
【0012】
また、本発明の態様5は、態様4の組付治具において、前記規制部は、前記支持部に対して回動可能に固定されており、前記規制部の回動運動によって、前記規制状態と前記非規制状態とが切り替わり、前記規制状態においては、前記支持部と前記規制部とが前記ソケットを挟持する。
【0013】
また、本発明の態様6は、態様1から態様5のいずれか一つの組付治具において、前記引張手段は、滑車と、前記滑車に巻き付けられたチェーンと、前記滑車に対して相対移動せず前記第1端として機能する第1フックと、前記チェーンに固定されて前記第2端として機能する第2フックと、前記滑車を回転させるレバーと、を有するチェーンブロックであり、前記第2フックが掛着される掛着部を有し、前記ロープに取り付けられる補助具をさらに備える。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の態様7に係る組付方法は、第1端と、前記第1端との距離を縮減可能に構成された第2端と、を有する引張手段と、第1固定部と、前記第1固定部とは異なる位置に位置して前記引張手段の前記第1端が固定される第2固定部と、を有する枠型の本体部と、を備える組付治具と、を用意する用意工程と、ソケットの一端からロープを挿通したのち前記ロープの先端を前記ソケットの他端から挿通することで前記ロープの先端部にループ状の環部を形成する挿通工程と、前記ソケットを前記第1固定部に固定する第1固定工程と、前記挿通工程で形成された前記環部にウェッジを挿入する挿入工程と、前記引張手段の前記第1端を前記第2固定部に固定する第2固定工程と、前記第2端を前記ロープに固定する第3固定工程と、前記挿通工程、前記第1固定工程、前記挿入工程、前記第2固定工程、および前記第3固定工程よりも後に、前記引張手段によって前記第1端と前記第2端との距離を縮減することで、前記ロープを引っ張り、前記ウェッジに前記ロープを巻き付けながら前記ロープを前記ソケットの内部に引き込んで前記ソケットの内部に固定する引張工程と、を有する。
【0015】
本発明の態様7によれば、作業台を用いる組付方法と比較して、ロープとソケットとを固定する作業のために要するスペースを小さくするとともに作業場所の選択自由度を上げることができる。
【0016】
また、本発明の態様8は、態様7の組付方法において、前記第1固定部は、前記ソケットが有する係合孔に挿入される係合突起を有する支持部を有し、前記第1固定工程においては、前記係合突起を前記係合孔に挿入する。
【0017】
また、本発明の態様9は、態様8の組付方法において、前記第1固定部は、前記ソケットが前記係合突起から脱落するのを規制可能な規制部を有し、前記係合突起と前記規制部とが対向して前記ソケットが前記係合突起から脱落するのを前記規制部が規制する規制状態と、前記ソケットが前記係合突起から脱落するのを前記規制部が規制しない非規制状態と、を切替可能なように、前記支持部および前記規制部は互いに相対移動可能に構成されており、前記第1固定工程においては、前記非規制状態において前記係合突起を前記係合孔に挿入した後、前記支持部および前記規制部を相対移動させて前記規制状態に切り替える。
【0018】
また、本発明の態様10は、態様9の組付方法において、前記規制部は、前記支持部に対して回動可能に固定されており、前記第1固定工程においては、前記規制部を回動運動させて前記規制状態に切り替え、前記規制状態において、前記支持部と前記規制部とに前記ソケットを挟持させる。
【0019】
また、本発明の態様11は、態様7から態様10のいずれか一つの組付方法において、前記引張手段は、滑車と、前記滑車に巻き付けられたチェーンと、前記滑車に対して相対移動せず前記第1端として機能する第1フックと、前記チェーンに固定されて前記第2端として機能する第2フックと、前記滑車を回転させるレバーと、を有するチェーンブロックであり、前記組付治具は、前記第2フックが掛着される掛着部を有し、前記ロープに取り付けられる補助具をさらに備え、前記第2固定工程においては、前記第1フックを前記第2固定部に掛着し、前記第3固定工程においては、前記第2フックを前記掛着部に掛着し、前記引張工程においては、前記レバーを操作することで前記第1フックと前記第2フックとの距離を縮減する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記態様によれば、ロープとソケットとを固定する作業のために要するスペースを小さくするとともに作業場所の選択自由度を上げることが可能な組付治具、および組付方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る組付治具を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るロープ、ソケットおよびウェッジを拡大して示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る第1固定部を拡大して示す図である。
【
図4A】本発明の実施形態に係る補助具の一部を示す斜視図である。
【
図4B】本発明の実施形態に係る補助具の一部を示す斜視図である。
【
図5A】本発明の実施形態に係る組付方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(組付治具)
以下、本発明の実施形態に係る組付治具について図面に基づいて説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る組付治具1は、本体部10と、引張手段20と、補助具30と、を備える。本実施形態に係る組付治具1は、ロープ2の一端にソケット3を固定する際に用いられる。ロープ2は、例えばクレーンやエレベーター等の吊下物を吊るすために用いられるワイヤーロープである。
【0024】
ソケット3は、ロープ2と吊下物とを連結するための部材である。
図2に示すように、ソケット3は、ソケット3と吊下物とを連結するためのピン(不図示)が挿通される係合孔3aを有する。また、ソケット3は、ソケット3を貫通する内部孔3bを有する。内部孔3bは、小径端3b1と、小径端3b1とは反対側に位置する大径端3b2と、を有する。内部孔3bは、小径端3b1から大径端3b2に向かうにしたがって漸次内径が広がった形状を有する。
【0025】
図2に示すように、ロープ2は、ウェッジ4に巻き付けられた状態でソケット3の内部に固定される。具体的には、ロープ2の先端部においてロープ2はループ状の環部Rを構成しており、環部Rの内側にウェッジ4が配置される。そして、ウェッジ4が環部Rの内側からソケット3に向けてロープ2を圧迫することにより、ロープ2とソケット3との間には強い摩擦力が生じる。この摩擦力により、ロープ2とソケット3とが固定される。なお、環部Rの近傍には、ロープ2がソケット3から脱落することを防止するために把持部31が設けられている。把持部31の詳細な構造については後述する。
【0026】
図1に示すように、本体部10は、枠状の形状を有する。言い換えれば、本体部10は、平面視において環状の形状を有する。より具体的に、本実施形態に係る本体部10は、第1の短辺S1と、第1の短辺S1に対向する第2の短辺S2と、短辺S1、S2の両端部同士を結ぶ一対の長辺Lと、を有する長方形状を有する。本体部10は、第1の短辺S1を構成する第1固定部11と、第2の短辺S2を構成する第2固定部12と、一対の長辺Lを構成する一対の延在部13と、を有する。
【0027】
<方向定義>
ここで、本実施形態では、XYZ直交座標系を設定して各構成の位置関係を説明する。X軸方向は、本体部10の長辺Lが延在する方向である。Y軸方向は、本体部10の短辺S1、S2が延在する方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向の双方に直交する方向である。本明細書では、X軸方向を第1方向Xと称し、Y軸方向を第2方向Yと称し、Z軸方向を第3方向Zと称する場合がある。第3方向Zから見ることを、「平面視」という。
【0028】
第1固定部11には、ソケット3が固定される。
図1および
図3に示すように、本実施形態に係る第1固定部11は、支持部11aおよび規制部11bを有する。支持部11aおよび規制部11bの間には、第3方向Zにおける隙間が設けられている。ソケット3は、当該隙間に配置される。支持部11aは、ソケット3が有する係合孔3aに挿入される係合突起14を有する。係合突起14は、支持部11aの平面視における中央部から、規制部11bに向けて第3方向Zに突出している。
【0029】
ここで、支持部11aおよび規制部11bは、
図1に示す規制状態と、
図3に示す非規制状態と、を切替可能なように、互いに相対移動可能に構成されている。「規制状態」は、係合突起14と規制部11bとが第3方向Zに対向して、ソケット3が係合突起14から脱落するのを規制部11bが規制する状態である。「非規制状態」は、係合突起14と規制部11bとが第3方向Zに対向せず、ソケット3が係合突起14から脱落するのを規制部11bが規制しない状態である。言い換えれば、「非規制状態」は、ソケット3の係合孔3aに係合突起14を挿入したり、係合突起14からソケット3を取り外したりするのを許容する状態である。
【0030】
より具体的に、本実施形態に係る支持部11aは回動軸部15を有し、規制部11bは回動軸部15を介して支持部11aに固定されている。これにより、規制部11bは、支持部11aに対して回動可能に固定されている。そして、規制部11bの回動運動によって、規制状態と非規制状態とが切り替わる。本実施形態において、回動軸部15は、第1固定部11の第2方向Yにおける端部に位置する。また、規制部11bは、第3方向Zに延びる回転軸まわりに回動運動する。
【0031】
また、本実施形態に係る第1固定部11は、押圧手段16を有する。押圧手段16は、第1固定部11の第2方向Yにおける両端部のうち回動軸部15が設けられた端部とは反対側の端部に設けられている。押圧手段16は、規制部11bを第3方向Zに押圧する。規制部11bが押圧手段16によって押圧されることにより、規制部11bと支持部11aとが、ソケット3を第3方向Zにおいて挟持する。押圧手段16は、例えば第3方向Zに沿って第1固定部11に螺入されたボルトである。本実施形態に係る押圧手段16は、規制部11bを規制状態に固定する役割も有する。
【0032】
図1に示すように、引張手段20は、第1端21および第2端22を有する。第1端21は、本体部10の第2固定部12に固定される。第2端22は、後述する補助具30を介して、ロープ2に固定される。また、第2端22は、第1端21との距離を縮減可能に構成されている。このような第1端21および第2端22を有すれば引張手段20の種類は特に限定されないが、本実施形態においては、引張手段20としていわゆるチェーンブロックが採用されている。
【0033】
チェーンブロックである引張手段20は、第1フック21と、第2フック22と、筐体23と、チェーン24と、レバー25と、を有する。第1フック21は、前述した第1端21として機能するフックである。第2フック22は、前述した第2端22として機能するフックである。筐体23は、筐体23に固定された不図示の滑車を収容している。チェーン24は、当該滑車に巻き付けられている。レバー25は、チェーン24が巻き付けられた滑車と連結されており、当該滑車を回転させる。
【0034】
ここで、第1フック21は、筐体23に固定されており、滑車に対して相対移動しない。第2フック22は、チェーン24の一端に設けられている。したがって、作業者がレバー25を操作すると、第2フック22はチェーン24とともに動き、第1フック21が固定された筐体23に近接する。これにより、第1フック21と第2フック22との間の距離が縮減する。
【0035】
図1に示すように、補助具30は、ロープ2に取り付けて用いられる。本実施形態に係る補助具30は、把持部31および板部32を有する。把持部31は、ロープ2を把持する役割を有する。板部32は、把持部31に取り付けられ、引張手段20の第2フック22が掛着される。
図4Aに示すように、本実施形態に係る把持部31は、基部31aと、可動部31bと、一対のボルト31cと、を有する。
【0036】
可動部31bは、U字状の形状を有する。具体的に、可動部31bは、互いに平行に延びる一対の直棒部31b1と、一対の直棒部31b1の端部同士を接続する湾曲部31b2と、を含む。可動部31bの内側には、ロープ2が挿通される。基部31aには、内部にロープ2が配置される一対のガイド溝31dが設けられている。
【0037】
各直棒部31b1には、ねじ溝31fが形成されている。基部31aには、一対の直棒部31b1が挿通される一対の挿通孔31eが形成されている。各ボルト31cは、直棒部31b1が挿通孔31eに挿通された状態で、ねじ溝31fに螺着される。ボルト31cをねじ溝31fまわりに回転させることにより、可動部31bは、基部31aに対して、直棒部31b1が延びる方向に相対移動する。これにより、湾曲部31b2と基部31aとの間の距離dが変化する。ボルト31cを回転させて距離dを縮減させることにより、基部31aと可動部31bとが、ロープ2を把持する。
【0038】
図1に示すように、板部32は、基部31aとボルト31cとの間に挟まれて用いられる。
図4Bに示すように、板部32には、一対の直棒部31b1が挿通される一対の貫通孔32aが形成されている。また、板部32には、引張手段20の第2フック22が掛着される掛着部32bが設けられている。本実施形態に係る掛着部32bは、くの字状に折れ曲がった板状の形状を有する。
【0039】
(組付方法)
次に、
図5A~
図5Eを参照しながら、以上のように構成された組付治具1を用いてロープ2とソケット3とを固定する方法(組付方法)の一例について説明する。本実施形態に係る組付方法は、用意工程と、挿通工程と、第1固定工程と、挿入工程と、第2固定工程と、第3固定工程と、引張工程と、を有する。
【0040】
まず、用意工程が行われる。用意工程においては、上述した組付治具1を用意する。
【0041】
次に、挿通工程が行われる。挿通工程においては、
図5Aに示すように、ソケット3の一端(小径端3b1)からロープ2を内部孔3bに挿通し、ロープ2の先端をソケット3の他端(大径端3b2)から内部孔3bに挿通する。これにより、ロープ2の先端部にループ状の環部Rを形成する。必要に応じて、ロープ2の先端に把持部31を取り付けてもよい(
図5B参照)。これにより、挿通工程後にロープ2がソケット3から脱落するのを防止することができる。
【0042】
次に、第1固定工程が行われる。第1固定工程においては、まず、
図5Bおよび
図5Cに示すように、係合突起14を係合孔3aに挿入する。これにより、ソケット3が、第1固定部11の支持部11aに対して、第1方向Xおよび第2方向Yにおいて位置決めされる。このとき、第1固定部11は非規制状態にある。
【0043】
そして、
図5Cおよび
図5Dに示すように、規制部11bを回動運動させることで、第1固定部11の状態を規制状態に切り替える。これにより、ソケット3が本体部10から脱落することが防止される。このとき、必要に応じて押圧手段16を操作し、支持部11aと規制部11bとにソケット3を挟持させてもよい。この場合、ソケット3が第1固定部11に固定され、以降の作業をより容易に行いやすくなる。
【0044】
第1固定工程の途中において、挿入工程が行われる。挿入工程においては、
図5Cおよび
図5Dに示すように、環部Rにウェッジ4を挿入する。挿入工程は、第1固定部11が非規制状態にある状態において行われることが好ましい。第1固定部11が規制状態にある場合、規制部11bの存在によって環部Rにウェッジ4を挿入する作業が困難になるからである。
【0045】
次に、第2固定工程が行われる。第2固定工程においては、
図5Eに示すように、引張手段20の第1フック21を本体部10の第2固定部12に固定する。より具体的には、第1フック21を第2固定部12に掛着する。
【0046】
次に、第3固定工程が行われる。第3固定工程においては、
図5Eに示すように、引張手段20の第2フック22をロープ2に固定する。より具体的には、ロープ2に補助具30を取り付け、補助具30の掛着部32bに第2フック22を掛着させる。
【0047】
次に、引張工程が行われる。引張工程においては、引張手段20によって第1フック21と第2フック22との距離を縮減し、ロープ2を第1方向Xに引っ張る。より具体的には、レバー25を操作することで、第1フック21と第2フック22との距離を縮減する。これにより、ウェッジ4にロープ2を巻き付けながら、ロープ2をソケット3の内部に引き込むことができる。そして、ロープ2を十分引っ張ることで、ロープ2とソケット3との間に働く摩擦力により、ロープ2がソケット3の内部に固定される(
図1参照)。
【0048】
最後に、ロープ2および本体部10から引張手段20を取り外し、第1固定部11を非規制状態に切り替えて本体部10からソケット3を取り外す。必要に応じて、
図2に示すように、ロープ2に対して再度把持部31を取り付けてもよい。より具体的には、環部Rにおいて折り返されたロープ2の先端部と、ロープ2の先端部以外の部分とを、把持部31によって一括で把持させてもよい。これにより、環部Rの緩みを防止することができる。
【0049】
なお、挿通工程、第1固定工程、挿入工程、第2固定工程および第3固定工程が行われる順番は上記の例に限られず、適宜入れ替えてもよい。また、2つ以上の工程を同時に行ってもよい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る組付治具1は、ウェッジ4に巻き付けたロープ2をソケット3の内部に引き込んでソケット3の内部に固定する際に用いられる組付治具であって、枠型の本体部10と、第1端21と、ロープ2に固定されてかつ第1端21との距離を縮減可能に構成された第2端22と、を有する引張手段20を備え、本体部10は、ソケット3が固定される第1固定部11と、第1固定部11とは異なる位置に位置して引張手段20の第1端21が固定される第2固定部12と、を有する。また、本実施形態に係る組付方法は、上記した組付治具1を用意する用意工程と、ソケット3の一端からロープ2を挿通したのちロープ2の先端をソケット3の他端から挿通することでロープ2の先端部にループ状の環部Rを形成する挿通工程と、ソケット3を第1固定部11に固定する第1固定工程と、挿通工程で形成された環部Rにウェッジ4を挿入する挿入工程と、引張手段20の第1端21を第2固定部12に固定する第2固定工程と、第2端22をロープ2に固定する第3固定工程と、挿通工程、第1固定工程、挿入工程、第2固定工程、および第3固定工程よりも後に、引張手段20によって第1端21と第2端22との距離を縮減することで、ロープ2を引っ張り、ウェッジ4にロープ2を巻き付けながらロープ2をソケット3の内部引き込んで固定する引張工程と、を有する。
【0051】
この構成により、例えば作業者が引張手段20を用いずにロープ2をソケット3の内部に引き込む場合と比較して、ロープ2とソケット3との固定をより容易に行うことができる。また、作業者がハンマーでソケット3を叩く構成と比較して、作業者の安全を保ちやすく、ソケット3の変形も生じにくい。また、例えば特許文献1のように作業台を用いる組付治具および組付方法と比較して、ロープ2とソケット3とを固定する作業のために要するスペースを小さくすることができる。また、組付治具1の携帯性や収納性も高めることができる。すなわち、組付作業を実施していない状態では組付治具1を縦置き収納などすることができ、また、工場等の屋内だけでなく工事現場等の屋外でも組付作業を実施可能である。
【0052】
また、本体部10は、四角形状を有する。この構成により、本体部10の構造を単純にすることができる。
【0053】
また、本体部10は、第1固定部11は、第1の短辺S1に位置し、第2固定部12は、第2の短辺S2に位置する。この構成により、例えば第1固定部11および第2固定部12が長辺Lに位置する場合と比較して、引張手段20を用いてロープ2を引っ張った際における本体部10の変形を抑制することができる。
【0054】
また、第1固定部11は、ソケット3が有する係合孔3aに挿入される係合突起14を有する支持部11aを有する。そして、第1固定工程においては、係合突起14を係合孔3aに挿入する。この構成により、第1固定部11とソケット3との位置決めが容易になる。なお、ソケット3の係合孔3aは平面視楕円形状や円形状が主であるため、係合孔3aに係合する係合突起14は円柱形状であることが望ましい。
【0055】
一般に、ソケットの長さや幅、あるいはロープの径は、ソケットの型(例えば、O型やC型等)や、船用や航空機用の規格(JIS規格)ごとに相異なる。例えば特許文献1のような組付治具においては、ソケットやロープの形状が相異なる種々の型や規格に対応することが困難であった。
【0056】
これに対して本実施形態に係る組付治具1においては、係合突起14の平面視の大きさが係合孔3aと必ずしも同じである必要はない。具体的に、係合突起14は係合孔3aより小さくてもよい。この場合でも、係合突起14を係合孔3aに挿入し、ソケット3をロープ2に問題なく組付けできるためである。すなわち、本実施形態に係る組付治具1によれば、係合孔3aの大きさが相異なる種々の型や規格のソケット3に対応することが可能である。つまり、本実施形態に係る組付治具1によれば、組付けが可能なロープやソケットの規格(大きさ)の自由度を高めることができる。
【0057】
また、第1固定部11は、ソケット3が係合突起14から脱落するのを規制可能な規制部11bを有し、係合突起14と規制部11bとが対向してソケット3が係合突起14から脱落するのを規制部11bが規制する規制状態と、ソケット3が係合突起14から脱落するのを規制部11bが規制しない非規制状態と、を切替可能なように、支持部11aおよび規制部11bは互いに相対移動可能に構成されている。そして、第1固定工程においては、非規制状態において係合突起14を係合孔3aに挿入した後、支持部11aおよび規制部11bを相対移動させて規制状態に切り替える。この構成により、一旦第1固定部11に固定したソケット3が第1固定部11から脱落することを規制部11bによって防止することができる。また、規制状態と非規制状態とを切り替えることによって、係合孔3aに係合突起14を挿入する作業や環部Rにウェッジ4を挿入する作業を行いやすくなる。
【0058】
また、規制部11bは、支持部11aに対して回動可能に固定されており、規制部11bの回動運動によって、規制状態と非規制状態とが切り替わる。そして、第1固定工程においては、規制部11bを回動運動させて規制状態に切り替える。この構成により、規制状態と非規制状態との切り替えを容易に行うことができる。
【0059】
また、規制状態においては、支持部11aと規制部11bとがソケット3を挟持する。この構成により、第1固定部11に対するソケット3の相対移動が抑制され、作業性が向上する。
【0060】
また、引張手段20は、滑車と、滑車に巻き付けられたチェーン24と、滑車に対して相対移動せず第1端21として機能する第1フック21と、チェーン24に固定されて第2端22として機能する第2フック22と、滑車を回転させるレバー25と、を有するチェーンブロックであり、本実施形態に係る組付治具1は、第2フック22が掛着される掛着部32bを有し、ロープ2に取り付けられる補助具30をさらに備える。そして、第2固定工程においては、第1フック21を第2固定部12に掛着し、第3固定工程においては、第2フック22を掛着部32bに掛着し、引張工程においては、レバー25を操作することで第1フック21と第2フック22との距離を縮減する。この構成により、本実施形態に係る引張手段20としてチェーンブロックを好適に用いることができる。
【0061】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0062】
例えば、第2フック22が掛着される掛着部32bを有し、かつ、ロープ2に取り付け可能であれば、補助具30の構成は適宜変更可能である。また、引張手段20の構成によっては、組付治具1は補助具30を備えていなくてもよい。
【0063】
また、規制状態において規制部11bと支持部11aとがソケット3を挟持しなくてもよい。言い換えれば、ソケット3と支持部11aおよび規制部11bとの間に第3方向Zにおける隙間が空いていてもよい。
【0064】
また、規制部11bが行う回動運動の向きは
図3の例に限られず、適宜変更可能である。また、規制状態と非規制状態とを切替可能であれば、支持部11aと規制部11bとが行う相対移動は回動運動でなくてもよい。例えば、支持部11aに対して規制部11bがスライド運動するように構成されていてもよい。
【0065】
また、第1固定部11の構成は前記実施形態の例に限られず、ソケット3を固定可能であれば適宜変更可能である。例えば、ソケット3は第1固定部11に対してねじ止めされてもよい。このような場合、第1固定部11は支持部11aと規制部11bとに分かれていなくてもよい。
【0066】
また、固定部11、12は本体部10の長辺Lに位置していてもよい。また、本体部10の形状は長方形でなくてもよいし、四角形でなくてもよい。この場合においても、本体部10が互いに異なる位置に設けられた固定部11、12を有することで、第1端21および第2端22を有する引張手段20を用いて、ロープ2にソケット3を固定することができる。
【0067】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…組付治具 10…本体部 11…第1固定部 11a…支持部 11b…規制部 12…第2固定部 14…係合突起 20…引張手段 21…第1フック(第1端) 22…第2フック(第2端) 24…チェーン 25…レバー 30…補助具 32b…掛着部