(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090862
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂組成物及びその製造方法、インフレーションフィルム及びその製造方法、並びに袋体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/12 20060101AFI20240627BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20240627BHJP
C08F 10/06 20060101ALI20240627BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240627BHJP
C08F 255/02 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L23/08
C08F10/06
C08J5/18 CES
C08F255/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207035
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】597021842
【氏名又は名称】サンアロマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】中島 武
(72)【発明者】
【氏名】川原田 博
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA15X
4F071AA20X
4F071AA88
4F071AC09
4F071AE05
4F071AF15
4F071AF20
4F071AF21
4F071AF23
4F071AF59
4F071AH04
4F071BA01
4F071BB09
4F071BC01
4F071BC12
4J002BB022
4J002BB052
4J002BB121
4J002GG02
4J026AA13
4J026BA02
4J026BA03
4J026DB02
4J026DB09
4J026DB25
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100DA01
4J100DA04
4J100FA08
4J100FA09
4J100FA35
4J100JA58
(57)【要約】
【課題】耐衝撃性及び自立性を備えた重袋の用途に適した厚さのフィルムをインフレーション成形によって製造することが可能なポリプロピレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】プロピレン重合体(a1)からなる連続相と、エチレンと炭素数3~10のαオレフィンとの共重合体(a2)からなるゴム相とを含むポリプロピレン系樹脂(A)を含有し、インフレーションフィルムを形成する用途で用いられる、ポリプロピレン系樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン重合体(a1)からなる連続相と、エチレンと炭素数3~10のαオレフィンとの共重合体(a2)からなるゴム相とを含むポリプロピレン系樹脂(A)を含有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、
前記ポリプロピレン系樹脂(A)の含有割合が、前記ポリプロピレン系樹脂組成物の総質量に対して75質量%以上100質量%以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂組成物の温度230℃、荷重2.16kgでのMFRが0.1~5.0g/10分であり、
前記プロピレン重合体(a1)中のエチレン由来単位含有量が、前記プロピレン重合体(a1)の総質量に対して0.5質量%以下であり、
前記共重合体(a2)の含有量が、前記ポリプロピレン系樹脂(A)の総質量に対して28~45質量%であり、
前記共重合体(a2)中のエチレン由来単位含有量が、前記共重合体(a2)の総質量に対して22~40質量%であり、
前記ポリプロピレン系樹脂(A)のキシレン可溶分の、135℃のテトラヒドロナフタレン中での極限粘度が1.8~3.2dl/gであり、
前記ポリプロピレン系樹脂(A)の温度230℃、荷重2.16kgでのMFRが0.1~5.0g/10分であり、
厚さ40μm以上のインフレーションフィルムを形成する用途で用いられる、ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記プロピレン重合体(a1)と、前記共重合体(a2)とは重合によって混合され、前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、下記(ア)~(ウ)の成分を含む触媒を用いて製造された重合混合物である、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
(ア)マグネシウム、チタン、ハロゲン、及び電子供与体化合物としてのフタレート系化合物を含有する固体触媒
(イ)有機アルミニウム化合物
(ウ)外部電子供与体化合物である有機ケイ素化合物
【請求項3】
厚さが40μm以上であり、請求項1又は請求項2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物によって形成された、インフレーションフィルム。
【請求項4】
請求項3に記載のインフレーションフィルムが袋を形成してなる、袋体。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物をインフレーション成形し、厚さが40μm以上のインフレーションフィルムを得る工程を含む、インフレーションフィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を製造する第一工程と、
前記第一工程で得たポリプロピレン系樹脂組成物をインフレーション成形し、厚さが40μm以上のインフレーションフィルムを得る第二工程と、を有する、インフレーションフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記第一工程において、下記(ア)~(ウ)の成分を含む触媒を用いて、前記プロピレン重合体(a1)の存在下で、エチレン単量体及び炭素数3~10のαオレフィン単量体を重合して前記ポリプロピレン系樹脂(A)を得ることを含む、請求項6に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
(ア)マグネシウム、チタン、ハロゲン、及び電子供与体化合物としてのフタレート系化合物を必須成分として含有する固体触媒
(イ)有機アルミニウム化合物
(ウ)外部電子供与体化合物である有機ケイ素化合物
【請求項8】
請求項3に記載のインフレーションフィルムの少なくとも一部をヒートシールして袋体を得る工程を有する、袋体の製造方法。
【請求項9】
請求項5に記載の製造方法によってインフレーションフィルムを得る工程と、
前記インフレーションフィルムの少なくとも一部をヒートシールして袋体を得る工程と、を有する、袋体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物及びその製造方法、インフレーションフィルム及びその製造方法、並びに袋体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、耐衝撃性、剛性、透明性、耐薬品性、耐熱性等の物性に優れることから、その用途は多様である。用途の一つとして穀物、種々の粉体や顆粒体等の重量物を包装する重袋が挙げられる。重袋には耐衝撃性が高いことや自立性が求められる。自立可能な重袋であると垂直に起立させて包装物を充填することができる。
【0003】
一般に空冷インフレーション法はブロー比の調整でフィルム幅を容易に変更することができる。重袋の製造において空冷インフレーション法は多用され、その成形が容易であることから、従来の重袋はポリエチレンを主材料としたものが多い。
ところが近年、環境負荷を低減する目的で重袋を構成するフィルムを薄肉化し、ダウンゲージする要求が急速に高まっている。従来のポリエチレンを主材料とする場合、フィルムを薄くするとフィルムの腰が弱くなり、重袋の自立性が損なわれてしまう問題がある。
【0004】
一方、ポリプロピレンを重袋の主材料とした場合、インフレーション成形は必ずしも容易ではない。ポリプロピレン樹脂組成物を溶融し、環状ダイを通して筒状の溶融樹脂膜(いわゆるバブル)を形成し、冷却してフィルムにする過程において、バブル揺れが発生し、成形が不安定になる問題が生じやすい。
この問題に対して、例えば特許文献1には、分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)と、好ましくはプロピレン・α-オレフィン共重合体であるプロピレン系樹脂(Y)とを物理的に混合した、インフレーションフィルム成形用ポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。これによれば、バブル揺れが改善され、成形性が優れるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の発明では、インフレーションフィルムを重袋として使用するために必要な耐衝撃性と自立性が考慮されていない。
【0007】
本発明は、耐衝撃性及び自立性を備えた重袋の用途に適した厚さのフィルムをインフレーション成形によって製造することが可能なポリプロピレン系樹脂組成物を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] プロピレン重合体(a1)からなる連続相と、エチレンと炭素数3~10のαオレフィンとの共重合体(a2)からなるゴム相とを含むポリプロピレン系樹脂(A)を含有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、
前記ポリプロピレン系樹脂(A)の含有割合が、前記ポリプロピレン系樹脂組成物の総質量に対して75質量%以上100質量%以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂組成物の温度230℃、荷重2.16kgでのMFRが0.1~5.0g/10分であり、
前記プロピレン重合体(a1)中のエチレン由来単位含有量が、前記プロピレン重合体(a1)の総質量に対して0.5質量%以下であり、
前記共重合体(a2)の含有量が、前記ポリプロピレン系樹脂(A)の総質量に対して28~45質量%であり、
前記共重合体(a2)中のエチレン由来単位含有量が、前記共重合体(a2)の総質量に対して22~40質量%であり、
前記ポリプロピレン系樹脂(A)のキシレン可溶分の、135℃のテトラヒドロナフタレン中での極限粘度が1.8~3.2dl/gであり、
前記ポリプロピレン系樹脂(A)の温度230℃、荷重2.16kgでのMFRが0.1~5.0g/10分であり、
厚さ40μm以上のインフレーションフィルムを形成する用途で用いられる、ポリプロピレン系樹脂組成物。
[2] 前記プロピレン重合体(a1)と、前記共重合体(a2)とは重合によって混合され、前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、下記(ア)~(ウ)の成分を含む触媒を用いて製造された重合混合物である、[1]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
(ア)マグネシウム、チタン、ハロゲン、及び電子供与体化合物としてのフタレート系化合物を含有する固体触媒
(イ)有機アルミニウム化合物
(ウ)外部電子供与体化合物である有機ケイ素化合物
[3] 厚さが40μm以上であり、[1]又は[2]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物によって形成された、インフレーションフィルム。
[4] [3]に記載のインフレーションフィルムが袋を形成してなる、袋体。
[5] [1]又は[2]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物をインフレーション成形し、厚さが40μm以上のインフレーションフィルムを得る工程を含む、インフレーションフィルムの製造方法。
[6] [1]又は[2]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を製造する第一工程と、
前記第一工程で得たポリプロピレン系樹脂組成物をインフレーション成形し、厚さが40μm以上のインフレーションフィルムを得る第二工程と、を有する、インフレーションフィルムの製造方法。
[7] 前記第一工程において、下記(ア)~(ウ)の成分を含む触媒を用いて、前記プロピレン重合体(a1)の存在下で、エチレン単量体及び炭素数3~10のαオレフィン単量体を重合して前記ポリプロピレン系樹脂(A)を得ることを含む、[6]に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
(ア)マグネシウム、チタン、ハロゲン、及び電子供与体化合物としてのフタレート系化合物を必須成分として含有する固体触媒
(イ)有機アルミニウム化合物
(ウ)外部電子供与体化合物である有機ケイ素化合物
[8] [3]に記載のインフレーションフィルムの少なくとも一部をヒートシールして袋体を得る工程を有する、袋体の製造方法。
[9] [5]に記載の製造方法によってインフレーションフィルムを得る工程と、
前記インフレーションフィルムの少なくとも一部をヒートシールして袋体を得る工程と、を有する、袋体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を使用すれば、耐衝撃性及び自立性を備えた重袋の用途に適したインフレーションフィルムを製造することができる。
また、重袋の用途以外にも、例えば、雑貨、日用品、家電部品、電機電子部品、自動車部品、筐体部材、玩具部材、家具部材、建材部材、包装部材、工業資材、物流資材、農業資材等の用途に使用してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪ポリプロピレン系樹脂組成物≫
本発明の第一態様は、プロピレン重合体(以下、成分(a1)ともいう)からなる連続相と、エチレンと炭素数3~10のαオレフィンとの共重合体(以下、成分(a2)ともいう)からなるゴム相とを含むポリプロピレン系樹脂(A)(以下、成分(A)ともいう)を含有する、ポリプロピレン系樹脂組成物である。
本態様のポリプロピレン系樹脂組成物は、さらに、任意成分として、エチレンと炭素数3~10のαオレフィンとの共重合体であるエチレン・αオレフィン共重合体(B)(以下、成分(B)ともいう)を含有してもよいし、含有しなくてもよい。
【0011】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)の含有割合は、前記ポリプロピレン系樹脂組成物の総質量に対して75質量%以上100質量%以下であり、下限値として80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
前記範囲の下限値以上であれば、本発明の上述の効果が充分に得られる。
前記範囲の上限値未満であれば、成分(B)や他の成分を含有する余地が得られる。
【0012】
前記エチレン・αオレフィン共重合体(B)の含有割合は、成分(A)及び成分(B)の総質量に対して0~25質量%であり、上限値として25質量%未満が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下が特に好ましく、5質量%以下が最も好ましい。
前記範囲の下限値である0質量%を超えると、インフレーションフィルムの耐衝撃性が高まる。ただし、生産性を高める観点、インフレーションフィルムの外観不良(フィッシュアイ、ブツ)を低減する観点から、0質量%である方が好ましい。
前記範囲の上限値である25質量%以下であると、インフレーションフィルムの引張弾性率等の引張特性が高まり、薄肉化したときにも自立性を有する重袋が得られる。
【0013】
ポリプロピレン系樹脂組成物の温度230℃、荷重2.16kgでのMFRは、0.1~5.0g/10分であり、0.3~4.0g/10分が好ましく、0.4~3.5g/10分がより好ましく、0.5~3.0g/10分がさらに好ましい。ここで、前記MFRは後述する測定方法で測定された値である。
前記範囲の下限値以上であると、フィルム成形機での樹脂圧力の上昇による生産性の低下が抑えられ、インフレーション成形が容易になる。また、フィルム表面の平滑度が低下してフィルムの品質が低下する等の不具合が生じ難くなる。
前記範囲の上限値以下であると、インフレーションフィルムの破断強度等の引張特性や耐衝撃性が高まる。
【0014】
[ポリプロピレン系樹脂(A)]
本態様のポリプロピレン系樹脂組成物に含有されるポリプロピレン系樹脂(A)は、JIS K6921-1で規定される耐衝撃性ポリプロピレンポリマーの一態様であり、プロピレン重合体(成分(a1))の連続相と、その連続相の中に分散相として存在するエチレン・αオレフィン共重合体(成分(a2))のゴム相を含む二つ以上の相で構成される。
ポリプロピレン系樹脂(A)は、成分(a1)と成分(a2)とが重合時に混合された混合樹脂であってもよいし、別々に得られた成分(a1)と成分(a2)とが、溶融混練によって混合された混合樹脂であってもよい。耐衝撃性と引張特性とのバランス(以下「機械物性バランス」ともいう。)に優れるものがより安価で得られることから、成分(a1)と成分(a2)とが重合時に混合されたもの(重合混合物)であることが好ましい。
重合混合物では、成分(a1)と成分(a2)とがサブミクロンオーダーで混じり合うことが可能であるため、重合混合物をベースとしたポリプロピレン系樹脂組成物は、優れた機械物性バランスを示す。
一方、別々に得られた成分(a1)と成分(a2)とを溶融混練して得た単なる機械混合物で同様な均一混合を実現して優れた機械物性バランスを得る場合には、貯蔵・保管・移送・計量・混合・溶融混練等の別工程を経る必要性から製造コストが高くなる。エネルギーコストの観点からも好ましくない。
なお、前記重合混合物と機械混合物とが異なる物性を示す場合があるのは、成分(a1)中の成分(a2)の分散状態が異なっているためと推測されるが、成分(a2)の成分(a1)との界面の状態を含めた分子レベルでの分散状態を分析する現実的手段は現状知られていない。ポリプロピレン系樹脂(A)の製造方法については後で詳しく説明する。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂(A)のキシレン可溶分の極限粘度(以下、「XSIV」ともいう。)は1.8~3.2dl/gであり、1.9~3.1dl/gが好ましく、2.0~3.0dl/gがより好ましく、2.2~3.0dl/gがさらに好ましい。ここで、XSIVは、後述する方法で測定された値である。
前記範囲の下限値以上であると、インフレーションフィルムのシール強度が高まり、重体としての用途において特に有利である。
前記範囲の上限値以下であると、インフレーションフィルムに発生するフィッシュアイ(FE)を低減し、外観不良(ブツの表出)を抑制できる。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂(A)を構成するプロピレン重合体(成分(a1))の分子量分布の指標である重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率(Mw/Mn)は、8未満であることが好ましい。8未満であると、インフレーションフィルムの耐衝撃性と引張特性が高まる。上記比率の下限値は特に制限されず、目安として例えば3以上が挙げられる。
ここで、プロピレン重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、後述する方法で測定された値である。
【0017】
ポリプロピレン系樹脂(A)を構成するプロピレン重合体(成分(a1))中のエチレン由来単位含有量(以下、「C2-a1」ともいう。)は、前記プロピレン重合体の総質量に対して0.5質量%以下であり、0.3質量%以下が好ましい。
C2-a1が前記上限値以下であると、インフレーションフィルムの剛性や引張弾性率が高まる。C2-a1の下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
本実施形態のプロピレン重合体は、プロピレン由来単位のみからなるポリプロピレンホモポリマーであってもよく、99.5質量%以上100質量%未満のプロピレン由来単位と0質量%超0.5質量%以下のエチレン由来単位とからなる共重合体であってもよい。C2-a1は、13C-NMR法によって測定される。
【0018】
ポリプロピレン系樹脂(A)を構成するエチレン・αオレフィン共重合体(成分(a2))は、エチレン由来単位と炭素数3~10のαオレフィン由来単位を有する共重合体である。
成分(a2)中のエチレン由来単位含有量は、成分(a2)の総質量に対して、22~40質量%であり、23~37質量%が好ましく、24~34質量%がより好ましく、25~32質量%がさらに好ましい。
前記範囲の下限値以上であると、インフレーションフィルムの耐衝撃性が高まる。
前記範囲の上限値以下であると、インフレーションフィルムの引張特性が高まる。
成分(a2)中のエチレン由来単位含有量は、13C-NMR法によって測定される。
【0019】
ポリプロピレン系樹脂(A)の総質量に対する、エチレン・αオレフィン共重合体(成分(a2))の含有量は、28~45質量%であり、29~42質量%が好ましく、30~40質量%がより好ましく、30~38質量%がさらに好ましい。
前記範囲の下限値以上であると、インフレーションフィルムの成形安定性および耐衝撃性が高まる。
前記範囲の上限値以下であると、ポリプロピレン系樹脂(A)製造時に粉体流動性悪化により生産設備上での流路が閉塞するリスクを低減できるので、ポリプロピレン系樹脂(A)を安定的に連続生産することができる。
【0020】
前記エチレン・αオレフィン共重合体(成分(a2))を構成するαオレフィンとしては、プロピレン(1-プロペン)、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等が挙げられる。具体的な成分(a2)としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・ペンテン共重合体、エチレン・ヘキセン共重合体、エチレン・オクテン共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレン系樹脂(A)の生産性向上を考慮すると、エチレン・プロピレン共重合体が好ましい。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂(A)の温度230℃、荷重2.16kgでのMFRは、0.1~5.0g/10分であり、0.3~4.0g/10分が好ましく、0.4~3.5g/10分がより好ましく、0.5~3.0g/10分がさらに好ましい。ここで、MFRは後述する測定方法で測定された値である。
前記範囲の下限値以上であると、フィルム成形機での樹脂圧力の上昇による生産性の低下が抑えられ、インフレーション成形が容易になる。また、フィルム表面の平滑度が低下してフィルムの品質が低下する等の不具合が生じ難くなる。
前記範囲の上限値以下であると、インフレーションフィルムの破断強度等の引張特性や耐衝撃性が高まる。
【0022】
[エチレン・αオレフィン共重合体(B)]
エチレン・αオレフィン共重合体(B)は、エチレンと炭素数3~10のαオレフィンとの共重合体である。αオレフィンとしては、プロピレン(1-プロペン)、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等が挙げられる。
具体的なエチレン・αオレフィン共重合体(B)としては、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・ペンテン共重合体、エチレン・ヘキセン共重合体、エチレン・オクテン共重合体等が挙げられる。
これらの中でも、原料としての調達容易性や経済性等を考慮すると、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・ヘキセン共重合体、またはエチレン・オクテン共重合体が好ましい。
【0023】
エチレン・αオレフィン共重合体(B)の温度190℃、荷重2.16kgでのMFRは、0.1~25g/10分が好ましい。ここで、MFRは後述する測定方法で測定された値である。
前記範囲の下限値以上であると、前記ポリプロピレン系樹脂組成物の流動性が高まる。
前記範囲の上限値以下であると、前記ポリプロピレン系樹脂組成物におけるブロッキングの発生を抑制し、当該組成物の連続生産性を高めることができる。また、インフレーションフィルムの耐衝撃性が高まる。
【0024】
[その他の成分]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、任意成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリプロピレン系樹脂(A)、及びエチレン・αオレフィン共重合体(B)以外のポリマー(その他のポリマー)及び/又は添加剤が含まれてもよい。
前記その他のポリマーとしては、ポリプロピレン系樹脂(A)以外のプロピレン重合体、エチレン・αオレフィン共重合体(B)以外のエチレン系重合体、エラストマー、プラストマー、3元共重合体、リサイクルポリマー等が挙げられる。その他のポリマーは1種が含まれてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。その他のポリマーの含有量は、用途に応じて適宜調整すればよいが、ポリプロピレン系樹脂組成物の総質量に対して25質量%未満である。例えば20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下とすることができる。
前記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、中和剤、核剤、耐候剤、顔料(有機または無機)、内部滑剤および外部滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、塩素吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、スリップ剤、防曇剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、可塑剤、発泡剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物、油展等が挙げられる。これらの添加剤は1種のみでもよいし、2種以上でもよい。含有量は公知の量としてよい。
【0025】
本態様のポリプロピレン系樹脂組成物は、後述するように重袋の用途に適した厚さ40μm以上のインフレーションフィルムの製造に特に適している。なお、インフレーションフィルムの厚さは40μm以上に制限されず、40μm未満のインフレーションフィルムの製造に使用してもよい。また、インフレーションフィルム以外の用途に使用してもよい。
【0026】
≪ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法≫
本発明の第二態様は、第一態様のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法である。その製造方法としては、ポリプロピレン系樹脂(A)と、任意成分のエチレン・αオレフィン共重合体(B)と、必要に応じてその他の成分とを混合した後、溶融混練する方法が挙げられる。
混合方法としては、ヘンシェルミキサー、タンブラーおよびリボンミキサー等の混合機を使用してドライブレンドする方法が挙げられる。
溶融混練方法としては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル等の混合機を用いて溶融しながら混合する方法が挙げられる。溶融混練する場合の溶融温度は160~350℃であることが好ましく、170~260℃であることがより好ましい。溶融混練した後でさらにペレット化してもよい。
【0027】
[ポリプロピレン系樹脂(A)の製造方法]
ポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン重合体(成分(a1))とエチレン・αオレフィン共重合体(成分(a2))とを重合時に混合して得てもよいし、別々に製造された成分(a1)と成分(a2)とを溶融混練によって混合して得てもよい。
ポリプロピレン系樹脂(A)は、成分(a1)と成分(a2)とが重合時に混合された重合混合物であることが好ましい。
このような重合混合物は、成分(a1)の存在下で、エチレン単量体及びαオレフィン単量体を重合することにより得られる。この方法によれば、生産性が高くなる上に、成分(a1)中の成分(a2)の分散性が高くなるため、これを用いて得たインフレーションフィルムの機械物性バランスが向上する。
【0028】
以下、αオレフィン単量体としてプロピレン単量体を使用する場合を説明するが、他のαオレフィン単量体を使用する場合にも同様にして製造することができる。
【0029】
前記重合混合物の製造方法としては、典型的には、多段重合法が用いられる。例えば、二段の重合反応器を備える重合装置の一段目の重合反応器にて、プロピレン単量体及び必要に応じてエチレン単量体を重合してプロピレン重合体を得て、得られたプロピレン重合体を二段目の重合反応器に供給すると共に、この二段目の重合反応器にてエチレン単量体及びプロピレン単量体を重合することで前記重合混合物を得ることができる。
重合条件は、公知の重合条件と同様であってよい。例えば一段目の重合条件としては、プロピレンが液相でモノマー密度と生産性の高いスラリー重合法が挙げられる。二段目の重合条件としては、一般的にプロピレンへの溶解性が高い共重合体の製造が容易な気相重合法が挙げられる。
重合温度は50~90℃が好ましく、60~90℃がより好ましく、70~90℃がさらに好ましい。該重合温度が上記範囲の下限値以上であると、生産性及び得られたポリプロピレンの立体規則性がより優れる。
重合圧力は、液相中で行われる場合には25~60bar(2.5~6.0MPa)が好ましく、33~45bar(3.3~4.5MPa)がより好ましい。気相中で行われる場合には、5~30bar(0.5~3.0MPa)が好ましく、8~30bar(0.8~3.0MPa)がより好ましい。
重合(プロピレン単量体の重合、エチレン単量体及びプロピレン単量体等の重合)は、通常、触媒を用いて行われる。重合の際、必要に応じて、分子量の調整のために、水素が添加されてもよい。プロピレン重合体やエチレン・プロピレン共重合体の分子量を調整することで、ポリプロピレン系樹脂(A)のMFR、ひいてはポリプロピレン系樹脂組成物のMFRを調整できる。
一段目の重合反応器での重合の前に、その後の本重合の足がかりとなるポリマー鎖を固体触媒成分に形成させるために、プロピレンの予重合を行ってもよい。予重合は、通常は40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下で行われる。
【0030】
触媒としては、公知のオレフィン重合触媒を用いることができる。
前記プロピレン重合体の存在下でエチレン単量体及びプロピレン単量体を重合する際の触媒としては、立体特異性チーグラー・ナッタ触媒が好ましく、以下の成分(ア)と成分(イ)と成分(ウ)とを含む触媒(以下、「触媒(X)」ともいう。)が特に好ましい。
(ア)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与体化合物としてフタレート系化合物を必須成分として含有する固体触媒。
(イ)有機アルミニウム化合物。
(ウ)外部電子供与体化合物である有機ケイ素化合物。
【0031】
ポリプロピレン系樹脂(A)は、触媒(X)を用いて、前記プロピレン重合体の存在下で、エチレン単量体及びαオレフィン単量体(例えばプロピレン単量体)を重合して前記ポリプロピレン系樹脂を得る工程を有する方法で製造することが好ましい。触媒(X)を用いることで、各物性が前記範囲内であるポリプロピレン系樹脂(A)が容易に得られる。
なお、使用する触媒(特に成分(ア)の電子供与体化合物)によって得られるプロピレン重合体の分子量や立体規則性の分布は異なり、その違いは結晶化挙動等に影響を与えるが、その関係性についての詳細が明らかになっていない。これを明らかにしようとする場合、分子構造として分子量分布と立体規則性分布を併せて解析する必要があるが、結晶化過程において分子量と立体規則性が異なる成分同士が影響を及ぼし合うため複雑であり、分子量や立体規則性の分布が結晶化挙動に及ぼす影響についての解釈をより困難にしている。さらに、実際のフィルム成形は溶融樹脂の流動状態にて実施されるので、たとえ高度な解析技術を用いてもその現象を把握することは容易ではない。よって、特定の触媒を用いて得られたポリプロピレン系樹脂組成物において、分子量や立体規則性の分布による結晶化挙動の違いを数値等で特定することはおよそ不可能である。分子量分布や立体規則性分布は、上述した触媒の種類以外に溶融混錬時の熱劣化や過酸化物処理等によっても変化する。
【0032】
成分(ア)は、例えば、チタン化合物、マグネシウム化合物及び電子供与体化合物を用いて調製される。
成分(ア)に用いられるチタン化合物として、一般式:Ti(OR)gX4-g(Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0≦g≦4)で表される4価のチタン化合物が好適である。
炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等が挙げられ、ハロゲンとしては、Cl、Br等が挙げられる。
より具体的なチタン化合物としては、TiCl4、TiBr4、TiI4のようなテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC2H5)Cl3、Ti(On-C4H9)Cl3、Ti(OC2H5)Br3、Ti(O-isoC4H9)Br3のようなトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH3)2Cl2、Ti(OC2H5)2Cl2、Ti(On-C4H9)2Cl2、Ti(OC2H5)2Br2のようなジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH3)3Cl、Ti(OC2H5)3Cl、Ti(On-C4H9)3Cl、Ti(OC2H5)3Brなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH3)4、Ti(OC2H5)4、Ti(On-C4H9)4のようなテトラアルコキシチタン等が挙げられる。これらチタン化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記チタン化合物の中で好ましいものはハロゲン含有チタン化合物であり、より好ましくはテトラハロゲン化チタンであり、特に好ましくは四塩化チタン(TiCl4)である。
【0033】
成分(ア)に用いられるマグネシウム化合物として、マグネシウム-炭素結合やマグネシウム-水素結合を有するマグネシウム化合物、例えばジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムハイドライド等が挙げられる。これらのマグネシウム化合物は、例えば有機アルミニウム等との錯化合物の形で用いることもでき、また、液状であっても固体状であってもよい。さらに好適なマグネシウム化合物として、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムのようなアルコキシマグネシウムハライド;フェノキシ塩化マグネシウム、メチルフェノキシ塩化マグネシウムのようなアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n-オクトキシマグネシウム、2-エチルヘキソキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウム;ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウムのようなジアルコキシマグネシウム;エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム、フェノキシマグネシウム、ジメチルフェノキシマグネシウムのようなアリロキシマグネシウム等を挙げることができる。これらマグネシウム化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
成分(ア)に用いられる電子供与体化合物は、フタレート系化合物を必須成分として含有することが好ましい。フタレート系化合物を電子供与体として含む触媒(X)を用いると、プロピレン重合体のMw/Mnが前記範囲内であるポリプロピレン系樹脂が容易に得られる。
フタレート系化合物としては、例えば、モノエチルフタレート、ジメチルフタレート、メチルエチルフタレート、モノイソブチルフタレート、モノノルマルブチルフタレート、ジエチルフタレート、エチルイソブチルフタレート、エチルノルマルブチルフタレート、ジn-プロピルフタレート、ジイソプロピルフタレート、ジn-ブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジn-ヘプチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジn-オクチルフタレート、ジネオペンチルフタレート、ジデシルフタレート、ベンジルブチルフタレート、ジフェニルフタレート等が挙げられる。中でもジイソブチルフタレートが特に好ましい。
【0035】
フタレート系化合物以外の前記固体触媒中の電子供与体化合物としては、スクシネート系化合物、ジエーテル系化合物等が挙げられる。
【0036】
スクシネート系化合物は、コハク酸のエステルであってもよく、コハク酸の1位又は2位にアルキル基等の置換基を持つ置換コハク酸のエステルであってもよい。具体例としては、ジエチルスクシネート、ジブチルスクシネート、ジエチルメチルスクシネート、ジエチルジイソプロピルスクシネート、ジアリルエチルスクシネート等が挙げられる。
【0037】
ジエーテル系化合物としては、例えば、2-(2-エチルヘキシル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-sec-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2-フェニル-1,3-ジメトキシプロパン、2-tert-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-クミル-1,3-ジメトキシプロパン、2-(2-フェニルエチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-(2-シクロヘキシルエチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-(p-クロロフェニル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-(ジフェニルメチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-(1-ナフチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-(p-フルオロフェニル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-(1-デカヒドロナフチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジエチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジエチル-1,3-ジエトキシプロパン、2,2-ジシクロペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジプロピル-1,3-ジエトキシプロパン、2,2-ジブチル-1,3-ジエトキシプロパン、2-メチル-2-エチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-プロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-プロピル-2-ペンチル-1,3-ジエトキシプロパン、2-メチル-2-ベンジル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-フェニル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-シクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-メチルシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(p-クロロフェニル)-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(2-フェニルエチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(2-シクロヘキシルエチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-(2-エチルヘキシル)-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(2-エチルヘキシル)-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(p-メチルフェニル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジフェニル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジベンジル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-シクロペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジエトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジブトキシプロパン、2-イソブチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジ-sec-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジ-tert-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジネオペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-フェニル-2-ベンジル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-2-シクロヘキシルメチル-1,3-ジメトキシプロパン等の1,3-ジエーテルが挙げられる。
また、1,3-ジエーテル系化合物のさらなる具体例としては、以下が挙げられる。
1,1-ビス(メトキシメチル)-シクロペンタジエン;1,1-ビス(メトキシメチル)-2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエン;1,1-ビス(メトキシメチル)-2,3,4,5-テトラフェニルシクロペンタジエン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-2,3,4,5-テトラフルオロシクロペンタジエン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-3,4-ジシクロペンチルシクロペンタジエン;1,1-ビス(メトキシメチル)インデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-2,3-ジメチルインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-4,5,6,7-テトラヒドロインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-2,3,6,7-テトラフルオロインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-4,7-ジメチルインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-3,6-ジメチルインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-4-フェニルインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-4-フェニル-2-メチルインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-4-シクロヘキシルインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-7-(3,3,3-トリフルオロプロピル)インデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-7-トリメチルシリルインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-7-トリフルオロメチルインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-4,7-ジメチル-4,5,6,7-テトラヒドロインデン;
1,1-ビス(メトキシメチル)-7-メチルインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-7-シクロペンチルインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-7-イソプロピルインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-7-シクロヘキシルインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-7-tert-ブチルインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-7-tert-ブチル-2-メチルインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-7-フェニルインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-2-フェニルインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-1H-ベンズインデン;1,1-ビス(メトキシメチル)-1H-2-メチルベンズインデン;9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレン;
9,9-ビス(メトキシメチル)-2,3,6,7-テトラメチルフルオレン;9,9-ビス(メトキシメチル)-2,3,4,5,6,7-ヘキサフルオロフルオレン;
9,9-ビス(メトキシメチル)-2,3-ベンゾフルオレン;9,9-ビス(メトキシメチル)-2,3,6,7-ジベンゾフルオレン;9,9-ビス(メトキシメチル)-2,7-ジイソプロピルフルオレン;9,9-ビス(メトキシメチル)-1,8-ジクロロフルオレン;9,9-ビス(メトキシメチル)-2,7-ジシクロペンチルフルオレン;9,9-ビス(メトキシメチル)-1,8-ジフルオロフルオレン;9,9-ビス(メトキシメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロフルオレン;9,9-ビス(メトキシメチル)-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロフルオレン;
9,9-ビス(メトキシメチル)-4-tert-ブチルフルオレン。
【0038】
なお、上記の成分(ア)に用いられる電子供与体化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
成分(ア)を構成するハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素又はこれらの混合物が挙げられ、特に塩素が好ましい。
【0040】
成分(イ)の有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム、トリイソプレニルアルミニウムのようなトリアルケニルアルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドのようなジアルキルアルミニウムアルコキシド、エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドのようなアルキルアルミニウムセスキアルコキシド、R1
2.5Al(OR2)0.5(R1,R2は、各々異なってもよいし同じでもよい炭化水素基である。)で表される平均組成を有する、部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミドのようなジアルキルアルミニウムハロゲニド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドのようなアルキルアルミニウムセスキハロゲニド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドのようなアルキルアルミニウムジハロゲニド等が部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドのようなジアルキルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドのようなアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドのような部分的にアルコキシ化及びハロゲン化されたアルキルアルミニウム等が挙げられる。上記成分(イ)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
成分(ウ)の外部電子供与体化合物としては、有機ケイ素化合物が用いられる。
好ましい有機ケイ素化合物として、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-アミルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスo-トリルジメトキシシラン、ビスm-トリルジメトキシシラン、ビスp-トリルジメトキシシラン、ビスp-トリルジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、iso-ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2-ノルボルナントリメトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフエノキシシラン、メチルトリアリルオキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサン、メチル(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロペンチル-t-ブトキシジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、t-ブチルプロピルジメトキシシラン、t-ブチル-t-ブトキシジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、ビス(デカヒドロイソキノリン-2-イル)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジシクロペンチル-ビス(エチルアミノ)シラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルセク-ブチルジメトキシシラン、エチル(パーヒドロイソキノリン2-イル)ジメトキシシラン、トリ(イソプロペニロキシ)フェニルシラン、i-ブチルi-プロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルi-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルi-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシラン、p-トリルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
これらの中でも、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、t-ブチルプロピルジメトキシシラン、t-ブチルt-ブトキシジメトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、i-ブチルセク-ブチルジメトキシシラン、エチル(パーヒドロイソキノリン2-イル)ジメトキシシラン、ビス(デカヒドロイソキノリン-2-イル)ジメトキシシラン、トリ(イソプロペニロキシ)フェニルシラン、テキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、i-ブチルi-プロピルジメトキシシラン、シクロペンチルt-ブトキシジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルi-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルi-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシラン、ビスp-トリルジメトキシシラン、p-トリルメチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチル(3、3、3-トリフルオロ-n-プロピル)ジメトキシシラン、ケイ酸エチル等が好ましい。
上記成分(ウ)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
有機ケイ素化合物は、特にキシレン不溶分の量を調整するのに重要な役割を果たす。他の触媒成分が同じ場合、キシレン不溶分の量は、有機ケイ素化合物の種類と量および重合温度に依存するが、適切な有機ケイ素化合物を用いた場合においても、通常ジエーテル系触媒を除き、有機ケイ素化合物の量が特定の値以下になると大きく低下する。このため、重合温度が75℃の場合、有機ケイ素化合物と有機アルミニウム化合物とのモル比(有機ケイ素化合物/有機アルミニウム)の下限は0.015が好ましく、0.018がより好ましい。当該比の上限は、0.30が好ましく、0.20がより好ましく、0.10がさらに好ましい。つまり、0.015~0.30、0.015~0.20、0.015~0.10、0.018~0.30、0.018~0.20、0.018~0.10、等の範囲が例示できる。
内部電子供与体化合物としてフタレート系化合物を用いる場合は、重合温度を上げるとキシレン不溶分が増加するので、好ましい有機ケイ素化合物と有機アルミニウム化合物とのモル比(有機ケイ素化合物/有機アルミニウム)の下限および上限が低下する。具体的には、フタレート系化合物を用いて80℃で重合する場合の前記モル比の下限は、0.010が好ましく、0.015がより好ましく、0.018がさらに好ましい。前記モル比の上限は、0.20が好ましく、0.14がより好ましく、0.08がさらに好ましい。つまり、0.010~0.20、0.010~0.14、0.010~0.08、0.015~0.20、0.015~0.14、0.015~0.08、0.018~0.20、0.018~0.14、0.018~0.08、等の範囲が例示できる。
【0043】
触媒(X)としては、成分(イ)が、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムであり、成分(ウ)が、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン等の有機ケイ素化合物であるものが好ましい。
【0044】
なお、多段重合法により前記重合混合物を得る方法は上記の方法に限定されず、プロピレン重合体(成分(a1))を複数の重合反応器にて重合してもよいし、エチレン・αオレフィン共重合体(成分(a2))を複数の重合反応器にて重合してもよい。
前記重合混合物を得る方法として、単量体濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いて行う方法も挙げられる。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接合されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。
具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、重合生成物を回収する。この方法では、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的又は部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体及び/又は液体混合物を下降管中に導入する。この重合方法は、例えば、特表2002-520426号公報に記載された方法を適用することができる。
【0045】
(エチレン・αオレフィン共重合体(B)の製造方法)
エチレン・αオレフィン共重合体(B)は、重合の際にメタロセン触媒又はハーフメタロセン触媒を用いる公知の方法(例えば、WO2006/102155号に記載の方法)によって製造することができる。重合の際に、連鎖移動剤(例えば、水素またはジエチル亜鉛)等の公知の分子量自動調整剤を使用してもよい。
【0046】
≪インフレーションフィルム≫
本発明の第三態様は、第一態様のポリプロピレン系樹脂組成物によって形成されたインフレーションフィルムである。
インフレーションフィルムはインフレーション成形によって形成されたフィルムであり、成形時にはチューブ状(筒状)であることが一般的である。本態様のインフレーションフィルムはチューブ状であってもよいし、チューブ状の内周面側に刃を入れて長さ方向に切断して開いたシート状のフィルムであってもよい。
【0047】
本態様のインフレーションフィルムは、第一態様のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層(主層)を少なくとも1層有するものであり、他の樹脂からなる層(副層)を1層以上備えていてもよい。副層を備える場合、主層の内周面側に副層があってもよいし、主層の外周面側に副層があってもよい。以下では、主層のみを備える場合を説明する。
【0048】
本態様のインフレーションフィルムの厚さは、重袋の仕様として要求され得る耐衝撃性及び自立性を満たし、製造時の成形性も優れることから、40~300μmが好ましく、80~250μmがより好ましく、100~200μmがさらに好ましく、120~180μmが特に好ましい。
前記厚さは、ベータ線膜厚計等の公知の非接触式測定法やシックネスゲージを用いた公知方法で測定される。
【0049】
本態様のインフレーションフィルムは耐衝撃性に優れるので、袋体の用途、特に重袋の用途に適している。
本態様のインフレーションフィルムのダートインパクトを、JIS K7124-1:1999に記載のステアケース法におけるA法に準拠して23℃で測定したときの衝撃破壊質量は、高いほど好ましく、具体的には210g以上が好ましく、250g以上がより好ましく、300g以上がさらに好ましく、350g以上が特に好ましく、400g以上が最も好ましい。その上限値の目安は800g以下であり、600g以下でもよい。
【0050】
本態様のインフレーションフィルムは、ヒートシール(熱圧着)によって袋体を形成したときのヒートシール性が優れるので、袋体の用途、特に重袋の用途に適している。
本態様のインフレーションフィルムについて、後述する試験方法で測定されるシール強度は、高いほど好ましく、具体的には35N/15mm以上が好ましく、37N/15mm以上がより好ましく、39N/15mm以上がさらに好ましく、40N/15mm以上が特に好ましく、41N/15mm以上が最も好ましい。その上限値の目安は80N/15mm以下であり、60N/15mm以下でもよい。
【0051】
本態様のインフレーションフィルムについて、後述する試験方法で測定される引張弾性率は、重袋の自立性に寄与する物性値であり、高いほど好ましい。
本態様のインフレーションフィルムのMD方向(成形時の引き取り方向)において、上記の引張弾性率は、400MPa以上が好ましく、500MPa以上がより好ましく、600MPa以上がさらに好ましく、700MPa以上が特に好ましく、800MPa以上が最も好ましい。その上限値の目安は1000MPa以下であり、950MPa以下でもよい。
本態様のインフレーションフィルムのTD方向(MD方向と垂直方向)において、上記の引張弾性率は、400MPa以上が好ましく、450MPa以上がより好ましく、500MPa以上がさらに好ましく、600MPa以上が特に好ましく、700MPa以上が最も好ましい。その上限値の目安は900MPa以下であり、850MPa以下でもよい。
【0052】
本態様のインフレーションフィルムについて、後述する試験方法で測定される破断強度は、重袋の強度を示す物性値であり、高いほど好ましい。
本態様のインフレーションフィルムのMD方向(成形時の引き取り方向)において、上記の破断強度は、35MPa以上が好ましく、38MPa以上がより好ましく、40MPa以上がさらに好ましく、42MPa以上が特に好ましく、44MPa以上が最も好ましい。その上限値の目安は60MPa以下であり、50MPa以下でもよい。
本態様のインフレーションフィルムのTD方向(MD方向と垂直方向)において、上記の破断強度は、30MPa以上が好ましく、32MPa以上がより好ましく、34MPa以上がさらに好ましく、35MPa以上が特に好ましく、36MPa以上が最も好ましい。その上限値の目安は60MPa以下であり、50MPa以下でもよい。
【0053】
本態様のインフレーションフィルムについて、後述する試験方法で測定される伸びは、重袋の強度に相関する物性値であり、高いほど好ましい。
本態様のインフレーションフィルムのMD方向(成形時の引き取り方向)において、上記の伸びは、800%以上が好ましく、820%以上がより好ましく、850%以上がさらに好ましく、900%以上が特に好ましく、950%以上が最も好ましい。その上限値の目安は1500%以下であり、1200%以下でもよい。
本態様のインフレーションフィルムのTD方向(MD方向と垂直方向)において、上記の伸びは、900%以上が好ましく、910%以上がより好ましく、920%以上がさらに好ましく、940%以上が特に好ましく、960%以上が最も好ましい。その上限値の目安は1500%以下であり、1200%以下でもよい。
【0054】
≪インフレーションフィルムの製造方法≫
本発明の第四態様は、第一態様のポリプロピレン系樹脂組成物をインフレーション成形し、インフレーションフィルムを得る工程を含む、インフレーションフィルムの製造方法である。本態様は、第二態様の製造方法によって第一態様のポリプロピレン系樹脂組成物を得る工程を有していてもよい。
本態様によって第三態様のインフレーションフィルムを製造することができる。
【0055】
本態様のインフレーション成形法として、常法を適用することができ、空冷インフレーション法、水冷インフレーション法が挙げられ、空冷インフレーション法が好ましい。
空冷インフレーション法の具体例としては、第一態様のポリプロピレン系樹脂組成物を環状ダイ付きの押出機により溶融させて、チューブ状(筒状)にして押出し、ブロアーなどから供給される空気を空冷リングから溶融チューブに吹き付けて冷却固化させた後、ガイド板を経てピンチロールにて折り畳み、引取機にて引き取る方法が挙げられる。
この成形方法に用いる成形機、冷却リング、ブロアー、ガイド板、ピンチロール及びフィルムの引取機などは、一般的な装置でよい。
【0056】
空冷インフレーション法によりフィルムを成形する条件としては、成形性を高める観点から、以下が好ましい。
ダイ径(φ)は、20mm~500mmが好ましく、30mm~300mmがより好ましく、50mm~250mmがさらに好ましい。
ダイリップ幅は、0.8mm~4.0mmが好ましく、1.0mm~3.0mmがより好ましく、1.5mm~2.5mmがさらに好ましい。
成形温度は、170~250℃が好ましく、200~230℃がより好ましく、210~220℃がさらに好ましい。
成形速度は、5~100m/分が好ましく、6~50m/分がより好ましく、8~20m/分がさらに好ましい。
ブロー比(BUR)は、1.1~3.0が好ましく、1.2~2.5がより好ましく、1.5~2.0がさらに好ましい。
【0057】
空冷インフレーション法においては、成形したチューブ状フィルムを外部および/または内部から空気冷却すればよい。チューブ状フィルムに空気を吹き込む方向は、上向方式、水平方式または下向方式などの任意の公知方向を適用できる。成形安定性を高める観点から、上向方式が好ましい。ここで上向きは鉛直上向きを意味し、下向きは鉛直下向きを意味する。
【0058】
多層のインフレーションフィルムを成形する場合、第一態様のポリプロピレン系樹脂組成物が少なくとも一つの層を形成するように、複数の押出機及び共押出多層環状ダイを用い、公知のインフレーション法を適用することができる。
【0059】
≪袋体≫
本発明の第五態様は、第三態様のインフレーションフィルムが袋を形成してなる袋体である。袋体としては、例えば、チューブ状のインフレーションフィルムを任意の長さでカットし、少なくとも一方の開口部の互いに対向する内周面同士をヒートシールして製袋された袋体が挙げられる。使用するインフレーションフィルムの厚さが上述の通り40μm以上であると、重量物を包装する重袋として好ましい形態となる。
【0060】
本態様の袋体の大きさは、特に制限されず、例えば、縦100~2000mm、横100~2000mmが挙げられる。
チューブ状のインフレーションフィルムが製袋された袋体の形態としては、ガゼット袋、スタンド袋、これらのチャック付き袋等が挙げられる。
シート状(平面状)のインフレーションフィルムが製袋された袋体の形態としては、三方シール袋、四方シール袋、合掌貼り袋、ガゼット袋、スタンド袋、これらのチャック付き袋等が挙げられる。
袋体の外周面には印刷加工が施されていてもよい。
【0061】
≪袋体の製造方法≫
本発明の第六態様は、第三態様のインフレーションフィルムの少なくとも一部をヒートシールして袋体を得る工程を有する、袋体の製造方法である。
ヒートシールする際の温度は、インフレーションフィルムの内周面を構成する樹脂の融点よりも高い温度とすることが好ましい。シール温度をこの範囲とすることで、対向する内周面同士が溶着された袋体が容易に得られる。
【0062】
第六態様は、第四態様の製造方法によって第三態様のインフレーションフィルムを得る工程を有していてもよい。また、第六態様は、第二態様の製造方法によって第一態様のポリプロピレン系樹脂組成物を得る工程を有していてもよい。
第六態様によって第五態様の袋体を製造することができる。
【実施例0063】
以下に実施例及び比較例を示すが、本発明は以下の実施例だけに限定されない。
【0064】
<共重合体1の作製>
MgCl2上にTiCl4と内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州特許第728769号公報の実施例5の46~53行に記載された方法により調製した。具体的には下記のように行った。
【0065】
微小長球形MgCl2・2.1C2H5OHを、次のようにして製造した。タービン撹拌機および吸引パイプを備えた2Lオートクレーブ中に、不活性ガス中、常温で、無水MgCl2 48g、無水C2H5OH 77g、および灯油830mLを入れた。内容物を撹拌しながら120℃に加熱することにより、MgCl2とアルコールの間の付加物が生じたが、この付加物を融解し、分散剤と混合した。オートクレーブ内の窒素圧を15気圧に維持した。オートクレーブの吸引パイプを加熱ジャケットを用いて外部から120℃に加熱した。吸引パイプは内径が1mmで、加熱ジャケットの一端から他端までの長さが3mであった。このパイプを通して混合物を7m/secの速度で流した。パイプの出口にて、灯油2.5Lを含み、初期温度を-40℃に維持したジャケットで外部から冷却されている5Lフラスコ中に、分散液を撹拌しながら採取した。分散液の最終温度は0℃であった。エマルションの分散相を構成する球状固体生成物を沈降させ、濾過して分離し、ヘプタンで洗浄して乾燥した。これらの操作はすべて不活性ガス雰囲気中で行った。最大直径が50μm以下の固体球状粒子形のMgCl2・3C2H5OHを得た。収量は130gであった。こうして得られた生成物から、MgCl2 1モルあたりのアルコール含有量が2.1モルに減少するまで、窒素気流中で温度を50℃から100℃に徐々に上昇してアルコールを除去した。
【0066】
濾過バリヤーを備えた500mL円筒形ガラス製反応器に0℃で、TiCl4 225mLを入れ、さらに上記のようにして得た微小長球形MgCl2・2.1C2H5OH 10.1g(54mmol)を、内容物を撹拌しながら15分間かけて入れた。その後、温度を40℃に上げフタル酸ジイソブチル9mmolを入れた。温度を1時間かけて100℃に上げ、撹拌をさらに2時間続行した。次いで、TiCl4を濾過により除去し、120℃でさらに1時間撹拌しながらTiCl4 200mLを加えた。最後に、内容物を濾過し、濾液から塩素イオンが完全に消失するまで60℃のn-ヘプタンで洗浄した。このようにして得た触媒成分は、Ti=3.3質量%、フタル酸ジイソブチル=8.2質量%を含んでいた。
【0067】
次いで、上記固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの質量比が20、TEAL/DCPMSの質量比が10(上述した有機ケイ素化合物/有機アルミニウムのモル比に換算すると0.05)となるような量で、12℃において24分間接触させた。
得られた触媒(X)を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予重合を行った。
得られた予重合物を、二段の重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の重合反応器に導入し、プロピレンを供給してプロピレン単独重合体を製造した。続いて、二段目の重合反応器に、プロピレン単独重合体、プロピレン及びエチレンを供給してエチレン-プロピレン共重合体(表中、C2C3と表記。)を製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。
重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、水素濃度が、それぞれ70℃、0.03モル%、二段目の反応器では、重合温度、水素濃度、エチレンとプロピレンとの合計に対するエチレンの割合が、それぞれ80℃、2.21モル%、0.21モル比であった。また、エチレン-プロピレン共重合体の量が35質量%となるように一段目と二段目の重合時間を調整した。以上の方法により、目的の共重合体1を得た。
【0068】
得られた共重合体1は、連続相を構成するプロピレン重合体である成分(a1)とゴム相を構成するエチレン・プロピレン共重合体である成分(a2)との重合混合物であり、前述のポリプロピレン系樹脂(A)である。
共重合体1について、成分(a1)の分子量分布 Mw/Mn、成分(a1)のエチレン由来単位含有量、質量比 成分(a2)/[成分(a1)+成分(a2)]、成分(a2)のエチレン由来単位含有量、成分(a1)+成分(a2)のXSIV、成分(a1)+成分(a2)のMFRは表1に示すものであった。
表1中、フタレート系化合物を成分(ア)として含む、上記の方法で得た触媒(X)を「Pht-1」と記載した。
【0069】
<共重合体2の作製>
一段目の反応器の水素濃度を0.08モル%に、二段目の反応器の水素濃度とエチレンとプロピレンとの合計に対するエチレンの割合を、それぞれ1.33モル%と0.22モル比に変更した以外は、共重合体1と同様にして表1に示す共重合体2を得た。
【0070】
<共重合体3の作製>
一段目の反応器の水素濃度を0.02モル%に変更した以外は、共重合体2と同様にして表1に示す共重合体3を得た。
【0071】
<共重合体4の作製>
一段目の反応器の水素濃度を0.12モル%に、二段目の反応器の水素濃度を1.61モル%に変更した以外は、共重合体2と同様にして表1に示す共重合体4を得た。
【0072】
<共重合体5の作製>
MgCl2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持した固体触媒を、特開2004-27218公報の段落0032の21~36行に記載された方法により調製した。具体的には下記のように行った。
窒素雰囲気下、120℃にて、無水塩化マグネシウム56.8gを、無水エタノール100g、出光興産株式会社製のワセリンオイル「CP15N」500mLおよび信越シリコーン株式会社製のシリコーン油「KF96」500mLに完全に溶解した。この溶液を、特殊機化工業株式会社製のTKホモミキサーを用いて120℃、5000回転/分で2分間撹拌した。撹拌を保持しながら、2Lの無水ヘプタン中に0℃を越えないようにして注いだ。得られた白色固体を無水ヘプタンで十分に洗浄し室温下で真空乾燥し、さらに窒素気流下で部分的に脱エタノール化し、MgCl2・1.2C2H5OHの球状固体30gを得た。
上記球状固体30gを無水ヘプタン200mL中に懸濁した。0℃で撹拌しながら、四塩化チタン500mLを1時間かけて滴下した。次に、加熱を始めて40℃になったところで、フタル酸ジイソブチル4.96gを加えて、100℃まで約1時間で昇温した。100℃で2時間反応した後、熱時濾過にて固体部分を採取した。その後、この反応物に四塩化チタン500mLを加え撹拌した後、120℃で1時間反応を行った。反応終了後、再度、熱時濾過にて固体部分を採取し、60℃のヘキサン1.0Lで7回、室温のヘキサン1.0Lで3回洗浄して固体触媒を得た。得られた固体触媒成分中のチタン含有率を測定したところ、2.36質量%であった。
上記固体触媒を用いた以外は共重合体1と同様の製造方法にて、表1に記載した共重合体5を得た。ただし、一段目の反応器の水素濃度を0.09モル%に、二段目の反応器の水素濃度とエチレンとプロピレンとの合計に対するエチレンの割合を、それぞれ1.52モル%と0.30モル比に変更するとともに、成分(a2)/[成分(a1)+成分(a2)]の質量比が26質量%となるように一段目と二段目の重合時間を調整した。
表1中、フタレート系化合物を成分(ア)として含む、上記の方法で得た触媒(X)を「Pht-2」と記載した。
【0073】
<共重合体6の作製>
一段目の反応器の水素濃度を0.04モル%に変更した以外は、共重合体5と同様にして表1に示す共重合体6を得た。
【0074】
<重合体7の作製>
共重合体5の作製に用いた予重合物を重合反応器に導入し、プロピレンを供給して表1に示す重合体7(プロピレン単独重合体)を得た。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。重合温度と水素濃度は、それぞれ70℃と0.07モル%であった。
【0075】
以上の共重合体及び重合体について、共重合体1と同様に測定した結果を表1に示す。
【0076】
<重合体8の準備>
重合体8として、ポリエチレン(プライムポリマー社製 エボリューSP2510、MFR1.5g/10min(190℃)、密度0.925g/cm3)を使用した。
【0077】
【0078】
表1の各測定値は下記の方法によって測定した。
【0079】
<成分(a1)のMw/Mn>
一段目の反応器で重合した成分(a1)を採取した試料2.5gを測定試料とし、以下のように、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の測定を行い、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除して分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
装置としてポリマーラボラトリーズ社製PL GPC220を使用し、酸化防止剤を含む1,2,4-トリクロロベンゼンを移動相とし、カラムとして昭和電工社製UT-G(1本)、UT-807(1本)、UT-806M(2本)を直列に接続したものを使用し、検出器として示差屈折率計を使用した。また、試料溶液の溶媒としては移動相と同じものを使用し、1mg/mLの試料濃度で、150℃の温度で振とうさせながら2時間溶解して測定試料を調製した。これにより得た試料溶液500μLをカラムに注入し、流速1.0mL/分、温度145℃、データ取り込み間隔1秒で測定した。カラムの較正には、分子量580~745万のポリスチレン標準試料(Shodex STANDARD、昭和電工社製)を使用し、三次式近似で行った。Mark-Houwink-Sakuradaの係数は、ポリスチレン標準試料に関しては、K=1.21×10-4、α=0.707、ポリプロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、およびポリプロピレン系重合体に関しては、K=1.37×10-4、α=0.75を使用した。
【0080】
<共重合体の総エチレン量、成分(a1)のエチレン由来単位含有量>
1,2,4-トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した共重合体試料について、Bruker社製AVANCEIII HD400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、測定温度120℃、フリップ角45度、パルス間隔7秒、試料回転数20Hz、積算回数5000回の条件で13C-NMRのスペクトルを得た。
上記で得られたスペクトルを用いて、Kakugo,Y.Naito,K.Mizunuma and T.Miyatake,Macromolecules,15,1150-1152(1982)の文献に記載された方法により、共重合体の総エチレン量(質量%)を求めた。
なお、成分(a1)を試料として測定する場合、上記方法により得られる総エチレン量(質量%)は、成分(a1)のエチレン単位含有量(質量%)となる。
【0081】
<成分(a2)中のエチレン単位含有量>
上記文献に記載された方法で共重合体の総エチレン量を測定するに際して求めたTββの積分強度の替わりに、下記式で求めた積分強度T’ββを使用した以外は、総エチレン量と同様の方法で計算を行い、成分(a2)のエチレン単位含有量(質量%)を求めた。
T’ββ=0.98×Sαγ×A/(1-0.98×A)
ここで、A=Sαγ/(Sαγ+Sαδ)であり、上記文献に記載のSαγ及びSαδより算出される。
【0082】
<質量比 成分(a2)/[成分(a1)+成分(a2)]>
下記式により求めた。
成分(a2)/[成分(a1)+成分(a2)](単位:質量%)=共重合体の総エチレン量/(成分(a2)中のエチレン単位含有量/100)
【0083】
<成分(a1)+成分(a2)のXSIV>
以下の方法によって共重合体のキシレン可溶分を得て、キシレン可溶分の極限粘度(XSIV)を測定した。
共重合体のサンプル2.5gを、o-キシレン(溶媒)を250mL入れたフラスコに入れ、ホットプレート及び還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間撹拌し完全溶解させた後、25℃で1時間、冷却した。これにより得られた溶液を、濾紙を用いて濾過した。濾過後の濾液を100mL採取し、アルミニウムカップ等に移し、窒素パージを行いながら、140℃で蒸発乾固を行い、室温で30分間静置して、キシレン可溶分を得た。
極限粘度は、テトラヒドロナフタレン中、135℃において毛細管自動粘度測定装置(SS-780-H1、株式会社柴山科学器械製作所製)を用いて測定した。
【0084】
<成分(a1)+成分(a2)のMFR>
共重合体の試料5gに対し本州化学工業株式会社製H-BHTを0.05g添加し、ドライブレンドにより均一化した後、JIS K7210-1に従い、JIS K6921-2に基づき温度230℃および荷重2.16kgの条件で測定した。
【0085】
<ポリプロピレン系樹脂組成物の調製>
[実施例1、実施例3~7、比較例1~4]
成分(A)として表1の共重合体又は重合体を用い、その総量100質量部に対し、酸化防止剤としてBASF社製B225を0.2質量部、中和剤として淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレートを0.05質量部加え、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌、混合した。当該混合物を、株式会社JSW製同方向2軸押出機TEX-30αを用いて、シリンダ温度230℃で溶融混練して押出した。ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。このようにして製造したポリプロピレン系樹脂組成物、およびこれを成形したインフレーションフィルムについて各種物性を評価した。結果を表2に示す。
【0086】
[実施例2]
成分(A)として表1の共重合体1、成分(B)として下記のエチレン・αオレフィン共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2の組成物を調整して評価した。結果を表2に示す。
B-1:日本ポリエチレン社製、ハーモレックスNF324A、コモノマーとして1-ヘキセンを含有する直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(表中、C6-LLDPEと表記。)、MFR(190℃、2.16kg)=1.0g/10分
【0087】
【0088】
表2の測定結果及び評価結果は下記の方法によって測定及び評価された値である。
【0089】
<流動性 MFR>
ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRは、JIS K7210-1に従い、JIS K6921-2に基づき温度230℃および荷重2.16kgの条件下で測定した。
エチレン・αオレフィン共重合体のMFRは、JIS K6922-2に基づき温度190℃および荷重2.16kgの条件下で測定した。
【0090】
<インフレーションフィルムの成形>
プラコー社製インフレーション成形機:押出機(φ50mm)を用いて、シリンダ温度220℃でポリプロピレン系樹脂組成物を溶融し、環状成形ダイ温度220℃、上向きブロー、ダイス直径φ110mm、ブロー比(BUR)1.75、フィルム幅300mm(チューブを押し潰した状態の折り径)、成形速度10m/分にて、フィルム厚み130~140μmの条件でインフレーションフィルムを成形した。
【0091】
<引張試験;破断強度、伸び>
得られた各例のインフレーションフィルムから、JIS K7127に基づき、幅10mm、長さ150mmの短冊状に切り出し、T・S・E社製テンシロン(オートコム)を用い、23℃で引張速度500mm/分、チャック間距離50mm、標線間距離L0=50mmで引張試験を行った。試験片破断時の強度を最小断面積で割ったものを破断強度とした。
また、破断時の標線間距離をLとして、(L-L0)/L0×100によって引張伸び(%)を求めた。
試験は、インフレーション成形のMD方向(引き取り方向)の場合と、MD方向と垂直なTD方向についてそれぞれ行った。
【0092】
<引張弾性率>
得られた各例のインフレーションフィルムからサンプルを切り出し、JIS K7161に基づき、T・S・E社製テンシロン(オートコム)で引張速度5mm/分の速度で引張り、応力-ひずみ曲線のゼロ点から引いた接線の伸度2%時の荷重を試料の断面積で除した値を引張弾性率とした。インフレーションフィルムのMD方向(引き取り方向)とMD方向と垂直なTD方向について、それぞれ引張弾性率を測定した。
【0093】
<ダートインパクト>
得られた各例のインフレーションフィルムからサンプルを切り出し、JIS K7124-1:1999に記載のステアケース法におけるA法(径38mm±1mmの半球状の頭部をもつダートを用い、高さ0.66m±0.01mから落下させる。)に準じて、23℃にて衝撃破壊質量(単位:g)を測定した。
【0094】
<ヒートシール性;強度・伸度>
得られた各例のインフレーションフィルムからサンプルを切り出し、JIS Z0238に基づき、サンプル同士をヒートシールした試料のシール強度を試験した。まず、2枚のサンプルの表面を互いに向い合わせた。次に、ヒートシールテスター(テスター産業社製)で所定温度に調節された一対のアルミ製シールバーの間に前記サンプルを挟み、0.2MPaのゲージ圧力で1秒間、170℃で熱圧着した。その後、前記シールバーの熱でシールされたサンプルを得た。このサンプルを15mm幅に切断し、オートコム(T・S・E社製)を用い、シール箇所に続く一対のフィルムタブを互いに正反対に引張り(引張速度300mm/分)、シール箇所が剥離または破断するときの強度(単位:N/15mm)を測定し、シール強度とした。
【0095】
<成形安定性;バブル揺れ>
ダイ~第1ピンチロール間のバブル揺れの判断基準に基づき、下記の3段階で評価した。
「3」:ダイ~第1ピンチロール間のバブル揺れが無く、インフレーション成形に適したポリプロピレン系樹脂組成物である。
「2」:ダイ~第1ピンチロール間のバブル揺れが時々発生し、インフレーション成形が可能なポリプロピレン系樹脂組成物である。
「1」:ダイ~第1ピンチロール間のバブル揺れが常時発生し、インフレーション成形には適さないポリプロピレン系樹脂組成物である。
【0096】
<成形安定性;折れシワ>
第1ピンチ~第2ピンチロール間のシワの判断基準に基づき、下記の3段階で評価した。
「3」:第1ピンチ~第2ピンチロール間のシワが無く、インフレーション成形に適したポリプロピレン系樹脂組成物である。
「2」:第1ピンチ~第2ピンチロール間のシワが時々発生し、インフレーション成形が可能なポリプロピレン系樹脂組成物である。
「1」:第1ピンチ~第2ピンチロール間のシワが常時発生し、インフレーション成形には適さないポリプロピレン系樹脂組成物である。
【0097】
<フィッシュアイ(FE)>
フィルムサンプルの基準面積当たり(0.1m2)に発生した、下記の範囲で分類する大きさのFEの個数を計測し、大/中/小の順で各個数を表に示した。
「大」:直径0.5mm超え
「中」:直径0.2mm以上0.5mm以下
「小」:直径0.1mm以上0.2mm未満
【0098】
<重袋の自立性>
上記のインフレーション成形で得たインフレーションフィルムを65cmの長さでカットし、一方の開口部を外側からヒートシールして、開口部の幅300mm、高さ600mmの袋体を得た。この袋体は頑丈であり、いわゆる重袋と呼ばれるものである。
重袋の内部に手を入れて、底部を略円形に拡げるように整えて、地面に置いたときに自立するか否かを調べ、下記の3段階で評価した。
「3」:安定に自立した。
「2」:少し不安定さが見えるが、自立した。
「1」:自立しないか、自立したとしても極めて不安定だった。
【0099】
≪作用効果≫
実施例1~7のポリプロピレン系樹脂組成物は、所定の物性を有するので、耐衝撃性及び自立性を備えた重袋の用途に適した厚さのインフレーションフィルムの製造に適していることが明らかである。なお、実施例1と実施例4はフィルム厚さが異なり、実施例3と実施例5もフィルム厚さが異なる。
実施例2のポリプロピレン系樹脂組成物は成分(B)を含むので、重袋の耐衝撃性(ダートインパクト値)が高い。
【0100】
比較例1のインフレーションフィルムは、共重合体5を用いており、成分(A)の総質量に対する成分(a2)の含有量が少ないため、耐衝撃性が劣るとともに、シワが時々発生した。
比較例2のインフレーションフィルムは、共重合体6を用いており、成分(A)の総質量に対する成分(a2)の含有量が少ないため、耐衝撃性が劣るとともに、シワが時々発生した。
比較例3のインフレーションフィルムは、共重合体7を用いており、成分(A)の総質量に対する成分(a2)の含有量が極度に少ない(含まない)ため、インフォメーション成形が不可能であった。
比較例4は、成分(A)に代わる主材料としてポリエチレン系樹脂組成物を用いており、インフレーションフィルムの成形は良好であったが、引張弾性率が低く、重袋に求められる自立性が劣っていた。