IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カワサキモータース株式会社の特許一覧

特開2024-90868電動車両、及びその電動車両の制御方法
<>
  • 特開-電動車両、及びその電動車両の制御方法 図1
  • 特開-電動車両、及びその電動車両の制御方法 図2
  • 特開-電動車両、及びその電動車両の制御方法 図3
  • 特開-電動車両、及びその電動車両の制御方法 図4
  • 特開-電動車両、及びその電動車両の制御方法 図5
  • 特開-電動車両、及びその電動車両の制御方法 図6
  • 特開-電動車両、及びその電動車両の制御方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090868
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】電動車両、及びその電動車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20240627BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240627BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20240627BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240627BHJP
   B60L 58/22 20190101ALI20240627BHJP
   B60L 58/21 20190101ALI20240627BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/00 P
H02J7/04 F
B60L50/60
B60L58/22
B60L58/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207041
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】御舩 文里
(72)【発明者】
【氏名】北川 英作
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亮平
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503AA07
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA11
5G503FA06
5G503HA02
5H125AA01
5H125AB03
5H125AC12
5H125BC16
5H125CB02
5H125CD04
5H125DD01
5H125EE23
5H125EE25
5H125EE41
5H125EE64
(57)【要約】
【課題】複数のバッテリパックの間で流れる電流が過電流となることを防ぐ、電動車両を提供する。
【解決手段】電動車両1は、電動車両1を走行させるモータ16と、モータ16に電力を供給する複数のバッテリパック19a,19bと、モータ16と複数のバッテリパック19a,19bとを電気的に接続する電力経路26と、電力経路26の電気的な遮断と接続を切り替えるスイッチング素子28a,28bと、スイッチング素子28a,28bを制御するコントローラ20,29a,29bであって、所定のバランス制御開始条件を満たすとき、スイッチング素子28a,28bの開閉を繰り返して、複数のバッテリパック19a,19bの間で間欠的な充放電を行い、複数のバッテリパック19a,19bの電位差ΔVを小さくするパックバランス制御を行う、コントローラ20,29a,29bと、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両を走行させるモータと、
前記モータに電力を供給する複数のバッテリパックと、
前記モータと前記複数のバッテリパックとを電気的に接続する電力経路と、
前記電力経路の電気的な遮断と接続を切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子を制御するコントローラであって、所定の制御開始条件を満たすとき、前記スイッチング素子の開閉を繰り返して、前記複数のバッテリパックの間で間欠的な充放電を行い、前記複数のバッテリパックの電位差を小さくするパックバランス制御を行う、前記コントローラと、を備えている、電動車両。
【請求項2】
前記電動車両は、前記電動車両が停止していることを示す情報を検出して前記情報を前記コントローラに伝達する車両停止センサ、を備えており、
前記制御開始条件は、前記コントローラによって、前記情報に基づいて、前記電動車両が停止していると判断されることである、請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記複数のバッテリパックは、前記複数のバッテリパックのそれぞれの温度に相当する温度相当値を検出して前記温度相当値を前記コントローラに伝達する温度相当値センサ、をそれぞれ有しており、
前記制御開始条件は、前記コントローラによって、前記温度相当値が予め決められた温度相当閾値より小さいと判断されることである、請求項1又は2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記電動車両は、外気温を検出して前記外気温を前記コントローラに伝達する外気温センサ、を備えており、
前記コントローラは、前記外気温が高くなるにつれて、前記温度相当閾値が小さくなるように設定する、請求項3に記載の電動車両。
【請求項5】
前記コントローラは、前記温度相当値が大きくなるにつれて、前記間欠的な充放電のデューティ比が小さくなるように設定する、請求項3に記載の電動車両。
【請求項6】
前記電動車両は、前記複数のバッテリパックを流れる電流に相当する電流相当値を測定して、前記電流相当値が予め決められた保護電流相当閾値より大きいとき、前記複数のバッテリパックの電力の供給を停止する保護回路、を備えており、
前記コントローラは、前記電流相当値が前記保護電流相当閾値より小さくなるように、前記間欠的な充放電のデューティ比を設定する、請求項1又は2に記載の電動車両。
【請求項7】
前記電動車両は、前記複数のバッテリパックのそれぞれの電位を測定する電位測定回路を備えており、
前記コントローラは、前記電位測定回路によって測定された前記複数のバッテリパックのそれぞれの電位から前記複数のバッテリパックの電位差を計算して、前記電位差が予め決められた電位差閾値以下であるとき、前記複数のバッテリパックから前記モータに電力を供給する、請求項1又は2に記載の電動車両。
【請求項8】
前記制御開始条件は、前記コントローラによって、前記複数のバッテリパックの電位差が前記電位差閾値より大きいと判断されることである、請求項7に記載の電動車両。
【請求項9】
前記コントローラは、前記パックバランス制御を行うとき、前記複数のバッテリパックの内、電位が高い高電位バッテリパックから、電位が低い低電位バッテリパックに向けて、電流を流して、前記高電位バッテリパックと前記低電位バッテリパックとの間の電位差を小さくするように、前記スイッチング素子を制御する、請求項8に記載の電動車両。
【請求項10】
前記コントローラは、前記モータが回生電力を生じるとき、前記回生電力によって、前記複数のバッテリパックの内、電位が低い低電位バッテリパックを充電するように、前記スイッチング素子を制御する、請求項7に記載の電動車両。
【請求項11】
前記コントローラは、前記電動車両を走行させるための運転者の準備動作が行われたと判断するとき、前記パックバランス制御を停止する、請求項1又は2に記載の電動車両。
【請求項12】
前記コントローラは、前記電動車両の状態に応じて、前記パックバランス制御を実行する制御実行期間を設定する、請求項1又は2に記載の電動車両。
【請求項13】
前記複数のバッテリパックは、並列接続されている、請求項1又は2に記載の電動車両。
【請求項14】
電動車両を走行させるモータと、前記モータに電力を供給する複数のバッテリパックと、を電気的に接続する電力経路の電気的な遮断と接続を切り替えるスイッチング素子の開閉を繰り返すことによって、前記複数のバッテリパックの間で間欠的な充放電を行い、前記複数のバッテリパックの電位差を小さくするパックバランス制御を含む、電動車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動車両、及びその電動車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のバッテリパックを備える電動車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開特許2015/068753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、複数のバッテリパックから供給される電力によってモータを駆動して、電動車両を走行させることができる。また、複数のバッテリパックは、それぞれ、脱着可能であり、電動車両から取り外されて充電器を用いて充電される。
【0005】
一方、複数のバッテリパックから供給される電力によってモータを駆動するとき、複数のバッテリパックの間で電流が流れて、モータを駆動し難くなると共に、それぞれのバッテリパックの寿命を縮めることがある。
【0006】
特に、複数のバッテリパックの間で流れる電流が過電流となる場合、複数のバッテリパック、複数のバッテリパックを電気的に接続している電力経路、及びその他の電装部品に対して電気的な損傷を与えることがある。
【0007】
そこで、本開示は、複数のバッテリパックの間で流れる電流が過電流となることを防ぐ、電動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の態様は、電動車両を走行させるモータと、
前記モータに電力を供給する複数のバッテリパックと、
前記モータと前記複数のバッテリパックとを電気的に接続する電力経路と、
前記電力経路の電気的な遮断と接続を切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子を制御するコントローラであって、所定の制御開始条件を満たすとき、前記スイッチング素子の開閉を繰り返して、前記複数のバッテリパックの間で間欠的な充放電を行い、前記複数のバッテリパックの電位差を小さくするパックバランス制御を行う、前記コントローラと、を備えている、電動車両を提供する。
【0009】
本開示によれば、間欠的な充放電により、複数のバッテリパックの間で流れる単位時間当たりの電気量を抑えながら、複数のバッテリパックの電位差を小さくできる。これによって、複数のバッテリパックの間で流れる電流が過電流となることを防いで、電力経路、複数のバッテリパック、及び他の電装部品を保護する。また、複数のバッテリパックの電位差を小さくすることによって、電動車両が走行するとき、複数のバッテリパックの間で電流が流れることを抑制する。
【0010】
本開示の態様は、電動車両を走行させるモータと、前記モータに電力を供給する複数のバッテリパックと、を電気的に接続する電力経路の電気的な遮断と接続を切り替えるスイッチング素子の開閉を繰り返すことによって、前記複数のバッテリパックの間で間欠的な充放電を行い、前記複数のバッテリパックの電位差を小さくするパックバランス制御を含む、電動車両の制御方法を提供する。
【0011】
本開示によれば、間欠的な充放電により、複数のバッテリパックの間で流れる単位時間当たりの電気量を抑えながら、複数のバッテリパックの電位差を小さくできる。これによって、複数のバッテリパックの間で流れる電流が過電流となることを防いで、電力経路、複数のバッテリパック、及び他の電装部品を保護する。また、複数のバッテリパックの電位差を小さくすることによって、電動車両が走行するとき、複数のバッテリパックの間で電流が流れることを抑制する。
【発明の効果】
【0012】
したがって、本開示に係る電動車両によれば、複数のバッテリパックの間で流れる電流が過電流となることを防ぎながら、複数のバッテリパックの間の電位差を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一実施形態に係る電動車両の側面図である。
図2図1の電動車両の回路図である。
図3図2の回路によって行われるパックバランス制御のシステムを示すブロック図である。
図4図2の回路によって行われるパックバランス制御のタイムチャートである。
図5図4のパックバランス制御によるバッテリパックの電位の推移を示すグラフである。
図6図2の回路によって行われるパックバランス制御のフローチャートである。
図7図2の回路によって行われる電力供給のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0015】
[電動車両の構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る電動車両(以下、「電動二輪車」という)1の側面図である。本実施形態における前方、後方、右方向、左方向などの方向は、それぞれ、電動二輪車1に乗る運転者から見た方向である。
【0016】
電動二輪車1は、電動二輪車1の本体であるフレーム2と、フレーム2より前方に配置されている前輪3と、フレーム2より後方に配置されている後輪4と、を備えている。
【0017】
前輪3は、上下方向に延びるフロントフォーク5の下部に回転自在に支持されている。フロントフォーク5は、その上端部に設けられたアッパーブラケット6と、アッパーブラケット6の下方に設けられたロアブラケット7とを介して、操舵軸8に支持されている。操舵軸8は、フレーム2に取り付けられているヘッドパイプ9によって回動可能に支持されている。
【0018】
アッパーブラケット6には、左右に延びるハンドルバー10が取り付けられている。運転者によるハンドルバー10の左右への揺動操作によって、操舵軸8を回転軸として、前輪3が操舵される。
【0019】
ハンドルバー10には、両側において、アクセルグリップ11が回転可能に取り付けられている。運転者は、電動二輪車1を発進又は加速させるとき、アクセルグリップ11を回転させることによって、発進要求又は加速要求を行う。アクセルグリップ11は、後述するコントロールユニット20に電気的に接続されているアクセルグリップセンサ12を有している。アクセルグリップセンサ12は、アクセルグリップ11の回転を検出することにより、上述の発進要求又は加速要求を含む信号をコントロールユニット20に伝達する。
【0020】
また、ハンドルバー10には、両側において、ブレーキレバー13が操作可能に取り付けられている。運転者は、電動二輪車1を停止させるとき、ブレーキレバー13を操作することによって、ブレーキをかける要求を行うと共に、電動二輪車1を発進させるとき、ブレーキレバー13を離すことによって、ブレーキを解除する要求を行う。ブレーキレバー13は、後述するコントロールユニット20に電気的に接続されているブレーキスイッチ14を有している。ブレーキスイッチ14は、ブレーキレバー13に対する操作を検出することにより、上述のブレーキをかける要求又はブレーキを解除する要求を含む信号をコントロールユニット20に伝達する。
【0021】
フレーム2の内部には、電動二輪車1を走行させるため、後輪4を駆動させる駆動系15が配置されている。駆動系15は、電力を供給されることによって駆動力を生じるモータ16と、モータ16の駆動力を後輪4に向けて出力する出力軸17と、を有している。また、フレーム2の内部には、後述するコントロールユニット20に電気的に接続されている車速センサ18が配置されている。車速センサ18は、出力軸17の回転数を検出して、該回転数を含む信号をコントロールユニット20に伝達する。
【0022】
フレーム2の内部には、モータ16に電気的に接続されて、モータ16に電力を供給する充放電可能な2つのバッテリパック19a,19bが配置されている。2つのバッテリパック19a,19bは、それぞれ、フレーム2に対して着脱自在である。本実施形態では、2つのバッテリパック19a,19bが配置されているが、3つ以上のバッテリパックが配置されていてもよい。
【0023】
フレーム2の内部には、アクセルグリップセンサ12、ブレーキスイッチ14、モータ16、車速センサ18、及びバッテリパック19a,19bなどの電装部品と電気的に接続されているコントロールユニット20が配置されている。コントロールユニット20は、アクセルグリップセンサ12、及び車速センサ18などから伝達される信号に応じて、駆動系15、特にモータ16の制御と、2つのバッテリパック19a,19bの制御と、を行う集積回路であって、制御処理を行うプロセッサ20aと、制御プログラムを記憶しているメモリ20bと、を有している。
【0024】
フレーム2の内部には、外気温センサ21が取り付けられている。外気温センサ21は、コントロールユニット20に電気的に接続されており、外気温を含む信号をコントロールユニット20に伝達する。
【0025】
フレーム2の側面には、棒状のサイドスタンド22が取り付けられている。サイドスタンド22は、一端において、左右方向に延びるサイドスタンド軸23を有している。サイドスタンド軸23は、フレーム2に接続されており、サイドスタンド22の回転軸となる。サイドスタンド22は、例えば、運転者が電動二輪車1を発進させるとき、運転者がサイドスタンド22を足で払うことによって、サイドスタンド軸23周りに上方向に回転して地面から離れる一方、運転者が電動車両1を駐車させるとき、運転者がサイドスタンド22を足で降ろすことによって、サイドスタンド軸23周りに下方向に回転して接地する。また、サイドスタンド22は、コントロールユニット20に電気的に接続されて、上述のサイドスタンド22の状態を含む信号をコントロールユニット20に伝達するサイドスタンドセンサ24を有している。
【0026】
[電気回路の構成]
図2は、図1の電動二輪車1の回路図であって、特にモータ16と、2つのバッテリパック19a,19bと、コントロールユニット20と、を電気的に接続している電気回路25を示している。
【0027】
電気回路25は、2つのバッテリパック19a,19bからモータ16に向けて電力を供給するため、2つのバッテリパック19a,19bを互いに並列接続させると共に、2つのバッテリパック19a,19bを後述するインバータ回路27を介してモータ16と電気的に接続させている電力経路26を有している。
【0028】
電気回路25はまた、モータ16に供給される交流電力の周波数を調整するインバータ回路27を有している。インバータ回路27は、互いに三相ブリッジ接続されているスイッチング素子27a~27fを有している。スイッチング素子27a~27fは、それぞれ、MOSFETであって、ゲートがコントロールユニット20に電気的に接続されている。
【0029】
スイッチング素子27a~27fは、電圧がゲートに印加されているとき、ソースとドレインとの間を導通するように閉じる一方、電圧がゲートに印加されていないとき、ソースとドレインとの間を導通しないように開く特性を有している。したがって、コントロールユニット20は、スイッチング素子27a~27fのゲートに印加する電圧を制御することによって、モータ16に供給される交流電力の周波数を調整する。
【0030】
本実施形態において、2つのバッテリパック19a,19bは、それぞれ、電力経路26とインバータ回路27を介してモータ16に電力を供給するバッテリセル28a,28bと、バッテリセル28a,28bの正極と電力経路26との間の電気的な遮断と接続を切り替えるスイッチング素子29a,29bと、スイッチング素子29a,29bを制御するバッテリコントローラ30a,30bと、バッテリパック19a,19bを保護する保護回路31a,31bと、を有している。
【0031】
図2において、バッテリセル28a,28bは、それぞれ、簡単のため、単一のバッテリセルとして記載しているが、複数のバッテリセルから構成されていてもよい。
【0032】
スイッチング素子29a,29bは、それぞれ、MOSFETであって、ソースがバッテリセル28a,28bの正極に電気的に接続されて、ドレインが電力経路26に電気的に接続されて、ゲートがバッテリコントローラ30a,30bに電気的に接続されている。
【0033】
スイッチング素子29a,29bは、電圧がゲートに印加されているとき、ソースとドレインとの間を導通するように閉じる一方、電圧がゲートに印加されていないとき、ソースとドレインとの間を導通しないように開く特性を有している。したがって、バッテリセル28a,28bは、電圧がスイッチング素子29a,29bのゲートに印加されているとき、電力経路26と電気的に接続されている一方、電圧がスイッチング素子29a,29bのゲートに印加されていないとき、電力経路26から電気的に遮断されている。
【0034】
バッテリコントローラ30a,30bは、それぞれ、集積回路であって、スイッチング素子29a,29bを開閉させるように、スイッチング素子29a,29bのゲートに印加する電圧を制御する。バッテリコントローラ30a,30bがスイッチング素子29a,29bを開閉させることにより、バッテリセル28a,28bと電力経路26との間の電気的な遮断と接続が制御されて、2つのバッテリパック19a,19bのモータ16に対する電力供給、及び2つのバッテリパック19a,19bの間の充放電が行われる。
【0035】
保護回路31a,31bは、それぞれ、バッテリセル28a,28bに流れる電流を測定する電流測定回路を含む集積回路であって、バッテリセル28a,28bの負極と電力経路26に電気的に接続されて、測定された電流が予め決められた保護電流閾値より大きいとき、バッテリセル28a,28bと電力経路26との間を遮断することによって、バッテリセル28a,28bに過電流が流れることを防いで、バッテリパック19a,19bを保護する。保護電流閾値は、バッテリセル28a,28bが許容できる最大電流に基づいて決められている。
【0036】
本実施形態において、2つのバッテリパック19a,19bは、それぞれ、バッテリパック19a,19bの電位V1,V2を測定する電位測定回路32a,32bと、バッテリパック19a,19bの温度K1,K2を測定する温度センサ33a,33bと、を有している。
【0037】
電位測定回路32a,32bは、それぞれ、バッテリセル28a,28bの正極と負極、及びバッテリコントローラ30a,30bに電気的に接続されて、測定された電位V1,V2を含む信号をバッテリコントローラ30a,30bに伝達する。
【0038】
温度センサ33a,33bは、それぞれ、バッテリコントローラ29a,29bに電気的に接続されて、バッテリパック19a,19bの温度K1,K2を含む信号をバッテリコントローラ30a,30bに伝達する。
【0039】
バッテリコントローラ30a,30bは、それぞれ、コントロールユニット20に電気的に接続されている。コントロールユニット20は、スイッチング素子29a,29bを開閉させる指示を含む信号をバッテリコントローラ30a,30bに伝達することによって、バッテリコントローラ30a,30bを制御する。
【0040】
コントロールユニット20のメモリ20bは、スイッチング素子29a,29bの制御をバッテリコントローラ30a,30bに実行させるプログラム、特にパックバランス制御のプログラムを記憶している。
【0041】
パックバランス制御とは、後述する所定の制御開始条件を満たすとき、スイッチング素子29a,29bの開閉を所定の制御周期C0ごとに繰り返して、2つのバッテリパック19a,19bの間で充放電を行い、2つのバッテリパック19a,19bの間の電位差ΔVを小さくする制御である。
【0042】
本明細書中に記載されている構成要素により実現される機能は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、汎用プロセッサ、特定用途プロセッサ、集積回路、ASICs(Application Specific Integrated Circuits)、CPU(a Central Processing Unit)、従来型の回路、および/又はそれらの組合せを含む、circuitry又はprocessing circuitryにおいて実装されてもよい。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含み、circuitry又はprocessing circuitryとみなされる。プロセッサは、メモリに格納されたプログラムを実行する、programmed processorであってもよい。本明細書において、circuitry、ユニット、手段は、記載された機能を実現するようにプログラムされたハードウェア、又は実行するハードウェアである。当該ハードウェアは、本明細書に開示されているあらゆるハードウェア、又は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、又は、実行するものとして知られているあらゆるハードウェアであってもよい。当該ハードウェアがcircuityのタイプであるとみなされるプロセッサである場合、当該circuitry、手段、又はユニットは、ハードウェアと、当該ハードウェア及び又はプロセッサを構成する為に用いられるソフトウェアの組合せである。
【0043】
図3は、図2の電気回路25によって行われるパックバランス制御のシステムを示すブロック図であって、特にパックバランス制御を実行するために動作するコントロールユニット20のプロセッサ20aに含まれる制御回路を示している。
【0044】
プロセッサ20aは、車両停止判断回路34と、制御実行期間設定回路35と、温度閾値設定回路36と、バッテリ温度判断回路37と、デューティ比設定回路38と、電位差判断回路39と、パックバランス制御実行回路40と、走行準備動作判断回路41と、制御実行期間判断回路42と、電力供給回路43と、を備えている。
【0045】
車両停止判断回路34は、アクセルグリップセンサ12、車速センサ18、及びサイドスタンドセンサ24から入力される信号に基づいて、電動二輪車1が停止しているか否かを判断する。より詳しくは、アクセルグリップセンサ12が発進要求又は加速要求を含む信号をコントロールユニット20に伝達していないとき、車速センサ18が、出力軸17の回転数がゼロであることを示す信号をコントロールユニット20に伝達しているとき、又はサイドスタンドセンサ24が、サイドスタンド22が接地していることを示す信号をコントロールユニット20に伝達しているとき、車両停止判断回路34は、電動二輪車1が停止していると判断する。一方、上述の条件のいずれも満たしていないとき、車両停止判断回路34は、電動二輪車1が停止していないと判断する。
【0046】
制御実行期間設定回路35は、パックバランス制御が行われる制御実行期間T0を設定する。より詳しくは、制御実行期間設定回路35は、サイドスタンドセンサ24が、サイドスタンド22が地面から離れていることを示す信号をコントロールユニット20に伝達しているとき、電動二輪車1は駐車されていないため、電動二輪車1の発進性を確保する必要があると判断して、制御実行期間T0を短期間に設定する一方、サイドスタンドセンサ24が、サイドスタンド22が接地していることを示す信号をコントロールユニット20に伝達しているとき、電動二輪車1は駐車されているため、電動二輪車1の発進性を確保する必要がないと判断して、制御実行期間T0を長期間に設定する。
【0047】
温度閾値設定回路36は、外気温センサ21からコントロールユニット20に伝達される外気温を含む信号に基づいて、温度閾値K0を設定する。より詳しくは、温度閾値設定回路35は、外気温が高くなるにつれて、温度閾値K0を低い温度に設定する一方、外気温が低くなるにつれて、温度閾値K0を高い温度に設定する。
【0048】
バッテリ温度判断回路37は、温度センサ33a,33bからバッテリコントローラ30a,30bを介してコントロールユニット20に向けて伝達されるバッテリパック19a,19bの温度K1,K2を含む信号に基づいて、温度K1,K2が温度閾値K0より小さいか否かを判断する。
【0049】
デューティ比設定回路38は、パックバランス制御のデューティ比DR0を設定する。デューティ比DR0とは、制御周期C0に対する、スイッチング素子29a,29bのゲートに電圧が印加されて、スイッチング素子29a,29bが閉じる時間D1の割合である。より詳しくは、デューティ比設定回路38は、温度K1,K2が高くなるにつれて、バッテリパック19a,19bの温度による劣化を防ぐため、バッテリパック19aとバッテリパック19bとの間で流れる電流を小さくするように、デューティ比DR0を小さな値に設定する一方、温度K1,K2が低くなるにつれて、バッテリパック19a,19bの充放電を促すため、バッテリパック19aとバッテリパック19bとの間で流れる電流を大きくするように、デューティ比DR0を大きな値に設定する。また、デューティ比設定回路38は、保護回路31a,31bが作動することによって、バッテリセル28a,28bと電力経路26との間が遮断されることを防ぐため、バッテリパック19aとバッテリパック19bとの間で流れる電流が保護電流閾値より小さくなるように、デューティ比DR0を設定する。
【0050】
電位差判断回路39は、電位測定回路32a,32bからバッテリコントローラ30a,30bを介してコントロールユニット20に向けて伝達されるバッテリパック19a,19bの電位V1,V2を含む信号に基づいて、バッテリパック19aとバッテリパック19bとの間の電位差ΔVを計算して、電位差ΔVが予め決められた電位差閾値ΔV0より大きいか、又は電位差ΔVが予め決められた電位差閾値ΔV0より小さいかを判断する。電位差閾値ΔV0は、バッテリパック19a,19bからインバータ回路27を介してモータ16に電力を供給するとき、バッテリパック19aとバッテリパック19bとの間で電流が流れ難い電位差が設定される。
【0051】
パックバランス制御実行回路40は、パックバランス制御を行う。
【0052】
図4は、図2の電気回路25によって行われるパックバランス制御のタイムチャートであって、電位測定回路32aによって測定されたバッテリパック19aの電位V1が、電位測定回路32bによって測定されたバッテリパック19bの電位V2より高いとき、バッテリパック19aからバッテリパック19bに向けて電流を流す実施例を示している。
【0053】
図4に示す実施例において、パックバランス制御は時刻T1から開始する。パックバランス制御実行回路40は、パックバランス制御を行うとき、スイッチング素子29aを閉じる指示を含む信号をバッテリコントローラ30aに制御周期C0ごとに伝達する。バッテリコントローラ30aは、スイッチング素子29aを閉じる指示を含む信号を受け取ることにより、スイッチング素子29aのゲートに電圧を印加する。スイッチング素子29aは、ゲートに電圧が印可されることによって、バッテリセル28aと電力経路26との間を導通するように閉じる。
【0054】
同時に、パックバランス制御実行回路40は、スイッチング素子29bをデューティ比DR0で開閉する指示を含む信号をバッテリコントローラ30bに制御周期C0ごとに伝達する。バッテリコントローラ30bは、スイッチング素子29bをデューティ比DR0で開閉する指示を含む信号を受け取ることにより、スイッチング素子29bのゲートにデューティ比DR0で電圧を印加する、すなわち制御周期C0に対して、時間D1の間、スイッチング素子29aのゲートに電圧を印加して、残りの時間D2の間、スイッチング素子29aのゲートに電圧を印加しない。スイッチング素子29bは、ゲートに電圧がデューティ比DR0で印可されることによって、バッテリセル28bと電力経路26との間をデューティ比DR0で導通するように開閉する、すなわち制御周期C0に対して、時間D1の間、バッテリセル28bと電力経路26との間を導通するように閉じて、残りの時間D2の間、バッテリセル28bと電力経路26との間を導通しないように開く。
【0055】
制御周期C0にわたって、スイッチング素子29aが閉じ続けることにより、バッテリセル28aは電力経路26と導通し続ける一方、スイッチング素子29bがデューティ比DR0で開閉することにより、バッテリセル28bはデューティ比DR0で電力経路26と導通する。したがって、バッテリパック19aとバッテリパック19bとの間で、デューティ比DR0の間欠的な充放電が行われる。
【0056】
図3において、走行準備動作判断回路41は、電動二輪車1を走行させるための運転者の準備動作が行われたか否かを判断する。より詳しくは、ブレーキスイッチ14により、ブレーキを解除する要求を含む信号がコントロールユニット20に伝達されているとき、又は運転者による変速要求を含む信号がコントロールユニット20に伝達されているとき、走行準備動作判断回路41は、運転者の準備動作が行われたと判断する。一方、上述の条件のいずれも満たしていないとき、走行準備動作判断回路41は、運転者の準備動作が行われていないと判断する。
【0057】
制御実行期間判断回路42は、制御実行期間T0が経過したか否かを判断する。
【0058】
電力供給回路43は、スイッチング素子29a又はスイッチング素子29bのいずれか若しくは両方を閉じる指示を含む信号を、対応するバッテリコントローラ30a,30bに伝達する。バッテリコントローラ30a,30bは、それぞれ、スイッチング素子29a,29bを閉じる指示を含む信号を受け取ることにより、スイッチング素子29a,29bのゲートに電圧を印加する。スイッチング素子29a,29bは、それぞれ、ゲートに電圧が印可されることによって、バッテリセル28a,28bと電力経路26との間を導通するように閉じる。したがって、バッテリパック19a又はバッテリパック19bのいずれか若しくは両方からインバータ回路27を介してモータ16に電力が供給される。
【0059】
メモリ20bには、上述の車両停止判断回路34、制御実行期間設定回路35、温度閾値設定回路36、バッテリ温度判断回路37、デューティ比設定回路38、電位差判断回路39、パックバランス制御実行回路40、走行準備動作判断回路41、制御実行期間判断回路42、及び電力供給回路43の各機能を実行させるための処理プログラムが記憶されている。
【0060】
プロセッサ20aは、メモリ20bに記憶されている車両停止判断回路34、制御実行期間設定回路35、温度閾値設定回路36、バッテリ温度判断回路37、デューティ比設定回路38、電位差判断回路39、パックバランス制御実行回路40、走行準備動作判断回路41、制御実行期間判断回路42、及び電力供給回路43の各機能を実行するための処理プログラムを実行することで、車両停止判断回路34、制御実行期間設定回路35、温度閾値設定回路36、バッテリ温度判断回路37、デューティ比設定回路38、電位差判断回路39、パックバランス制御実行回路40、走行準備動作判断回路41、制御実行期間判断回路42、及び電力供給回路43の各機能を実現する。
【0061】
本実施形態では、プロセッサ20aは、集積回路として、車両停止判断回路34、制御実行期間設定回路35、温度閾値設定回路36、バッテリ温度判断回路37、デューティ比設定回路38、電位差判断回路39、パックバランス制御実行回路40、走行準備動作判断回路41、制御実行期間判断回路42、及び電力供給回路43を個別に含んでいるが、車両停止判断回路34、制御実行期間設定回路35、温度閾値設定回路36、バッテリ温度判断回路37、デューティ比設定回路38、電位差判断回路39、パックバランス制御実行回路40、走行準備動作判断回路41、制御実行期間判断回路42、及び電力供給回路43の各機能がまとめられたマイクロプロセッサであってもよい。
【0062】
[パックバランス制御]
図5は、図2の電気回路25によって行われるパックバランス制御のフローチャートであって、特にプロセッサ20aによって実行される制御処理を示している。コントロールユニット20のメモリ20bには、図示するフローチャートに沿ってパックバランス制御を行うためのプログラムが記憶されている。
【0063】
ステップS1において、車両停止判断回路34により、第1の制御開始条件として、アクセルグリップセンサ12、車速センサ18、及びサイドスタンドセンサ24から入力される信号に基づいて、電動二輪車1が停止しているか否かが判断される。電動二輪車1が停止していないと判断された場合(ステップS1がNO)、パックバランス制御が行われないように、制御処理は終了する一方、電動二輪車1が停止していると判断された場合(ステップS1がYES)、制御処理は次のステップS2に進む。
【0064】
ステップS2において、制御実行期間設定回路35により、パックバランス制御が行われる制御実行期間T0が設定される。
【0065】
次に、ステップS3において、温度閾値設定回路36により、温度閾値K0が設定される。
【0066】
次に、ステップS4において、バッテリ温度判断回路37により、第2の制御開始条件として、温度センサ33a,33bからバッテリコントローラ30a,30bを介してコントロールユニット20に向けて伝達されるバッテリパック19a,19bの温度K1,K2を含む信号に基づいて、各バッテリパック19a,19bの温度K1,K2が温度閾値K0より小さいか否かが判断される。少なくとも一方のバッテリパックの温度が温度閾値K0より大きいと判断された場合(ステップS4がNO)、バッテリパック19a,19bの温度による劣化を防ぐため、パックバランス制御が行われないように、制御処理は終了する。一方、両方のバッテリパック19a,19bの温度K1,K2が温度閾値K0より小さいと判断された場合(ステップS4がYES)、制御処理は次のステップS5に進む。
【0067】
ステップS5において、デューティ比設定回路38により、パックバランス制御のデューティ比DR0が設定される。
【0068】
次に、ステップS6において、電位差判断回路39により、電位測定回路32a,32bからバッテリコントローラ30a,30bを介してコントロールユニット20に向けて伝達されるバッテリパック19a,19bの電位V1,V2を含む信号に基づいて、バッテリパック19aとバッテリパック19bとの間の電位差ΔVが計算されて、第3の制御開始条件として、電位差ΔVが予め決められた電位差閾値ΔV0より大きいか否かが判断される。電位差ΔVが電位差閾値ΔV0より小さいと判断された場合(ステップS6がNO)、パックバランス制御を行う必要がないため、制御処理は終了する一方、電位差ΔVが電位差閾値ΔV0より大きいと判断された場合(ステップS6がYES)、制御処理は次のステップS7に進む。
【0069】
ステップS7において、パックバランス制御実行回路40により、制御周期C0の間、上述のパックバランス制御が行われる。その後、制御周期C0が経過するとき、制御処理は次のステップS8に進む。または、制御周期C0の間に、走行準備動作判断回路41により、運転者の準備動作が行われたと判断される、若しくはバッテリ温度判断回路37により、バッテリパック19a,19bのうち、少なくとも一方のバッテリパックの温度が温度閾値K0より大きいと判断されるとき、パックバランス制御は中断されて、制御処理は次のステップS8に進む。
【0070】
図4のステップS8において、走行準備動作判断回路41により、第1の制御終了条件として、電動二輪車1を走行させるための運転者の準備動作が行われたか否かが判断される。運転者の準備動作が行われたと判断された場合(ステップS8がYES)、制御処理は終了する一方、運転者の準備動作が行われていないと判断された場合(ステップS8がNO)、制御処理は次のステップS9に進む。
【0071】
ステップS9において、制御実行期間判断回路42により、第2の制御終了条件として、制御実行期間T0が経過したか否かが判断される。制御実行期間T0が経過したと判断された場合(ステップS9がYES)、制御処理は終了する一方、制御実行期間T0が経過していないと判断された場合(ステップS9がNO)、制御処理はステップS4に戻る。
【0072】
したがって、制御処理はステップS4からステップS9を制御周期C0ごとに繰り返す。
【0073】
図6は、図4のパックバランス制御によるバッテリパック19a,19bの電位V1,V2の推移を示すグラフである。
【0074】
時刻T1において、バッテリパック19aの電位V1はバッテリパック19bの電位V2より高い。その後、パックバランス制御が行われることにより、バッテリパック19aからバッテリパック19bに向けて電流が流れる。上述のように、パックバランス制御は、デューティ比DR0の間欠的な充放電として行われるため、バッテリパック19aとバッテリパック19bとの間で流れる電流が過電流とならないように、バッテリパック19aからバッテリパック19bに向けて流れる単位時間当たりの電気量が抑えられて、バッテリパック19aとバッテリパック19bとの間の電位差ΔVが徐々に小さくなる。
【0075】
その後、時刻T2において、バッテリパック19aとバッテリパック19bとの間の電位差ΔVが電位差閾値ΔV0より小さくなることにより、ステップS6において、制御処理が終了する。
【0076】
コントロールユニット20は、時刻T2において、パックバランス制御を終了するとき、スイッチング素子29a,29bを開く指示を含む信号をバッテリコントローラ30a,30bにそれぞれ伝達する。バッテリコントローラ30a,30bは、それぞれ、スイッチング素子29a,29bを開く指示を含む信号を受け取ることにより、スイッチング素子29a,29bのゲートに電圧を印加しなくなる。スイッチング素子29a,29bは、それぞれ、ゲートに電圧が印可されないことによって、バッテリセル28a,28bと電力経路26との間を導通しないように開く。したがって、バッテリパック19aとバッテリパック19bとの間で、充放電が行われなくなる。
【0077】
上述のパックバランス制御の実施例は、バッテリパック19aからバッテリパック19bに向けて電流が流れる場合を示しているが、バッテリパック19bからバッテリパック19aに向けて電流が流れる場合も同様に行われる。
【0078】
以上のステップS1からステップS9までを含むフローに沿って、パックバランス制御は行われる。
【0079】
[モータへの電力供給方法]
電動二輪車1は、2つのバッテリパック19a,19bからモータ16に電力を供給するモードを有する。
【0080】
図7は、図2の電気回路25によって行われる電力供給のフローチャートであって、特にコントロールユニット20のプロセッサ20aによって行われる制御処理を示している。コントロールユニット20のメモリ20bには、図示するフローチャートに沿ってモータ16への電力供給を行うためのプログラムが記憶されている。
【0081】
ステップS11において、電位差判断回路39により、電位測定回路32a,32bからバッテリコントローラ30a,30bを介してコントロールユニット20に向けて伝達されるバッテリパック19a,19bの電位V1,V2を含む信号に基づいて、バッテリパック19aとバッテリパック19bとの間の電位差ΔVが計算されて、電位差ΔVが予め決められた電位差閾値ΔV0より小さいか否かが判断される。
【0082】
ステップS11において、電位差ΔVが電位差閾値ΔV0より小さいと判断された場合(ステップS11がYES)、制御処理はステップS12に進む。ステップS12において、電力供給回路43により、スイッチング素子29aとスイッチング素子29bの両方を閉じる指示を含む信号が、対応するバッテリコントローラ30aとバッテリコントローラ30bの両方にそれぞれ伝達される。バッテリコントローラ30a,30bは、それぞれ、スイッチング素子29a,29bを閉じる指示を含む信号を受け取ることにより、スイッチング素子29a,29bのゲートに電圧を印加する。スイッチング素子29a,29bは、それぞれ、ゲートに電圧が印可されることによって、バッテリセル28a,28bと電力経路26との間を導通するように閉じる。したがって、バッテリパック19aとバッテリパック19bの両方からインバータ回路27を介してモータ16に電力が供給される。モータ16は、バッテリパック19aとバッテリパック19bの両方からの電力供給を受けて、大きな駆動力を出力する。
【0083】
ステップS11において、電位差ΔVが電位差閾値ΔV0より大きいと判断された場合(ステップS11がNO)、制御処理はステップS13に進む。ステップS13において、電力供給回路43により、バッテリパック19aとバッテリパック19bとの間で電流が流れることを抑制するため、バッテリパック19a,19bの内、電位が高いバッテリパックのスイッチング素子を閉じる指示を含む信号が、対応するバッテリコントローラ30a又はバッテリコントローラ30bのいずれかに伝達される。バッテリコントローラ30a,30bは、それぞれ、スイッチング素子29a,29bを閉じる指示を含む信号を受け取ることにより、スイッチング素子29a,29bのゲートに電圧を印加する。スイッチング素子29a,29bは、それぞれ、ゲートに電圧が印可されることによって、バッテリセル28a,28bと電力経路26との間を導通するように閉じる。したがって、バッテリパック19a又はバッテリパック19bのいずれかからインバータ回路27を介してモータ16に電力が供給される。モータ16は、単一のバッテリパックの電力供給を受けて、駆動力を出力する。
【0084】
ステップS12又はステップS13の後、制御処理はステップS14に進む。ステップS14において、車両停止判断回路34により、図4に示すフローチャートのステップS1と同様に、アクセルグリップセンサ12、車速センサ18、及びサイドスタンドセンサ24から入力される信号に含まれる情報に基づいて、電動二輪車1が停止しているか否かが判断される。
【0085】
ステップS14において、電動二輪車1が停止していないと判断された場合(ステップS14がNO)、制御処理はステップS11に戻る一方、電動二輪車1が停止していると判断された場合(ステップS14がYES)、制御処理は終了する。
【0086】
また、本実施形態のコントロールユニット20は、モータ16の回生電力による2つのバッテリパック19a,19bの充電についての制御処理を行う。コントロールユニット20は、モータ16が回生電力を生じるとき、該回生電力によって、2つのバッテリパック19a,19bの内、電位が低い低電位バッテリパックを充電するように、スイッチング素子29a又はスイッチング素子29bを閉じる指示を含む信号をバッテリコントローラ30a又はバッテリコントローラ30bに伝達する。モータ16の回生電力により、低電位バッテリパックを優先的に充電することによって、高電位バッテリパックと低電位バッテリパックの間の電位差ΔVを小さくする。
【0087】
[作用効果]
このように構成した電動二輪車1は、以下の特徴を有する。
【0088】
本実施形態の電動二輪車1は、電動二輪車1を走行させるモータ16と、
モータ16に電力を供給する2つのバッテリパック19a,19bと、
モータ16と2つのバッテリパック19a,19bとを電気的に接続する電力経路26と、
電力経路26の電気的な遮断と接続を切り替えるスイッチング素子29a,29bと、
スイッチング素子29a,29bを制御するバッテリコントローラ30a,30bとコントロールユニット20であって、所定の制御開始条件を満たすとき、スイッチング素子29a,29bの開閉を繰り返して、2つのバッテリパック19a,19bの間で間欠的な充放電を行い、2つのバッテリパック19a,19bの電位差ΔVを小さくするパックバランス制御を行う、バッテリコントローラ30a,30bとコントロールユニット20と、を備えている。
【0089】
本実施形態によれば、間欠的な充放電により、2つのバッテリパック19a,19bの間で流れる単位時間当たりの電気量を抑えながら、2つのバッテリパック19a,19bの電位差ΔVを小さくできる。これによって、2つのバッテリパック19a,19bの間で流れる電流が過電流となることを防いで、電力経路26、2つのバッテリパック19a,19b、及び他の電装部品を保護する。また、2つのバッテリパック19a,19bの電位差ΔVを小さくすることによって、電動二輪車1が走行するとき、2つのバッテリパック19a,19bの間で電流が流れることを抑制する。
【0090】
また、電動二輪車1は、電動二輪車1が停止していることを示す情報を検出して該情報をコントロールユニット20に伝達するアクセルグリップセンサ12、車速センサ18、及びサイドスタンドセンサ24、を備えており、
制御開始条件は、コントロールユニット20によって、情報に基づいて、電動二輪車1が停止していると判断されることである。
【0091】
本実施形態によれば、アクセルグリップセンサ12、車速センサ18、及びサイドスタンドセンサ24によって、電動二輪車1が停止していると判断されたとき、パックバランス制御が行われることにより、電動二輪車1が走行しているとき、パックバランス制御は行われないため、走行フィーリングへの影響を抑制しつつ、2つのバッテリパック19a,19bの電位差ΔVを小さくすることができる。
【0092】
また、2つのバッテリパック19a,19bは、2つのバッテリパック19a,19bのそれぞれの温度K1,K2を検出して該温度K1,K2をコントロールユニット20に伝達する温度センサ33a,33b、をそれぞれ有しており、
制御開始条件は、コントロールユニット20によって、温度K1,K2が予め決められた温度閾値K0より低いと判断されることである。
【0093】
本実施形態によれば、2つのバッテリパック19a,19bのそれぞれの温度K1,K2が温度閾値K0より低いと判断されたとき、パックバランス制御が行われることにより、2つのバッテリパック19a,19bのそれぞれの温度K1,K2が高温になり難いため、2つのバッテリパック19a,19bの温度による劣化を防ぎ易い。
【0094】
また、電動二輪車1は、外気温を検出して該外気温をコントロールユニット20に伝達する外気温センサ21、を備えており、
コントロールユニット20は、外気温が高くなるにつれて、温度閾値K0が低くなるように設定する。
【0095】
本実施形態によれば、外気温が高い場合、より低い温度閾値K0が設定されることによって、パックバランス制御が行われ難くなり、2つのバッテリパック19a,19bの温度による劣化を防ぎ易い。また、外気温が低い場合、より高い温度閾値K0が設定されることによって、パックバランス制御が行われ易くなり、2つのバッテリパック19a,19bの暖気を促すことができる。
【0096】
また、コントロールユニット20は、温度K1,K2が大きくなるにつれて、間欠的な充放電のデューティ比DR0が小さくなるように設定する。
【0097】
本実施形態によれば、温度K1,K2が高い場合、間欠的な充放電を小さなデューティ比DR0で行うことによって、2つのバッテリパック19a,19bの温度による劣化を防ぎ易くなる。また、温度K1,K2が低い場合、間欠的な充放電を大きなデューティ比DR0で行うことによって、2つのバッテリパック19a,19bの電位差ΔVを小さくし易くなる。
【0098】
また、電動二輪車1は、2つのバッテリパック19a,19bを流れる電流を測定して、電流が予め決められた保護電流閾値より大きいとき、2つのバッテリパック19a,19bの電力の供給を停止する保護回路31a,31b、を備えており、
コントロールユニット20は、電流が保護電流閾値より小さくなるように、間欠的な充放電のデューティ比DR0を設定する。
【0099】
本実施形態によれば、2つのバッテリパック19a,19bを流れる電流が保護電流閾値より小さくなるように、間欠的な充放電のデューティ比DR0を設定することにより、2つのバッテリパック19a,19bの間で流れる電流が過電流となること、及び2つのバッテリパック19a,19bの温度が上昇しすぎることを防ぐようにバッテリパック19a,19bの電力の供給を停止する保護回路31a,31bの作動を防ぎつつ、2つのバッテリパック19a,19bの電位差ΔVを小さくすることができる。
【0100】
また、電動二輪車1は、2つのバッテリパック19a,19bのそれぞれの電位V1,V2を測定する電位測定回路32a,32bを備えており、
コントロールユニット20は、電位測定回路32a,32bによって測定された2つのバッテリパック19a,19bのそれぞれの電位V1,V2から2つのバッテリパック19a,19bの電位差ΔVを計算して、電位差ΔVが予め決められた電位差閾値ΔV0以下であるとき、2つのバッテリパック19a,19bからモータ16に電力を供給する。
【0101】
本実施形態によれば、電位差ΔVが小さい2つのバッテリパック19a,19bからモータ16に電力を供給することによって、2つのバッテリパック19a,19bの間で電流が流れることを抑制すると共に、電動二輪車1の走行性能を向上させることができる。
【0102】
また、制御開始条件は、コントロールユニット20によって、2つのバッテリパック19a,19bの電位差ΔVが電位差閾値ΔV0より大きいと判断されることである。
【0103】
本実施形態によれば、2つのバッテリパック19a,19bの電位差ΔVが大きいとき、パックバランス制御が行われることによって、2つのバッテリパック19a,19bの電位差ΔVを小さくすることができる。また、2つのバッテリパック19a,19bの電位差ΔVが小さいとき、2つのバッテリパック19a,19bの間で流れる電流が過電流とならないため、パックバランス制御は行われない。
【0104】
また、コントロールユニット20は、パックバランス制御を行うとき、2つのバッテリパック19a,19bの内、電位が高い高電位バッテリパックから、電位が低い低電位バッテリパックに向けて、電流を流して、高電位バッテリパックと低電位バッテリパックとの間の電位差ΔVを小さくするように、スイッチング素子29a,29bを制御する。
【0105】
本実施形態によれば、高電位バッテリパックと低電位バッテリパックの間の電位差ΔVを小さくできる。
【0106】
また、コントロールユニット20は、モータ16が回生電力を生じるとき、該回生電力によって、2つのバッテリパック19a,19bの内、電位が低い低電位バッテリパックを充電するように、スイッチング素子29a,29bを制御する。
【0107】
本実施形態によれば、モータ16の回生電力により、低電位バッテリパックを優先的に充電することによって、高電位バッテリパックと低電位バッテリパックの間の電位差ΔVを小さくできる。
【0108】
また、コントロールユニット20は、電動二輪車1を走行させるための運転者の準備動作が行われたと判断するとき、パックバランス制御を停止する。
【0109】
本実施形態によれば、運転者が、電動二輪車1を走行させるための準備動作、例えば、ブレーキの解除、又は変速の操作などを行うとき、パックバランス制御が停止されることによって、電動二輪車1の発進性を確保できる。
【0110】
また、コントロールユニット20は、電動二輪車1の状態に応じて、パックバランス制御を実行する制御実行期間T0を設定する。
【0111】
本実施形態によれば、電動二輪車1がサイドスタンド22を使わずに停車しているとき、コントロールユニット20は、電動二輪車1の発進性を確保する必要があると判断して、パックバランス制御の制御実行期間T0を短期間に設定する。一方、電動二輪車1がサイドスタンド22を使って停車しているとき、コントロールユニット20は、電動二輪車1の発進性を確保する必要がないと判断して、パックバランス制御の制御実行期間T0を長期間に設定する。
【0112】
また、2つのバッテリパック19a,19bは、並列接続されていてもよい。
【0113】
本実施形態によれば、電動二輪車1は、2つのバッテリパック19a,19bの内のいずれかのバッテリパックが外されても、少なくとも1つのバッテリパックが電力経路26を介してモータ16と電気的に接続されていれば、走行できる。また、2つのバッテリパック19a,19bの間において、電位差ΔVが生じ易い一方、パックバランス制御により、電位差ΔVを小さくできる。
【0114】
また、本実施形態の電動二輪車1の制御方法は、電動二輪車1を走行させるモータ16と、モータ16に電力を供給する2つのバッテリパック19a,19bと、を電気的に接続する電力経路26の電気的な遮断と接続を切り替えるスイッチング素子29a,29bの開閉を繰り返すことによって、2つのバッテリパック19a,19bの間で間欠的な充放電を行い、2つのバッテリパック19a,19bの電位差ΔVを小さくするパックバランス制御を含む、電動二輪車1の制御方法を提供する。
【0115】
本実施形態に係る制御方法によれば、間欠的な充放電により、2つのバッテリパック19a,19bの間で流れる単位時間当たりの電気量を抑えながら、2つのバッテリパック19a,19bの電位差ΔVを小さくできる。これによって、2つのバッテリパック19a,19bの間で流れる電流が過電流となることを防いで、電力経路26、2つのバッテリパック19a,19b、及び他の電装部品を保護する。また、2つのバッテリパック19a,19bの電位差ΔVを小さくすることによって、電動二輪車1が走行するとき、2つのバッテリパック19a,19bの間で電流が流れることを抑制する。
【0116】
[他の実施形態]
なお、本開示は、上述の実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0117】
上述の実施形態では、電動車両1は電動二輪車であるが、電気自動車であってもよい。
【0118】
上述の実施形態では、2つのバッテリパック19a,19bは、並列接続されているが、直列接続されていてもよい。
【0119】
上述の実施形態では、保護回路31a,31bは、電流測定回路を含んでいるが、代替として、バッテリセル28a,28bに流れる電流に相当するバッテリセル28a,28bの温度を測定する温度測定回路を含んでいてもよい。この場合、測定された温度、すなわち電流相当値が予め決められた保護電流相当閾値より大きいとき、バッテリセル28a,28bと電力経路26との間を遮断する。保護電流相当閾値は、バッテリセル28a,28bが許容できる最大電流が流れるときのバッテリセル28a,28bの温度に基づいて決められている。
【0120】
上述の実施形態では、2つのバッテリパック19a,19bは、それぞれ、温度センサ33a,33bを有しているが、代替として、バッテリパック19a,19bの温度K1,K2に相当するバッテリパック19a,19bの電流を測定する電流測定回路を有していてもよい。この場合、電流測定回路は、それぞれ、測定された電流、すなわち温度相当値を含む信号をバッテリコントローラ30a,30bに伝達する。温度相当値は、電流に限らず、バッテリパック19a,19bの温度K1,K2と相関があり、バッテリパック19a,19bの温度K1,K2の温度を間接的に知ることができる値、例えば所定時間における充放電回数、バッテリパック19a,19bの充電率、外気温、バッテリパック19a,19bの冷媒温度などであってもよい。また、温度相当値は、過去の電動二輪車1の走行状態に応じて補正されてもよい。
【0121】
上述の実施形態では、温度閾値K0は、温度閾値設定回路36により外気温に応じて設定されるが、固定値であってもよい。また、上述の実施形態では、デューティ比DR0は、デューティ比設定回路38によりバッテリパック19a,19bの温度K1,K2に応じて設定されるが、固定値であってもよい。
【0122】
本開示の第1の態様は、
電動車両を走行させるモータと、
前記モータに電力を供給する複数のバッテリパックと、
前記モータと前記複数のバッテリパックとを電気的に接続する電力経路と、
前記電力経路の電気的な遮断と接続を切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子を制御するコントローラであって、所定のバランス制御開始条件を満たすとき、前記スイッチング素子の開閉を繰り返して、前記複数のバッテリパックの間で間欠的な充放電を行い、前記複数のバッテリパックの電位差を小さくするパックバランス制御を行う、前記コントローラと、を備えている、電動車両を提供する。
【0123】
本開示の第2の態様は、前記電動車両は、前記電動車両が停止していることを示す情報を検出して前記情報を前記コントローラに伝達する車両停止センサ、を備えており、
前記所定のバランス制御開始条件は、前記コントローラによって、前記情報に基づいて、前記電動車両が停止していると判断されることである、第1の態様に記載の電動車両を提供する。
【0124】
本開示の第3の態様は、前記複数のバッテリパックは、前記複数のバッテリパックのそれぞれの温度に相当する温度相当値を検出して前記温度相当値を前記コントローラに伝達する温度相当値センサ、をそれぞれ有しており、
前記所定のバランス制御開始条件は、前記コントローラによって、前記温度相当値が予め決められた温度相当閾値より小さいと判断されることである、第1の態様又は第2の態様に記載の電動車両を提供する。
【0125】
本開示の第4の態様は、前記電動車両は、外気温を検出して前記外気温を前記コントローラに伝達する外気温センサ、を備えており、
前記コントローラは、前記外気温が高くなるにつれて、前記温度相当閾値が小さくなるように設定する、第3の態様に記載の電動車両を提供する。
【0126】
本開示の第5の態様は、前記コントローラは、前記温度相当値が大きくなるにつれて、前記間欠的な充放電のデューティ比が小さくなるように設定する、第3の態様又は第4の態様に記載の電動車両を提供する。
【0127】
本開示の第6の態様は、前記電動車両は、前記複数のバッテリパックを流れる電流に相当する電流相当値を測定して、前記電流相当値が予め決められた保護電流相当閾値より大きいとき、前記複数のバッテリパックの電力の供給を停止する保護回路、を備えており、
前記コントローラは、前記電流相当値が前記保護電流相当閾値より小さくなるように、前記間欠的な充放電のデューティ比を設定する、第1の態様から第5の態様のいずれかに記載の電動車両を提供する。
【0128】
本開示の第7の態様は、前記電動車両は、前記複数のバッテリパックのそれぞれの電位を測定する電位測定回路を備えており、
前記コントローラは、前記電位測定回路によって測定された前記複数のバッテリパックのそれぞれの電位から前記複数のバッテリパックの電位差を計算して、前記電位差が予め決められた電位差閾値以下であるとき、前記複数のバッテリパックから前記モータに電力を供給する、第1の態様から第6の態様のいずれかに記載の電動車両を提供する。
【0129】
本開示の第8の態様は、前記所定のバランス制御開始条件は、前記コントローラによって、前記複数のバッテリパックの電位差が前記電位差閾値より大きいと判断されることである、第7の態様に記載の電動車両を提供する。
【0130】
本開示の第9の態様は、前記コントローラは、前記パックバランス制御を行うとき、前記複数のバッテリパックの内、電位が高い高電位バッテリパックから、電位が低い低電位バッテリパックに向けて、電流を流して、前記高電位バッテリパックと前記低電位バッテリパックとの間の電位差を小さくするように、前記スイッチング素子を制御する、第8の態様に記載の電動車両を提供する。
【0131】
本開示の第10の態様は、前記コントローラは、前記モータが回生電力を生じるとき、前記回生電力によって、前記複数のバッテリパックの内、電位が低い低電位バッテリパックを充電するように、前記スイッチング素子を制御する、第7の態様から第9の態様のいずれかに記載の電動車両を提供する。
【0132】
本開示の第11の態様は、前記コントローラは、前記電動車両を走行させるための運転者の準備動作が行われたと判断するとき、前記パックバランス制御を停止する、第1の態様から第10の態様のいずれかに記載の電動車両を提供する。
【0133】
本開示の第12の態様は、前記コントローラは、前記電動車両の状態に応じて、前記パックバランス制御を実行する制御実行期間を設定する、第1の態様から第11の態様のいずれかに記載の電動車両を提供する。
【0134】
本開示の第13の態様は、前記複数のバッテリパックは、並列接続されている、第1の態様から第12の態様のいずれかに記載の電動車両を提供する。
【0135】
本開示の第14の態様は、電動車両を走行させるモータと、前記モータに電力を供給する複数のバッテリパックと、を電気的に接続する電力経路の電気的な遮断と接続を切り替えるスイッチング素子の開閉を繰り返すことによって、前記複数のバッテリパックの間で間欠的な充放電を行い、前記複数のバッテリパックの電位差を小さくするパックバランス制御を含む、電動車両の制御方法を提供する。
【符号の説明】
【0136】
1 電動車両(電動二輪車)
12 アクセルグリップセンサ
14 ブレーキスイッチ
16 モータ
18 車速センサ
19a バッテリパック
19b バッテリパック
20 コントロールユニット
20a プロセッサ
20b メモリ
21 外気温センサ
24 サイドスタンドセンサ
25 電気回路
26 電力経路
27 インバータ回路
28a バッテリセル
28b バッテリセル
29a スイッチング素子
29b スイッチング素子
30a バッテリコントローラ
30b バッテリコントローラ
31a 保護回路
31b 保護回路
32a 電位測定回路
32b 電位測定回路
33a 温度センサ
33b 温度センサ
ΔV 電位差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7