(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090924
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】カバー部材
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20240627BHJP
B60R 19/50 20060101ALI20240627BHJP
B60R 19/48 20060101ALI20240627BHJP
F21S 41/20 20180101ALI20240627BHJP
F21W 102/30 20180101ALN20240627BHJP
【FI】
G01S7/03 246
B60R19/50 B
B60R19/48 B
F21S41/20
F21W102:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207116
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】善村 英治
(72)【発明者】
【氏名】中林 和史
(72)【発明者】
【氏名】井口 大史
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AE01
5J070AE09
5J070AF03
(57)【要約】
【課題】車両の前面に装備されたランプを考慮したレーダー装置のレイアウトとレーダー装置の照射範囲の確保とを両立する。
【解決手段】車両1の前部に装着されており、前面部3Aとコーナ部3Bを有するバンパ3において、コーナ部3Bに配置されたレーダー装置20と、前面部3Aにおいてレーダー装置10に対して車幅方向の内側に隣接して配置されたランプ10とを一体的に覆うカバー部材30であって、カバー部材30は、ランプ10に重複する領域に設けられたランプカバー領域31と、レーダー装置20と重複する領域に設けられておりランプカバー領域31と一体的に形成されたレーダーカバー領域32と、を有し、レーダーカバー領域32は、レーダー装置10の照射性能に基づき設定された湾曲形状をなし、且つ、レーダーカバー領域32の厚さは、カバー部材30における他部位に比べて薄く形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部に装着されており、前記車両の前記前部に沿って延在する前面部の車両幅方向両側で前記車両の側部側へ向かって屈曲させたコーナ部を有するバンパにおいて、前記コーナ部に配置されたレーダー装置と、前記前面部において前記レーダー装置に対して車幅方向の内側に隣接して配置されたランプとを一体的に覆うカバー部材であって、
前記カバー部材は、
前記ランプに重複する領域に設けられたランプカバー領域と、
前記レーダー装置と重複する領域に設けられており前記ランプカバー領域と一体的に形成されたレーダーカバー領域と、を有し、
前記レーダーカバー領域は、
前記レーダー装置の照射性能に基づき設定された湾曲形状をなし、且つ、前記レーダーカバー領域の厚さは、前記カバー部材における他部位に比べて薄く形成されている
ことを特徴とする、カバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、車両の前部に装着されたランプのカバー部材に関し、特にレーダー装置を搭載した車両におけるカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されたレーダー装置の出力に基づき車両と障害物の位置関係を認識し、衝突可能性がある場合に自動的にブレーキ出力を行ったり、警報したりする技術が実用化されている。例えば、特許文献1には、車体前面に装備されるフロントモジュールパネル上の異なる部位に複数のセンサやカメラを配設する技術が開示されている。これによれば、異なる部位に配置したセンサやカメラから情報を取得することで、情報の精度を高めることができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両にレーダー装置を装着するにあたり、レーダー装置の照射範囲を確保して感度よく障害物を検出するためには、車両に対してレーダー装置を装着する高さ及び車幅方向の位置が重要になってくる。
上記の特許文献1のように車両の前面にレーダー装置を装着する場合、車両の前面に装備された各種ランプとのレイアウトを考慮しながら、適切な高さ及び車幅方向の位置にレーダー装置を装着する必要がある。
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、車両の前面にレーダー装置を装着するにあたり、車両の前面に装備された各種ランプを考慮したレーダー装置のレイアウトとレーダー装置の照射範囲の確保とを両立するうえで改善の余地があった。
本件は、上記のような課題に鑑み創案されたものであり、車両の前面に装備された各種ランプを考慮したレーダー装置のレイアウトとレーダー装置の照射範囲の確保とを両立できるようにすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
【0007】
本適用例に係るカバー部材は、車両の前部に装着されており、前記車両の前記前部に沿って延在する前面部の車両幅方向両側で前記車両の側部側へ向かって屈曲させたコーナ部を有するバンパにおいて、前記コーナ部に配置されたレーダー装置と、前記前面部において前記レーダー装置に対して車幅方向の内側に隣接して配置されたランプとを一体的に覆うカバー部材であって、前記カバー部材は、前記ランプに重複する領域に設けられたランプカバー領域と、前記レーダー装置と重複する領域に設けられており前記ランプカバー領域と一体的に形成されたレーダーカバー領域と、を有し、前記レーダーカバー領域は、前記レーダー装置の照射性能に基づき設定された湾曲形状をなし、且つ、前記レーダーカバー領域の厚さは、前記カバー部材における他部位に比べて薄く形成されていることを特徴とする。
【0008】
これによれば、カバー部材は、コーナ部に配置されたレーダー装置とレーダー装置に対して車幅方向の内側に隣接して配置されたランプとを一体的に覆うものである。かかるカバー部材において、レーダーカバー領域は、前記レーダー装置の照射性能に基づき設定された湾曲形状をなし、且つ、前記レーダーカバー領域の厚さは、前記カバー部材における他部位に比べて薄く形成されていることで、レーダー装置の照射範囲を確保できる。
すなわち、このカバー部材によれば、車両の前面に装備されたランプを考慮したレーダー装置のレイアウトとレーダーの照射範囲の確保とを両立することができる。
【発明の効果】
【0009】
本件によれば、車両の前面に装備されたランプを考慮したレーダー装置のレイアウトとレーダー装置の照射範囲の確保とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本適用例に係るカバー部材が装着されたバンパを有する車両の外観斜視図である。
【
図2】カバー部材の取り付け構造を説明するための分解斜視図である。
【
図3】カバー部材を
図2の矢印Aから見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。以下の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせられる。
【0012】
以下の説明では、本適用例に係るカバー部材の適用された車両を基準にして前後方向,左右方向及び上下方向が定められている。左右方向のうち、車両前方を向いたときの左側を左方向とし、右側を右方向とする。前後方向を車長方向ともいい、左右方向を車幅方向ともいい、上下方向を車高方向ともいう。図中符号FRは前方を示し、符号RRは後方を示す。符号LHは左方を示し、符号RHは右方を示す。符号UPは上方を示し、符号DWは下方を示す。
【0013】
[1.構成]
図1は、本適用例に係るカバー部材30が装着されたバンパ3を有する車両1の外観斜視図である。
図1では、車両1の一例としてキャブ2を有するトラックが挙げられているが、車両1は、トラックに限らず、バス、普通自動車などどのような車種であってもよい。なお、
図1では、車両1の一部を省略している。また、以下に説明する車両1及びカバー部材30は左右で略同様の(左右対称の)構成を有するため、以下では、左側について説明し、右側の詳細な説明は省略する。
【0014】
キャブ2は、車両1の前部に設けられており、キャブ2内部には図示しない運転席や客席が設置される。キャブ2の前面2Aで下端部にはバンパ3が設けられている。
バンパ3は、キャブ2の前面2A(車両1の前部)に配置された前面部3Aと、キャブ2の前面2Aと側面2Bとの間の角部2Cに配置されたコーナ部3Bとを有する。
【0015】
図1に示すように、前面部3Aは、バンパ3のうちキャブ2の前面2Aで車両幅方向に延在する部位である。コーナ部3Bは、バンパ3のうち車両幅方向両側で車両1の側部側へ向かって屈曲させた部位であり、バンパ3のうちキャブ2の角部2Cに沿う屈曲形状をなす部位とも言える。コーナ部3Bの屈曲形状は、空力特性を考慮して、滑らかな曲面状に形成されている。
【0016】
バンパ3には、フォグランプ10(
図1中破線で示す)と側方衝突検出レーダー20(
図1中破線で示す)とが設けられている。
フォグランプ10(以下、「ランプ10」とも言う)は、車両の前方に向けて光を照射する照射装置(ランプ)の一例であり、周知のように霧などにより特に視界が悪い状態で使用される。
側方衝突検出レーダー20(以下、「レーダー20」とも言う)は、車両1の周囲に向けてレーダーを照射して、車両1の周囲に存在する他車両や、物体、人物等を検出するための検出用レーダー装置(レーダー装置)の一例である。この側方衝突検出レーダー20は、車両1の前方及び側方を含む照射範囲Pを監視して、衝突可能性がある場合に自動的にブレーキ出力を行ったり、警報したりするための側方衝突警報装置(Blind Spot Information System,BSIS)の一構成要素として設けられている。
【0017】
ランプ10は、バンパ3の前面部3Aの車幅方向端部においてコーナ部3Bの近傍に配置されている。詳しくは、ランプ10は、コーナ部3Bに対し車幅方向内側に隣接して配置されている。
レーダー20は、
図1の照射範囲Pを検出範囲として設定するために、バンパ3のコーナ部3Bに配置されている。すなわち、レーダー20は、ランプ10に対して車幅方向外側に隣接して配置されている。
【0018】
上記のようにランプ10とレーダー20とは、車幅方向に隣接して(横置きレイアウトで)配置されている。ここで、レーダー20の配置は、照射範囲Pに基づきコーナ部3Bに設定されている。一方、ランプ10の配置は、レーダー20の配置を基準とし、後述のカバー部材30によりレーダー20と一体的にカバーされるようにレーダー20の配置箇所(コーナ部3B)に隣接し、且つ、車両1の前方への光照射機能を確保しうる位置に設定されたものと言える。
【0019】
バンパ3には、ランプ10とレーダー20とを一体的に覆うカバー部材30が取り付けられている。カバー部材30は、ランプ10とレーダー20とを個別の部材で覆うのではなく、ランプ10とレーダー20とをまとめて一部材で覆うように形成された蓋体である。
ランプ10とレーダー20とを一体的に覆うため、カバー部材30は、
図1に示すように、バンパ3の前面部3Aの車幅方向端部からコーナ部3Bとに重複する領域に配設されている。
【0020】
カバー部材30の形状は、バンパ3のコーナ部3Bの屈曲した形状に沿って屈曲した湾曲形状に形成されている。すなわち、カバー部材30の形状は、車両1の上側から見てL字型をなすとともに、コーナ部3Bの屈曲形状と同様に、空力特性を考慮して、滑らかな曲面状に形成されている。
また、カバー部材30において車両1の外側を向いた表面(おもてめん)は、空力特性を考慮して、段差やつなぎ目のない滑らかな曲面をなす。
【0021】
カバー部材30において、ランプ10に重複する領域はランプカバー領域31をなし、レーダー20に重複する領域はレーダーカバー領域32をなす。
ランプカバー領域31とレーダーカバー領域32とは車幅方向に隣接して設けられており、ランプカバー領域31はレーダーカバー領域32に対し車幅方向の内側に配置されている。逆に言えば、レーダーカバー領域32はランプカバー領域31に対し車幅方向の外側に配置されている。
ランプカバー領域31とレーダーカバー領域32とは、一部材で一体的に形成されている。
【0022】
図2は、カバー部材30の取り付け構造を説明するための分解斜視図である。
図2においてバンパ3は、車両1の骨格をなすフレーム4の前面に固定される。
図2に示すように、バンパ3において、ランプ10及びレーダー20の配置箇所、すなわち、前面部3Aの車幅方向端部からコーナ部3Bにわたる領域には、ランプ10及びレーダー20を設置するための開口3Cが設けられている。
【0023】
開口3C内において、コーナ部3Bにはレーダー20を取り付けるための第一ブラケット33が設けられている。この第一ブラケット33に対して車両1の外側から(車両1の前方から後方へ向かって)レーダー20が取り付けられる。
開口3C内において、第一ブラケット33に対し車幅方向内側に隣接してランプ10を取り付けるための第二ブラケット34が設けられており、第二ブラケット34に対して車両1の内側から(車両1の後方から前方へ向かって)ランプ10が取り付けられる。
【0024】
この開口3Cに対し、車両1の外側からカバー部材30が取り付けられる。詳しくは、カバー部材30で車両1の内側を向いた面の四隅に爪部35(
図2において破線で示す)が設けられており、開口3C内には爪部35が係合する穴36が設けられている。各爪部35を穴36に装着することで、開口3C(バンパ3)にカバー部材30が取り付けられる。カバー部材30をランプ10やレーダー20ではなくバンパ3に取り付ける構造であるため、カバー部材30に軽度の破損が生じた場合、ランプ10やレーダー20を取り外すことなく、カバー部材30の交換だけで簡単に対応することができる。
【0025】
次に、カバー部材30の詳細構造を説明する。
カバー部材30において、ランプカバー領域31にはランプ10から照射された光を車両1の前方へ通過させるための窓部31Aが設けられている。窓部31Aは、カバー部材30に前後方向に沿って連通させた開口をなす。
レーダーカバー領域32には、レーダー20から照射されたレーダー波を車両1の前方及び側方の照射範囲Pへ通過させるための通過面32Aが設けられている。この通過面32Aは、カバー部材30を連通させない壁面として形成され、且つ、レーダー波を通過させるために、その厚さがカバー部材30における他部位に比べて薄く形成されている。通過面32Aの厚さの具体的な寸法は、レーダー波を所定の照射範囲Pへ照射するために要求されるカバー体の厚さとして、レーダー20の照射性能に応じて予め決定されている。
【0026】
レーダーカバー領域32は、コーナ部3Bに配置されるため、コーナ部3Bの屈強形状に沿った湾曲形状をなす。
図3は、カバー部材30を
図2の矢印Aから見た断面図である。
図3に示すように、レーダーカバー領域32は、車両1の上方から見たとき、車幅方向外側へ向かうにつれて車両1の後方に位置する湾曲形状(
図3において符号Rで示す)をなす。この湾曲形状Rは、レーダー20の照射性能に基づき設定されている。すなわち、レーダーカバー領域32の湾曲形状Rは、レーダー20から照射されたレーダー波を所定の照射範囲Pに照射し得る形状として、レーダー20の照射性能に応じて予め決定されている。具体的に言えば、湾曲形状Rの曲率が、レーダー20の照射性能に応じて予め所定値に決定されている。
【0027】
また、ランプカバー領域31において車幅方向内側の端部には、車幅方向外側へ向かうほど車両1の前方に位置する傾斜面部31Bが形成されている。この傾斜面部31Bは、
バンパ3の表面(おもてめん)から緩やかに立ち上がる形状をなす。言い換えれば、前方へのふくらみが小さく抑制されている。このことは空力改善に寄与する。
【0028】
[3.作用効果]
上記の適用例に係るカバー部材30は、コーナ部3B近傍で車幅方向に隣接して配置されたレーダー20とランプ10とを一体的に覆うものである。かかるカバー部材30において、レーダーカバー領域32がレーダー20の照射性能に基づき設定された湾曲形状をなし、且つ、レーダーカバー領域32の厚さがカバー部材30における他部位に比べて薄く形成されているとで、レーダー20の照射範囲Pを確保できる。
すなわち、このカバー部材30によれば、車両1の前面に装備されたランプ10を考慮したレーダー20のレイアウトとレーダー20の照射範囲の確保とを両立することができる。
【0029】
また、カバー部材30がレーダー20とランプ10とを一体的に覆った構造(カバー部材の一体化)により、ランプ10とレーダー20とを別体のカバー部材で覆う構造と比較的して、部品点数を削減することができるとともに取り付け構造や塗装工程を簡素化することができる。このことはコスト低減に寄与する。
また、カバー部材30では、ランプ10とレーダー20とを別体のカバー部材で覆う構造と比較的して、バンパ3の表面(おもてめん)における段差や凹凸が抑制される。そのため、空力特性の改善に寄与する。
[3.その他]
【0030】
上述した適用例では、ランプ10としてフォグランプを例に挙げたが、ランプ10はフォグランプに限らず、車両1の前方へ光を照射する照明装置であれば、どのような種類のランプであってもよい。また、レーダー20として側方衝突検出レーダーを例に挙げたが、レーダー20は、車両の前方及び側方を含む照射範囲Pへ検出用レーダー波を照射するレーダー装置であれば、どのような種類のレーダー装置であってもよい。
また、車両1の種類は、トラックに限らず、バスや、普通自動車などどのような種類の車両であってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 車両
2 キャブ
2A 前面
2B 側面
2C 角部
3 バンパ
3A 前面部
3B コーナ部
3C 開口
4 フレーム
10 フォグランプ(ランプ)
20 側方衝突検出レーダー(レーダー装置)
30 カバー部材
31 ランプカバー領域
31A 窓部
31B 傾斜面部
32 レーダーカバー領域
32A 通過面
33 第一ブラケット
34 第二ブラケット
35 爪部
36 穴