(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090926
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】レーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20240627BHJP
B23K 26/142 20140101ALI20240627BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240627BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240627BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20240627BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B23K26/142
H01M4/04 Z
H01M4/139
H01G11/86
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207121
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】山本 晴彦
【テーマコード(参考)】
4E168
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA26
4E168DA28
4E168FB03
4E168FC04
4E168GA01
4E168GA02
4E168JA01
4E168JA17
4E168JA28
5E078AA14
5E078AB02
5E078FA02
5E078FA24
5H050AA19
5H050BA01
5H050BA14
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050FA05
5H050GA04
5H050GA27
5H050GA29
(57)【要約】
【課題】レーザ加工時の振動を抑制しながら、ヒューム等の粉塵によるレーザの集光性の低下を抑制し得る電極のレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】本開示により、帯状電極をレーザ加工する方法が提供される。ここで開示される方法は、帯状電極を予め設定した加工エリア210に長手方向に搬送すること、および加工エリア210において、電極の一方の表面上を流れる第1気流230と、電極の他方の表面上を流れる第2気流240とを形成した状態で、電極の表面にレーザ照射を行うことを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状電極をレーザ加工する方法であって、
前記電極を予め設定した加工エリアに長手方向に搬送すること、および
前記加工エリアにおいて、前記電極の一方の表面上を流れる第1気流と、前記電極の他方の表面上を流れる第2気流とを形成した状態で、前記電極の表面にレーザ照射を行うこと
を含む、レーザ加工方法。
【請求項2】
前記電極の一方の表面上を流れた第1気流を第1吸入口により吸入し、前記電極の他方の表面上を流れた第2気流を第2吸入口により吸入する、請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記第1気流が、前記電極の前記一方の表面に沿って流れる層流であり、前記第2気流が、前記電極の前記他方の表面に沿って流れる層流である、請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記第1気流および前記第2気流を前記電極の搬送方向に沿って流す、請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記加工エリアにおける前記電極の搬送方向が、重力方向である、請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法に関する。詳しくは、蓄電デバイスに用いられる帯状電極のレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池などの蓄電デバイスは、帯状電極を備え得る。典型的には、電極は、金属製の集電箔と、該集電箔の両面に配置された活物質層とを備える。集電箔の端部には、活物質層が配置されていない集電箔露出部が設けられている。集電箔露出部には集電部材が接続され、導通経路が形成される。
【0003】
集電箔露出部は、レーザ加工等によりタブの少なくとも一部となるように加工され得る。このとき、電極がレーザ照射によって発生するヒューム等の粉塵が飛散する時の反力によって、電極が厚み方向に振動する。これにより、レーザ光の焦点が電極からずれてしまう場合がある。これに対し、例えば、特許文献1には、帯状電極を精度良く切断することができるレーザ加工装置が開示されている。当該レーザ加工装置は、帯状電極のレーザ加工位置の周囲を保持するガイドを備えている。当該ガイドは、帯状電極をその厚み方向から挟み込んでいる。これにより、帯状電極のばたつき(振動)を抑制することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電極のレーザ加工した際に発生し得るヒューム等の粉塵がレーザ光の進路に飛散した場合にレーザ光を拡散させてしまうため、レーザ光の集光性が悪化し得る。また、レーザ照射部の周囲にガイド等が配置されている場合には、ヒューム等の粉塵がガイド等に付着し、電極の損傷の原因となる場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、レーザ加工時の振動を抑制しながら、ヒューム等の粉塵によるレーザの集光性の低下を抑制し得る電極のレーザ加工方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示により、帯状電極をレーザ加工する方法が提供される。ここで開示される方法は、上記帯状電極を予め設定した加工エリアに長手方向に搬送すること、および上記加工エリアにおいて、上記電極の一方の表面上を流れる第1気流と、上記電極の他方の表面上を流れる第2気流とを形成した状態で、上記電極の表面にレーザ照射を行うことを含む。
【0008】
上記方法では、加工エリアにおいて、帯状電極の両面上を流れる気流を形成しているため、当該気流が帯状電極を厚み方向から挟むようにして支持することができる。そのため、レーザ照射によりヒューム等の粉塵が発生した場合にも、レーザ照射部で帯状電極が厚み方向に振動することを抑制することができる。また、ヒューム等の粉塵が、上記気流によって吹き流されるため、レーザ光の集光性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】レーザ加工装置の構成を模式的に示す正面図である。
【
図3】レーザ加工装置の構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ここで開示される技術について詳細に説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、本技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術の内容は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0011】
なお、各図面は模式的に描かれており、寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。また、以下に説明する図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。そのため、例えば、以下で説明する電極(完成品)に付する符号と、レーザ加工前の帯状電極に付する符号は同じである。
また、本明細書において、数値範囲を「A~B(ここでA、Bは任意の数値)」と記載している場合は、「A以上B以下」を意味すると共に、「Aを超えてB未満」、「Aを超えてB以下」、および「A以上B未満」の意味を包含する。
【0012】
なお、本明細書において「蓄電デバイス」とは、充電と放電とを行うことができるデバイスをいう。蓄電デバイスには、一次電池、二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池)等の電池と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)とが包含され得る。
【0013】
図1は、蓄電デバイスに用いられる電極体の一例として、電極体20の構成を模式的に示す分解図である。電極体20は捲回電極体である。電極体20は、ここで開示されるレーザ加工方法により製造される電極の一使用例である。
図1に示すように、電極体20は、帯状(長尺シート状)の正極22と、帯状(長尺シート状)の負極24と、2枚の帯状(長尺シート状)のセパレータ26とを備える。正極22と、負極24と、2枚のセパレータ26とは、各々の長手方向が揃うようにして積層(配置)された状態で、捲回軸WLを中心として長手方向に捲回されている。ここでは、捲回軸WLは、電極(正極22および負極24)の長手方向に直交する電極の幅方向である。
【0014】
図1に示すように、正極22は、正極集電箔22cと、正極活物質層22aと、保護層22pとを備える。正極活物質層22aは、正極集電箔22cの片面または両面(ここでは両面)に配置されており、正極22の長手方向に延びて配置されている。保護層22pは、正極22の長手方向に延びて配置されており、正極活物質層22aに隣接して配置されている。ここでは、保護層22pは正極活物質層22aの片側(
図2中の左側)に配置されている。正極集電箔22cの捲回軸WL方向(即ち、上記長手側方向に直交する正極22の幅方向)の片側の縁部(
図1の左側)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、それぞれ正極22の幅方向の一方側(
図2中の左側)に向かって突出している。正極タブ22tは、電極の幅方向において、セパレータ26よりも外側に突出している。複数の正極タブ22tは、正極22の長手方向に間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の正極タブ22tは、正極22の幅方向の一方の端部(
図1中の左側)で積層され、正極タブ群を構成している。正極タブ群は、蓄電デバイスにおいて正極集電体に接続される。
【0015】
図1では、正極タブ22tは平面視において、正極タブ22tの突出方向に向かって幅が狭くなるような台形状である。しかしながら、正極タブ22tの形状は特に限定されず、例えば、三角形状、矩形状、多角形状、円弧状等であってよい。また、正極タブ22tの角がR状となっていてもよい。
【0016】
正極22を構成する正極集電箔22cとしては、金属製の箔を用いることができ、例えばアルミニウム箔等が挙げられる。正極活物質層22aは正極活物質を含む。正極活物質は、使用される蓄電デバイスの種類により適宜変更される。蓄電デバイスがリチウムイオン二次電池である場合、例えば、層状構造、スピネル構造、オリビン構造等を有するリチウム複合金属酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNiO2、LiCoO2、LiFeO2、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4,LiCrMnO4、LiFePO4等)等を用いることができる。また、正極活物質層22aは、導電材、バインダ等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0017】
正極活物質層22aの平均厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上300μm以下であり、好ましくは20μm以上200μm以下である。
なお、本明細書において、「平均厚み」は、反射型レーザ変位計等で測定することができる(以下、同じ)。
【0018】
保護層22pは、例えば、絶縁性の無機粒子、バインダ、炭素材料等を含み得る。絶縁性の無機粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ等が挙げられる。バインダとしては、例えば、PVdF等が挙げられる。炭素材料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。
【0019】
保護層22pの平均厚みは、特に限定されないが、例えば、3μm以上または5μm以上であり得る。保護層22pの平均厚みは、好ましくは、正極活物質層22aの平均厚み以下であって、例えば50μm以下であり得る。
【0020】
正極活物質層22aは、正極活物質と、必要に応じて用いられる材料(導電材、バインダ等)とを適当な溶媒(例えばN-メチル-2-ピロリドン:NMP)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物の適当量を正極集電箔22cの表面に塗工し、乾燥することによって形成することができる。
【0021】
図1に示すように、負極24は、負極集電箔24cと、負極活物質層24aとを備える。負極活物質層24aは、負極集電箔24cの片面または両面(ここでは両面)に配置されており、負極24の長手方向に延びて配置されている。負極集電箔24cの捲回軸WL方向(即ち、上記長手側方向に直交する負極24の幅方向)の片側の縁部(
図1の右側)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、それぞれ負極24の幅方向の一方側(
図2中の右側)に向かって突出している。ここでは、負極タブ24tの突出方向は、正極タブ22tの突出方向とは電極の幅方向において反対方向を向いている。負極タブ24tは、電極の幅方向において、セパレータ26よりも外側に突出している。複数の負極タブ24tは、負極24の長手方向に間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の負極タブ24tは、負極24の幅方向の一方の端部(
図1中の右側)で積層され、負極タブ群を構成している。負極タブ群は、蓄電デバイスにおいて、負極集電体と接続される。
【0022】
負極24を構成する負極集電箔24cとしては、金属製の箔を用いることができ、例えば、銅箔等が挙げられる。負極活物質層24aは、負極活物質を含む。負極活物質は、使用される蓄電デバイスの種類により適宜変更される。蓄電デバイスがリチウムイオン二次電池である場合、例えば、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。また、負極活物質層24aは、バインダ、増粘剤等をさらに含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0023】
負極活物質層24aの平均厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上500μm以下であり、好ましくは20μm以上300μm以下である。
【0024】
負極活物質層24aは、例えば、負極活物質と必要に応じて用いられる材料(バインダ等)とを適当な溶媒(例えばイオン交換水)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物の適当量を負極集電箔24cの表面に塗工し、乾燥することによって形成することができる。
【0025】
セパレータ26は、蓄電デバイスの種類により適宜変更される。蓄電デバイスがリチウムイオン二次電池の場合には、例えば、絶縁性を有する微多孔質シートを用いることができ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から成る微多孔質樹脂シートが挙げられる。かかる微多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。また、セパレータ26は、耐熱層(HRL)を備えていてもよい。なお、セパレータ26は、正極22と負極24とを絶縁する機能を果たす部材または部分であればよく、必ずしも帯状のセパレータ26でなくてもよい。
【0026】
以下、ここで開示される帯状電極のレーザ加工方法について説明する。レーザ加工方法は、例えば、正極タブ22tまたは負極タブ24tを形成するときに使用される。以下の説明では、帯状電極として負極24を例にして説明するが、正極22であってもよい。
【0027】
図2は、一実施形態に係るレーザ加工装置200の模式的な構成を示す正面図である。
図3は、
図2に示すレーザ加工装置200の右側面図である。ここで開示されるレーザ加工方法は、例えば、
図2に示すレーザ加工装置200によって実現される。レーザ加工装置200は、帯状電極の表面にレーザ照射をするための加工エリア210を有する。また、ここでは、レーザ加工装置200は、レーザ供給部220と、帯状電極搬送手段と、第1気流供給手段と、第2気流供給手段とを備える。
【0028】
図2に示すように、レーザ加工装置200において、レーザ供給部220から照射されるレーザの位置に合わせて、加工エリア210が予め設定されている。レーザ加工装置200は、帯状電極を該電極の長手方向に搬送するための搬送手段を有する。本実施形態に係るレーザ加工装置200は、第1ロール252と、第2ロール254とを有する。第1ロール252と、第2ロール254とは、加工エリア210を挟むように離れた位置に配置されている。負極24は、第1ロール252から第2ロール254に向かって搬送されている。負極24はレーザ照射される表面である第1面24fと、第1面24fの裏面である第2面24bを有する。負極24の第2面24bは、第1ロール252および第2ロール254と接している。第1ロール252及び/又は第2ロール254は、それ自体が回転するように駆動して負極24を搬送してもよい。また、第1ロール252及び/又は第2ロール254は駆動せず、例えば、第2ロール254の下流側に負極24を搬送する動力源があってもよい。
【0029】
図3に示すように、負極24は、負極活物質層24aと、負極活物質層24aと隣接して長手方向に延びる負極集電箔露出部24eを有する。負極集電箔露出部24eは、負極活物質層24aが配置されず、負極集電箔24cが露出した部分である。負極集電箔露出部24eは、負極24の幅方向における端部の少なくとも一方に設けられている。負極集電箔露出部24eは、レーザ加工により負極タブ24tが形成された際に、負極タブ24tの少なくとも一部になる。
【0030】
加工エリア210では、負極24の第1面24f上を流れる第1気流230と、負極24の第2面24b上を流れる第2気流240とが形成される。第1気流230と第2気流240とが形成されていることで、負極24は、負極24の厚み方向から挟んで保持された状態となる。そして、かかる状態のまま、加工エリア210において負極24の第1面24fにレーザ光Lが照射される。レーザ光Lは、レーザ供給部220から供給される。これにより、負極24がレーザ照射されることよって生じる負極24のその厚み方向への振動を抑制することができる。かかる振動は、負極24がレーザ照射された際に発生するヒューム等の粉塵が飛散する時の反力により生じるものと推測される。また、第1気流230および第2気流240によりヒューム等の粉塵が吹き流されるため、ヒューム等の粉塵によるレーザ光Lの集光性の低下を抑制することができる。
【0031】
第1気流230は、負極24の第1面24fにおいて、レーザ光Lが照射される部分(「レーザ照射部」ともいう)を通過し、かつ、第2気流240は、負極24の第2面24bにおいて、レーザ照射部を通過することが好ましい。この場合、レーザ光Lは、第1気流230を通過して負極24の第1面24fに当たり、負極24を溶断した後、第2気流240を通過する。かかる構成によれば、レーザ照射部における負極24の振動を好適に抑制することができる。また、ヒューム等の粉塵によるレーザ光Lの集光性の低下を好適に抑制することができる。
なお、本明細書においてレーザ照射部は、レーザ光Lが照射される側の電極の表面部分だけでなく、レーザ光るLが当たる表面部分における電極の厚み全体のことをいう。
【0032】
第1気流230および第2気流240の流れる方向は、負極24のレーザ照射部付近を通過する限り特に限定されない。好適には、第1気流230と第2気流240とを同じ方向に向かって流す。これにより、負極24のレーザ照射部をより適切に挟んで保持することができる。本実施形態では、
図2に示すように、第1気流230および第2気流240は、加工エリア210における負極24の搬送方向に沿って流している。これにより、レーザ照射部で発生したヒューム等の粉塵をレーザ切断が完了した下流側に吹き流すことができるため、レーザ切断される前の負極24の表面にヒューム等の粉塵が付着するのを抑制することができる。
【0033】
第1気流230および第2気流240は、同じ速度で流れることが好ましい。これにより、加工エリア210において負極24がたわむのを適切に抑制することができる。
【0034】
本技術の一態様において、第1気流230および第2気流240の速度は、負極24の搬送速度よりも速いことが好ましい。これにより、加工エリア210における負極24を適切に保持することができるとともに、ヒューム等の粉塵の除去がより適切に行われ得る。
【0035】
第1気流230は、負極24の第1面24fに沿って流れる層流であることが好ましい。また、第2気流240は、負極24の第2面24bに沿って流れる層流であることが好ましい。これにより、加工エリア210において、負極24がより安定して保持される。なお、層流とは、流れ方向に向かって規則正しく流れる定常の流れのことをいう。層流には、例えば、一定の速度で一定方向に向かって流れる気流が含まれる。
【0036】
第1気流230および第2気流240を形成する気体は、特に限定されず、例えば、空気や不活性化ガスであってよい。不活性化ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。
【0037】
図2に示すように、本実施形態に係るレーザ加工装置200は、第1気流230を供給する手段として、第1送出口232を備える。第1送出口232は負極24の第1面24f側に配置されている。第1送出口232から放出された風は、第1気流230として負極24の第1面24f上を流れる。
【0038】
図2に示すように、本実施形態に係るレーザ加工装置200は、第1吸入口234を備える。第1吸入口234は、加工エリア210内の負極24の第1面24f上を流れた第1気流230を吸入する。第1吸入口234は、負極24の第1面24f側に、加工エリア210を挟んで第1送出口232と対向するように配置されている。このように、第1送出口232から放出された風を第1吸入口234により吸入することで、第1送出口232から第1吸入口234に向かって第1気流230が安定的に形成される。また、ヒューム等の粉塵が第1気流230によって第1吸入口234まで運ばれ得るため、ヒューム等の粉塵を効率よく回収することができる。なお、
図2に示すように、本実施形態では、負極24の搬送方向において、加工エリア210の上流側に第1送出口232が配置され、加工エリア210の下流側に第1吸入口234が配置されている。これにより、負極24の搬送方向に沿った第1気流230を実現している。
【0039】
図2に示すように、本実施形態に係るレーザ加工装置200は、第2気流240を供給する手段として、第2送出口242を備える。第2送出口242は負極24の第2面24b側に配置されている。第2送出口242から放出された風は、第2気流240として負極24の第2面24b上を流れる。
【0040】
図2に示すように、本実施形態に係るレーザ加工装置200は、第2吸入口244を備える。第2吸入口244は、加工エリア210内の負極24の第2面24b上を流れた第2気流240を吸入する。第2吸入口244は、負極24の第2面24b側に、加工エリア210を挟んで第2送出口242と対向するように配置されている。このように、第2送出口242から放出された風を第2吸入口244により吸入することで、第2送出口242から第2吸入口244に向かって第2気流240が安定的に形成される。また、ヒューム等の粉塵が第2気流240によって第2吸入口244まで運ばれ得るため、ヒューム等の粉塵を効率よく回収することができる。なお、
図2に示すように、本実施形態では、負極24の搬送方向において、加工エリア210の上流側に第2送出口242が配置され、加工エリア210の下流側に第2吸入口244が配置されている。これにより、負極24の搬送方向に沿った第2気流240を実現している。
【0041】
なお、第1送出口232と第2送出口242は、それぞれ独立した送出口であってもよく、第1送出口232と第2送出口242とが連続した一つの送出口であってもよい。また、第1吸入口234と第2吸入口244は、それぞれ独立した吸入口であってもよく、第1吸入口234と第2吸入口244とが連続した一つの吸入口であってもよい。
【0042】
加工エリア210における負極24の搬送方向は、特に限定されないが、
図2に示すように、当該搬送方向が重力方向であることが好ましい。これにより、レーザ照射部で発生するヒューム等の粉塵が重力方向に流れやすくなるため、ヒューム等の粉塵によるレーザ光Lの集光性の低下を抑制することができる。なお、第1気流230と第2気流240とを加工エリア210における負極24の搬送方向に沿って流す場合には、ヒューム等の粉塵の除去がより好適に行われるため、ヒューム等の粉塵によるレーザ光Lの集光性の低下をよりよく抑制することができる。
【0043】
レーザ供給部220は、加工エリア210にレーザ光Lを供給する。レーザ供給部220の構成は、従来レーザ切断に用いられているものと同様であってよい。図示は省略するが、レーザ供給部は、例えば、レーザ発振器、レーザヘッド等を備える。レーザ発振器は、溶接の熱源であるレーザを生成する装置である。レーザヘッドは、レーザ発振器で生成されたレーザをレーザ光Lとして照射する部分である。レーザ光路は、例えば、ミラーや光ファイバ等で構成され得る。レーザ光Lとしては、例えば、YAGレーザ、ファイバーレーザ、CO2レーザ、半導体レーザ、ディスクレーザ等が挙げられる。
【0044】
加工エリア210において、レーザ光Lは、負極活物質層24aまたは負極集電箔露出部24eに照射され、照射された部分を切断する。
図3に示すように、加工エリア210の下流側では、負極タブ24tが形成されている。負極集電箔露出部24eをレーザ切断して、負極タブ24tが負極集電箔露出部24eから構成されるよう加工してもよいが、好ましくは、
図3のように、負極タブ24tが負極集電箔露出部24eおよび負極活物質層24aを有するように加工することが好ましい。例えば、レーザ光Lを負極活物質層24aの端部に照射し、負極タブ24tを形成するタイミングでレーザ光Lを負極集電箔露出部24e側に走査させ、適当なタイミングでレーザ光Lを負極活物質層24a側に走査させることが好ましい。なお、レーザ光Lの走査方向は、負極タブ24tの形状、大きさ等によって適宜調整される。例えば、負極24の搬送速度とレーザ供給部とが連動して制御されるように構成することにより、負極タブ24tを負極24の幅方向の端部に間欠的に形成することができる。
【0045】
ここで開示されるレーザ加工方法によれば、第1気流230および第2気流240により、加工エリア210における負極24を挟むようにして支持することができるため、加工エリア210付近に負極24を直接挟んで支持するガイドを設けなくてもよい。ガイドがある場合には、ヒューム等の粉塵がガイドに付着し、付着した粉塵が搬送される電極と干渉して、電極を傷つけるおそれが生じ得る。そのため、ここで開示されるレーザ加工方法では、上記おそれを解消することができる。
【0046】
なお、帯状電極として正極22を採用した場合には、上述した技術説明のうち「負極」を「正極」と読み替えることで理解され得る。ただし、レーザ光Lを照射する位置は、正極活物質層22aの代わりに保護層22pであってもよく、正極タブ22tが正極集電箔露出部と保護層22pとを有するように構成されてもよい。
【0047】
また、帯状電極は、捲回電極体のみならず、積層電極体にも用いることができる。積層電極体に用いる場合には、帯状電極を幅方向に沿って切断することでそれぞれタブを有する複数枚の電極シートを得て、その後、セパレータを介して負極と正極とを積層することで積層電極体を構築することができる。
【0048】
以上、本技術のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎな
い。本技術は、他にも種々の形態にて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0049】
以上のとおり、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載したものが挙げられる。
項1:帯状電極をレーザ加工する方法であって、上記帯状電極を予め設定した加工エリアに長手方向に搬送すること、および上記加工エリアにおいて、上記電極の一方の表面上を流れる第1気流と、上記電極の他方の表面上を流れる第2気流とを形成した状態で、上記電極の表面にレーザ照射を行うことを含む、レーザ加工方法。
項2:上記電極の一方の表面上を流れた第1気流を第1吸入口により吸入し、上記電極の他方の表面上を流れた第2気流を第2吸入口により吸入する、項1に記載のレーザ加工方法。
項3:上記第1気流が、上記電極の上記一方の表面に沿って流れる層流であり、上記第2気流が、上記電極の上記他方の表面に沿って流れる層流である、項1または2に記載のレーザ加工方法。
項4:上記第1気流および上記第2気流を上記電極の搬送方向に沿って流す、項1~3のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
項5:上記加工エリアにおける上記電極の搬送方向が、重力方向である、項1~4のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【符号の説明】
【0050】
20 電極体
22 正極
24 負極
26 セパレータ
200 レーザ加工装置
210 加工エリア
220 レーザ供給部
230 第1気流
232 第1送出口
234 第1吸入口
240 第2気流
242 第2送出口
244 第2吸入口
252 第1ロール
254 第2ロール