(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090927
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】積層シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240627BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240627BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240627BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B32B27/00 M
B32B7/022
C09J7/38
C09J201/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207122
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100183678
【弁理士】
【氏名又は名称】丸島 裕
(72)【発明者】
【氏名】今倉 ゆず
(72)【発明者】
【氏名】荒木 明日香
(72)【発明者】
【氏名】田口 のぞみ
(72)【発明者】
【氏名】松山 麻珠
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK41D
4F100AK42D
4F100AK42E
4F100AK51B
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB05A
4F100DD01B
4F100EC04B
4F100EJ39B
4F100GB90
4F100HB00
4F100JK13B
4F100JK14B
4F100JK16B
4F100JL14D
4F100JL14E
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004CA03
4J004CA06
4J004CC02
4J004DB03
4J004EA06
4J004FA01
4J040DF001
4J040EF001
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA35
4J040KA42
4J040LA06
4J040MA10
4J040MA14
4J040NA02
(57)【要約】
【課題】触感が肌により近い肌意匠シートとして使用可能な積層シートを提供する。
【解決手段】粘着層と、表面樹脂層と、を備える積層シートであって、表面樹脂層における、指モデル触覚接触子を備える静・動摩擦測定機を用いて測定される動摩擦係数が0.35以上であり、ISO25178-2:2012に規定されるSv(最大谷深さ)が30μm以上である、積層シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着層と、表面樹脂層と、を備える積層シートであって、
前記表面樹脂層における、指モデル触覚接触子を備える静・動摩擦測定機を用いて測定される動摩擦係数が0.35以上であり、ISO25178-2:2012に規定されるSv(最大谷深さ)が30μm以上である、
積層シート。
【請求項2】
前記動摩擦係数が0.35以上1.5以下である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記動摩擦係数が0.35以上1.0以下である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項4】
前記表面樹脂層における、ISO25178-2:2012に規定されるSsk(スキューネス)が0.0以下であり、Sku(クルトシス)が2.6以上である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項5】
前記積層シートが、前記表面樹脂層としての基材層を備えるか、または、前記積層シートが、前記粘着層と前記表面樹脂層との間に基材層をさらに備える、請求項1に記載の積層シート。
【請求項6】
前記表面樹脂層が、熱転写により形成された層である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項7】
前記表面樹脂層上に剥離可能に設けられた保護シート、および/または
前記粘着層上に剥離可能に設けられた剥離シート、
をさらに備える、請求項1に記載の積層シート。
【請求項8】
肌意匠シートである、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
肌に貼付して使用される肌意匠シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。肌意匠シートとしては、例えば、タトゥーシールおよび肌隠蔽シートが挙げられる。タトゥーシールは、基材に様々な絵柄が印刷されているシートである。タトゥーシールは、例えば、バラエティストア、スポーツや音楽のイベント会場、アミューズメントパーク等で販売されており、雰囲気の盛上げに使用されている。肌隠蔽シートは、基材に予めスクリーン印刷等で所定の色が着色されているシートである。肌隠蔽シートは、例えば、肌の傷またはシミ等の変色部の隠蔽に使用されている。使用者は、自分の肌の色に合った肌意匠シートを選んで使用する。
【0003】
肌意匠シートは、例えば、剥離シートと、粘着層と、基材層と、保護シートと、を厚さ方向にこの順に備える。粘着層から剥離シートを剥離して粘着層を肌に貼り付け、その後、基材層から保護シートを剥離するという手順で、肌意匠シートは使用者の肌に貼付される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の肌意匠シートの触感(手触り感)は、フィルム状の触感となっており、肌のしっとりとした触感が充分ではなく、肌の触感に近いとは必ずしもいえなかった。本開示の課題は、触感が肌により近い肌意匠シートとして使用可能な積層シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の積層シートは、粘着層と、表面樹脂層と、を備え、表面樹脂層における、指モデル触覚接触子を備える静・動摩擦測定機を用いて測定される動摩擦係数が0.35以上であり、ISO25178-2:2012に規定されるSv(最大谷深さ)が30μm以上である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、触感が肌により近い肌意匠シートとして使用可能な積層シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】
図4は、Sskにより示される表面形状の模式図である。
【
図5】
図5は、Skuにより示される表面形状の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、詳細に説明する。本開示は多くの異なる形態で実施でき、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されない。図面は、説明をより明確にするため、実施形態に比べ、各層の幅、厚さおよび形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。本明細書と各図において、既出の図に関してすでに説明したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
本開示において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補および複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。上記パラメータとしては、例えば、物性値、成分の含有割合および層の厚さが挙げられる。一例として、「パラメータBは、好ましくはA1以上、より好ましくはA2以上、さらに好ましくはA3以上である。パラメータBは、好ましくはA4以下、より好ましくはA5以下、さらに好ましくはA6以下である。」との記載について説明する。この例において、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下でもよく、A1以上A5以下でもよく、A1以上A6以下でもよく、A2以上A4以下でもよく、A2以上A5以下でもよく、A2以上A6以下でもよく、A3以上A4以下でもよく、A3以上A5以下でもよく、A3以上A6以下でもよい。
【0011】
本明細書において、以下の説明で登場する各成分(例えば、樹脂材料、および着色剤などの添加剤)は、それぞれ1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0012】
[積層シート]
本開示の積層シートは、粘着層と、表面樹脂層と、を備える。
【0013】
以下、図面を参照して、本開示の積層シートの具体例を説明する。
図1に示す積層シート1は、粘着層20と、表面樹脂層10と、を備える。表面樹脂層10は、第1の面1aと、第1の面1aに対向する第2の面1bと、を有する。第2の面1bは、粘着層20を向く面である。第1の面1aは、第2の面1bと反対の面である。この例において、表面樹脂層10は基材層である。この例において、粘着層20および表面樹脂層10の一方または両方が、着色剤によって例えば肌色などの所望の色に着色されていてもよい。基材層のいずれか一方の面または両方の面上には、印刷層が設けられていてもよい。
【0014】
図2に示す積層シート1は、粘着層20と、基材層30と、表面樹脂層10と、を備える。このように積層シート1は、粘着層20、基材層30および表面樹脂層10を厚さ方向にこの順に備えてもよい。この例において、粘着層20、基材層30および表面樹脂層10から選択される少なくとも一層が、着色剤によって例えば肌色などの所望の色に着色されていてもよい。基材層のいずれか一方の面または両方の面上には、印刷層が設けられていてもよい。
【0015】
図3に示す積層シート1は、粘着層20における基材層30を向く面とは反対の面上に、剥離シート40をさらに備える。このように積層シート1は、剥離シート40、粘着層20、基材層30および表面樹脂層10を厚さ方向にこの順に備えてもよい。
【0016】
積層シートは、表面樹脂層における粘着層を向く面(第2の面)とは反対の面(第1の面)上に、図示せぬ保護シートをさらに備えてもよい。積層シートは、粘着層、必要に応じて基材層、表面樹脂層および保護シートを厚さ方向にこの順に備えてもよく、剥離シート、粘着層、任意に基材層、表面樹脂層および保護シートを厚さ方向にこの順に備えてもよい。
【0017】
積層シートは、必要に応じて剥離シート、粘着層、基材層、画像が形成された受容層、および必要に応じて保護シートをこの順に備えてもよい。この例において、受容層が上記表面樹脂層に相当する。積層シートは、必要に応じて剥離シート、粘着層、基材層、画像が形成された受容層、保護層、および必要に応じて保護シートをこの順に備えてもよい。この例において、保護層が上記表面樹脂層に相当する。これらの例において、受容層には染料等の着色剤によって例えば肌色などの所望の色の画像が形成されている。
【0018】
本開示の積層シートは、一実施形態において、長尺帯状であり、
図1~
図3は例えば積層シート1の長手方向に対して垂直な断面図である。
【0019】
<表面樹脂層>
本開示の積層シートは、表面樹脂層を備える。
表面樹脂層は、積層シートを被着体に貼付した場合において、被着体からは最も遠くに位置する表面層を構成する。積層シートが保護シートを備える場合は、保護シートは剥離される。
【0020】
表面樹脂層は、第1の面と、第1の面に対向する第2の面と、を有する。第2の面は、表面樹脂層における粘着層を向く面であり、第1の面は、表面樹脂層における粘着層を向く面とは反対の面である。
【0021】
表面樹脂層は、0.35以上の動摩擦係数を有する。
本明細書において動摩擦係数は、指モデル触覚接触子((株)トリニティーラボ)を備える静・動摩擦測定機(i-tester TL201Ts、(株)トリニティーラボ)を用いて測定される。動摩擦係数は、表面に凹凸を有するバイオスキンプレート((株)ビューラックス、品番 P001-001)に積層シートを粘着層が該プレートに接するように貼り付けて固定して、表面樹脂層の第1の面について測定される。これにより、積層シートを肌に貼り付けた状態に近い条件で、また接触子が指の腹に近い条件で、動摩擦係数を測定できる。動摩擦係数の測定条件の詳細は、実施例欄に記載する。
【0022】
上記条件により測定される動摩擦係数が低い表面樹脂層は、さらさらとした触感を示す傾向にある。上記条件により測定される動摩擦係数が高い表面樹脂層は、しっとりとした触感を示す傾向にある。さらさらとした触感とは、具体的には、指の腹で湿り気のない滑らかな面を触れた際に感じる触感を意味する。しっとりとした触感とは、具体的には、指の腹で湿り気のある面を触れた際に感じる触感を意味する。
【0023】
表面樹脂層の動摩擦係数は、0.35以上であり、好ましくは0.36以上、より好ましくは0.37以上である。表面樹脂層の動摩擦係数は、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1.0以下、よりさらに好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.7以下、0.65以下、0.6以下または0.55以下である。表面樹脂層の動摩擦係数は、例えば、0.35以上1.5以下である。動摩擦係数が0.35以上である表面樹脂層の触感は、肌の触感に近い傾向にある。動摩擦係数が高すぎると肌と比べてしっとりとした触感が強すぎることがあり、違和感が生じることがあるが、動摩擦係数が上記上限値以下、特に1.0以下である表面樹脂層は、肌の触感により近い、適度にしっとりとした触感を示す。
【0024】
表面樹脂層は、30μm以上のSv(最大谷深さ)を有する。Svは、ISO25178-2:2012に規定されている。Svは、表面の平均面からの深さの最大値の絶対値を意味する。
【0025】
表面樹脂層のSvは、好ましくは70μm以下であり、より好ましくは65μm以下、さらに好ましくは60μm以下、よりさらに好ましくは55μm以下、特に好ましくは50μm以下、45μm以下または40μm以下である。表面樹脂層のSvは、例えば、30μm以上70μm以下である。Svが大きい表面樹脂層は、クッション性が大きく、表面樹脂層の触感を調べる際に指の腹に対する表面樹脂層の追従性が高くなり、したがって、しっとりとした触感が強い傾向にある。
【0026】
本開示者らは、表面樹脂層の動摩擦係数が0.35以上である場合であっても、しっとりとした触感が充分ではない場合があり、また、表面樹脂層のSvが30μm以上である場合であっても、しっとりとした触感が充分ではない場合があることを見出した。そして本開示者らは、表面樹脂層の動摩擦係数が0.35以上であり、かつSvが30μm以上である場合に、表面樹脂層はしっとりとした触感が高く、肌に近い手触りを示すこと、表面樹脂層の動摩擦係数が0.35以上1.0以下であり、かつSvが30μm以上である場合に、表面樹脂層は肌により近い手触りを示すこと、を見出した。
【0027】
表面樹脂層は、以下に説明する三次元表面性状を有することが好ましい。
【0028】
表面樹脂層は、0.0以下のSsk(スキューネス、歪度)、および2.6以上のSku(クルトシス、尖度)を有することが好ましい。SskおよびSkuは、それぞれ、ISO25178-2:2012に規定されている。
【0029】
Sskは、上記ISOにて規定される三次元表面性状パラメータの一つであり、平均面からの高さ分布の偏りの度合いを示す指標である。Sskが0である場合は、表面形状が平均面に対して対称であり、Sskが0を超える場合は、表面形状が平均面に対して下側、すなわち高さが低い側に偏りがあり、凸部の頂部近傍が鋭く細くなる傾向にあり、Sskが0未満である場合は、表面形状が平均面に対して上側、すなわち高さが高い側に偏りがあり、凸部の頂部近傍が鈍く太くなる傾向にある、と把握できる。「平均面に対して対称」は、「正規分布」とも称し得る。Sskにより示される表面形状が呈する形状の傾向について、
図4を用いて説明する。
図4は、Sskが0を超える場合(1-1)、Sskが0未満である場合(1-2)の模式図である。Sskが0未満であるということは、表面樹脂層の表面形状が平均面に対して上側に偏りがあり、凸部の頂部近傍が鈍く太くなる傾向にあることを意味する。
図4において、「平均面」は横線に該当する平均水準面であり、「平均面に対して上側」は、
図4においても上側である。
【0030】
Skuは、上記ISOにて規定される三次元表面性状パラメータの一つであり、平均面からの高さ分布の尖りの度合いを示す指標である。Skuが3である場合は、表面形状が平均面に対して対称(正規分布)であり、Skuが3未満である場合は、高さ分布がつぶれた形状を有する傾向にあり、Skuが3を超える場合は、高さ分布が尖った形状を有する傾向にある、と把握できる。Skuにより示される表面形状が呈する形状の傾向について、
図5を用いて説明する。
図5は、Skuが3未満である場合(2-1)、Skuが3を超える場合(2-2)の模式図である。Skuが2.6以上であるということは、表面樹脂層の高さ分布があまり大きくはつぶれていない形状を有する傾向にあることを意味する。
図5において、「平均面」は横線に該当する平均水準面であり、「平均面に対して上側」は、
図5においても上側である。
【0031】
表面樹脂層のSskは、好ましくは-1.5以上、より好ましくは-1.0以上、さらに好ましくは-0.8以上、よりさらに好ましくは-0.65以上、特に好ましくは-0.5以上である。表面樹脂層のSskは、好ましくは0.0未満、より好ましくは-0.05以下、さらに好ましくは-0.1以下、よりさらに好ましくは-0.13以下、特に好ましくは-0.15以下である。表面樹脂層のSskは、例えば、-1.5以上0.0以下である。
【0032】
表面樹脂層のSkuは、好ましくは2.6以上である。表面樹脂層のSkuは、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下、よりさらに好ましくは3.7以下、特に好ましくは3.4以下である。表面樹脂層のSkuは、例えば、2.6以上6.0以下である。
【0033】
動摩擦係数およびSvが上記範囲にあることに加えて、Sskが0.0以下であり、かつ、Skuが2.6以上である表面樹脂層は、しっとりとした触感が強くなる傾向にあり、肌の触感により近い触感を示す傾向にある。SskおよびSkuが上述した好ましい範囲にある表面樹脂層は、例えば、平均面に対して上側に存在する凸部の頂部近傍の形状が適度につぶれて丸みを帯びた形状を有しており、かつ下側の凹部の最低面近傍の形状が緩やかに尖った形状を有しており、このような形状が肌に近い触感に寄与していると考えられる。
【0034】
本明細書においてSv、SskおよびSkuは、形状解析レーザー顕微鏡を用いて測定される。Sv、SskおよびSkuは、表面に凹凸を有するバイオスキンプレート((株)ビューラックス製、品番 P001-001)に積層シートを粘着層が該プレートに接するように貼り付けて固定して、形状解析レーザー顕微鏡を用いて表面樹脂層の第1の面の表面形状をスキャンすることにより測定される。これにより、積層シートを肌に貼り付けた状態に近い条件で、Sv、SskおよびSkuを測定できる。Sv、SskおよびSkuの測定条件の詳細は、実施例欄に記載する。
【0035】
動摩擦係数、Sv、SskおよびSkuは、例えば、表面樹脂層を構成する材料として後述する材料を適宜選択して用い、また、表面樹脂層に対してエンボス加工などの賦形処理を施すことにより調整できる。エンボス加工について具体的には、エンボス加工に用いるエンボス版および賦型シートの表面形状、エンボス加工時の圧力、温度および時間などにより、動摩擦係数等を調整できる。
【0036】
表面樹脂層は、後述する保護層または受容層のように、熱転写により形成された層、すなわち、保護層および受容層等の転写層を備える熱転写シートから、熱転写プロセスにより転写された転写層でもよい。
【0037】
(基材層)
表面樹脂層は、一実施形態において、基材層である。
基材層としては、例えば、樹脂材料から形成された樹脂フィルムが挙げられる。樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ビニル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂およびセルロース樹脂が挙げられる。
【0038】
基材層としては、例えば、伸縮性基材が好ましく用いられる。伸縮性基材としては、例えば、上記樹脂フィルムが挙げられ、上記樹脂フィルムの中でもウレタンフィルムが好ましい。
【0039】
伸縮性基材は、積層シートを被着体に貼付した際の被着体の伸縮に追従するために、30%以上100%以下の伸び率を有することが好ましい。伸縮性基材の伸び率は、JIS K 7127:1999に準拠した試験方法で得られる伸び率である。伸び率は、下記式(1)で表される。
伸び率(%)=100×(L-L0)/L0 ・・・(1)
【0040】
式(1)中のLは、引張試験機を使用し、速度200mm/minで伸縮性基材を引っ張り、伸縮性基材が破断したときの長さである。式(1)中のL0は、引張試験機で引っ張る前の伸縮性基材の長さである。引張試験機は、テンシロン万能材料試験機を使用できる。
【0041】
基材層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、充填剤および離型剤が挙げられる。基材層は、必要に応じて、着色剤を含有してもよい。基材層は、積層シートの色調を例えば肌色などの所望の色に合わせるために着色剤を含有してもよい。着色剤としては、例えば、顔料および染料が挙げられる。
【0042】
基材層の厚さは、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上である。このような基材層を備える積層シートは、例えば、シート貼付時のしわの発生を抑制でき、また作業性を向上できる。基材層の厚さは、好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下である。このような基材層を備える積層シートは、例えば、シート貼付後の使用者の違和感を抑制できる。
【0043】
基材層上には、印刷層が設けられていてもよい。印刷層は、積層シートの色調を例えば肌色などの所望の色に合わせるための層でもよい。印刷層は、着色剤を含有する。着色剤としては、例えば、顔料および染料が挙げられる。
【0044】
本開示の積層シートは、一実施形態において、粘着層と表面樹脂層との間に、上述した基材層を備えてもよい。この場合、表面樹脂層は、例えば、以下に説明する保護層または受容層でもよい。
【0045】
(保護層)
表面樹脂層は、一実施形態において、保護層である。本開示の積層シートは、例えば、粘着層、基材層および保護層をこの順に備えてもよく、粘着層、基材層、画像が形成された受容層および保護層をこの順に備えてもよい。受容層については後述する。
【0046】
保護層を構成する材料としては、例えば、樹脂材料を用いることができる。樹脂材料としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ビニル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂、セルロース樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、これらの各樹脂をシリコーン変性させた樹脂、紫外線吸収性樹脂および電離放射線硬化樹脂が挙げられる。
【0047】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが挙げられる。ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。セルロール樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、メチルセルロースおよび酢酸セルロースが挙げられる。
【0048】
電離放射線硬化樹脂としては、例えば、ラジカル重合性ポリマーまたはラジカル重合性オリゴマーを電離放射線照射により架橋および硬化させて得られた樹脂が挙げられ、具体的には、ラジカル重合性ポリマーまたはラジカル重合性オリゴマーに必要に応じて光重合開始剤を添加し、電子線または紫外線照射によって重合架橋させた樹脂が挙げられる。
【0049】
保護層における樹脂材料の含有割合は、保護層の総質量に対して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上である。これにより、例えば、保護層に充分な耐久性を付与できる。
【0050】
保護層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、充填剤および離型剤が挙げられる。保護層は、必要に応じて、着色剤を含有してもよい。保護層は、積層シートの色調を例えば肌色などの所望の色に合わせるために着色剤を含有してもよい。着色剤としては、例えば、顔料および染料が挙げられる。
【0051】
保護層における添加剤の含有割合は、保護層の総質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。保護層における添加剤の含有割合は、例えば、1質量%以上20質量%以下である。
【0052】
保護層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。このような保護層は、例えば、充分な保護機能を積層シートに付与できる。保護層の厚さは、例えば、0.1μm以上20μm以下である。
【0053】
保護層は、例えば、上記材料を含有する塗工液を、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、バーコートおよびロッドコートなどの公知の手段により、基材層等に塗布し、乾燥させることにより形成できる。
【0054】
保護層は、例えば、保護層を備える熱転写シートを準備し、該熱転写シートを基材層に対応する基材フィルム等に重ね合わせて、熱転写プロセスにより保護層を基材フィルムまたは画像が形成された受容層上に転写することにより形成できる。
【0055】
(受容層)
表面樹脂層は、一実施形態において、画像が形成された受容層である。本開示の積層シートは、例えば、粘着層、基材層および画像が形成された受容層をこの順に備えてもよい。受容層は、熱転写シートから移行してくる染料等を受容するための層である。例えば熱転写プリンタを用いて画像を形成する場合は、基材層上に受容層を設けることが望ましい。画像は、例えば、積層シートの色調を例えば肌色などの所望の色に合わせるための画像でもよい。
【0056】
受容層を構成する材料としては、例えば、樹脂材料を用いることができる。樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン、ビニル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、セルロース樹脂およびアイオノマー樹脂が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンが挙げられる。ビニル樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルおよび塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが挙げられる。受容層を構成する樹脂材料としては、ビニル樹脂が好ましく、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
【0057】
受容層における樹脂材料の含有割合は、受容層の総質量に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。これにより、例えば、受容層に充分な耐久性を付与できる。
【0058】
受容層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、充填剤および離型剤が挙げられる。
【0059】
受容層における添加剤の含有割合は、受容層の総質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。受容層における添加剤の含有割合は、例えば、1質量%以上30質量%以下である。
【0060】
受容層は、白色受容層でもよい。白色受容層は、例えば、白色顔料を含有するプライマー層と、透明受容層と、をこの順に備える。白色顔料としては、例えば、シリカ、酸化チタン、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、雲母チタン、白雲母、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイトおよびタルクが挙げられる。白色受容層を用いることで、被着体における変色部からの反射光を抑制し、変色部の隠蔽性を高め、所望の肌の色の再現度を向上できる。透明受容層に光を散乱させる粒子を含有させてもよい。
【0061】
白色顔料を含むプライマー層上に、隠蔽層をさらに設けてもよい。隠蔽層は、金属顔料を含有してもよい。金属顔料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、真鍮、錫、黄銅、青銅、亜鉛、銀、白金、金およびこれらの酸化物、ならびに金属蒸着が施されたガラス等の粒子が挙げられる。これらの中でも、隠蔽層の転写性および光沢感という観点から、アルミニウム顔料が好ましい。アルミニウム顔料は、リーフィングタイプでもよく、ノンリーフィングタイプでもよいが、隠蔽層の転写性および光沢感という観点から、ノンリーフィングタイプが好ましい。
【0062】
受容層の厚さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。これにより、例えば、受容層上に形成される熱転写画像の濃度を向上できる。受容層の厚さは、例えば、0.5μm以上20μm以下である。
【0063】
受容層層は、例えば、上記材料を含有する塗工液を、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、バーコートおよびロッドコートなどの公知の手段により、基材層等に塗布し、乾燥させることにより形成できる。
【0064】
基材層上に受容層を設ける場合、基材層上に受容層用塗工液を塗布、乾燥する工程で、塗工液に含まれる溶剤によって基材層が溶融破損したり、変性または変形したりすることがある。この場合は、熱転写により基材層上に受容層を転写することが好ましい。受容層は、あらかじめ基材層上に設けられていてもよく、画像形成時に基材層上に熱転写して設けてもよい。
【0065】
<粘着層>
本開示の積層シートは、粘着層を備える。
粘着層は、例えば、粘着剤を用いて形成されている。粘着剤は、感圧式接着剤とも呼ばれ、常温で接着性を有し、圧力を作用させることで被着体に接着できる材料をいう。例えば、粘着層に貼着した被着体を剥離した場合にも、粘着層は実用的な粘着力を保持する。
【0066】
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤およびフッ素系粘着剤が挙げられる。粘着剤は溶媒を含有してもよい。溶媒としては、例えば、水系および溶剤系のいずれも使用できる。粘着剤としては、医療用として皮膚のカブレおよび皮膚への刺激の少ない粘着剤を選択することが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤およびウレタン系粘着剤が好ましい。
【0067】
粘着層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、充填剤および離型剤が挙げられる。粘着層は、必要に応じて、着色剤を含有してもよい。粘着層は、積層シートの色調を例えば肌色などの所望の色に合わせるために着色剤を含有してもよい。着色剤としては、例えば、顔料および染料が挙げられる。
【0068】
粘着層の粘着力は、好ましくは5000gf/50mm以下、より好ましくは100gf/50mm以上5000gf/50mm以下である。粘着力が5000gf/50mm以下であれば、例えば、シートの誤着や取り替え時の剥離において、被着体(特に人体または動物の皮膚)を痛めるおそれが小さい。粘着力が100gf/50mm以上であれば、例えば、被着体(特に人体または動物の皮膚)に対する粘着力を確保でき、皮膚の発汗や動き等によってシートが剥離することを抑制できる。
【0069】
剥離シートと粘着層との粘着力は、例えば、2gf/50mm以上でもよく、4gf/50mm以上でもよく、また、50gf/50mm以下でもよく、30gf/50mm以下でもよい。該粘着力が2gf/50mm以上であれば、例えば、積層シートの保管または運搬中での剥離シートの剥離を抑制できる。該粘着力が50gf/50mm以下であれば、例えば、肌意匠シートの使用時において剥離シートを容易に剥離できる。上記粘着力は、JIS Z 0237:2009に記載の方法(180°剥離)に準拠して測定される。
【0070】
粘着層の厚さは、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。粘着層の厚さは、例えば、3μm以上40μm以下である。
【0071】
<剥離シート>
本開示の積層シートは、粘着層上に剥離可能に設けられた剥離シートを備えてもよい。剥離シートとしては、例えば、紙基材の少なくも片面が離型処理された剥離紙、樹脂フィルムの少なくも片面が離型処理された樹脂フィルムが挙げられる。離型処理としては、例えば、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、長鎖アルキル化合物系離型剤、およびフッ素樹脂系離型剤等の離型剤を用いた離型処理が挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリオレフィン、ビニル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリエステルおよびポリアミド等の樹脂材料から形成された樹脂フィルムが挙げられる。
【0072】
剥離シートの厚さは、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。剥離シートの厚さは、例えば、50μm以上300μm以下である。
【0073】
<保護シート>
本開示の積層シートは、表面樹脂層上に剥離可能に設けられた保護シートを備えてもよい。保護シートとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)シートおよびポリプロピレン(PP)シートが挙げられる。保護シートには、例えば、弱粘着層が設けられている。弱粘着層の形成には、アクリル系の弱粘着剤およびウレタン系の弱粘着剤を用いることができる。
保護シートの厚さは、例えば、10μm以上200μm以下である。
【0074】
[積層シートの用途]
以下、本開示の積層シートの用途の一例について説明する。
一実施形態において、積層シートは、肌に貼付するための肌意匠シート(スキンシート)として用いることができる。肌意匠シートとしては、例えば、肌隠蔽シートおよびタトゥーシールが挙げられる。
【0075】
一実施形態において、積層シートから、肌意匠シートを作製できる。例えば、積層シートから、複数枚の肌意匠シートを作製してもよい。例えば、ロール状の積層シートを切断して、製品形態の枚葉状の積層シートを作製してもよい。
【0076】
肌意匠シートを、例えば、しみ、あざ、そばかす、しわ、たるみ、毛穴、傷跡、にきび跡、熱傷跡および皮膚疾患による変色等のある肌に、その粘着層が肌に接するように貼り付けることにより、これらを隠蔽して目立たなくすることができる。
【0077】
[積層シートの製造方法]
本開示の積層シートは、例えば、熱転写プロセスにより作製できる。
基材層に対応する、長尺状の基材フィルムを準備する。基材フィルムと熱転写シートとを熱転写プリンタにセットする。熱転写プリンタとしては、色再現性および階調性に優れた、昇華型の熱転写プリンタが好適である。
【0078】
熱転写シートは、基材と、基材の一方の面上に面順次に設けられた、転写型の受容層、染料層および任意に保護層を備える。受容層は、熱転写シートから移行してくる染料を受容する層であり、透明である。染料層としては、例えば、イエロー染料層、マゼンタ染料層およびシアン染料層が挙げられる。染料層は、バインダー樹脂および昇華性染料を含有する。イエロー染料層、マゼンタ染料層およびシアン染料層には、公知の材料を用いることができる。受容層および保護層の詳細については、上述したとおりである。基材フィルム上に受容層が予め設けられている場合は、熱転写シートが受容層を備える必要や、以下に説明する受容層の転写を行う必要はない。
【0079】
熱転写プリンタが備えるサーマルヘッドおよびプラテンロールにより、基材フィルムおよび熱転写シートを挟み込み、熱転写シートを加熱する。サーマルヘッドは、転写型の受容層を加熱して、基材フィルム上に受容層を転写する。次に、サーマルヘッドは、例えば肌意匠シートのデータに基づいて、イエロー染料層、マゼンタ染料層およびシアン染料層を順に加熱し、基材フィルム上に転写された受容層に染料を移行させて、画像を形成する。これにより、積層シートの色を使用者の地肌の色に容易に合わせることができる。必要に応じて、続いて、熱転写シートの保護層を加熱し、画像が形成された受容層上に保護層を転写する。ここで、受容層または(保護層を設ける場合は)保護層が上述した表面樹脂層に対応する。
【0080】
必要に応じて、表面樹脂層に対してエンボス加工などの賦形処理を施すことにより、表面樹脂層に凹凸形状を形成する。賦形処理により、表面樹脂層における上述した動摩擦係数、Sv、SskおよびSkuを調整できる。エンボス加工において、例えば、エンボス版または賦型シートを用いることができる。エンボス版および賦型シートは、上記表面形状を付与し得るものであれば、特に制限なく用いることができる。エンボス版および賦型シートが有する表面形状と、これらにより賦型された表面形状とは、ほぼ逆の形状を有する。
【0081】
長尺状の積層シートを、熱転写プリンタ内のカッターにより積層シートの幅方向に平行に切断し、枚葉状の積層シートを得る。枚葉状の積層シートの表面樹脂層に、必要に応じて保護シートを貼付してもよい。
【0082】
次いで、公知の切断装置を用いて、上記積層シートを肌意匠シートの製品形態の形状に切断する。例えば、積層シートを平面視した場合に、積層シートを円形状に打ち抜く。上記形状は、特に限定されない。
【0083】
以上のようにして、所望の形状を有する肌意匠シートを作製できる。
上記方法において、粘着層は熱転写プロセス前に基材フィルム上に設けられていてもよい。この場合は、粘着層上に剥離シートを設けることが好ましい。また、粘着層は熱転写プロセス後に基材層上に設けてもよい。
【0084】
熱転写プロセスにより積層シートを製造する方法について説明したが、本開示の積層シートの製造方法は上記方法には何ら限定されない。例えば、各層を順次形成することにより積層シートを製造してもよい。
【0085】
本開示は、例えば以下の[1]~[8]に関する。
[1]粘着層と、表面樹脂層と、を備える積層シートであって、前記表面樹脂層における、指モデル触覚接触子を備える静・動摩擦測定機を用いて測定される動摩擦係数が0.35以上であり、ISO25178-2:2012に規定されるSv(最大谷深さ)が30μm以上である、積層シート。
[2]前記動摩擦係数が0.35以上1.5以下である、前記[1]に記載の積層シート。
[3]前記動摩擦係数が0.35以上1.0以下である、前記[1]に記載の積層シート。
[4]前記表面樹脂層における、ISO25178-2:2012に規定されるSsk(スキューネス)が0.0以下であり、Sku(クルトシス)が2.6以上である、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の積層シート。
[5]前記積層シートが、前記表面樹脂層としての基材層を備えるか、または、前記積層シートが、前記粘着層と前記表面樹脂層との間に基材層をさらに備える、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の積層シート。
[6]前記表面樹脂層が、熱転写により形成された層である、前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の積層シート。
[7]前記表面樹脂層上に剥離可能に設けられた保護シート、および/または前記粘着層上に剥離可能に設けられた剥離シート、をさらに備える、前記[1]~[6]のいずれか一項に記載の積層シート。
[8]肌意匠シートである、前記[1]~[7]のいずれか一項に記載の積層シート。
【実施例0086】
実施例を挙げて、本開示の積層シートをさらに詳細に説明するが、本開示の積層シートはこれら実施例に限定されない。
【0087】
[実施例1]
剥離紙(住化加工紙(株)、SLB-110WT、厚さ170μm)上に、アクリル系粘着剤を塗布し乾燥して、厚さ10μmの粘着層を形成した。粘着層に、厚さ20μmのウレタンフィルム(大倉工業(株)、NES85、伸縮性基材)を貼り合わせた。このようにして、剥離紙、粘着層およびウレタンフィルムをこの順に備えるシートを作製した。
【0088】
厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株))上に塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(日信化学工業(株)、ソルバイン(登録商標)CNL)からなる厚さ2μmの転写層を備える熱転写シートを準備した。この熱転写シートから転写層を、上記シートのウレタンフィルム上に下記転写条件で熱転写した。合成皮革用離型紙「DN-TP(登録商標)DE-43」(大日本印刷(株))を準備した。熱転写後に、合成皮革用離型紙を転写層に重ね、ラミネート機「フジプラLPD3226N」(ヒサゴ(株))にて150℃の温度で加温して、転写層の表面に凹凸を形成した。このようにして、剥離紙、粘着層、ウレタンフィルムおよび転写層を備える積層シートを得た。
(転写条件)
・サーマルヘッド:KGT-217-12MPL20(京セラ(株)製)
・発熱体平均抵抗値:31915Ω
・主走査方向印字密度:300dpi
・副走査方向印字密度:300dpi
・印加電力:0.12W/dot
・1ライン周期:5msec.
・印字開始温度:40℃
【0089】
[実施例2~4]
合成皮革用離型紙をそれぞれ「DN-TP(登録商標)」のDEシリーズ(大日本印刷(株))のDE-73M(実施例2)、DE-89(実施例3)、DE-145(実施例4)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、転写層の表面に凹凸を形成して、実施例2~4の積層シートをそれぞれ得た。
【0090】
[実施例5]
厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株))上に、20質量部のポリエステル(エリーテル(登録商標)UE-3380、ユニチカ(株))および6質量部のポリエステル(エリーテル(登録商標)UE-3210、ユニチカ(株))からなる厚さ2μmの保護層を備える熱転写シートを準備した。この熱転写シートから保護層を、実施例1で作製したシートのウレタンフィルム上に上記転写条件で熱転写した。合成皮革用離型紙「DN-TP(登録商標)DE-43」(大日本印刷(株))を準備した。熱転写後に、合成皮革用離型紙を保護層に重ね、上記ラミネート機にて150℃の温度で加温して、保護層の表面に凹凸を形成した。このようにして、剥離紙、粘着層、ウレタンフィルムおよび保護層を備える積層シートを得た。
【0091】
[実施例6~8]
実施例1~3において、上記合成皮革用離型紙を転写層に重ね、上記ラミネート機にて130℃の温度で加温したこと以外は実施例1~3と同様にして、転写層の表面に凹凸を形成して、実施例1に対応する実施例6の積層シート、実施例2に対応する実施例7の積層シート、および実施例3に対応する実施例8の積層シートをそれぞれ得た。
【0092】
[実施例9~12]
実施例1~4で用いた上記合成皮革用離型紙を、実施例1で作製した剥離紙、粘着層およびウレタンフィルムをこの順に備えるシートのウレタンフィルムに重ね、上記ラミネート機にて150℃の温度で加温して、ウレタンフィルムの表面に凹凸を形成した。このようにして、実施例1に対応する実施例9の積層シート、実施例2に対応する実施例10の積層シート、実施例3に対応する実施例11の積層シート、および実施例4に対応する実施例12の積層シートをそれぞれ得た。
【0093】
[比較例1~3]
実施例1~3において、上記合成皮革用離型紙を転写層に重ね、上記ラミネート機にて100℃の温度で加温したこと以外は実施例1~3と同様にして、転写層の表面に凹凸を形成して、実施例1に対応する比較例1の積層シート、実施例2に対応する比較例2の積層シート、および実施例3に対応する比較例3の積層シートをそれぞれ得た。
【0094】
[評価]
<官能評価>
バイオスキンプレート((株)ビューラックス、品番 P001-001)を準備した。実施例および比較例で得られた積層シートを、剥離紙を剥がして上記バイオスキンプレートに貼り付けて固定し、積層シートの表面の触感(しっとり感)を評価した。評価は5段階で行い、5人の評価の平均値を記載した。肌により近い触感は、下記評価において3>2>4>1の順である。
1:さらさらな手触り
2:ややしっとりとした手触り
3:しっとりとした手触り(肌と同程度の手触り)
4:肌よりしっとりとした手触り
【0095】
<動摩擦係数>
実施例および比較例で得られた積層シートを、剥離紙を剥がして上記バイオスキンプレートに貼り付けて固定し、触覚接触子を備える静・動摩擦測定機を取り付けて、下記条件にて動摩擦係数を測定した。20~30mm区間の動摩擦力の平均値/荷重から、動摩擦係数を算出した。
静・動摩擦測定機:(株)トリニティーラボ製i-tester TL201Ts
接触子:(株)トリニティーラボ製 触覚接触子 指モデル
試験環境:23℃、50%RH
荷重:10g
試験速度:10mm/s
試験範囲:30mm
【0096】
<表面形状(Sv、SskおよびSku)>
実施例および比較例で得られた積層シートを、剥離紙を剥がして上記バイオスキンプレートに貼り付けて固定し、積層シートの表面形状であるSv(最大谷深さ)、Ssk(スキューネス)およびSku(クルトシス)を、ISO25178-2:2012に準拠して、形状解析レーザー顕微鏡を用いて下記条件にて測定した。なお、上記バイオスキンプレートにおける積層シートの貼り付け面の表面形状は、Sv:47.2μm、Ssk:-0.50、Sku:2.70であった。
形状解析レーザー顕微鏡:VK-X150(制御部)/VK-X160(測定部)、
(株)キーエンス
対物レンズ:20倍
レーザー波長:658nm
測定モード:表面形状モード
測定ピッチ:0.13μm
測定範囲:長方形(952μm×1297μm)
測定品質:高精度
【0097】