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特開2024-90934電化柱の耐震補強構造、及び電化柱の耐震補強方法
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  • 特開-電化柱の耐震補強構造、及び電化柱の耐震補強方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090934
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】電化柱の耐震補強構造、及び電化柱の耐震補強方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20240627BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20240627BHJP
   E04H 12/00 20060101ALI20240627BHJP
   E04H 12/08 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
E04G23/02 F
E04G23/08 D
E04H12/00 B
E04H12/08
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207131
(22)【出願日】2022-12-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】草野 英明
(72)【発明者】
【氏名】小林 昂樹
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA04
2E176AA11
2E176BB28
2E176BB36
2E176DD22
(57)【要約】
【課題】電化柱の交換の要否を容易に確認することができるとともに、施工性の向上が図られた電化柱の耐震補強構造、及び電化柱の耐震補強方法を提供する。
【解決手段】
電化柱の耐震補強構造100は、既設電化柱EPと、断面視円弧状の複数の部材が接合されて電化柱EPの外周を囲む筒状体を構成する上段鋼管ユニット11と、上段鋼管ユニット11と上下方向に離間し、断面視円弧状の複数の部材が接合されて電化柱EPの外周を囲む筒状体を構成する下段鋼管ユニット13と、上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13とを上下に接続する複数の棒材14と、を備え、棒材14は、全て上段鋼管ユニット11及び下段鋼管ユニット13の外周面に設けられており、電化柱EPは、上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13との間で分断されていることことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設電化柱の外周に鋼管ユニットが設置された電化柱の耐震補強構造であって、
既設の電化柱と、
断面視円弧状の複数の部材が接合されて前記電化柱の外周を囲む筒状体を構成する上段鋼管ユニットと、
前記上段鋼管ユニットと上下方向に離間し、断面視円弧状の複数の部材が接合されて前記電化柱の外周を囲む筒状体を構成する下段鋼管ユニットと、
前記上段鋼管ユニットと前記下段鋼管ユニットとを上下に接続する複数の棒材と、
を備え、
前記棒材は、全て前記上段鋼管ユニット及び前記下段鋼管ユニットの外周面に設けられており、
前記電化柱は、前記上段鋼管ユニットと前記下段鋼管ユニットとの間で分断されていること
を特徴とする電化柱の耐震補強構造。
【請求項2】
前記電化柱と、前記上段鋼管ユニット及び前記下段鋼管ユニットと、の隙間に、第1充填材が充填されること
を特徴とする請求項1に記載の電化柱の耐震補強構造。
【請求項3】
前記棒材は、所定の間隙を保持する間隙保持部を介して、前記上段鋼管ユニット及び前記下段鋼管ユニットの外周に設けられること
を特徴とする請求項1又は2に記載の電化柱の耐震補強構造。
【請求項4】
既設電化柱の外周に鋼管ユニットを設置する電化柱の耐震補強方法であって、
上下に延びる複数の棒材が全て外周に接合された断面視円弧状の複数の部材を接合して、既設の電化柱の外周に、上下方向に離間した上段鋼管ユニットと下段鋼管ユニットとを形成する鋼管ユニット形成工程と、
前記鋼管ユニット形成工程において形成された前記上段鋼管ユニットと前記下段鋼管ユニットとの間で、前記電化柱を上下に分断する分断工程と、を備えること
を特徴とする電化柱の耐震補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電化柱の耐震補強構造、及び電化柱の耐震補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大規模地震の際に電化柱が倒壊する被害が多発したことを受け、既存の電化柱の耐震を補強する補強構造について研究されている。
【0003】
既設の電化柱を補強する補強構造の一例として、特許文献1には、電化柱の外周を囲む筒状補強材を用いる補強構造の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-110448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された柱体の補強構造によれば、電化柱を囲うように設けられる筒状補強材について、その内周面に棒状補強材が固設されていれば、棒状補強材が第1の充填材に埋もれてカバーされるので好ましいとされているが(特許文献1の明細書段落[0025]参照)、大地震等により想定外の水平荷重が入力されて棒状補強材が塑性変形(例えば座屈変形)したとき、内周面に固設された棒状補強材について外観から全数の塑性変形の有無が視認できないため、電化柱の交換の要否を容易に確認することができない点において、問題がある。また、電化柱を切断して上下に分断するためのワイヤソーを設置する際に、内周面の棒状補強材を避けるように筒状補強材内への挿入位置と筒状補強材内からの取出位置とを特定しているが(特許文献1の明細書段落[0032]-[0035]、図7図10参照)、当該挿入位置と当該取出位置との間隔を十分に確保することができず、ワイヤソーの一部において電化柱からの摩擦抵抗が大きくなり、電化柱が全切断不能となるおそれがある点において、問題がある。
【0006】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、電化柱の交換の要否を容易に確認することができるとともに、施工性の向上が図られた電化柱の耐震補強構造、及び電化柱の耐震補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明における電化柱の耐震補強構造は、既設電化柱の外周に鋼管ユニットが設置された電化柱の耐震補強構造であって、既設の電化柱と、断面視円弧状の複数の部材が接合されて前記電化柱の外周を囲む筒状体を構成する上段鋼管ユニットと、前記上段鋼管ユニットと上下方向に離間し、断面視円弧状の複数の部材が接合されて前記電化柱の外周を囲む筒状体を構成する下段鋼管ユニットと、前記上段鋼管ユニットと前記下段鋼管ユニットとを上下に接続する複数の棒材と、を備え、前記棒材は、全て前記上段鋼管ユニット及び前記下段鋼管ユニットの外周面に設けられており、前記電化柱は、前記上段鋼管ユニットと前記下段鋼管ユニットとの間で分断されていることを特徴とする。
【0008】
第2発明における電化柱の耐震補強構造は、第1発明において、前記電化柱と、前記上段鋼管ユニット及び前記下段鋼管ユニットと、の隙間に、第1充填材が充填されることを特徴とする。
【0009】
第3発明における電化柱の耐震補強構造は、第1発明又は第2発明において、前記棒材は、所定の間隙を保持する間隙保持部を介して、前記上段鋼管ユニット及び前記下段鋼管ユニットの外周に設けられることを特徴とする。
【0010】
第4発明における電化柱の耐震補強方法は、既設電化柱の外周に鋼管ユニットを設置する電化柱の耐震補強方法であって、上下に延びる複数の棒材が全て外周に接合された断面視円弧状の複数の部材を接合して、既設の電化柱の外周に、上下方向に離間した上段鋼管ユニットと下段鋼管ユニットとを形成する鋼管ユニット形成工程と、前記鋼管ユニット形成工程において形成された前記上段鋼管ユニットと前記下段鋼管ユニットとの間で、前記電化柱を上下に分断する分断工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明~第4発明によれば、電化柱は、鋼管ユニットで補強されて、棒材が接合された上段鋼管ユニットと下段鋼管ユニットとの間で分断されている。このため、上段鋼管ユニットと下段鋼管ユニットの間が塑性ヒンジとなり、電化柱に加わる震動によるエネルギーが棒材の塑性変形によって吸収されやすくなる。また、棒材は全数外部に露出しており、棒材全数の塑性変形の有無が目視で簡単に視認できる。これにより、電化柱の交換の要否を容易に判断することができる。
【0012】
また、第1発明~第4発明によれば、上段鋼管ユニットと下段鋼管ユニットとを上下に接続する複数の棒材を備え、棒材は、全て上段鋼管ユニット及び下段鋼管ユニットの外周面に設けられる。すなわち、棒材が内周面に設けられる場合と比べて、電化柱の分断に用いるワイヤソーを取り出す間隔を広く確保しやすい。このため、ワイヤソーの一部における摩擦抵抗の増加を避け、電化柱が分断不能となるリスクを低減することができる。これにより、施工性の向上を図ることができる。
【0013】
特に、第2発明によれば、電化柱と、上段鋼管ユニット及び下段鋼管ユニットと、の隙間に、第1充填材が充填される。このため、電化柱に加わる震動によるエネルギーを、第1充填材及び鋼管ユニットを介して、各棒材に伝達しやすくなる。これにより、より確実に地震エネルギーを吸収して電化柱の脆性破壊を防止することができる。
【0014】
特に、第3発明によれば、棒材は、間隙保持部を介して鋼管ユニットの外周に設けられる。すなわち、棒材は間接保持体によって電化柱からさらに離間する。このため、棒材が塑性変形する際に、電化柱や鋼管ユニットと接触してエネルギー吸収性能が阻害されることをさらに防ぐことができる。これにより、より確実に地震エネルギーを吸収して電化柱の脆性破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、既設電化柱の電柱耐震補強工事の概要及び鋼管ユニットにより補強された電化柱の耐震補強構造を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、上段耐震補強構造及び下段耐震補強構造を示す図1のA-A線断面図である。
図3図3は、中段耐震補強構造の分断位置を示す図1のB-B線断面図である。
図4図4は、鋼管ユニットの第1補強部材を示す図であり、(a)が平面図、(b)が側面図である。
図5図5は、鋼管ユニットの第2補強部材を示す図であり、(a)が平面図、(b)が側面図である。
図6図6は、分断工程実施前の中段耐震補強構造の分断位置を示す図であり、(a)が本発明の断面図、(b)が比較例の断面図である。
図7図7は、分断工程実施中の中段耐震補強構造の分断位置を示す図であり、(a)が本発明の断面図、(b)が比較例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態としての電化柱の耐震補強構造の一例について、図面を参照しながら詳細に説明をする。なお、各図における構成は、説明のため模式的に記載されており、例えば各構成の大きさや、構成毎における大きさの対比等については、図とは異なってもよい。
【0017】
(電化柱の耐震補強構造100)
図を用いて、電化柱の耐震補強構造100について説明する。電化柱の耐震補強構造100は、上段耐震補強構造と下段耐震補強構造とを備える。電化柱の耐震補強構造100は、上段耐震補強構造と下段耐震補強構造との間に、さらに中段耐震補強構造とを備えてもよい。図1は、既設の電化柱EPの耐震補強工事の概要、及び鋼管ユニット10により補強された耐震補強構造100の模式斜視図である。図2は、耐震補強構造100の上段耐震補強構造及び下段耐震補強構造の一例を示す図1のA-A線断面図である。図3は、耐震補強構造100の中段耐震補強構造を示す図1のB-B線断面図である。
【0018】
電化柱EPの耐震補強工事は、例えば図1に示すように、既設の電化柱EPの外周に、上段鋼管ユニット11と、上段鋼管ユニット11と上下方向に離間する下段鋼管ユニット13と、からなる鋼管ユニット10を設置して、耐震補強構造100を構築するものである。ここで、上段鋼管ユニット11は上段耐震補強構造の一部を構成し、下段鋼管ユニット13は下段耐震補強構造の一部を構成する。
【0019】
なお、本実施形態においては、電化柱の耐震補強構造100が、上段鋼管ユニット11及び下段鋼管ユニット13よりも厚さを薄くすることで、強度が低くなるように調節された中段鋼管ユニット12で構成される中段耐震補強構造を備える例を説明するが、上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13との間が塑性ヒンジ部として機能する構成であれば、これに限定されない。例えば、中段耐震補強構造は、中段鋼管ユニット13の代わりに鉄鋼材よりも強度の低い保護シート材等で構成されてもよく、設置が省略されてもよい。
【0020】
電化柱EPは、例えば直径400mmのPC電化柱を想定している。従来のPC電化柱は、その内部に設けられるPC鋼線PC1で補強されているが、大地震等により想定外の水平荷重が入力されることにより、電化柱EPを構成するコンクリートが圧壊し、電化柱EPが脆性的な破壊形態を呈するおそれがある。このため、本発明に係る電柱耐震補強工事では、後述のとおり、電化柱EPの外周を、複数の棒材14が全て外周面に接合された上段鋼管ユニット11及び下段鋼管ユニットを備える鋼管ユニット10で囲み、その後上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13との間の位置で、電化柱EPを、埋設されたPC鋼線PC1ごとワイヤソーで切断する。
【0021】
また、電化柱の耐震補強構造100は、例えば電化柱EPと鋼管ユニット10との隙間に、第1充填材M1が注入充填される。また、電化柱の耐震補強構造100は、例えば中空状の電化柱EPに穿設された、内部空洞EPaに連通する注入孔INと吐出確認孔OUTを介して、内部空洞EPaに第2充填材M2が注入充填される。また、電化柱の耐震補強構造100は、例えばPC鋼線PC1及び電化柱EPの分断により生じた隙間に、第3充填材M3が注入充填される(図3参照)。これにより、電化柱の耐震補強構造100は、鋼管ユニット10の外周に設けられた棒材14が塑性変形することで大地震時の入力エネルギーを吸収して脆性破壊を防ぐ構成となっている。ここで、第1充填材M1及び第2充填材M2としては、例えば無収縮モルタルが用いられる。第3充填材M3としては、分断された電化柱EPについて上下方向の圧縮力を負担することができる間詰用の材料が用いられ、例えば公知の合成樹脂、無収縮セメントミルク等が用いられる。
【0022】
<鋼管ユニット10>
鋼管ユニット10は、溶融亜鉛めっき等の防錆処理が施された一般構造用圧延鋼板(SS400)等の鋼材からなる。鋼管ユニット10は、例えば図1に示すように、上段鋼管ユニット11と、下段鋼管ユニット13と、を備えている。上段鋼管ユニット11及び下段鋼管ユニット13の外周面には、複数本の鉄筋からなる棒材14が溶接されて取り付けられているとともに、棒材14が地震エネルギー吸収時に各鋼管プレートから剥離することを防止するための保護鋼材15も取り付けられている。なお、上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13とは上下に離間されており、上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13との間には、例えば棒材14が取り付けられていない中段鋼管ユニット12が設けられる(図1図3参照)。
【0023】
上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13とは、複数本(図示形態では8本)の棒材14で連結された上下一対且つ上下対称の部材である。よって、以下は、下段鋼管ユニット13は、符号のみを記載して上段鋼管ユニット11で代替して説明し、詳細な説明は省略する。
【0024】
<上段鋼管ユニット11、下段鋼管ユニット13>
上段鋼管ユニット11(下段鋼管ユニット13)は、例えば図2に示すように、断面円弧状の第1補強部材11a(13a)と、断面円弧状の第2補強部材11b(13b)の2つのパーツに分割されている。
【0025】
第1補強部材11a(13a)は、例えば図4(a)に示すように、厚さ9mmの一般構造用圧延鋼板(SS400)等の鋼材から内周面の曲率半径が245mmの断面円弧状に曲げ加工された筒状体110(130)を基体とする部材である。
【0026】
筒状体110は、例えば図4(b)に示すように、上端の縁沿いにおいて、吊上げ孔h1が穿設されている(図4では5カ所)。吊上げ孔h1は、筒状体110を電化柱EPの装着位置まで吊り上げるためのフックボルトをかけるために用いる、シャックル等を挿通するための孔である。吊上げ孔h1は、例えば直径10mmの孔となっている。
【0027】
筒状体110(130)は、例えば図4(b)に示すように、複数のボルト孔112(132)が穿設されている。複数のボルト孔112(132)は、筒状体110(130)と第2補強部材11b(13b)の筒状体111(131)とをボルト接合するための孔である。また、このボルト孔112の内側となる筒状体110の内周面には、M20のボルトと螺合するナット113が溶接されている。このため、上段鋼管ユニット11(下段鋼管ユニット13)は、後述の第2補強部材11b(13b)の筒状体111の外側からボルト孔115にM20のボルトをねじ回すだけで第2補強部材11b(13b)と第1補強部材11a(13a)の接合が短時間で容易にできるようになっている。
【0028】
筒状体110(130)は、例えば図2に示すように、筒状体110の内周面の中心線の上部(筒状体130の内周面の中心線の下部)に、第1充填材M1を充填するための隙間S1を確保するスペーサー114(134)が突設されてもよい。スペーサー114(134)は、例えば高さ10mm、厚さ16mmの鋼材のフラットバーからなる。
【0029】
上段鋼管ユニット11(下段鋼管ユニット13)は、例えば電化柱EPとの隙間S1に、第1充填材M1が充填されている。この場合、電化柱EPに加わる震動によるエネルギーを、第1充填材M1及び鋼管ユニット10を介して、各棒材14に伝達しやすくなる。これにより、より確実に地震エネルギーを吸収して電化柱EPの脆性破壊を防止することができる。
【0030】
また、このとき、例えば図1に示すように、電化柱EPの内部空洞EPaに、第2充填材M2が、第1充填材M1より上方の位置まで充填されてもよい。この場合、電化柱EPの分断により生じた隙間に第3充填材M3を注入充填する際に、分断位置より下方の内部空洞EPa内が既に第2充填材M2で満たされているため、内部空洞EPa内に第3充填材M3が落下することを防ぎ、第3充填材M3を効率よく充填することができる。
【0031】
一方、第2補強部材11b(13b)は、例えば図5(a)に示すように、厚さ9mmの一般構造用圧延鋼板(SS400)等の鋼材から内周面の曲率半径が254mmの断面円弧状に曲げ加工された筒状体111(131)を基体とする部材である。
【0032】
筒状体111は、例えば図5(b)に示すように、筒状体110と同様、上端の縁沿いにおいて、吊上げ孔h1が穿設されている(図5では3カ所)。
【0033】
筒状体111(131)は、例えば複数のボルト孔115(135)が穿設されている。複数のボルト孔115(135)は、筒状体111(131)と第1補強部材11a(13a)の筒状体110(130)とをボルト接合するための孔である。
【0034】
筒状体111と筒状体131とは、予め外周に設けられた棒材14を介して接合されている。
【0035】
<中段耐震補強構造>
中段耐震補強構造とは、上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13の間の構造を指す。
【0036】
中段耐震補強構造は、例えば図1に示す、少なくとも何れかのスリット126の位置を分断位置として、電化柱EPが分断される。この分断位置は、電化柱EPの塑性ヒンジ部として機能する。すなわち、電化柱の耐震補強構造100は、後述のとおり、上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13とを上下に接続する複数の棒材14を備え、棒材14は、全て上段鋼管ユニット11及び下段鋼管ユニット13の外周面に設けられる。また、電化柱EPは、鋼管ユニット10で補強されて、上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13との間で上下に分断されている。この場合、上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13との間が塑性ヒンジとなり、電化柱EPに加わる震動によるエネルギーが塑性変形によって吸収されやすくなる。また、外部に露出した棒材14の全数の塑性変形の有無が目視で簡単に視認できる。これにより、電化柱EPの交換の要否を容易に判断することができる。
【0037】
中段耐震補強構造は、例えば図3に示すように、中段鋼管ユニット12と、第1充填材M1と、第3充填材M3と、棒材14と、で構成される。中段鋼管ユニット12は、例えば第1補強部材11aと同様の断面円弧状の第1補強部材12aと、第2補強部材11bと同様の断面円弧状の第2補強部材12bと、の2つのパーツに分割されている。
【0038】
第1補強部材12aは、例えば厚さ4.5mmの一般構造用圧延鋼板(SS400)等の鋼材から内周面の曲率半径が245mmの断面円弧状に曲げ加工された筒状体120を基体とする部材である。第1補強部材12aは、第1補強部材11a(13a)よりも厚さが薄いため、第1補強部材11a(13a)と比べて塑性変形しやすい。
【0039】
筒状体120は、例えば図4(b)に示すように、複数のボルト孔122が穿設されている。複数のボルト孔122は、筒状体120と第2補強部材12bの筒状体121とをボルト接合するための孔である。また、このボルト孔122の内側となる筒状体120の内周面には、上段鋼管ユニット11を構成する第1補強部材11aと同様に、M20のボルトと螺合するナットが溶接されている。このため、中段鋼管ユニット12は、後述の第2補強部材12bの筒状体121の外側からボルト孔125にM20のボルトをねじ回すだけで第2補強部材12bと第1補強部材12aの接合が短時間で容易にできるようになっている。
【0040】
中段鋼管ユニット12は、例えば電化柱EPとの隙間S1に、第1充填材M1が充填されている。また、電化柱EPの分断により生じた隙間に、スリット126まで満たされるように第3充填材M3が充填されている(図3参照)。電化柱EPは、例えば電化柱EPの外周を覆う形状の隙間S2に挿通されたワイヤソーによって、PC鋼線PC1及び第1充填材M1ごと分断される。
【0041】
一方、第2補強部材12bは、例えば厚さ4.5mmの一般構造用圧延鋼板(SS400)等の鋼材から内周面の曲率半径が254mmの断面円弧状に曲げ加工された筒状体121を基体とする部材である。第2補強部材12bは、第1補強部材11b(13b)よりも厚さが薄いため、第2補強部材11b(13b)と比べて塑性変形しやすい。
【0042】
筒状体121は、例えば図5(b)に示すように、複数のボルト孔125が穿設されている。複数のボルト孔125は、筒状体121と第1補強部材12aの筒状体120とをボルト接合するための孔である。
【0043】
筒状体121は、例えば分断位置において、中段鋼管ユニット12内の電化柱EPを分断する治具を挿通するためのスリット126が設けられている。なお、本実施形態においては、スリット126が上下方向に離間して2つ設けられる例を示したが、電化柱EPの分断は少なくとも一方のスリット126の位置において実施されればよく、他方のスリット126は一方のスリット126において電化柱EPが分断不能となった場合に備えて予備的に設けられる。
【0044】
なお、本実施形態においては、筒状体110と筒状体130との間に第1補強部材12aとしての筒状体120が設けられ、筒状体111と筒状体131との間に第2補強部材12bとしての筒状体121が設けられる例を示したが、中段耐震補強構造の設置を省略する場合は、筒状体120及び筒状体121が設けられなくてもよい。
【0045】
<棒材14>
棒材14は、上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13とを上下に接続するように、全て上段鋼管ユニット11及び下段鋼管ユニット13の外周面に設けられる。棒材14は、例えばD25(SD390)の異形鋼棒からなる鉄筋である。棒材14は、例えば全長900mmで、その上端及び下端から200mmの範囲の長手方向の両端部分が、各筒状体110、130に溶接により接合されている。棒材14は、中間部分が固定されずフリーとなっており、フリーとなっている区間が地震時に塑性変形し、電化柱の耐震補強構造100に入力されたエネルギーを吸収する。棒材14は、地震等により外力が加わることで、塑性変形する。この場合、棒材14が塑性変形する際に、電化柱EP、鋼管ユニット10、第1充填材M1等と接触してエネルギー吸収性能が阻害されることを防ぐことができる。これにより、確実に地震エネルギーを吸収して電化柱EPの脆性破壊を防止することができる。
【0046】
棒材14は、例えば図4(a)に示すように、所定の間隙を保持する間隙保持部14aを介して、各筒状体110、130を上下方向に接続するように、各筒状体110、130の外周面に設けられる。間隙保持部14aは、例えば厚さ4.5mmの長さ200mmのスペーサーである。間隙保持体14aは、各筒状体110、130の外周面から少し浮かせた状態で、端部から200mmの範囲だけ間隙保持体14aごとK形フレア溶接で強固に固定されて、各筒状体110、130と一体化される。すなわち、棒材14は間接保持体14aによって電化柱EPからさらに離間する。この場合、棒材14が塑性変形する際に、電化柱EPや鋼管ユニット10、第1充填材M1等と接触してエネルギー吸収性能が阻害されることをさらに防ぐことができる。これにより、より確実に地震エネルギーを吸収して電化柱EPの脆性破壊を防止することができる。なお、間隙保持部14aは、例えば図5(a)に示すように、各筒状体111、131についても同様に設けられる。
【0047】
(電化柱の耐震補強構造100の施工方法)
次に、本発明の実施形態に係る電化柱の耐震補強構造100の施工方法(電化柱EPの耐震補強方法)について説明する。電化柱EPの耐震補強方法は、鋼管ユニット形成工程と、分断工程と、を備える。
【0048】
<事前準備>
本発明の実施形態に係る電柱耐震補強工事の施工方法を実施する準備工として、予め耐震補強工事の対象である既設の電化柱EPが建植されている基礎の形式、障害物の有無を確認する。勿論、施工に支障がある添接物等があれば、施工前に撤去できるものは撤去しておく。また、後述の鋼管ユニット形成工程において内部空洞EPaに第2充填材M2を注入充填するための孔を削孔する。具体的には、例えば図1に示すように、電化柱EPの所定の高さに、電化柱EPの外周面から内部空洞EPaに連通する注入孔INと吐出確認孔OUTを削孔する。吐出確認孔は、例えば上段鋼管ユニット11の上端から1D(電化柱EPの外周断面の直径)だけ上方の位置に設けられる。なお、第2充填材M2は予め内部空洞EPaに充填されてもよく、電化柱EPの分断前であれば後述の第1充填材M1の充填後に充填されてもよい。
【0049】
また、電化柱EPを分断する位置(図1のスリット126の位置)に、分断用治具として用いるワイヤソーを挿通するための、内部に隙間S2を有するワイヤソー用配管21を、電化柱EPの外周に予め巻き付けて仮配置する。なお、ワイヤソー用配管21はワイヤソーで分断される程度の強度を有する材料が用いられ、例えば合成樹脂(プラスチック)製が用いられる。
【0050】
上段鋼管ユニット11の第1補強部材11aと、下段鋼管ユニット13の第1補強部材13aとは、例えば図4(b)に示すように、上下に延びる複数の棒材14が溶接により外周に予め接合され、一体化されている。補強部材の吊り上げ回数を低減するために、各第1補強部材11a、13aの間には、中段鋼管ユニット12の第1補強部材12aが粘着テープ等で仮止めされてもよい。ただし、各補強部材11a、12aの間、及び各補強部材12a、13aの間を塑性ヒンジとして機能させるため、第1補強部材12aは各補強部材11a、13aと一体化はされていない。また、上段鋼管ユニット11の第2補強部材11bと、下段鋼管ユニット13の第2補強部材13bとは、例えば図5(b)に示すように、上下に延びる複数の棒材14が溶接により外周に予め接合され、一体化されている。また、第1補強部材12aと同様に、各第2補強部材11b、13bの間には、中段鋼管ユニット12の第2補強部材12bが粘着テープ等で仮止めされてもよいが、第2補強部材12bは各補強部材11b、13bと一体化はされていない。
【0051】
<鋼管ユニット形成工程>
鋼管ユニット形成工程では、鋼管ユニット10を、補強対象である電化柱EPとの位置関係が所定の位置となるように構築する。詳しくは、電化柱EPの外周に、上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13とを設置する。本実施形態においては、上段鋼管ユニット11及び下段鋼管ユニット13の各部材に仮止めされた中段鋼管ユニット12の各部材を用いて、上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13との設置に伴い、中段鋼管ユニット12も構築される例を示したが、各鋼管ユニット11、13の各部材と独立した中段鋼管ユニット12の各部材を用いて、各鋼管ユニット11、13の設置の前後において中断鋼管ユニット12を別途構築してもよい。
【0052】
まず、各第1補強部材11a、12a、13aを、電化柱EPに沿って吊り上げる。具体的には、例えば予め電化柱EPに固定したハンガー部材に設けられたフックボルトと吊上げ孔h1に挿通したシャックルとを連結して吊り上げる。吊り上げ時は、フックボルトで長さを調整することなく、チェーンブロックなどの他の長さ調整治具を用いて、ハンガー部材と各第1補強部材11a、12a、13aとの間隔を調整してもよい。
【0053】
同様に、各第2補強部材11b、12b、13bも設置する。このとき、第2補強部材12bに設けられたスリット126が、電化柱EPの外周に巻き付けて仮配置したワイヤソー用配管21の位置に来るように、各第2補強部材11b、12b、13b又は仮配置したワイヤソー用配管21の高さを調節する。その後、各第2補強部材11b、12b、13bと各第1補強部材11a、12a、13aとをボルト接合して、上段鋼管ユニット11、中段鋼管ユニット12、及び下段鋼管ユニット13を構築する。
【0054】
各鋼管ユニット11、12、13を設置した後、例えば図6(a)に示すように、ワイヤソー用配管21の仮配置を解いて、第2補強部材12bに設けられたスリット126からワイヤソー用配管21の両端を取り出し、中段鋼管ユニット12の外部に露出させた状態で、養生テープ22をスリット126に貼着してワイヤソー用配管21を固定する。このとき、ワイヤソー用配管21は図6に示す隙間S2を形成するように配置される。なお、ワイヤソーによって棒材14が誤って分断されないよう、ワイヤソー用配管21は棒材14をまたがない2地点から取り出す必要がある。すなわち、スリット126の両端は、棒材14をまたがない位置に設けられる。
【0055】
ワイヤソー用配管21を養生テープ22で固定した後、上段鋼管ユニット11の上部から、各鋼管ユニット11、12、13内の隙間S1に第1充填材M1を注入し、上段鋼管ユニット11の上部まで第1充填材M1で満たす。このとき、ワイヤソー配管21内の隙間S2には第1充填材M1が侵入せず、中段鋼管ユニット12内に隙間S2が維持される。
【0056】
以上で、鋼管ユニット10の設置が完了となる。
【0057】
第1補強部材11a(13a)にスペーサー114(134)が設けられる場合、スペーサー114(134)は、例えば図2に示すように、電化柱EPに接することで、第1補強部材11a(13a)と電化柱EPとの間に隙間S1を形成する。なお、図示を省略したが、前述のハンガー部材を用いて、隙間S1が一定となるように、上段鋼管ユニット11の一部を支持してもよい。
【0058】
また、第1充填材M1を注入する場合、図1に示すように、鋼管ユニット10の下端と既設の電化柱EPの基礎との間に、下段鋼管ユニット13の筒状体130,131の下端を挿し込む凹溝が形成された断面凹字状のゴム材5を介装すると好ましい。この場合、鋼管ユニット10に充填した第1充填材M1が下端から漏出することを防ぐことができる。なお、ゴム材5とは、加えた力の方向に大きく伸縮し、力を除くと元の形状に戻る特性(弾性変形)を有したゴム弾性体を指している。
【0059】
<分断工程>
分断工程では、鋼管ユニット形成工程において鋼管ユニット10が設置された後に、上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13との間で、電化柱EPを上下に分断する。分断方法として、公知のワイヤソーを用いて切断する例を説明する。
【0060】
前工程において隙間S1に第1充填材M1を充填した場合、第1充填材M1の圧縮強度が24N/mm2以上の強度に達していることを確認する。その後、例えば図6(a)に示すように、中段鋼管ユニット12に含まれるワイヤソー用配管21内の隙間S2にワイヤソー23を挿通し、ワイヤソー23をメインプーリー24と補助プーリー25との間に設置する。その後、ワイヤソーが棒材14に接触していないことを確認した上で、ワイヤソーを回転させ、ワイヤソー用配管21ごと電化柱EP、PC鋼線PC1、第1充填材M1、及び第2充填材M2を切断する。
【0061】
なお、本発明における電化柱の耐震補強構造100は、棒材14が鋼管ユニット10の外周側に設けられるため、例えば図6(b)に示すように鋼管ユニット10の内周側に設けられる棒材14’を備える場合と比べて、棒材14同士の間隔が大きくなり、ワイヤソー23の回転半径が大きくなるように配置しやすい。また、ワイヤソー23の回転半径が大きい場合、例えば図7(a)に示すように、ワイヤソー23が矢印で示される切断方向に移動しても、回転半径が切断不能となる半径まで下がりにくく、電化柱EPの全切断不能となりにくい。一方で、ワイヤソー23の回転半径が小さい場合、例えば図7(b)に示すように、切断に伴いワイヤソー23が矢印で示される切断方向に移動したとき、回転半径が小さくなる(図7(b)内の右肩下がり斜線参照)ことでワイヤソー23が電化柱EPから受ける摩擦抵抗が大きくなり、電化柱EPの全切断不能となるリスクがある。すなわち、棒材14が鋼管ユニット10の外周に設けられることで、鋼管ユニット10の内周に設けられる場合と比べて、ワイヤソー23を取り出す間隔を広く確保しやすいため、ワイヤソー23の一部における電化柱EPからの摩擦抵抗の増加を避け、電化柱EPの全切断不能となるリスクの低減を図ることができる。これにより、施工性の向上を図ることができる。
【0062】
電化柱EPを分断した後、分断によって生じた隙間に、例えば図3に示すように第3充填材M3を充填する。具体的には、分断によって生じた隙間内の粉塵を回収した後に、その隙間に注入パイプ及びエア抜きパイプ等を設置し、電動式ディスペンサ等を用いて第3充填材M3を注入して充填する。
【0063】
以上で、電化柱の耐震補強構造100の設置完了となる。
【0064】
本実施形態によれば、電化柱EPは、鋼管ユニット10で補強されて、棒材14が接合された上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13との間で分断されている。このため、上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニットとの間が塑性ヒンジとなり、電化柱EPに加わる震動によるエネルギーが棒材14の塑性変形によって吸収されやすくなる。また、棒材14は全数外部に露出しており、棒材14全数の塑性変形の有無が目視で簡単に視認できる。これにより、電化柱EPの交換の要否を容易に判断することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、上段鋼管ユニット11と下段鋼管ユニット13とを上下に接続する複数の棒材14を備え、棒材14は、全て上段鋼管ユニット11及び下段鋼管ユニット13の外周面に設けられる。すなわち、棒材14が内周面に設けられる場合と比べて、電化柱EPの分断に用いるワイヤソー23を取り出す間隔を広く確保しやすい。このため、ワイヤソー23の一部における摩擦抵抗の増加を避け、電化柱EPが分断不能となるリスクを低減することができる。これにより、施工性の向上を図ることができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、電化柱EPと、上段鋼管ユニット11及び下段鋼管ユニット13と、の隙間に、第1充填材M1が充填される。このため、電化柱EPに加わる震動によるエネルギーを、第1充填材M1及び鋼管ユニット10を介して、各棒材14に伝達しやすくなる。これにより、より確実に地震エネルギーを吸収して電化柱EPの脆性破壊を防止することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、棒材14は、間隙保持部14aを介して鋼管ユニット10の外周に設けられる。すなわち、棒材14は間接保持体14aによって電化柱EPからさらに離間する。このため、棒材14が塑性変形する際に、電化柱EPや鋼管ユニット10と接触してエネルギー吸収性能が阻害されることを防ぐことができる。これにより、より確実に地震エネルギーを吸収して電化柱EPの脆性破壊を防止することができる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0069】
例えば、中段耐震補強構造は、第1充填材M1を充填する際の仮設ユニットとして中段鋼管ユニット12が用いられ、施工完了時の耐震補強構造において中段鋼管ユニット12が取り外されてもよい。また、中段耐震補強構造は、第1充填材M1が硬化するまでに第1充填材M1を支持できる程度の強度があれば、例えば仮留め用のシート等、鉄鋼材料以外に置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0070】
100:耐震補強構造
10:複数の鋼管ユニット
11:上段鋼管ユニット
h1:吊上げ孔
11a、12a、13a:第1補強部材
11b、12b、13b:第2補強部材
110、111、120、121、130、131:筒状体
112、122、132:ボルト孔
113:ナット
114、134:スペーサー
115、125、135:ボルト孔
12:中段鋼管ユニット
126:スリット
13:下段鋼管ユニット
14:棒材
14a:間隙保持体
15:保護鋼材
21:ワイヤソー用配管
22:養生テープ
23:ワイヤソー
24:メインプーリー
25:補助プーリー
5:ゴム材
EP:PC電化柱
EPa:内部空洞
PC1:PC鋼線
S1:隙間
S2:隙間
IN:注入孔
OUT:吐出確認孔
M1:第1充填材
M2:第2充填材
M3:第3充填材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7