(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090937
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】熱風炉の燃焼制御方法及び燃焼制御装置
(51)【国際特許分類】
C21B 9/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
C21B9/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207134
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 一路
(72)【発明者】
【氏名】海瀬 達哉
(57)【要約】
【課題】熱風炉の熱過剰や熱不足が発生することを抑制可能な熱風炉の燃焼制御方法及び燃焼制御装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る熱風炉の燃焼制御方法は、混合ガスを燃焼させることにより投入された熱量を蓄熱室内に蓄熱する燃焼工程と、蓄熱室内に冷風を供給することにより熱風を生成し、生成された熱風を高炉に供給する送風工程とを有する熱風炉の燃焼制御方法であって、熱量の実績値を算出し、熱風を生成することにより奪われた熱量を算出し、熱風炉の熱効率の実績値を算出し、次回熱風を生成する際に投入するべき熱量を算出し、次回熱風を生成する際に供給するべき混合ガスの量を算出し、算出された混合ガスの量に基づいて熱風炉を制御するステップを含むことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合ガスを燃焼させることにより投入された熱量を蓄熱室内に蓄熱する燃焼工程と、前記蓄熱室内に冷風を供給することにより熱風を生成し、生成された熱風を高炉に供給する送風工程とを有する熱風炉の燃焼制御方法であって、
下記数式(1)を用いて前記熱量の実績値を実績入熱量Q
inとして算出し、下記数式(2)を用いて前記熱風を生成することにより奪われた熱量を実績出熱量Q
outとして算出し、下記数式(3)を用いて熱風炉の熱効率の実績値を実績熱効率ηとして算出し、下記数式(4)を用いて次回熱風を生成する際に投入するべき熱量を必要投入熱量Q
inHSとして算出し、下記数式(5)を用いて次回熱風を生成する際に供給するべき前記混合ガスの量V
M_Bを算出し、算出された前記混合ガスの量V
M_Bに基づいて熱風炉を制御するステップを含むことを特徴とする熱風炉の燃焼制御方法。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【請求項2】
前記高炉の送風諸元が変更された場合、下記数式(6)を用いて前記熱風を生成することにより奪われる熱量の予測値Q
out予測を算出し、下記数式(7)を用いて熱量の予測値Q
out予測を得るために必要な熱量を必要入熱量Q
in予想として算出し、算出された必要入熱量Q
in予想に基づいて熱風炉を制御するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の熱風炉の燃焼制御方法。
【数6】
【数7】
【請求項3】
前記蓄熱室と前記蓄熱室に冷風を供給する送風機との間に設けられた送風バタフライ弁の前記送風工程が終了した後の開度を用いて前記実績熱効率ηの補正量αを算出し、下記数式(8)を用いて前記実績熱効率ηの補正値η
補正を算出し、算出された補正値η
補正を次の処理に用いるステップを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱風炉の燃焼制御方法。
【数8】
【請求項4】
混合ガスを燃焼させることにより投入された熱量を蓄熱室内に蓄熱する燃焼工程と、前記蓄熱室内に冷風を供給することにより熱風を生成し、生成された熱風を高炉に供給する送風工程とを有する熱風炉の燃焼制御装置であって、
下記数式(1)を用いて前記熱量の実績値を実績入熱量Q
inとして算出し、下記数式(2)を用いて前記熱風を生成することにより奪われた熱量を実績出熱量Q
outとして算出し、下記数式(3)を用いて熱風炉の熱効率の実績値を実績熱効率ηとして算出し、下記数式(4)を用いて次回熱風を生成する際に投入するべき熱量を必要投入熱量Q
inHSとして算出し、下記数式(5)を用いて次回熱風を生成する際に供給するべき前記混合ガスの量V
M_Bを算出し、算出された前記混合ガスの量V
M_Bに基づいて熱風炉を制御する手段を備えることを特徴とする熱風炉の燃焼制御装置。
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉に熱風を供給する熱風炉の燃焼制御方法及び燃焼制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、設備トラブルによって燃焼時間不足が発生した場合、投入ガス量を増加させることによって燃焼時間の不足分を補うことにより、高炉に供給される熱風の温度の維持を図る熱風炉の燃焼制御方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱風炉への投入ガス量を定常的に管理したとしても、ガスカロリーの変化や熱風炉内の蓄熱レンガの目詰まりによる蓄熱能力の低下等の誤差要因によって、熱風炉の熱過剰や熱不足が発生することがある。熱過剰が発生した場合、熱風炉にガスが余剰に投入されていることになるため、操業コストが悪化する。一方、熱不足が発生した場合には、送風温度が低下し、高炉の炉熱低下によって高炉の炉況が悪化する。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、熱風炉の熱過剰や熱不足が発生することを抑制可能な熱風炉の燃焼制御方法及び燃焼制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る熱風炉の燃焼制御方法は、混合ガスを燃焼させることにより投入された熱量を蓄熱室内に蓄熱する燃焼工程と、前記蓄熱室内に冷風を供給することにより熱風を生成し、生成された熱風を高炉に供給する送風工程とを有する熱風炉の燃焼制御方法であって、下記数式(1)を用いて前記熱量の実績値を実績入熱量Qinとして算出し、下記数式(2)を用いて前記熱風を生成することにより奪われた熱量を実績出熱量Qoutとして算出し、下記数式(3)を用いて熱風炉の熱効率の実績値を実績熱効率ηとして算出し、下記数式(4)を用いて次回熱風を生成する際に投入するべき熱量を必要投入熱量QinHSとして算出し、下記数式(5)を用いて次回熱風を生成する際に供給するべき前記混合ガスの量VM_Bを算出し、算出された前記混合ガスの量VM_Bに基づいて熱風炉を制御するステップを含むことを特徴とする。
【0007】
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
本発明に係る熱風炉の燃焼制御方法は、上記発明において、前記高炉の送風諸元が変更された場合、下記数式(6)を用いて前記熱風を生成することにより奪われる熱量の予測値Qout予測を算出し、下記数式(7)を用いて熱量の予測値Qout予測を得るために必要な熱量を必要入熱量Qin予想として算出し、算出された必要入熱量Qin予想に基づいて熱風炉を制御するステップを含むことを特徴とする。
【0013】
【0014】
【0015】
本発明に係る熱風炉の燃焼制御方法は、上記発明において、前記蓄熱室と前記蓄熱室に冷風を供給する送風機との間に設けられた送風バタフライ弁の前記送風工程が終了した後の開度を用いて前記実績熱効率ηの補正量αを算出し、下記数式(8)を用いて前記実績熱効率ηの補正値η補正を算出し、算出された補正値η補正を次の処理に用いるステップを含むことを特徴とする。
【0016】
【0017】
本発明に係る熱風炉の燃焼制御装置は、混合ガスを燃焼させることにより投入された熱量を蓄熱室内に蓄熱する燃焼工程と、前記蓄熱室内に冷風を供給することにより熱風を生成し、生成された熱風を高炉に供給する送風工程とを有する熱風炉の燃焼制御装置であって(Cbmoi,CCmoiの定義が不明)、下記数式(1)を用いて前記熱量の実績値を実績入熱量Qinとして算出し、下記数式(2)を用いて前記熱風を生成することにより奪われた熱量を実績出熱量Qoutとして算出し、下記数式(3)を用いて熱風炉の熱効率の実績値を実績熱効率ηとして算出し、下記数式(4)を用いて次回熱風を生成する際に投入するべき熱量を必要投入熱量QinHSとして算出し、下記数式(5)を用いて次回熱風を生成する際に供給するべき前記混合ガスの量VM_Bを算出し、算出された前記混合ガスの量VM_Bに基づいて熱風炉を制御する手段を備えることを特徴とする。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る熱風炉の燃焼制御方法及び燃焼制御装置によれば、熱風炉の熱過剰や熱不足が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態である熱風炉の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す熱風炉の動作を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態である燃焼制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、送風諸元が変更された際の燃焼制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態である燃焼制御処理を実行した場合と実行しない場合における燃料原単位の日推移の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図3に示す燃焼制御処理の変形例の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、送風バタフライ弁の開度と実績熱効率ηの補正の有無との関係の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の導入後に高炉送風流量の減少があったときの出熱量、入熱量、及びMガス流量の変化の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の導入前後における高炉送風流量の減少があった際の出熱量と入熱量との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である熱風炉の燃焼制御方法及び燃焼制御装置について説明する。
【0026】
〔構成〕
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施形態である熱風炉の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態である熱風炉の構成を示す模式図である。
図2は、
図1に示す熱風炉の動作を説明するための図である。
【0027】
図1に示すように、本発明の一実施形態である熱風炉1は、高炉2に熱風を供給する4基の熱風炉1a~1dにより構成され、燃焼ブロワー10a~10c、熱交換器11、Mガス予熱器12、送風機13、燃焼室14a~14d、及び蓄熱室15a~15dを備えている。なお、
図1に示す熱風炉1は、4基の熱風炉1a~1dによるパラレル操業を行うものであるが、本発明は、本実施形態に限定されることはなく、内燃式及び外燃式の熱風炉を問わず適用することができる。
【0028】
燃焼ブロワー10a~10cは、熱交換器11に空気を供給する。
【0029】
熱交換器11は、燃焼ブロワー10a~10cから供給された空気と蓄熱室15a~15dから排出されたガス(排ガス)との間で熱交換することにより空気を加熱して燃焼空気を生成し、生成した燃焼空気を燃焼室14a~14dに供給する。
【0030】
Mガス予熱器12は、コークスガスや転炉ガス等の混合ガス(Mガス)を予熱して燃焼室14a~14dに供給する。
【0031】
送風機13は、蓄熱室15a~15dに冷風を供給する。蓄熱室15a~15dへの送風量は、送風機13と各蓄熱室15a~15dとの間に設けられた送風バタフライ弁CB1~CB4の開度を制御することにより調整することができる。
【0032】
燃焼室14a~14dは、熱交換器11から供給された燃焼空気を用いてMガスを燃焼させ、その燃焼排ガスによって蓄熱室15a~15dの内部の蓄熱レンガを加熱する。
【0033】
蓄熱室15a~15dは、加熱された蓄熱レンガによって送風機13から供給された冷風を昇温して熱風を生成し、生成された熱風を高炉2に供給する。
【0034】
このような構成を有する熱風炉1を用いて高炉2に熱風を供給する際には、まず、
図2(a)に示すように、燃焼室14a~14dにおいて、熱交換器11から供給された燃焼空気を用いてMガスを燃焼させ、その燃焼排ガスによって蓄熱室15a~15dの内部の蓄熱レンガを加熱する(燃焼工程)。すなわち、燃焼工程では、蓄熱レンガを加熱することにより熱風炉1に熱量Q
INを入熱(蓄熱)する。そして次に、
図2(b)に示すように、蓄熱室15a~15dにおいて、加熱された蓄熱レンガによって送風機13から供給される冷風を昇温して熱風を生成し、生成された熱風を高炉2に供給する(送風工程)。すなわち、送風工程では、加熱された蓄熱レンガによって熱風を生成することによって熱風炉1から熱量Q
outが出熱される。
【0035】
〔燃焼制御方法〕
このような構成を有する熱風炉1では、コンピュータ等により構成された制御装置が以下に示す燃焼制御処理を実行することにより、熱過剰や熱不足が発生することを抑制する。以下、
図3を参照して燃焼制御処理を実行する際の制御装置の動作について説明する。
【0036】
図3は、本発明の一実施形態である燃焼制御処理の流れを示すフローチャートである。
図3に示すフローチャートは、熱風炉1の操業開始が指示されたタイミングで開始となり、燃焼制御処理はステップS1の処理に進む。
【0037】
ステップS1の処理では、制御装置が、燃焼工程を開始する。これにより、ステップS1の処理は完了し、燃焼制御処理はステップS2の処理に進む。
【0038】
ステップS2の処理では、制御装置が、熱風炉への投入熱量を積算することにより熱風炉への入熱量の実績値を実績入熱量Qinとして算出する。具体的には、制御装置は、以下に示す数式(1)を用いて実績入熱量Qinを算出する。すなわち、制御装置は、Mガス投入熱量、燃焼空気潜熱量、及びMガス潜熱量の合計値を実績入熱量Qinとして算出する。これにより、ステップS2の処理は完了し、燃焼制御処理はステップS3の処理に進む。
【0039】
【0040】
ステップS3の処理では、制御装置が、燃焼工程を終了する。これにより、ステップS3の処理は完了し、燃焼制御処理はステップS4の処理に進む。
【0041】
ステップS4の処理では、制御装置が、送風工程を開始する。これにより、ステップS4の処理は完了し、燃焼制御処理はステップS5の処理に進む。
【0042】
ステップS5の処理では、制御装置が、熱風炉の出熱量を積算することにより熱風炉の出熱量の実績値を実績出熱量Qoutとして算出する。具体的には、制御装置は、以下に示す数式(2)を用いて実績出熱量Qoutを算出する。すなわち、制御装置は、窒素顕熱量、酸素顕熱量、及び送風水分顕熱量の合計値を実績出熱量Qoutとして算出する。これにより、ステップS5の処理は完了し、燃焼制御処理はステップS6の処理に進む。
【0043】
【0044】
ステップS6の処理では、制御装置が、送風工程を終了する。これにより、ステップS6の処理は完了し、燃焼制御処理はステップS7の処理に進む。
【0045】
ステップS7の処理では、制御装置が、ステップS2の処理において算出された実績入熱量QinとステップS5の処理において算出された実績出熱量Qoutとを以下に示す数式(3)に代入することにより、熱効率ηの実績値を実績熱効率ηとして算出する。これにより、ステップS7の処理は完了し、燃焼制御処理はステップS8の処理に進む。
【0046】
【0047】
ステップS8の処理では、制御装置が、ステップS5の処理において算出された実績出熱量QoutとステップS7の処理において算出された実績熱効率ηとを以下に示す数式(4)に代入することにより、次回の燃焼工程時に熱風炉に投入するべき熱量を必要投入熱量QinHSとして算出する。これにより、ステップS8の処理は完了し、燃焼制御処理はステップS9の処理に進む。
【0048】
【0049】
ステップS9の処理では、制御装置が、ステップS8の処理において算出された必要投入熱量QinHSを以下に示す数式(5)に代入することにより、必要投入熱量QinHSを投入するために必要なMガスの流量VM_Bを算出する。これにより、ステップS9の処理は完了し、一連の燃焼制御処理は終了する。
【0050】
【0051】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である燃焼制御処理では、制御装置が、数式(1)を用いて投入熱量の実績値を実績入熱量Qinとして算出し、数式(2)を用いて熱風を生成することにより奪われた熱量を実績出熱量Qoutとして算出し、数式(3)を用いて熱風炉の熱効率の実績値を実績熱効率ηとして算出し、数式(4)を用いて次回熱風を生成する際に投入するべき熱量を必要投入熱量QinHSとして算出し、数式(5)を用いて次回熱風を生成する際に供給するべき混合ガスの量VM_Bを算出し、算出された混合ガスの量VM_Bに基づいて熱風炉を制御するので、熱風炉の熱過剰や熱不足が発生することを抑制できる。
【0052】
なお、高炉の炉況によって突発的な減風や出銑量調整に伴う減風等の高炉の送風諸元の変更が発生した際には、投入熱量が過剰になり、操業コストが悪化する。特に突発的な減風が発生した場合には、オペレータが投入ガス量を手動で制御するために、オペレータの個人差によって適切な投入ガス量制御が行われない可能性がある。ここで、高炉の送風諸元としては、送風流量Vb、トータルO2流量VO2、送風温度Tb、送風湿度moi、及び冷風温度Tcを例示できる。トラブルや出銑量調整の際には、送風流量Vbが低下し、熱風炉が熱余りの状態となるため、熱風炉への投入熱量を下げる制御を行う必要がある。
【0053】
このため、高炉の送風諸元の変更が発生した場合には、熱風炉に投入される熱量を制御することが望ましい。具体的には、この場合、
図4のフローチャートに示すように、まず、制御装置は、送風諸元が変更されたか否かを判定する(ステップS41)。本実施形態では、送風諸元変更時に演算される以下の数式(9)に示す出熱量偏差が所定値以上である場合、制御装置は、送風諸元が変更されたと判定する。
【0054】
【0055】
そして、送風諸元が変更されたと判定した場合、制御装置は、以下に示す数式(6)を用いて送風諸元変更後の予測出熱量Qout予測を算出し、算出された予測出熱量Qout予測を以下に示す数式(7)に代入することにより必要入熱量Qin予測を算出する(ステップS42)。そして、制御装置は、算出された必要入熱量Qin予測に基づいて熱風炉に投入するMガスの流量を算出する(ステップS43)。
【0056】
【0057】
【0058】
〔熱効率の補正〕
図5は、本発明の一実施形態である燃焼制御処理を実行した場合と実行しない場合における燃料原単位の日推移の一例を示す図である。
図5に示すように、本発明の一実施形態である燃焼制御処理を実行することによって燃料原単位が下がることが確認された。しかしながら、本発明の一実施形態である燃焼制御処理を実行した場合であっても、燃料原単位が大きく低下した日と少ししか低下しなかった日があった。そこで、本発明の発明者らは、燃料原単位が少ししか低下していない日の操業内容を詳細に調査した。その結果、高炉の出銑量調整のために送風流量を低下させた日と低下させた送風流量を元に復帰させた日において燃料原単位が少ししか低下しない傾向があることを知見した。これは、非定常な操業においては熱風炉の炉熱状態が平常時と異なるためであると考えられる。
【0059】
このため、炉熱状態を判定する基準として、送風終了時の送風バタフライ弁CB1~CB4の開度を用いて熱効率ηの値を補正することが望ましい。詳しくは、4基の熱風炉1a~1dによるパラレル操業では、先行炉の熱量は時間経過と共に低下してくるため、先行炉に対応する送風バタフライ弁を徐々に閉じ、炉熱が十分にある後行炉の送風バタフライ弁開度を開くことにより、送風温度が一定となるように制御している。このため、送風バタフライ弁の開度から送風工程終了後の熱風炉の炉熱状態を推定することができる。例えば、送風工程終了時の送風バタフライ弁の開度が大きい場合、送風工程終了後も熱風炉内に熱が残存しており、前回燃焼工程時に必要以上の熱量が投入されたと考えられる。送風バタフライ弁の開度が大きい場合、熱風炉が熱余りの状態であるため、次回の燃焼工程時の投入熱量が過剰になってしまうと熱効率が悪化する。一方、送風バタフライ弁の開度が小さい場合には、熱風炉が熱不足であるため、設定の送風温度を維持することができなくなり、高炉操業に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0060】
そこで、
図6のフローチャートに示すように、制御装置は、ステップS27の処理において実績熱効率ηを算出した後、送風バタフライ弁の開度による実績熱効率ηの補正が必要か否かを判定する(ステップS28)。本実施形態では、
図7に示すように、送風工程終了時の送風バタフライ弁の開度に下々限開度B2、下限開度B1、上限開度A1、及び上々限開度A2が設定されている。制御装置は、送風工程終了時の送風バタフライ弁の開度が
図6に示すどの範囲にあるかに基づいて送風バタフライ弁の開度による実績熱効率ηの補正が必要か否かを判定する。そして、実績熱効率ηの補正が必要であると判定した場合(ステップS28:Yes)、制御装置は、送風バタフライ弁の開度により実績熱効率ηを補正する。
【0061】
具体的には、送風バタフライ弁の開度が小さい場合、制御装置は、以下に示す数式(8)を用いて熱効率ηにマイナスの補正値αを加え、次回投入されるMガス量を増加させて熱不足を補う制御を行う。一方、送風バタフライ弁の開度が大きい場合には、制御装置は、熱過剰による熱効率悪化及びMガスの余剰投入を抑制するために、以下に示す数式(8)を用いて熱効率ηにプラスの補正値αを加え、次回投入されるMガス量を減少させて熱過剰を抑制する制御を行う。一方、実績熱効率ηの補正は不要であると判定した場合には(ステップS28:No)、制御装置は、燃焼制御処理をステップS30の処理に進める。なお、
図6に示すステップS21~S27及びステップS30~S31の処理の内容は
図3に示すステップS1~S9の処理の内容と同じ内容であるので、その説明は省略する。
【0062】
【0063】
〔実施例〕
本実施例では、容積4500m
3の高炉に定格風量7000Nm
3/min、定格入熱量9000~10000MJ/minの4基の熱風炉から熱風を供給する操業に本発明を適用した。
図8(a)~(d)に本発明の導入後に高炉送風流量の減風があったときの出熱量、入熱量、及びMガス流量の変化の一例を示す。なお、
図8(a)~(d)に示す例では、送風バタフライ弁開度65%で熱効率η:1.5%、送風バタフライ弁開度50%で熱効率η:-7.0%の補正を行った。
図8(a)~(d)に示すように、高炉送風流量の減風による出熱量の減少に伴い入熱量が低下している。これにより、本発明によれば、出熱量の変化に応じてMガス及び操業コストを削減できることが確認された。また、
図9(a),(b)に本発明の導入前後における高炉送風流量の減風があった際の出熱量と入熱量との関係の一例を示す。
図9(a)に示すように、本発明の導入前はオペレータの個人差によって出熱量の減少があった際に入熱量を追従して下げることができていないケース(領域R1)があった。これに対して、
図9(b)に示すように、本発明の導入後は出熱量の減少に追従して入熱量を下げることができていることが確認された。
【0064】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1,1a,1b,1c,1d 熱風炉
2 高炉
11 熱交換器
12 Mガス予熱器
13 送風機
14a,14b,14c,14d 燃焼室
15a,15b,15c,15d 蓄熱室
CB1,CB2,CB3,CB4 送風バタフライ弁