(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090941
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240627BHJP
C09D 127/14 20060101ALI20240627BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240627BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B27/00 M
C09D127/14
C09D7/63
C09D183/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207143
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】岸田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 健
(72)【発明者】
【氏名】印部 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】細川 武喜
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK17A
4F100AK17J
4F100AK25C
4F100AK51B
4F100AR00A
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10E
4F100EH46A
4F100GB31
4F100GB32
4F100GB41
4F100HB00
4F100JA05
4F100JA05A
4F100JA07A
4F100JB04A
4F100JK08
4F100JK12A
4F100JL13C
4F100YY00
4F100YY00A
4J038CD101
4J038DG191
4J038DG261
4J038DL032
4J038MA13
4J038MA14
4J038NA07
(57)【要約】
【課題】本発明は、耐酸性、延伸性、撥水持続性、耐擦り傷性及び耐候性のバランスに優れた積層フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】保護層と樹脂基材とを含む積層フィルムであり、保護層は積層フィルムの表層を構成しており、積層フィルムの伸張率Exが50~400%であり、保護層の表面に対して2cm×2cm当たり9.8Nの荷重にて1000往復した耐摩耗試験を行う前の保護層の表面の表面自由エネルギーγacと、耐摩耗試験を行った後の保護層の表面の表面自由エネルギーγaaとが、下記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする、積層フィルム。
γac≦35mJ/m2・・・(1)
0mJ/m2≦|γaa-γac|≦30mJ/m2・・・(2)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護層と樹脂基材とを含む積層フィルムであり、
前記保護層は前記積層フィルムの表層を構成しており、
前記積層フィルムの伸張率Exが50~400%であり、
前記保護層の表面に対して2cm×2cm当たり9.8Nの荷重にて1000往復した耐摩耗試験を行う前の前記保護層の表面の表面自由エネルギーγacと、前記耐摩耗試験を行った後の前記保護層の表面の表面自由エネルギーγaaとが、下記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする、積層フィルム。
γac≦35mJ/m2・・・(1)
0mJ/m2≦|γaa-γac|≦30mJ/m2・・・(2)
【請求項2】
前記積層フィルムの保護層の表面を2cm×2cm当たり9.8Nの荷重にて1000往復した耐摩耗試験を行う前の前記保護層の表面の表面自由エネルギーの水素結合項γhcと、前記耐摩耗試験を行った後の前記保護層の表面の表面自由エネルギーの水素結合項γhaとが、下記式(3)及び(4)を満たす、請求項1に記載の積層フィルム。
γhc≦2.5mJ/m2・・・(3)
0mJ/m2≦|γha-γhc|≦2mJ/m2・・・(4)
【請求項3】
ビッカース硬度試験機を用いて前記保護層の前記樹脂基材側への押し込み硬度を測定することにより得られた前記保護層の架橋密度が1.0~5.0mmol/ccである、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記保護層のガラス転移温度Tgが20~70℃である、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記積層フィルムの保護層側の表面の水の滑落角(SAc)が5~40°である、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項6】
温度50℃、湿度95%で400時間使用した後の前記積層フィルムの保護層側の表面の水の滑落角(SAa)と前記SAcとの差の絶対値|SAc-SAa|が、0~30°である、請求項5に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記保護層の表面に0.05N硫酸をスポットする前と後とで前記保護層の表面の外観に変化がない、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項8】
更に粘着層を含み、前記保護層、前記樹脂基材、前記粘着層の順に積層されている、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記保護層と前記樹脂基材との間に意匠層が含まれる、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記保護層の厚みが10~50μmであり、前記保護層が熱硬化性樹脂を含む、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項11】
ガラス転移温度Tgが5~55℃である、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項12】
前記保護層がフッ素又はシリコーンを含有する、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項13】
前記保護層が、(A)フッ素樹脂と、(B)イソシアネートと、(C)シリコーン系撥水材料及び/又はフッ素系撥水材料とを含み、
ヘイズ値が2以下である、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項14】
前記(A)成分がフルオロオレフィン-ビニルエーテル共重合体である、請求項13に記載の積層フィルム。
【請求項15】
前記(B)成分が、(B-1)イソシアヌレート及び/又はイミノオキサジアジンジオンと、(B-2)ウレトジオンとを含み、前記(B)成分を100質量%として、前記(B-1)成分の含有量が1~99質量%であり、前記(B-2)成分の含有量が99~1質量%である、請求項13に記載の積層フィルム。
【請求項16】
前記(C)成分が
(C-1)重量平均分子量が5,000~100,000であり、水酸基価が10~150mg/KOHであるシリコーン系撥水材料、及び/又は
(C-2)重量平均分子量が1,000~50,000であり、水酸基価が10~100mg/KOHであるフッ素系撥水材料
を含み、
前記保護層100質量%中の前記(C-1)成分及び(C-2)成分の合計含有量が、固形分換算で、5~20質量%である、請求項13に記載の積層フィルム。
【請求項17】
被着体と、請求項1又は2に記載の積層フィルムとを有し、
前記被着体と、前記積層フィルムの粘着層とが接している
ことを特徴とする、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、航空機、バイク等の車体、携帯電話やカーナビ等の電子部品等は、多くの場合、表面保護のために保護フィルムで被覆されている。一般に、保護フィルムの基本構成は、防汚機能や耐傷付性を高めるための保護層と、樹脂フィルムからなる基材と、粘着層とをこの順に含む積層フィルムであり、粘着層の基材側とは反対側の表面に剥離フィルムをさらに有する状態で市場に供給されている。
【0003】
保護フィルムを使用する際には、まず、保護しようとする表面部位に合わせて保護フィルムを裁断した後、保護フィルムの粘着層を保護対象の表面に密着させる。そのため、保護フィルムには適度な延伸性が要求される。
保護フィルムで表面を被覆した製品は、その塗装や形状、外観が損なわれないように、保護フィルムにより外界からの様々な刺激、例えば、風雨、埃、砂、河川水、微生物、動植物や昆虫の接触や排泄等による汚れや傷つきから保護される。具体的には、保護フィルムがいわゆるクッションとなって外界からの圧力や打撃を干渉したり、雨水や汚物を撥いたりすることによって、外界の刺激が製品そのものに与える影響を抑える。そのため、保護フィルムには、優れた耐酸性、撥水持続性、耐擦り傷性、耐候性等が求められる。
【0004】
このような保護フィルムとして、例えば、特許文献1には、少なくとも、基材と粘着剤層とを有する粘着シートであって、前記基材の静摩擦係数が0.05以上、1.50以下であり、また、該基材のΔL*値の絶対値が、0.01以上、45.00以下であり、前記基材が表面保護層および基材層を有し、該表面保護層が、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、及びエーテル系ウレタンポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つを含有し、該基材層がエステル系熱可塑性ポリウレタンを含有し、前記表面保護層が前記粘着シートの最表面に配置されていることを特徴とする粘着シートが開示され、良好な表面滑り性、耐汚染性、曲面追従性を有する粘着シートであることが記載されている。
また、特許文献2には、2官能型硬化剤、ポリエーテルグリコール及び架橋性官能基を有する含フッ素共重合体を含む、含フッ素塗料用組成物を用いて形成された塗膜が開示され、硬度及び柔軟性に優れ、プラスチックフィルム等の可とう性物品におけるより大きな変形にも耐えうる塗膜であることが記載されている。
特許文献3には、ウレタンアクリレート硬化物を含むトップコート層、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンからなる基材層、感圧型接着剤からなる粘着層がこの順で接してなる3層構造を含む、自動車またはバイクのボディに施工するペイントプロテクションフィルム(PPF)として用いる、積層フィルムが開示され、耐熱性と耐候性に優れ、自己修復性、撥水性、防汚性、撥油性、伸張性、表面滑り性、粘着力、意匠性をバランスよく備える積層フィルムであることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6340257号公報
【特許文献2】特開2015-147841号公報
【特許文献3】特許6700542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のシート及び塗膜は、保護層の低表面エネルギー化に関して考慮されていないため、撥水性、耐酸性の点で更なる改善の余地がある。また、特許文献3に記載の積層フィルムは、UV硬化型塗膜であるため架橋密度が高くなり、延伸性の点で課題がある。
そこで、本発明は、耐酸性、延伸性、撥水持続性、耐擦り傷性及び耐候性のバランスに優れた積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
[1]
保護層と樹脂基材とを含む積層フィルムであり、
前記保護層は前記積層フィルムの表層を構成しており、
前記積層フィルムの伸張率Exが50~400%であり、
前記保護層の表面に対して2cm×2cm当たり9.8Nの荷重にて1000往復した耐摩耗試験を行う前の前記保護層の表面の表面自由エネルギーγacと、前記耐摩耗試験を行った後の前記保護層の表面の表面自由エネルギーγaaとが、下記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする、積層フィルム。
γac≦35mJ/m2・・・(1)
0mJ/m2≦|γaa-γac|≦30mJ/m2・・・(2)
[2]
前記積層フィルムの保護層の表面を2cm×2cm当たり9.8Nの荷重にて1000往復した耐摩耗試験を行う前の前記保護層の表面の表面自由エネルギーの水素結合項γhcと、前記耐摩耗試験を行った後の前記保護層の表面の表面自由エネルギーの水素結合項γhaとが、下記式(3)及び(4)を満たす、[1]に記載の積層フィルム。
γhc≦2.5mJ/m2・・・(3)
0mJ/m2≦|γha-γhc|≦2mJ/m2・・・(4)
[3]
ビッカース硬度試験機を用いて前記保護層の前記樹脂基材側への押し込み硬度を測定することにより得られた前記保護層の架橋密度が1.0~5.0mmol/ccである、[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
[4]
前記保護層のガラス転移温度Tgが20~70℃である、[1]~[3]のいずれかに記載の積層フィルム。
[5]
前記積層フィルムの保護層側の表面の水の滑落角(SAc)が5~40°である、[1]~[4]のいずれかに記載の積層フィルム。
[6]
温度50℃、湿度95%で400時間使用した後の前記積層フィルムの保護層側の表面の水の滑落角(SAa)と前記SAcとの差の絶対値|SAc-SAa|が、0~30°である、[5]に記載の積層フィルム。
[7]
前記保護層の表面に0.05N硫酸をスポットする前と後とで前記保護層の表面の外観に変化がない、[1]~[6]のいずれかに記載の積層フィルム。
[8]
更に粘着層を含み、前記保護層、前記樹脂基材、前記粘着層の順に積層されている、[1]~[7]のいずれかに記載の積層フィルム。
[9]
前記保護層と前記樹脂基材との間に意匠層が含まれる、[1]~[8]のいずれかに記載の積層フィルム。
[10]
前記保護層の厚みが10~50μmであり、前記保護層が熱硬化性樹脂を含む、[1]~[9]のいずれかに記載の積層フィルム。
[11]
ガラス転移温度Tgが5~55℃である、[1]~[10]のいずれかに記載の積層フィルム。
[12]
前記保護層がフッ素又はシリコーンを含有する、[1]~[11]のいずれかに記載の積層フィルム。
[13]
前記保護層が、(A)フッ素樹脂と、(B)イソシアネートと、(C)シリコーン系撥水材料及び/又はフッ素系撥水材料とを含み、
ヘイズ値が2以下である、[1]~[12]のいずれかに記載の積層フィルム。
[14]
前記(A)成分がフルオロオレフィン-ビニルエーテル共重合体である、[13]に記載の積層フィルム。
[15]
前記(B)成分が、(B-1)イソシアヌレート及び/又はイミノオキサジアジンジオンと、(B-2)ウレトジオンとを含み、前記(B)成分を100質量%として、前記(B-1)成分の含有量が1~99質量%であり、前記(B-2)成分の含有量が99~1質量%である、[13]又は[14]に記載の積層フィルム。
[16]
前記(C)成分が
(C-1)重量平均分子量が5,000~100,000であり、水酸基価が10~150mg/KOHであるシリコーン系撥水材料、及び/又は
(C-2)重量平均分子量が1,000~50,000であり、水酸基価が10~100mg/KOHであるフッ素系撥水材料
を含み、
前記保護層100質量%中の前記(C-1)成分及び(C-2)成分の合計含有量が、固形分換算で、5~20質量%である、[13]~[15]のいずれかに記載の積層フィルム。
[17]
被着体と、[1]~[16]のいずれかに記載の積層フィルムとを有し、
前記被着体と、前記積層フィルムの粘着層とが接している
ことを特徴とする、物品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐酸性、延伸性、撥水持続性、耐擦り傷性及び耐候性のバランスに優れた積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
<積層フィルム>
本実施形態の積層フィルムは、保護層と樹脂基材とを含み、保護層は積層フィルムの表層(最外層)を構成している。本実施形態の積層フィルムは、保護層と樹脂基材とを含むものであれば特に限定されず、保護層と樹脂基材との間に、及び/又は樹脂基材の保護層側とは反対側に、他の層を有していてもよい。
【0011】
積層フィルムの厚みは、100~600μmであることが好ましく、より好ましくは100~500μmであり、さらに好ましくは150~500μmである。積層フィルムの厚みが上記範囲であると、積層フィルムを被着体に接着させる場合に、被着体への外的応力に対して優れた抵抗力を示すことができる。
なお、積層フィルムの厚みは、定圧厚さ測定器により測定することができる。
【0012】
積層フィルムは、伸張率Exが50~400%であり、好ましくは100~300%であり、より好ましくは150~250%である。伸張率Exが上記範囲であると、積層フィルムの施工性と耐酸性、撥水持続性、耐擦り傷性等のバランスが良好となる。
なお、伸張率Exは、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0013】
積層フィルムは、ガラス転移温度Tgが5~55℃であることが好ましく、より好ましくは15~45℃であり、さらに好ましくは25~40℃である。ガラス転移温度Tgが5℃以上であると、液体の浸透が抑制されて積層フィルムの耐酸性及び撥水性が向上するとともに、良好な耐擦り傷性を示す硬度となる傾向にあり、55℃以下であると、良好な延伸性を有する積層フィルムとなる傾向にある。
なお、積層フィルムのガラス転移温度Tgは、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0014】
〈保護層〉
保護層は、積層フィルムの表層(最外層)であり、積層フィルムが被着体に接着される場合には、被着体に接着される側と反対側の表層(最外層)を構成する。
【0015】
保護層は、その表面(積層フィルムの表面)を2cm×2cm当たり9.8Nの荷重にて1000往復した耐摩耗試験を行う前の該表面の表面自由エネルギーγacと、耐摩耗試験を行った後の該表面の表面自由エネルギーγaaとが、下記式(1)及び(2)を満たす。
γac≦35mJ/m2・・・(1)
0mJ/m2≦|γaa-γac|≦30mJ/m2・・・(2)
【0016】
耐摩耗試験前の保護層表面の表面自由エネルギーγacが35mJ/m2以下であると、耐擦り傷性及び耐酸性に優れた積層フィルムとなる。表面自由エネルギーγacは、好ましくは30mJ/m2以下であり、より好ましくは25mJ/m2以下である。表面自由エネルギーγacの下限は、特に限定されないが、例えば、10mJ/m2以上であってよい。
また、耐摩耗試験前の保護層表面の表面自由エネルギーγacと、耐摩耗試験後の保護層表面の表面自由エネルギーγaaとの差の絶対値|γaa-γac|が0~30mJ/m2であると、耐擦り傷性及び耐酸性に優れた積層フィルムとなる。上記差の絶対値|γaa-γac|は、好ましくは0~25mJ/m2であり、より好ましくは0~15mJ/m2である。
【0017】
保護層は、その表面(積層フィルムの表面)を2cm×2cm当たり9.8Nの荷重にて1000往復した耐摩耗試験を行う前の該表面の表面自由エネルギーの水素結合項γhcと、耐摩耗試験を行った後の該表面の表面自由エネルギーの水素結合項γhaとが、下記式(3)及び(4)を満たすことが好ましい。
γhc≦2.5mJ/m2・・・(3)
0mJ/m2≦|γha-γhc|≦2mJ/m2・・・(4)
【0018】
耐摩耗試験前の保護層表面の表面自由エネルギーの水素結合項γhcが2.5mJ/m2以下であると、耐擦り傷性及び耐酸性に優れた積層フィルムとなる傾向にある。表面自由エネルギーの水素結合項γhcは、より好ましくは2mJ/m2以下であり、さらに好ましくは1mJ/m2以下である。表面自由エネルギーの水素結合項γhcの下限は、特に限定されないが、例えば、0.1mJ/m2以上であってよい。
また、耐摩耗試験前の保護層表面の表面自由エネルギーの水素結合項γhcと、耐摩耗試験後の保護層表面の表面自由エネルギーの水素結合項γhaとの差の絶対値|γha-γhc|が0~2mJ/m2であると、耐擦り傷性及び耐酸性に優れた積層フィルムとなる傾向にある。上記差の絶対値|γha-γhc|は、より好ましくは0~1.5mJ/m2であり、さらに好ましくは0~1mJ/m2である。
【0019】
なお、本開示で、「耐摩耗試験を行った後の保護層の表面」とは、保護層が削られた後にむき出しとなった保護層内部、又は全く削られないままであった保護層表面を指す。したがって、上記試験条件にて保護層が完全に削れてしまって残っていない場合に得られる表面は、本開示で言うところの「耐摩耗試験を行った後の保護層の表面」には相当せず、上記(2)及び(4)の関係式を満たしていないものとする。
保護層表面の表面自由エネルギー及びその水素結合項は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0020】
保護層の表面(積層フィルムの表面)は、水の滑落角(SAc)が5~40°であることが好ましく、より好ましくは5~35°であり、さらに好ましくは5~30°である。水の滑落角が上記範囲であると、撥水持続性、耐酸性、耐汚染性及び耐候性に優れた積層フィルムとなる傾向にある。
また、保護層の表面は、積層フィルムを温度50℃、湿度95%で400時間使用した後の水の滑落角(SAa)と使用する前(初期)の上記水の滑落角(SAc)との差の絶対値|SAc-SAa|が0~30°であることが好ましく、より好ましくは0~15°であり、さらに好ましくは0~10°である。温度50℃、湿度95%で400時間使用する前後での上記差の絶対値|SAc-SAa|が上記範囲であると、撥水持続性、耐酸性、耐汚染性及び耐候性に優れた積層フィルムとなる傾向にある。
なお、水の滑落角は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0021】
保護層は、表面(積層フィルムの表面)に0.05N硫酸をスポット(滴下)する前と後とでその表面の外観に変化がないことが好ましい。なお、「表面の外観に変化がない」とは保護層表面にエッチング、水シミ及び割れが発生していない状態を意味する。
【0022】
保護層は、架橋密度が1.0~5.0mmol/ccであることが好ましく、より好ましくは1.5~4.0mmol/ccであり、さらに好ましくは2.0~3.5mmol/ccである。架橋密度が1.0mmol/cc以上であると、液体の浸透が抑制されて積層フィルムの耐酸性及び撥水性が向上するとともに、良好な耐擦り傷性を示す硬度となる傾向にあり、5.0mmol/cc以下であると、良好な延伸性を有する積層フィルムとなる傾向にある。
なお、保護層の架橋密度は、ビッカース硬度試験機を用いて保護層の樹脂基材側への押し込み硬度を測定することにより得られる値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0023】
保護層は、ガラス転移温度Tgが20~70℃であることが好ましく、より好ましくは30~65℃であり、さらに好ましくは40~55℃である。ガラス転移温度Tgが20℃以上であると、液体の浸透が抑制されて積層フィルムの耐酸性及び撥水性が向上するとともに、良好な耐擦り傷性を示す硬度となる傾向にあり、70℃以下であると、良好な延伸性を有する積層フィルムとなる傾向にある。
なお、保護層のガラス転移温度Tgは、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。測定には、積層フィルムから保護層を削ぎ落して用いてもよいし、測定用に保護層と同じ組成のフィルムを作製して用いてもよい。
【0024】
保護層の厚みは、10~50μmであることが好ましく、より好ましくは15~40μmであり、さらに好ましくは20~35μmである。保護層の厚みが上記範囲であると、耐酸性、延伸性、撥水持続性、耐擦り傷性のバランスに優れた積層フィルムとなる傾向にある
なお、保護層の厚みは、定圧厚さ測定器により測定することができる。
【0025】
保護層は、熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。保護層に熱硬化性樹脂が含まれていると、耐擦り傷性及び延伸性に優れた積層フィルムとなる傾向にある。
熱硬化性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂及びその変性物(シリコーン変性アクリル樹脂等);エポキシ樹脂及びその変性物(アクリル変性エポキシ樹脂等);ポリエステル樹脂及びその変性物(ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、シリコーン変性ポリエステル樹脂等);ウレタン樹脂及びその変性物(エポキシ変性ウレタン樹脂等);フェノール樹脂及びその変性物(アクリル変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂等);フェノキシ樹脂;アルキド樹脂及びその変性物(ウレタン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂等);フッ素樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0026】
また、保護層は、ポリオールを含んでいてもよい。保護層にポリオール成分が含まれていると、耐擦り傷性及び延伸性に優れた積層フィルムとなる傾向にある。
ポリオールの種類は、特に限定されず、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオールおよび多価アルコールが挙げられる。
ポリオールは、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールよりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0027】
また、保護層は、フッ素又はシリコーンを含有することが好ましい。保護層にフッ素又はシリコーンが含まれていると、耐酸性、撥水持続性及び耐擦り傷性に優れた積層フィルムとなる傾向にある。
なお、保護層に含まれるフッ素又はシリコーンは、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)により検出することができる。
【0028】
保護層の特に好ましい組成としては、(A)フッ素樹脂と、(B)イソシアネートと、(C)シリコーン系撥水材料及び/又はフッ素系撥水材料とを含む組成が挙げられる。即ち、保護層は、(A)~(C)成分を含む保護層組成物を材料として形成されることが好ましい。保護層が上記組成を有すると、耐酸性、延伸性、撥水持続性、耐擦り傷性及び耐候性のバランスにより一層優れた積層フィルムとなる傾向にある。
【0029】
[(A)フッ素樹脂]
(A)フッ素樹脂は、特に限定されないが、例えば、フルオロオレフィンに由来する構造単位と、架橋性官能基を有する非フッ素系単量体に由来する構造単位とを有するフルオロオレフィン系共重合体であることが好ましい。フルオロオレフィン系共重合体は、例えば、フルオロオレフィンと、架橋性官能基又は架橋性官能基に誘導可能な官能基とエチレン性不飽和基とを有する非フッ素系単量体(以下、単に「非フッ素系単量体」ともいう。)と、必要に応じて用いられるその他の単量体とを、常法により共重合することで得ることができる。
(A)フッ素樹脂は、中でもフルオロオレフィン-ビニルエーテル共重合体であることが好ましい。
(A)フッ素樹脂は、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0030】
フルオロオレフィンとしては、例えば、CF2=CF2(テトラフルオロエチレン、TFE)、CClF=CF2(クロロトリフルオロエチレン、CTFE)、CHCl=CF2、CCl2=CF2、CClF=CClF、CHF=CCl2、CH2=CClF、CCl2=CClF、CF2=CH2(フッ化ビニリデン、VdF)、CH2=CHF(フッ化ビニル、VF)等のフルオロエチレン類;CF2ClCF=CF2、CF3CCl=CF2、CF3CF=CFCl、CF3CF=CF2(ヘキサフルオロプロペン、HFP)等のフルオロプロペン類;CF3CCl=CFCF3、CF2=CFCF2CClF2、CF3CF2CF=CCl2等の炭素数4以上のフルオロオレフィン系化合物等が挙げられる。
【0031】
非フッ素系単量体としては、公知の単量体から適宜選択して用いることができる。
非フッ素系単量体のうち、ヒドロキシ基を有する単量体は、ヒドロキシ基を有する基とエチレン性不飽和基とがエーテル結合又はエステル結合で連結された単量体が好ましく、例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;ジエチレングリコールモノビニルエーテル等のエチレングリコールモノビニルエーテル類;2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、4-ヒドロキシブチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル類;ヒドロキシ酢酸ビニルエステル、ヒドロキシ酪酸ビニルエステル等のヒドロキシアルカン酸ビニルエステル類;ヒドロキシ酢酸アリルエステル等のヒドロキシアルカン酸アリルエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類等が挙げられる。
【0032】
カルボキシ基を有する単量体は、カルボキシ基を有する基とエチレン性不飽和基とがエーテル結合又はエステル結合で連結された単量体が好ましく、例えば、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸等の不飽和カルボン酸類;ビニルオキシ吉草酸等の飽和カルボン酸ビニルエーテル類;3-アリルオキシプロピオン酸等の飽和カルボン酸アリルエーテル類等が挙げられる。
【0033】
その他の単量体としては、エーテル結合又はエステル結合によって連結されたアルキル基を有する単量体(以下、「アルキル基含有単量体」ともいう。)、非フッ素系オレフィン、非フッ素系芳香族基含有単量体等が挙げられる。
【0034】
アルキル基含有単量体としては、例えば、下記一般式(Ia)~(Ic)のいずれかで表される単量体が挙げられる。
R1-O-R2 ・・・(Ia)
R1-COO-R2 ・・・(Ib)
R1-OCO-R2 ・・・(Ic)
(式中、R1は4級炭素を含まない直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数2~20のアルキル基を示し、R2はエチレン性不飽和基を示す。)
【0035】
アルキル基含有単量体の具体例としては、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;エチルアリルエーテル、n-プロピルアリルエーテル、n-ブチルアリルエーテル等のアルキルアリルエーテル;プロピオン酸アリル、酪酸アリル等のカルボン酸アリルエステル;エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0036】
非フッ素系オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブテン等が挙げられる。また、非フッ素系芳香族基含有単量体としては、安息香酸ビニル、4-t-ブチル安息香酸ビニル等が挙げられる。
【0037】
(A)フッ素樹脂の単量体の構成は、所望される保護層の性質に応じて適宜選択することができる。
【0038】
(A)フッ素樹脂の重合に用いる単量体としては、例えば、フルオロオレフィン及び架橋性官能基を有する非フッ素系単量体を必須の単量体とし、好ましくは、さらにアルキル基含有単量体からなる構成とすることができ、さらに必要に応じて、非フッ素系オレフィン等のその他の単量体適宜含んでもよい。
【0039】
(A)フッ素樹脂においては、フルオロオレフィンに基づく構造単位の割合は、(A)フッ素樹脂中の全構造単位に対して40~60モル%であることが好ましく、45~55モル%であることがより好ましい。(A)フッ素樹脂中のフルオロオレフィンに由来する構造単位の含有量を上記範囲とすることで、耐候性が良好となる。
架橋性官能基を有する非フッ素系単量体に基づく構造単位の割合は、(A)フッ素樹脂中の全構造単位に対して2~30モル%であることが好ましく、8~25モル%であることがより好ましい。
アルキル基含有単量体に基づく構造単位の割合は、(A)フッ素樹脂の全構造単位に対して0~65モル%であることが好ましく、10~50モル%であることがより好ましい。
(A)フッ素樹脂中の、その他の単量体に基づく構造単位の割合は、(A)フッ素樹脂中の全構造単位に対して0~10モル%であることが好ましい。
【0040】
好ましい単量体の組み合わせとしては、例えば、フルオロオレフィン/ヒドロキシ基を有する単量体/アルキル基含有単量体、フルオロオレフィン/ヒドロキシ基を有する単量体/カルボキシ基を有する単量体/アルキル基含有単量体の組み合わせが挙げられる。具体的には、フルオロオレフィン/ヒドロキシアルキルビニルエーテル/アルキルビニルエーテル、フルオロオレフィン/ヒドロキシアルキルビニルエーテル/不飽和カルボン酸/アルキルビニルエーテルの組み合わせが好ましい。
【0041】
より具体的に、(A)フッ素樹脂の好ましい構成としては、例えば、TFE又はCTFE/ヒドロキシアルキルビニルエーテル/アルキルビニルエーテル及びカルボン酸ビニルエステルから選ばれる1種以上の共重合体、TFE/ヒドロキシアルキルビニルエーテル/t-ブチルビニルエーテル/カルボン酸ビニルエステルの共重合体、CTFE/ヒドロキシアルキルビニルエーテル/t-ブチルビニルエーテル/カルボン酸ビニルエステルの共重合体、CTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/カルボキシ基を有する単量体/エチルビニルエーテル/その他の単量体の共重合体、CTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/カルボキシ基を有する単量体/2-エチルヘキシルビニルエーテル/その他の単量体の共重合体、TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/カルボキシ基を有する単量体/エチルビニルエーテル/その他の単量体の共重合体、TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/カルボキシ基を有する単量体/2-エチルヘキシルビニルエーテル/その他の単量体の共重合体等が挙げられる。これらの組み合わせからカルボキシ基を有する単量体を除いた組み合わせも好ましい。
【0042】
なお、(A)フッ素樹脂がカルボキシ基を有する場合、ヒドロキシ基を有するフッ素樹脂のヒドロキシ基の一部を酸変性することにより、製造することも可能である。その場合には、上記好ましい単量体の組合せにおいて、カルボキシ基を有する単量体を除いた組合せによりヒドロキシ基を有するフッ素樹脂を製造し、さらにそのヒドロキシ基の一部を従来公知の方法で酸変性すればよい。酸変性する方法としては、例えば、ヒドロキシ基の少なくとも一部にジカルボン酸無水物を反応させる方法等が挙げられる。
【0043】
また、上記(A)フッ素樹脂の構成の好ましい組み合わせにおいて、その他の単量体を含まない組み合わせも同様に好ましい組み合わせとして挙げられる。
【0044】
(A)フッ素樹脂の市販品としては、例えば、AGC社製のルミフロン(登録商標)シリーズ(LF200、LF100、LF600X、LF710、LF800S、LF9716等)、ダイキン工業社製のゼッフル(登録商標)GKシリーズ(GK-500、GK-510、GK-550、GK-570、GK-580等)、DIC社製のフルオネート(登録商標)シリーズ(K-700、K-702、K-703、K-704、K-705、K-707等)、Eternal Chemical社製のETERFLONシリーズ(E-4101、E-41011、E-4102、E-41021、E-4261A、E-4262A、E-42631、E-4102A、E-41041、E-41111、E-4261A等)等が挙げられる。ゼッフル(登録商標)GK-570は、TFE/ヒドロキシエチルアリルエーテル/ビニルバーサテート/安息香酸ビニル/酢酸ビニル共重合体であり、ゼッフル(登録商標)GK-580は、TFE/ヒドロキシエチルアリルエーテル/ビニルバーサテート/安息香酸ビニル共重合体である。フルオネート(登録商標)K-705は、CTFE/HBVE/EVE/ビニルバーサテート共重合体である。ETERFLON E-4101は、CTFE/HBVE/CHVE/EVE共重合体である。
【0045】
(A)フッ素樹脂の分子量は、特に制限されないが、保護層の平滑性や耐候性の観点から、重量平均分子量(Mw)が2,000~200,000であるものが好ましく、2,000~100,000であるものがより好ましく、6,000~30,000であるものがさらに好ましい。
なお、(A)フッ素樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレンを標準物質として測定することができる。
【0046】
(A)フッ素樹脂は、(A)フッ素樹脂を構成する各単量体を従来公知の重合方法、具体的には、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の重合方法により共重合することで得ることができる。また、必要に応じて行われる水酸基の酸変性も従来公知の方法を用いて行うことができる。(A)フッ素樹脂の重合方法は、保護層用組成物の形態によって、適宜選定してもよい。例えば、保護層用組成物に含まれる媒体が溶剤系溶媒の場合には、溶液重合により(A)フッ素樹脂を製造することが好ましい。また、媒体が水を主成分とする水系媒体の場合には、(A)フッ素樹脂を乳化重合により製造することが好ましい。また、水系媒体においては、溶液重合によって得られたフッ素樹脂にカルボキシ基を導入し、該カルボキシ基を塩基性化合物で中和するなどして溶媒を溶剤系から水系に転相し、水に分散させたフッ素樹脂を用いることも可能である。
【0047】
保護層100質量%中の(A)フッ素樹脂の含有量は、固形分換算で、40~95質量%であることが好ましく、より好ましくは50~85質量%であり、さらに好ましくは60~80質量%である。(A)フッ素樹脂の含有量が上記範囲であると、耐酸性、撥水持続性に優れた積層フィルムとなる傾向にある。
【0048】
[(B)イソシアネート]
(B)イソシアネートは、特に限定されず、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。また、性能が低下しない範囲で、これらのアロファネート変性ポリイソシアネート、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート、ウレトジオン変性ポリイソシアネート、ウレタン変性ポリイソシアネート、ビュレット変性ポリイソシアネート、ウレトイミン変性ポリイソシアネート、アシルウレア変性ポリイソシアネート等を用いてもよい。
(B)イソシアネートは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0049】
(B)イソシアネートは、(B-1)イソシアヌレート及び/又はイミノオキサジアジンジオンと、(B-2)ウレトジオンとを含むことが好ましい。(B-1)成分を含むと、保護層の耐酸性、耐候性及び耐擦り傷性が向上する傾向にあり、(B-2)成分を含むと、保護層の延伸性が向上する傾向にある。
【0050】
[[(B-1)イソシアヌレート及び/又はイミノオキサジアジンジオン]]
(B-1)イソシアヌレート及びイミノオキサジアジンジオンは、イソシアネートの環化三量化反応で得られる3量体ポリイソシアネートである。
【0051】
イソシアヌレートは、イソシアヌレート基を有する3量体ポリイソシアネートであり、下記一般式(I)で表される。
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、互いに同じか又は異なり、脂肪族、脂環式、芳香族イソシアネート及び/又はこれらのオリゴマーからイソシアネート基を除去することによって得られる基を表す。)
【0052】
上記一般式(I)においてR1、R2及びR3で示される、イソシアヌレートの原料となるイソシアネートとしては、1,6-ヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のジイソシアネート及びこれらのアダクト変性体、ビュレット変性体等の多官能イソシアネート等を挙げることができる。
【0053】
イソシアヌレートの製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、特開2015-172164号公報に記載された方法等が挙げられる。また、市販品としては、例えば、住化バイエル社製のデスモジュール(登録商標)シリーズ(N3300、N3600、Z4470)等が挙げられる。
【0054】
イミノオキサジアジンジオンは、イミノオキサジアジンジオン基を有する3量体ポリイソシアネートであり、下記一般式(II)で表される。
【化2】
(式中、R
4、R
5及びR
6は、互いに同じか又は異なり、脂肪族、脂環式、芳香族イソシアネート及び/又はこれらのオリゴマーからイソシアネート基を除去することによって得られる基を表す。)
【0055】
上記一般式(II)においてR4、R5及びR6で示される、イミノオキサジアジンジオンの原料となるイソシアネートとしては、1,6-ヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のジイソシアネート及びこれらのアダクト変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体等の多官能イソシアネート等を挙げることができる。
【0056】
イミノオキサジアジンジオンの製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、特開平9-268212号公報に記載された方法等が挙げられる。また、市販品としては、例えば、住化バイエル社製のデスモジュール(登録商標)N3900等が挙げられる。
【0057】
イミノオキサジアジンジオンの粘度は、23℃で800mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは600mPa・s以下である。粘度の下限は、特に限定されないが、200mPa・s以上であることが好ましい。
なお、粘度は、JIS K1603に準拠して測定することができる。
【0058】
(B)イソシアネート100質量%中の(B-1)成分の含有量は、固形分換算で、1~99質量%であることが好ましく、より好ましくは40~99質量%であり、さらに好ましくは60~99質量%である。(B-1)成分の含有量が上記範囲であると、耐酸性に優れた積層フィルムとなる傾向にある。
【0059】
[[(B-2)ウレトジオン]]
(B-2)ウレトジオンは、イソシアネートの環化二量化反応で得られる、ウレトジオン基を有する2量体ポリイソシアネートであり、下記一般式(III)で表される。
【化3】
(式中、R
7及びR
8は、互いに同じか又は異なり、脂肪族、脂環式、芳香族イソシアネート及び/又はこれらのオリゴマーからイソシアネート基を除去することによって得られる基を表す。)
【0060】
上記一般式(III)においてR7及びR8で示される、ウレトジオンの原料となるイソシアネートとしては、1,6-ヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のジソシアネート及びこれらのアダクト変性体、ビュレット変性体等の多官能イソシアネート等を挙げることができる。
【0061】
(B-2)ウレトジオンの製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、米国特許出願公開2007/0032594号明細書に記載された方法等が挙げられる。また、市販品としては、例えば、Rhein Chemie社製AddlinkTT等が挙げられる。
【0062】
(B)イソシアネート100質量%中の(B-2)成分の含有量は、固形分換算で、99~1質量%であることが好ましく、より好ましくは50~1質量%であり、さらに好ましくは30~1質量%である。(B-2)成分の含有量が上記範囲であると、延伸性に優れた積層フィルムとなる傾向にある。
【0063】
また、(B-1)成分及び(B-2)成分の混合物の市販品を用いることができ、例えば、住化バイエル社製のデスモジュール(登録商標)N3400(ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオンとイソシアヌレートとの混合物)、デスモジュール(登録商標)XP-2730等が挙げられる。
【0064】
[[他のイソシアネート]]
(B)イソシアネートは、(B-1)成分及び(B-2)成分以外の他のイソシアネートを含んでいてもよい。他のイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、2-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,2-シクロヘキサンジイソシアネート等の脂肪族環式イソシアネート;キシリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン等の芳香脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート;これらのアロファネート変性体、ウレタン変性体、ビュレット変性体、ウレトイミン変性体、アシルウレア変性体、及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0065】
(B)イソシアネート100質量%中の他のイソシアネートの含有量は、固形分換算で、0~40質量%であることが好ましく、より好ましくは0~30質量%であり、さらに好ましくは0~20質量%である。
【0066】
保護層100質量%中の(B)イソシアネートの含有量としては、(A)フッ素樹脂および(C)シリコーン系撥水材料及び/又はフッ素系撥水材料が有する水酸基の合計モル数に対する、(B)イソシアネートが有するイソシアネート基のモル数の比率(NCO/OH)が、0.5~2.0の範囲であることが好ましく、0.7~1.2の範囲であることがより好ましい。モル比率(NCO/OH)が0.5以上であると、所望の耐酸性が得られる傾向にあり、また、2.0以下であると、延伸性が改善される傾向にある。
【0067】
[(C)シリコーン系撥水材料及び/又はフッ素系撥水材料]
[[シリコーン系撥水材料]]
シリコーン系撥水材料としては、特に限定されず、例えば、シリコーン系共重合体、シリコーン変性エポキシ系共重合体、シリコーン変性フェノール系共重合体、シリコーン変性アクリル系共重合体、シリコーン変性ポリエステル系共重合体等が挙げられる。
中でも、シリコーン変性アクリル樹脂が好ましい。シリコーン変性アクリル樹脂は、アクリル系重合体を主鎖とし、側鎖としてポリシロキサンが結合しているグラフト重合体である。シリコーン変性アクリル樹脂は、ポリシロキサンから誘導される構造を有するため、保護層の撥水性が向上する傾向にある。また、アクリル系重合体から誘導される構造を有するので、(A)フッ素樹脂との相溶性が良好であり、保護層の透明性が向上する傾向にある。
シリコーン系撥水材料は、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0068】
シリコーン系撥水材料は、水酸基を有することが好ましい。水酸基を有するシリコーン系撥水材料は、(B)イソシアネートを架橋剤として(A)フッ素樹脂と結合するため、保護層の耐酸性、撥水持続性が向上する傾向にある。
特に、主鎖のアクリル系重合体の少なくとも末端に水酸基を有するシリコーン変性アクリル樹脂が好ましい。
【0069】
またシリコーン系撥水材料のガラス転移温度Tgは、30~150℃であることが好ましく、より好ましくは40~120℃であり、さらに好ましくは50~100℃である。ガラス転移温度Tgが30℃以上であると、撥水性に優れる傾向にあり、また、150℃以下であると、保護層の柔軟性に優れ、ひび割れ等が防止される傾向にある。
【0070】
シリコーン系撥水材料の市販品としては、例えば、各社のシリコーン系界面活性剤が挙げられ、具体例としては、ビックケミージャパン社製BYK-SILCLEAN3700、BYK-340、日油社製のモディパー(登録商標)シリーズ(FS720、FS206、F200、F600、F3035)、ネオス社製のフタージェントMシリーズ、Sシリーズ、Fシリーズ、Gシリーズ、Dシリーズ、オリゴマーシリーズ、ダイキン工業社製のユニダイン、信越シリコーン社製のトリフロロプロピルトリクロロシラン、AGC社製のサーフロンS-386等が挙げられる。
【0071】
保護層中のシリコーン系撥水材料の含有量は、固形分換算で、(A)フッ素樹脂100質量部に対して、5~20質量部であることが好ましく、より好ましくは7~18質量部であり、さらに好ましくは9~15質量部である。シリコーン系撥水材料の含有量が5質量部以上であると、撥水持続性、耐擦り傷性に優れる保護層を形成できる傾向にあり、また、20質量部以下であると、塗膜の白濁、レベリング不良、泡立ち等による保護層形成時の不具合が良好に防止される傾向にある。
【0072】
[[フッ素系撥水材料]]
フッ素系撥水材料としては、特に限定されず、例えば、市販のフッ素系界面活性剤である、AGC社製サーフロン(登録商標)シリーズ(S-381、S-382、S-954、SC-101、SC-102、SC-103、SC-104)、住友スリーエム社製フロラードシリーズ(FC-430、FC-431、FC-173)、三菱マテリアル電子化成社製エフトップシリーズ(EF352、EF301、EF303)、シュベグマン社製シュベゴーフルアーシリーズ(8035、8036)、ビーエム・ヒミー社製BM1000、BM1100、DIC社製メガファックシリーズ(F-171、F-470)等が挙げられる。また、防汚性のあるフッ素系化合物の市販品として、ダイキン工業社製オプツールシリーズ(DAC、DSX)、フロロテクノロジー社製FS-1010、FS-7010)、富士化成工業社製ZX-058-A、ZX-212-A、ZX-201-A、ZX-202-A、ZX-214-A、ZX-101-A等が挙げられる。
【0073】
(C)成分の水酸基価は、10~150mg/KOHであることが好ましく、より好ましくは15~130mg/KOHであり、さらに好ましくはで20~100mg/KOHである。水酸基価が10mg/KOH以上であると、(B)イソシアネートと充分に反応し、耐酸性及び耐擦り傷性、撥水持続性に優れた保護層を形成できる傾向にある。また、150mg/KOH以下であると、有機溶剤への溶解性、(A)フッ素樹脂及び/又は(B)イソシアネートとの相溶性に優れ、耐候性に優れた保護層を形成できる傾向にある。
なお、水酸基価は、JIS K0070に準拠して測定される値である。
【0074】
(C)成分の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、保護層の平滑性及び耐候性の観点から、5,000~100,000であることが好ましく、より好ましくは6,000~90,000であり、さらに好ましくは7,000~80,000である。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレンを標準物質として測定することができる。
【0075】
保護層100質量%中の(C)成分の含有量は、固形分換算で、5~20質量%であることが好ましく、より好ましくは7~18質量%であり、さらに好ましくは9~15質量%である。(C)成分の含有量が上記範囲であると、積層フィルムの耐酸性、撥水持続性、耐擦り傷性が優れる傾向にある。
【0076】
(C)成分の特に好ましい組成としては、(C-1)重量平均分子量が5,000~100,000であり、水酸基価が10~150mg/KOHであるシリコーン系撥水材料、及び/又は(C-2)重量平均分子量が1,000~50,000であり、水酸基価が10~100mg/KOHであるフッ素系撥水材料を含み、保護層100質量%中の(C-1)成分及び(C-2)成分の合計含有量が、固形分換算で、5~20質量%であるものが挙げられる。
保護層100質量%中の(C-1)成分及び(C-2)成分の合計含有量は、より好ましくは7~18質量%であり、さらに好ましくは9~15質量%である。
【0077】
[(D)溶剤]
保護層の原料である保護層用組成物に含まれる(D)溶剤は、特に限定されず、種々の有機溶剤等を用いることができる。(A)フッ素樹脂及び(C)撥水材との相溶性、溶解性の点からは、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メチルメトキシブタノール、エトキシプロパノール、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコール-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メトキシブタノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;キシレン、トルエン、ソルベッソ-100(S-100)、ソルベッソ-150(S-150)等の芳香族系溶剤等が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
(D)溶剤は、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0078】
保護層用組成物100質量%中の(D)溶剤の含有量は、30~90質量%であることが好ましく、より好ましくは40~80質量%であり、さらに好ましくは50~70質量%である。
【0079】
保護層(保護層用組成物)は、必要に応じて、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、可塑剤等の添加剤を含んでいてもよい。添加剤の含有量は、(A)フッ素樹脂100質量に対して、15質量部以下であることが好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノール系、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系等が好適に用いられる。紫外線吸収剤の含有量は、(A)フッ素樹脂100質量に対して、0.1~10質量部であることが好ましい。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系、リン系等が好適に用いられる。光安定剤の含有量は、(A)フッ素樹脂100質量に対して、0.01~5質量部であることが好ましい。
【0080】
保護層は、ヘイズ値が2以下であることが好ましく、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1以下である。
なお、ヘイズ値は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。測定には、積層フィルムから保護層を削ぎ落して用いてもよいし、測定用に保護層と同じ組成のフィルムを作製して用いてもよい。
【0081】
〈樹脂基材〉
樹脂基材は、特に限定されず、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)系フィルム、ポリウレタン系フィルム、PMMA系フィルムとポリカーボネート系フィルムなどを積層したフィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルム、これらのポリオレフィンを変性し、更なる機能を付加した変性ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びポリ乳酸等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム、AS樹脂フィルム及びABS樹脂フィルム等のポリスチレン系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニリデン系樹脂フィルム、ポリメチルペンテンフィルム等が挙げられる。
樹脂基材は、必要に応じて、染料、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、可塑剤等の添加剤を含んでいてもよい。
また、樹脂基材は、表面をコロナ処理又は低温プラズマ処理したものであってもよい。
【0082】
樹脂基材の厚みは、適宜調節すればよく、例えば、25~300μmであってよく、50~200μmが好ましい。
なお、樹脂基材の厚みは、定圧厚さ測定器により測定することができる。
【0083】
〈粘着層〉
本実施形態の積層フィルムは、更に粘着層を含み、保護層と、樹脂基材と、粘着層とがこの順に積層されていてもよい。粘着層を含む場合、保護層と、樹脂基材と、粘着層とがこの順に積層されていれば特に限定されず、例えば、保護層と樹脂基材との間に後述する意匠層を有するなど、保護層と樹脂基材との間に、及び/又は樹脂基材と粘着層との間に、他の層を有していてもよい。また、粘着層の樹脂基材側と反対側の表面に他の層を有していてもよい。
粘着層は、被着体に接着される層であり、積層フィルムにおいて、被着体に接着される側の表層(最外層)を構成することが好ましい。
【0084】
粘着層を構成する材料は、特に限定されず、従来公知の粘着剤(粘着層用組成物)を用いることができる。粘着剤としては、例えば、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、ポリブテン、ポリイソプレン、ブチルゴム、天然ゴム等のゴム系粘着剤;(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のアクリル系粘着剤;ワックス系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤等からなるフィルムを挙げることができる。
粘着剤は、1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0085】
粘着層の厚みは、適宜調節すればよく、例えば、5μm~2mmであってよく、10~50μmが好ましい。粘着層の厚みが上記範囲であると、積層フィルムを被着体に接着させたときに、積層フィルムの被着体に対する追従性及び密着性を確保することができ、エア噛みを低減することができる傾向にある。
なお、粘着層の厚みは、定圧厚さ測定器により測定することができる。
【0086】
粘着層の、樹脂基材側と反対側の表面(積層フィルムを被着体に接着させる際に被着体に接する表面)の粘着力は、特に限定されず、被着体に応じて適宜調整されてよいが、1.0~25.0N/25mmであることが好ましい。粘着力が25.0N/25mmを超えると、一般的な接着層と同等の粘着力を有するため、被着体と完全に密着し、再剥離が困難となる。一方、粘着力が1.0N/25mm未満であると、粘着力が不足し浮きが発生しやすくなる。粘着力がこのような範囲内であることにより、容易に剥離を行うことができる。
なお、上記粘着力は、例えば、剥離強度テスター(ADY社製)等の既知の方法を用いて測定できる。
【0087】
粘着層の樹脂基材側と反対側の表面(積層フィルムを被着体に接着させる際に被着体に接する表面)には、剥離フィルム(剥離層)が積層されていてもよい。剥離フィルムがあると、積層フィルムを被着体に接着させるまで、粘着層の表面を保護することができ、積層フィルムを被着体に接着させる際には、粘着層から剥離フィルムを剥がすだけで簡単に積層フィルムを接着することができる。
剥離フィルムとしては、粘着性を有するフィルムの剥離フィルムとして広く使用されているものを用いることができる。
【0088】
〈意匠層〉
積層フィルムは、保護層と樹脂基材との間、及び/又は樹脂基材と粘着層との間に意匠層を有していてもよい。意匠層は、積層フィルム(及び積層フィルムを有する物品)に意匠外観を付与するための層である。具体例としては、模様、文字、金属光沢等の加飾を施す印刷層や蒸着層等が挙げられる。
【0089】
印刷層としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ等の絵柄が挙げられる。印刷層の材料としては、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂等の樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料又は染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。
【0090】
印刷層に用いられるインキの顔料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、各種公知の顔料を使用することができる。例えば、黄色顔料(ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料、チタンニッケルアンチモン酸化物等の無機顔料等)、赤色顔料(ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料、弁柄等の無機顔料等)、青色顔料(フタロシアニンブルー等の有機顔料、コバルトブルー等の無機顔料等)、黒色顔料(アニリンブラック等の有機顔料等)、白色顔料(二酸化チタン等の無機顔料等)等が挙げられる。
印刷層に用いられるインキの染料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、各種公知の染料を使用することができる。
【0091】
インキの印刷方法は、特に限定されず、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法、又はロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法を用いることができる。
【0092】
蒸着層は、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛、亜鉛等の金属、又はこれらの合金若しくは化合物を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法等の方法により形成することができる。
【0093】
意匠層の厚みは、特に限定されず、本発明の効果を損なわず、かつ所望の表面外観が得られるような範囲で適宜設定されてよいが、例えば、5~30μmであってよく、10~25μmが好ましい。
なお、意匠層の厚みは、保護層の厚みと同様の方法で測定することができる。
【0094】
<積層フィルムの製造方法>
本実施形態の積層フィルムの製造方法は、特に限定されないが、例えば、保護層-樹脂基材-粘着層がこの順に積層された3層の積層フィルムである場合、まず、樹脂基材の一方の面上に保護層用組成物を塗布した後、必要に応じて加熱硬化させて乾燥させることにより保護層を形成する。次いで、樹脂基材の他方の面上に粘着層用組成物(粘着剤)を塗布した後、必要に応じて加熱硬化させて乾燥させることにより粘着層を形成する。また、例えば、保護層と樹脂基材との間に意匠層を有する場合は、樹脂基材上に意匠層を形成した後、意匠層上に上述のようにして保護層を形成すればよい。同様に、樹脂基材と粘着層との間に意匠層を有する場合は、樹脂基材上に意匠層を形成した後、意匠層上に上述のようにして粘着層を形成すればよい。
【0095】
保護層用組成物及び粘着層用組成物の塗布方法は、特に限定されず、例えば、エアスプレーやエアレススプレー等のスプレー塗装、エアー静電スプレー塗装、ベル塗装、ディスク塗装、ローラ塗装、刷毛塗装、カーテンコート、シャワーコート等の公知の塗布方法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法、又はロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法を用いることができる。
保護層用組成物及び粘着層用組成物の吐出量等の塗布条件は、所望する各層の厚み等に応じて適宜設定してよい。
【0096】
保護層用組成物及び粘着層用組成物の加熱硬化に用いる装置としては、特に限定されず、従来公知の加熱硬化装置を使用することができ、例えば、熱風、電気、ガス、赤外線等の加熱源を利用した乾燥炉などが挙げられる。また、これら加熱源を2種以上併用した乾燥炉を用いると、乾燥時間が短縮されるため好ましい。
【0097】
本実施形態の積層フィルムは、例えば、汚れやキズ等から自動車や航空機、船舶、バイク等の車体本体や車体内外の関連部品を保護するためのペイントプロテクションフィルム(PPF);携帯電話やカーナビ等の電子機器の表面を保護するための電子機器用保護フィルム;合成樹脂板、化粧板、金属板等の表面を保護するための保護フィルム等として好適に用いることができる。これらの中でも、特にペイントプロテクションフィルムとして好適に用いることができる。
【0098】
<物品>
本実施形態の物品は、被着体と、上述の本実施形態の積層フィルムとを有し、被着体と、積層フィルムの粘着層とが接していることを特徴とする。本実施形態の物品は、積層フィルムの粘着層と接している被着体の表面が、積層フィルムにより保護されている。
被着体としては、特に限定されず、例えば、自動車や航空機、船舶、バイク等の車体本体や車体内外の関連部品;携帯電話やカーナビ等の電子機器;合成樹脂板、化粧板、金属板等が挙げられる。
【実施例0099】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0100】
実施例、比較例で用いた測定・評価方法について以下に説明する。
【0101】
[表面自由エネルギー]
積層フィルムから50mm×50mmの試験サンプルを切り出し、試験サンプルの保護層の表面を、自動接触角計(協和界面科学社製、Dmo-701)を用いて、20℃以上23℃以下の環境下にて、液滴の大きさを1μL、液滴滴下1秒後の条件でDIW(イオン交換水)およびヨウ化メチレンの接触角を測定し、Owens and Wendtの式から、初期の表面自由エネルギーγac(mJ/m2)及び水素結合項γhc(mJ/m2)を算出した。
また、耐摩耗試験機(大栄科学精器製作所製、PA-300A)を用いて、試験サンプルの保護層の表面に対して2cm×2cm当たり9.8Nの荷重にて1000往復した耐摩耗試験を行い、耐摩耗試験後の表面自由エネルギーγaa(mJ/m2)及び水素結合項γha(mJ/m2)を上記と同様の方法にて算出した。
【0102】
[伸張率]
積層フィルムから10mm×100mmの試験サンプルを切り出し、オートグラフ(島津製作所製、オートグラフAGX-V)を用いて試験サンプルの引っ張り試験を実施した。試験サンプルを300mm/minの速度で引っ張り、試験サンプルにクラックが発生したときの変位量を基に、伸張率Ex(%)を算出した。
【0103】
[架橋密度]
積層フィルムから50mm×50mmの試験サンプルを切り出し、ガラス板上へ貼り合わせた後、フィッシャー社製のHM2000微小硬度試験機を用いて、ビッカースダイヤモンド圧子、荷重速度5mmN/20s、クリープ5s、30℃から20℃ずつ昇温する条件にて、最大荷重での押し込み深さから、積層フィルムのマルテンス硬さHM(L)を計算した。
20℃昇温する毎にマルテンス硬さHM(L)を測定し、マルテンス硬さHM(L)が一定になった時の温度とその時のマルテンス硬さを基に弾性率を求め、弾性率の値を用いて架橋密度を算出した。具体的には、以下のとおりである。
マルテンス硬さHM(L)から下記式によって弾性率E(pa)を計算した。
弾性率E(pa)=マルテンス硬さHM(L)(N/mm2)×106/0.1
特に、昇温時に下限値となったマルテンス硬さから算出した弾性率をE’、その際の温度をTとし、下記式によって架橋密度(mmol/cc)を算出した。
架橋密度=E’/3RT(R:気体定数)
【0104】
[積層フィルムのガラス転移温度Tg]
積層フィルムから20mm×5mmの試験サンプルを切り出し、動的粘弾性測定装置(ユービーエム社製、E-4000)を用いて積層フィルムの動的粘弾性を測定した。得られた損失正接(tanδ)が最大値になった時の温度をTg(℃)とした。
【0105】
[保護層のガラス転移温度Tg]
保護層のみのフリーフィルムを作製して20mm×5mmに切り出し、動的粘弾性測定装置(ユービーエム社製、E-4000)を用いて保護層の動的粘弾性を測定した。得られた損失正接(tanδ)が最大値になった時の温度をTg(℃)とした。
【0106】
[水の滑落角]
積層フィルムから50mm×50mmの試験サンプルを切り出し、ガラス板上へ貼り合わせた後、自動接触角計(協和界面科学社製、Dmo-701)を用いて、20℃以上23℃以下の環境下にて、液滴の大きさを30μLに設定して水の滑落角(度)を測定した。
温度50℃、湿度95%の環境下で400時間使用(放置)した後の試験サンプルの水の滑落角をSAa、使用(放置)する前の試験サンプルの水の滑落角をSAcとしてそれぞれ測定した。
【0107】
[保護層のヘイズ]
積層フィルムから70mm×150mmの試験サンプルを切り出し、ポリカーボネート板上へ貼り合わせた後、ヘイズメーター(NDK社製、NDH4000)を用いてヘイズを測定した。
【0108】
[外観]
積層フィルムから70mm×150mmの試験サンプルを切り出し、ポリカーボネート板上へ貼り合わせた後、外観を目視で確認した。
(評価基準)
5:試験サンプル越しに蛍光灯を見た際に鮮明に見える(白化度:0%)
4:試験サンプル越しに蛍光灯を見た際に僅かに白味が分かる(白化度:0%超20%以下)
3:試験サンプル越しに蛍光灯を見た際に白味が分かる(白化度:20%超40%以下)
2:試験サンプル越しに蛍光灯を見た際に不鮮明(白化度:40%超60%以下)
1:試験サンプル越しに蛍光灯を見た際にあきらかに白濁している(白化度:80%超)
【0109】
[耐酸性]
積層フィルムから50mm×50mmの試験サンプルを切り出し、ガラス板上へ貼り合わせた後、0.05N硫酸を1mL滴下した。40℃で1時間乾燥後、イオン交換水にて洗浄を行い、同じ操作を10回実施後に外観を目視で確認した。保護層の割れ、エッチング、水シミが生じている度合いに応じて劣化の度合いを下記基準で判定した。
(評価基準)
5:変化なし(劣化度:0%)
4:保護層に水シミが発生したが、エッチング及び割れは発生していない(劣化度:0%超20%以下)
3:保護層にエッチングが発生したが、水シミ及び割れは発生していない(劣化度:20%超40%以下)
2:保護層にエッチングと水シミが発生したが、割れは発生していない(劣化度:40%超60%以下)
1:保護層に割れが発生した(劣化度:80%超)
【0110】
実施例、比較例で用いた材料は以下のとおりである。
【0111】
〈粘着層〉
・アクリル樹脂:綜研化学社製の商品名「SKダイン1811L」、ガラス転移温度Tg-7℃、Mw5,500、固形分70%
・イソシアネート化合物:綜研化学社製の商品名「TD-75」
【0112】
〈樹脂基材〉
・熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルム:日本マタイ社製の商品名「エスマーPX98」、厚さ150μm
【0113】
〈保護層〉
[(A)フッ素樹脂等]
・LF600X:フルオロオレフィン-ビニルエーテル共重合体(AGC社製「ルミフロン(登録商標)LF600X」、溶剤:キシレン、固形分50質量%)
・LF800:フルオロオレフィン-ビニルエーテル共重合体(AGC社製「ルミフロン(登録商標)LF800」、溶剤:ミネラルスピリット、固形分60質量%)
・GK570:フルオロオレフィン-ビニルエーテルエステル共重合体(ダイキン工業社製「ゼッフル(登録商標)GK-570」、溶剤:酢酸ブチル、固形分65質量%)
・PTMG1000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル社製「PTMG1000」)
・LF9716:フルオロオレフィン-ビニルエーテル共重合体(AGC社製「ルミフロン(登録商標)LF9716」、溶剤:3-エトキシプロピオン酸エチル、固形分70質量%)
【0114】
[(B)イソシアネート等]
・N3900:ヘキサメチレンジイソシアネートのイミノオキサジアジンジオン(住化バイエル社製「デスモジュール(登録商標)N3900」)
・N3400:ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン(住化バイエル社製「デスモジュール(登録商標)N3400」)
【0115】
[(C)撥水材料等]
・BYK3700:水酸基含有シリコーン変性アクリル樹脂(ビックケミージャパン社製「BYK-SILCLEAN3700」、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、固形分25質量%、水酸基価30mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)15,000、ガラス転移温度Tg:70℃)
・US270:アクリルシリコーン(「サイマック(登録商標)US270」、溶剤:メチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン/トルエン、固形分29±1.5質量%、水酸基価26mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)60,000、ガラス転移温度Tg:40℃)
・S-954:パーフルオロアルキル基含有樹脂(AGC社製「サーフロン(登録商標)S-954」、溶剤:メチルエチルケトン、水酸基価55mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)10,000)
・FS720:アクリル/シリコーンブロック共重合体(日油社製「モディパー(登録商標)FS720」、溶剤:メチルエチルケトン、固形分15質量%、水酸基価0mgKOH/g)
・F206:フッ素/アクリルブロック共重合体(日油社製「モディパー(登録商標)FS206」、溶剤:メチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン、固形分30質量%、水酸基価55mgKOH/g)
・2130Y:疎水処理ナノシリカゾル(日産化学社製「MEK-EC-2130Y」、溶剤:メチルエチルケトン、固形分30質量%)
【0116】
(保護層用組成物の調製)
保護層の原材料である各成分を表1に記載の組成1~22となるように配合し、溶剤としてキシレン:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=70:30の体積比率の混合溶剤を加えて混合することにより、濃度42%の保護層用塗布液1~22を調製した。
【0117】
【0118】
[実施例1]
(積層フィルムの作製)
樹脂基材の一方の表面上に、乾燥した時の厚み(乾燥膜厚)が25~30μmの保護層が得られるように、保護層用塗布液1をベーカー式アプリケーターを用いて塗布し、140℃にて3分間乾燥させて保護層を形成した。
続いて、樹脂基材の他方の表面上に、乾燥膜厚が30μmの粘着層が得られるように、アクリル樹脂をベーカー式アプリケーターを用いて塗布し、100℃にて5分間乾燥させて粘着層を形成した。
得られた積層フィルムについて、各物性の測定・評価を行った。
【0119】
(実施例2~18、比較例1~10)
保護層の組成等を表2、表3に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを作製した。
【0120】
実施例及び比較例の各物性の測定・評価結果を表2及び表3に示す。
【0121】
【0122】
本発明の積層フィルムは、耐酸性、延伸性、撥水持続性、耐擦り傷性及び耐候性のバランスに優れるため、自動車や航空機、船舶、バイク等の車体本体や車体内外の関連部品、電子機器部品等の種々の部品の保護フィルムとして好適に用いることができる。