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  • 特開-歩行支援ロボット装具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090950
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】歩行支援ロボット装具
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A61H3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207166
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】522500309
【氏名又は名称】伊丹 琢
(74)【代理人】
【識別番号】110002653
【氏名又は名称】弁理士法人アズテックIP
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 琢
(72)【発明者】
【氏名】伊達 和希
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA25
4C046BB07
4C046CC01
4C046DD02
4C046DD22
4C046DD39
4C046DD45
4C046DD47
4C046EE03
4C046EE04
4C046EE07
4C046EE09
4C046FF03
4C046FF22
(57)【要約】
【課題】従来の歩行支援ロボット装具の内部機構を薄型かつ軽量化し、正常歩行へと導く新たな歩行支援ロボット装具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の歩行支援ロボット装具1は、ソールの踵台4を回動可能とする機構を備え、ソール内部の爪先側に6軸慣性センサ5と、6軸慣性センサ5から後方側に、6軸慣性センサ5が検出したデータに応じて作動するステッピングモータ6と、ステッピングモータ6と連動する踵台4とを備え、6軸慣性センサ5は、踵部の接地を検出すると同時に、ソール全体の傾きを検出し、踵台4の踵面14を水平に保つようにステッピングモータ6を作動させることを特徴とする。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソールの踵部の底形状を内外反方向に変動する機構を備える歩行支援ロボット装具において、
ソール内部の爪先側に、爪先から踵の前後方向、第1指から第5指あるいはその逆の左右方向、および、甲から足裏の上下方向の加速度、ならびに、各方向を軸とする角速度を検出する6軸慣性センサと、
前記6軸慣性センサから後方側に、前記6軸慣性センサが検出したデータに応じて作動するステッピングモータと、
前記ステッピングモータの動力軸に接続されるカップリングと、
前記カップリングの、前記ステッピングモータの前記動力軸に対向する側に接続されるボルトと、
前記ボルトの後方側で接続される水平移動継手と、
前記水平移動継手の後方側で接続される後方回動機構と、
前記水平移動継手の後方側で接続される踵台と、を備え、
前記6軸慣性センサは、踵部の接地を検出すると同時に、ソール全体の傾きを検出し、前記踵台の踵面を水平に保つように前記ステッピングモータを作動させることを特徴とする歩行支援ロボット装具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行支援ロボット装具に関するものであり、詳しくは、歩容改善を目的として足に装着する装具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、変形性膝関節症(以下、膝OA(Osteoarthritis of the knee)という。)患者は国内で三千万人を超えると推定されている。膝OAとは、膝関節の骨や軟骨がすり減り膝関節が変形する退行性疾患であり、症状としては、膝関節機能の低下から、膝関節の屈曲および伸展動作によって、疼痛が生じる。
【0003】
膝OAは、加齢に伴う筋力低下や、肥満、遺伝的因子、靭帯の弛緩などを要因とする異常歩行の繰り返しにより、症状が進行する。膝OAが起こると、今まで適切であった運動が膝関節に多大な負荷を与えることになり、膝の痛みと膝関節位置の変化による歩容の変化や、行動範囲の低下が起こるため、あまり歩かなくなる。それにより筋力が衰え、さらに痛みが増すという悪循環に陥りADL(Activities of Daily Living)や、QOL(Quality of Life)が低下する。
【0004】
膝OA患者に対する療法としては、正常歩行に誘導して疼痛を軽減することが有効である。正常歩行においては、踵の接地時に、踵を回転中心として足裏が徐々に床に接触することで膝への衝撃が吸収される。換言すれば、踵部に傾きがある状態で接地すると異常歩行につながる。
【0005】
そこで、踵接地期に踵部が常に中立位へと誘導される歩行支援ロボット装具が開発されている(非特許文献1)。このソール型の装具は、歩行中の踵部の傾きをセンサで検知し、踵部が接地面に対して水平になるように誘導し、正常歩行へと導くものである。具体的には、ステッピングモータによる回転運動をねじれギアにより90度軸を変更し、ねじれギアと連動する4つのボルトの回転による上下運動により踵部の左右高さを変更することで踵部の底形状を内外反方向へ制御可能とするものである(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】伊達和希,石井雄太,伊丹琢,米山淳,“踵接地時の足関節内外反角度を制御可能な靴型歩行支援ロボット機構の開発”,LIFE2022(第21回日本生活支援工学会大会,日本機械学会 福祉工学シンポジウム2022,第37回ライフサポート学会大会),pp.734―735,2022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の例の歩行支援ロボット装具は、ボルトの回転による上下運動により踵部の傾きを制御しているため、機構自体の厚みが増大してしまうという課題があった。機構の厚みの増大は、装置重量の増加や靴内部への挿入が困難になる。
【0008】
そこで、本発明は、従来の歩行支援ロボット装具の内部機構を改良することにより薄型かつ軽量化を実現し、正常歩行へと導く新たな歩行支援ロボット装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、ソールの踵部の底形状を内外反方向に変動する機構を備える歩行支援ロボット装具において、ソール内部の爪先側に、爪先から踵の前後方向、第1指から第5指あるいはその逆の左右方向、および、甲から足裏の上下方向の加速度、ならびに、各方向を軸とする角速度を検出する6軸慣性センサと、前記6軸慣性センサから後方側に、前記6軸慣性センサが検出したデータに応じて作動するステッピングモータと、前記ステッピングモータの動力軸に接続されるカップリングと、前記カップリングの、前記ステッピングモータの前記動力軸に対向する側に接続されるボルトと、前記ボルトの後方側で接続される水平移動継手と、
前記水平移動継手の後方側で接続される後方回動機構と、前記水平移動継手の後方側で接続される踵台と、を備え、前記6軸慣性センサは、踵部の接地を検出すると同時に、ソール全体の傾きを検出し、前記踵台の踵面を水平に保つように前記ステッピングモータを作動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によって、本発明の歩行支援ロボット装具は、使用者の正常歩行を支援することができる。具体的には、歩行時の立脚中期に特徴的に観察される膝関節の横ぶれ(以下、ラテラルスラストという。)を軽減することができる。ラテラルスラスト量が大きいほど、異常歩行の重症度が高く、膝関節に負担がかかり、膝OAの発症や悪化を招くところ、歩行支援ロボット装具のアシストにより、歩行時の踵接地時に常に踵の外側あるいは内側に荷重がかかることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の歩行支援ロボット装具を履物に装着した状態を表す全体の斜視図である。
図2】本発明の歩行支援ロボット装具の全体の斜視図である。
図3】本発明の歩行支援ロボット装具の上面を取り外した状態を表す全体の斜視図である。
図4】健常者による足踏み動作中のラテラルスラスト量を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0012】
以下、本発明を実施するための形態を図面にしたがって説明する。
【0013】
図1は歩行支援ロボット装具1を履物2に装着した状態を表す全体の斜視図である。また、図2は、本発明の歩行支援ロボット装具1の全体の斜視図である。歩行支援ロボット装具1は、履物2のソールとして装着され、歩行支援ロボット装具1の上面3が使用者の足裏を支持する。使用者の踵を支持する踵台4は、上面3に対して独立して回動する。
【0014】
図3は歩行支援ロボット装具1の上面3を取り外した状態を表す全体の斜視図である。歩行支援ロボット装具1は、ソール内部の爪先側に6軸慣性センサ5を備える。6軸慣性センサ5は、爪先から踵の前後方向x、第1指から第5指あるいはその逆の左右方向y、および、甲から足裏の上下方向zの加速度、ならびに、各方向を軸とする角速度を検出する。
【0015】
歩行支援ロボット装具1は、6軸慣性センサ5から後方側に、6軸慣性センサ5が検出したデータに応じて作動するステッピングモータ6を備える。ステッピングモータ6の動力軸にはカップリング7が接続され、カップリング7のステッピングモータ6の動力軸に対向する側には、ボルト8が接続される。ボルト8は、ナット9で前方仕切板10に止められ、前後方向x、左右方向yおよび上下方向zに固定された状態で、前後方向xを軸としてステッピングモータ6の動力軸と連動して回動する。
【0016】
ボルト8は、後方側で水平移動継手11と接続され、水平移動継手11は、ボルト8の回動に応じて前後方向xに沿って水平移動する。また、水平移動継手11は、後方側で後方回動機構12と接続され、後方回動機構12は、水平移動継手11の移動に応じて前後方向xを軸として回動する。後方回動機構12は、後方仕切板13に上下方向zおよび左右方向yに支持され、踵台4と連結する。踵台4は後方回動機構12の回動に応じて前後方向xを軸として回動する。踵台4の回動によって、踵台4の踵面14は左側が下がったときは右側が上がるように、あるいは、左側が上がったときは右側が下がるように傾斜する。
【0017】
6軸慣性センサ5は、踵部の接地を検出すると同時に、ソール全体の傾きを検出し、踵面14を水平に保つようにステッピングモータ6を作動させ、カップリング7、ボルト8、水平移動継手11、後方回動機構12および踵台4に動力を伝達する。以上の機構により、ソール全体の踵部の底形状のみが、内外反方向に変動することが可能となっている。水平移動継手11を介した駆動とすることにより、踵台4に体重等の荷重がかかった際においても本機構によりステッピングモータ6にかかる負荷を最小限に抑えることが可能となり、かつ厚みの減少も達成することができる。
【0018】
電力の供給に関しては、二次電池を用いた充電方式とすることが好ましいが、特に限定するものではない。一例として、有線でバッテリーに電力を供給する方式であれば、図示しないバッテリーに溝15から電線をつないで充電することができる。電力の供給方式は、有線の二次電池に限るものではなく、一次電池を用いてもいいし、二次電池であればワイヤレス充電方式を採用しても良い。
【0019】
踵部の接地時に踵台4を水平に保つことで、使用者の正常歩行を支援することができる。具体的には、歩行時の立脚中期に特徴的に観察される膝関節の横ぶれ(以下、ラテラルスラストという。)を軽減することができる。ラテラルスラスト量が大きいほど、異常歩行の重症度が高い。図4は、健常者による足踏み動作中のラテラルスラスト量を、歩行支援ロボット装具1のアシストがない場合とある場合に分けて表し、アシストがある場合のアシスト角度(踵面14の回転角度)と併せて表している。動作ごとにラテラルスラスト量とアシスト角度にバラツキはあるものの、歩行支援ロボット装具1のアシストによって、ラテラルスラスト量が低減される結果となっている。
【符号の説明】
【0020】
1 :歩行支援ロボット装具
2 :履物
3 :上面
4 :踵台
5 :6軸慣性センサ
6 :ステッピングモータ
7 :カップリング
8 :ボルト
9 :ナット
10 :前方仕切板
11 :水平移動継手
12 :後方回動機構
13 :後方仕切板
14 :踵面
15 :溝
図1
図2
図3
図4