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特開2024-90952飲料、飲料の光線保護方法及び飲料の製造方法
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  • 特開-飲料、飲料の光線保護方法及び飲料の製造方法 図1
  • 特開-飲料、飲料の光線保護方法及び飲料の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090952
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】飲料、飲料の光線保護方法及び飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/44 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A23L2/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207171
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100138254
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 容子
(72)【発明者】
【氏名】厚木 将志
(72)【発明者】
【氏名】田邉 利裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 彩乃
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC15
4B117LE10
4B117LK06
4B117LK16
4B117LL03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】容器を問わずに、味、香り、品質等の変化を抑制することが可能な飲料、飲料の光線保護方法及び飲料の製造方法を提供する。
【解決手段】光透過阻止成分を含み、波長445nmの光成分の透過率が10%以下である飲料とする。前記光透過阻止成分が、β-カロテン色素、ベニバナ色素、クチナシ黄色色素のうちの少なくとも1種であることが好ましい。波長445nmの光成分の透過率が10%以下となるよう飲料に光透過阻止成分を添加する、飲料の光線保護方法、および飲用可能な液に光透過阻止成分を添加して、波長445nmの光成分の透過率を10%以下とする、飲料の製造方法である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過阻止成分を含み、波長445nmの光成分の透過率が10%以下であることを特徴とする飲料。
【請求項2】
前記光透過阻止成分が、β-カロテン色素、ベニバナ色素、クチナシ黄色色素のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
前記飲料が、ビタミンB2を含有することを特徴とする請求項1に記載の飲料。
【請求項4】
透明容器詰飲料であることを特徴とする請求項1に記載の飲料。
【請求項5】
飲料を波長445nmの光成分の透過率が10%以下となるよう、光透過阻止成分を添加することを特徴とする飲料の光線保護方法。
【請求項6】
前記光透過阻止成分が、β-カロテン色素、ベニバナ色素、クチナシ黄色色素のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の飲料の光線保護方法。
【請求項7】
前記飲料が、ビタミンB2を含有することを特徴とする請求項5に記載の飲料の光線保護方法。
【請求項8】
飲用可能な液に、光透過阻止成分を添加して波長445nmの光成分の透過率を10%以下とすることを特徴とする飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、飲料の光線保護方法及び飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料の保存には一般的に容器が用いられるが、可視光や紫外線によって味、香り、品質等が変化し易い場合、容器は遮光することが求められている。
そのため、金属製の容器、着色ガラス容器、紫外線吸収剤を適用した樹脂製の容器等が
用いられていきた(引用文献1、2等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4681193号公報
【特許文献2】特開平8-301363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遮光性に関しては、金属製の容器や着色ガラス容器等が優れているが、可視光の透過率が低く容器内の内容物の量や状態を視認することが困難であるという問題を有している。
紫外線吸収剤を適用した樹脂製の容器は、可視光線の透過性には優れているものの、特殊な材料や工程が必要となり容器が高価となるとともに、リサイクルに適していないという問題があった。
さらに、紫外線に近い波長の可視光による影響がある場合、例えば、成分ビタミンB2のように445nm(青色光)、370nm(近紫外光)の波長で極大吸収がある成分が含まれている場合は、紫外線のみの遮光では十分に保護できないという問題があった。
本発明は、前述のような課題を解決するものであり、容器の遮光性にかかわらず、味、香り、品質等が変化を抑制することが可能な飲料、飲料の光線保護方法及び飲料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る飲料は、光透過阻止成分を含み、波長445nmの光成分の透過率が10%以下であることにより、前記課題を解決するものである。
本発明に係る飲料の光線保護方法は、飲料を波長445nmの光成分の透過率が10%以下となるよう、光透過阻止成分を添加することにより、前記課題を解決するものである。
本発明に係る飲料の製造方法は、飲用可能な液に、光透過阻止成分を添加して波長445nmの光成分の透過率を10%以下とすることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る飲料及び光線保護方法によれば、光透過阻止成分を添加することによって飲料自体が紫外線及び紫外線に近い波長の可視光の透過を抑制できるため、容器を問わずに、味、香り、品質等が変化を抑制することが可能となる。
本発明に係る飲料の着色飲料の製造方法によれば、容器を問わずに、味、香り、品質等が変化を抑制することが可能な飲料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】各色素の、波長と光の透過率のグラフ。
図2】本発明及び比較例のビタミンB2濃度の変化のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態に係る飲料は、光透過阻止成分を含み、波長445nmの光成分の透過率が10%以下であることを特徴とする飲料である。
【0009】
光透過阻止成分としては、食品添加物として使用できるものであれば制限はないが、β-カロテン色素、ベニバナ色素、クチナシ黄色色素など、黄色から橙色系統の色味の色素が好適である。
イオン交換水中にβ-カロテン色素、ベニバナ色素、クチナシ黄色素、クチナシ赤色素、クチナシ青色素を100ppmの濃度で調整し、透過率を測定した結果を図1に示す。
図1に示す通り、β-カロテン色素、ベニバナ色素、クチナシ黄色色素を光透過阻止成分として使用すれば、波長445nmの光成分の透過率が10%以下となる。
特に、飲料に使うことから、水溶性が高くかつpHによる色の変化のないベニバナ色素が好適である。
また、飲料を波長445nmの光成分の透過率が10%以下とすることが可能であれば、コーヒー等の有色の飲料を光透過阻止成分として使用してもよい。
飲料中における光透過阻止成分の含有量は、100-500ppmが特に好適である。
【0010】
本実施形態に係る飲料は、好ましくは、ビタミンB2を含有する飲料である。
飲料は、炭酸飲料及び非炭酸飲料を含む。
炭酸飲料としては、限定されないが、冷凍炭酸飲料、強化スパークリング飲料、コーラ、果物風味のスパークリング飲料(レモンライム、オレンジ、ブドウ、イチゴ及びパイナップル)、ジンジャーエール、ソフトドリンク及びルートビア等が挙げられる。
非炭酸飲料としては、限定されないが、果物ジュース、果物風味のジュース、ジュース飲料、ネクター、野菜ジュース、野菜風味のジュース、スポーツドリンク、エネルギードリンク、強化水ドリンク、ビタミンを含む強化水ドリンク、ニアウォータードリンク(例えば、天然又は合成香味料を含む水)、ココナッツウォーター、茶飲料(例えば、緑茶飲料等の不発酵茶飲料、烏龍茶飲料等の半発酵茶飲料、紅茶飲料等の発酵茶飲料)、コーヒー、ココア飲料、乳飲料、穀物エキスを含有する飲料及びスムージー等が挙げられる。
【0011】
飲料には、必要に応じて各種成分が含まれてもよい。
各種成分としては、例えば、甘味料、安定剤、果汁、乳成分及び香料等が挙げられる。
甘味料としては、例えば、糖類、及び高甘味度甘味料などが挙げられる。糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類及び糖アルコール等が挙げられる。そのような糖類としては、例えば、果糖、ぶどう糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖、アラビノース、トレハロース、エリスリトール、マルチトール及びキシリトール等が挙げられる。
高甘味度甘味料としては、例えば、スクラロース、ステビア、アセスルファムカリウム、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、グリチルリチン、グリチルリチン酸ジカリウム、アドバンテーム、ネオテーム及びソーマチン等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、大豆多糖類、ペクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ジェランガム、グアーガム、タラガム、加工デンプン及びキサンタンガムが挙げられる。
【0012】
果汁としては、例えば、ぶどう果汁、いちご果汁、ラズベリー果汁、ブルーベリー果汁、グァバ果汁、アセロラ果汁、ブラッドオレンジ果汁、ピンクグレープフルーツ果汁等が挙げられる。
乳成分は、獣乳及び植物乳の何れを由来とするものであってもよい。
獣乳としては、例えば、牛乳、山羊乳、羊乳及び馬乳等が挙げられ、植物乳としては例えば豆乳等が挙げられる。
乳成分の原料の形態としては、例えば、全脂乳、脱脂乳、乳清、乳蛋白濃縮物、バターミルク粉、無糖練乳、脱脂加糖練乳、全脂加糖練乳、生クリーム、及び発酵乳が挙げられる。
また、粉乳や濃縮乳から還元した乳も使用できる。
また、乳原料としては、単一種類の原料を使用しても、複数の種類の原料を使用してもよい。
飲料は、アルコール飲料であっても非アルコール飲料であってもよい。
飲料は、炭酸飲料であっても非炭酸飲料であってもよい。
【0013】
[実験例]
飲料として、ショ糖:5%、クエン酸:0.1%、クエン酸Na:0.08%、ビタミンB2:10ppm、pH3.5の液に、
(1)光透過阻止成分としてベニバナ色素を500ppm添加した飲料、
(2)光透過阻止成分としてクチナシ赤色素を3000ppm添加した飲料、
(3)光透過阻止成分を添加しない飲料、
を、試料として用いた。
上記(1)-(3)の試料をそれぞれ、500mL容量の透明なPETボトルにホットパック(87℃で充填し、30秒間の転倒殺菌後冷却)により透明容器詰飲料を作製し、23℃環境下で、色温度4500Kの蛍光灯を使用し照度1000lxで24時間連続照射して保管した。
【0014】
経時的なビタミンB2濃度(液体クロマトグラフィによる定法で測定)の変化を、図2に示す。
光透過阻止成分を添加しない飲料ではビタミンB2濃度がわずか4日間で大幅に減少し、9日間でほぼ最低値に達した。
光透過阻止成分としてクチナシ赤色素を添加した飲料は、3000ppmという高濃度で使用したが、ビタミンB2の減少抑制効果は高くなく、22日保存でビタミンB2濃度が初めの半分以下となっていた。
これに対し、本発明の実施形態である光透過阻止成分としてベニバナ色素を添加した飲料は、ビタミンB2濃度の減少速度が低く、22日経過しても2割程度の減少しか見られなかった。
図1
図2