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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090953
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】副室式ディーゼルエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 19/14 20060101AFI20240627BHJP
   F02F 3/26 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F02B19/14 C
F02B19/14 B
F02F3/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207172
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】末廣 貴一
(72)【発明者】
【氏名】小林 泰
(72)【発明者】
【氏名】天呑 将成
(72)【発明者】
【氏名】高▲崎▼ 慧斗
【テーマコード(参考)】
3G023
【Fターム(参考)】
3G023AA02
3G023AA04
3G023AB05
3G023AC04
3G023AD02
3G023AD14
3G023AD22
3G023AD27
3G023AD29
(57)【要約】
【課題】噴孔とリセスとの関係に着目してのさらなる鋭意研究により、燃焼速度を速めるなどによって燃焼状態の改善を図り、燃費やスモークの改善が可能となるように、より改良された副室(IDI)式ディーゼルエンジンを提供する。
【解決手段】主燃焼室5と、主燃焼室5から偏心した箇所に設けられる副室6とが噴孔9を介して連通され、ピストン8の天井壁8Aにおける噴孔9から主燃焼室5へ噴出される燃焼流が吹き付けられる箇所に受止めリセスRが形成され、噴孔9は、燃焼流の流れ方向Qの長さbよりも燃焼流の流れ方向Qに対する左右方向の長さaが大きい横長形状に形成され、受止めリセスRにおける噴孔9の直下となる部分20の幅rが、噴孔9の左右方向の長さa以上に設定されている副室式ディーゼルエンジン。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主燃焼室と、前記主燃焼室から偏心した箇所に設けられる副室とが噴孔を介して連通され、ピストンの天井壁における前記噴孔から前記主燃焼室へ噴出される燃焼流が吹き付けられる箇所に受止めリセスが形成され、
前記噴孔は、前記燃焼流の流れ方向の長さよりも前記燃焼流の流れ方向に対する左右方向の長さが大きい横長形状に形成され、
前記受止めリセスにおける前記噴孔の直下となる部分の幅が、前記噴孔の左右方向の長さ以上に設定されている副室式ディーゼルエンジン。
【請求項2】
前記噴孔は、前記副室から前記主燃焼室の中央部に向かう傾斜孔に形成されている請求項1に記載の副室式ディーゼルエンジン。
【請求項3】
前記噴孔は、主噴孔と、前記主噴孔の両脇に配置される一対の副噴孔とが連なる複葉形状の孔に形成されている請求項2に記載の副室式ディーゼルエンジン。
【請求項4】
前記受止めリセスの平面視の形状は、前記受止めリセスの横幅が前記燃焼流の流れ方向での位置の如何に拘わらず一定となる矩形形状に設定されている請求項1~3の何れか一項に記載の副室式ディーゼルエンジン。
【請求項5】
前記受止めリセスの平面視の形状は、前記燃焼流の流れ方向で下流側ほど横幅が大きくなる先拡がり形状に設定されている請求項1~3の何れか一項に記載の副室式ディーゼルエンジン。
【請求項6】
前記ピストンの天井壁に、吸気弁リセス及び/又は排気弁リセスが形成されるとともに、前記受止めリセスと前記吸気弁リセス及び/又は排気弁リセスとが重なっている請求項4又は5に記載の副室式ディーゼルエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主燃焼室に噴孔を介して連なる副室が設けられた構造のディーゼルエンジン、即ち、副室式ディーゼルエンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
主燃焼室(主室)の他に副燃焼室(副室)を設けた副室(IDI:Indirect Injection)式ディーゼルエンジンは、副室内に燃料を噴射して着火させ、副室の燃焼ガスが噴孔(絞り)を通じて主室内に噴出して燃焼が完了する、というものである。直噴(DI:Direct Injection)式ディーゼルエンジンは、「燃焼室表面積が大きくて絞り損失と熱損失が大きい」というIDIの弱点をカバーできる良さがあり、近年では多用されてきている。
【0003】
副室(IDI)式は、限られた副室内で燃料を噴射するので、火炎の流速を高くできて低圧の噴射弁でも確実に着火できる良さがある。また、副室内は空気量が少なく燃焼圧と燃焼温度が低いため、直噴(DI)式に比べて、ディーゼルノックが発生しづらく、NOx生成量が少ないという利点もある。従って、副室式は比較的低速型のエンジンに適したシステムであることから、農機や建機、発電機、或いは後進国向けの各種産業機器などにおいては、依然として重要な動力源である。
【0004】
副室式ディーゼルエンジンにおいては、実質的に燃焼室となる副室での渦流を強めることや、副室から主燃焼室への火炎伝播速度を速めることが重要なポイントであると考えられる。特許文献1では、渦流を弱めることなく始動性の改善が可能となる技術が開示され、特許文献2は、ピストンの天井壁に設けられるリセスの構造工夫により、燃焼効率を向上させる技術を開示している。
【0005】
しかしながら、技術の進歩や環境的要因から、副室式においても、さらなる燃費向上やスモークの改善が求められてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-180744号公報
【特許文献2】特開平7-279671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、噴孔とリセスとの関係に着目してのさらなる鋭意研究により、燃焼速度を速めるなどによって燃焼状態の改善を図り、燃費やスモークの改善が可能となるように、より改良された副室(IDI)式ディーゼルエンジンを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、副室式ディーゼルエンジンにおいて、
主燃焼室と、前記主燃焼室から偏心した箇所に設けられる副室とが噴孔を介して連通され、ピストンの天井壁における前記噴孔から前記主燃焼室へ噴出される燃焼流が吹き付けられる箇所に受止めリセスが形成され、
前記噴孔は、前記燃焼流の流れ方向の長さよりも前記燃焼流の流れ方向に対する左右方向の長さが大きい横長形状に形成され、
前記受止めリセスにおける前記噴孔の直下となる部分(リセス始端部)の幅が、前記噴孔の左右方向の長さ以上に設定されていることを特徴とする。
【0009】
この場合、前記噴孔は、前記副室から前記主燃焼室の中央部に向かう傾斜孔に形成されていると好都合である。そして、前記噴孔は、主噴孔と、前記主噴孔の両脇に配置される一対の副噴孔とが連なる複葉形状の孔に形成されていればなお好都合である。
【0010】
本発明に関して、上述した構成(手段)以外の特徴構成や手段ついては、特許請求の範囲における請求項4以降を参照のこと。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、副室式ディーゼルエンジンにおいて、燃焼流の流れ方向の長さよりも左右方向の長さが大きい横長形状の噴孔を有し、かつ、受止めリセスの噴孔直下部位の幅が噴孔の左右方向の長さ以上であるから、副室内の燃焼ガス(燃焼流)が主燃焼室へ流れ易くなる作用が得られる。
【0012】
従って、副室での高温な燃焼ガスを噴孔を通して従来エンジンよりも素早く主燃焼室へ促すことができるようになり、スモークの低減作用、燃焼改善(燃費向上)作用を得ることが可能になる。つまり、副室式ディーゼルエンジンにおいて、スモーク低減、燃費向上の各種効果を奏することができるようになる。
【0013】
その結果、噴孔とリセスとの関係に着目してのさらなる鋭意研究により、燃焼速度を速めるなどによって燃焼状態の改善を図り、燃費やスモークの改善が可能となるように、より改良された副室(IDI)式ディーゼルエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】副室式ディーゼルエンジンの燃焼室部位を示す要部の縦断面図
図2図1の噴孔周辺を示す拡大断面図
図3】ピストン(天井壁)と口金(噴孔)との関係を示し、(A)は本実施形態の場合の展開図、(B)は別実施形態及び従来の場合の展開図
図4】本発明(本実施形態)と従来とのそれぞれディーゼルエンジンによる各種試験の結果データを表す図表
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明による副室式ディーゼルエンジンの実施の形態を、農用トラクタなどに適用される産業用のディーゼルエンジンの場合について、図面を参照しながら説明する。図1は、インジェクタとグロープラグを含むようにシリンダヘッドを、その長手方向(気筒直列方向)に対して約25度傾いた線(面)で切った断面図に相当する。
【0016】
図1に、副室式ディーゼルエンジンの一例である過流式の産業用ディーゼルエンジンの副室周辺部の断面図が示されている。1はシリンダブロック、2はシリンダヘッド、3はインジェクタ、4はグロープラグ、5は主燃焼室(主室)、6は副室(副燃焼室)、7は副室形成用の口金、8はピストン、8Pはピストン中心、9は口金7に形成された噴孔、10はウォータジャケット(シリンダヘッド2の冷却水通路)である。
【0017】
シリンダブロック1は、シリンダ(シリンダボア)1Bを形成するシリンダバレル(シリンダ壁)1Aを有し、シリンダ1Bにはピストン8が内嵌されている。シリンダブロック1の上面(符記省略)とシリンダヘッド2の底面2aとの間にはガスケット11が挟まれ(介装され)ている。なお、ピストン8の圧縮上死点(ほぼ図1に示される状態)においては、主燃焼室5の容積は0(ゼロ)に近付き、実質的に副室6が燃焼室になる。
【0018】
シリンダヘッド2にはインジェクタ3が装備され、インジェクタ3の先端噴射部3aが副室6の上部に臨むように配置されている。副室6は、シリンダ1B内に形成される主燃焼室5に、その主燃焼室5の偏心箇所に設けられる噴孔9を介して連通されている。なお、図2においては、ガスケット11(図1参照)の図示は省略してある。
【0019】
噴孔9は、副室6の壁面(内周面)wの略接線方向で、かつ、主燃焼室5の中央部(ピストン軸心8P)に向かい、シリンダヘッド底面2a(この実施例では水平線)に対して傾斜角θで傾いた孔心9Pを有する傾斜孔(図2も参照)に形成されている。インジェクタ3は、先端噴射部3aからの噴射燃料が噴孔9に向かうように傾斜配置されている。
【0020】
図1図2に示されるように、シリンダヘッド2におけるピストン8の軸心8Pからシリンダ周壁側に偏心した位置に、シリンダ1Bに開口する状態の副室形成穴2Aが形成され、副室形成穴2Aには副室形成用の口金(チャンバー)7が収容されている。副室形成穴2Aは、シリンダヘッド2の主燃焼室5に臨むシリンダヘッド底面2aから上に向けて順に、大径の開口部12と、小径の胴部収容部13と、胴部収容部13よりも奥に位置する空洞部14とを有して構成されている。
【0021】
開口部12には、カップ状に形成された口金7の底部7Aが収容されている。胴部収容部13は、口金7の胴部7Bが収容される箇所であって開口部12よりも小径である。空洞部14は半球よりも少し大きい略半球形に凹んだ箇所に形成され、胴部収容部13とは段付き面(符記省略)で繋がる構成とされている。副室6は、その上下方向に延びる中心線(図示省略)が、ピストン8の外周端より若干ピストン軸心8Pに寄るように、シリンダ1Bに対して配置されている。
【0022】
図1図2に示されるように、口金7は、円柱状の胴部7Bと底部7Aとを含んだ段付円柱状の金具で形成されている。底部7Aは胴部7Bの一端側を胴部7Bの外径よりも大径で周方向に張り出たフランジ状の部位であって平らな底面7aを有して形成されている。胴部7Bの他端側には、胴部7Bの上端面から半球よりも少し小さい略半球形の副室形成用凹部7Cが形成されている。
【0023】
球形(卵球形、まゆ形)の副室6は、空洞部14と副室形成用凹部7Cとで構成され、噴孔9は、副室形成用凹部7Cと主燃焼室5とを連通させる部位として底部7Aから胴部7Bにかけて形成されている。つまり、シリンダヘッド2における主燃焼室5に隣り合う状態で副室形成穴2Aに嵌着される口金7には、副室6を形成するための副室形成用凹部7Cが形成される胴部7Bと、噴孔9とが形成されている。
【0024】
図1図3(A)に示されるように、噴孔9は、主噴孔9Aと、主噴孔9Aの両脇に配置される一対の副噴孔9B,9Bとが連なる三つ葉形状(複葉形状の一例)の孔に形成されている。つまり、滑らかに3つに分割された先端部を持ち、かつ、基端が丸められた扇形を呈する噴孔9に形成されている(噴孔9の三つ葉形状は、ハート形の膨らみ先端側の中央にもう1つ外に向けての膨らみを設けて、計3つの膨らみあるような形状を呈している)。また、燃焼流の流れ方向で噴孔9の上流側に若干離れて左右それぞれに配置される一対の補助噴孔15,15を設けてもよい。
【0025】
図3(A),(B)は、共に平面視によるピストン8と底面視による口金7とを、燃焼流の流れ方向Q(孔心9P方向)で隣り合わせて描いたものであり、噴孔軸心である孔心9Pの左右に関しては、ピストン8と口金7とは互いに対応する位置関係にある。例えば、補助噴孔15は、ピストン軸心8Pに沿う小円径の垂直孔に形成されており、一対の補助噴孔15,15どうしは、孔心9Pに対して対称となる位置関係にある。なお、噴孔9から方向を変えられて主燃焼室5へと流れる燃焼流の流れ方向Q(図2を参照)は、平面視では孔心9P方向と互いに同じ方向〔図3(A),(B)を参照〕を向いている。
【0026】
図3(A)に示されるように、口金7の底面7aに開口する噴孔9は、孔心9Pに沿う方向である燃焼流の流れ方向Qの長さである前後長さ(全長)bよりも燃焼流の流れ方向Qに対する左右方向の長さである左右長さ(横幅)aが大きい(a>b)横長形状に形成されている。つまり、主噴孔9Aと一対の副噴孔9B,9Bとの並び方向の長さ(左右長さa)が、噴孔9の(主噴孔9Aの)全長(孔心9P方向長さ:前後長さb)よりも長い噴孔9に設定されている。
【0027】
図1図3(A)に示されるように、ピストン8の天井壁8Aにおける噴孔9から主燃焼室5へ噴出される燃焼流が吹き付けられる箇所に受止めリセスRが形成されるとともに、吸気弁リセス16及び排気弁リセス17が形成されている。図2において、18は吸気バルブ(図示省略)の軸部を通す軸孔、18Aはバルブ座、19はシール材である。また、噴孔9の傾斜角θは、図2では45度に描かれているが、それ以外に角度や、或いは40~50度などの範囲であってもよい。
【0028】
図3(A)に示されるように、受止めリセスRは、その平面視の形状が、受止めリセスRの幅rが燃焼流の流れ方向Qでの位置の如何に拘わらず一定であり、かつ、燃焼流の流れ方向Qの長さである前後長さが幅よりも大となる長方形(矩形形状の一例)に設定されている。受止めリセスRの幅(=噴孔9の直下となる部分であるリセス始端部20の幅)rは、噴孔9の横幅a以上(r≧a)となるように設定されている。
【0029】
噴孔9の縦横寸法比に関しては、噴孔9の横幅aと全長(前後長さ)bとの長さ割合の範囲は、1.3b≦a≦1.6bであり、好ましくは1.4b≦a≦1.5bに設定される。図3(A)では、a=約1.46bで描かれている。また、リセス始端部20の幅rと噴孔9の横幅aとの長さ割合の範囲は、1.05a≦r≦1.25aであり、好ましくは1.10a≦r≦1.20aに設定される。図3(A)では、r=約1.18aで描かれている。
【0030】
なお、一対の補助噴孔15,15に対応するように、ごく浅い補助リセス21を、天井壁8Aにおけるリセス始端部20の位置(燃焼流の流れ方向Qで最上流端の位置)付近を中心とする円弧状のものとして設けてもよい。
【0031】
受止めリセスRは、図2に示されるように、リセス始端部20の深さが最も深くて、燃焼流の流れ方向Qで下流側に行くに従って深さが浅くなるように、滑らかな湾曲底面(符記省略)を有する不均一深さのリセスに形成されている。そして、図3(A)に示されるように、受止めリセスRの燃焼流の流れ方向Qで中間箇所に排気弁リセス17の外周部が重なっており、かつ、受止めリセスRの燃焼流の流れ方向Qで下流側箇所に吸気弁リセス16の外周部が重なっている。吸気弁リセス16及び排気弁リセス17の深さは、受止めリセスRとの重なり部位においては受止めリセスRの深さより少し深いが、これには限らない。
【0032】
噴孔9は、全長(燃焼流の流れ方向Qの長さ)bよりも横幅aが大きい横長形状に形成され、かつ、受止めリセスRの幅rが噴孔9の横幅a以上に設定されているので、副室6内の燃焼ガス(燃焼流)が主燃焼室5へ流れ易くなる。つまり、高温な燃焼ガスを素早く主燃焼室5へ促して、スモークの低減作用、燃焼改善(燃費向上)作用を得ることが可能になる。従って、スモーク低減、燃費向上の各種効果を奏することができる副室式ディーゼルエンジンが実現されている。
【0033】
〔別実施形態〕
図3(B)に示されるように、受止めリセスRは、その平面視の形状が燃焼流の流れ方向Qで下流側ほど横幅が大きくなる先拡がり形状に設定されても良く、扇形ならば好都合である。この扇形の受止めリセスRにおいても、その基窄まり状始端部22の左右長さrは、噴孔9の横幅aよりも長く(r>a)設定されている。また、吸排気弁リセス16,17と受止めリセスRとは互いに重なる配置構成とされている。
【0034】
従来の扇形の受止めリセス23は、図3(B)に仮想線(二点破線:想像線)で示されるように、その基尖り状始端部23aの幅が極めて狭く、文字通りの扇形に近いものであった。この別実施形態による扇形の受止めリセスRは、基窄まり状始端部22の横幅を従来のものよりも顕著に長くして先拡がり状とされたものである。
【0035】
〔実験による作用効果について〕
従来のエンジン、即ち、扇形の受止めリセス23〔図3(B)参照〕及び一般的な噴孔(例えば、特開2019‐113006号公報に記載の噴孔を参照)を有するディーゼルエンジンと、本発明(長方形の受止めリセスRを持つ本実施形態)によるディーゼルエンジンと、について行った各種の実験結果のデータを図4に示す。
【0036】
図4において、リセス形状において「矩形(実施例)」が本発明によるエンジンで、「扇形(比較例)」は従来エンジンである。定格出力(3000rpm)及び最大トルク(2200rpm)における燃費、スモークの実験データが記されている。
【0037】
図4に示されるように、実施例(本発明によるディーゼルエンジン)は、比較例(従来のディーゼルエンジン)に比べて、定格出力(3000rpm)及び最大トルク(2200rpm)の双方において燃費が向上する。スモークについては、定格出力(3000rpm)での実施例及び比較例は共に0%と良好であるが、最大出力よりもエンジン回転数が低くなる最大トルク(2200rpm)では明らかに実施例の方が低減する。従って、スモーク低減及び燃費向上について効果が認められると言える。
【0038】
加えて、図示は省略するが、実施例(本発明によるディーゼルエンジン)は、比較例(従来のディーゼルエンジン)に比べて、燃焼ガスとピストンとの干渉が低減され、図示仕事量が低減(従来の90~95%)する効果もある。一例として、従来例の図示仕事量153.0Jが、実施例では141.8Jに低減された。
【符号の説明】
【0039】
5 主燃焼室
6 副室
8 ピストン
8A 天井壁
9 噴孔
9A 主噴孔
9B 副噴孔
16 吸気弁リセス
17 排気弁リセス
20 リセス始端部(受止めリセスにおける噴孔の直下となる部分)
Q 燃焼流の流れ方向
R 受止めリセス
a 噴孔の横幅(燃焼流の流れ方向に対する左右方向の長さ)
b 噴孔の全長(燃焼流の流れ方向の長さ)
r 受止めリセスの幅(リセス始端部の幅)
図1
図2
図3
図4