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  • 特開-可搬式防災ターミナル 図1
  • 特開-可搬式防災ターミナル 図2
  • 特開-可搬式防災ターミナル 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090961
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】可搬式防災ターミナル
(51)【国際特許分類】
   A62C 27/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A62C27/00 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207184
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】721000882
【氏名又は名称】松村 恵造
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】松村 恵造
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189AA07
(57)【要約】
【課題】メンテナンスが容易で、経験のない一般人でも、火災現場まで移送して放水ノズルを用いた初期消火が容易かつ迅速にできる可搬式防災ターミナルを提供する。
【解決手段】可搬式防災ターミナルは、所定量の消火水が貯留された水タンクと、放水ノズルを有したホースに接続され、水タンクの消火水を加圧放水する電動放水装置と、電動放水装置に給電する蓄電池とが台車に搭載されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の消火水が貯留された水タンクと、
放水ノズルを有したホースに接続され、前記水タンク内の消火水を加圧放水する電動放水装置と、
前記電動放水装置に給電する蓄電池とが、
台車に搭載されていることを特徴とする可搬式防災ターミナル。
【請求項2】
請求項1において、
災害放送を受信して、災害情報を拡声出力する警報装置を更に備えている可搬式防災ターミナル。
【請求項3】
請求項1又は2において、
所定種別の災害を監視して無線通報する監視通報装置を更に備えている可搬式防災ターミナル。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記蓄電池用の充電装置を更に備えていることを特徴とする可搬式防災ターミナル。
【請求項5】
請求項1又は2において、
各種電子機器の電源プラグに対応して前記蓄電池の電力を変換し外部に給電する電源供給装置を更に備えていることを特徴とする可搬式防災ターミナル。
【請求項6】
請求項1又2において、
前記放水ノズルは付け替え可能な構造になっており、
棒状ノズル、扇形ノズル、充円錐ノズルを付け替えて使用することを特徴とする可搬式防災ターミナル。
【請求項7】
請求項1又は2において、
前記電動放水装置は、整流子を有し単相交流によって駆動される交流モーターを備えていることを特徴とする可搬式防災ターミナル。
【請求項8】
請求項1又は2において、
前記電動放水装置は、DCブラシレスモーターを備えていることを特徴とする可搬式防災ターミナル。
【請求項9】
請求項6において、
前記電動放水装置は、整流子を有し単相交流によって駆動される交流モーターであり、
前記放水ノズルは、棒状ノズルであることを特徴とする可搬式防災ターミナル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災現場まで簡単に移送して初期消火が行える可搬式防災ターミナルに関する。
【背景技術】
【0002】
次の特許文献には、飲料用水を使用して消火を行うことができるウォーターサーバーを用いた自動消火装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-129990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献に記載の自動消火装置は、通常はウォーターサーバーとして使用されるので自動消火装置としての設置場所が不要になるという効果があるが、火災現場まで移動させて使用することはできなかった。
また、従来のポンプを用いた放水消火装置は、消火水を貯留したタンクと、放水ポンプは別置されているだけでなく、放水ポンプにホースを連結して、現場近くまでホースを引き延ばし、放水ノズルを火元などに向けて放水しなければならない面倒さがあった。
また、放水ポンプはエンジン式が多く、そのため燃料タンクが必要で、経験者でないと上手く駆動できないなどの操作上の問題や、エンジンのメンテナスが必要になるなどの問題があった。
これに対して本発明の第一の目的は、エンジンポンプのような面倒な操作やメンテナンスは不要で、経験のない一般人でも、最小の人員で火災現場まで移送させて初期消火ができる可搬式防災ターミナルを提供することにある。
また、第二の目的は、災害情報を拡声出力したり、防災センサーを監視して災害発生時に自動通報したり、災害時に非常用電源としても使用できる多機能タイプの可搬式防災ターミナルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による可搬式防災ターミナルは、所定量の消火水が貯留された水タンクと、放水ノズルを有したホースに接続され、前記水タンクの消火水を加圧放水する電動放水装置と、前記電動放水装置に給電する蓄電池とが、台車に搭載されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明による可搬式防災ターミナルは、エンジン式ポンプを使用せずに、電動モーターで作動する電動放水装置と、蓄電池とを台車に載せ、電動放水装置を蓄電池から給電して駆動する構成にしているので、燃料タンクは要らず、経験のない一般人でも最小の人員で火災現場まで移送させ、電動放水装置を駆動して初期消火ができる。
また、エンジン式放水ポンプを使用していないので、エンジンスタート時の面倒な作業は要らず、メンテナンスも不要である。更に、燃料を使用することもないので、燃料タンクや、燃料タンクに燃料を補給する手間も不要となり、扱いが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】可搬式防災ターミナルの基本構成図である。
図2】(a)~(e)はいずれも防災ターミナルの要素構成図である。
図3】防災ターミナルの配置例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明による可搬式防災ターミナルAは、図1の基本構成図に示すように、その基本要素として、所定量の消火水が貯留された水タンク10と、水タンク10の消火水を加圧放水する電動放水装置20と、電動放水装置20に給電する蓄電池30とを備えており、これらが台車40に搭載されている。
ここに、台車40は、実施例では、車輪41、ハンドル42、ブレーキロック43を備えた手押し台車になっているが、モーター駆動型の台車であってもよい。
このような簡易な構造であるので、経験のない一般人でも、放水ポンプを駆動して放水させることが簡単である。これは、大規模災害によって、火災が同時に多発した際、特に有益である。
蓄電池30としては自己放電が非常に少なく大容量化が可能なリチウムイオン電池等が望ましいが、それに限定されない。
防災ターミナルAは、電動放水装置に接続されたホース21の先端に取付けた放水ノズル22から放水を行うように構成されており、消火水を高さ10m程度まで飛ばすことが可能である。ホース21の先端に取り付けた放水ノズル22は付け替え可能な構造になっており、火災現場に応じて、ストレートに放水させる場合は棒状ノズル、扇形に広げて放水させる場合は扇形ノズル、更に円錐状に放水する場合は充円錐ノズルなどを付け替えて使用できる。
【0009】
防災ターミナルAは、図例のものは、初期消火に必要な消火水と放水装置とを手押し台車40上にパッケージ化しており、最小人員で現場までそのパッケージを移送して、初期消火を行うことを可能にしている。よって火災現場の近くに水源がなくても、また放水装置を作動させるための電源がなくても使用できる。そして特に放水装置を電動式としているので、エンジン式のような始動時に初心者には扱いにくいという心配もないので、経験のない一般人でも電動モーターのスイッチを投入し、ノズルを火元に向ければ、直ぐに消化活動ができる。
また、防災ターミナルAは、水タンク10内での藻などの発生防止、また構成要素の錆びやいたずらによる損傷防止のために遮光防水式の保護カバー100で全体が覆われている。11は水タンク10の注水口であり、保護カバー100の上面側や側面側に設けられる。
【0010】
この防災ターミナルAは、付加的要素として、災害放送を受信して、そのなかに含まれている災害情報を拡声出力する警報装置50、火災、地震、停電、水没など所定種別の災害を監視して無線通報する監視通報装置60、蓄電池30用の充電装置70、各種電子機器の電源プラグに対応して前記蓄電池30の電力を変換して外部に給電する電源供給装置80等を更に備えてもよい。
ここに、災害放送は、市町村防災行政無線が利用できる他、MCA陸上移動通信システムを活用した同報系システム、市町村デジタル移動通信システムを活用した同報系システム、FM放送を活用した同報系システム、280MHz帯電気通信業用ページャーを活用した同報系システム、V-Lowマルチメディア放送を活用した同報システムなども利用できる。
これらの付加的要素は、防災ターミナルAの本体に対してそれぞれ着脱容易に装着できるモージュールとして構成しておけば、設置場所での適性に応じた機能のカスタマイズが簡単に行えるようになる。
【0011】
次いで図2の構成図を参照しながら、電動放水装置20や前記付加的要素の構成を説明する。
【0012】
電動放水装置20は、図2(a)に示すように、ポンプ本体23と、ポンプ本体23を駆動する電動モーター24と、電動モーター24を制御する駆動回路25とを備える。ポンプ本体23は、能力、効率の観点からターボポンプとすることが望ましい。ターボポンプは羽根車によって流体を高速回転させて遠心力によって加圧を行うポンプである。ここでモーター24は整流子を有する交流モーターとすれば、駆動回路25として単相の矩形波交流を発生させる安価なインバーターが利用できるのでコスト面に優れる。また、DCブラシレスモーターを駆動源として使用してもよい。
【0013】
電動モーターと放水ノズルの組み合わせを選択するにあたっては、小型で高出力が得られる整流子を有する交流モーターと、圧力損失の少ない棒状ノズルを組み合わせて使用するとよい。この場合、駆動回路25に矩形波インバーター回路を用いることが出来る。このような組み合わせでは、ポンプ本体23は、100Vで、全揚程40m以上の能力が確保され、圧力損失の少ない棒状ノズル(特に、先端に行くほど孔径を絞ったものが望ましい)を用いれば、放水の飛距離を著しく増大できる。
【0014】
警報装置50は、図2(b)に示すように、アンテナ51を有し防災放送や緊急地震速報を受信する放送受信器52と、スピーカー53を有する拡声器54とを備える。警報装置50は蓄電池30の電力で作動するようにしてもよいが、乾電池等の独自電源を用いて蓄電池30の消耗を抑えるようにしてもよい。
【0015】
監視通報装置60は、図2(c)に示すように、熱、煙、ガスセンサー等の異常監視センサー、水タンク10の水位センサー、蓄電池30の電圧センサー等の各種センサー61が設けられた監視回路62と、アンテナ63を有し監視回路62が異常を検知したときに所定の通報先に無線通報する通信器64とを備える。このとき無線通報の信号には、センサー計測値、防災ターミナルAの識別情報を含ませるが、更にGPS等による位置情報を含ませてもよい。また無線通報の方式に特段の制限はなく、4G、5G等の携帯回線、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)あるいは衛星回線等を用いればよく、あるいは独自の通信方式としてもよい。なお監視通報装置60は蓄電池30の電力で作動するようにしてもよいが、乾電池等の独自電源として蓄電池30の消耗を抑えるようにしてもよい。
【0016】
充電装置70は、図3(d)に示すように、商用AC電源に接続されて充電用の直流電源を生成する電力変換回路71と、蓄電池30を監視する充電制御回路72とを備える。充電装置70はソーラーパネル(図示なし)を更に備えて非充電時に蓄電池30の消耗を抑えるようにしてもよい。
【0017】
電源供給装置80は、図2(e)に示すように、商用AC電源用の機器に対応するACコネクタ81やPCやスマートフォンなどの携帯端末に対応するUSBコネクタ82を設けた電力変換回路83を備えており、非常時などには蓄電池30の電力を変換して各種機器に電源を供給することができる。
【0018】
本発明による防災ターミナルAは前記のように構成されているので、最小限一人の人員で火災現場まで移送して、初期消火を行うことができる。更に、設置場所での必要性に応じて警報機能、監視通報機能、非常用電源機能を持たせた多機能タイプに構成することも可能である。
したがって、防災対象エリア、施設などにこの防災ターミナルAを分散配置すれば、それだけで広範囲な防災監視が行え、迅速な対応、救護も可能となる。
このように本発明の防災ターミナルを監視エリアに点在させて活用した広域監視システムを構築しておけば、人からの通報がなくても、災害時の救済、救護の戦略立案が行える。
したがって、災害現場から人の通報を待って初動対応動作を開始していた従来の問題点が改善され、迅速でかつ有機的な初動対応が可能となる。
【0019】
次いで、防災ターミナルAの使用例を図3に従って説明する。この図ではキャンプ場に、防災ターミナルを多数配置した例としている。
このキャンプ場には駐車場、管理宿泊棟、広場、池等があり、広場及び池の周囲がキャンプエリアになっている。防災ターミナルAは、キャンプエリア全域に分散配置され、更に管理宿泊棟にも配置されている。キャンプエリアには複数の休憩コーナー等があるのでそのような場所に防災ターミナルAを配置すれば、風雨や直射日光による防災ターミナルAの劣化も抑えられる。なお管理宿泊棟には、防災ターミナルAからの無線通報を受け付けるセンター装置Bが配置されている。
このように防災ターミナルAを分散配置したキャンプ場では、利用客がバーベキューによって失火させたときには、利用客自身が防災ターミナルAを使って初期消火を行うことができ、また防災ターミナルAの発信した信号によって、火災発生の事実と、その位置情報も含めて管理宿泊棟に通報されるので、職員や消防員が迅速に火災現場に向かうことができる。
防災ターミナルAは、このようなキャンプ場以外にも、市街地の公園などに点在させて監視エリアを特定し、これらを監視センターに設置したサーバ装置で監視する防災監視システムを構築しておけば、大規模災害が多発したときに、監視エリアの状況が正確に把握でき、迅速な救護活動ができる。
【符号の説明】
【0020】
A 可搬式防災ターミナル
10 水タンク
20 電動放水装置
30 蓄電池
40 台車
50 警報装置
60 監視通報装置
70 充電装置
80 電源供給装置
21 ホース
22 ノズル
24 モーター

図1
図2
図3