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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090963
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/88 20110101AFI20240627BHJP
【FI】
H01R12/88
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207188
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】591043064
【氏名又は名称】モレックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田上 英世
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 純一
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB15
5E223AC04
5E223AC21
5E223AC23
5E223BA04
5E223BA07
5E223BA08
5E223BB12
5E223BB21
5E223CA27
5E223CB17
5E223CB22
5E223CB29
5E223CB39
5E223CC15
5E223CD01
5E223CD02
5E223CD05
5E223DA05
5E223DB09
5E223DB11
5E223EA12
5E223EA13
5E223EC07
5E223EC12
5E223EC22
5E223EC32
5E223EC34
5E223EC36
5E223EC47
5E223EC63
5E223EC82
(57)【要約】
【課題】アクチュエータに意図しない外力が作用した場合に、カム部の上方の動きを制限し、アクチュエータのコネクタからの外れを防止する。
【解決手段】コネクタ10では、ストッパ面35aは、アクチュエータ5050が立ち姿勢にあるとき被ストッパ面53aに干渉し、支持軸部52の周りでの立ち姿勢を超えるアクチュエータ50の動きを規制する。カム規制面25cとストッパ面35aは、支持軸部52の少なくとも一部よりも、後方に位置している。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが接点を有し、第1の方向で並んでいる複数の端子と、
前記複数の端子を保持し、第1の方向に交差する第2の方向における第1の側に向けて開口し、前記開口を通して平型電線を受け入れ可能なハウジングと、
前記接点が前記平型電線の表面に押しつけられるように前記端子を変形させるためのカム部と、被ストッパ面とを有しているアクチュエータと、
前記カム部に対して前記第2の方向における第2の側に位置し、前記第2の側に向けた前記カム部の移動を規制するカム規制面と、
ストッパ面と
を有し、
前記アクチュエータは、前記アクチュエータの前記第1の方向における端部に位置する支持軸部によって支持されて、立ち姿勢と横姿勢との間で回転可能であり、
前記横姿勢は、前記接点が前記平型電線に押しつけられるように前記カム部が前記複数の端子を変形させる姿勢であり、前記立ち姿勢は、前記カム部による前記複数の端子の変形が解消される姿勢であり、
前記ストッパ面は、前記アクチュエータが前記立ち姿勢にあるとき前記被ストッパ面に干渉し、前記支持軸部の周りでの前記立ち姿勢を超える前記アクチュエータの動きを規制し、
前記カム規制面と前記ストッパ面は、前記支持軸部の少なくとも一部よりも、前記第2の方向における前記第2の側に位置している
コネクタ。
【請求項2】
前記第2の方向における前記ストッパ面の位置は、前記カム規制面の位置と同じ、又は前記カム規制面の位置よりも前記第2の方向における前記第2の側である
請求項1に記載されるコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記第2の方向での前記第2の側に向かって伸びている一対のアーム部を有し、
前記アクチュエータは前記一対のアーム部の間に配置され、
前記ストッパ面は前記一対のアーム部に形成されている
請求項1に記載されるコネクタ。
【請求項4】
前記一対のアーム部には、前記第1の方向における前記コネクタの中心に向かって突出するストッパ凸部が形成され、
前記ストッパ凸部は、前記第2の方向における前記第2の側に向いた面を、前記ストッパ面として有している
請求項3に記載されるコネクタ。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記第1の方向に突出する被ストッパ凸部を有し、
前記被ストッパ凸部は、前記第2の方向における前記第1の側に向いた面を、前記被ストッパ面として有している
請求項3に記載されるコネクタ。
【請求項6】
前記ストッパ面と前記被ストッパ面の少なくとも一方は、前記第1の方向での中心寄りに位置する第1縁部と、前記第1の方向での外側に位置する第2縁部とを有し、
前記ストッパ面と前記被ストッパ面の前記少なくとも一方は、前記第2縁部が前記第1縁部よりも前記第2の方向における前記第1の側に位置するように傾斜している
請求項1に記載されるコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平型電線用のコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
FPC(Flexible Printed Circuit)やFFC(Flexible Flat Cable)等の平型電線を回路基板に接続するためのコネクタのなかには、平型電線の表面に端子の接点を押しつけるためのアクチュエータを有するものがある。特許文献1及び2に開示されるコネクタでは、端子は、支柱部と、支柱部から前方に延びている前上延伸部と、支柱部から後方に延びている後上延伸部とを有している。アクチュエータは、後上延伸部の下側に配置されるカム部を有する。アクチュエータは、左右方向での端部に、ハウジングによって保持されている支持軸部を有している。アクチュエータは、支持軸部を中心として、立ち姿勢と横姿勢との間で回転できる。
【0003】
立ち姿勢にあるアクチュエータが後側に倒れ、横姿勢に配置されると、カム部が起き上がり、後上延伸部を押し上げる。そうすると、端子は、支柱部を支点として前延伸上部が下がるように弾性変形する。その結果、前延伸上部に形成された接点が、平型電線の表面に押しつけられる。アクチュエータが横姿勢から立ち姿勢に戻されると、カム部が後上延伸部から離れ、接点が平型電線から離れる。特許文献1及び2に開示されたコネクタでは、カム部の後方に位置する突起部が端子に形成されている。この突起部によって、カム部の後方へ移動が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-222269号公報
【特許文献2】特開2012-119082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コネクタの搬送過程や、コネクタを搭載する装置に組立工程において、立ち姿勢にあるアクチュエータの上部に、アクチュエータを前側に倒そうとする外力(横姿勢に向かう方向とは反対方向の力)が、意図せず作用することがある。そのような外力がアクチュエータに作用すると、斜め上方の動きがカム部に発生し、カム部が突起部に乗り上げる可能性が生じる。このことは、アクチュエータのコネクタからの分離に繋がる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示で提案するコネクタは、それぞれが接点を有し、第1の方向で並んでいる複数の端子と、前記複数の端子を保持し、第1の方向に交差する第2の方向における第1の側に向けて開口し、前記開口を通して平型電線を受け入れ可能なハウジングと、前記接点が前記平型電線の表面に押しつけられるように前記端子を変形させるためのカム部と、被ストッパ面とを有しているアクチュエータと、前記カム部に対して前記第2の方向における第2の側に位置し、前記第2の側に向けた前記カム部の移動を規制するカム規制面と、ストッパ面とを有している。前記アクチュエータは、前記アクチュエータの前記第1の方向における端部に位置する支持軸部によって支持されて、立ち姿勢と横姿勢との間で回転可能である。前記横姿勢は、前記接点が前記平型電線に押しつけられるように前記カム部が前記複数の端子を変形させる姿勢である。前記立ち姿勢は、前記カム部による前記複数の端子の変形が解消される姿勢である。前記ストッパ面は、前記アクチュエータが前記立ち姿勢にあるとき前記被ストッパ面に干渉し、前記支持軸部の周りでの前記立ち姿勢を超える前記アクチュエータの動きを規制する。前記カム規制面と前記ストッパ面は、前記支持軸部の少なくとも一部よりも、前記第2の方向における前記第2の側に位置している。
【0007】
このコネクタによると、アクチュエータに意図しない外力が作用した場合に、カム部の上方の動き(カム規制面を超える方向の動き)を低減できる。
【0008】
(2)(1)に記載のコネクタにおいて、前記第2の方向における前記ストッパ面の位置は、前記カム規制面の位置と同じ、又は前記カム規制面の位置よりも前記第2の方向における前記第2の側であってよい。
【0009】
(3)(1)又は(2)に記載のコネクタにおいて、前記ハウジングは、前記第2の方向での前記第2の側に向かって伸びている一対のアーム部を有し、前記アクチュエータは前記一対のアーム部の間に配置され、前記ストッパ面は前記一対のアーム部に形成されてよい。
【0010】
(4)(3)に記載のコネクタにおいて、前記一対のアーム部には、前記第1の方向における前記コネクタの中心に向かって突出するストッパ凸部が形成され、前記ストッパ凸部は、前記第2の方向における前記第2の側に向いた面を、前記ストッパ面として有してよい。
【0011】
(5)(3)に記載のコネクタにおいて、前記アクチュエータは、前記第1の方向に突出する被ストッパ凸部を有し、前記被ストッパ凸部は、前記第2の方向における前記第1の側に向いた面を、前記被ストッパ面として有してよい。
【0012】
(6)(1)乃至(5)に記載のコネクタにおいて、前記ストッパ面と前記被ストッパ面の少なくとも一方は、前記第1の方向での中心寄りに位置する第1縁部と、前記第1の方向での外側に位置する第2縁部とを有してよい。前記ストッパ面と前記被ストッパ面の前記少なくとも一方は、前記第2縁部が前記第1縁部よりも前記第2の方向における前記第1の側に位置するように傾斜してよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示で提案するコネクタの斜視図である。
図2図1で示すコネクタの分解斜視図である。
図3図2で示すIII領域の拡大図である。
図4図1で示すコネクタが有するハウジングの後側を臨む斜視図である。
図5図1で示すコネクタの背面図である。この図において、アクチュエータは立ち姿勢に配置されている。
図6A図5で示すVIa-VIa線での断面図である。この図において、アクチュエータは立ち姿勢に配置されている。
図6B図5で示すVIb-VIb線での断面図である。この図において、アクチュエータは立ち姿勢に配置されている。
図6C図5で示すVIc-VIc線での断面図である。この図において、アクチュエータは立ち姿勢に配置されている。
図7A図6Aと同じ切断面で得られる断面図である。この図において、アクチュエータは横姿勢に配置されている。
図7B図6Bと同じ切断面で得られる断面図である。この図において、アクチュエータは横姿勢に配置されている。
図8】アクチュエータに形成された支持軸部と、ストッパ面と、カム規制面との相対的な位置関係を説明するための図である。
図9A】アクチュエータのコネクタへの取り付け工程を説明するための図である。この図は図6Aと同じ切断面で得られる断面図である。
図9B】アクチュエータのコネクタへの取り付け工程を説明するための図である。この図は図6Bと同じ切断面で得られる断面図である。
図10A】アクチュエータのコネクタへの取り付け工程を説明するための図である。この図は図6Aと同じ切断面で得られる断面図である。
図10B】アクチュエータのコネクタへの取り付け工程を説明するための図である。この図は図6Bと同じ切断面で得られる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示で提案するコネクタについて、図面を参照しながら説明する。本開示では、コネクタの一例として、図1等で示すコネクタ10について説明する。
【0015】
以下の説明では、図1等で示すY1方向及びY2方向を、それぞれ前方及び後方と称する。また、同図で示すX1方向及びX2方向を、それぞれ右方及び左方と称し、Z1方向及びZ2方向を、それぞれ上方及び下方と称する。なお、これらの方向は、コネクタ10の要素(部品、部材、及び部位)の相対的な位置関係を示すために規定され、コネクタ10の使用時におけるコネクタ10の姿勢を限定するものではない。
【0016】
左右方向(X1-X2方向)が、請求項で言及する「第1の方向」に対応している。前後方向(Y1-Y2方向)が請求項で言及する「第2の方向」に対応している。Y1方向が請求項で言及する「第2の方向における第1の側」に対応し、Y2方向が請求項で言及する「第2の方向における第2の側」に対応している。
【0017】
[コネクタの全体]
図2で示すように、コネクタ10は、左右方向で等間隔で並んでいる複数の端子20、複数の端子20を保持しているハウジング30、及びアクチュエータ50を有している。
【0018】
コネクタ10は、アクチュエータ50がコネクタ10の後部に配置される、所謂バックフリップタイプのコネクタである。
【0019】
[ハウジング]
図1で示すように、ハウジング30は、例えば、上下方向において離れて形成されている上壁部31と底部32とを有してよい。また、ハウジング30、上壁部31と底部32の右側部と左側部とに位置し、それらを繋ぐ側壁部33とを有してよい。ハウジング30は前側に向かって開口している。ハウジング30は、この開口を通して、平型電線90(図6A参照)を受け入れ可能である。平型電線とは、FPCやFFCなどであってよい。また、ハウジング30は、後側に向かって開口している。ハウジング30は、絶縁性の樹脂材料によって成形されてよい。
【0020】
[端子]
図6Aで示すように、各端子20は、例えば、略H形状に形成されてよい。各端子20は、例えば、支柱部21と、支柱部21の上部から前方に延びている前上延伸部22と、支柱部21の下部から前方に延びている前下延伸部23と、支柱部21の上部から後方に延びている後上延伸部24と、支柱部21の下部から後方に延びている後下延伸部25とを有してよい。端子20は、例えば、導電性の金属薄板を打ち抜いて形成される。
【0021】
端子20は接点22aを有している。接点22aは、平型電線90に形成された電線の端部に接し、端子20と平型電線90との電気的接続を確立する。図6Aで示すように、前上延伸部22は、コネクタ10に挿入された平型電線90の上側に位置する。接点22aは、例えば前上延伸部22から下側に突出する凸部であってよい。
【0022】
また、端子20は、接点22aと、上下方向において対向する接点23aを有してよい。図6Aで示すように、コネクタ10に挿入された平型電線90の下側に前下延伸部23が位置する。接点23aは、例えば、前下延伸部23から上側に突出する凸部であってよい。コネクタ10の使用時、後上延伸部24は、後述するアクチュエータ50のカム部51の作用によって押し上げられる。その結果、端子20は、前上延伸部22が支柱部21の上部を支点として下がるように弾性変形し、接点22aが平型電線90の表面に押しつけられる(図7A参照)。平型電線90は接点22a・23aによって挟まれることとなる。
【0023】
なお、図6A等で示す例とは異なり、前下延伸部23に形成された接点23aが、端子20と平型電線90との電気的接続を確立する接点として、機能してもよい。この場合、前上延伸部22に形成された接点22aは、平型電線90を接点23aに向けて押しつけるために使用されてよい。また、2つの接点22a・23aの双方が平型電線90と電気的に接続してもよい。
【0024】
端子20は、コネクタ10が実装される回路基板に接続するための接続部を有してよい。図6Aで示すように、例えば後下延伸部25の後端に、接続部25aが形成されてよい。接続部25aは、ハウジング30の底部32の後縁32aの後側に位置していよい。複数の端子20は、平型電線90に形成された複数の電線(導体パターン)を、回路基板上の導体パターンに、それぞれ電気的に接続する。このような端子20は、ハウジング30の内面(上壁部31の下面と底部32の上面)とに形成された溝31d・32d(図1参照)に、ハウジング30の後側から挿入される。
【0025】
図6A等で示す例とは異なり、例えば前下延伸部23の前端に、接続部が形成されてよい。この接続部は、ハウジング30の底部32の前縁32bの前側に位置していよい。このような端子は、ハウジング30の内面(上壁部31の下面と底部32の上面)とに形成された溝31d・32dに、ハウジング30の前側から挿入される。コネクタ10は、ハウジング30の後側から挿入される端子20と、ハウジング30の前側から挿入される端子の双方を有し、これら2種類の端子は左右方向において交互に配置されてもよい。
【0026】
また、端子20の形状は略H形状でなくてもよい。例えば、端子20は、前下延伸部23を有していなくてもよい。また、端子20は、後下延伸部25を有していなくてもよい。
【0027】
[補強金具]
図2で示すように、コネクタ10は、補強金具70を有してもよい。補強金具70は、例えば、複数の端子20に対して、左右方向における外側に配置されてよい。補強金具70は、例えば、ハウジング30の底部32の前縁32bの前側に位置する接続部71を有してよい。接続部71は、コネクタ10が実装される回路基板に接続される。これにより、コネクタ10の回路基板への取り付け強度を増すことができる。
【0028】
また、補強金具70は、平型電線90の左右の縁部に形成された孔や凹部に係合するための係合部72を有してよい。これにより、コネクタ10からの平型電線90の分離を、効果的に防止できる。このような補強金具70は、端子20と同様に、略H形状に形成されてよい。
【0029】
[アクチュエータ]
図4で示すように、ハウジング30は、後方に伸びている一対のアーム部33Aを有している。一対のアーム部33Aは左右方向で離れている。アーム部33Aは、例えば、左右の側壁部33から後方に伸びていてよい。
【0030】
アクチュエータ50は、左右のアーム部33Aの間に配置されている。図3で示すように、アクチュエータ50は、その右側面と左側面のそれぞれに、支持軸部52を有してよい。左右の支持軸部52は、アクチュエータ50の側面から左方と右方とにそれぞれ突出し、左右のアーム部33Aによってそれぞれ保持されている。図4で示すように、アーム部33Aの内面(左右方向での中心に向いた面)には、保持凹部33aが形成されてよい。支持軸部52は保持凹部33aに嵌められ、保持凹部33aの内側で保持されてよい。支持軸部52は保持凹部33aの内側で回転可能となっている。
【0031】
なお、図3等で示す例とは異なり、支持軸部は、アクチュエータ50ではなく、アーム部33Aに形成されてもよい。この場合、アクチュエータ50の右側面及び左側面に、支持軸部を保持する保持凹部が形成されてよい。
【0032】
アクチュエータ50は、図6Aで示すように、複数のカム部51を有してよい。アクチュエータ50には、複数の後上延伸部24がそれぞれ嵌められる複数の嵌合孔50c(図2参照)が形成されてよい。複数のカム部51は、左右方向で並んでいる後上延伸部24の下側に、それぞれ配置されてよい。カム部51は、後下延伸部25と後上延伸部24との間に配置され、それらの間で回転可能であってよい。カム部51は、例えば略楕円形状の断面を有する部位である。
【0033】
アクチュエータ50は、支持軸部52によって支持されて、立ち姿勢(図6A参照)と、横姿勢(図7A参照)との間で回転可能である。
【0034】
横姿勢とは、端子20の接点22aが平型電線90に押しつけられるように、端子20を変形させる姿勢である。図7Aで示すように、アクチュエータ50が横姿勢にあるとき、カム部51は、その長軸方向(カム部51の幅が最大になる方向)が後上延伸部24と後下延伸部25とに交差した方向(概ね上下方向)に向くように配置され、後上延伸部24を押し上げる。その結果、端子20は前上延伸部22が下がるように弾性変形し、接点22aが平型電線90に押しつけられる。カム部51の下側は後下延伸部25によって支持される。
【0035】
立ち姿勢とは、カム部51による端子20の変形が解消される姿勢である。図6Aで示すように、アクチュエータ50が立ち姿勢にあるとき、後上延伸部24と後下延伸部25とに実質的に沿った方向に、カム部51の長軸方向が向くように、カム部51は配置される。その結果、カム部51による後下延伸部25の押し上げが解消される。そして、前上延伸部22の弾性変形は解消される。アクチュエータ50が立ち姿勢にあるときに、コネクタ10に対する平型電線90の挿抜が許容される。
【0036】
アクチュエータ50は、カム部51から、その左右方向に対して直交する方向に離れている被操作部50a(図1及び図6A参照)を有している。作業者は、この被操作部50aを動かすことで、アクチュエータ50を立ち姿勢と横姿勢とに配置できる。アクチュエータ50が立ち姿勢にあるとき、被操作部50aはカム部51の上方に位置する。アクチュエータ50が横姿勢にあるとき、被操作部50aはカム部51の後方に位置する。
【0037】
[カム規制面]
図6Aで示すように、コネクタ10は、カム部51の後方に位置するカム規制面25cを有している。カム規制面25cは、カム部51の後側で立っている面である。カム規制面25cは、カム部51の後方への移動を規制する。例えば、端子20の後下延伸部25には、カム部51の後方に位置し、上方に突出する規制凸部25bが形成される。規制凸部25bは、その前側の面として、カム規制面25cを有する。カム規制面25cは、好ましくは、鉛直方向(上下方向)と実質的に平行に形成される。
【0038】
なお、図6A等で示す例とは異なり、規制凸部25bとカム規制面25cは、端子20ではなく、ハウジング30の底部32に形成されてもよい。
【0039】
[ストッパ面及び被ストッパ面]
多くの場合、このカム規制面25cによって、アクチュエータ50の、コネクタ10からの分離が抑えられる。ところが、コネクタ10の搬送過程や、コネクタ10を搭載する装置に組立工程において、立ち姿勢にあるアクチュエータ50を前側に倒そうとする外力(図6AにおいてF1方向の力)が、アクチュエータ50の操作部(上部)50aに、意図せず作用することがある。このような外力に起因して、例えば、アクチュエータ50の前面50b(図6A参照)がハウジング30の上壁部31の後縁31a(図6A参照)に衝突し、後縁31aがアクチュエータ50の回転中心として機能すると、カム部51が斜め後方且つ上方に動こうとする。従来の構造では、上壁部31の後縁31aが支持軸部52(図3参照)よりも前方に位置し、カム規制面25cが支持軸部52よりも後方に位置しているので、アクチュエータ50の回転中心(後縁31a)がカム規制面25cから前方に大きく離れて位置することとなる。その結果、カム部51の上方への動きが大きい。その結果、カム部51が規制凸部25bに乗り上げてしまう可能性が生じる。
【0040】
本開示で提案するコネクタ10において、ハウジング30とアクチュエータ50は、このようなカム部51の動きを低減するためにストッパ面35a(図6C参照)と被ストッパ面53a(図6C参照)をそれぞれ有している。
【0041】
図4及び図6Cで示すように、左右のアーム部33Aにストッパ凸部35が形成されてよい。ストッパ凸部35は、例えばアーム部33Aの上部に形成される。ストッパ凸部35は、アーム部33Aから左右方向での中心に向かって突出している。ストッパ凸部35は、後述する凹部31c(上壁部31の後縁31aの両端に形成された凹部)の後方に位置してよい。ストッパ凸部35は、その後側に向いた面として、ストッパ面35aを有している。
【0042】
一方、アクチュエータ50は、図3及び図6Cで示すように、被ストッパ面53aを有している。アクチュエータ50は、左方及び右方にそれぞれ突出する2つの被ストッパ凸部53を有してよい。被ストッパ凸部53は、アクチュエータ50の右側面と左側面とに形成されてよい。被ストッパ凸部53は、その前側に向いた面として、被ストッパ面53aを有している。
【0043】
図6B及び図6Cで示すように、アクチュエータ50が立ち姿勢にあるとき、ストッパ面35aは、被ストッパ面53aに干渉し、支持軸部52の周りでの立ち姿勢を超えるアクチュエータ50の動きを規制する。すなわち、ストッパ面35aは、アクチュエータ50の被操作部50aが前側に倒れることを規制する。ストッパ面35aは、側面視において、鉛直方向に沿って、若しくは斜め後方且つ上方の方向に沿って形成されているのが望ましい。これにより、アクチュエータ50の前方への傾きを効果的に抑えることができる。
【0044】
[ストッパ面及びカム規制面の位置関係]
立ち姿勢にあるアクチュエータ50を前側に倒そうとする外力(図6AにおいてF1方向の力)が作用した場合、アクチュエータ50は、被ストッパ面53aがストッパ面35aに当たり、ストッパ面35aの位置を中心として回転しようとする。このとき、アクチュエータ50の前面50bはハウジング30の上壁部31の後縁31aに当たっていなくてよい。すなわち、図6Cで示すように、前面50bと後縁31aとの間に隙間G3が確保されてよい。
【0045】
図8で示すように、端子20に形成されたカム規制面25cと、ストッパ面35aは、支持軸部52の少なくとも一部よりも、後方に位置していてよい。より具体的には、カム規制面25cとストッパ面35aは、支持軸部52の外周面における前端52aよりも、後方に位置していてよい。ストッパ凸部35は、アーム部33Aに形成された保持凹部33aの上方に位置している。
【0046】
このような位置関係によると、カム規制面25cとストッパ面35aとの間の前後方向での距離が、従来構造に比して、小さくなる。そのため、アクチュエータ50に上述した外力(図6AにおいてF1方向の力)が作用した場合、カム部51の上方への動きが低減し、その結果、カム部51が規制凸部25bに乗り上げることを、効果的に防止できる。
【0047】
なお、ストッパ面35aは、図8で示すように、前後方向に対して傾斜していてよい。この場合、ストッパ面35aの一部だけが(具体的には、左右方向における中心寄りの縁部35b)だけが、支持軸部52の外周面における前端52aよりも後方に位置していよい。望ましくは、図8で示すように、ストッパ面35aの全体が前端52aよりも後方に位置していてよい。ストッパ面35aの傾斜については、後において詳説する。
【0048】
図8で示すように、カム規制面25cとストッパ面35aは、支持軸部52の中心C1よりも、後方に位置していてよい。このような位置関係によると、カム規制面25cとストッパ面35aとの間の前後方向での距離を、更に小さくできるので、カム部51の上方への動きを、さらに効果的に低減できる。
【0049】
図8で示すように、前後方向でのストッパ面35aの位置は、望ましくは、カム規制面25cと同じ、又はカム規制面25cよりも後方であってよい。すなわち、ストッパ面35aの位置は、カム規制面25cを通る鉛直面P1と同じ、又は鉛直面P1よりも後方であってよい。
【0050】
この位置関係によると、上述した外力(図6AにおいてF1方向の力)がアクチュエータ50に作用したときに、カム部51の上方への動きが、より効果的に抑えられる。特に、ストッパ面35aの位置が鉛直面P1よりも後方である場合、上述した外力がアクチュエータ50に作用したときに、カム部51が動く方向は斜め後方且つ下方となる。その結果、カム部51が規制凸部25bを乗り越えることを、より効果的に抑えることができる。
【0051】
なお、カム規制面25cは、鉛直面P1に対して前方又は後方に傾斜していてもよい。この場合、ストッパ面35aの少なくとも一部の前後方向での位置が、カム規制面25cの前端より後方に位置していてよい。
【0052】
上述したように、ストッパ面35aは、前後方向に伸びているアーム部33Aに形成されている。この構造によると、前後方向におけるストッパ面35aの位置についての自由度を向上できる。本開示では、アーム部33Aの長さを利用することで、上述したようなストッパ面35aの位置が実現できている。
【0053】
また、ストッパ面35aは、ハウジング30の上壁部31の後縁31aよりも後方に位置していてよい。より具体的には、ストッパ凸部35の全体が、ハウジング30の上壁部31の後縁31aよりも後方に位置していてよい。この位置関係によると、カム規制面25cとストッパ面35aとの間の前後方向での距離が、従来構造に比して、小さくなる。これにより、アクチュエータ50に上述した外力が作用した場合に、従来構造に比して、カム部51の上方への動きを低減できる。
【0054】
[ストッパ面及び被ストッパ面の傾斜]
図8で示すように、ハウジング30のストッパ面35aは、前後方向に対して傾斜していてよい。より具体的には、ストッパ面35aは、左右方向での中心寄りに位置する内縁部35bと、左右方向での外側に位置する外縁部35dとを有してよい。そして、外縁部35dが内縁部35bよりも前方に位置するように、ストッパ面35aは傾斜していていよい。
【0055】
また、アクチュエータ50の被ストッパ面53aも、前後方向に対して傾斜していてよい。より具体的には、被ストッパ面53aは、左右方向での中心寄りに位置する内縁部53bと、左右方向での外側に位置する外縁部53dとを有してよい。そして、外縁部53dが内縁部53bよりも前方に位置するように、被ストッパ面53aは傾斜していていよい。
【0056】
ストッパ面35aと被ストッパ面53aのこのような傾斜によると、アクチュエータ50を前側に倒そうとする外力がアクチュエータ50の被操作部50aに作用したときに、アーム部33Aが左右方向の外側に広がることを防止できる。その結果、アクチュエータ50が、立ち姿勢を超えて前側に倒れることを、より効果的に防止できる。
【0057】
図4及び図6Cで示すように、ハウジング30の上壁部31は、後縁31aの左右方向での端部に位置する凹部31cを有してよい。凹部31cは、上壁部31と側壁部33との間に位置している。この凹部31cによって、アーム部33Aの長さが増している。言い換えれば、側壁部33において、左右方向の外側に向けて弾性変形可能な範囲が増している。そのため、アクチュエータ50のハウジング30への取り付け作業が、容易化されている。この取り付け作業については、後において説明する。
【0058】
このようにアーム部33Aの長さを増すと、アクチュエータ50を前側に倒そうとする外力が作用したときに、アーム部33Aが外側に向かって広がりやすくなる。ところが、コネクタ10においては、ストッパ面35aと被ストッパ面53aとが傾斜しているので、そのようなアーム部33Aの変形を抑えることができる。
【0059】
なお、図6Cで示す例とは異なり、ストッパ面35aと被ストッパ面53aのうちの一方だけが、上述したように傾斜していてよい。例えば、ストッパ面35aだけが傾斜していてよい。この場合、被ストッパ面53aは、ストッパ面35aにおける内縁部35bと外縁部35dの間の部分に、当たるように形成されてよい。反対に、被ストッパ面53aだけが傾斜していてよい。この場合には、ストッパ面35aは、被ストッパ面53aにおいて内縁部53bと外縁部53dの間の部分に当たるように形成されてよい。この構造によっても、左右方向の外側へのアーム部33Aの変形を抑えることができる。
【0060】
[被ストッパ凸部の補強]
図3で示すように、被ストッパ凸部53と支持軸部52は接続されていてよい。より詳細には、アクチュエータ50は、その側面に、支持軸部52から被ストッパ凸部53に向かって伸びている連結部54を有してよい。この連結部54によると、被ストッパ凸部53の強度を増すことができる。その結果、アクチュエータ50を前側に倒そうとする外力がアクチュエータ50の被操作部50aに作用したときに、被ストッパ凸部53が変形することを抑えることができる。
【0061】
また、アクチュエータ50は、被操作部50aから左方及び右方に突出する凸部50d(図3参照)を有してよい。被ストッパ凸部53は、この凸部50dにも接続していてよい。これによると、被ストッパ凸部53の強度を、更に増すことができる。
【0062】
[コネクタの組み立て工程]
コネクタ10の組立作業について説明する。
【0063】
まず、ハウジング30に、複数の端子20を取り付ける。例えば、ハウジング30の内面に形成された複数の溝31d・32d(図1参照)に、ハウジング30の後側から、複数の端子20をそれぞれ嵌め入れる。また、ハウジング30に、補強金具70を取り付ける。
【0064】
次にアクチュエータ50をハウジング30に取り付ける。具体的には、図9Aで示すように、カム部51の長軸方向が後上延伸部24に沿った方向に向く姿勢に、アクチュエータ50を配置する。そして、左右のアーム部33Aの間にアクチュエータ50を嵌め入れる。これにより、カム部51は、規制凸部25bと後上延伸部24との間を通過する。この姿勢は、図6A等で示す立ち姿勢よりも、アクチュエータ50が前側に傾斜した姿勢であってよい。
【0065】
上述したように、アクチュエータ50の側面には支持軸部52が形成されている。図4で示すように、左右のアーム部33Aの内面にはガイド面33dが形成されてよい。左右のガイド面33dは、後方に向かって、それらの距離が大きくなるように傾斜している。アクチュエータ50を左右のアーム部33Aに嵌め入れる際、支持軸部52はアーム部33Aを左右方向の外側に押し広げながら、ガイド面33dに沿って前方に移動する。上述したように、アーム部33Aと上壁部31との間に凹部31c(図4参照)が形成されているので、このようなアーム部33Aの変形が許容され易くなっており、アクチュエータ50のハウジング30への取り付け作業の容易化が図られている。
【0066】
図4で示すように、アーム部33Aの内面には、保持凹部33aの上方に位置する仮保持凹部33bが形成されてよい。仮保持凹部33bは、保持凹部33aの深さよりも浅い凹部であり、仮保持凹部33bと保持凹部33aとの間に段差33c(図8参照)が形成されている。図9Bで示すように、カム部51が規制凸部25bと後上延伸部24との間を通過すると、アクチュエータ50の支持軸部52は仮保持凹部33bに嵌まり、アクチュエータ50は仮保持凹部33bによって保持される。
【0067】
このとき、図9Bで示すように、ハウジング30のストッパ凸部35の上方に、アクチュエータ50の被ストッパ凸部53が位置している。ストッパ凸部35と、アクチュエータ50に形成された連結部54とが、前後方向において対向する。連結部54の前側には凹部54aが形成されている。ストッパ凸部35の後端(ストッパ面35a)はこの凹部54aに嵌まっている。このような凹部54aを連結部54に形成することによって、アクチュエータ50の取り付け過程におけるアクチュエータ50とストッパ凸部35との干渉を避けつつ、連結部54の存在によって被ストッパ凸部53の強度が確保できる。
【0068】
次に図10Bで示すように、アクチュエータ50の位置を下げる。その結果、支持軸部52は、仮保持凹部33bから保持凹部33aに移動する。仮保持凹部33bと保持凹部33aとの間には段差33c(図8参照)が形成されているので、支持軸部52の位置が仮保持凹部33bの位置に戻ることを防止できる。
【0069】
アクチュエータ50の位置を下げると、図10A及び図10Bで示すように、アクチュエータ50は立ち姿勢に配置され、被ストッパ面53aとストッパ面35aとが対向することとなる。また、図10Aで示すように、カム部51はカム規制面25cの前側に位置することとなる。
【0070】
[まとめ]
以上説明したように、コネクタ10では、ストッパ面35aは、アクチュエータ50が立ち姿勢にあるとき被ストッパ面53aに干渉し、支持軸部52の周りでの立ち姿勢を超えるアクチュエータ50の動きを規制する。カム規制面25cとストッパ面35aは、支持軸部52の少なくとも一部よりも、後方に位置している。このコネクタ10によると、アクチュエータ50に意図しない外力(図6AにおいてF1)が作用した場合に、カム部51の上方の動き(カム規制面25cを超える方向の動き)を低減できる。
【0071】
なお、本開示で提案するコネクタは、上述したコネクタ10に限られず、種々の変更がなされてよい。
【0072】
例えば、ストッパ面35aは、カム規制面25cよりも前方で、且つ支持軸部52の前端52aより後方に位置していてもよい。この場合でも、アクチュエータ50に意図しない外力(図6AにおいてF1)が作用した場合に、カム部51の上方の動きを、従来構造に比して低減できる。
【0073】
また、ストッパ凸部35は、アーム部33Aではく、ハウジング30の上壁部31から後方に延びる部分であってもよい。また、ハウジング30の外側に取り付けられる部材がある場合には、その部材の一部がストッパ面35aとして機能してもよい。
【0074】
また、アクチュエータ50の支持軸部52を保持する構造は、図4等を参照しながら説明した例に限られない。例えば、アーム部33Aの内面に保持凹部33aが形成されているものの、仮保持凹部33bは形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10:コネクタ、20:端子、21:支柱部、22:前上延伸部、22a:接点、23:前下延伸部、23a:接点、24:後上延伸部、25:後下延伸部、25a:接続部、25b:規制凸部、25c:カム規制面、30:ハウジング、31:上壁部、31a:後縁、31c:凹部、31d:溝、32:底部、32a:後縁、32b:前縁、32d:溝、33:側壁部、33A:アーム部、33a:保持凹部、33b:仮保持凹部、33c:段差、33d:ガイド面、35:ストッパ凸部、35a:ストッパ面、35b:内縁部、35d:外縁部、50:アクチュエータ、50a:被操作部、50b:前面、50c:嵌合孔、50d:凸部、51:カム部、52:支持軸部、52a:前端、53:被ストッパ凸部、53a:被ストッパ面、53b:内縁部、53d:外縁部、54:連結部、54a:凹部、70:補強金具、71:接続部、72:係合部、90:平型電線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B