(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090980
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】車両用ミラー装置
(51)【国際特許分類】
B60R 1/072 20060101AFI20240627BHJP
B60R 1/074 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B60R1/072
B60R1/074
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207213
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】523099264
【氏名又は名称】美里工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】都筑 隆宏
【テーマコード(参考)】
3D053
【Fターム(参考)】
3D053FF03
3D053FF04
3D053FF05
3D053FF17
3D053GG06
3D053GG12
3D053GG13
3D053HH03
3D053HH14
3D053HH18
3D053JJ33
3D053KK02
3D053LL02
3D053LL33
(57)【要約】
【課題】鏡面角度を調整する時のトルクが安定している車両用ミラー装置を提供することにある。
【解決手段】この発明は、ミラー31を有するミラーハウジング30と、ミラーハウジング30を回転可能に保持するピボットユニットPUと、ミラーハウジング30を回転させる鏡面角度調整ユニット81、82と、を備える。ピボットユニットPUは、固定部材5と、固定部材5に回転可能に設けられていて、ミラーハウジング30を手動により回転可能である第1ピボット部材6と、第1ピボット部材6に回転可能に設けられていて、ミラーハウジング30を鏡面角度調整ユニット81、82により回転可能である第2ピボット部材7と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーを有するミラーハウジングと、
前記ミラーハウジングを回転可能に保持するピボットユニットと、
前記ミラーハウジングを回転させる鏡面角度調整ユニットと、
を備え、
前記ピボットユニットは、
固定部材と、
前記固定部材に回転可能に設けられていて、前記ミラーハウジングを手動により回転可能である第1ピボット部材と、
前記第1ピボット部材に回転可能に設けられていて、前記ミラーハウジングを前記鏡面角度調整ユニットにより回転可能である第2ピボット部材と、
を有する、
ことを特徴とする車両用ミラー装置。
【請求項2】
前記鏡面角度調整ユニットは、
前記第1ピボット部材に取り付けられているモータと、
前記モータにクラッチ機構を介して取り付けられていて、かつ、前記第2ピボット部材に取り付けられていて、前記第2ピボット部材を前記第1ピボット部材に対して回転させるロッド部材と、
を有し、
前記ミラーハウジングを手動により回転させるときに、前記第1ピボット部材が前記固定部材に対して回転するトルクを第1トルクとし、
前記ミラーハウジングを前記鏡面角度調整ユニットにより回転させるときに、前記第2ピボット部材が前記第1ピボット部材に対して回転するトルクを第2トルクとし、
前記クラッチ機構が作用するトルクを第3トルクとし、
前記第1トルクは、前記第2トルクと前記第3トルクとの和未満であり、
前記第2トルクは、前記第3トルク未満である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ミラー装置。
【請求項3】
前記ピボットユニットには、前記第1トルクおよび前記第2トルクを安定させるトルク安定機構が設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用ミラー装置。
【請求項4】
前記第1ピボット部材には、前記固定部材または前記固定部材が固定されている固定部に当たる手動回転角の規制ストッパーが設けられていて、
前記第1ピボット部材と前記第2ピボット部材とには、電動回転角の規制ストッパーが設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ミラー装置。
【請求項5】
前記ミラーハウジングを格納軸周りに回転させる格納ユニットを備える、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用ミラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用ミラー装置(車両用アウトサイドミラー装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ミラー装置においては、ドライバーが側方から後方にかけて見易いように、鏡面(ミラー面)の角度を調整する作動(鏡面角度調整作動)が必要である。鏡面角度調整作動を行える車両用ミラー装置は、従来からある(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の車両用ミラー装置においては、鏡面角度を調整する時のトルクが安定していることが重要である。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、鏡面角度を調整する時のトルクが安定している車両用ミラー装置を提供することにある。
【0006】
ここで、車両メーカーから要求されている鏡面の作動範囲は、各車両で想定されるドライバーのアイポイントの範囲だけではなく、車両用ミラー装置を他の車両に流用した際に、流用先の車両でも網羅できる作動範囲が要求されている。このため、実際にドライバーが電動作動で必要としている鏡面の作動範囲は、要求されている鏡面の作動範囲よりも小さい。
【0007】
そこで、この発明は、要求されている鏡面の作動範囲を、手動による鏡面の作動範囲と電動による鏡面の作動範囲とに、分割することにより、鏡面角度を調整する時のトルクを安定させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の車両用ミラー装置は、前記の課題を解決するため、ミラーを有するミラーハウジングと、前記ミラーハウジングを回転可能に保持するピボットユニットと、前記ミラーハウジングを回転させる鏡面角度調整ユニットと、を備え、前記ピボットユニットは、固定部材と、前記固定部材に回転可能に設けられていて、前記ミラーハウジングを手動により回転可能である第1ピボット部材と、前記第1ピボット部材に回転可能に設けられていて、前記ミラーハウジングを前記鏡面角度調整ユニットにより回転可能である第2ピボット部材と、を有する、ことを特徴とする。
【0009】
この発明の車両用ミラー装置において、前記鏡面角度調整ユニットは、前記第1ピボット部材に取り付けられているモータと、前記モータにクラッチ機構を介して取り付けられていて、かつ、前記第2ピボット部材に取り付けられていて、前記第2ピボット部材を前記第1ピボット部材に対して回転させるロッド部材と、を有し、前記ミラーハウジングを手動により回転させるときに、前記第1ピボット部材が前記固定部材に対して回転するトルクを第1トルクとし、前記ミラーハウジングを前記鏡面角度調整ユニットにより回転させるときに、前記第2ピボット部材が前記第1ピボット部材に対して回転するトルクを第2トルクとし、前記クラッチ機構が作用するトルクを第3トルクとし、前記第1トルクは、前記第2トルクと前記第3トルクとの和未満であり、前記第2トルクは、前記第3トルク未満である、ことが好ましい。
【0010】
この発明の車両用ミラー装置において、前記ピボットユニットには、前記第1トルクおよび前記第2トルクを安定させるトルク安定機構が設けられている、ことが好ましい。
【0011】
この発明の車両用ミラー装置において、前記第1ピボット部材には、前記固定部材または前記固定部材が固定されている固定部に当たる手動回転角の規制ストッパーが設けられていて、前記第1ピボット部材と前記第2ピボット部材とには、電動回転角の規制ストッパーが設けられている、ことが好ましい。
【0012】
この発明の車両用ミラー装置において、前記ミラーハウジングを格納軸周りに回転させる格納ユニットを備える、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明の車両用ミラー装置は、鏡面角度を調整する時のトルクが安定している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、この発明にかかる車両用ミラー装置の実施形態を示す正面図(車両の後側から前側に見た図)である。
【
図2】
図2は、ミラーアセンブリの使用位置、後方格納位置および前方格納位置(前方傾倒位置)を示す平面図(
図1におけるII矢視図)である。
【
図3】
図3は、鏡面の前後方向の角度調整を示す平面図(
図1におけるII矢視図)である。
【
図4】
図4は、鏡面の上下方向の角度調整を示す側面図(
図1におけるIV矢視図)である。
【
図5】
図5は、構成部品を示す分解斜視図(車両の後側の右斜め上から見た分解斜視図)である。
【
図6】
図6は、構成部品のピボットユニット、鏡面角度調整ユニットおよび格納ユニットを組み付けた状態を示す分解斜視図(車両の前側の左斜め上から見た分解斜視図)である。
【
図7】
図7は、手動外方向規制用ストッパーを示す一部拡大斜視図(車両の前側の左斜め上から見た分解斜視図)である。
【
図8】
図8は、トルク安定構造を示す一部拡大断面図(
図6におけるVIII-VIII線断面図)である。
【
図9】
図9は、鏡面角度調整ユニットを示す分解斜視図である。
【
図10】
図10は、ニュートラル状態を示す鉛直断面図(
図1におけるX-X線断面図)である。
【
図11】
図11は、ニュートラル状態を示す水平断面図(
図1におけるXI-XI線断面図)である。
【
図12】
図12は、ミラーアセンブリを手動によりニュートラル状態から下向きに傾動させた状態を示す鉛直断面図(
図10に対応する鉛直断面図)である。
【
図13】
図13は、ミラーアセンブリを手動によりニュートラル状態から上向きに傾動させた状態を示す鉛直断面図(
図10に対応する鉛直断面図)である。
【
図14】
図14は、ミラーアセンブリを手動によりニュートラル状態から外向きに傾動させた状態を示す水平断面図(
図11に対応する水平断面図)である。
【
図15】
図15は、ミラーアセンブリを手動によりニュートラル状態から内向きに傾動させた状態を示す水平断面図(
図11に対応する水平断面図)である。
【
図16】
図16は、ミラーアセンブリを電動によりニュートラル状態から下向きに傾動させた状態を示す鉛直断面図(
図10、
図12に対応する鉛直断面図)である。
【
図17】
図17は、ミラーアセンブリを電動によりニュートラル状態から上向きに傾動させた状態を示す鉛直断面図(
図10、
図13に対応する鉛直断面図)である。
【
図18】
図18は、ミラーアセンブリを電動によりニュートラル状態から外向きに傾動させた状態を示す水平断面図(
図11、
図14に対応する水平断面図)である。
【
図19】
図19は、ミラーアセンブリを電動によりニュートラル状態から内向きに傾動させた状態を示す水平断面図(
図11、
図15に対応する水平断面図)である。
【
図20】
図20は、ミラーアセンブリを手動と電動とによりニュートラル状態から下向きに傾動させた状態を示す鉛直断面図(
図10、
図12、
図16に対応する鉛直断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明にかかる車両用ミラー装置の実施形態(実施例)の1例を図面に基づいて説明する。なお、図面においては、概略図であるため、主要部品を図示し、主要部品以外の部品の図示を省略し、ハッチングの一部を省略し、断面の一部を省略する。また、図面において、符号「F」は「前」、「B」は「後」、「U」は上、「D」は「下」、「L」は「左」、「R」は「右」である。さらに、
図6は、グレースケールで、図示されている。
【0016】
この明細書において、前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用ミラー装置が車両(図示せず)に搭載された車両搭載状態における前、後、上、下、左、右である。また、正面は、車両の後側の面である。
【0017】
(実施形態の構成の説明)
以下、この実施形態にかかる車両用ミラー装置の構成について説明する。図中、符号1は、この実施形態にかかる車両用ミラー装置(以下、単に「ドアミラー装置」と称する)である。
【0018】
(ドアミラー装置1の説明)
ドアミラー装置1は、図示されていない車両(自動車)の左右のドア(車体)にそれぞれ搭載されている。以下、車両の右側のドアに搭載されているドアミラー装置1について説明する。なお、車両の左側のドアに搭載されているドアミラー装置1は、車両の右側のドアに搭載されているドアミラー装置1とほぼ同様の構成をなすものであるから、説明を省略する。また、この実施形態においては、車両の外側は、車両の右側であり、車両の内側は、車両の左側である。
【0019】
ドアミラー装置1は、
図1から
図5に示すように、ベース2と、シャフト200と、ミラーアセンブリ3と、スペーサ300と、ハーネス(図示せず)と、を備える。
【0020】
(ベース2の説明)
ベース2は、車体であるドアに固定される。ベース2の内部は、ドアの車体パネルやドアパネルあるいはドアガラスの車両の前側の三角形部分のパネル(フラッシュサーフェース)に設けられている開口(図示せず)を介して車両の内部と連通している。
【0021】
ベース2は、
図1から
図4に示すように、垂直板形状の固定部21と、水平板形状の取付部22と、カバー部23と、を有する。固定部21および取付部22は、この例では、高い剛性を有する樹脂(ガラス繊維入りのPA樹脂)から構成されている。カバー部23は、この例では、ABS樹脂から構成されている。
【0022】
(シャフト200の説明)
シャフト200は、
図5、
図6、
図10から
図20に示すように、円鍔形状の固定部201と、固定部201の上面に一体に固定されている円柱形状の軸部202と、を有する。固定部201は、ベース2の取付部22に取り付けられている。これにより、シャフト200は、ベース2に固定されている。シャフト200には、ミラーアセンブリ3が、シャフト200の中心線である格納軸(第3軸)V0周りに回転可能に組み付けられている。
【0023】
シャフト200の固定部201および軸部202には、ハーネス挿通孔203が設けられている。ハーネス挿通孔203中には、ハーネスが挿通されている。
【0024】
(ハーネスの説明)
ハーネスは、カメラ(図示せず)、後記の格納ユニット4、後記の第1鏡面角度調整ユニット81および後記の第2鏡面角度調整ユニット82に電気的に接続されていて、カメラ、格納ユニット4、第1鏡面角度調整ユニット81および第2鏡面角度調整ユニット82に電気を供給する。
【0025】
(スペーサ300の説明)
スペーサ300は、この例では、POM樹脂から構成されている。スペーサ300は、
図1に示すように、ベース2とミラーアセンブリ3との間に介在されている。
【0026】
スペーサ300は、ミラーアセンブリ3が、格納軸V0周りに回転する時に、および、後記の第2軸V2周りに回転する時に、ベース2に対してミラーアセンブリ3と共に回転する。スペーサ300は、ミラーアセンブリ3が、後記の第1軸V1周りに回転する時に、ミラーアセンブリ3と共に回転せず、ベース2と共に停止状態にある。スペーサ300の中央部には、挿通孔(図示せず)が、設けられている。スペーサ300の挿通孔とミラーハウジング30の後記の挿通孔35とは、連通している。
【0027】
(ミラーアセンブリ3の説明)
ミラーアセンブリ3は、
図1から
図5に示すように、ミラー31を有するミラーハウジング30と、格納ユニット4と、ピボットユニットPUと、第1鏡面角度調整ユニット81と、第2鏡面角度調整ユニット82と、を備える。
【0028】
ミラーハウジング30は、格納ユニット4、ピボットユニットPU、第1鏡面角度調整ユニット81および第2鏡面角度調整ユニット82を介して、シャフト200に格納軸V0周りに回転可能に取り付けられている。また、ミラーハウジング30は、ピボットユニットPU、第1鏡面角度調整ユニット81および第2鏡面角度調整ユニット82を介して、格納ユニット4に第1軸V1周りと第2軸V2周りにそれぞれ回転可能に取り付けられている。
【0029】
ミラーハウジング30は、この例では、ABS樹脂から構成されている。ミラーハウジング30は、
図5および
図6に示すように、後側のハウジング部分32と、前側のカバー部分33とから構成されている。ミラーハウジング30の内部には、収納空間34が形成されている。
【0030】
ハウジング部分32は、ほぼ矩形形状の板部320と、その板部320の周囲の縁に一体に設けた縁部321と、を有する。板部320の表面(車両の後側の面)には、アルミ蒸着などが施されていて、ミラー31が形成されている。ミラー31の反射面が鏡面となる。以下、ミラー31と鏡面とを同義語とする。板部320の裏面には、スクリュー取付部322が一体に設けられている。ハウジング部分32の下壁部の中央部分のうち車両の内側寄りの部分には、挿通孔35が設けられている。
【0031】
(格納ユニット4の説明)
格納ユニット4は、この例では、電動格納ユニットである。格納ユニット4は、
図5から
図8、
図10から
図20に示すように、ケーシング40、41と、モータ(図示せず)と、減速機構(図示せず)と、クラッチ機構(図示せず)と、回転力伝達機構(図示せず)と、を有する。
【0032】
格納ユニット4は、ミラーハウジング30の収納空間34内に収納されていて、シャフト200に、格納軸V0周りに回転可能に組み付けられている。格納ユニット4には、ピボットユニットPU、第1鏡面角度調整ユニット81および第2鏡面角度調整ユニット82を介して、ミラーハウジング30が、前記の通り、格納軸V0周りと第1軸V1周りと第2軸V2周りとにそれぞれ回転可能に取り付けられている。
【0033】
ケーシング40、41内には、モータ、減速機構、クラッチ機構および回転力伝達機構が、収納されている。ケーシング40、41は、ギヤケース40とカバー41とから構成されている。ギヤケース40は、この例では、高い剛性を有する樹脂(ガラス繊維入りのPA樹脂)から構成されている。
【0034】
格納ユニット4は、
図2に示すように、モータの作動により、ミラーハウジング30を、固定側のシャフト200およびベース2に対して、格納軸V0周りに使用位置(セット位置)P1と後方格納位置P2との間を回転させる。この時、クラッチ機構は、繋がった状態(固定状態)にある。
【0035】
また、ミラーハウジング30は、手動により、または、ミラーハウジング30に外力かかって緩衝のため、格納軸V0周りに回転する。この時、クラッチ機構は、離れた状態(切り離された状態)にある。
【0036】
回転側の部材例えばギヤケース40と固定側の部材例えばシャフト200とには、電動格納セット角の規制ストッパー(図示せず)および手動緩衝角の規制ストッパー(図示せず)が、設けられている。電動格納セット角の規制ストッパーは、格納ユニット4の駆動により回転したミラーアセンブリ3を、使用位置P1と後方格納位置P2とにそれぞれ停止させる。手動緩衝角の規制ストッパーは、手動または緩衝により回転したミラーアセンブリ3を、後方格納位置P2と前方格納位置P3とにそれぞれ停止させる。
【0037】
(ピボットユニットPUの説明)
ピボットユニットPUは、ミラーハウジング30の収納空間34内に収納されている。ピボットユニットPUは、ミラーハウジング30を回転可能に保持する。ピボットユニットPUは、固定部材5と、第1ピボット部材6と、第2ピボット部材7と、手動回転角の規制ストッパーS11、S12および電動回転角の規制ストッパーS23、S24と、第1トルク安定機構T10および第2トルク安定機構T20と、を有する。
【0038】
固定部材5は、格納ユニット4のギヤケース40に固定されている。第1ピボット部材6は、固定部材5に、第1軸V1周りと第2軸V2周りとにそれぞれ回転可能に保持されている。第2ピボット部材7は、第1ピボット部材6に、第1軸V1周りと第2軸V2周りとにそれぞれ回転可能に保持されている。
【0039】
(第1軸V1、第2軸V2、格納軸V0の説明)
第1軸V1と第2軸V2とは、この例では、
図1に示すように、直交すなわち垂直(直角)に交差している。第1軸V1と第2軸V2との交点は、保持中心CHを構成する。保持中心CHは、ピボットユニットPUの中心である。保持中心CHは、この例では、格納軸V0に近接している。
【0040】
第1軸V1は、この例では、
図3に示すように、格納軸V0に対して、ねじれの位置にある。また、第1軸V1と格納軸V0とは、
図1に示すように、正面視において、直交すなわち垂直(直角)に交差している。
【0041】
第2軸V2は、この例では、
図1から
図3に示すように、格納軸V0に対して、平行であり、また、車両の後側かつ外側に位置する。
【0042】
なお、第1軸V1と第2軸V2とは、この例では、垂直に交差しているが、垂直に交差していない場合でも良い。この場合においては、第1軸V1と格納軸V0とが正面視において垂直に交差していない状態、または、第2軸V2が格納軸V0と平行でない状態、の少なくともいずれか一方の状態にある。
【0043】
また、保持中心CHは、この例では、格納軸V0に近接しているが、格納軸V0上に位置している場合でも良い。この場合においては、第2軸V2と格納軸V0とが一致する。すなわち、第2軸V2と格納軸V0とは、1本の軸である。
【0044】
さらに、第1軸V1は、この例では、格納軸V0に対して、ねじれの位置にあるが、格納軸V0に交差している場合でも良い。この場合においては、第1軸V1と格納軸V0とが垂直に交差している状態、または、垂直でなく交差している状態、にある。さらにまた、格納軸V0と第2軸V2とが一致し、かつ、格納軸V0(第2軸V2と一致している)と第1軸V1とが直交する場合でも良い。
【0045】
(固定部材5の説明)
固定部材5は、この例では、POM樹脂から構成されている。固定部材5は、
図5、
図8、
図10から
図20に示すように、球面の一部分の形状をなす。すなわち、固定部材5は、球面の上側の部分、下側の部分および右側の部分が開口されていて、球面の前側の部分、後側の部分および左側の部分が閉塞されている形状をなす。
【0046】
固定部材5の閉塞部分の前側の部分、後側の部分および左側の部分には、スクリュー50用の挿通孔51が、それぞれ、設けられている。固定部材5は、挿通孔51中を挿通させたスクリュー50を、格納ユニット4のギヤケース40にねじ込むことにより、格納ユニット4に固定されている。固定部材5の外側の凸球面には、第1ピボット凸球面52が設けられている。
【0047】
(第1ピボット部材6の説明)
第1ピボット部材6は、
図5から
図8、
図10から
図20に示すように、後側の第1ブラケット61と前側の第2ブラケット62との2分割のブラケットから構成されている。第1ブラケット61と第2ブラケット62とは、スクリュー63により一体に取り付けられている。
【0048】
第1ブラケット61は、この例では、高い剛性を有する樹脂(ガラス繊維入りのPA樹脂)から構成されている。第1ブラケット61は、ピボット部610と、第1取付部611と、第2取付部612と、スクリュー取付部613と、から構成されている。
【0049】
ピボット部610の内側の凹球面には、第1ピボット凹球面614が設けられていて、ピボット部610の外側の凸球面には、第2ピボット凸球面615が設けられている。ピボット部610の上側には、第1取付部611が一体に設けられている。ピボット部610の右側には、第2取付部612が一体に設けられている。ピボット部610の左下側と右上側とには、スクリュー取付部613がそれぞれ一体に設けられている。第1取付部611と第2取付部612には、開口部616がそれぞれ設けられている。
【0050】
第2ブラケット62は、この例では、ABS樹脂から構成されている。第2ブラケット62は、ピボット部620と、取付部621と、スクリュー取付部622と、から構成されている。
【0051】
ピボット部620の内側の凹球面には、第1ピボット凹球面623が設けられていて、ピボット部620の外側の凸球面には、第2ピボット凸球面624が設けられている。ピボット部620の右側には、取付部621が一体に設けられている。ピボット部620の左下側と右上側とには、スクリュー取付部622がそれぞれ一体に設けられている。
【0052】
第1ブラケット61の第1ピボット凹球面614と第2ブラケット62の第1ピボット凹球面623とは、固定部材5の第1ピボット凸球面52に、後側と前側とから挟み込んで回転可能に嵌合している。第1ブラケット61のスクリュー取付部613と第2ブラケット62のスクリュー取付部622とは、スクリュー63により取り付けられている。この結果、第1ピボット部材6は、固定部材5に、第1軸V1周りと第2軸V2周りとにそれぞれ回転可能に保持されている。
【0053】
(第2ピボット部材7の説明)
第2ピボット部材7は、
図5、
図6、
図10から
図20に示すように、後側の第3ブラケット73と前側の第4ブラケット74との2分割のブラケットから構成されている。第3ブラケット73と第4ブラケット74とは、スクリュー75により一体に取り付けられている。
【0054】
第3ブラケット73は、この例では、ABS樹脂から構成されている。第3ブラケット73は、ピボット部730と、第1取付部731と、第2取付部732と、第3取付部733と、スクリュー取付部734と、から構成されている。
【0055】
ピボット部730の内側の凹球面には、第2ピボット凹球面735が設けられている。ピボット部730の上側には、第1取付部731が一体に設けられている。ピボット部730の右側には、第2取付部732が一体に設けられている。ピボット部730の右上側には、第3取付部733が一体に設けられている。ピボット部730の左側と第2取付部732の上側と第3取付部733の右上側とには、スクリュー取付部734がそれぞれ一体に設けられている。第1取付部731と第2取付部732には、係合部736がそれぞれ設けられている。
【0056】
第4ブラケット74は、この例では、ABS樹脂から構成されている。第4ブラケット74は、ピボット部740と、取付部741と、スクリュー取付部742と、から構成されている。
【0057】
ピボット部740の内側の凹球面には、第2ピボット凹球面743が設けられている。ピボット部740の右側には、取付部741が一体に設けられている。ピボット部740の左側と取付部741の右下側とには、スクリュー取付部742がそれぞれ一体に設けられている。
【0058】
第3ブラケット73の第2ピボット凹球面735と第4ブラケット74の第2ピボット凹球面743とは、第1ブラケット61の第2ピボット凸球面615と第2ブラケット62の第2ピボット凸球面624とに、後側と前側とから挟み込んで回転可能に嵌合している。第3ブラケット73のスクリュー取付部734と第4ブラケット74のスクリュー取付部742とは、スクリュー75により取り付けられている。この結果、第2ピボット部材7は、第1ピボット部材6に、第1軸V1周りと第2軸V2周りとにそれぞれ回転可能に保持されている。
【0059】
第3ブラケット73の第3取付部733のスクリュー取付部734とミラーハウジング30のスクリュー取付部322とは、スクリュー(図示せず)により、一体に取り付けられている。これにより、ミラーハウジング30は、第2ピボット部材7と共に、格納軸V0周り、第1軸V1周りおよび第2軸V2周りにそれぞれ回転する。
【0060】
(手動回転角の規制ストッパーS11、S12の説明)
手動回転角の規制ストッパーS11、S12は、第1ストッパーS11と、第2ストッパーS12とを有する。
【0061】
第1ストッパーS11は、
図5、
図6、
図10、
図12、
図13に示すように、小円形の凸部からなり、第1ブラケット61のピボット部610と第1取付部611との間の個所と、第2ブラケット62のピボット部620の上側の縁とに、それぞれ、一体に設けられている。第1ブラケット61側の第1ストッパーS11と第2ブラケット62側の第1ストッパーS11とは、第2軸V2を挟んで対向している。
【0062】
第1ストッパーS11は、ミラーハウジング30を手動により第1軸V1周りに下向きにまたは上向きに回転させたときに、格納ユニット4に当たって、第1ピボット部材6および第2ピボット部材7が固定部材5に対して回転する角度を規制する。第1ストッパーS11により規制される角度は、この例では、プラスマイナス約5°、合計で約10°である。
【0063】
第1ブラケット61側の第1ストッパーS11は、ミラーハウジング30の上向きの回転角を規制する。第2ブラケット62側の第1ストッパーS11は、ミラーハウジング30の下向きの回転角を規制する。
【0064】
第2ストッパーS12は、
図5、
図7、
図11、
図14、
図15に示すように、小板形状の凸部からなり、第1ブラケット61のピボット部610と第2取付部612との間の個所と、第2ブラケット62の取付部621の右側の縁とに、それぞれ、設けられている。第1ブラケット61側の第2ストッパーS12と第2ブラケット62側の第2ストッパーS12とは、第1軸V1を挟んで対向している。
【0065】
第2ストッパーS12は、ミラーハウジング30を手動により第2軸V2周りに外向きにまたは内向きに回転させたときに、格納ユニット4に当たって、第1ピボット部材6および第2ピボット部材7が固定部材5に対して回転する角度を規制する。第2ストッパーS12により規制される角度は、この例では、プラスマイナス約5°、合計で約10°である。
【0066】
第1ブラケット61側の第2ストッパーS12は、ミラーハウジング30の外向きの回転角を規制する。第2ブラケット62側の第2ストッパーS12は、ミラーハウジング30の内向きの回転角を規制する。
【0067】
(電動回転角の規制ストッパーS23、S24の説明)
電動回転角の規制ストッパーS23、S24は、第3ストッパーS23と、第4ストッパーS24とを有する。
【0068】
第3ストッパーS23は、
図10から
図20に示すように、第3ブラケット73のピボット部730の中央部分に形成されている正方形形状の透孔の4辺に設けられている。第4ストッパーS24は、
図5、
図10から
図20に示すように、小円柱形状をなしていて、第1ブラケット61のピボット部610の第2ピボット凸球面615の中央部分に一体に設けられている。第4ストッパーS24は、第1軸V1および第2軸V2に対して直交する方向に突設されている。
【0069】
第3ストッパーS23は、ミラーハウジング30を、第1鏡面角度調整ユニット81により下向きおよび上向きに回転させたとき、また、第2鏡面角度調整ユニット82により外向きおよび内向きに回転させるときに、第4ストッパーS24に当たって、第2ピボット部材7が第1ピボット部材6および固定部材5に対して回転する角度を規制する。第3ストッパーS23および第4ストッパーS24により規制される上下方向の角度および内外方向の角度は、この例では、プラスマイナス約5°、合計で約10°である。
【0070】
(第1トルク安定機構T10、第2トルク安定機構T20の説明)
第1トルク安定機構T10は、後記の第1トルクT1を安定させる。第2トルク安定機構T20は、後記の第2トルクT2を安定させる。
【0071】
第1トルク安定機構T10は、
図6および
図8に示すように、第2ブラケット62のスクリュー取付部622とワッシャー630との間に、コイルスプリング631を配置して構成されている。コイルスプリング631のスプリング力により、第1ブラケット61のピボット部610と第2ブラケット62のピボット部620とを固定部材5に押し付ける荷重が安定して、第1トルクT1が安定する。なお、ワッシャー630は、スクリュー63の頭部に当接している。
【0072】
第2トルク安定機構T20は、第1トルク安定機構T10と同様に、
図6に示すように、第4ブラケット74のスクリュー取付部742とワッシャー750との間に、コイルスプリング751を配置して構成されている。コイルスプリング751のスプリング力により、第3ブラケット73のピボット部730と第4ブラケット74のピボット部740とを第1ピボット部材6に押し付ける荷重が安定して、第2トルクT2が安定する。なお、ワッシャー750は、スクリュー75の頭部に当接している。
【0073】
(第1鏡面角度調整ユニット81、第2鏡面角度調整ユニット82の説明)
第1鏡面角度調整ユニット81は、ミラーハウジング30を電動により第1軸V1周りに回転させて、鏡面の第1軸V1周りの角度を調整する。第2鏡面角度調整ユニット82は、ミラーハウジング30を電動により第2軸V2周りに回転させて、鏡面の第2軸V2周りの角度を調整する。
【0074】
第1鏡面角度調整ユニット81、第2鏡面角度調整ユニット82は、
図5、
図6、
図9から
図20に示すように、それぞれ、ケーシング83と、モータ84と、減速機構85と、クラッチ機構86と、ロッドギヤ87と、クリップ88と、コネクタ89と、を有する。
【0075】
ケーシング83は、ギヤケース830とカバー831とから構成されている。ギヤケース830とカバー831とは、スクリュー832により一体に組み付けられている。第1鏡面角度調整ユニット81のケーシング83は、第1ブラケット61の第1取付部611のスクリュー取付部613に、スクリュー80により一体に取り付けられている。第2鏡面角度調整ユニット82のケーシング83は、第1ブラケット61の第2取付部612のスクリュー取付部613に、スクリュー80により一体に取り付けられている。
【0076】
モータ84は、ケーシング83内に収納されている。コネクタ89は、ケーシング83に設けられている。モータ84は、コネクタ89に電気的に接続されている。コネクタ89は、ハーネスに電気的に接続されていて、モータ84に電気を供給する。
【0077】
減速機構85は、ケーシング83内に収納されていて、かつ、ギヤケース830に回転可能に軸受けされている。減速機構85は、モータ84の出力軸に連結されている第1ウォーム850と、第1ウォーム850に噛み合っている第1ヘリカルギヤ851と、第1ヘリカルギヤ851に噛み合っている第2ウォーム852と、第2ウォーム852と同軸に一体に取り付けられている第2ヘリカルギヤ853と、を有する。
【0078】
クラッチ機構86は、ケーシング83内に収納されていて、かつ、第2ヘリカルギヤ853の回転軸に取り付けられている。クラッチ機構86は、前記の回転軸に回転可能にかつ軸方向に移動可能に嵌合されているクラッチギヤ860と、前記の回転軸に固定されているナット861と、クラッチギヤ860とナット861の間に配置させたワッシャー862およびスプリング863と、を有する。クラッチギヤ860と第2ヘリカルギヤ853との対向面には、相互に着脱可能に噛み合うクラッチ凹凸が設けられている。
【0079】
ロッドギヤ87は、ケーシング83にスライド可能に取り付けられている。ロッドギヤ87は、円弧形状のラックギヤ部870と、ラックギヤ部870の一端に一体に設けられている取付部871と、を有する。
【0080】
第1鏡面角度調整ユニット81のロッドギヤ87は、第1ブラケット61の第1取付部611の開口部616の中を挿通している。また、第1鏡面角度調整ユニット81のロッドギヤ87の取付部871は、第3ブラケット73の第1取付部731の係合部736に、クリップ88により一体に取り付けられている。
【0081】
ここで、ロッドギヤ87のラックギヤ部870は、第1軸V1を中心とする円弧形状をなしている。これにより、モータ84を駆動させると、減速機構85およびクラッチ機構86を介して、ロッドギヤ87が第1軸V1を中心として円弧方向にスライドして、ミラーハウジング30を第1軸V1周りに回転させて、鏡面の第1軸V1周りの角度を調整することができる。
【0082】
第2鏡面角度調整ユニット82のロッドギヤ87は、第1ブラケット61の第2取付部612の開口部616の中を挿通している。また、第2鏡面角度調整ユニット82のロッドギヤ87の取付部871は、第3ブラケット73の第2取付部732の係合部736に、クリップ88により一体に取り付けられている。
【0083】
ここで、ロッドギヤ87のラックギヤ部870は、第2軸V2を中心とする円弧形状をなしている。これにより、モータ84を駆動させると、減速機構85およびクラッチ機構86を介して、ロッドギヤ87が第2軸V2を中心として円弧方向にスライドして、ミラーハウジング30を第2軸V2周りに回転させて、鏡面の第2軸V2周りの角度を調整することができる。
【0084】
(第1トルクT1と第2トルクT2と第3トルクT3との相対関係の説明)
第1トルクT1は、ミラーハウジング30を手動により回転させるときに、第1ピボット部材6(第2ピボット部材7、第1鏡面角度調整ユニット81および第2鏡面角度調整ユニット82を含む)が固定部材5に対して回転するトルクである。すなわち、第1トルクT1は、手動トルクであって、手動(外力)で鏡面を作動させる際、第1ピボット凸球面52と第1ピボット凹球面614、623上にて摺動して鏡面を作動させるトルクである。
【0085】
第2トルクT2は、ミラーハウジング30を第1鏡面角度調整ユニット81、第2鏡面角度調整ユニット82(電動)により回転させるときに、第2ピボット部材7(第1鏡面角度調整ユニット81および第2鏡面角度調整ユニット82を含む)が第1ピボット部材6に対して回転するトルクである。すなわち、第2トルクT2は、電動トルクであって、第1鏡面角度調整ユニット81、第2鏡面角度調整ユニット82(電動)で鏡面を作動させる際、第2ピボット凸球面615、624と第2ピボット凹球面735、743上にて摺動して鏡面を作動させるトルクである。
【0086】
第3トルクT3は、クラッチ機構86のクラッチギヤ860と第2ヘリカルギヤ853のクラッチ凹凸が相互に噛み合っている状態から、クラッチ凹凸が乗り上がって相互に離れている状態に、作用するトルクである。すなわち、第3トルクT3は、クラッチ機構86が作用するクラッチトルクである。この第3トルクT3により、モータ84の駆動にて鏡面を作動限界まで作動させた際に、クラッチ凹凸が乗り上がることで、モータ84に掛かる負荷を低減することができる。
【0087】
第1トルクT1の必要トルクは、この例では、約3~9Nmである。第1トルクT1の目標トルクは、この例では、約4.5Nmである。第2トルクT2の目標トルクは、この例では、約1Nmである。第3トルクT3の目標トルクは、この例では、約6Nmである。
【0088】
第1トルクT1と第2トルクT2と第3トルクT3とは、下記のトルクバランスが必要である。すなわち、第1トルクT1は、第2トルクT2と第3トルクT3との和未満である(T1<T2+T3)。不成立の場合には、手動(外力)によってクラッチ機構86が切れ、第2ピボット凸球面615、624と第2ピボット凹球面735、743上で摺動し、手動で鏡面を調整する際にはモータ84での作動限界を超えて調整しなければならず、手動調整には、大きな力を必要とする。このため、このトルクバランス(T1<T2+T3)が必要である。
【0089】
前記のトルクバランス(T1<T2+T3)が保たれることにより、手動でミラーハウジング30を回転させるときに、クラッチ機構86が繋がっている状態にあり、第1ピボット部材6と第2ピボット部材7との間で摺動することが無く、固定部材5と第1ピボット部材6との間で摺動するので、手動の小さい力で鏡面の角度を調整することができる。
【0090】
また、第2トルクT2は、第3トルクT3未満である(T2<T3)。不成立の場合には、モータ84での作動ができず、クラッチ機構86が空転してしまって、鏡面の調整が不可能となる。このため、このトルクバランス(T2<T3)が必要である。
【0091】
前記のトルクバランス(T2<T3)が保たれることにより、電動でミラーハウジング30を回転させるときに、クラッチ機構86が繋がっている状態にあり、第1ピボット部材6と第2ピボット部材7との間で摺動するので、鏡面の角度を調整することができる。なお、第1トルクT1は、第2トルクT2よりも大きいので、電動による角度調整のときには、固定部材5と第1ピボット部材6との間で摺動することが無い。
【0092】
(実施形態の作用の説明)
この実施形態にかかるドアミラー装置1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0093】
ここで、ドライバーのアイポイントは、車両毎に異なる。このため、まず、ドライバーのアイポイントが合うように、中立位置に位置する鏡面の角度を、下記の通り、手動により調整する。つぎに、ドライバーが実際に必要とするアイポイントに合うように、手動で角度調整された鏡面の角度を、下記の通り、電動により調整する。
【0094】
(鏡面の中立位置の説明)
ミラー31すなわち鏡面は、
図10および
図11に示す位置に位置するときに、中立位置に位置している。また、ミラーハウジング30が
図3および
図4中の実線にて示す位置に位置するときには、鏡面は、中立位置に位置している。
【0095】
このとき、
図10に示すように、第1軸V1におけるミラーハウジング30の縦軸PV2と第2軸V2とのなす角度は、0°である。すなわち、ミラーハウジング30の縦軸PV2と第2軸V2とは、一致している。
【0096】
また、
図10に示すように、第1軸V1と第1鏡面角度調整ユニット81のクラッチギヤ860とロッドギヤ87のラックギヤ部870との噛合い点G1(以下、「第1噛合い点G1」と称する)を結ぶ線分と、第1軸V1と第1鏡面角度調整ユニット81のロッドギヤ87の取付部871と第3ブラケット73の第1取付部731の係合部736との係合点H1(以下、「第1係合点H1」と称する)を結ぶ線分とのなす角度は、この例では、約41.6°である。
【0097】
さらに、
図11に示すように、第2軸V2におけるミラーハウジング30の横軸PV1と第1軸V1とのなす角度は、0°である。すなわち、ミラーハウジング30の横軸PV1と第1軸V1とは、一致している。
【0098】
さらにまた、
図11に示すように、第2軸V2と第2鏡面角度調整ユニット82のクラッチギヤ860とロッドギヤ87のラックギヤ部870との噛合い点G2(以下、「第2噛合い点G2」と称する)を結ぶ線分と、第2軸V2と第2鏡面角度調整ユニット82のロッドギヤ87の取付部871と第3ブラケット73の第2取付部732の係合部736との係合点H2(以下、「第2係合点H2」と称する)を結ぶ線分とのなす角度は、この例では、約38.3°である。
【0099】
(手動による鏡面の上下方向の作動(鏡面の上下方向の角度調整)の説明)
図12に示すように、手動により、ミラーハウジング30を、ベース2に対して、第1軸V1周りに、下向き方向(時計方向)M1に回転させる。すると、ミラーハウジング30で受けた荷重(下向き方向M1の回転力)は、第3ブラケット73(第4ブラケット74を含む第2ピボット部材7)、第1係合点H1、ロッドギヤ87および第1噛合い点G1を介して第1鏡面角度調整ユニット81に伝わり、さらに、第1ブラケット61(第2ブラケット62を含む第1ピボット部材6)に伝わる。
【0100】
このとき、第3トルクT3は、第1トルクT1よりも大であるから、第1ピボット部材6は、固定部材5に対して、下向き方向M1に回転し、これに伴って、ミラーハウジング30(第1ピボット部材6、第2ピボット部材7、第1鏡面角度調整ユニット81および第2鏡面角度調整ユニット82を含む)は、下向き方向M1に回転する。また、第1鏡面角度調整ユニット81の第1ウォーム850と第2ウォーム852を有する減速機構85セルフロック効果により、ミラーハウジング30で受けた荷重は、第1鏡面角度調整ユニット81を介して第1ブラケット61に確実に伝わる。
【0101】
ここで、第2ブラケット62の第1ストッパーS11が格納ユニット4に当たった時点で、ミラーハウジング30の下向き方向M1の回転が止まる。ミラーハウジング30の下向き方向M1の回転角度は、この例では、約5°である。すなわち、
図12に示すように、第1軸V1におけるミラーハウジング30の縦軸PV2と第2軸V2とのなす角度は、約5°である。すなわち、ミラーハウジング30の縦軸PV2は、第2軸V2に対して、下向き方向M1に約5°傾斜している。
【0102】
また、
図13に示すように、手動により、ミラーハウジング30を、ベース2に対して、第1軸V1周りに、上向き方向(反時計方向)M2に回転させる。すると、ミラーハウジング30で受けた荷重(上向き方向M2の回転力)は、前記の通り、第1鏡面角度調整ユニット81に伝わり、さらに、第1ブラケット61に伝わり、ミラーハウジング30は、上向き方向M2に回転する。
【0103】
ここで、第1ブラケット61の第1ストッパーS11が格納ユニット4に当たった時点で、ミラーハウジング30の上向き方向M2の回転が止まる。ミラーハウジング30の上向き方向M2の回転角度は、この例では、約5°である。すなわち、
図13に示すように、第1軸V1におけるミラーハウジング30の縦軸PV2と第2軸V2とのなす角度は、約5°(
図13中においては、「-5°」と図示)である。すなわち、ミラーハウジング30の縦軸PV2は、第2軸V2に対して、上向き方向M2に約5°傾斜している。
【0104】
このように、手動により、ミラーハウジング30を、ベース2に対して、第1軸V1周りに、下向き方向M1または上向き方向M2に回転させることができるので、手動により、鏡面の上下方向の角度を調整することができる。
【0105】
(手動による鏡面の内外方向の作動(鏡面の内外方向の角度調整)の説明)
図14に示すように、手動により、ミラーハウジング30を、ベース2に対して、第2軸V2周りに、外向き方向(反時計方向、左方向)M3に回転させる。すると、ミラーハウジング30で受けた荷重(外向き方向M3の回転力)は、第3ブラケット73(第4ブラケット74を含む第2ピボット部材7)、第2係合点H2、ロッドギヤ87および第2噛合い点G2を介して第2鏡面角度調整ユニット82に伝わり、さらに、第1ブラケット61(第2ブラケット62を含む第1ピボット部材6)に伝わる。
【0106】
このとき、第3トルクT3は、第1トルクT1よりも大であるから、第1ピボット部材6は、固定部材5に対して、外向き方向M3に回転し、これに伴って、ミラーハウジング30(第1ピボット部材6、第2ピボット部材7、第1鏡面角度調整ユニット81および第2鏡面角度調整ユニット82を含む)は、外向き方向M3に回転する。また、第2鏡面角度調整ユニット82の第1ウォーム850と第2ウォーム852を有する減速機構85セルフロック効果により、ミラーハウジング30で受けた荷重は、第2鏡面角度調整ユニット82を介して第1ブラケット61に確実に伝わる。
【0107】
ここで、第1ブラケット61の第2ストッパーS12が格納ユニット4に当たった時点で、ミラーハウジング30の外向き方向M3の回転が止まる。ミラーハウジング30の外向き方向M3の回転角度は、この例では、約5°である。すなわち、
図14に示すように、第2軸V2におけるミラーハウジング30の横軸PV1と第1軸V1とのなす角度は、約5°である。すなわち、ミラーハウジング30の横軸PV1は、第1軸V1に対して、外向き方向M3に約5°傾斜している。
【0108】
また、
図15に示すように、手動により、ミラーハウジング30を、ベース2に対して、第2軸V2周りに、内向き方向(時計方向、右方向)M4に回転させる。すると、ミラーハウジング30で受けた荷重(上向き方向M2の回転力)は、前記の通り、第2鏡面角度調整ユニット82に伝わり、さらに、第1ブラケット61に伝わり、ミラーハウジング30は、内向き方向M4に回転する。
【0109】
ここで、第2ブラケット62の第2ストッパーS12が格納ユニット4に当たった時点で、ミラーハウジング30の内向き方向M4の回転が止まる。ミラーハウジング30の内向き方向M4の回転角度は、この例では、約5°である。すなわち、
図15に示すように、第2軸V2におけるミラーハウジング30の横軸PV1と第1軸V1とのなす角度は、約5°(
図15中においては、「-5°」と図示)である。すなわち、ミラーハウジング30の横軸PV1は、第1軸V1に対して、内向き方向M4に約5°傾斜している。
【0110】
このように、手動により、ミラーハウジング30を、ベース2に対して、第2軸V2周りに、外向き方向M3または内向き方向M4に回転させることができるので、手動により、鏡面の外内方向(左右方向)の角度を調整することができる。
【0111】
(電動による鏡面の上下方向の作動(鏡面の上下方向の角度調整)の説明)
図16に示すように、第1鏡面角度調整ユニット81のモータ84を駆動させてロッドギヤ87を前進させる。すると、第1鏡面角度調整ユニット81の電動力は、ロッドギヤ87、第1係合点H1および第3ブラケット73(第4ブラケット74を含む第2ピボット部材7)を介してミラーハウジング30に伝わる。このとき、第2トルクT2は、第1トルクT1よりも小であるから、第2ピボット部材7は、第1ピボット部材6(固定部材5を含む)に対して、下向き方向E1に回転し、これに伴って、ミラーハウジング30(第2ピボット部材7を含む)は、下向き方向E1に回転する。
【0112】
ここで、第2ブラケット62の上辺の第3ストッパーS23が第1ブラケット61の第4ストッパーS24に当たった時点で、ミラーハウジング30の下向き方向E1の回転が止まる。ミラーハウジング30の下向き方向E1の回転角度は、この例では、約5°である。すなわち、
図16に示すように、第1軸V1におけるミラーハウジング30の縦軸PV2と第2軸V2とのなす角度は、約5°である。すなわち、ミラーハウジング30の縦軸PV2は、第2軸V2に対して、下向き方向E1に約5°傾斜している。
【0113】
しかも、
図16に示すように、第1軸V1と第1噛合い点G1を結ぶ線分と、第1軸V1と第1係合点H1を結ぶ線分とのなす角度は、この例では、中立位置および手動による下向き位置における約41.6°に約5°を加算された約46.6°である。
【0114】
また、
図17に示すように、第1鏡面角度調整ユニット81のモータ84を駆動させてロッドギヤ87を後退させる。すると、第1鏡面角度調整ユニット81の電動力は、前記の通り、ミラーハウジング30に伝わって、ミラーハウジング30は、上向き方向E2に回転する。
【0115】
ここで、第2ブラケット62の下辺の第3ストッパーS23が第1ブラケット61の第4ストッパーS24に当たった時点で、ミラーハウジング30の上向き方向E2の回転が止まる。ミラーハウジング30の上向き方向E2の回転角度は、この例では、約5°である。すなわち、
図17に示すように、第1軸V1におけるミラーハウジング30の縦軸PV2と第2軸V2とのなす角度は、約5°(
図17中においては、「-5°」と図示)である。すなわち、ミラーハウジング30の縦軸PV2は、第2軸V2に対して、上向き方向E2に約5°傾斜している。
【0116】
しかも、
図17に示すように、第1軸V1と第1噛合い点G1を結ぶ線分と、第1軸V1と第1係合点H1を結ぶ線分とのなす角度は、この例では、中立位置および手動による上向き位置における約41.6°に約5°を減算された約36.6°である。
【0117】
このように、電動により、ミラーハウジング30を、ベース2に対して、第1軸V1周りに、下向き方向E1または上向き方向E2に回転させることができるので、電動により、鏡面の上下方向の角度を調整することができる。
【0118】
(電動による鏡面の内外方向の作動(鏡面の内外方向の角度調整)の説明)
図18に示すように、第2鏡面角度調整ユニット82のモータ84を駆動させてロッドギヤ87を前進させる。すると、第2鏡面角度調整ユニット82の電動力は、ロッドギヤ87、第2係合点H2および第3ブラケット73(第4ブラケット74を含む第2ピボット部材7)を介してミラーハウジング30に伝わる。このとき、第2トルクT2は、第1トルクT1よりも小であるから、第2ピボット部材7は、第1ピボット部材6(固定部材5を含む)に対して、外向き方向E3に回転し、これに伴って、ミラーハウジング30(第2ピボット部材7を含む)は、外向き方向E3に回転する。
【0119】
ここで、第2ブラケット62の左辺の第3ストッパーS23が第1ブラケット61の第4ストッパーS24に当たった時点で、ミラーハウジング30の外向き方向E3の回転が止まる。ミラーハウジング30の外向き方向E3の回転角度は、この例では、約5°である。すなわち、
図18に示すように、第2軸V2におけるミラーハウジング30の横軸PV1と第1軸V1とのなす角度は、約5°である。すなわち、ミラーハウジング30の横軸PV1は、第1軸V1に対して、外向き方向E3に約5°傾斜している。
【0120】
しかも、
図18に示すように、第2軸V2と第2噛合い点G2を結ぶ線分と、第2軸V2と第2係合点H2を結ぶ線分とのなす角度は、この例では、中立位置および手動による外向き位置における約38.3°に約5°を減算された約33.3°である。
【0121】
また、
図19に示すように、第2鏡面角度調整ユニット82のモータ84を駆動させてロッドギヤ87を後退させる。すると、第2鏡面角度調整ユニット82の電動力は、前記の通り、ミラーハウジング30に伝わって、ミラーハウジング30は、内向き方向E4に回転する。
【0122】
ここで、第2ブラケット62の右辺の第3ストッパーS23が第1ブラケット61の第4ストッパーS24に当たった時点で、ミラーハウジング30の内向き方向E4の回転が止まる。ミラーハウジング30の内向き方向E4の回転角度は、この例では、約5°である。すなわち、
図19に示すように、第2軸V2におけるミラーハウジング30の横軸PV1と第1軸V1とのなす角度は、約5°(
図19中においては、「-5°」と図示)である。すなわち、ミラーハウジング30の横軸PV1は、第1軸V1に対して、内向き方向E4に約5°傾斜している。
【0123】
しかも、
図19に示すように、第2軸V2と第2噛合い点G2を結ぶ線分と、第2軸V2と第2係合点H2を結ぶ線分とのなす角度は、この例では、中立位置および手動による内向き位置における約38.3°に約5°を加算された約43.3°である。
【0124】
このように、電動により、ミラーハウジング30を、ベース2に対して、第2軸V2周りに、外向き方向E3または内向き方向E4に回転させることができるので、電動により、鏡面の上下方向の角度を調整することができる。
【0125】
(手動および電動による鏡面の上下方向の作動(鏡面の上下方向の角度調整)の説明)
図20に示すように、手動により、ミラーハウジング30を、ベース2に対して、第1軸V1周りに、下向き方向(時計方向)M1に回転させると、前記の通り、ミラーハウジング30は、下向き方向M1に回転する。
【0126】
ここで、第1鏡面角度調整ユニット81のモータ84を駆動させてロッドギヤ87を前進させると、前記の通り、ミラーハウジング30は、さらに、下向き方向E1に回転する。
【0127】
この手動および電動によるミラーハウジング30の下向き方向M1、E1の回転角度は、この例では、約10°である。すなわち、手動によるミラーハウジング30の下向き方向M1の回転角度である約5°と、電動によるミラーハウジング30の下向き方向E1の回転角度である約5°との和である。これにより、ミラーハウジング30の縦軸PV2は、第2軸V2に対して、下向き方向M1、E1に約10°傾斜している。
【0128】
また、手動および電動により、ミラーハウジング30を、ベース2に対して、第1軸V1周りに、下向き方向M1、E1または上向き方向M2、E2に回転させることができ、また、第2軸V2周りに、外向き方向M3、E3または内向き方向M4、E4に回転させることができるので、手動および電動により、鏡面の上下方向の角度を調整することができる。
【0129】
このように、手動による回転角度と鏡面角度調整ユニット81、82による回転角度との和がミラーハウジング30の全範囲に亘る回転角度となる。
【0130】
(ミラーアセンブリ3の使用位置P1、後方格納位置P2、前方格納位置P3の説明)
図2中の実線は、使用位置P1に位置するミラーアセンブリ3を示す。また、
図20中の二点鎖線は、後方格納位置P2または前方格納位置P3に位置するミラーアセンブリ3を示す。
【0131】
(ミラーアセンブリ3の格納、復帰の説明)
図2に示すように、格納ユニット4を駆動させて電動により、使用位置P1に位置するミラーアセンブリ3を、ベース2に対して、格納軸V0周りに、平面(上)から見て時計方向に回転させる。すると、ミラーアセンブリ3が、回転して後方格納位置P2に位置して格納される。
【0132】
また、格納ユニット4を駆動させて電動により、後方格納位置P2に位置するミラーアセンブリ3を、ベース2に対して、格納軸V0周りに、平面(上)から見て反時計方向に回転させる。すると、ミラーアセンブリ3が、回転して使用位置P1に位置して復帰する。
【0133】
ここで、ミラーアセンブリ3が、使用位置P1または後方格納位置P2に位置すると、停止機構のストッパーが作動する。これにより、ミラーアセンブリ3の回転が停止して、ミラーアセンブリ3が、使用位置P1または後方格納位置P2に位置する。
【0134】
このように、この実施形態にかかるドアミラー装置1は、電動により、ミラーアセンブリ3を格納させたり復帰させたりする電動格納機能を有する。
【0135】
さらに、手動により、使用位置P1に位置するミラーアセンブリ3を、ベース2に対して、格納軸V0周りに、平面(上)から見て反時計方向に回転させる。すると、格納ユニット4の回転力伝達機構のクラッチ機構が断状態となり、ミラーアセンブリ3が、回転して前方格納位置P3に位置して格納される。
【0136】
さらにまた、手動により、前方格納位置P3に位置するミラーアセンブリ3を、ベース2に対して、格納軸V0周りに、平面(上)から見て時計方向に回転させる。すると、ミラーアセンブリ3が、回転して使用位置P1に位置して復帰される。この時、断状態のクラッチ機構が続状態となる。
【0137】
ここで、ミラーアセンブリ3が、使用位置P1または前方格納位置P3に位置すると、停止機構のストッパーが作動する。これにより、ミラーアセンブリ3の回転が停止して、ミラーアセンブリ3が、使用位置P1または前方格納位置P3に位置する。
【0138】
さらにまた、使用位置P1に位置するミラーアセンブリ3に外力がかかり、緩衝作用により、ミラーアセンブリ3が、格納軸V0周りに、使用位置P1から後方格納位置P2または前方格納位置P3に回転する。
【0139】
ミラーアセンブリ3が、格納軸V0周りに、回転する時には、スペーサ300も、ミラーアセンブリ3と共に、ベース2に対して、格納軸V0周りに、回転する。
【0140】
(実施形態の効果の説明)
この実施形態にかかるドアミラー装置1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0141】
この実施形態にかかるドアミラー装置1は、ミラー31を有するミラーハウジング30と、ミラーハウジング30を回転可能に保持するピボットユニットPUと、ミラーハウジング30を回転させる鏡面角度調整ユニット81、82と、を備える、ものである。この実施形態にかかるドアミラー装置1におけるピボットユニットPUは、固定部材5と、固定部材5に回転可能に設けられていて、ミラーハウジング30を手動により回転可能である第1ピボット部材6と、第1ピボット部材6に回転可能に設けられていて、ミラーハウジング30を鏡面角度調整ユニット81、82により回転可能である第2ピボット部材7と、を有する、ものである。
【0142】
これにより、この実施形態にかかるドアミラー装置1は、手動による回転角度と鏡面角度調整ユニット81、82による回転角度との和がミラーハウジング30の全範囲に亘る回転角度となる、ものであるから、鏡面角度調整ユニットの回転角度のみでミラーハウジングの回転角度の全範囲を任せるドアミラー装置と比較して、鏡面角度調整ユニット81、82による回転角度を小さくすることができる。
【0143】
この結果、この実施形態にかかるドアミラー装置1は、第1軸V1と第1噛合い点G1を結ぶ線分と、第1軸V1と第1係合点H1を結ぶ線分とのなす角度、および、第2軸V2と第2噛合い点G2を結ぶ線分と、第2軸V2と第2係合点H2を結ぶ線分とのなす角度を、小さくすることができるので、回転力(トルク、荷重)をミラーハウジング30または鏡面角度調整ユニット81、82に伝達する際の損失を抑制することができる。したがって、この実施形態にかかるドアミラー装置1は、鏡面角度を調整する時のトルクが安定していて、また、鏡面角度調整の作動速度も安定している。
【0144】
この実施形態にかかるドアミラー装置1において、鏡面角度調整ユニット81、82は、第1ピボット部材6に取り付けられているモータ84と、モータ84にクラッチ機構86を介して取り付けられていて、かつ、第2ピボット部材7に取り付けられていて、第2ピボット部材7を第1ピボット部材6に対して回転させるロッド部材としてのロッドギヤ87と、を有する。
【0145】
また、この実施形態にかかるドアミラー装置1において、ミラーハウジング30を手動により回転させるときに、第1ピボット部材6が固定部材5に対して回転するトルクを第1トルクT1とし、ミラーハウジング30を鏡面角度調整ユニット81、82により回転させるときに、第2ピボット部材7が第1ピボット部材6に対して回転するトルクを第2トルクT2とし、クラッチ機構86が作用するトルクを第3トルクT3とする。
【0146】
この実施形態にかかるドアミラー装置1において、第1トルクT1は、第2トルクT2と第3トルクT3との和未満であるから、手動により、ミラーハウジング30を回転させるときに、クラッチ機構86が繋がっている状態にあるので、第1ピボット部材6と第2ピボット部材7との間で摺動することが無く、固定部材5と第1ピボット部材6との間で摺動するので、小さい力で鏡面の角度を調整することができる。
【0147】
また、この実施形態にかかるドアミラー装置1において、第2トルクT2は、第3トルクT3未満であるから、電動により、ミラーハウジング30を回転させるときに、クラッチ機構86が繋がっている状態にあり、第1ピボット部材6と第2ピボット部材7との間で摺動するので、鏡面の角度を調整することができる。
【0148】
この実施形態にかかるドアミラー装置1は、トルクバランス、すなわち、第1トルクT1と第2トルクT2と第3トルクT3とのバランスが保たれているので、電動での調整トルクを十分に確保することができ、電動調整トルクに余力がある。これにより、この実施形態にかかるドアミラー装置1は、走行中、ミラーハウジング30に走行風を受けても、電動による鏡面調整が可能である。
【0149】
この実施形態にかかるドアミラー装置1は、ピボットユニットPUには、第1トルクT1および第2トルクT2を安定させるトルク安定機構T10、T20が設けられている、ものであるから、鏡面角度を調整する時のトルクが安定していて、また、鏡面角度調整の作動速度も安定している。
【0150】
この実施形態にかかるドアミラー装置1は、第1ピボット部材6には、格納ユニット4に当たる手動回転角の規制ストッパーである第1ストッパーS11、第2ストッパーS12が設けられている、ものであるから、手動による鏡面の角度調整の範囲を規制することができる。
【0151】
また、この実施形態にかかるドアミラー装置1は、第1ピボット部材6と第2ピボット部材7とには、電動回転角の規制ストッパーである第3ストッパーS23、第4ストッパーS24が設けられている、ものであるから、電動による鏡面の角度調整の範囲を規制することができる。
【0152】
この実施形態にかかるドアミラー装置1は、ミラーハウジング30を格納軸V0周りに回転させる格納ユニット4を備える、ものであるから、格納ユニット4により、ミラーハウジング30を、格納軸V0周りであって、使用位置P1、後方格納位置P2、前方格納位置P3の間を回転させて、各位置P1、P2、P3に位置させることができる。
【0153】
(実施形態以外の例の説明)
なお、前記の実施形態においては、手動回転角の規制ストッパーS11、S12(第1ストッパーS11と、第2ストッパーS12)が格納ユニット4に当たって手動回転角を規制するものである。しかしながら、この発明においては、手動回転角の規制ストッパーS11、S12(第1ストッパーS11と、第2ストッパーS12)が固定部材5に当たって手動回転角を規制するものであっても良い。すなわち、手動回転角の規制ストッパーS11、S12(第1ストッパーS11と、第2ストッパーS12)は、固定部材5、または、固定部材5が固定されている固定部としての格納ユニット4に当たって手動回転角を規制するものである。
【0154】
また、前記の実施形態においては、格納軸V0と第2軸V2とを2本平行に設けた例について説明するものである。しかしながら、この発明においては、格納軸V0と第2軸V2とを1本の軸に兼用しても良い。
【0155】
なお、この発明の車両用ミラー装置は、前記の実施形態により限定されるものではない。
【符号の説明】
【0156】
1 ドアミラー装置(車両用ミラー装置)
2 ベース
21 固定部
22 取付部
23 カバー部
200 シャフト
201 固定部
202 軸部
203 ハーネス挿通孔
3 ミラーアセンブリ
30 ミラーハウジング
31 ミラー
32 ハウジング部分
320 板部
321 縁部
322 スクリュー取付部
33 カバー部分
34 収納空間
35 挿通孔
300 スペーサ
4 格納ユニット
40 ギヤケース(ケーシング)
41 カバー(ケーシング)
5 固定部材
50 スクリュー
51 挿通孔
52 第1ピボット凸球面
6 第1ピボット部材
61 第1ブラケット
610 ピボット部
611 第1取付部
612 第2取付部
613 スクリュー取付部
614 第1ピボット凹球面
615 第2ピボット凸球面
616 開口部
62 第2ブラケット
620 ピボット部
621 取付部
622 スクリュー取付部
623 第1ピボット凹球面
624 第2ピボット凸球面
63 スクリュー
630 ワッシャー
631 コイルスプリング
7 第2ピボット部材
73 第3ブラケット
730 ピボット部
731 第1取付部
732 第2取付部
733 第3取付部
734 スクリュー取付部
735 第2ピボット凹球面
736 係合部
74 第4ブラケット
740 ピボット部
741 取付部
742 スクリュー取付部
743 第2ピボット凹球面
75 スクリュー
750 ワッシャー
751 コイルスプリング
81 第1鏡面角度調整ユニット
82 第2鏡面角度調整ユニット
83 ケーシング
830 ギヤケース
831 カバー
832 スクリュー
84 モータ
85 減速機構
850 第1ウォーム
851 第1ヘリカルギヤ
852 第2ウォーム
853 第2ヘリカルギヤ
86 クラッチ機構
860 クラッチギヤ
861 ナット
862 ワッシャー
863 スプリング
87 ロッドギヤ
870 ラックギヤ部
871 取付部
88 クリップ
89 コネクタ
80 スクリュー
F 前
B 後
U 上
D 下
L 左
R 右
CH 保持中心
E1 電動による下向き方向
E2 電動による上向き方向
E3 電動による外向き方向
E4 電動による内向き方向
M1 手動による下向き方向
M2 手動による上向き方向
M3 手動による外向き方向
M4 手動による内向き方向
G1 第1噛合い点(第1鏡面角度調整ユニット81のクラッチギヤ860とロッドギヤ87のラックギヤ部870との噛合い点)
G2 第2噛合い点(第2鏡面角度調整ユニット82のクラッチギヤ860とロッドギヤ87のラックギヤ部870との噛合い点)
H1 第1係合点(第1鏡面角度調整ユニット81のロッドギヤ87の取付部871と第3ブラケット73の第1取付部731の係合部736との係合点)
H2 第2係合点(第2鏡面角度調整ユニット82のロッドギヤ87の取付部871と第3ブラケット73の第2取付部732の係合部736との係合点)
P1 使用位置
P2 後方格納位置
P3 前方格納位置
PV1 ミラーハウジング30の横軸
PV2 ミラーハウジング30の縦軸
PU ピボットユニット
S11 第1ストッパー(手動回転角の規制ストッパー)
S12 第2ストッパー(手動回転角の規制ストッパー)
S23 第3ストッパー(電動回転角の規制ストッパー)
S24 第4ストッパー(電動回転角の規制ストッパー)
T10 第1トルク安定機構
T20 第2トルク安定機構
V0 格納軸
V1 第1軸
V2 第2軸