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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090989
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】レチノイドを含む安定分散組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20240627BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240627BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/04
A61K8/60
A61K8/49
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022207226
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸宜
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】池田 侑市
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC482
4C083AC662
4C083AC812
4C083AC852
4C083AD212
4C083AD302
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD391
4C083AD392
4C083AD621
4C083AD622
4C083AD641
4C083AD642
4C083BB34
4C083BB47
4C083CC02
4C083DD33
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】少なくとも1種のレチノイドを含む安定分散体の形態の組成物であって、レチノイドが、光への曝露下及び高温条件下で安定である、組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、連続相と複数の分散相とを含む分散組成物であって、(a)少なくとも1種のレチノイドと、(b)10mmの光路長に沿った290~420nmの波長を有する光に対して10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下の透過率を有する溶液を提供することができる、少なくとも1種の化合物であり、溶液中の化合物の濃度が、溶液の総質量に対して0.9質量%である、化合物と、(c)少なくとも1種の、成分(b)以外の親水性抗酸化剤と、(d)少なくとも1種のカチオン性ポリマーとを含む、組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続相と複数の分散相とを含む分散組成物であって、
(a)少なくとも1種のレチノイドと、
(b)10mmの光路長に沿った290~420nmの波長を有する光に対して10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下の透過率を有する溶液を提供することができる、少なくとも1種の化合物であり、溶液中の化合物の濃度が、溶液の総質量に対して0.9質量%である、化合物と
(c)少なくとも1種の、成分(b)以外の親水性抗酸化剤と
(d)少なくとも1種のカチオン性ポリマーと
を含む、組成物。
【請求項2】
(a)レチノイドが分散相に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(b)化合物、(c)親水性抗酸化剤、及び(d)カチオン性ポリマーが、連続相に存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(a)レチノイドがレチノールである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中の(a)レチノイドの量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~3質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲内である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(b)化合物が、ポリフェノール、好ましくは、ケルセチン、イソケルセチン、ルチン、グルコシルルチン、及びこれらの混合物から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
組成物中の(b)化合物の量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~3質量%、より好ましくは0.1質量%~2質量%の範囲内である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(c)親水性抗酸化剤が、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
組成物中の(c)親水性抗酸化剤の量が、組成物の総質量に対して、1質量%~30質量%、好ましくは5質量%~20質量%、より好ましくは10質量%~15質量%の範囲内である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
(d)カチオン性ポリマーが、カチオン性多糖、好ましくは非セルロース系カチオン性多糖、より好ましくはカチオン性ガム、特にカチオン性ガラクトマンナンガムから選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物中の(d)カチオン性ポリマーの量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~2質量%の範囲内である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
連続相が水性連続相である、請求項3から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
分散相がカプセルを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物中の分散相の量が、組成物の総質量に対して、0.1質量%~30質量%、好ましくは1質量%~20質量%、より好ましくは3質量%~15質量%、よりいっそう好ましくは5質量%~10質量%である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
皮膚等のケラチン物質を処置するための美容方法であって、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物をケラチン物質に塗布する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のレチノイドを含む安定分散組成物、好ましくは少なくとも1種のレチノイドを含む安定な化粧用分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
レチノイドは、皺への処置等のために使用されうる老化防止活性成分として機能できるため、例えば、化粧品の分野において有用であることが知られている。しかしながら、いくつかの条件下では不安定となる傾向がある。例えば、レチノールは親油性溶媒に溶解性であるが、レチノールの溶液は急速に変色(黄変/褐変)することがあり、溶液中のレチノールは経時的に劣化しうる。
【0003】
今日までに、いくつかの先行する文献が、レチノイドを含む組成物を開示している。例えば、WO2021/123337は、少なくともレチノール、ジ-t-ブチルペンタエリスリチルテトラヒドロキシシンナメート、及びエチレンジアミンジコハク酸塩を含む組成物を開示している。
【0004】
また、WO1996/018380は、敏感であり、不安定な化粧用の或いは皮膚科学的に活性な成分或いは構成要素を安定化するための、a)フラボノイドの群からの1種若しくは複数の化合物、又はb)フラボノイドの群から選択される1種若しくは複数の化合物と、ケイ皮酸誘導体の群から選択される1種若しくは複数の化合物とを含有する活性物質との組み合わせの使用、c)任意選択で、イミダゾール誘導体の群からの1種若しくは複数の化合物の追加的使用、及び/或いはd)任意選択で、抗酸化物質若しくは金属キレート剤、又は同等の物質の群からの1種若しくは複数の化合物の追加的使用であって、敏感であり、不安定な化粧用の或いは皮膚科学的に活性な成分或いは構成要素が、ビタミンA、C若しくはE、又はこれらの誘導体を含みうる、使用を開示している。
【0005】
また、WO1996/007396は、水中油型エマルションと、ビタミンAアルコール、ビタミンAアルデヒド、酢酸レチニル、パルミチン酸レチニル及びこれらの混合物からなる群から選択されるレチノイドとを含む、皮膚ケア組成物を開示している。
【0006】
レチノイドを含む組成物も、光又は温度に関する条件に応じて、変色し、悪臭を発する傾向があり、組成物中のレチノイドが、光への曝露下又は高温において経時的に劣化するという、安定性における問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2021/123337
【特許文献2】WO1996/018380
【特許文献3】WO1996/007396
【特許文献4】特許出願FR2370377
【特許文献5】特許出願EP0199636
【特許文献6】特許出願EP0325540
【特許文献7】特許出願EP0402072
【特許文献8】EP-A-307,626
【特許文献9】FR-2,400,358
【特許文献10】FR-2,400,359
【特許文献11】EP-A-487404
【特許文献12】EP-A-425066
【特許文献13】特開平05-213736
【特許文献14】欧州特許出願第0080976号
【特許文献15】仏国特許第2077143号
【特許文献16】仏国特許第2393573号
【特許文献17】仏国特許第2162025号
【特許文献18】仏国特許第2280361号
【特許文献19】仏国特許第2252840号
【特許文献20】仏国特許第2368508号
【特許文献21】仏国特許第1583363号
【特許文献22】米国特許第3,227,615号
【特許文献23】米国特許第2,961,347号
【特許文献24】仏国特許第2080759号
【特許文献25】追加特許第2190406号
【特許文献26】仏国特許第2320330号
【特許文献27】仏国特許第2270846号
【特許文献28】仏国特許第2316271号
【特許文献29】仏国特許第2336434号
【特許文献30】仏国特許第2413907号
【特許文献31】米国特許第2,273,780号
【特許文献32】米国特許第2,375,853号
【特許文献33】米国特許第2,388,614号
【特許文献34】米国特許第2,454,547号
【特許文献35】米国特許第3,206,462号
【特許文献36】米国特許第2,261,002号
【特許文献37】米国特許第2,271,378号
【特許文献38】米国特許第3,874,870号
【特許文献39】米国特許第4,001,432号
【特許文献40】米国特許第3,929,990号
【特許文献41】米国特許第3,966,904号
【特許文献42】米国特許第4,005,193号
【特許文献43】米国特許第4,025,617号
【特許文献44】米国特許第4,025,627号
【特許文献45】米国特許第4,025,653号
【特許文献46】米国特許第4,026,945号
【特許文献47】米国特許第4,027,020号
【特許文献48】欧州特許出願第0122324号
【特許文献49】仏国特許第1492597号
【特許文献50】米国特許第4,131,576号
【特許文献51】米国特許第3589578号
【特許文献52】米国特許第4031307号
【特許文献53】特許出願FR0853634
【特許文献54】特許出願EP-A-0955039
【特許文献55】特許出願US2004-175338
【特許文献56】特許出願FR2908769
【特許文献57】特許出願FR2704754
【特許文献58】特許出願FR2877004
【特許文献59】特許出願FR2854160
【特許文献60】特許出願EP0511118
【特許文献61】特許出願WO94/11338
【特許文献62】特許出願FR2698095
【特許文献63】特許出願FR2737205
【特許文献64】特許出願EP0755925
【特許文献65】特許出願FR2825920
【特許文献66】EP-A-317542
【特許文献67】EP-A-399133
【特許文献68】EP-A-516102
【特許文献69】EP-A-509382
【特許文献70】US-A-5364633
【特許文献71】US-A-5411744
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「The Flavonoids」、Harborne J. B.、Mabry T. J.、Helga Mabry、1975年、1~45頁
【非特許文献2】Changら、JOSC、第61巻、第6号、1984年6月
【非特許文献3】C.M. Hansen、「The three dimensional solubility parameters」、J. Paint Technol、39巻、105頁(1967年)
【非特許文献4】Meylan及びHowardによる記事:Atom/Fragment contribution method for estimating octanol-water partition coefficients、J. Pharm. Sci.、84: 83-92頁、1995年
【非特許文献5】Exploring QSAR:hydrophobic, electronic and steric constants (ACS professional reference book、1995年)
【非特許文献6】http://esc.syrres.com/interkow/kowdemo.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、少なくとも1種のレチノイドを含む安定分散体の形態の組成物であって、レチノイドが、光への曝露下又は高温条件下で安定である、組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記の目的は、連続相と複数の分散相とを含む分散組成物であって、
(a)少なくとも1種のレチノイドと、
(b)10mmの光路長に沿った290~420nmの波長を有する光に対して10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下の透過率を有する溶液を提供することができる、少なくとも1種の化合物であり、溶液中の化合物の濃度が、溶液の総質量に対して0.9質量%である、化合物と、
(c)少なくとも1種の、成分(b)以外の親水性抗酸化剤と、
(d)少なくとも1種のカチオン性ポリマーと
を含む、組成物によって達成することができる。
【0011】
(a)レチノイドは分散相に存在する。
【0012】
(b)化合物、(c)親水性抗酸化剤、及び(d)カチオン性ポリマーは、連続相に存在する。
【0013】
(a)レチノイドはレチノールであってもよい。
【0014】
本発明による組成物中の(a)レチノイドの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~3質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲内でありうる。
【0015】
(b)化合物は、ポリフェノール、好ましくは、ケルセチン、イソケルセチン、ルチン、グルコシルルチン、及びこれらの混合物から選択されうる。
【0016】
本発明による組成物中の(b)化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~3質量%、より好ましくは0.1質量%~2質量%の範囲内でありうる。
【0017】
(c)親水性抗酸化剤は、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、及びこれらの組み合わせから選択されうる。
【0018】
組成物中の(c)親水性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、1質量%~30質量%、好ましくは5質量%~20質量%、より好ましくは10質量%~15質量%の範囲内でありうる。
【0019】
(d)カチオン性ポリマーは、カチオン性多糖、好ましくは非セルロース系カチオン性多糖、より好ましくはカチオン性ガム、特にカチオン性ガラクトマンナンガムから選択されうる。
【0020】
組成物中の(d)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~2質量%の範囲内でありうる。
【0021】
連続相は水性連続相であってもよい。
【0022】
分散相はカプセルを含む。
【0023】
組成物中の分散相の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~30質量%、好ましくは1質量%~20質量%、より好ましくは3質量%~15質量%、よりいっそう好ましくは5質量%~10質量%の範囲内である。
【0024】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質を処置するための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程を含む、方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
鋭意検討の結果、本発明者らは、少なくとも1種のレチノイドを含む分散組成物であって、安定分散体の形態を有し、光への曝露下又は高温においてさえ、十分な残存率で組成物中のレチノイドを維持することができる、分散組成物を提供できることを発見した。
【0026】
本発明による組成物は、連続相と複数の分散相とを含む分散組成物であって、
(a)少なくとも1種のレチノイドと、
(b)10mmの光路長に沿った290~420nmの波長を有する光に対して10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下の透過率を有する溶液を提供することができる、少なくとも1種の化合物であり、溶液中の化合物の濃度が、溶液の総質量に対して0.9質量%である、化合物と、
(c)少なくとも1種の、成分(b)以外の親水性抗酸化剤と、
(d)少なくとも1種のカチオン性ポリマーと
の組み合わせを特徴としうる。
【0027】
以下に、本発明による組成物及び方法をより詳細に説明する。
【0028】
[組成物]
本発明による組成物は、複数の分散相を有する、安定分散体の形態を有する。「安定分散体」という表現は、ここでは、複数の分散相が、経時的に沈殿又は浮上することなく安定であることを意味する。また、本発明による組成物は、光への曝露下及び高温においてさえ、十分な残存率で組成物中のレチノイドを維持することができる。分散体は、ここでは、本発明の分散相が油、水等の液滴ではないという点で、エマルションとは異なる。
【0029】
本発明による組成物は、好ましくは化粧用組成物として、特にリーブオンタイプの化粧用組成物として使用されうる。本発明による組成物は、ケラチン質物質、例えば皮膚、例えば、顔面、首又は体の皮膚、唇、頭皮及び毛髪への塗布が意図されうる。本発明による組成物は、ケラチン質物質における美容効果、特に抗老化、白色化、及び/又は抗皺効能を有する。
【0030】
本発明による組成物は、分散体として安定な形態を呈する。言い換えれば、分散相の各々は、沈殿又は浮上することなく、組成物中で良好に分散している。特に、本発明による組成物は、高温、例えば55℃においてさえ、経時的に安定な形態の分散体を呈する。言い換えれば、分散相の各々は、高温、例えば55℃においてさえ、経時的に沈殿又は浮上することなく、組成物中で良好に分散している。
【0031】
本発明による組成物は、光(例えばUV光)曝露下及び高温(例えば55℃)においてさえ、組成物中の(a)レチノイドを十分な残存率(例えば75%以上)で維持することができる。言い換えれば、光及び高温に起因する本発明による組成物中の(a)レチノイドの劣化を、低減することができる。したがって、本発明による組成物は、組成物中の(a)レチノイドに基づいて、経時的に安定な美容効果を提供することができる。
【0032】
本発明による組成物は、透明又は半透明でありうる。
【0033】
透明度は、濁度(例えば、濁度は、丸型セル(直径25mm×高さ60mm)、及び可視光(400nmから800nmの間、好ましくは400~500nm)を発することができるタングステンフィラメント電球を備えた2100Q(HACH社により市販されている)で測定できる)を測定することによって測定できる。測定は、無希釈組成物において実行することができる。ブランクは、蒸留水を用いて決定されうる。
【0034】
本発明による組成物は、好ましくは、200NTU未満、好ましくは150NTU未満、より好ましくは100NTU未満、よりいっそう好ましくは50NTU未満の濁度を有しうる。
【0035】
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のレチノイドと、(b)10mmの光路長に沿った290~420nmの波長を有する光に対して10%以下の透過率を有する溶液を提供することができる、少なくとも1種の化合物であり、溶液中の化合物の濃度が、溶液の総質量に対して0.9質量%である、化合物と、(c)少なくとも1種の、成分(b)以外の親水性抗酸化剤と、(d)少なくとも1種のカチオン性ポリマーとを含む。
【0036】
以下に、本発明による組成物中の成分をより詳細に説明する。
【0037】
(レチノイド)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のレチノイドを含む。2種以上の(a)レチノイドを組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプのレチノイドを使用しても、異なるタイプのレチノイドの組み合わせを使用してもよい。
【0038】
(a)レチノイドは、レチノール(ビタミンA)、レチナール(ビタミンAアルデヒド)、レチノイン酸(ビタミンA酸)、又はレチノールとC2~20酸とのエステル、例えば、レチノールのプロピオン酸エステル、酢酸エステル、リノール酸エステル、又はパルミチン酸エステル(パルミチン酸レチニル)であってもよい。
【0039】
(a)レチノイドの中でも、レチノール、レチナール、レチノイン酸、特に全トランスレチノイン酸及び13-シスレチノイン酸、レチノール誘導体、例えば、酢酸レチニル、プロピオン酸レチニル、又はパルミチン酸レチニル、並びに次の特許出願:FR2370377、EP0199636、EP0325540、及びEP0402072に記載されているレチノイドを挙げることができる。
【0040】
本発明の好ましい一実施形態によれば、(a)レチノイドは、レチノール又はプロレチノールである。
【0041】
「レチノール」という用語は、レチノールのすべての異性体、すなわち、全トランスレチノール、13-シスレチノール、11-シスレチノール、9-シスレチノール、及び3,4-ジデヒドロレチノールを意味することが意図される。
【0042】
プロレチノールの代表として、パルミチン酸レチニルを挙げることができる。
【0043】
(a)レチノイドは、レチノールであることが好ましい。
【0044】
本発明による組成物中の(a)レチノイドの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でありうる。
【0045】
その一方で、本発明による組成物中の(a)レチノイドの量は、組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下でありうる。
【0046】
本発明による組成物中の(a)レチノイドの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~3質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲内でありうる。
【0047】
本明細書の文脈において、パラメーター、例えば量の好ましい範囲を表すために、パラメーターの上限値と下限値との任意の組み合わせを利用することができる。
【0048】
(遮光化合物)
本発明による組成物は、(b)10mmの光路長に沿った290~420nmの波長を有する光に対して10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下の透過率を有する溶液を提供することができる、少なくとも1種の化合物を含み、溶液中の(b)化合物の濃度は、溶液の総質量に対して0.9質量%である。したがって、単一のタイプのこのような(b)化合物を使用しても、異なるタイプのこのような(b)化合物の組み合わせを使用してもよい。
【0049】
(b)化合物は、低い光透過率を提供することができる。そのため、(b)化合物は、遮光化合物と呼ばれることもある。
【0050】
(b)化合物は、本発明の連続相に存在しうる。
【0051】
(b)化合物は、10mmの光路長に沿った290~420nmの波長を有する光に対してゼロ(0)透過率を有する溶液を提供できることがより好ましく、溶液中の(b)化合物の濃度は、溶液の総質量に対して0.9質量%である。
【0052】
(b)化合物は、10mmの光路長に沿った290~420nmの波長を有する光に対してゼロ(0)透過率を有する溶液を提供できることがよりいっそう好ましく、溶液中の(b)化合物の濃度は、溶液の総質量に対して0.1質量%超である。
【0053】
溶液のための溶媒は、(b)化合物が溶媒中に可溶化される限り限定されず、溶媒は、290~420nmの波長を有する光に対して吸光度を有さない。例えば、溶媒として、水及びエタノール等の親水性溶媒を使用してもよい。
【0054】
透過率は、分光光度計、例えば、JASCO Corp.社によるUV-可視/NIR分光光度計V-750によって測定することができる。
【0055】
(b)化合物は、10mmの光路長に沿った290~420nmの波長を有するあらゆる光に対して10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下、よりいっそう好ましくはゼロ(0)%の透過率を有する溶液を提供することができる。言い換えれば、(b)化合物の溶液は、波長が290nm~420nmである、あらゆる光を低減する又は遮ることができる。
【0056】
(b)化合物は、本発明による組成物中の(a)レチノイドに到達して(a)レチノイドを分解しうる上記の特定波長を有する光を、低減する又は遮ることができる。そのため、(b)化合物は、(a)レチノイドの光安定性の増強に寄与することができ、本発明による組成物中の(a)レチノイドの分解を低減することができる。
【0057】
(b)化合物は、ポリフェノールから選択されうる。
【0058】
- ポリフェノール
「ポリフェノール」という表現は、複数のフェノール性ヒドロキシル基を含有する化合物を意味すると理解される。フェノール性ヒドロキシル基は、ベンゼン環及びナフタレン環等の芳香環に結合したヒドロキシル基を意味する。フェノール性ヒドロキシル基は、任意選択で、エーテル化又はエステル化されていてもよい。
【0059】
ポリフェノールは、酸化防止作用を有するものから選択してもよい。
【0060】
ポリフェノールは、例えば、フラボノイドから選択してもよい。
【0061】
好ましいフラボノイドは、一般式(I):
【0062】
【化1】
【0063】
(式中、
A"、B"、C"及びD"は、互いに独立して、H、OH、-R'又は-OR'を表し、R'は式R'OHの糖の残基を表し、
E"は、H、-OH又は-OX'を表し、X'は、
【0064】
【化2】
【0065】
を表し、
F"、G"及びJ"は、互いに独立して、H、-OH又は-OCH3を表し、
X1は、-CH2-、-CO-若しくは-CHOH-を表す)、
又は一般式(II):
【0066】
【化3】
【0067】
(式中、
A'、C'及びD'は、互いに独立して、H、-OH、-OCH3、-R'又は-OR'を表し、R'は式R'OHの糖の残基を表し、
E'は、H、-OH又は-OR'を表し、R'は式R'OHの糖の残基を表し、
B'、F'、G'及びJ'は、互いに独立して、H、-OH、-OCH3、-OCH2-CH2-OH、又は-OR'を表し、R'は式R'OHの糖の残基を表す)
に相当しうる。
【0068】
糖R'OHの中でも、ルチノース、グルコース、アピオース、ラムノース、ロビノース、ネオヘスペリドース、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0069】
式(I)及び(II)の化合物は公知である。これらは、とりわけ、「The Flavonoids」、Harborne J. B.、Mabry T. J.、Helga Mabry、1975年、1~45頁に記載されている方法によって得ることができる。
【0070】
フラボノイドは、フラボン、フラボノール、イソフラボン、フラバノール、フラバノン、アントシアニジン、及びこれらの混合物から選択されうる。
【0071】
本発明のために使用することができるフラボノイドの中でも、アピゲニン、アピイン、アピゲトリン、ビテキシン、クリシン、トリンギン、ルテオリン、オリエンチン、ガランギン、ケルセチン、イソケルセチン、ルチン、グルコシルルチン、ケルシトリン、イソケルシトリン、ケンペロール、アストラガリン、ケンペリトリン、ロビニン、ミリセチン、ダイゼイン、ダイジン、ゲニステイン、ゲニステイン、グリシテイン、グリシチン、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカテキン、テアフラビン、ナリンゲニン、ナリルチン、ナリンギン、ヘスペレチン、ヘスペリジン、グルコシルヘスペリジン、アントシアニジン、アントシアニン、シアニジン、シアニン、デルフィニジン、デルフィニン、ペラルゴニジン、及びペラルゴニンを挙げることができる。
【0072】
使用できるある特定のポリフェノールは、植物中に存在し、その中から公知の方法で抽出できる。茶葉(チャノキ(Camellia sinensis)又はヤブツバキ(Camellia japonica))からの抽出物を使用することができる。特に、Taiyo社によりSUNPHENON(登録商標)の名称で販売されている緑茶抽出物が挙げられ、これはとりわけフラボノイドを含有する。
【0073】
ポリフェノールとして、QINGDAO TAITONG PHARMACEUTICAL社により名称ALPHA GLUCOSYL RUTINで販売されている、グルコシルルチンとルチンとの混合物を使用することができる。
【0074】
使用することができるポリフェノールの中でも、カルノシン酸及びカルノソール等のポリフェノールを挙げることもでき、これらは、例えばローズマリーから、抽出に続く蒸留(Changら、JOSC、第61巻、第6号、1984年6月)によるか、又はEP-A-307,626に記載されているように、ヘキサン等の非極性溶媒を使用して抽出して臭気物質を除去した後、エタノール等の極性溶媒によって抽出することによるかのいずれかで、抽出することができる。
【0075】
ポリフェノールはまた、式(III)の(2,5-ジヒドロキシフェニル)アルキレンカルボン酸及びその誘導体(とりわけ、エステル及びアミド):
【0076】
【化4】
【0077】
(式中、
R1"は、-O-Alk、OH又は-N(r')(r")を表し、Alkは、1つ若しくは複数のヒドロキシル若しくはアルコキシ基によって任意選択で置換されている直鎖状若しくは分枝状C1~C20アルキル、又はC2~C20アルケニルを示し、
r'及びr"は、独立して、H、C1~C20アルキル、C2~C6ヒドロキシアルキル又はC3~C6ポリヒドロキシアルキルを表すか、或いは代替的にr'及びr"は、これらが結合している窒素原子と一緒になって複素環を形成し、
rは、-(CH2)r-COR1鎖が最大21個の炭素原子を含有するような、ゼロを含む数であり、
R2"及びR3"は、独立して、H又はC1~C4アルキルを表し、加えて、R2"は、C1~C4アルコキシを表すこともできる)
から選択してもよい。
【0078】
式(III)の化合物は公知であるか、又は公知の方法、例えば特許FR-2,400,358及びFR-2,400,359に記載のものと同様の方法に従って調製することができる。
【0079】
ポリフェノールはまた、コーヒー酸のエステル又はアミドから選択してもよい。
【0080】
コーヒー酸のエステルの中でも、とりわけ、式(IV):
【0081】
【化5】
【0082】
(式中、
Zは、C1~C8アルキル、例えばメチル、又はフィトールの残基を表す)
の化合物を挙げることができる。
【0083】
コーヒー酸のアミドの中でも、とりわけ、式(V):
【0084】
【化6】
【0085】
(式中、
Z'は、C1~C8、特にC6~C8アルキルを表す)
の化合物を挙げることができる。
【0086】
式(IV)又は(V)の化合物は、公知であるか、又は公知の方法に従って調製することができる。
【0087】
(b)化合物は、
ケルセチン、イソケルセチン、ルチン、グルコシルルチン、及びこれらの混合物
からなる群から選択されうる。
【0088】
本発明による組成物中の(b)化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でありうる。
【0089】
その一方で、本発明による組成物中の(b)化合物の量は、組成物の総質量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下でありうる。
【0090】
本発明による組成物中の(b)化合物の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~3質量%、より好ましくは0.1質量%~2質量%の範囲内でありうる。
【0091】
(親水性抗酸化剤)
本発明の組成物は、(c)少なくとも1種の、成分(b)以外の親水性抗酸化剤を含む。単一のタイプの親水性抗酸化剤を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプの親水性抗酸化剤を組み合わせて使用してもよい。
【0092】
(c)少なくとも1種の親水性抗酸化剤は、(b)10mmの光路長に沿った290~420nmの波長を有する光に対して10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下の透過率を有する溶液を提供することができる化合物であって、溶液中の化合物の濃度が、溶液の総質量に対して0.9質量%である、化合物とは異なる。
【0093】
(c)親水性抗酸化剤は、本発明の連続相に存在しうる。
【0094】
「抗酸化剤」という用語は、ここでは、フリーラジカルが、ケラチン質物質に見られるもののような分子に酸化をもたらすことを防止する、化学化合物、酵素又は他の有機分子を指す。抗酸化剤は、酸化剤と反応することによって、このような分子が損なわれることから防護することができる。
【0095】
(c)抗酸化剤は親水性である。「親水性」という用語は、ここでは、水溶性である物質を意味する。「水溶性」という用語は、ここでは、室温(25℃)且つ大気圧(105Pa)下で、100mLの水中に、0.1g以上、1g以上、又は10g以上の量が溶解することができる物質を意味する。
【0096】
親水性抗酸化剤は、天然及び合成抗酸化剤、好ましくは天然抗酸化剤から選択されうる。
【0097】
(c)親水性抗酸化剤の例としては、限定するものではないが、アスコルビン酸及びその誘導体、ヒドロキシアセトフェノン、ジヒドロカロン(dihydrochalone)、PCA亜鉛、バイカリン、フェルラ酸、マツ樹皮抽出物並びにポリダチンが挙げられる。好ましくは、(c)親水性抗酸化剤は、天然抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、ジヒドロカロン、バイカリン、フェルラ酸、マツ樹皮抽出物及びポリダチンから選択される。
【0098】
アスコルビン酸は、ビタミンCとしても知られ、美容活性成分として公知である。アスコルビン酸は、コラーゲンの合成を刺激し、メラニンを低減する機能を有するため、ケラチン質物質、特に皮膚における抗老化、白色化及び/又は抗皺成分として使用される。アスコルビン酸は、一般にL-アスコルビン酸を意味する。
【0099】
アスコルビン酸は、好ましくはL-アスコルビン酸又はビタミンCである。その構造は、次式によって表される。
【0100】
【化7】
【0101】
アスコルビン酸の誘導体は、アスコルビン酸の塩であってもよい。アスコルビン酸の塩は、好ましくは医薬品として許容される塩である。アスコルビン酸の塩としては、限定するものではないが、有機塩基との塩(例えば、第三級アミンとの塩、例えば、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩及びピリジン塩、塩基性アンモニウム塩、例えばアルギニン等)、並びに無機塩基との塩(例えば、アルカリ金属塩、例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム塩及びマグネシウム塩、アルミニウム塩等)等が挙げられる。
【0102】
光、熱及び水性媒体等のある特定の環境パラメーターに非常に高感度となる化学的構造(α-ケトラクトン)のために、アスコルビン酸誘導体は、アスコルビン酸の糖エステル又はリン酸化アスコルビン酸の金属塩の形態において使用することが有利でありうる。
【0103】
本発明に使用されうるアスコルビン酸の糖エステルは、とりわけ、アスコルビン酸のグリコシル、マンノシル、フルクトシル、フコシル、ガラクトシル、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルムラミン酸誘導体、及びこれらの混合物、より特定的には、アスコルビル-2グルコシド、又はL-アスコルビン酸の2-O-α-Dグルコピラノシル、又はL-アスコルビン酸の6-O-Dガラクトピラノシルである。後半の化合物及びこれらを調製するための方法は、特に、文献EP-A-487404、EP-A-425066及び特開平05-213736に記載されている。
【0104】
この部分について、リン酸化アスコルビン酸の金属塩は、リン酸アスコルビルアルカリ金属塩、リン酸アスコルビルアルカリ土類金属塩、及びリン酸アスコルビル遷移金属塩から選択されうる。
【0105】
アスコルビン酸の誘導体は、アスコルビン酸又はリン酸化アスコルビン酸の塩、例えば、とりわけ、アスコルビン酸ナトリウム、リン酸アスコルビルナトリウム若しくはリン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビン酸の酢酸エステル、又は糖(saccharide)エステル及びとりわけグリコシルアスコルビン酸等を含む、アスコルビン酸の糖(sugar)エステル等から選択されることが好ましいことがある。
【0106】
好ましい一実施形態では、(c)抗酸化剤は、アスコルビン酸、その塩及びこれらの組み合わせから選択される。
【0107】
本発明による組成物中の(c)親水性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上でありうる。
【0108】
その一方で、本発明による組成物中の(c)親水性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下でありうる。
【0109】
本発明による組成物中の(c)親水性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、1質量%~30質量%、好ましくは5質量%~20質量%、より好ましくは10質量%~15質量%の範囲内でありうる。
【0110】
(カチオン性ポリマー)
本発明による組成物は、(d)少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含む。単一のタイプのカチオン性ポリマーを使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのカチオン性ポリマーを組み合わせて使用してもよい。
【0111】
(d)カチオン性ポリマーは、本発明の連続相に存在しうる。
【0112】
カチオン性ポリマーは、正の電荷密度を有する。カチオン性ポリマーの電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05~15meq/g、より好ましくは0.1~10meq/gでありうる。
【0113】
カチオン性ポリマーの分子量は、1000以上、好ましくは50000以上、より好ましくは100000以上、よりいっそう好ましくは1000000以上でありうる。
【0114】
本明細書に別段の定義がない限り、「分子量」は数平均分子量を意味する。
【0115】
カチオン性ポリマーは、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基及びピリジル基からなる群から選択される、少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有してもよい。(第一級)「アミノ基」という用語は、ここでは、-NH2基を意味する。
【0116】
カチオン性ポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。「コポリマー」という用語は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、3種類以上のモノマーから得られるコポリマー、例えば3種類のモノマーから得られるターポリマーとの両方を意味すると理解される。
【0117】
カチオン性ポリマーは、天然及び合成カチオン性ポリマーから選択されうる。カチオン性ポリマーの非限定的な例は、以下の通りである。
【0118】
(1)アクリル酸又はメタクリル酸のエステル及びアミドに由来し、次式:
【0119】
【化8】
【0120】
(式中、
R1及びR2は、同一であっても異なっていてもよく、水素、及び1~6個の炭素原子を含むアルキル基、例えばメチル基及びエチル基から選択され、
R3は、同一であっても異なっていてもよく、水素及びCH3から選択され、
記号Aは、同一であっても異なっていてもよく、1~6個の炭素原子、例えば2~3個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基、及び1~4個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基から選択され、
R4、R5及びR6は、同一であっても異なっていてもよく、1~18個の炭素原子を含むアルキル基、及びベンジル基、及び少なくとも1つの実施形態では、1~6個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、
Xは、無機又は有機酸に由来するアニオン、例えば、メト硫酸アニオン並びにハロゲン化物イオン、例えば、塩化物イオン及び臭化物イオンである)
の単位から選択される少なくとも1つの単位を含む、ホモポリマー及びコポリマー。
【0121】
ファミリー(1)のコポリマーはまた、コモノマーに由来する少なくとも1つの単位も含んでよく、これは、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、窒素原子が(C1~C4)低級アルキル基で置換されているアクリルアミド及びメタクリルアミド、アクリル酸又はメタクリル酸及びそれらのエステルに由来する基、ビニルラクタム、例えばビニルピロリドン及びビニルカプロラクタム、並びにビニルエステルから選択されうる。
【0122】
ファミリー(1)のコポリマーの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
アクリルアミドと、硫酸ジメチル又はハロゲン化ジメチルで第四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルとのコポリマー、
アクリルアミドとメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドとのコポリマー、例えば欧州特許出願第0080976号に記載されているもの、
アクリルアミドとメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメトサルフェートとのコポリマー、
第四級化又は非第四級化ビニルピロリドン/アクリル酸又はメタクリル酸ジアルキルアミノアルキルコポリマー、例えば仏国特許第2077143号及び同第2393573号に記載されているもの、
メタクリル酸ジメチルアミノエチル/ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドンターポリマー、ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピルジメチルアミンコポリマー、第四級化ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドコポリマー、並びに
架橋メタクリロイルオキシ(C1~C4)アルキルトリ(C1~C4)アルキルアンモニウム塩ポリマー、例えば、塩化メチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルを単独重合させ、又はアクリルアミドと、塩化メチルで第四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルとを共重合させ、その単独重合又は共重合に続いて、オレフィン性不飽和を含有する化合物、例えばメチレンビスアクリルアミドで架橋することによって、得られるポリマー。
【0123】
(2)ピペラジニル単位と、酸素、硫黄、窒素、芳香環及び複素環式環から選択される少なくとも1つの要素により任意選択で割り込まれた直鎖又は分枝鎖を含む二価のアルキレン又はヒドロキシアルキレン基とを含むポリマー、並びにまたこれらのポリマーの酸化及び/又は第四級化生成物。このようなポリマーは、例えば仏国特許第2162025号及び同第2280361号に記載されている。
【0124】
(3)例えば酸性化合物をポリアミンと重縮合させることによって調製される水溶性ポリアミノアミドであって、これらのポリアミノアミドは、エピハロヒドリン;ジエポキシド;二無水物;不飽和二無水物;ビス不飽和誘導体;ビスハロヒドリン;ビスアゼチジニウム;ビスハロアシル(acyi)ジアミン;ビスアルキルハロゲン化物;ビスハロヒドリン、ビスアゼチジニウム、ビスハロアシルジアミン、ビスアルキルハロゲン化物、エピハロヒドリン、ジエポキシド及びビス不飽和誘導体から選択される要素と反応性である二官能性化合物の反応から得られるオリゴマーから選択される要素で架橋されている場合があり;その架橋剤は、ポリアミノアミドのアミン基1つ当たり0.025~0.35molの範囲内の量で使用され;これらのポリアミノアミドは、任意選択でアルキル化されているか、又は少なくとも1つの第三級アミン官能基を含む場合、第四級化されていてもよい、水溶性ポリアミノアミド。このようなポリマーは、例えば仏国特許第2252840号及び同第2368508号に記載されている。
【0125】
(4)ポリアルキレンポリアミンをポリカルボン酸と縮合させ、続いて二官能性作用剤でアルキル化することから得られるポリアミノアミド誘導体、例えば、アルキル基が1~4個の炭素原子を含み、例えばメチル、エチル及びプロピル基であり、アルキレン基が1~4個の炭素原子を含む、例えばエチレン基である、アジピン酸/ジアルキルアミノヒドロキシアルキルジアルキレントリアミンポリマー。このようなポリマーは、例えば仏国特許第1583363号に記載されている。少なくとも1つの実施形態では、これらの誘導体は、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンポリマーから選択されうる。
【0126】
(5)2つの第一級アミン基と少なくとも1つの第二級アミン基とを含むポリアルキレンポリアミンを、ジグリコール酸及び3~8個の炭素原子を含む飽和脂肪族ジカルボン酸から選択されるジカルボン酸と反応させることによって得られるポリマー。ポリアルキレンポリアミンのジカルボン酸に対するモル比は、0.8:1~1.4:1の範囲内であってよく、それから得られるポリアミノアミドをエピクロロヒドリンと、エピクロロヒドリンの、ポリアミノアミドの第二級アミン基に対するモル比が0.5:1~1.8:1の範囲内で反応させる。このようなポリマーは、例えば、米国特許第3,227,615号及び同第2,961,347号に記載されている。
【0127】
(6)アルキルジアリルアミンのシクロポリマー、及びジアルキルジアリル-アンモニウムのシクロポリマー、例えば、鎖の主要構成要素として、式(Ia)及び(Ib):
【0128】
【化9】
【0129】
(式中、
k及びtは、同一であっても異なっていてもよく、0又は1に等しく、和k+tは1に等しく、
R12は、水素及びメチル基から選択され、
R10及びR11は、同一であっても異なっていてもよく、1~6個の炭素原子を含むアルキル基、アルキル基が例えば1~5個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基、及び低級(C1~C4)アミドアルキル基から選択され、又はR10及びR11は、これらが結合している窒素原子と一緒になって、複素環式基、例えばピペリジニル及びモルホリニルを形成してもよく、
Y'は、アニオン、例えば臭化物イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、ホウ酸イオン、クエン酸イオン、酒石酸イオン、重硫酸イオン、亜硫酸水素イオン、硫酸イオン及びリン酸イオンである)
の単位から選択される少なくとも1つの単位を含む、ホモポリマー及びコポリマー。これらのポリマーは、例えば仏国特許第2080759号及びその追加特許第2190406号に記載されている。
【0130】
一実施形態では、R10及びR11は、同一であっても異なっていてもよく、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択される。
【0131】
このようなポリマーの例としては、限定するものではないが、(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、例えばCALGON社により名称「MERQUAT(登録商標) 100」で販売されているジメチル(methyi)ジアリルアンモニウムクロリドホモポリマー(及び低質量平均分子量のそのホモログ)、並びに名称「MERQUAT(登録商標) 550」で販売されているジアリルジメチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドとのコポリマーが挙げられる。
【0132】
式(II):
【0133】
【化10】
【0134】
{式中、
R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、1~20個の炭素原子を含む脂肪族、脂環式及びアリール脂肪族基、並びに低級ヒドロキシアルキル脂肪族基から選択され、或いは、R13、R14、R15及びR16は、これらが結合している窒素原子と一緒になって又は別々に、窒素以外の第2のヘテロ原子を任意選択で含む複素環を形成してもよく、或いは、R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、ニトリル基、エステル基、アシル基、アミド基、-CO-O-R17-E基及び-CO-NH-R17-E基[式中、R17はアルキレン基であり、Eは第四級アンモニウム基である]から選択される少なくとも1つの基で置換されている直鎖状又は分枝状C1~C6アルキル基から選択され、
A1及びB1は、同一であっても異なっていてもよく、2~20個の炭素原子を含むポリメチレン基から選択され、このポリメチレン基は、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和であってよく、且つこのポリメチレン基は、芳香環、酸素、硫黄、スルホキシド基、スルホン基、ジスルフィド基、アミノ基、アルキルアミノ基、ヒドロキシル基、第四級アンモニウム基、ウレイド基、アミド基及びエステル基から選択される少なくとも1つの要素を、主鎖中に、連結されて又は挿入されて含んでもよく、
X-は、無機酸又は有機酸に由来するアニオンであり;
A1、R13及びR15は、これらが結合している2個の窒素原子と一緒になってピペラジン環を形成してもよく;
A1が、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和のアルキレン又はヒドロキシアルキレン基から選択される場合、B1は、
-(CH2)n--CO-E'-OC-(CH2)n-
[式中、E'は、
a)式-O-Z-O-(式中、Zは、直鎖状又は分枝状炭化水素系基、及び次式:
-(CH2-CH2-O)x-CH2-CH2-
-[CH2-CH(CH3)-O]y-CH2-CH(CH3)-
(式中、x及びyは、同一であっても異なっていてもよく、定義された独自の重合度を表す1~4の範囲内の整数、及び平均重合度を表す1~4の範囲内の数から選択される)
の基から選択される)
のグリコール残基、
b)ビス-第二級ジアミン残基、例えばピペラジン誘導体、
c)式-NH-Y-NH- (式中、Yは、直鎖状又は分枝状炭化水素系基及び二価基-CH2-CH2-S-S-CH2-CH2-から選択される)
のビス-第一級ジアミン残基、並びに
d)式-NH-CO-NH-のウレイレン基
から選択される]
から選択されうる}
の少なくとも1つの繰り返し単位を含む、第四級ジアンモニウムポリマー。
【0135】
少なくとも1つの実施形態では、X-は、アニオン、例えば塩化物イオン又は臭化物イオンである。
【0136】
このタイプのポリマーは、例えば、仏国特許第2320330号、同第2270846号、同第2316271号、同第2336434号及び同第2413907号、並びに米国特許第2,273,780号、同第2,375,853号、同第2,388,614号、同第2,454,547号、同第3,206,462号、同第2,261,002号、同第2,271,378号、同第3,874,870号、同第4,001,432号、同第3,929,990号、同第3,966,904号、同第4,005,193号、同第4,025,617号、同第4,025,627号、同第4,025,653号、同第4,026,945号及び同第4,027,020号に記載されている。
【0137】
このようなポリマーの非限定的な例としては、式(III):
【0138】
【化11】
【0139】
(式中、
R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、1~4個の炭素原子を含むアルキル基及びヒドロキシアルキル基から選択され、n及びpは、同一であっても異なっていてもよく、2~20の範囲内の整数であり、X-は、無機又は有機酸に由来するアニオンである)
の少なくとも1つの繰り返し単位を含むものが挙げられる。
【0140】
(7)式(IV):
【0141】
【化12】
【0142】
(式中、
R18、R19、R20及びR21は、同一であっても異なっていてもよく、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、β-ヒドロキシエチル基、β-ヒドロキシプロピル基、-CH2CH2(OCH2CH2)pOH基(式中、pは、0~6の範囲内の整数から選択される)から選択され、但し、R18、R19、R20及びR21が同時に水素であることはなく、
r及びsは、同一であっても異なっていてもよく、1~6の範囲内の整数から選択され、
qは、0~34の範囲内の整数から選択され、
X-は、アニオン、例えばハロゲン化物イオンであり、
Aは、ジハライド及び-CH2-CH2-O-CH2-CH2-の基から選択される)
の単位を含むポリ第四級アンモニウムポリマー。
【0143】
このような化合物は、例えば欧州特許出願第0122324号に記載されている。
【0144】
(8)ビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの第四級ポリマー。
【0145】
好適なカチオン性ポリマーの他の例としては、限定するものではないが、カチオン性タンパク質及びカチオン性タンパク質加水分解物、ポリアルキレンイミン、例えばポリエチレンイミン、ビニルピリジン単位及びビニルピリジニウム単位から選択される単位を含むポリマー、ポリアミンとエピクロロヒドリンとの縮合物、第四級ポリウレイレン、並びにキチン誘導体が挙げられる。
【0146】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1種のカチオン性ポリマーは、第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体、例えばUNION CARBIDE CORPORATION社により名称「JR 400」で販売されている製品、カチオン性シクロポリマー、例えばCALGON社により名称MERQUAT(登録商標) 100、MERQUAT(登録商標) 550及びMERQUAT(登録商標) Sで販売されているジメチルジアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー及びコポリマー、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウム塩で修飾されたグアーガム、並びにビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの第四級ポリマーから選択される。
【0147】
(9)ポリアミン
カチオン性ポリマーとして、複数のアミノ基を有する、ホモポリマー又はコポリマーであってもよい、(コ)ポリアミンを使用することも可能である。アミノ基は、第一級、第二級、第三級又は第四級アミノ基であってもよい。アミノ基は、(コ)ポリアミンのポリマー骨格中に、又は存在する場合はペンダント基中に存在しうる。
【0148】
(コ)ポリアミンの例として、キトサン、(コ)ポリアリルアミン、(コ)ポリビニルアミン、(コ)ポリアニリン、(コ)ポリビニルイミダゾール、(コ)ポリジメチルアミノエチレンメタクリレート、(コ)ポリビニルピリジン、例えば(コ)ポリ-1-メチル-2-ビニルピリジン、(コ)ポリイミン、例えば(コ)ポリエチレンイミン、(コ)ポリピリジン、例えば(コ)ポリ(第四級ピリジン)、(コ)ポリビグアニド、例えば(コ)ポリアミノプロピルビグアニド、(コ)ポリリジン、(コ)ポリオルニチン、(コ)ポリアルギニン、(コ)ポリヒスチジン、アミノデキストラン、アミノセルロース、アミノ(コ)ポリビニルアセタール、及びこれらの塩を挙げることができる。
【0149】
(コ)ポリアミンとして、(コ)ポリリジンを使用することが好ましい。ポリリジンは、周知である。ポリリジンは、細菌発酵によって生成することができるL-リジンの天然ホモポリマーでありうる。例えば、ポリリジンは、食品中の天然保存料として典型的に使用されるε-ポリ-L-リジンでありうる。ポリリジンは、極性溶媒、例えば水、プロピレングリコール及びグリセロールに可溶性の高分子電解質である。ポリリジンは、ポリD-リジン及びポリL-リジン等の様々な形態で市販されている。ポリリジンは、塩及び/又は溶液の形態であってもよい。
【0150】
(10)カチオン性ポリアミノ酸
カチオン性ポリマーとして、複数のアミノ基及びカルボキシル基を有する、カチオン性ホモポリマー又はコポリマーでありうるカチオン性ポリアミノ酸を使用することも可能でありうる。アミノ基は、第一級、第二級、第三級又は第四級アミノ基であってもよい。アミノ基は、カチオン性ポリアミノ酸のポリマー骨格中に、又は存在する場合はペンダント基中に存在しうる。カルボキシル基は、存在する場合は、カチオン性ポリアミノ酸のペンダント基中に存在してもよい。
【0151】
カチオン性ポリアミノ酸の例として、カチオン化コラーゲン、カチオン化ゼラチン、ステアルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク質、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク質、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コンキオリンタンパク質、ステアルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク質、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解ダイズタンパク質、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク質等を挙げることができる。
【0152】
カチオン性ポリマーは、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー、及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えば(コ)ポリリジン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばカチオン化コラーゲン、並びにこれらの塩からなる群から選択されることが好ましいこともある。
【0153】
(11)カチオン性多糖
(d)本発明のカチオン性ポリマーは、好ましくは、カチオン性多糖から選択されうる。
【0154】
カチオン性多糖の電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05~15meq/g、より好ましくは0.1~10meq/gでありうる。
【0155】
カチオン性多糖の分子量は、1000以上、好ましくは50,000以上、より好ましくは100,000以上、よりいっそう好ましくは1,000,000以上でありうる。
【0156】
本明細書に別段の定義がない限り、「分子量」は、数平均分子量を意味する。
【0157】
カチオン性多糖は、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基及びピリジル基からなる群から選択される、少なくとも1つの正電荷を帯びることができる及び/又は正電荷を帯びた部分を有してもよい。(第一級)「アミノ基」という用語は、ここでは、-NH2基を意味する。(a)カチオン性多糖は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有することが好ましい。
【0158】
カチオン性多糖は、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。「コポリマー」という用語は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、3種類以上のモノマーから得られるコポリマー、例えば3種類のモノマーから得られるターポリマーとの両方を意味すると理解される。
【0159】
カチオン性多糖は、天然及び合成カチオン性多糖から選択されうる。
【0160】
カチオン性多糖は、カチオン性セルロースポリマーから選択されることが好ましい。
【0161】
本発明によれば、「カチオン性セルロースポリマー」は、カチオン性基、及び/又はカチオン性基にイオン化できる基を含有する、好ましくはアニオン性基、及び/又はアニオン性基にイオン化できる基を含有しない、任意の非ケイ素化(ケイ素原子を含まない)セルロースポリマーを示す。
【0162】
「セルロース」ポリマーという用語は、本発明によれば、構造中に少なくとも20個の、β-1,4結合によって結びついたグルコース残基鎖を有する任意の多糖化合物を示す。セルロースポリマーは、会合性であっても、すなわち、それらの構造中に少なくとも1種のC8~C30脂肪鎖を有してもよい。
【0163】
使用に好適なカチオン性セルロースポリマーは、好ましくは約5000から5.106の間、好ましくは約103から3.106の間の質量平均分子量(Mw)を有する。
【0164】
カチオン性セルロースポリマーの非限定的な例は、以下の通りである。
【0165】
(10-1)カチオン性セルロース誘導体、例えば第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体、例えば仏国特許第1492597号に記載されているもの、例えばUnion Carbide Corporation社により名称「JR」(JR 400、JR 125、JR 30M)又は「LR」(LR 400、LR 30M)で販売されているポリマー。これらのポリマーはまた、CTFA辞典において、トリメチルアンモニウム基で置換されているエポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースの第四級アンモニウムとして定義されている。
【0166】
(10-2)カチオン性セルロース誘導体、例えば第四級アンモニウムの水溶性モノマーをグラフトさせた、セルロースコポリマー及びセルロース誘導体、並びに例えば米国特許第4,131,576号に記載されているもの、例えば、ヒドロキシアルキルセルロース、例えば、メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム及びジメチルジアリルアンモニウム塩から選択される塩をグラフトさせた、例えば、ヒドロキシメチル-、ヒドロキシエチル-及びヒドロキシプロピルセルロース。これらのポリマーに相当する市販製品としては、例えば、National Starch社により名称「Celquat(登録商標) L 200」及び「Celquat(登録商標) H 100」で販売されている製品が挙げられる。
【0167】
(10-3)少なくとも1つの脂肪鎖を含む少なくとも1つの第四級アンモニウム基を有する、カチオン性セルロースポリマー。
少なくとも1つの直鎖状脂肪鎖を含む基によって修飾された第四級化セルロースの脂肪鎖は、直鎖状アルキル、直鎖状若しくは分枝状アリールアルキル、直鎖状アルキルアリール、好ましくは直鎖状アルキル(これらの基は、少なくとも8個の炭素原子、好ましくは8~30個の炭素原子、より好ましくは10~24個若しくは10~14個の炭素原子を含む)、又はこれらの混合物であってもよい。
【0168】
好ましくは、少なくとも1つの直鎖状脂肪鎖、例えば、直鎖状アルキル、直鎖状アリールアルキル、直鎖状アルキルアリール、好ましくは直鎖状アルキル(これらの基は、8個の炭素原子、特に8~30個の炭素原子、より好ましくは10~24個若しくは10~14個の炭素原子を含む)を含む基によって修飾された第四級化ヒドロキシエチルセルロース、又はこれらの混合物を挙げることができる。好ましくは、式(Ib):
【0169】
【化13】
【0170】
(式中、
- Rは、アンモニウム基RaRbRcN+-、Q-を表し、Ra、Rb、Rcは、同一であり又は異なり、水素原子、又は直鎖状、C1~C30、アルキル、好ましくはアルキルを表し、Q-は、アニオン性対イオン、例えばハロゲン化物、例えば塩化物イオン又は臭化物イオンを表し、
- R'は、アンモニウム基R'aR'bR'cN+-、Q'-を表し、R'a、R'b、R'cは、同一であり又は異なり、水素原子、又は直鎖状、C1~C30、アルキル、好ましくはアルキルを表し、Q'-は、アニオン性対イオン、例えばハロゲン化物、例えば塩化物イオン又は臭化物イオンを表し、好ましくはアルキル、
Ra、Rb、Rc、R'a、R'b、R'c基の少なくとも1つは、直鎖状、C8~C30、アルキルを表すことが理解され、
- n、x及びyは、同一であり又は異なり、1から10000の間の整数を表す)
のヒドロキシエチルセルロースを挙げることができる。
【0171】
好ましくは、式(Ib)において、Ra、Rb、Rc、R'a、R'b、R'c基の少なくとも1つは、直鎖状C8~C30アルキル、好ましくはC10~C24又はC10~C14を表し、特にドデシル基(C12)を挙げることができる。好ましくは、他の基は直鎖状C1~C4アルキル、特にメチルを表す。
【0172】
好ましくは、式(Ib)において、Ra、Rb、Rc、R'a、R'b、R'c基の1つのみが、直鎖状C8~C30アルキル、好ましくはC10~C24又はC10~C14を表し、特にドデシル基(C12)を挙げることができる。好ましくは、他の基はすべて、直鎖状C1~C4アルキル、特にメチルを表す。
【0173】
より好ましくは、Rは、-N+(CH3)3、Q'-及び-N+(C12H25)(CH3)2、Q-から選択される基、好ましくはN+(CH3)3、Q'-でありうる。
【0174】
より好ましくは、R'は、-N+(C12H25)(CH3)2、Q'-基でありうる。
【0175】
窒素の百分率は、ポリマー総質量に対して、0.1~10質量%、好ましくは0.2~5質量%、より好ましくは0.5~3質量%で変動することがある。
【0176】
特に、以下のINCI名を有するポリマー:
- ポリクオタニウム-24、例えば、AMERCHOL/DOW CHEMICAL社により販売されている製品QUATRISOFT LM 200(登録商標)、
- PG-ヒドロキシエチルセルロースココジモニウムクロリド、例えば製品CRODACEL QM(登録商標)、
- PG-ヒドロキシエチルセルロースラウリルジモニウムクロリド(C12アルキル)、例えば製品CRODACEL QL(登録商標)、及び
- PG-ヒドロキシエチルセルロースステアリルジモニウムクロリド(C18アルキル)、例えばCRODA社により販売されている製品CRODACEL QS(登録商標)
を挙げることができる。
【0177】
式(Ib)のヒドロキシエチルセルロース(式中、Rはトリメチルアンモニウムハロゲン化物塩を表し、R'はジメチルドデシルアンモニウムハロゲン化物塩を表し、好ましくは、Rは、トリメチルアンモニウムクロリドCl-、(CH3)3N+-を表し、R'は、ジメチルドデシルアンモニウムクロリドCl-、(CH3)2(C12H25)N+-を表す)も挙げることができる。このタイプのポリマーは、INCI名ポリクオタニウム-67で公知であり、市販製品として、AMERCHOL/DOW CHEMICAL社製のSOFTCAT POLYMER SL(登録商標)ポリマー、例えば、SL-100、SL-60、SL-30、SL-5及びSX-1300Xを挙げることができる。
【0178】
より詳細には、カチオン性セルロースポリマーは、トリメチルアンモニウムエポキシド及びラウリルジメチルアンモニウムエポキシドと反応させたヒドロキシエチルセルロース(INCI名ポリクオタニウム-67)から選択される。好ましくは、Amerchol社により名称Softcat Polymer SL-100又はSoftcat Polymer SX-1300Xで販売されている。
【0179】
(10-4)非セルロース系カチオン性多糖は、カチオン性ガム、特にカチオン性ガラクトマンナンガム(カチオン性グアー)、カチオン性デンプン、カチオン性ヒアルロン酸、キトサン及びデキストランヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドから選択されうる。
【0180】
「カチオン性ガラクトマンナンガム」という用語は、カチオン性基及び/又はカチオン性基にイオン化できる基を含有する任意のガラクトマンナンガムを示す。
【0181】
ガラクトマンナンは、ガラクトース及びマンノース単位で本質的に構成される多糖であり、マンノース単位は、1-4-グリコシド結合によって結合され、ガラクトース分枝は、マンノース単位への1-6架橋によって発生する。ガラクトース又はマンノース単位(すなわち糖単位)の各環は、化学反応に利用可能な3つのフリーのヒドロキシル基を有する。ガラクトマンナンは一般に、マメ科植物、例えばグアー又はイナゴマメの穀粒の内胚に見出される。
【0182】
好ましいカチオン性基は、第一級、第二級、第三級、及び/又は第四級アミン基を含むものから選択される。
【0183】
使用されるカチオン性ガラクトマンナンガムは一般に、約500から5×106の間、好ましくは約103から3×106の間の質量平均分子量を有する。
【0184】
本発明による使用に好適なカチオン性ガラクトマンナン群は、例えば、トリアルキル(C1~C4)アンモニウムカチオン性基を含むガムである。好ましくは、これらのガムのヒドロキシル官能基の数の2%~30%は、トリアルキルアンモニウムカチオン性基を有する。
【0185】
これらのトリアルキルアンモニウム基の中でも、非常に詳細には、トリメチルアンモニウム及びトリエチルアンモニウム基を挙げることができる。
【0186】
よりいっそう好ましくは、これらの基は、修飾ガラクトマンナンガムの総質量の5質量%~20質量%を占める。
【0187】
ガムは、例えば、グアーガム、カシアガム、カラヤガム、コンニャクガム、トラガカントガム、タラガム及びアカシアガムからなる群から選択されうる。
【0188】
これらのガラクトマンナンガム、特にカチオン性基によって修飾されたグアー由来のものは、それ自体が既に公知の製品であり、例えば、米国特許第3589578号及び同第4031307号に記載されている。
【0189】
本発明によれば、カチオン性ガラクトマンナンガムは、好ましくは、ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウム基を含むグアーガム、より好ましくはヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム基を含むグアーガム、すなわち、例えば2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドで修飾されたグアーガムである。
【0190】
これらのガラクトマンナンガム、特にカチオン性基によって修飾されたグアー由来のものは、それ自体が既に公知の製品であり、例えば、米国特許第3589578号及び同第4031307号に記載されている。このような製品は、他には、特にRhodia社により商標名Jaguar EXCEL、Jaguar C13 S、Jaguar C15、Jaguar C17及びJaguar C162(グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド)で、Degussa社により名称Amilan(登録商標)Guar(グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド)で、並びにAqualon社により名称N-Hance(登録商標)3000(グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド)で販売されている。グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドのヒドロキシプロピル誘導体であるヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドは、Rhodia Inc.社からJaguar(商標)の商標名シリーズで市販されている。カシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドは、Lubrizol Advanced Materials, Inc.社からSensomer(商標) CT-250及びSensomer(商標) CT-400の商標で、又はAshland Inc.社からClearHance(商標)で市販されている。
【0191】
カチオン性デンプンの例として、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウム塩(例えば塩化物)で修飾されたデンプン、例えば、INCI名によりデンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドとして知られ、Ondeo社から名称SENSOMER Cl-50、又はIngredion社から名称Pencare(商標) DP 1015で販売されている製品を挙げることができる。
【0192】
本発明の好ましい実施形態では、(d)カチオン性ポリマーは、カチオン性多糖、好ましくは非セルロース系カチオン性多糖、より好ましくはカチオン性ガム、特にカチオン性ガラクトマンナンガムから選択される。
【0193】
本発明による組成物中の(d)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上でありうる。
【0194】
本発明による組成物中の(d)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下でありうる。
【0195】
本発明による組成物中の(d)カチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~10質量%、好ましくは0.05質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~2質量%の範囲内でありうる。
【0196】
分散相
本発明による組成物は、複数の分散相を含む。分散相の各々は、沈殿又は浮上することなく、組成物中で良好に分散している。加えて、本発明の分散相は油、水等の液滴ではないため、本発明による分散組成物はエマルションではない。
【0197】
分散相の形状は、特に限定されない。分散相は、結晶形(例えば、層状、立方晶、六方晶、斜方晶等)にかかわりなく、任意の形状のものであってよく、小板形状、球状、又は長楕円形であってもよい。
【0198】
分散相のサイズは、特に限定されない。例えば、分散相の数平均一次径は、5nm~10mm、好ましくは10nm~5mmの範囲内である。
【0199】
本発明の目的上、「一次粒径」という用語は、個々の粒子における直径方向の反対にある2つの点の間で測定することができる最大寸法を意味する。「数平均径」という用語は、集団の半分までの統計的粒径分布によって与えられる直径を意味し、D50と称される。分散相のサイズは、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)、光学顕微鏡又はレーザー回折粒径分布分析装置で観察することによって測定することができる。
【0200】
本発明の分散相は、カプセル又は無機充填剤を含んでもよく、これらからなってもよい。「充填剤」という用語は、組成物が製造される温度にかかわりなく、組成物の媒体に不溶性である、任意の形状の鉱物又は天然粒子を意味すると理解されるべきである。
【0201】
好ましい一実施形態では連続相が水性連続相でありうるため、好ましい一実施形態では、分散相は水に不溶性であるか、又は水中で形状を維持する。本発明の目的上、「水に不溶性」という用語は、ここでは、室温(25℃)且つ大気圧(105Pa)において、水の総質量に対して0.1質量%未満、特に0.01質量%未満の濃度で水に溶解性の材料を指す。
【0202】
カプセル
「カプセル」という用語は、ここでは、「シェル」又は「外層」とも呼ばれる1つ又は複数の層又は被膜をベースとする被覆によって包囲された、「内部コア」とも呼ばれるコアを含む粒子又はビーズを意味することを意図している。シェルは、1つの層又は2つ以上の層を含んでもよい。
【0203】
カプセルの形態は特に限定されない。例えば、カプセルは球体の形態であってもよい。
【0204】
カプセルは、1つのコアと、コアを包囲する少なくとも1つのシェルとを含むことが好ましい。
【0205】
シェルにおける層又は被膜の数は限定されないが、シェルが1つの層又は被膜を含むことが好ましいことがある。
【0206】
本発明の一実施形態では、シェルは、(d)カチオン性ポリマー以外の少なくとも1種の多糖を含んでもよい。言い換えれば、シェルにおける層又は被膜は、(d)カチオン性ポリマー以外の少なくとも1種の多糖で形成されてもよい。
【0207】
カプセルは、コアを包囲することによって調製することができ、これは、任意の従来の方法によって実行することができる。例えば、コア形成組成物とシェル形成組成物とを同時押出することができる。この場合、押し出されたコア形成組成物はコアを形成することができ、シェル形成組成物はシェルを形成することができる。同時押出されたコア/シェル構造は、カプセルに相当するコア/シェル粒子に変換することができる。
【0208】
カプセルのサイズは、特に限定されない。例えば、カプセルの数平均一次径は、100μm~10mm、好ましくは250μm~7mm、より優先的には500μm~5mm、よりいっそう好ましくは750μm~3mm、特に1mm~2mmの範囲内である。
【0209】
無機充填剤
無機充填剤は、好ましくは、無機UV遮蔽剤粉末及び無機着色充填剤から選択されうる。
【0210】
- 無機UV遮蔽剤粉末
本発明のために使用される無機UV遮蔽剤粉末は、UV-A及び/又はUV-B領域で、好ましくはUV-B領域で、又はUV-A領域とUV-B領域とで有効でありうる。本発明による粉末状化粧用組成物は、無機UV遮蔽剤粉末以外に、更なる追加のUV遮蔽剤を含むことができる。無機UV遮蔽剤粉末の活性UV遮蔽領域と、追加のUV遮蔽剤の活性UV遮蔽領域とは、包括的なUV防護を提供するように互いに相補的であることが好ましい。例えば、無機UV遮蔽剤粉末が少なくともUV-B領域で活性であり、追加のUV遮蔽剤が少なくともUV-A領域で活性であることが好ましい。無機UV遮蔽剤粉末は、親水性及び/又は親油性とすることができる。
【0211】
無機UV遮蔽剤粉末は、200nm未満、好ましくは180nm未満、より好ましくは5nm~180nm、よりいっそう好ましくは5nm~150nm、なおもより好ましくは10nm~100nmの平均一次粒径を有する微細粒子の形態であってもよい。平均一次粒径は、ここでは、集団の半分までの統計的粒径分布によって与えられる数平均径平均直径を意味し、D50と称される。例えば、無機UV遮蔽剤粉末のこのような数平均径平均直径は、SEM(走査型電子顕微鏡)及び/又はTEM(透過型電子顕微鏡)によって測定することができる。
【0212】
無機UV遮蔽剤粉末は、金属酸化物、例えば酸化チタン(ルチル及び又はアナターゼの形態にある、非晶質又は結晶性)、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム又は酸化セリウムから選択してもよく、これらはすべて周知のUV光防護剤である。好ましくは、無機UV遮蔽剤粉末は、二酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化セリウムからなる群から選択される。
【0213】
無機UV遮蔽剤粉末は、被覆されていても、されていなくてもよい。被覆は特に限定されず、任意の従来の被覆が使用されうる。例えば、被覆は、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、シリコーン、シラン類、脂肪酸又はその塩(例えばナトリウム、カリウム、亜鉛、鉄若しくはアルミニウム塩)、脂肪族アルコール、レシチン、アミノ酸、多糖、タンパク質、アルカノールアミン、ワックス、例えばビーズワックス、(メタ)アクリル系ポリマー、有機UV遮蔽剤及び(ペル)フルオロ化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含んでもよい。
【0214】
- 無機着色充填剤
「無機着色充填剤」という用語は、ここでは、無機顔料、真珠光沢剤及び反射性粒子、並びにこれらの混合物を包含すると理解されるべきである。
【0215】
「顔料」という用語は、生理的媒体に不溶であり、組成物を着色することが意図される、任意の形状の白色又は有色粒子を意味するものと理解されるべきである。
【0216】
挙げることができる顔料の中には、任意選択で表面処理された二酸化チタン、例えばルチルタイプの色素性二酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化セリウム、及び更に酸化亜鉛、酸化鉄(黒色、黄色若しくは赤色)又は酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物及びフェリックブルー、並びに金属粉末、例えばアルミニウム粉末及び銅粉末がある。
【0217】
「真珠光沢剤」という用語は、虹色であってもなくてもよく、とりわけ、特定の軟体類によってその殻中で生成され、又はそうでなければ合成され、且つ光学干渉を介して色効果を有する、任意の形態の着色粒子の意味であると理解されるべきである。
【0218】
挙げることができる真珠光沢剤の例には、真珠光沢顔料、例えば酸化鉄で被覆されたチタンマイカ、オキシ塩化ビスマスで被覆されたマイカ、酸化クロムで被覆されたチタンマイカ、及びオキシ塩化ビスマスをベースとする真珠光沢顔料を含む。真珠光沢剤はまた、表面に金属酸化物及び/又は有機染料の少なくとも2つの連続層が重なっている、マイカの粒子であってもよい。真珠光沢剤は、より詳細には、黄、ピンク、赤、ブロンズ、オレンジ、褐色、金及び/又は銅の、色又は色の輝きを有しうる。
【0219】
「反射性粒子」という用語は、サイズ、構造、とりわけそれらをなす層の厚さ、並びに物理的及び化学的性質、並びに表面状態のために、入射光を反射できる粒子を示す。この反射は、適当な場合、メイクアップされる支持体に適用されると、組成物の表面又は混合物の表面において、輝いて見えることによって、肉眼で視認可能な、過度に明るい点、すなわち、環境と対比してより明るい点を生じるのに十分な強度を有することができる。
【0220】
反射性粒子は、それらを組み合わせた着色剤によって生じる着色効果を大幅には変えないように、より詳細には、カラーイールドの点でこの効果を最適化するように、選択することができる。
【0221】
反射性粒子は、それがどのような形態であれ、多層構造を有しても有しなくてもよく、多層構造の場合、例えば厚みが均一な、特に反射性物質の、少なくとも1つの層を有することができる。
【0222】
反射性粒子が多層構造を有しない場合、粒子は、例えば金属酸化物、とりわけ、合成によって得られる酸化チタン又は酸化鉄で構成することができる。
【0223】
反射性粒子が多層構造を有する場合、粒子は、例えば、少なくとも1つの反射性材料の層で、とりわけ少なくとも1種の金属又は金属性材料の層で、少なくとも部分的に被覆された天然又は合成基材、とりわけ合成基材を含むことができる。基材は、1種又は複数の有機及び/又は無機材料で作製されうる。
【0224】
より詳細には、基材は、ガラス、セラミック、グラファイト、金属酸化物、アルミナ、シリカ、ケイ酸塩、とりわけアルミノケイ酸塩及びホウケイ酸塩、並びに合成マイカ、並びにこれらの混合物から選択することができ、この列挙は限定するものではない。
【0225】
反射性材料は、金属又は金属性材料の層を含んでもよい。
【0226】
重ねて、金属の層で被覆された鉱物性基材を含む反射性粒子の例として、銀で被覆されたホウケイ酸塩の基材を含む粒子も挙げることができる。
【0227】
金属性基材、例えば、銀、アルミニウム、鉄、クロム、ニッケル、モリブデン、金、銅、亜鉛、スズ、マンガン、鋼鉄、ブロンズ又はチタンを含む粒子もやはり使用することができ、前記基材は、少なくとも1種の金属酸化物、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化セリウム、酸化クロム又は酸化ケイ素、及びこれらの混合物の、少なくとも1つの層で被覆されている。
【0228】
本発明の一部の特定の実施形態では、分散相は、少なくとも1種のカプセルを含む、又は少なくとも1種のカプセルからなる。
【0229】
更なる特定の実施形態では、(a)レチノイドはカプセル中に存在する。例えば、カプセルのコアが、(a)レチノイドを含んでもよい。(a)レチノイドのカプセル化によって、(a)レチノイドと(c)少なくとも1種の親水性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸との接触を防止又は低減することができ、本発明による組成物の色(特に明るさ)の変化を低減できる場合がある。したがって、カプセルは、本発明による組成物の色の発生(color evolution)を低減できうる。
【0230】
一部の実施形態では、必須成分(b)~(d)は、組成物の連続相に存在する。
【0231】
本発明による組成物中の分散相の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、よりいっそう好ましくは5質量%以上でありうる。
【0232】
その一方で、本発明による組成物中の分散相の量は、組成物の総質量に対して、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、よりいっそう好ましくは10質量%以下でありうる。
【0233】
本発明による組成物中の分散相の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~30質量%、好ましくは1質量%~20質量%、より好ましくは3質量%~15質量%、よりいっそう好ましくは5質量%~10質量%の範囲内でありうる。
【0234】
連続相
連続相は、本発明の複数の分散相のための分散媒とすることができる。したがって、連続相は、25℃且つ大気圧(760mmHg)下で液体の形態となることができる。
【0235】
連続相の形態は、特に限定されない。一般に、連続相は、室温(25℃)且つ大気圧(105Pa)において液体である。連続相は、例えば、溶液、水性溶液、ローション、乳液、クリーム、ジェル、液体ジェル、ペースト、美容液、懸濁液、分散体、流体、ミルク、エマルション(O/W又はW/O形態)等の様々な形態を取ることができる。
【0236】
本発明の連続相は、水性連続相にできることが好ましい。別の好ましい実施形態では、連続相は水性溶液とすることができる。
【0237】
本発明の一部の特定の実施形態では、本発明の連続相は、少量の油を含むか、又は油を非含有である。例えば、連続相は油を、連続相の総質量に対して、0質量%~5質量%、好ましくは0質量%~3質量%、より好ましくは0質量%~1質量%、特に0質量%~0.1質量%の量で含んでもよい。別の実施形態では、連続相は油を非含有である。
【0238】
本発明による組成物中の連続相の粘度は、特に限定されないが、一般に、例えば、25℃において4000~8000Pa・sの範囲内でありうる。本発明の目的上、粘度は、好ましくはコーンプレート又はパラレルプレートの形状を有する粘度計又はレオメータを用いて、25℃で測定することができる。
【0239】
(任意選択の成分)
組成物中の分散相及び連続相は、上に説明した必須成分(a)~(d)に加えて、任意選択の成分を含んでもよい。
【0240】
- 油
本発明による組成物は、少なくとも1種の油を含んでもよい。2種以上の油を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの油を使用しても、異なるタイプの油の組み合わせを使用してもよい。
【0241】
ここで、「油」は、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)において、液体又はペースト(非固体)の形態にある脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油として、化粧品において一般に使用されるものを、単独で、又はそれらの組み合わせで使用することができる。これらの油は、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0242】
油は分散相に存在しうる。一実施形態では、分散相は少なくとも1種の油を含む。
【0243】
油は、極性油から選択しても、非極性油から選択してもよい。
【0244】
「極性油」という用語は、ここでは、25℃において、分散相互作用に特徴的な溶解度パラメーターδdが16を超え、極性相互作用に特徴的な溶解度パラメーターδpが厳密に0を超える任意の親油性化合物を意味する。溶解度パラメーターδd及びδpは、ハンセン分類に従って定義される。
【0245】
ハンセン3次元溶解度空間の溶解度パラメーターの定義及び計算は、論文C.M. Hansen、「The three dimensional solubility parameters」、J. Paint Technol、39巻、105頁(1967年)に記載されている。
【0246】
このハンセン空間によれば、
δDは、分子の衝突中に誘起される双極子の形成から生じるロンドン分散力を特徴づけ、
δpは、永久双極子間のデバイ相互作用力、更に誘起双極子と永久双極子との間のケーソム相互作用力を特徴づけ、
δhは、特定の相互作用力(例えば、水素結合、酸/塩基、ドナー/アクセプター等)を特徴づけ、
δaは、δa=(δp 2h 1)1/2の等式によって決定される。パラメーターδp、δh、δd、及びδaは、(J/cm3)1/2で表される。
【0247】
極性油は、植物油又は動物油、例えば、トリグリセリド、エステル油、エーテル油及びこれらの混合物からなる群から、より好ましくは、エステル油、エーテル油及びこれらの混合物からなる群から、よりいっそう好ましくはエステル油から選択されることが好ましい場合がある。
【0248】
性油は、とりわけ、次の油から選択されうる:
- 炭化水素系極性油、例えばフィトステアリルエステル、例えば、オレイン酸フィトステアリル、イソステアリン酸フィトステアリル、及びグルタミン酸ラウロイル/オクチルドデシル/フィトステアリル(味の素株式会社、Eldew PS203)、グリセロールの脂肪酸エステルからなるトリグリセリド(特にその脂肪酸がC4~C36、とりわけC18~C36の範囲内の鎖長を有してもよく、これらの油は場合により、直鎖状若しくは分枝状であり、飽和若しくは不飽和であり;これらの油は、とりわけ、ヘプタン酸若しくはオクタン酸トリグリセリドであってもよい)、小麦胚芽油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ゴマ種子油(820.6g/mol)、トウモロコシ油、アプリコット油、ヒマシ油、シア油、アボカド油、オリーブ油、ダイズ油、スイートアーモンド油、ヤシ油、ナタネ油、綿実油、ヘーゼルナッツ油、マカダミア油、ホホバ油、アルファルファ油、ケシ油、パンプキン油、ペポカボチャ油、クロスグリ油、月見草油、キビ油、オオムギ油、キノア油、ライムギ油、ベニバナ油、ククイ油、パッションフラワー油、又はマスクローズ油;シアバター;或いはカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例えば、Stearineries Dubois社により販売されているもの、又はDynamit Nobel社により名称Miglyol810(登録商標)、812(登録商標)及び818(登録商標)で販売されているもの、
- 10~40個の炭素原子を含有する合成エーテル、例えばジカプリリルエーテル、
- 式RCOOR'(式中、RCOOは2~40個の炭素原子を含むカルボン酸残基を表し、R'は1~40個の炭素原子を含有する炭化水素系鎖を表す)の炭化水素系エステル、例えばオクタン酸セトステアリル、イソプロピルアルコールエステル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はパルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチル、ステアリン酸若しくはイソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、ステアリン酸オクチル、アジピン酸ジイソプロピル、ヘプタン酸エステル、とりわけヘプタン酸イソステアリル、アルコール若しくはポリアルコールのオクタン酸エステル、デカン酸エステル若しくはリシノール酸エステル、例えばジオクタン酸プロピレングリコール、オクタン酸セチル、オクタン酸トリデシル、4-ジヘプタン酸2-エチルヘキシル及びパルミチン酸2-エチルヘキシル、安息香酸アルキル、ジヘプタン酸ポリエチレングリコール、2-ジエチルヘキサン酸プロピレングリコール、並びにこれらの混合物、C12~C15アルコール安息香酸エステル、ラウリン酸ヘキシル、ネオペンタン酸エステル、例えばネオペンタン酸イソデシル、ネオペンタン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸イソステアリル及びネオペンタン酸2-オクチルドデシル、イソノナン酸エステル、例えばイソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル及びイソノナン酸オクチル、エルカ酸オレイル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、ステアリン酸イソセチル、ネオペンタン酸イソデシル、ベヘン酸イソステアリル、並びにミリスチン酸ミリスチル、
- 不飽和脂肪酸二量体及び/又は三量体とジオールとの縮合により得られるポリエステル、例えば特許出願FR0853634に記載されているもの、特に、例えばジリノール酸と1,4-ブタンジオールとの縮合により得られるポリエステル。この点に関しては、とりわけ、Biosynthis社により名称Viscoplast 14436H(INCI名:ジリノール酸/ブタンジオールコポリマー)で販売されているポリマー、又は他にはポリオールと二量体二酸とのコポリマー及びそのエステル、例えばHailuscent ISDAを挙げることができる、
- ポリオールエステル及びペンタエリスリトールエステル、例えばテトラヒドロキシステアリン酸/テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、
- 12~26個の炭素原子を含有する脂肪族アルコール、例えば、オクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール及びオレイルアルコール、
- C12~C22高級脂肪酸、例えば、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸、並びにこれらの混合物、
- 12~26個の炭素原子を含有する脂肪酸、例えばオレイン酸、
- 2つのアルキル鎖が場合により同一である又は異なる、炭酸ジアルキル、例えば、Cognis社により名称Cetiol CC(登録商標)で販売されている炭酸ジカプリリル、並びに
- 高分子量の、例えば400g/molから10000g/molの間の、特に650g/molから10000g/molの間の不揮発性油、例えば:
i)ビニルピロリドンコポリマー、例えば、ISP社により販売又は製造されているビニルピロリドン/1-ヘキサデセンコポリマー、Antaron V-216(MW = 7300g/mol)、
ii)エステル、例えば:
a)35~70個の範囲内の合計炭素数を有する直鎖状脂肪酸エステル、例えばテトラペラルゴン酸ペンタエリスリチル(MW = 697.05g/mol)、
b)ヒドロキシル化エステル、例えばトリイソステアリン酸ポリグリセロール-2(MW = 965.58g/mol)、
c)芳香族エステル、例えばトリメリト酸トリデシル(MW = 757.19g/mol)、C12~C15アルコール安息香酸エステル、安息香酸の2-フェニルエチルエステル及びサリチル酸ブチルオクチル、
d)C24~C28分枝状脂肪酸又は脂肪族アルコールのエステル、例えば、特許出願EP-A-0955039に記載されているもの、とりわけ、クエン酸トリイソアラキジル(MW = 1033.76g/mol)、テトライソノナン酸ペンタエリスリチル(MW = 697.05g/mol)、トリイソステアリン酸グリセリル(MW = 891.51g/mol)、トリス(2-デシル)テトラデカン酸グリセリル(MW = 1143.98g/mol)、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル(MW = 1202.02g/mol)、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2(MW = 1232.04g/mol)又は他にはテトラキス(2-デシル)テトラデカン酸ペンタエリスリチル(MW = 1538.66g/mol)、
e)二量体ジオールとモノカルボン酸又はジカルボン酸とのエステル及びポリエステル、例えば、二量体ジオールと脂肪酸とのエステル及び二量体ジオールと二量体ジカルボン酸とのエステル、例えば、日本精化株式会社により販売されているLusplan DD-DA5(登録商標)及びLusplan DD-DA7(登録商標)、並びに参照によりその内容が本出願に組み込まれる特許出願US2004-175338に記載されているもの、
- 並びにこれらの混合物。
【0249】
「極性炭化水素系油」という用語は、ここでは、炭素原子及び水素原子、並びに任意選択で酸素原子及び窒素原子から本質的に形成されているか、又は更にはこれらによって構成されているが、ケイ素原子もフッ素原子も含有しない極性油を意味する。これは、アルコール基、エステル基、エーテル基、カルボン酸基、アミン基及び/又はアミド基を含有してもよい。
【0250】
油は、7.0以下、より好ましくは6.5以下、よりいっそう好ましくは6.0以下のlog P値を有することが好ましい。油は、1.0以上、より好ましくは1.5以上、よりいっそう好ましくは2.0以上のlog P値を有することが好ましいこともある。したがって、油は、1.0~7.0、より好ましくは1.5~6.5、よりいっそう好ましくは2.0~6.0のlog P値を有することが好ましいこともある。
【0251】
log P値とは、オクタン-1-オール/水の見掛け分配係数の10を底とする対数の値である。log P値は公知であり、オクタン-1-オール及び水の中の、油の濃度を決定する標準試験によって決定される。log Pは、Meylan及びHowardによる記事:Atom/Fragment contribution method for estimating octanol-water partition coefficients、J. Pharm. Sci.、84: 83-92頁、1995年に記載されている方法に従って計算することができる。この値は、log Pを分子構造の関数として決定する、多数の市販のソフトウェアパッケージを使用して計算することもできる。例として、米国環境庁製のEpiwinソフトウェアを挙げることができる。
【0252】
この値は、とりわけ、ACD(Advanced Chemistry Development)社のSolarisソフトウェアV4.67を使用して計算することができ、この値は、Exploring QSAR:hydrophobic, electronic and steric constants (ACS professional reference book、1995年)から得ることもできる。概算値を提供しているインターネットサイトもある(アドレス:http://esc.syrres.com/interkow/kowdemo.htm)。
【0253】
油は、アミド結合、エステル結合及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも2つの部分を有してもよい。アミド結合は、ここでは-CONR-(Rは、水素原子、又は直鎖状若しくは分枝状C1~C18アルキル基、好ましくはメチル基を示す)を意味し、エステル結合は、ここでは-COO-を意味する。言い換えれば、油は、2つ以上のアミド結合、2つ以上のエステル結合、又は少なくとも1つのアミド結合と少なくとも1つのエステル結合との混合物を有してもよい。
【0254】
油は、エーテル結合、エステル結合及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも2つの部分を有してもよい。エーテル結合は、ここでは-O-を意味し、エステル結合は、ここでは-COO-を意味する。言い換えれば、油は、2つ以上のエーテル結合、2つ以上のエステル結合、又は少なくとも1つのエーテル結合と少なくとも1つのエステル結合との混合物を有してもよい。
【0255】
油は、ラウロイルサルコシンイソプロピル、オクチルドデカノール及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましいこともある。
【0256】
その一方で、非極性油の例として、スクアランを挙げることができる。
【0257】
油は、トリグリセリドから選択してもよい。トリグリセリドは、グリセロールと3つの脂肪酸とに由来するエステルであり、トリアシルグリセロールと呼ばれることもある。
【0258】
油のためのトリグリセリドは、少なくとも1つの不飽和脂肪酸残基を有することが好ましい。言い換えれば、油のためのトリグリセリドは、グリセロールと、少なくとも1つの不飽和脂肪酸とに由来するエステルであることが好ましい。したがって、油のためのトリグリセリドは、(i)グリセロールと、1つの不飽和脂肪酸及び2つの飽和脂肪酸とに由来するエステル、(ii)グリセロールと、2つの不飽和脂肪酸及び1つの飽和脂肪酸とに由来するエステル、又は(iii)グリセロールと、3つの不飽和脂肪酸とに由来するエステルでありうる。2つ以上の不飽和脂肪酸が使用される場合、それらは同じであっても異なってもよい。2つの飽和脂肪酸が使用される場合、それらは同じであっても異なってもよい。
【0259】
本発明によれば、「不飽和脂肪酸」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合又は三重結合を含む脂肪酸を意味する。これらは、より詳細には、長鎖を有する脂肪酸であり、すなわち、8~32個の炭素原子、好ましくは12~26個の炭素原子、より好ましくは14~22個の炭素原子を有することができる。
【0260】
脂肪酸は、一不飽和、例えば、ペトロセリン酸(C12)、パルミトレイン酸(C16)及びオレイン酸(C18)であってもよく、又は多価不飽和、すなわち、少なくとも2つの炭素-炭素二重結合を提示するもの、例えば、リノール酸(C18)及びリノレン酸(C18)であってもよい。
【0261】
油のためのトリグリセリドは、少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸残基を有することがより好ましい。言い換えれば、油のためのトリグリセリドは、グリセロールと、少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸とに由来するエステルであることがより好ましい。
【0262】
多価不飽和脂肪酸は、末端メチル基に最も近い不飽和位によって特徴づけられる、ω-3、ω-6、及びω-9脂肪酸から選択されうる。
【0263】
18個から22個の間の炭素原子を含む多価不飽和脂肪酸、特にω-3及びω-6脂肪酸から選択されるものが、より好ましいこともある。
【0264】
ω-3系列の多価不飽和脂肪酸の中でも、α-リノレン酸(18:3、ω-3)、ステアリドン酸(18:4、ω-3)、5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸、すなわちEPA(20:5、ω-3)、及び4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸、すなわちDHA(22:6、ω-3)、ドコサペンタエン酸(22:5、ω-3)、及びn-ブチル-5,11,14-エイコサトリエン酸を挙げることができる。
【0265】
ω-6系列の多価不飽和脂肪酸の中でも、18個の炭素原子と2つの不飽和を有するリノレン酸(18:2、ω-6)、18個の炭素原子と3つの不飽和を有するγ-リノレン酸(18:3、ω-6)、20個の炭素原子と3つの不飽和を有するジホモガンマ(gama)リノレン酸(20:3、ω-6)、アラキドン酸、すなわち5,8,11,14エイコサテトラエン酸(20:4、ω-6)、及びドコサテトラエン酸(22:4、ω-6)を挙げることができる。
【0266】
ω-9脂肪酸として、ミード酸(20:3、ω-9)を挙げることができる。
【0267】
多価不飽和脂肪酸は、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、これらの混合物から選択されうる。
【0268】
油のためのトリグリセリド中の脂肪酸残基を形成する脂肪酸の中で、多価不飽和脂肪酸の量は、脂肪酸の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上でありうる。
【0269】
油のためのトリグリセリド中の脂肪酸残基を形成する脂肪酸の中で、多価不飽和脂肪酸の量/一不飽和脂肪酸の量の質量比は、1.0超、好ましくは1.5超、より好ましくは2.0超でありうる。
【0270】
油は、植物油から選択してもよい。
【0271】
例えば、油は、ダイズ油、ナタネ油、綿実油、コメ油、トウモロコシ油、ブドウ種子油、ゴマ油、亜麻仁油及びこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0272】
油は、ダイズ油、トウモロコシ油、綿実油、ブドウ種子油及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0273】
本発明による組成物中の油の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~20質量%、好ましくは0.5質量%~15質量%、より好ましくは1質量%~10質量%の範囲内でありうる。
【0274】
- 多糖
本発明による組成物は、(d)カチオン性ポリマー以外の少なくとも1種の多糖を含んでもよい。単一のタイプの多糖を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプの多糖を組み合わせて使用してもよい。
【0275】
(d)カチオン性ポリマー以外の多糖は、分散相及び/又は連続相に存在しうる。好ましくは、多糖は、分散相と連続相との両方に存在する。
【0276】
多糖は、植物に由来する多糖から選択されることが好ましい。言い換えれば、多糖は、植物起源のものであることが好ましい。
【0277】
その一方で、多糖が、セルロース及びその誘導体から選択されないことも好ましい。
【0278】
本発明によれば、「植物に由来する多糖」という用語は、とりわけ、植物界(植物又は藻類)から得られる多糖を意味するが、これは生物工学によって得られる多糖に対するものであり、後者の場合、例えばキサンタンガムについては、とりわけ、細菌キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)の発酵によって生成される。
【0279】
本発明によって使用されうる植物起源の多糖の例として、とりわけ、以下のものを挙げることができる:
a)藻類抽出物、例えば、アルギン酸塩、カラギーナン及び寒天、並びにこれらの混合物。挙げることができるカラギーナンの例には、Degussa社製のSatiagum UTC30(登録商標)及びUTC10(登録商標)が含まれ、挙げることができるアルギン酸塩は、ISP社により名称Kelcosol(登録商標)で販売されているアルギン酸ナトリウムである、
b)ガム、例えば、グアーガム及びその非イオン性誘導体(ヒドロキシプロピルグアー)、アラビアガム、コンニャクガム若しくはマンナンガム、トラガカントガム、ガティガム、カラヤガム又はローカストビーンガム;挙げることができる例には、Rhodia社により名称Jaguar HP105(登録商標)で販売されているグアーガム;GfN社により販売されているmannan and konjac gum(登録商標)(1%グルコノマンナン)が含まれる、
c)化工デンプン又は非化工デンプン、例えば、禾穀類、例えばコムギ、トウモロコシ又はイネから得られるもの、マメ科植物、例えばブロンドピー(blonde pea)から得られるもの、塊茎、例えばジャガイモ又はキャッサバから得られるもの、及びタピオカデンプン等;デキストリン、例えばトウモロコシデキストリン;とりわけ挙げることができる例には、Remy社により販売されているコメデンプンRemy DR I(登録商標);Roquette社製のcorn starch B(登録商標);2-クロロエチルアミノジプロピオン酸によって変性され、水酸化ナトリウムによって中和された、National Starch社により名称Structure Solanace(登録商標)で販売されているジャガイモデンプン;National Starch社により名称Tapioca pure(登録商標)で販売されている天然タピオカデンプン粉末が含まれる、
d)デキストリン、例えばトウモロコシから抽出された、National Starch社製のIndex(登録商標)という名称のデキストリン、並びに
これらの混合物。
【0280】
好ましくは、多糖は、藻類抽出物から選択される。
【0281】
藻類抽出物は、アルギン酸塩、カラギーナン及び寒天、並びにこれらの混合物から選択されうる。好ましくは、アルギン酸塩若しくは寒天、又はこれらの混合物が使用されうる。
【0282】
本発明による組成物中の多糖の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~5質量%、好ましくは0.005質量%~3質量%、より好ましくは0.01質量%~1質量%の範囲内でありうる。
【0283】
- 親油性抗酸化剤
本発明による組成物は、少なくとも1種の親油性抗酸化剤を含んでもよい。単一のタイプの親油性抗酸化剤を使用してもよいが、2つ以上の異なるタイプの親油性抗酸化剤を組み合わせて使用してもよい。
【0284】
親油性抗酸化剤は(a)レチノイドとは異なる。
【0285】
親油性抗酸化剤は、好ましくは分散相に存在しうる。
【0286】
親油性抗酸化剤は、n-ブタノールと水との間の抗酸化剤の分配係数が、1超、より好ましくは10超、よりいっそう好ましくは100超であることを意味する。
【0287】
親油性抗酸化剤として、分子内にヒンダードフェノール構造又はセミヒンダードフェノール構造を有するフェノール性抗酸化剤を挙げることができる。このような化合物の具体例として、以下のものを挙げることができる:3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸(INCI名テトラ-ジ-t-ブチルヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチルを有する)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、モノ-又はジ-又はトリ-(α-メチルベンジル)フェノール、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、トリス[N-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)]イソシアヌレート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、ブチリデン-1,1ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナト]メタン、トリエチレングリコールビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2-tert-ブチル-6-(3'-tert-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート及び1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]。
【0288】
親油性抗酸化剤として、以下のものも挙げることができる:BHA(ブチル化ヒドロキシルアニソール)並びにBHT(ブチル化ヒドロキシルトルエン)、ビタミンE(すなわちトコフェロール及びトコトリエノール)並びにその誘導体、例えばホスフェート誘導体、例えば、昭和電工株式会社により販売されているTPNA(登録商標)、コエンザイムQ10(すなわちユビキノン)、イデベノン、ある特定のカロテノイド、例えばルテイン、アスタキサンチン、ベータカロテン、フェノール酸及び誘導体(例えばクロロゲン酸)。
【0289】
同様に挙げることができる親油性抗酸化剤には、ジチオラン、例えばアスパラガス酸又はその誘導体、例えばケイ質のジチオラン誘導体、とりわけ、例えば特許出願FR2908769に記載されているものが含まれる。
【0290】
同様に挙げることができる親油性抗酸化剤には、以下のものが含まれる:
グルタチオン及びその誘導体(GSH及び/又はGSHOEt)、例えばグルタチオンアルキルエステル(例えば特許出願FR2704754及びFR2908769に記載されているもの)、
システイン及びその誘導体、例えばN-アセチルシステイン又はL-2-オキソチアゾリジン-4-カルボン酸。以下のものも参照されうる:特許出願FR2877004及びFR2854160に記載されているシステイン誘導体、
酸化ストレスに対して保護するためのある特定の酵素、例えば、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ラクトペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ及びキノンレダクターゼ、
ベンジルシクラノン;置換ナフタレノン;ピドレート(とりわけ特許出願EP0511118に記載されているもの);コーヒー酸及びその誘導体、ガンマオリザノール;メラトニン、スルホラファン及びそれを含有する抽出物(クレソンを除く)、
とりわけ特許出願WO94/11338、FR2698095、FR2737205又はEP0755925に記載されている、N,N'-ビス(ベンジル)エチレンジアミン-N,N'-二酢酸のジイソプロピルエステル、
特許出願FR2825920に記載されている、デフェロキサミン(又はデスフェラール)。
【0291】
同様に使用することができる親油性抗酸化剤は、カルコン、より詳細にはフロレチン又はネオヘスペリジン、N,N'-ビス(ベンジル)エチレンジアミン-N,N'-二酢酸のジイソプロピルエステル、又はフランスカイガンショウ樹皮の抽出物、例えばPYCNOGENOL(登録商標)である。
【0292】
親油性抗酸化剤の例として、テトラ-ジ-t-ブチルヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチル、ノルジヒドログアイアレチン酸、トコフェロール、レスベラトロール、没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシルトルエン、ブチル化ヒドロキシルアニソール、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール及びこれらの混合物も挙げることができる。
【0293】
親油性抗酸化剤は、生分解性であることが好ましい。この意味において、生分解性ではないBHTは、親油性抗酸化剤として好ましくない。したがって、親油性抗酸化剤としてBHTを使用しないことが好ましい。更に、本発明による組成物は、BHTを非含有であることが好ましい。
【0294】
「非含有」という用語は、ここでは、本発明による組成物が、限定的な量のBHTを含有してもよいことを意味する。しかしながら、BHTの量は、組成物の総質量に対して、1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満、よりいっそう好ましくは0.01質量%未満であるように限定されることが好ましい。本発明による組成物は、BHTを含まないことが最も好ましい。
【0295】
親油性抗酸化剤は、トコフェロール、テトラ-ジ-t-ブチルヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチル、及びこれらの混合物から選択されることがより好ましい。
【0296】
本発明による組成物中の親油性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~3質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲内でありうる。
【0297】
- キレート剤
本発明による組成物は、少なくとも1種のキレート剤を含んでもよい。単一のタイプのキレート剤を使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのキレート剤を組み合わせて使用してもよい。
【0298】
キレート剤は、本発明の連続相に存在しうる。
【0299】
キレート剤として、以下のものを挙げることができる:
(i)アミノカルボン酸、例えば、次のINCI名を有する化合物:ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン二コハク酸(EDDS)及びエチレンジアミン二コハク酸三ナトリウム、例えばOctel社製のOctaquest E30、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン-N,N'-二グルタル酸(EDDG)、グリシンアミド-N,N'-二コハク酸(GADS)、2-ヒドロキシプロピレンジアミン-N,N'-二コハク酸(HPDDS)、エチレンジアミン-N,N'-ビス(オルト-ヒドロキシフェニル酢酸)(EDDHA)、N,N'-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N'-二酢酸(HBED)、ニトリロ三酢酸(NTA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、N-2-ヒドロキシエチル-N,N-二酢酸及びグリセリルイミノ二酢酸(文献EP-A-317542及びEP-A-399133に記載されている通り)、イミノ二酢酸-N-2-ヒドロキシプロピルスルホン酸及びアスパラギン酸N-カルボキシメチルN-2-ヒドロキシプロピル-3-スルホン酸(EP-A-516102に記載されている通り)、ベータアラニン-N,N'-二酢酸、アスパラギン酸-N,N'-二酢酸及びアスパラギン酸-N-一酢酸(EP-A-509382に記載されている通り)、次のものをベースとするキレート剤:イミノ二コハク酸(IDSA)(EP-A-509382に記載されている通り)、エタノール二グリシン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、例えば、Bayer社により参照名Bayhibit AMで販売されている化合物、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム(GLDA)、例えば、Akzo Nobel社製のDissolvine GL38又は45S、
(ii)一又はポリホスホン酸をベースとするキレート剤、例えば、次のINCI名を有する化合物:ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-三ホスホン酸(E1HTP)、エタン-2-ヒドロキシ-1,1,2-三ホスホン酸(E2HTP)、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-二ホスホン酸(EHDP)、エタン-1,1,2-三ホスホン酸(ETP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、及びヒドロキシエタン-1,1-二ホスホン酸(HEDP)、並びに
(iii)ポリリン酸をベースとするキレート剤、例えば、次のINCI名を有する化合物:トリポリリン酸ナトリウム(STP)、二リン酸四ナトリウム、ヘキサメタリン酸、メタリン酸ナトリウム、フィチン酸、これらの塩及び誘導体、
並びに
これらの混合物。
【0300】
キレート剤は、エチレンジアミン二コハク酸三ナトリウムであることがより好ましい。
【0301】
本発明による組成物中のキレート剤の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~3質量%、好ましくは0.005質量%~2質量%、より好ましくは0.01質量%~1質量%の範囲内でありうる。
【0302】
- 水
本発明による組成物は、水を含んでもよい。
【0303】
本発明による組成物中の水は、連続相を形成することができる。水は分散相にも存在してもよい。
【0304】
本発明による組成物中の水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上でありうる。
【0305】
その一方で、本発明による組成物中の水の量は、組成物の総質量に対して、90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下でありうる。
【0306】
本発明による組成物中の水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~90質量%、好ましくは55質量%~85質量%、より好ましくは60質量%~80質量%の範囲内でありうる。
【0307】
- ポリオール
本発明による組成物は、ポリフェノールとは異なる少なくとも1種のポリオールを更に含んでもよい。単一のタイプのポリオールを使用してもよいが、2種以上の異なるタイプのポリオールを組み合わせて使用してもよい。
【0308】
ポリオールは分散相に存在しうる。
【0309】
「ポリオール」という用語は、ここでは、2つ以上のヒドロキシ基を有するアルコールを意味し、糖又はその誘導体を包含しない。糖の誘導体としては、糖の1つ又は複数のカルボニル基を還元することによって得られる糖アルコール、及びその1つ又は複数のヒドロキシ基の水素原子が、少なくとも1つの置換基、例えば、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アシル基又はカルボニル基で置き換えられている、糖又は糖アルコールが挙げられる。
【0310】
ポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシ基、好ましくは2~5つのヒドロキシ基を含む、C2~C12ポリオール、好ましくはC2~C9ポリオールでありうる。
【0311】
ポリオールは、天然ポリオールであっても合成ポリオールであってもよい。ポリオールは、直鎖状、分枝状又は環状の分子構造を有しうる。
【0312】
ポリオールは、グリセリン類及びその誘導体、並びにグリコール類及びその誘導体から選択されうる。ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ポリエチレングリコール(5~50のエチレンオキシド基)、及びこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0313】
本発明による組成物中のポリオールの量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上でありうる。
【0314】
その一方で、本発明による組成物中のポリオールの量は、組成物の総質量に対して、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下でありうる。
【0315】
したがって、ポリオールは、組成物の総質量に対して、0.1質量%~30質量%、好ましくは0.5質量%~20質量%、例えば1質量%~10質量%の範囲内の量で、本発明による組成物中に存在してもよい。
【0316】
- pH調節剤
本発明による組成物のpHは、化粧料において通常使用される少なくとも1種のpH調節剤、例えば、酸性化剤又は塩基性化剤等を使用して、所望の値に調整することができる。
【0317】
本発明による組成物のpHは、25℃において、9.0以下、好ましくは8.5以下、より好ましくは8.0以下、よりいっそう好ましくは7.5以下、特に7.0以下であってもよく、且つ2.5以上、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.5以上であってもよい
【0318】
pH調節剤は、本発明の連続相に存在しうる。酸性化剤の中では、例として、無機又は有機酸、例えば、塩酸、オルトリン酸、硫酸、カルボン酸、例えば、酢酸、酒石酸、クエン酸及び乳酸、並びにスルホン酸を挙げることができる。
【0319】
塩基性化剤の中では、例として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物塩、例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム;水酸化第四級アンモニウム塩及び水酸化グアニジニウム;アルカリ金属ケイ酸塩、例えば、メタケイ酸ナトリウム;炭酸塩及び重炭酸塩、特に第一級アミン、第二級アミン若しくは第三級アミンの炭酸塩及び重炭酸塩、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩及び重炭酸塩、又はアンモニウムの炭酸塩及び重炭酸塩;並びに次式の化合物:
【0320】
【化14】
【0321】
(式中、
Wは、ヒドロキシル基又はC1~C6アルキル基で任意選択で置換されているC1~C6アルキレン残基であり、
Rx、Ry、Rz及びRtは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はC1~C6アルキル、C1~C6ヒドロキシアルキル若しくはC1~C6アミノアルキル基を表す)
を挙げることができる。とりわけ、1,3-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、スペルミン及びスペルミジンを挙げることができる。
【0322】
pH調節剤は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.01質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%、特に1質量%~5質量%の範囲内の量で使用されうる。
【0323】
- 非イオン性界面活性剤
本発明による組成物は、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を含んでもよい。2種以上の非イオン性界面活性剤が使用される場合、同一であっても異なっていてもよい。
【0324】
非イオン性界面活性剤は、本発明の連続相に存在しうる。
【0325】
非イオン性界面活性剤は、3.0~7.0、好ましくは3.5~6.0、より好ましくは4.0~5.0のHLB(親水性親油性バランス)値を有しうる。或いは、非イオン性界面活性剤は、11~17、好ましくは12~16、より好ましくは13~15のHLB値を有してもよい。2種以上の非イオン性界面活性剤が使用される場合、HLB値は、すべての非イオン性界面活性剤のHLB値の加重平均により決定される。
【0326】
非イオン性界面活性剤は、以下から選択することができる:
(1)ポリグリセリル脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン化アルキルグリセリド及びポリオキシアルキレン化脂肪エーテルから選択される界面活性剤、
(2)脂肪酸又は脂肪族アルコールと、カルボン酸と、グリセロールとの混合エステル、
(3)糖の脂肪酸エステル、及び糖の脂肪族アルコールエーテル、
(4)ソルビタンの脂肪エステル及びソルビタンのオキシアルキレン化脂肪エステル、並びにオキシアルキレン化脂肪エステルから選択される界面活性剤、
(5)エチレンオキシド(A)とプロピレンオキシド(B)とのブロックコポリマー、
(6)ポリオキシエチレン化(1~40EO)及びポリオキシプロピレン化(1~30PO)アルキル(C16~C30)エーテル、
(7)シリコーン界面活性剤、並びに
(8)これらの混合物。
【0327】
界面活性剤(1)は、45℃以下の温度において流体であってよい。
【0328】
界面活性剤(1)は、特に以下のものであってもよい:
- 少なくとも1種の飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状C8~C22炭化水素基、例えばC8~C22アルキル又はアルケニル基、好ましくはC8~C18アルキル又はアルケニル基、より好ましくはC8~C12アルキル又はアルケニル基を含む、少なくとも1つの、好ましくは1つの脂肪酸と、2~12個のグリセロール、好ましくは2~10個のグリセロール、より好ましくは2~8個のグリセロールとの、ポリグリセリル脂肪酸エステル、
- ポリオキシエチレン化(PEG化)アルキルグリセリド、例えば、カプリル酸及びカプリン酸のモノ-、ジ-及びトリ-グリセリドの混合物のポリエチレングリコール誘導体(好ましくは2~30個のエチレンオキシド単位、より好ましくは2~20個のエチレンオキシド単位、よりいっそう好ましくは2~10個のエチレンオキシド単位)、例えば、PEG-6(カプリル酸/カプリン酸)グリセリド、PEG-7(カプリル酸/カプリン酸)グリセリド、及びPEG-7グリセリルココエート、
- 少なくとも1種の飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状C8~C22炭化水素基、例えばC8~C22アルキル又はアルケニル基、好ましくはC8~C18アルキル又はアルケニル基、より好ましくはC8~C12アルキル又はアルケニル基を含む、少なくとも1つの、好ましくは1つの脂肪族アルコールと、2~60個のエチレンオキシド、好ましくは2~30個のエチレンオキシド、より好ましくは2~10個のエチレンオキシドとの、ポリオキシエチレン化脂肪エーテル、並びに
- これらの混合物。
【0329】
ポリグリセリル脂肪酸エステルは、2~30個のグリセロール、より好ましくは2~20個のグリセロール、更により好ましくは4~12個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有することが好ましい。
【0330】
ポリグリセリル脂肪酸エステルは、8~22個の炭素原子、好ましくは8~18個の炭素原子、より好ましくは8~12個の炭素原子を含む飽和又は不飽和の酸、好ましくは飽和の酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸及びミリスチン酸のモノ、ジ及びトリエステルから選択されうる。ポリグリセリル脂肪酸エステルの例として、イソステアリン酸ポリグリセリル-10を挙げることができる。
【0331】
ポリオキシアルキレン化脂肪エーテル、好ましくはポリオキシエチレン化脂肪エーテルは、2~60個のエチレンオキシド単位、好ましくは2~30個のエチレンオキシド単位、より好ましくは2~10個のエチレンオキシド単位を含んでもよい。エーテルの脂肪鎖は、ラウリル、ベヘニル、アラキジル、ステアリル及びセチル単位、並びにこれらの混合物、例えばセテアリルから特に選択することができる。挙げることができるエトキシル化脂肪エーテルの例は、2、3、4及び5つのエチレンオキシド単位を含むラウリルアルコールエーテル(CTFA名:ラウレス-2、ラウレス-3、ラウレス-4及びラウレス-5)、例えば、日光ケミカルズ株式会社により名称Nikkol BL-2で、日本エマルジョン株式会社社により名称Emalex 703で、日光ケミカルズ株式会社により名称Nikkol BL-4で、及び日本エマルジョン株式会社により名称EMALEX 705で販売されている製品である。例えば、2、3、4及び5及び20個のエチレンオキシド単位を含むステアリルアルコールエーテル(CTFA名:ステアレス-2、ステアレス-3、ステアレス-4、ステアレス-5及びステアレス-20)、例えば、日本エマルジョン株式会社により名称Emalex 602で、日本エマルジョン株式会社により名称Emalex 603で、日光ケミカルズ株式会社により名称Nikkol BS-4で、及び日本エマルジョン株式会社により名称Emalex 605で販売されている製品も挙げることができる。
【0332】
ポリオキシアルキレン化脂肪エーテルは、C8~C24脂肪族アルコールと、それらのポリオキシアルキレン化誘導体とのポリエチレングリコールエーテル、及びC4~C24脂肪族アルコールのポリプロピレングリコールエーテル、例えばPPG-14ブチルエーテル及びPPG-15ステアリルエーテルであることも好ましい。
【0333】
(2)脂肪酸又は脂肪族アルコールと、カルボン酸と、グリセロールとの混合エステルは、上記の非イオン性界面活性剤として使用することができ、8~22個の炭素原子、好ましくは8~18個の炭素原子、より好ましくは8~12個の炭素原子を含有するアルキル又はアルケニル鎖を有する脂肪酸又は脂肪族アルコールと、α-ヒドロキシ酸及び/又はコハク酸と、グリセロールとの混合エステルを含む群から特に選択することができる。α-ヒドロキシ酸は、例えば、クエン酸、乳酸、グリコール酸又はリンゴ酸、及びこれらの混合物であってもよい。
【0334】
本発明のナノエマルション中で使用できる混合エステルが誘導される脂肪酸又はアルコールのアルキル鎖は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。これらは、とりわけ、ステアレート、イソステアレート、リノレエート、オレエート、ベヘネート、アラキドネート、パルミテート、ミリステート、ラウレート、カプレート、イソステアリル、ステアリル、リノレイル、オレイル、ベヘニル、ミリスチル、ラウリル又はカプリルの各鎖、及びこれらの混合物であってもよい。
【0335】
本発明のナノエマルション中で使用できる混合エステルの例として、Huls社により名称Imwitor 375で販売されている、グリセロールと、クエン酸、乳酸、リノール酸及びオレイン酸との混合物との混合エステル(CTFA名:クエン酸/乳酸/リノール酸/オレイン酸グリセリル)、Huls社により名称Imwitor 780 Kで販売されている、コハク酸及びイソステアリルアルコールとグリセロールとの混合エステル(CTFA名:コハク酸イソステアリルジグリセリル)、Huls社により名称Imwitor 370で販売されている、クエン酸及びステアリン酸とグリセロールとの混合エステル(CTFA名:クエン酸ステアリン酸グリセリル)、Danisco社により名称Lactodan B30又はRylo LA30で販売されている、乳酸及びステアリン酸とグリセロールとの混合エステル(CTFA名:乳酸ステアリン酸グリセリル)を挙げることができる。
【0336】
上記の非イオン性界面活性剤として使用できる(3)糖の脂肪酸エステルは、C8~C22脂肪酸と、スクロース、マルトース、グルコース又はフルクトースとのエステル又はエステル混合物、並びにC14~C22脂肪酸とメチルグルコースとのエステル又はエステル混合物を含む群から特に選択することができる。
【0337】
本発明において使用されうるエステルの脂肪単位を形成するC8~C22又はC14~C22脂肪酸は、それぞれ8~22個又は14~22個の炭素原子を含有する、飽和又は不飽和の、直鎖状アルキル又はアルケニル鎖を含む。エステルの脂肪単位は、ステアレート、ベヘネート、アラキドネート、パルミテート、ミリステート、ラウレート及びカプレート、並びにこれらの混合物から特に選択することができる。ステアレートが好ましく使用される。
【0338】
上記の非イオン性界面活性剤として使用することができる(3)糖の脂肪族アルコールエーテルは、45℃以下の温度で固体であってもよく、C8~C22脂肪族アルコールと、グルコース、マルトース、スクロース又はフルクトースとのエーテル又はエーテル混合物、並びにC14~C22脂肪族アルコールとメチルグルコースとのエーテル又はエーテル混合物を含む群から特に選択することができる。これらは、特にアルキルポリグルコシドである。
【0339】
本発明のナノエマルション中で使用されうるエーテルの脂肪単位を形成するC8~C22又はC14~C22脂肪族アルコールは、それぞれ8~22個又は14~22個の炭素原子を含有する飽和又は不飽和の、直鎖状アルキル又はアルケニル鎖を含む。エーテルの脂肪単位は、デシル、セチル、ベヘニル、アラキジル、ステアリル、パルミチル、ミリスチル、ラウリル、カプリル及びヘキサデカノイルの各単位、並びにこれらの混合物、例えばセテアリルから特に選択することができる。糖の脂肪族アルコールエーテルの例として、カプリリル/カプリルグルコシドを挙げることができる。
【0340】
上記の非イオン性界面活性剤として使用されうる(4)ソルビタンの脂肪エステル及びソルビタンのオキシアルキレン化脂肪エステルは、ソルビタンのC16~C22脂肪酸エステル及びソルビタンのオキシエチレン化C16~C22脂肪酸エステルを含む群から選択することができる。これらは、16~22個の炭素原子をそれぞれ含有する少なくとも1つの飽和直鎖状アルキル鎖を含む少なくとも1種の脂肪酸と、ソルビトール又はエトキシル化ソルビトールとから形成されうる。オキシエチレン化エステルは、一般に、1~100個のエチレングリコール単位、好ましくは2~40個のエチレンオキシド(EO)単位を含みうる。
【0341】
これらのエステルは、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、アラキジン酸エステル、パルミチン酸エステル及びこれらの混合物から特に選択することができる。ステアリン酸エステル及びパルミチン酸エステルが好ましく使用される。
【0342】
上記の非イオン性界面活性剤として使用されうる(4)オキシアルキレン化脂肪エステル、好ましくはエトキシル化脂肪エステルは、1~100個のエチレンオキシド単位、好ましくは2~60個のエチレンオキシド単位、より好ましくは2~30個のエチレンオキシド単位と、8~22個の炭素原子、好ましくは8~18個の炭素原子、より好ましくは8~12個の炭素原子を含有する少なくとも1つの脂肪酸鎖とから形成されたエステルであってもよい。エステルの脂肪鎖は、ステアレート、ベヘネート、アラキデート及びパルミテートの各単位、並びにこれらの混合物から特に選択することができる。挙げることができるエトキシル化脂肪エステルの例は、40個のエチレンオキシド単位を含むステアリン酸エステル、例えば、ICI社により名称Myrj 52(CTFA名:PEG-40ステアレート)で販売されている製品、及び8個のエチレンオキシド単位を含むベヘン酸エステル(CTFA名:PEG-8ベヘネート)、例えばGattefosse社により名称Compritol HD5 ATOで販売されている製品である。
【0343】
上記の非イオン性界面活性剤として使用されうる(5)エチレンオキシド(A)とプロピレンオキシド(B)とのブロックコポリマーは、式(I):
HO(C2H4O)x(C3H6O)y(C2H4O)zH (I)
(式中、x、y及びzは、x+zが2~100の範囲内となり、yが14~60の範囲内となる整数である)
のブロックコポリマー、及びその混合物から、より詳細には、8.0~14.0の範囲内のHLB値を有する、式(I)のブロックコポリマーから特に選択することができる。
【0344】
上記の非イオン性界面活性剤として使用されうる(6)ポリオキシエチレン化(1~40EO)及びポリオキシプロピレン化(1~30PO)アルキル(C16~C30)エーテルは、以下からなる群から選択することができる:
PPG-6デシルテトラデセス-30;ポリオキシエチレン(30)ポリオキシプロピレン(6)テトラデシルエーテル、例えば日光ケミカルズ株式会社からNikkol PEN-4630として販売されているもの、
PPG-6デシルテトラデセス-12;ポリオキシエチレン(12)ポリオキシプロピレン(6)テトラデシルエーテル、例えば日光ケミカルズ株式会社からNikkol PEN-4612として販売されているもの、
PPG-13デシルテトラデセス-24;ポリオキシエチレン(24)ポリオキシプロピレン(13)デシルテトラデシルエーテル、例えば日油株式会社からUNILUBE 50MT-2200Bとして販売されているもの、
PPG-6デシルテトラデセス-20;ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテル、例えば日光ケミカルズ株式会社からNikkol PEN-4620として販売されているもの、
PPG-4セテス-1;ポリオキシエチレン(1)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、例えば日光ケミカルズ株式会社からNikkol PBC-31として販売されているもの、
PPG-8セテス-1;ポリオキシエチレン(1)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、例えば日光ケミカルズ株式会社からNikkol PBC-41として販売されているもの、
PPG-4セテス-10;ポリオキシエチレン(10)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、例えば日光ケミカルズ株式会社からNikkol PBC-33として販売されているもの、
PPG-4セテス-20;ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、例えば日光ケミカルズ株式会社からNikkol PBC-34として販売されているもの、
PPG-5セテス-20;ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(5)セチルエーテル、例えばCroda Inc.社からProcetyl AWSとして販売されているもの、
PPG-8セテス-20;ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、例えば日光ケミカルズ株式会社からNikkol PBC-44として販売されているもの、及び
PPG-23ステアレス-34;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル(34 EO)(23 PO)、例えばポーラ化成工業株式会社からUnisafe 34S-23として販売されているもの。これらは、比較的短期間のうちに組成物の温度が上下する場合であっても、長時間にわたる安定性を有する組成物を提供することができる。
【0345】
上記の非イオン性界面活性剤として使用されうる(7)シリコーン界面活性剤として、文献US-A-5364633及びUS-A-5411744に開示されているものを挙げることができる。
【0346】
上記の非イオン性界面活性剤としての(7)シリコーン界面活性剤は、好ましくは式(I):
【0347】
【化15】
【0348】
(式中、
R1、R2及びR3は、互いに独立して、C1~C6アルキル基又は-(CH2)x-(OCH2CH2)y-(OCH2CH2CH2)z-OR4基を表し、少なくとも1つのR1基、R2基又はR3基は、アルキル基ではなく、R4は、水素、アルキル基又はアシル基であり、
Aは、0~200の範囲内の整数であり、
Bは、0~50の範囲内の整数であり、但し、AとBとが同時に0に等しいことはなく、
xは、1~6の範囲内の整数であり、
yは、1~30の範囲内の整数であり、
zは、0~5の範囲内の整数である)
の化合物でありうる。
【0349】
本発明の好ましい一実施形態によれば、式(I)の化合物中、アルキル基はメチル基であり、xは、2~6の範囲内の整数であり、yは、4~30の範囲内の整数である。
【0350】
式(I)のシリコーン界面活性剤の例として、式(II):
【0351】
【化16】
【0352】
(式中、Aは、20~105の範囲内の整数であり、Bは、2~10の範囲内の整数であり、yは、10~20の範囲内の整数である)
の化合物を挙げることができる。
【0353】
式(I)のシリコーン界面活性剤の例として、式(III):
H-(OCH2CH2)y-(CH2)3-[(CH3)2SiO]A'-(CH2)3-(OCH2CH2)y-OH (III)
(式中、A'及びyは、10~20の範囲内の整数である)
の化合物も挙げることができる。
【0354】
非イオン性界面活性剤は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~3質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%の量で、本発明による組成物中に存在してもよい。
【0355】
- 添加剤
本発明による組成物、特に本発明の連続相はまた、上に説明した成分以外に、化粧用組成物及び皮膚科学的組成物に従来使用される様々なアジュバント、例えば、アニオン性、非イオン性、カチオン性、及び両性又は双性イオン性ポリマー、アニオン性、カチオン性、両性及び非イオン性界面活性剤、親水性抗酸化剤、親水性活性成分、着色剤、増粘剤、金属イオン封鎖剤、香料、分散剤、コンディショニング剤、皮膜形成剤、保存剤、共保存剤、光安定剤、例えばクエン酸トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)並びにこれらの混合物を含んでもよい。
【0356】
親水性活性成分として、ビタミンB3及び誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、C-グリコシド誘導体、サリチル酸及びその誘導体、α-ヒドロキシ酸、ナイアシンアミド、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0357】
親水性活性成分は、本発明の連続相に存在しうる。
【0358】
本発明による組成物中に含まれる添加剤の量は限定されないが、本発明による組成物の総質量に対して、0.01~30質量%であってもよい。
【0359】
本発明による組成物は、上に説明した必須成分、及び必要な場合、上に説明した任意選択の成分を混合することによって調製することができる。
【0360】
上記の必須成分及び任意選択の成分を混合する方法及び手段は、限定されない。任意の従来の方法及び手段を使用して、上記の必須成分及び任意選択の成分を混合し、本発明による組成物を調製することができる。本発明による分散組成物は、分散相と連続相とを混合することによって調製することができる。
【0361】
[方法及び使用]
本発明による組成物は、化粧用組成物又は皮膚科学的組成物、好ましくは化粧用組成物、より好ましくは皮膚等のケラチン物質のための化粧用組成物であることが好ましい。
【0362】
本発明による組成物は、ケラチン物質に塗布することによって、ケラチン物質、例えば、皮膚、毛髪、粘膜、爪、まつ毛、眉毛及び/又は頭皮を処置するための美容方法等、非治療的方法のために使用することができる。
【0363】
したがって、本発明はまた、皮膚等のケラチン物質を処置するための美容方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に塗布する工程を含む、美容方法にも関する。
【0364】
本発明による組成物は、皮膚等のケラチン質物質のための老化防止、抗皺又はターンオーバー促進製品として使用されうる。特に、本発明による組成物は、抗皺皮膚化粧料として使用されうる。
【0365】
本発明による組成物に関する成分(a)~(d)、及び任意選択の成分に関する上記の説明は、上記本発明による使用及び方法についての成分に適用することができる。
【実施例0366】
本発明を、実施例によってより詳細に説明するが、これは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0367】
(実施例1及び比較例1~3)
実施例1及び比較例1~3による以下の組成物を、以下のプロトコルに従って調製した。Table 1(表1)に示す成分の量の数値はすべて、活性原料としての「質量%」に基づく。
【0368】
分散組成物の調製は、以下の通りに実行した。
(1)ラウロイルサルコシンイソプロピル、オクチルドデカノール、グリシン・ソヤ(Glycine soya)(ダイズ)油、ブチルパラベン及びトコフェロールを混合し、75~80℃で加熱して、均一な混合物を形成し、次いで、室温に冷却し、レチノールを導入して、均一なコア形成組成物を得る。
(2)水、寒天及びアルギン酸塩を混合し、75~80℃で加熱して、均一なシェル形成組成物を形成する。
(3)均一なコア形成組成物と均一なシェル形成組成物とを同時押出して、複数の分散相としてのカプセルを形成する。
(4)Table 1(表1)に連続相として列挙した成分を混合して、連続相を調製する。
(5)分散相を連続相と混合して、分散体を調製する。
【0369】
[評価]
(熱安定性及び光安定性)
実施例1及び比較例1~3による組成物の各々を透明容器に充填し、55℃の温度条件下で2週間、又はSuntest CPS(株式会社東洋精機製作所、765W/m2)を使用したUV照射下、室温で24時間保持した。保存後、組成物の各々を、ホモジナイザーによって15,000rpmで10分間、均一化させて、組成物中のカプセルを破壊して、HPLC分析のための試料を調製した。保存後のレチノール及びアスコルビン酸の残存率(%)をHPLCによって測定し、HPLCによって測定した対照%(4℃で2週間保存したもの)の関数として計算した。各組成物についてこのように計算したレチノール及びアスコルビン酸の残存率(%)を、次の評価基準に従って評価した。
- 熱安定性(55℃で2週間保存)
良好(OK):90以上
不良(NG):90未満
- 光安定性(日光下で24時間保存)
良好:75以上
不良:75未満
【0370】
(分散及び色安定性)
実施例1及び比較例1~3による組成物の各々をガラス瓶に充填し、ガラス瓶の各々を、55℃の温度条件下で2カ月間保持した。
【0371】
次いで、各ガラス瓶を分散及び色安定性の観点で、視覚的観察によって検査した。分散安定性に関しては、分散体(カプセル)が組成物中で一様に分散しているか否か、試料を検査した。色安定性に関しては、色の発生があるか否か、試料を検査した。次いで、これらの特性を、以下の評価基準に従って評価した。
- 分散安定性
良好:カプセルが組成物中で一様に分散していた。
不良:カプセルが組成物中で浮上又は沈殿していた。
- 色の発生
良好:色が変化していなかった、又はわずかに薄褐色に変化していた。
不良:色が褐色に変化していた。
【0372】
結果をTable 1(表1)に示す。
【0373】
【表1A】
【0374】
【表1B】
【0375】
上に説明した成分(a)~(d)を含む、実施例1による組成物は、光曝露下及び高温においてさえ、分散相が浮上又は沈殿することなく、安定な分散形態を維持し、十分な残存率で中のレチノイドを維持することができた。
【0376】
その一方で、成分(c)を含まない比較例1による組成物は、高温において、成分(a)を十分な残存率で維持することができなかった。
【0377】
成分(b)を含まない比較例2による組成物は、UV光照射下では、成分(a)を十分な残存率で維持することができなかった。
【0378】
成分(d)を含まない比較例3による組成物は、分散形態を維持することができず、組成物中でカプセルが浮上していた。
【外国語明細書】