(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090990
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】和紙風多彩調塗膜、その塗膜形成方法、その塗膜付き基材及び建物
(51)【国際特許分類】
B32B 13/12 20060101AFI20240627BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20240627BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240627BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20240627BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20240627BHJP
B32B 13/14 20060101ALI20240627BHJP
C09D 5/29 20060101ALI20240627BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240627BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240627BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240627BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20240627BHJP
C09D 7/62 20180101ALN20240627BHJP
【FI】
B32B13/12
B05D1/36 Z
B05D7/24 303G
B05D1/02 Z
B05D5/06 104H
B32B13/14
C09D5/29
C09D5/00 D
C09D201/00
C09D7/65
C09D7/40
C09D7/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207231
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100227352
【弁理士】
【氏名又は名称】白倉 加苗
(72)【発明者】
【氏名】中間 康博
(72)【発明者】
【氏名】横田 恵望子
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA76
4D075AE03
4D075BB16X
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB01
4D075CB36
4D075DA06
4D075DB11
4D075DC01
4D075EA05
4D075EA06
4D075EB19
4D075EB22
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4D075EC30
4D075EC33
4D075EC35
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4D075EC54
4F100AE01C
4F100AE07C
4F100AK21A
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4F100BA03
4F100CA13A
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4F100HB00
4F100JN00
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4F100JN00B
4J038BA012
4J038BA092
4J038CE022
4J038CH001
4J038CJ011
4J038CJ031
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4J038CJ291
4J038DL031
4J038HA026
4J038HA216
4J038HA486
4J038HA556
4J038JC38
4J038KA08
4J038KA19
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA01
4J038PA00
4J038PA07
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】和紙の風合いを有する、意匠性に優れた塗膜などを提供する。
【解決手段】基材上に形成された塗膜であって、
前記塗膜が、下塗層及び前記下塗層の上に積層される上塗層から構成され、
前記上塗層は、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、複数種の着色ゲル粒子と、樹脂製ビーズと、バインダー樹脂と、を含む繊維含有塗料を塗装し成膜した層であって、
前記繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)は5以上であり、
前記上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は24以下であり、
ΔE1>ΔE2の関係を満たす、和紙風多彩調塗膜。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成された塗膜であって、
前記塗膜が、下塗層及び前記下塗層の上に積層される上塗層から構成され、
前記上塗層は、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、複数種の着色ゲル粒子と、樹脂製ビーズと、バインダー樹脂と、を含む繊維含有塗料を塗装し成膜した層であって、
前記繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)は5以上であり、
前記上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は24以下であり、ΔE1>ΔE2の関係を満たす、
和紙風多彩調塗膜。
【請求項2】
前記下塗層の塗膜が、マンセル色相環(20色相)の5YR~5GYから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.5~3の彩度(C)を有し、
前記異形着色ゲル粒子が、マンセル色相環(20色相)の5YR~10Yから選択される色相(H)、ならびに、8~9の明度(V)及び0.5~1.5の彩度(C)を有する、請求項1に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項3】
前記下塗層の塗膜が、マンセル色相環(20色相)の8YR~5Yから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.5~3の彩度(C)を有し、
前記異形着色ゲル粒子が、マンセル色相環(20色相)の5YR~10Yから選択される色相(H)、ならびに、8~9の明度(V)及び0.5~1.5の彩度(C)を有する、請求項1に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項4】
前記下塗層の塗膜が、マンセル色相環(20色相)の5B~8Pから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.1~3の彩度(C)を有し、
前記異形着色ゲル粒子が、マンセル色相環(20色相)の5YR~10Yから選択される色相(H)、ならびに、8~9の明度(V)及び0.5~1.5の彩度(C)を有する、請求項1に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項5】
前記下塗層の塗膜が、マンセル色相環(20色相)の1PB~5PBから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.1~3の彩度(C)を有し、
前記異形着色ゲル粒子が、マンセル色相環(20色相)の5YR~10Yから選択される色相(H)、ならびに、8~9の明度(V)及び0.5~1.5の彩度(C)を有する、請求項1に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項6】
前記下塗層の塗膜が、マンセル色相環(20色相)の10RP~5Rから選択される色相(H)、ならびに、2~9の明度(V)及び0.1~3の彩度(C)を有し、
前記異形着色ゲル粒子が、マンセル色相環(20色相)の5YR~10Yから選択される色相(H)、ならびに、8~9の明度(V)及び0.5~1.5の彩度(C)を有する、請求項1に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項7】
前記基材上に形成された塗膜が、マンセル色相環(20色相)の5YR~5GYから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.2~3の彩度(C)を有する、請求項1、2、3又は6のいずれか1項に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項8】
前記基材上に形成された塗膜が、マンセル色相環(20色相)の9YR~5Yから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.2~3の彩度(C)を有する、請求項1、2、3又は6のいずれか1項に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項9】
前記基材上に形成された塗膜が、マンセル色相環(20色相)の5B~10Pから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.2~1の彩度(C)を有する、請求項4又は5に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項10】
前記異形着色ゲル粒子は、短径が7mm以下であり、
前記繊維含有塗料の固形分中に含まれる前記繊維状物質の量は、1重量%以下である、請求項1又は2に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項11】
前記異形着色ゲル粒子が、
前記繊維状物質の表面にゲル状の着色合成樹脂が付着してなるものである、
請求項1又は2に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項12】
前記異形着色ゲル粒子が、
前記繊維状物質と、
合成樹脂エマルションと、
着色顔料と、
ハイドロゲルと、を含む、
請求項1又は2に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項13】
前記繊維状物質が、長さ1~20mmのガラス繊維である、
請求項1又は2に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項14】
前記樹脂製ビーズが、平均粒子径5~45μmである、
請求項1又は2に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項15】
前記樹脂製ビーズが、アクリルビーズである、
請求項1又は2に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項16】
前記異形着色ゲル粒子の短径が0.1~6mmである、
請求項1又は2に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項17】
前記繊維含有塗料の固形分中に含まれる前記繊維状物質の量が0.01~0.1重量%である、請求項1又は2に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項18】
和紙風多彩調塗膜の塗膜形成方法であって、
前記塗膜が、下塗層及び前記下塗層の上に積層される上塗層から構成されてなり、
基材上に、ベース色塗料を塗装し成膜して下塗層を形成する工程と、
前記下塗層上に、繊維含有塗料を吹付塗装により成膜して上塗層を形成する工程と
を含む、塗膜形成方法。
【請求項19】
外装材として使用される、請求項1又は2に記載の和紙風多彩調塗膜。
【請求項20】
請求項1又は2に記載の和紙風多彩調塗膜付き基材。
【請求項21】
請求項20に記載の塗膜付き基材を外装材として用いてなる建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜、塗膜形成方法、塗膜付き基材及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の外装(例えば、壁など)や内装等に、仕上げ材として、多彩模様塗料などの着色ゲル粒子を含む意匠塗料が用いられることが多くなってきた。
【0003】
ここで、多彩模様塗料は、ゲル状の二色以上の色の粒子(二色以上の着色ゲル粒子)が懸濁した塗料であり、1回の塗装で色散らし模様ができるという特徴を有する(JIS K 5667)。多彩模様塗料に用いられる着色ゲル粒子は、従来、樹脂エマルションと顔料とハイドロゲルとで構成されていた。このような多彩模様塗料は、例えば、下記特許文献1に記載されている。
【0004】
また、特に近年、建築物の外装(例えば、壁など)や内装等に高い意匠性が求められることが増えており、従来の多彩模様塗料にない斬新な意匠を実現する塗料などが切望されていた。このような斬新な意匠を実現することができる塗料は、例えば、本件出願人のうち、大橋化学工業株式会社が過去に出願した下記特許文献2に記載されている。
【0005】
特許文献2には、「繊維状物質と、合成樹脂エマルションと、着色顔料と、ハイドロゲルと、を含む、異形着色ゲル粒子。」が記載されるとともにこのような異形着色ゲル粒子を含有する塗料が記載されており、これによって「従来の多彩模様塗料などにない斬新な意匠を実現することができる」とある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003‐041196号公報
【特許文献2】特開2022‐042629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記各特許文献に記載の塗料は、着色ゲル粒子及び異形着色ゲル粒子を含んでおり、この塗料を外壁に塗装して単層で成膜した際は、異形着色ゲル粒子が含む繊維状物質自体に色・模様等があるため、異形着色ゲル粒子と着色ゲル粒子との色馴染みが悪く、浮いてしまうことがあった。
【0008】
本発明は、塗料を外壁に塗装した際の塗膜層を上塗層及び下塗層とすることで、上塗層が含む和紙の「すさ」に見立てた繊維状物質を包含した異形着色ゲル粒子及び複数種の着色ゲル粒子と、下塗層との色差並びに色相、彩度及び明度を特定の範囲に設定することで、優れた和紙の風合いを有しつつ、かつ、色馴染みが良く、多彩感があり、意匠性に優れた塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために以下の態様の塗膜などとした。
【0010】
(態様1)
基材上に形成された塗膜であって、
前記塗膜が、下塗層及び前記下塗層の上に積層される上塗層から構成され、
前記上塗層は、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、複数種の着色ゲル粒子と、樹脂製ビーズと、バインダー樹脂と、を含む繊維含有塗料を塗装し成膜した層であって、
前記繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)は5以上であり、
前記上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は24以下であり、
ΔE1>ΔE2の関係を満たす、和紙風多彩調塗膜。
【0011】
(態様2)
前記下塗層の塗膜が、マンセル色相環(20色相)の5YR~5GYから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.5~3の彩度(C)を有し、
前記異形着色ゲル粒子が、マンセル色相環(20色相)の5YR~10Yから選択される色相(H)、ならびに、8~9の明度(V)及び0.5~1.5の彩度(C)を有する、態様1に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0012】
(態様3)
前記下塗層の塗膜が、マンセル色相環(20色相)の8YR~5Yから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.5~3の彩度(C)を有し、
前記異形着色ゲル粒子が、マンセル色相環(20色相)の5YR~10Yから選択される色相(H)、ならびに、8~9の明度(V)及び0.5~1.5の彩度(C)を有する、態様1に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0013】
(態様4)
前記下塗層の塗膜が、マンセル色相環(20色相)の5B~8Pから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.1~3の彩度(C)を有し、
前記異形着色ゲル粒子が、マンセル色相環(20色相)の5YR~10Yから選択される色相(H)、ならびに、8~9の明度(V)及び0.5~1.5の彩度(C)を有する、態様1に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0014】
(態様5)
前記下塗層の塗膜が、マンセル色相環(20色相)の1PB~5PBから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.1~3の彩度(C)を有し、
前記異形着色ゲル粒子が、マンセル色相環(20色相)の5YR~10Yから選択される色相(H)、ならびに、8~9の明度(V)及び0.5~1.5の彩度(C)を有する、態様1に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0015】
(態様6)
前記下塗層の塗膜が、マンセル色相環(20色相)の10RP~5Rから選択される色相(H)、ならびに、2~9の明度(V)及び0.1~3の彩度(C)を有し、
前記異形着色ゲル粒子が、マンセル色相環(20色相)の5YR~10Yから選択される色相(H)、ならびに、8~9の明度(V)及び0.5~1.5の彩度(C)を有する、態様1に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0016】
(態様7)
前記基材上に形成された塗膜が、マンセル色相環(20色相)の5YR~5GYから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.2~3の彩度(C)を有する、態様1、2、3又は6のいずれか1態様に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0017】
(態様8)
前記基材上に形成された塗膜が、マンセル色相環(20色相)の9YR~5Yから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.2~3の彩度(C)を有する、態様1、2、3又は6のいずれか1態様に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0018】
(態様9)
前記基材上に形成された塗膜が、マンセル色相環(20色相)の5B~10Pから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.2~1の彩度(C)を有する、態様4又は5に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0019】
(態様10)
前記異形着色ゲル粒子は、短径が7mm以下であり、
前記繊維含有塗料の固形分中に含まれる前記繊維状物質の量は、1重量%以下である、
態様1~9の何れか1態様に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0020】
(態様11)
前記異形着色ゲル粒子が、
前記繊維状物質の表面にゲル状の着色合成樹脂が付着してなるものである、
態様1~10の何れか1態様に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0021】
(態様12)
前記異形着色ゲル粒子が、
前記繊維状物質と、
合成樹脂エマルションと、
着色顔料と、
ハイドロゲルと、を含む、
態様1~11の何れか1態様に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0022】
(態様13)
前記繊維状物質が、長さ1~20mmのガラス繊維である、
態様1~12の何れか1態様に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0023】
(態様14)
前記樹脂製ビーズが、平均粒子径5~45μmである、態様1~13のいずれか1態様に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0024】
(態様15)
前記樹脂製ビーズがアクリルビーズである、態様1~14のいずれか1態様に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0025】
(態様16)
前記異形着色ゲル粒子の短径が0.1~6mmである、態様1~15のいずれか1態様に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0026】
(態様17)
前記繊維含有塗料の固形分中に含まれる前記繊維状物質の量が0.01~0.1重量%である、態様1~16のいずれか1態様に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0027】
(態様18)
和紙風多彩調塗膜の塗膜形成方法であって、
前記塗膜が、下塗層及び前記下塗層の上に積層される上塗層から構成されてなり、
基材上に、ベース色塗料を塗装し成膜して下塗層を形成する工程と、
前記下塗層上に、繊維含有塗料を吹付塗装により成膜して上塗層を形成する工程と
を含む、塗膜形成方法。
【0028】
(態様19)
外装材として使用される、態様1~17のいずれか1態様に記載の和紙風多彩調塗膜。
【0029】
(態様20)
態様1~17のいずれか1態様に記載の和紙風多彩調塗膜付き基材。
【0030】
(態様21)
態様20に記載の塗膜付き基材を外装材として用いてなる建物。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、意匠性に優れた和紙の風合いを有する塗膜を提供することができる。なお、本実施形態の塗膜は、趣のある和の風合いを呈するため、和の要素を含む平屋住宅や和モダンテイストの住宅、高齢者向け及びユニバーサルデザインのバリアフリー住宅などで、独自の意匠性が要求される塗装物において好ましく使用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】マンセル色相環(20色相)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本実施形態によれば、従来にない優れた和紙の風合いを有しつつ、かつ、色馴染みが良い、独特な意匠を有する和紙風多彩調塗膜を提供する。
【0034】
本実施形態では、塗膜の色をL*a*b*表色系による色差(ΔE)で示す。
L*a*b*表色系とは、L*値は明度を、a*値は赤-緑の軸を、b*は黄-青の軸を表す混色系の表色系である。2色間の色差(ΔE)は、2色のL*a*b*値の差の2乗値の和の平方(下記式)により求められる。
(ΔE)=〔(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2〕1/2
【0035】
本願明細書での色差(ΔE)とは、ΔE1及びΔE2であり、それぞれ以下の式により求められる。
(ΔE1)=〔(ΔL1*)2+(Δa1*)2+(Δb1*)2〕1/2
ΔL1*=L2*-L1*、Δa1*=a2*-a1*、Δb1*=b2*-b1*
(ΔE2)=〔(ΔL2*)2+(Δa2*)2+(Δb2*)2〕1/2
ΔL2*=L3*-L1*、Δa2*=a3*-a1*、Δb2*=b3*-b1*
ΔE1は、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差である。
また、ΔE2は、上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差である。
【0036】
ここで、下塗層の塗膜のL*a*b*表色系による色相の値をそれぞれ、L1*値、a1*及びb1*値とする。
また、異形着色ゲル粒子のL*a*b*表色系による色相の値をそれぞれ、L2*値、a2*及びb2*値とする。
さらに、上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子のL*a*b*表色系による色相の値をそれぞれ、L3*値、a3*及びb3*値とする。
【0037】
本実施形態に係る塗膜は、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)が5以上であり、かつ、上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は24以下である。
ΔE1が5以上であると、繊維状物質が和紙の「すさ」感を表出するものとなり、和紙の風合いを出せるため、好ましい。
また、ΔE2が24以下であることで、上塗層と下塗層との色なじみが良くなるため、好ましい。
ΔE1は多彩感を表現する観点から5以上であることが好ましい。
また、ΔE2は、吹付塗装作業性の観点から24以下が好ましく、20以下がより好ましい。さらに、多彩感を表現する観点からΔE2は2以上であることが好ましい。
【0038】
さらに、本実施形態に係る塗膜は、ΔE1>ΔE2の関係を満たす。
ΔE1>ΔE2の関係を満たすことで、上塗層において着色ゲル粒子に対して繊維状物質を目立たせることができる(繊維状物質が色的に埋もれない)。
本実施形態に係る塗膜は、色差が上記特定の範囲にあることにより、和紙の風合いが強く出る。また、本実施形態に係る塗膜は、デザインに深み、多彩感があり、ムラを防止することができる。
上記特定の範囲を全て満たすことで、本実施形態の効果が得られる一方で、要件が1つでも上記範囲を外れると、本実施形態の効果が得られない(和紙感が得られない、色なじみが悪くなる、繊維状物質が目立たない等)。
【0039】
本実施形態の別の一態様では、塗膜の色をマンセル表色系で示す。「表色系」とは、色を定量的に表すための体系である。そして、「マンセル表色系」はJISZ8721で規格化された、色彩を色相、明度、彩度の3つのパラメータで表現する体系である。
【0040】
マンセル表色系において、色相(H)は、
図2に示すマンセル色相環の記号(R、Y、G、B及びP)と番号(5及び10など)との組み合わせで示すことができる。マンセル色相環において、「R」はレッドを示し、「Y」はイエローを示し、「G」はグリーンを示し、「B」はブルーを示し、「P」はパープルを示す。また、これらの中間の色相である、「YR」はイエローレッドを示し、「GY」はグリーンイエローを示し、「BG」はブルーグリーンを示し、「PB」はパープルブルーを示し、「RP」はレッドパープルを示す。
マンセル表色系において、マンセル色相環の「10色相」とは、
図2に示す通り、番号「10」を付した色相の総称である。また、マンセル色相環の「20色相」とは、
図2に示す通り、マンセル色相環の「10色相」の中間に位置する色相に番号「5」を付して「20色相」としたものである。
【0041】
マンセル表色系において、明度(V)は、0~10の値で示され、色の明るさを示す指標であり、値が小さいほど色が暗いことを示し、値が大きいほど明るいことを示す。
【0042】
マンセル表色系において、彩度(C)は、0~14の値で示され、色の鮮やかさを示す指標であり、値が小さいほど色が地味であることを示し、値が大きいほど色が鮮やかであることを示す。
【0043】
本実施形態において、塗膜の色、すなわち、マンセル表色系の色相(H)、明度(V)及び彩度(C)は、例えば、コニカミノルタ株式会社製の「色彩色差計CR‐400」によって測定することができる。
マンセル表色系の色相(H)、明度(V)及び彩度(C)の測定方法としては、塗料を塗装して成膜した塗膜を用い、塗膜10箇所の三刺激値を測定し、10箇所の平均値から計算で算出する。
【0044】
和紙の風合いを再現するため、和紙の「すさ」に見立てた繊維状物質を塗料に含有することが提案されている。しかし、繊維含有塗料が含む繊維状物質自体に色・模様等があるため、外壁に塗装した際にベース色塗料との色馴染みが悪く、浮いてしまうことがあった。
本発明者らは、本実施形態の塗膜の下塗層となるベース色塗料の色相(H)ならびに明度(V)及びの彩度(C)の検討を行った。
【0045】
本実施形態に係る塗膜形成方法は、外装材等の被塗装物品に、下塗層としてベース色塗料を塗装し成膜後、下塗層の塗膜上に、繊維状物質を含む繊維含有塗料を塗装し成膜した繊維含有塗料の塗膜(上塗層)を形成するものである。
下塗層上に、上塗層としての繊維含有塗料の塗膜が形成されているため、下塗層と上塗層とを重ね合わせた状態で見ることとなり、下層に存在するベース色塗料と繊維含有塗料が組合わさった色が塗料を外壁に塗装した場合の実際の塗膜の色となる。
5YR~10Yから選択される色相(H)、ならびに、8~9の明度(V)及び0.5~1.5の彩度(C)を有する異形着色ゲル粒子と色馴染みの良い下塗層(ベース色塗料)の塗膜の色相(H)ならびに明度(V)及びの彩度(C)の検討を行った。
【0046】
その結果、下塗層の塗膜において、マンセル色相環(20色相)の好ましくは5YR~5GY、より好ましくは8YR~5Yから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.5~3の彩度(C)を有するベース色塗料を見出した。このベース色塗料の場合、異形着色ゲル粒子を含む繊維含有塗料及びベース色塗料の塗膜は類似色相となる。
一態様において、繊維含有塗料及びベース色塗料の塗膜は類似色相であるため、組み合わせた際に馴染みやすく、和紙感及び多彩感のある意匠となる。
【0047】
また、下塗層の塗膜において、マンセル色相環(20色相)の好ましくは5B~8P、より好ましくは1PB~5PBから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.1~3の彩度(C)を有するベース色塗料を見出した。このベース色塗料の場合、異形着色ゲル粒子を含む繊維含有塗料及びベース色塗料の塗膜は補色(反対)色相となる。
別の一態様において、繊維含有塗料及びベース色塗料の塗膜は補色(反対)色相であることを考慮すると、通常、馴染まないようにも思われるが、異形着色ゲル粒子とベース色塗料とのコントラスト効果により、組み合わせた際に馴染みやすく、かつ、色みが際立つため、採用した。
【0048】
さらに、下塗層の塗膜において、マンセル色相環(20色相)の好ましくは10RP~5Rから選択される色相(H)、ならびに、2~9の明度(V)及び0.1~3の彩度(C)を有するベース色塗料を見出した。
別の一態様において、異形着色ゲル粒子がY~YG色相であり、ベース色塗料の塗膜が低明度色(明るさの度合いが低い色)であるため、異形着色ゲル粒子を含む繊維含有塗料とベース色塗料との対比効果により色みが際立ち、かつ、組み合わせた際に馴染みやすくなるため、採用した。
【0049】
繊維状物質を含む繊維含有塗料(上塗層)とベース色塗料(下塗層)を塗装し成膜した塗膜の色相、彩度及び明度を上記特定の範囲に設定することで、優れた和紙の風合いを有しつつ、かつ、色馴染みが良い塗膜とすることができる。
また、ベース色塗料の塗膜(下塗層)に、上塗層としての繊維含有塗料の塗膜が形成されているため、実質的に本実施形態の塗膜の色相等とは、下層に存在するベース色塗料と繊維含有塗料が組合わされて発現した色相等のことを指す。
【0050】
基材上に形成された塗膜が、マンセル色相環(20色相)の5YR~5GYから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.2~3の彩度(C)を有することが好ましい。
【0051】
基材上に形成された塗膜が、マンセル色相環(20色相)の9YR~5Yから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.2~3の彩度(C)を有することが好ましい。
【0052】
基材上に形成された塗膜が、マンセル色相環(20色相)の5B~10Pから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.2~1の彩度(C)を有することが好ましい。
【0053】
一態様において、本実施形態の塗膜は、
基材上に形成された塗膜であって、
塗膜が、下塗層及び下塗層の上に積層される上塗層から構成され、
上塗層は、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、複数種の着色ゲル粒子と、樹脂製ビーズと、バインダー樹脂と、を含む繊維含有塗料を塗装し成膜した層であって、
繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)は5以上であり、
上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は24以下であり、
ΔE1>ΔE2の関係を満たす、和紙風多彩調塗膜であることが好ましい。
【0054】
また、別の一態様において、本実施形態の塗膜は、
下塗層の塗膜が、マンセル色相環(20色相)の5YR~5GYから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.5~3の彩度(C)を有し、
異形着色ゲル粒子が、マンセル色相環(20色相)の5YR~10Yから選択される色相(H)、ならびに、8~9の明度(V)及び0.5~1.5の彩度(C)を有することが好ましい。
【0055】
さらに、別の一態様において、本実施形態の塗膜は、
下塗層の塗膜が、マンセル色相環(20色相)の8YR~5Yから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.5~3の彩度(C)を有し、
異形着色ゲル粒子が、マンセル色相環(20色相)の5YR~10Yから選択される色相(H)、ならびに、8~9の明度(V)及び0.5~1.5の彩度(C)を有することが好ましい。
【0056】
加えて、別の一態様において、本実施形態の塗膜は、
下塗層の塗膜が、マンセル色相環(20色相)の5B~8Pから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.1~3の彩度(C)を有し、
異形着色ゲル粒子が、マンセル色相環(20色相)の5YR~10Yから選択される色相(H)、ならびに、8~9の明度(V)及び0.5~1.5の彩度(C)を有することが好ましい。
【0057】
その上、別の一態様において、本実施形態の塗膜は、
下塗層の塗膜が、マンセル色相環(20色相)の1PB~5PBから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.1~3の彩度(C)を有し、
異形着色ゲル粒子が、マンセル色相環(20色相)の5YR~10Yから選択される色相(H)、ならびに、8~9の明度(V)及び0.5~1.5の彩度(C)を有することが好ましい。
【0058】
また、別の一態様において、本実施形態の塗膜は、
下塗層の塗膜が、マンセル色相環(20色相)の10RP~5Rから選択される色相(H)、ならびに、2~9の明度(V)及び0.1~3の彩度(C)を有し、
異形着色ゲル粒子が、マンセル色相環(20色相)の5YR~10Yから選択される色相(H)、ならびに、8~9の明度(V)及び0.5~1.5の彩度(C)を有することが好ましい。
【0059】
さらに、別の一態様において、本実施形態の塗膜は、
基材上に形成された塗膜が、マンセル色相環(20色相)の5YR~5GYから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.2~3の彩度(C)を有することが好ましい。
【0060】
加えて、別の一態様において、本実施形態の塗膜は、
基材上に形成された塗膜が、マンセル色相環(20色相)の9YR~5Yから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.2~3の彩度(C)を有することが好ましい。
【0061】
その上、別の一態様において、本実施形態の塗膜は、
基材上に形成された塗膜が、マンセル色相環(20色相)の5B~10Pから選択される色相(H)、ならびに、3~9の明度(V)及び0.2~1の彩度(C)を有することが好ましい。
【0062】
以下、塗膜及び塗料などについて例示説明するが、本発明は、以下の実施形態(以下、「本実施形態」)などに限定されるものではない。
【0063】
・塗膜
本実施形態の塗膜は、基材上に形成された和紙風多彩調塗膜である。本実施形態の塗膜は、下塗層及び下塗層の上に積層される上塗層から構成されている。
【0064】
(下塗層)
下塗層は、ベース色塗料を基材上に塗装し成膜することで、形成された塗膜層である。
下塗層は1層に限られず、2層以上の複数層であってもよい。例えば、下塗層が2層である場合、基材上にベース色塗料を塗装し成膜して1層目の塗膜を形成した後、1層目の塗膜上に再度、1層目と同じベース色塗料または1層目と異なるベース色塗料を塗装し成膜して2層目の塗膜を形成する。
下塗層の塗膜の色相等は、最表面の塗膜層を色彩色差計によって測定することができる。
測定方法は、最表面の塗膜において10箇所を抽出して、三刺激値を色彩色差計CR‐400(コニカミノルタ株式会社製)を用いて測定し、10箇所の平均値から計算によりL*a*b*値による色差並びにマンセル表色系の色相、明度及び彩度を算出できる。
【0065】
(ベース色塗料)
ベース色塗料は、本実施形態の塗膜の色調のベースとなる色(単色)である。
単色とは、1種類の色で他の色が混じっていない状態の色相である。
ベース色塗料としては、合成樹脂エマルションペイントが挙げられる。合成樹脂エマルションペイントは、合成樹脂エマルションと着色顔料を主な原料とする液状の塗料である。
合成樹脂エマルションペイントは、樹脂(バインダー)及び着色顔料を含む。
樹脂(バインダー)としては、ホルムアルデヒドを含む樹脂以外であれば、特に制限はなく使用できるが、耐候性が良いアクリルシリコーン樹脂等を使用することが好ましい。
着色顔料としては、後述の着色顔料と同様のものを使用できる。
合成樹脂エマルションペイントとしては、一般的な合成樹脂エマルションペイントを使用することができる。一般的な合成樹脂エマルションペイントとしては、JIS K5663:2003などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0066】
ベース色塗料は、フィラー、着色ゲル粒子、樹脂製ビーズ及び造膜助剤、防藻防カビ剤、増粘剤等の助剤を含んでもよい。
なお、ベース色塗料が含む着色ゲル粒子、樹脂製ビーズは、後述の着色ゲル粒子、樹脂製ビーズと同様のものを使用できる。
【0067】
ベース色塗料において、基材表面の細孔などを隠蔽しやすくなる観点から、フィラーの含有率が30重量%を超えて70重量%未満であることが好ましい。
【0068】
ベース色塗料が含むフィラーとしては、珪砂、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク等が例示される。フィラーの含有率は、ベース色塗料において、35~65重量%であることがより好ましく、35~60重量%であることがさらに好ましく、40~60重量%であることが特に好ましい。
【0069】
下塗層に関しては、ベース色塗料の色調となる着色顔料等を所望の塗膜の色になるように、着色顔料を含む合成樹脂エマルションペイントを配合すればよい。
下塗層は、所望の塗膜の色になるように着色ゲル粒子等を含んでもよい。
【0070】
下塗層の塗膜と繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子との色差(ΔE1)5以上であり、かつ、
上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)24以下であり、かつ、
ΔE1>ΔE2の関係を満たす限り、実施態様に応じて、下塗層の塗膜における所望の着色ゲル粒子及び合成樹脂エマルションペイントを選択できる。
下塗層としてベース色塗料を規定量(例えば、0.9~1.1kg/m2)を塗布すると、基材表面の細孔などを隠蔽しやすくなる観点から好ましい。
【0071】
下塗層の厚みを200~1000μmとするのが好ましく、200~600μmとするのがより好ましく、300~400μmとするのが更に好ましい。
【0072】
(上塗層)
上塗層は、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、複数種の着色ゲル粒子と、樹脂製ビーズと、バインダー樹脂と、を含む繊維含有塗料を塗装し成膜した層である。
また、上塗層は、繊維含有塗料を下塗層に塗装し成膜することで、ベース色塗料を塗装し成膜した塗膜層(下塗層)上に積層される。
上塗層の厚みを30~400μmとするのが好ましく、40~200μmとするのがより好ましい。
【0073】
(繊維含有塗料)
繊維含有塗料は、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、樹脂製ビーズと、バインダー樹脂と、を含む。繊維含有塗料は、必要に応じて、増粘剤等の各種添加剤を含んでもよい。
なお、繊維含有塗料が含む異形着色ゲル粒子、樹脂製ビーズ及びバインダー樹脂は、後述の異形着色ゲル粒子、樹脂製ビーズ及びバインダー樹脂と同様のものを使用できる。
【0074】
1.異形着色ゲル粒子
異形着色ゲル粒子は繊維状物質を含む。詳細には、異形着色ゲル粒子は、繊維状物質の表面にゲル状の着色合成樹脂が付着してなる。より詳細には、異形着色ゲル粒子は、繊維状物質、合成樹脂エマルション、着色顔料及びハイドロゲルを含む。これら各構成材料について以下に例示説明する。
また、異形着色ゲル粒子には、真円形状、楕円形状及び円盤状ではない異形形状の着色ゲル粒子のほか、繊維状物質による突起を有する異形形状の着色ゲル粒子が含まれる。
【0075】
[繊維状物質]
繊維状物質は、異形着色ゲル粒子の必須成分である。
【0076】
繊維状物質としては、例えば、無機繊維や有機繊維を用いることができる。ここで「繊維状物質」とは、アスペクト比が20以上の形状を有する物質である。繊維状物質のアスペクト比は、繊維状物質の単繊維直径及び長さに基づいて、単繊維直径に対する長さの比として算出される。繊維状物質の単繊維直径及び長さの測定方法は後述する。繊維状物質のアスペクト比は、好ましくは50以上、より好ましくは100以上、さらに好ましくは200以上、最も好ましくは300以上である。繊維状物質のアスペクト比は、400以上であってもよい。
【0077】
無機繊維としては、例えば、ロックウール、グラスウール、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ‐アルミナ複合酸化物繊維、炭素繊維、炭化珪素繊維等を挙げることができる。
【0078】
有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維等のポリマー繊維、木質繊維、セルロース繊維などを挙げることができる。
【0079】
異形着色ゲル粒子には、耐候性の面などから、繊維状物質として無機繊維を用いることが好ましい。なかでも、ガラス繊維を用いることが好ましい。
【0080】
繊維状物質は、一部または全部が束状(チョップドストランド状)であることが好ましい。
【0081】
繊維状物質の長さは、好ましくは1~20mm、より好ましくは3~15mm、さらに好ましくは4~10mm、最も好ましくは5~7mmである。
繊維状物質として長さ1~20mmのガラス繊維を用いることで、塗装用具に詰まりが発生しにくく吹付作業性により優れた塗料となる。
繊維状物質が束状(チョップドストランド状)である場合、繊維状物質の長さは、JIS R3420:2013 ガラス繊維一般試験方法、7.8チョップドストランドの長さに従って測定する。
【0082】
また、繊維状物質の単繊維直径(フィラメント径)は、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~50μm、さらに好ましくは3~20μm、最も好ましくは5~15μmである。単繊維直径は、JIS R3420:2013 ガラス繊維一般試験方法、7.6単繊維直径に従って測定する。
【0083】
異形着色ゲル粒子における繊維状物質の含有量は、後述する合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、好ましくは0.1~30重量部であり、より好ましくは3~15重量部、さらに好ましくは1~10重量部、最も好ましくは0.1~0.5重量部である。
【0084】
また、最終的に、繊維含有塗料の固形分中に含まれる繊維状物質の量が1重量%以下となることが好ましい。例えば、繊維含有塗料の固形分中に含まれる繊維状物質の量を0.1~1重量%とすることがより好ましく、0.01~0.1重量%とすることがさらに好ましい。
【0085】
繊維含有塗料の固形分中に含まれる繊維状物質の量が1重量%以下であることによって、塗装用具に詰まりが発生しにくく、より吹付作業性に優れた塗料となる。
また、繊維含有塗料の固形分中に含まれる繊維状物質の量が1重量%以下であることによって、塗膜から繊維状物質がはみ出さないため、手触りも良く、安全性を確保することができる。
吹付塗装作業性及び安全性の観点から、繊維含有塗料の固形分中に含まれる繊維状物質の量を0.1~1重量%とすることが好ましく、0.01~0.1重量%することがより好ましい。
【0086】
[合成樹脂エマルション]
合成樹脂エマルションは、異形着色ゲル粒子及び後述する着色ゲル粒子に用いられる。合成樹脂エマルションは、合成樹脂粒子が水又は含水溶媒に乳化分散したものである。
【0087】
合成樹脂エマルションの樹脂成分は、特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、エチレン‐アクリル樹脂、酢酸ビニル‐アクリル樹脂、スチレン‐アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン‐アクリル樹脂、シリコン‐アクリル樹脂等公知の合成樹脂を用いることができる。なかでも、耐候性の面から、アクリル樹脂、特にアクリルシリコーン系樹脂を用いることが好ましい。例えば、アクリルシリコーン樹脂やセラミック変性アクリルシリコーン樹脂は好適である。
【0088】
アクリルシリコーン樹脂エマルションとして、例えば、株式会社日本触媒製「ユーダブルEF-023」が挙げられる。
【0089】
[着色顔料]
着色顔料は、ベース色塗料、異形着色ゲル粒子及び後述する着色ゲル粒子に用いられる。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄(酸化第二鉄:ベンガラ)、フタロシアニンブルー、オーカー、群青、カーボンブラックなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。白色の異形着色ゲル粒子とする場合には、白色顔料としての酸化チタンを用いる場合が多いと考えられる。
【0090】
異形着色ゲル粒子における着色顔料の含有量は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、好ましくは30~300重量部、より好ましくは50~250重量部、最も好ましくは100~200重量部である。
【0091】
ベース色塗料において、着色顔料の含有率が0.1重量%以上15重量%未満であることにより、繊維含有塗料と色馴染みが良くなり、繊維含有塗料の透けを防止しやすくなるため、好ましい。
また、繊維含有塗料において、着色顔料の含有率が0.1重量%以上10重量%未満であることにより、ベース色塗料と色馴染みが良くなり、多彩感が出るため好ましい。
更に、本実施形態の塗料(ベース色塗料及び繊維含有塗料)において、色馴染み及び多彩感の観点から、着色顔料の含有率は、0.1重量%以上10重量%未満であることが好ましく、0.1重量%以上8重量%未満であることがより好ましく、0.3重量%以上8重量%未満であることがさらに好ましく、0.5~8重量%であることが特に好ましい。
【0092】
[ハイドロゲル]
ハイドロゲルは、異形着色ゲル粒子及び後述する着色ゲル粒子に用いられる。ハイドロゲルは、ハイドロゲル形成物質に水が保持されてゲルを形成している構造を有する。ハイドロゲル形成物質は、ゲル中の水を保持するためのネットワーク構造を形成してゲル化作用を発現する化合物であり、ネットワーク構造の主要部となるハイドロゲル構成材(ハイドロゲル主原料)と、ネットワーク構造の継ぎ手部となるハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)とが反応又は結合して形成される。
【0093】
ハイドロゲル構成材(ハイドロゲル主原料)は、ハイドロゲルを形成できるものであれば特に限定されず、有機化合物であっても無機化合物であってもよく、両者を混合して使用してもよい。
【0094】
有機化合物としては水酸基含有有機高分子が好ましい。例えば、ポリビニルアルコール、グアーガム、カラギーナン、キサンタンガム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、及びこれらの誘導体等を用いることができる。なかでも、樹脂等が良好に分散され、安定性に優れるハイドロゲルが得られる点で、ポリビニルアルコール、グアーガム、グアーガム誘導体(ヒドロキシプロピル化等の変性)が好ましい。
【0095】
無機化合物としては、水膨潤性ケイ酸塩化合物が好ましい。例えば、ヘクトライト、モンモリロナイト、ベントナイト、アタパルジャイト等の水膨潤性粘土鉱物を用いることができる。これらの水膨潤性ケイ酸塩化合物は、天然物である鉱物は勿論のこと、合成物であってもよい。なかでも、安定性に優れるハイドロゲルが得られる点で、合成ヘクトライトが好ましい。
【0096】
ハイドロゲル構成材と反応又は結合して、ネットワーク構造の継ぎ手部となるハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)としては、リン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩等を用いることができる。水に溶解し難い良好なハイドロゲルを形成できる点で、リン酸塩及びホウ酸塩が好ましい。ハイドロゲル構成材がヘクトライト等の水膨潤性ケイ酸塩化合物の場合はリン酸塩が特に好ましく、ハイドロゲル構成材がポリビニルアルコール、グアーガム等の水酸基含有有機高分子の場合はホウ酸塩が特に好ましい。水中で安定なハイドロゲルを形成できるからである。
リン酸塩としては、ピロリン酸ナトリウム等のリン酸ナトリウム類、ピロリン酸カリウム等のリン酸カリウム類などを用いることができ、ホウ酸塩としては五ホウ酸アンモニウム等のホウ酸アンモニウム類、ホウ砂などを例示できる。
【0097】
ハイドロゲル構成材(ハイドロゲル主原料)とハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)が反応又は結合し、ハイドロゲル形成物質によるネットワーク構造を形成するとき、両者が単に付加等、加算的に結合してもよく、脱水等、それらの一部の原子が脱離して結合する縮合であってもよい。
【0098】
なお、ハイドロゲルについてハイドロゲル構成材とハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)によるネットワーク構造で説明したが、ハイドロゲルであれば、ネットワーク構造形成とは異なる作用によるゲル形成であってもよい。
【0099】
[異形着色ゲル粒子の製造方法]
次に、異形着色ゲル粒子の製造方法を例示説明する。
【0100】
異形着色ゲル粒子は、例えば、繊維状物質、合成樹脂エマルション、着色顔料及びハイドロゲル構成材を含有する異形着色ゲル原料組成物を、ハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)を含む水性媒体に添加して、ハイドロゲル構成材とハイドロゲル不溶化剤を反応させてハイドロゲル形成物質(ハイドロゲル)を生成させることで、得ることができる。
このようにして得られた異形着色ゲル粒子は、繊維状物質の表面(表面の概ね全面)にゲル状の着色合成樹脂が付着している。ゲル状の着色合成樹脂は、合成樹脂エマルションと、着色顔料と、ハイドロゲルと、からなる。
異形着色ゲル粒子は、繊維状物質と、合成樹脂エマルションと着色顔料とハイドロゲルとを含む。繊維状物質は、異形着色ゲル粒子の芯材ともいえる。
【0101】
まず、繊維状物質、合成樹脂エマルション、着色顔料、ハイドロゲル構成材、及び所望により水溶媒、体質顔料、防腐剤、増粘剤、各種添加剤などの任意成分を添加して均一に分散等するまで撹拌し、異形着色ゲル原料組成物を調製する。
【0102】
異形着色ゲル原料組成物中における合成樹脂エマルションの含有量は、合成樹脂固形分ベースで、好ましくは1~30重量%、より好ましくは5~25重量%、さらに好ましくは8~20重量%、最も好ましくは10~18重量%である。
【0103】
異形着色ゲル原料組成物中における着色顔料の含有量は、好ましくは1~35重量%、より好ましくは5~30重量%、さらに好ましくは10~28重量%、最も好ましくは15~25重量%である。
【0104】
異形着色ゲル原料組成物中のハイドロゲル構成材の含有量は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、好ましくは固形分で1~20重量部、より好ましくは固形分で2~15重量部、さらに好ましくは4~13重量部、最も好ましくは固形分で5~10重量部である。
【0105】
異形着色ゲル原料組成物を撹拌する時間によって、ゲル化前の粒子である異形着色ゲル粒子の大きさが変わってくる。ここで、異形着色ゲル粒子の短径(短辺の粒子径)が7mm以下になるように攪拌することが好ましい。このようにすれば異形着色ゲル粒子の短径も7mm以下となる。塗装用具に詰まりが発生しにくく、より吹付塗装作業性に優れることから、異形着色ゲル粒子の短径は0.1~6mmが好ましい。
ここで、短径は、平面視において、異形着色ゲル粒子と外接する面積が最小となる外接長方形の短辺寸法をいう。
【0106】
つづいて、得られた異形着色ゲル原料組成物(上記異形着色粒子を含む)を、ハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)を含む水溶液に添加する。このとき、ハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)を含む水溶液を攪拌しながら異形着色ゲル原料組成物を徐々に添加し、その後も、しばらく攪拌を続けることが好ましい。
【0107】
ハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)の水溶液中濃度は、好ましくは0.01~1.0重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%、さらに好ましくは0.1~0.4重量%、最も好ましくは0.2~0.3重量%である。
【0108】
撹拌終了後、安定したゲルを形成させるため、室温下に1時間以上、好ましくは5時間以上静置することが望ましい。形成されるゲルが平衡状態に達する点で、静置時間の上限としては通常24時間程度である。
上記製造方法によって、ネットワーク構造等を有するゲル形成物質が形成され、樹脂等が分散された水が、当該ネットワーク構造等に保持されて異形着色ゲル粒子が得られる。
【0109】
2.着色ゲル粒子
着色ゲル粒子は繊維状物質を含まない。このような着色ゲル粒子は周知の材料であり、例えば、前記文献(特開2003-041196号公報)などに記載されているため、詳細な説明を省略する。
また、上塗層は、複数種の着色ゲル粒子を含む。
上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)24以下であり、かつ、
繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)>ΔE2の関係を満たす限り、実施態様に応じて、上塗層の塗膜における所望の着色ゲル粒子の組み合わせを選択できる。
ここで、具体的には上塗層において最も含有量が多い着色ゲル粒子とは、複数種の着色ゲル粒子全体(揮発分+不揮発分)で30重量%以上を占めるものをいう。
【0110】
着色ゲル粒子は、例えば、前述した1.異形着色ゲル粒子において、その必須材料である繊維状物質を配合することなく同様の製造方法を実施することによって得ることができる。
【0111】
3.樹脂製ビーズ
樹脂製ビーズとして、各種の熱可塑性樹脂ビーズや熱硬化性樹脂ビーズを用いることができる。樹脂製ビーズには、アクリル系樹脂製ビーズ(アクリルビーズ)、架橋ポリスチレンビーズ、ウレタンビーズ等が挙げられるが、これらに限定するものではない。樹脂製ビーズとしてはアクリルビーズを用いることが好ましい。
アクリルビーズを用いることで、耐候性において優位な効果を発揮できる塗膜を形成できる。
【0112】
また、樹脂製ビーズの形状は、特に限定されないが、球状又は略球状のビーズが比較的安価に得られることから好ましい。樹脂製ビーズの大きさは、平均粒子径5~45μmであることが好ましく、10~30μmであることがより好ましい。この範囲であれば添加量に対し効果的に光沢を低下させることができ、より優れた和紙の風合いを有する塗膜を形成することができる。樹脂製ビーズとして、中実ビーズのほか中空ビーズを用いることができる。平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所 SALD‐2200)を用いて測定することができる。
【0113】
さらに、樹脂製ビーズは、バインダー樹脂の固形分100重量部に対して1~100重量部含まれるように配合する。樹脂製ビーズは、バインダー樹脂の固形分100重量部に対して5~50重量部含まれるように配合することが好ましく、バインダー樹脂の固形分100重量部に対して10~30重量部含まれるように配合することが最も好ましい。この範囲であれば塗膜の伸び率低下を抑えつつ、効果的に光沢を低下させることが出来る。
【0114】
4.バインダー樹脂
バインダー樹脂としては、特に制限されないが、エマルション樹脂、特に水系エマルション樹脂を用いることが好ましい。水系エマルション樹脂は、乳化剤によって親水化され、水の中に分散した状態で存在している微粒子状の樹脂である。水系エマルション樹脂の樹脂成分は、特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、エチレン‐アクリル樹脂、酢酸ビニル‐アクリル樹脂、スチレン‐アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン‐アクリル樹脂、シリコン‐アクリル樹脂等公知の合成樹脂を用いることができる。なかでも、耐候性の面から、アクリル樹脂、特にアクリルシリコーン系樹脂を用いることが好ましい。例えば、アクリルシリコーン樹脂やセラミック変性アクリルシリコーン樹脂は好適である。
【0115】
アクリルシリコーン樹脂エマルションとして、例えば、株式会社日本触媒製「ユーダブルEF-023」が挙げられる。
【0116】
5.繊維含有塗料の製造方法
上記異形着色ゲル粒子、着色ゲル粒子、樹脂製ビーズ及びバインダー樹脂を用いて繊維含有塗料を製造する。得られる繊維含有塗料は、異形着色ゲル粒子と着色ゲル粒子の色調が異なる場合などゲル状の二色以上の色の粒子が懸濁した塗料の場合は、多彩模様塗料となる。
【0117】
繊維含有塗料の製造方法としては、特に制限されず、通常の塗料の製造方法と同様、各材料を所定の割合で混合、攪拌して塗料を得ることができる。このとき、前述したように、樹脂製ビーズが、バインダー樹脂の固形分100重量部に対して1~100重量部含まれるように配合するとともに、塗料の固形分中に含まれる繊維状物質の量が1重量%以下(例えば、0.01~1重量%)となるように異形着色ゲル粒子(短径が7mm以下)を配合する必要がある。
異形着色ゲル粒子の短径が7mm以下であり、塗料の固形分中に含まれる繊維状物質の量が1重量%以下であることによって、塗装用具に詰まりが発生しにくく吹付塗装作業性に優れる。
【0118】
6.ベース色塗料の製造方法
上記合成樹脂エマルションペイント等を用いてベース色塗料を製造する。
【0119】
ベース色塗料の製造方法としては、特に制限されず、通常の塗料の製造方法と同様、各材料を所定の割合で混合、攪拌して塗料を得ることができる。
【0120】
[塗膜形成方法]
本実施形態に係る塗膜形成方法は、基材上に、ベース色塗料を塗布し、下塗層を形成する工程と、下塗層上に、繊維含有塗料を塗布し、上塗層を形成する工程とを含む。
一態様において、基材等の被塗装物品に、ベース色塗料を塗装し成膜して下塗層を形成する。そして、下塗層上に、上塗層として、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、複数種の着色ゲル粒子と、樹脂製ビーズと、バインダー樹脂と、を含む繊維含有塗料を塗装し成膜した塗膜を形成する。
また、本実施形態に係る上塗層、下塗層、ベース色塗料及び繊維含有塗料に関する説明は、前記同様である。
【0121】
下塗層を形成する工程においては、基材上の気泡やザラ目、細孔等を充填するために、例えば、ベース色塗料を規定量(例えば0.9~1.1kg/m2)、万能ガンで吹き付け、防水性と仕上げの良好な状態を確保することが好ましい。
【0122】
次に上塗層を形成する工程においては、下塗層の表面上に繊維含有塗料を塗布し、上塗層を形成する。例えば、繊維含有塗料を所要量(例えば0.35~0.45kg/m2)、万能ガンで塗付量が均一になるように吹付塗装することが好ましい。これにより、上塗層として、意匠性の高い塗膜を下塗層上に形成することができる。
【0123】
上塗層を形成する工程後、乾燥時間は、例えば23℃環境下で24時間以上が好ましい。
下塗層であるベース色塗料の塗膜が形成された基材上に、繊維含有塗料の塗膜が形成されているため、和紙の風合いを持ちつつ、ムラを防止し、多彩感、デザインに富んだ塗膜となる。
【0124】
本実施形態に係る上塗層及び下塗層の塗膜形成方法としては、ベース色塗料及び繊維含有塗料を刷毛、ローラー、吹付塗装等の通常の方法により、塗膜を形成することができるが、吹付塗装等により塗膜を形成することが好ましい。
また、所望に応じて、上塗層及び下塗層の塗装において複数回塗装することも可能である。
本実施形態の塗膜の優れた和紙の風合いを活かしつつ、効率よく塗装することができるため、上塗層は、吹付塗装を用いた塗膜形成方法が好ましい。
【0125】
これら塗料が塗装、成膜される基材は特に限定されない。例えば、本実施形態の塗膜は、繊維含有塗料及びベース色塗料を建築物の外装材(外壁等)や内装材(内壁等)に塗装することにより、形成される。本実施形態の塗膜は、外装材として使用されることが好ましい。
基材の材質も、特に限定されない。例えば、ガルバリウム鋼板(登録商標)やトタン等の各種金属、FRP等の複合材、磁器、タイル、コンクリート、軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、及びプラスティックボードを用いることができ、ALCパネルが好ましい。
ALCパネルは素地のままのパネルを使用してもよく、また防水性能の確保や、下塗層の密着性確保等の目的で、ALCパネル表面にシーラーやプライマー処理等を施してもよい。
【0126】
本実施形態の塗膜は、基材に用いることができる。また、本実施形態の塗膜付き基材を外装材として建物に使用することができる。
なお、本実施形態の塗膜は、趣のある和の風合いを呈するため、和の要素を含む平屋住宅や和モダンテイストの住宅、高齢者向け及びユニバーサルデザインのバリアフリー住宅などで、独自の意匠性が要求される建築物内外装材において好ましく使用される。
このような塗膜を外装材として備えた本実施形態の建物では、外壁が、意匠性に優れた和紙の風合いを有するものとなる。
また、新築された建造物の基材だけでなく、既存の建造物の基材を塗り替える際にも本実施形態の塗膜を用いることができる。
【実施例0127】
以下、実施例をもって本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。実施例中、量比などは重量に基づく値である。
【0128】
1.吹付塗装作業性及び和紙の風合いの評価
吹付塗装作業性については、万能ガン(口径5.5mm)を用いて、実際に吹付作業を行って評価した。
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装して、作業者が作業しやすく、目詰まりとムラを発生させずに作業できる場合を良好な評価(○)とした。なかでも、特に作業性に優れ、目詰まりやムラ発生の心配なく作業できる場合を特に良好な評価(◎)とした。
一方で、目詰まり又はムラが発生する場合を悪い評価(×)とした。
【0129】
和紙の風合いについては、成膜後、10人で目視確認を行い、和紙の風合いが表現されていると回答した人が8割以上の場合を良好な評価(○)とした。なかでも、特に、得られた塗膜について、和紙の風合いが表現されていると回答した人が10割の場合、特に良好な評価(◎)とした。一方、和紙の風合いが表現されていると回答した人が5割以下の場合、悪い評価(×)とした。
【0130】
2.着色ゲル粒子及び異形着色ゲル粒子の作成
下記表1の配合表に基づき、塗料に用いられる着色ゲル粒子及び異形着色ゲル粒子を作成した。
【0131】
(着色ゲル粒子A‐1)
合成樹脂エマルション(株式会社日本触媒製「ユーダブルEF-023」)に着色剤(着色顔料を含む)を表1に記載の所定割合で配合した後、体質顔料(白石カルシウム株式会社製「ホワイトン305」)と水道水を加えた。その後、ハイドロゲル構成材であるPVA樹脂溶液(株式会社クラレ社製「エバノール71‐30」)と多糖類(DSP五協フード&ケミカル社製「エコーガムSF」の1%水溶液)とケイ酸塩化合物(BYK製「ラポナイトRD」)を配合して混合攪拌し着色ゲル原料組成物を得た。
得られた混合攪拌溶液(着色ゲル原料組成物)を、ハイドロゲル不溶化剤(0.2重量% ホウ酸アンモニウム)を含む水溶液に撹拌しながら投入して、粒子径の短径が平均2mmの大きさになるまで撹拌を続け粒子を不溶化し、粒子径の短径が平均4mmの着色ゲル粒子を得た。
【0132】
粒子径の短径は、顕微鏡観察(×20倍)を行って、視野に入る着色ゲル粒子について、平面視において外接する面積が最小となる外接長方形の短片寸法を測定して最も大きな短辺寸法を粒子径の短径データとし、視野を移動させてこの作業を5回行って、短径データの平均値を粒子径の短径とした。
【0133】
【表1】
なお、表1に記載のL値等は、着色ゲル粒子A‐1、A‐2及びA‐3では、L3
*値等を指し、異形着色ゲル粒子では、L2
*値等を指す。
【0134】
(着色ゲル粒子A‐2,A‐3)
表1の配合表に基づき、上記着色ゲル粒子A‐1の場合と同様の作成手順で、着色ゲル粒子A‐2,A‐3を得た。これらの着色ゲル粒子は、上記着色ゲル粒子A‐1とは、L3*値等が異なる。
【0135】
(異形着色ゲル粒子)
まず、合成樹脂エマルション(株式会社日本触媒製「ユーダブルEF-023」)に繊維状物質としての長さ6mmのガラス繊維(日東紡績株式会社製「チョップドストランドCS 6J‐888S」)及び着色剤を表1に記載の所定割合で配合した後、体質顔料(白石カルシウム株式会社製「ホワイトン305」)と水道水を加えた。その後、ハイドロゲル構成材であるPVA樹脂溶液(株式会社クラレ社製「エバノール71‐30」)と多糖類(DSP五協フード&ケミカル社製「エコーガムSF」の1%水溶液)とケイ酸塩化合物(BYK製「ラポナイトRD」)を表1に記載の処方で配合して混合攪拌し異形着色ゲル原料組成物を得た。
得られた混合攪拌溶液(異形着色ゲル原料組成物)を、ハイドロゲル不溶化剤(0.2重量% ホウ酸アンモニウム)を含む水溶液に撹拌しながら投入して、概ね0.1mmの大きさになるまで撹拌を続け粒子を不溶化して、粒子径の短径が平均0.1mmの異形着色ゲル粒子を得た。
【0136】
3.繊維含有塗料、ベース色塗料、及び塗膜の作成
(実施例1)
上記着色ゲル粒子及び異形着色ゲル粒子のうち、表1に示す各ゲル粒子を用いて、表2に基づき、繊維含有塗料を作成した。
樹脂製ビーズとして、平均粒子径20μmのアクリルビーズ(積水化成品工業株式会社製「テクポリマーMBX‐20」)、バインダー樹脂:クリヤー(合成樹脂エマルション)として(株式会社日本触媒製「ユーダブルEF-023/テキサノール混合液」)を用いた。
なお、アクリルビーズ含有率は、クリヤーの固形分を100重量部とした場合の、アクリルビーズの量(重量部)である。また、表1におけるガラス繊維含有率は、繊維含有塗料固形分全体(100重量%)におけるガラス繊維の重量%を示す。
【0137】
得られた塗料について、塗装し成膜した。具体的には、基材に、下塗層としてベース色塗料を塗装し成膜した。基材は、ALCパネル(旭化成建材株式会社製)を使用した。そして、下塗層である、ベース色塗料の塗膜上に、上塗層として繊維含有塗料を塗装し成膜して、本実施形態の塗膜を作成した。
得られた塗膜について、L*a*b*値によるマンセル表色系の色相、明度及び彩度を測定した。測定方法としては、塗料を塗装して成膜した塗膜を用い、塗膜10箇所の三刺激値をコニカミノルタの色彩色差計CR‐400を用いて測定し、10箇所の平均値から計算でL*a*b*値による色差並びにマンセル表色系の色相、明度及び彩度を算出した。
ここで、塗膜における下塗層及び上塗層部分の色相等は、それぞれ、ベース色塗料に含まれる合成樹脂エマルションペイント及び着色ゲル粒子等、並びに繊維含有塗料に含まれる異形着色ゲル粒子及び着色ゲル粒子の色相、明度及び彩度並びに色差を調整することで制御することができる。
【0138】
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は特に良好であった。
また、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)は17.0であり、上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は3.8であった。
さらに、得られた塗料の下塗層の塗膜は、マンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、8.8YR、6.6及び1.4であり、異形着色ゲル粒子の色相はマンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、2.5Y、8.5及び1であった。
本実施形態の塗膜は、色差及びマンセル表色系の色相等の特定の数値範囲及び関係を満たすため、和紙の風合いが強く出る。目視による評価においても和紙の風合いを表現できていると回答した人数は10割であった。また、本実施形態の塗膜は、デザインに深み、多彩感があり、ムラを防止することができた。
【0139】
【0140】
(実施例2)
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は特に良好であった。
また、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)は25.0であり、上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は8.9であった。
さらに、得られた塗料の下塗層の塗膜は、マンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、0.6Y、5.9及び2.0であり、異形着色ゲル粒子の色相はマンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、2.5Y、8.5及び1であった。
本実施形態の塗膜は、色差及びマンセル表色系の色相等の特定の数値範囲及び関係を満たすため、和紙の風合いが強く出る。目視による評価においても和紙の風合いを表現できていると回答した人数は10割であった。また、本実施形態の塗膜は、デザインに深み、多彩感があり、ムラを防止することができた。
【0141】
(実施例3)
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は特に良好であった。
また、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)は45.1であり、上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は4.1であった。
さらに、得られた塗料の下塗層の塗膜は、マンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、4.9Y、3.9及び1.5であり、異形着色ゲル粒子の色相はマンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、2.5Y、8.5及び1であった。
本実施形態の塗膜は、色差及びマンセル表色系の色相等の特定の数値範囲及び関係を満たすため、和紙の風合いが強く出る。目視による評価においても和紙の風合いを表現できていると回答した人数は10割であった。また、本実施形態の塗膜は、デザインに深み、多彩感があり、ムラを防止することができた。
【0142】
(実施例4)
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は特に良好であった。
また、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)は57.2であり、上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は8.4であった。
さらに、得られた塗料の下塗層の塗膜は、マンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、0.6R、2.7及び0.1であり、異形着色ゲル粒子の色相はマンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、2.5Y、8.5及び1であった。
本実施形態の塗膜は、色差及びマンセル表色系の色相等の特定の数値範囲及び関係を満たすため、和紙の風合いが強く出る。目視による評価においても和紙の風合いを表現できていると回答した人数は10割であった。また、本実施形態の塗膜は、デザインに深み、多彩感があり、ムラを防止することができた。
【0143】
(実施例5)
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は特に良好であった。
また、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)は15.3であり、上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は14.1であった。
さらに、得られた塗料の下塗層の塗膜は、マンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、4.7Y、6.9及び0.5であり、異形着色ゲル粒子の色相はマンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、2.5Y、8.5及び1であった。
本実施形態の塗膜は、色差及びマンセル表色系の色相等の特定の数値範囲及び関係を満たすため、和紙の風合いが強く出る。目視による評価においても和紙の風合いを表現できていると回答した人数は10割であった。また、本実施形態の塗膜は、デザインに深み、多彩感があり、ムラを防止することができた。
【0144】
(実施例6)
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は特に良好であった。
また、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)は8.5であり、上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は7.0であった。
さらに、得られた塗料の下塗層の塗膜は、マンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、0.7Y、7.8及び2.1であり、異形着色ゲル粒子の色相はマンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、2.5Y、8.5及び1であった。
本実施形態の塗膜は、色差及びマンセル表色系の色相等の特定の数値範囲及び関係を満たすため、和紙の風合いが強く出る。目視による評価においても和紙の風合いを表現できていると回答した人数は8割であった。また、本実施形態の塗膜は、デザインに深み、多彩感があり、ムラを防止することができた。
【0145】
(実施例7)
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は特に良好であった。
また、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)は38.4であり、上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は19.4であった。
さらに、得られた塗料の下塗層の塗膜は、マンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、9.1YR、4.5及び0.8であり、異形着色ゲル粒子の色相はマンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、2.5Y、8.5及び1であった。
本実施形態の塗膜は、色差及びマンセル表色系の色相等の特定の数値範囲及び関係を満たすため、和紙の風合いが強く出る。目視による評価においても和紙の風合いを表現できていると回答した人数は10割であった。また、本実施形態の塗膜は、デザインに深み、多彩感があり、ムラを防止することができた。
【0146】
(実施例8)
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は特に良好であった。
また、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)は52.9であり、上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は2.3であった。
さらに、得られた塗料の下塗層の塗膜は、マンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、4.4PB、3.2及び0.2であり、異形着色ゲル粒子の色相はマンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、2.5Y、8.5及び1であった。
本実施形態の塗膜は、色差及びマンセル表色系の色相等の特定の数値範囲及び関係を満たすため、和紙の風合いが強く出る。目視による評価においても和紙の風合いを表現できていると回答した人数は10割であった。また、本実施形態の塗膜は、デザインに深み、多彩感があり、ムラを防止することができた。
【0147】
(実施例9)
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は良好であった。
また、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)は23.4であり、上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は22.1であった。
さらに、得られた塗料の下塗層の塗膜は、マンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、5GY6.5及び0.5であり、異形着色ゲル粒子の色相はマンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、2.5Y、8.5及び1であった。
本実施形態の塗膜は、色差及びマンセル表色系の色相等の特定の数値範囲及び関係を満たすため、和紙の風合いが強く出る。目視による評価においても和紙の風合いを表現できていると回答した人数は8割であった。また、本実施形態の塗膜は、デザインに深み、多彩感があり、ムラを防止することができた。
【0148】
(実施例10)
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は良好であった。
また、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)は27.4であり、上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は23.1であった。
さらに、得られた塗料の下塗層の塗膜は、マンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、4.7Y6.9及び0.5であり、異形着色ゲル粒子の色相はマンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、2.5Y、8.5及び1であった。
本実施形態の塗膜は、色差及びマンセル表色系の色相等の特定の数値範囲及び関係を満たすため、和紙の風合いが強く出る。目視による評価においても和紙の風合いを表現できていると回答した人数は10割であった。また、本実施形態の塗膜は、デザインに深み、多彩感があり、ムラを防止することができた。
【0149】
(比較例1)
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は特に良好であった。
また、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)は7.7であり、上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は14.7であった。
さらに、得られた塗料の下塗層の塗膜は、マンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、N8.2であり、異形着色ゲル粒子の色相はマンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、2.5Y、8.5及び1であった。
なお、N8.2とは、無彩色である。
比較例1の塗膜は、色差及びマンセル表色系の色相等の特定の数値範囲及び関係を満たさないので、デザインに深み、多彩感がなかった。
具体的には、ΔE1>ΔE2の関係を満たさないため、繊維状物質が着色ゲル粒子の色に埋もれてしまい、比較例1の塗膜は、和紙の風合いが出なかった。目視による評価においても和紙の風合いを表現できていると回答した人数は5割以下であった。
【0150】
(比較例2)
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は悪かった。
また、繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE1)は2.6であり、上塗層に含まれる複数種の着色ゲル粒子のうち、最も含有量が多い着色ゲル粒子と、下塗層の塗膜との色差(ΔE2)は24.3であった。
さらに、得られた塗料の下塗層の塗膜は、マンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、2.5Y8.5及び2.5であり、異形着色ゲル粒子の色相はマンセル表色系の色相、明度及び彩度がそれぞれ、2.5Y、8.5及び1であった。
比較例2の塗膜は、色差及びマンセル表色系の色相等の特定の数値範囲及び関係を満たさないので、デザインに深み、多彩感がなかった。
具体的には、比較例2の塗膜は、ΔE1が5以上でないため、多彩感が無かった。
また、ΔE2が24以下でないため、吹付塗装作業性が悪く、ムラを防止することができなかった。
さらに、ΔE1>ΔE2の関係を満たさないため、繊維状物質が着色ゲル粒子の色に埋もれてしまい、和紙の風合いが出なかった。目視による評価においても和紙の風合いを表現できていると回答した人数は5割以下であった。
【0151】
表3に実施例1~10及び比較例1~2における下塗層のマンセル値、上塗層におけるL2*値及びL3*値等を示す。
また、表3に実施例1~10及び比較例1~2の吹付塗装作業性及び和紙の風合いの評価結果を示す。
【0152】
【0153】
【0154】
以上、特定の実施形態及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されるものではなく、当該技術分野における熟練者等により、本出願の願書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が可能である。
例えば、常法に基づき、実施例で得た塗膜付き基材を外装材として用いてなる建物を建築できる。