(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000091
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ベビーキャリア
(51)【国際特許分類】
A47D 13/02 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
A47D13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098640
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】592238515
【氏名又は名称】ラッキー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 博之
(57)【要約】
【課題】乳幼児をベビーキャリアに収容したり、ベビーキャリアから降ろしたりする時の利便性を向上すると同時に、使用者と乳幼児の双方が快適且つ安定した状態で使用できるベビーキャリアを提供する。
【解決手段】本発明のベビーキャリアは、乳幼児の身体にあてがわれ乳幼児を外側から支持する本体部と、本体部の下端部に接続され、本体部とは前記乳幼児を挟んで対向する位置に配置される補助保持部と、本体部と補助保持部の少なくとも一方に接続され、乳幼児を保持する使用者の肩に掛けられる1対の肩ベルト部と、本体部の下端部及び補助保持部の下端部に接続し、使用者の腰回りに装着する腰ベルト部とを具備する。本発明のベビーキャリアには、腰ベルト部の中央位置に、上蓋を備えた収容部が設けられており、収容部に収容可能な支持部材をさらに備えている。支持部材は、収容部に収容して上蓋を閉鎖したときに、乳幼児の臀部を支持する座面を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳幼児の身体にあてがわれ前記乳幼児を外側から支持する本体部と、
前記本体部の下端部に接続され、前記本体部とは前記乳幼児を挟んで対向する位置に配置される補助保持部と、
前記本体部と前記補助保持部の少なくとも一方に接続され、前記乳幼児を保持する使用者の肩に掛けられる1対の肩ベルト部と、
前記本体部の下端部及び前記補助保持部の下端部に接続し、前記使用者の腰回りに装着する腰ベルト部とを具備するベビーキャリアであって、
前記腰ベルト部の中央位置に、上蓋を備えた収容部が設けられており、
前記収容部に収容可能な支持部材をさらに備えており、
前記支持部材は、前記収容部に収容して前記上蓋を閉鎖したときに、前記乳幼児の臀部を支持する座面を形成することを特徴とするベビーキャリア。
【請求項2】
前記支持部材が、
円弧状の外周と、前記外周よりも大きな径の内周を有する、三日月型の上面と、
部分円筒形の内側側面と、
前記上面の前記外周と、前記内側側面の下辺部とを接続する外側側面と、
を備えた、略くさび型形状を有していることを特徴とする請求項1記載のベビーキャリア。
【請求項3】
前記支持部材の前記上面の横幅方向の寸法は、前記本体部の下端部の横幅以下の長さであることを特徴とする請求項2記載のベビーキャリア。
【請求項4】
前記支持部材の高さ方向の寸法が、3cm以上15cm以下であることを特徴とする請求項2記載のベビーキャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳幼児を抱っこまたはおんぶするときの補助具として使用するベビーキャリアに関する。特に、乳幼児を持ち上げる時と降ろす時の安定性が高く、且つ好適な位置で乳幼児を支持することのできるベビーキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
乳幼児を抱っこまたはおんぶするためのベビーキャリアは、子守帯、抱っこひも、おんぶひも等の名称でも知られている。ベビーキャリアについては、使用者と乳幼児の双方が快適かつ安全な状態で使用するための種々の工夫がなされてきた。
【0003】
発明者らは、様々な月齢や大きさの乳幼児を快適な開脚姿勢で保持でき、特に、月齢が低い乳幼児であっても安定して保持できるベビーキャリアを発明し、特許文献1に開示した。特許文献1のベビーキャリアは、乳幼児を保持する本体部及び補助保持部から一体に連続している、折りたたみ可能な位置決め台座部を備えており、位置決め台座部の折りたたみを行うか否かによって、乳幼児を保持する高さの調節を行うことができる。
【0004】
特許文献2には、乳幼児を支持するためのチェアを備えたベビーキャリアが開示されている。特許文献2のベビーキャリアは、メインストラップとベストの二つの部材で構成されており、乳幼児はベストに収容される。メインストラップの腰ベルトに設けられたチェアは、ベストに収容された乳幼児の臀部を支持する。
【0005】
特許文献3には、乳幼児を支持するための座部支持部を備えた保育補助具が開示されている。特許文献3の保育補助部は、使用者との間に乳幼児を収容する空間を形成するシート状の支持本体部と、支持本体部に接続した取付ベルトとを備えており、座部支持部は、支持本体部の使用者の側を向く内面から突出している。特許文献3の保育補助具を向かい合わせの抱っこに用いる場合には、乳幼児の臀部を座部支持部の座面に対面するように配置し、乳幼児を支持本体部に固定してから肩ベルトを使用者の肩にかけて、乳幼児の身体を使用者の身体に密着させる。
【0006】
特許文献4には、災害時に乳幼児と避難する際に、必要なものを入れる物入れを備えた抱っこ紐が開示されている。特許文献4の物入は、抱っこ紐の本体部の尻あて直下に配置された立方体形状の容器であり、抱きかかえた乳幼児を物入で支えることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6282716号公報
【特許文献2】特許第6945912号公報
【特許文献3】特許第6931638号公報
【特許文献4】実用新案登録第3222667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のベビーキャリアは、主に、使用者と乳幼児の双方が、抱っこまたはおんぶの状態で快適に過ごせることを目的として、改良が進められてきた。一方で、乳幼児をベビーキャリアに収容したり、ベビーキャリアから降ろしたりする時の利便性の向上には、未だ改良の余地がある。特に、使用者がベビーキャリアを装着した状態で赤ちゃんを抱き入れるタイプの場合、抱っこやおんぶを行う時の不安は軽減されるが、乳幼児をベビーキャリアに抱き入れた後で紐やベルトの締め具合を調整して乳幼児を好適な位置で保持する必要がある。このような従来のベビーキャリアでは、紐やベルトの調整中に乳幼児の重みでベビーキャリアがずれてしまうと、調整に手間がかかったり、適切な位置での抱き入れが困難となったりする場合があった。また、乳幼児の姿勢によっては、使用者の前側もしくは後側に不均一な重量がかかって、使用者の負担となる場合があった。
【0009】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであって、乳幼児をベビーキャリアに収容したり、ベビーキャリアから降ろしたりする時の利便性を向上すると同時に、使用者と乳幼児の双方が快適且つ安定した状態で使用できるベビーキャリアの提供を、解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ベビーキャリアに関する。本発明のベビーキャリアは、乳幼児の身体にあてがわれ、乳幼児を外側から支持する本体部と、本体部の下端部に接続され、本体部とは乳幼児を挟んで対向する位置に配置される補助保持部と、本体部と補助保持部の少なくとも一方に接続され、乳幼児を保持する使用者の肩に掛けられる1対の肩ベルト部と、本体部の下端部及び補助保持部の下端部に接続し、使用者の腰回りに装着する腰ベルト部とを具備している。本発明のベビーキャリアは、腰ベルト部の中央位置に、上蓋を備えた収容部が設けられており、収容部に収容可能な支持部材をさらに備えている。支持部材は、収容部に収容して上蓋を閉鎖したときに、乳幼児の臀部を支持する座面を形成することを特徴とする。
【0011】
本発明のベビーキャリアは、支持部材が、円弧状の外周と、外周よりも大きな径の内周を有する、三日月型の上面と、部分円筒形の内側側面と、上面の外周と、内側側面の下辺部とを接続する外側側面と、を備えた、略くさび型形状を有していることが好ましい。
【0012】
本発明のベビーキャリアは、支持部材の上面の横幅方向の寸法が、本体部の下端部の横幅以下の長さであることが好ましい。
【0013】
本発明のベビーキャリアは、支持部材の高さ方向の寸法が、3cm以上15cm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のベビーキャリアは、腰ベルト部の中央位置に、上蓋を備えた収容部と、収容部に収容可能な支持部材を備えている。支持部材は、収容部に収容することで、乳幼児の臀部を支持する座面を形成することができる。乳幼児をベビーキャリアに抱き入れたり、ベビーキャリアから抱き降ろしたりする時には、乳幼児の臀部を座面に乗せて安定した状態で、ベルトの長さの調整や連結具の連結を行うことができる。このため、ベビーキャリアがずれることがなく、乳幼児を最適な位置に保持した状態で、迅速な装着を行うことが可能となる。
【0015】
特に、首がすわる前の乳児は、ベビーキャリアへの抱き入れとベビーキャリアからの抱き降ろしの時に、頭部を支持する必要がある。本発明のベビーキャリアは、支持部材の座面で臀部を支持することにより、頭を支えることに集中して動作を行うことができる。この結果、月齢の小さい乳児に適用する場合であっても、従来よりも余裕のある状態でベビーキャリアを使用することができる。
【0016】
また、より大きな乳幼児に本発明のベビーキャリアを使用した場合、おんぶや抱っこの状態で、乳幼児の臀部は支持部材の座面に支持される。抱っこのときの乳幼児は、使用者の正面のウエスト周辺の位置で座面に腰を下ろした状態となり、乳幼児の体重は使用者のウエスト周辺に分散した状態となる。このため、使用者にとってより負担の少ない状態で、乳幼児を保持することができる。また、おんぶのときの乳幼児は、使用者の背面で座面に腰を下ろした状態となる。この場合も、乳幼児の体重は、使用者の腰周辺に分散した状態となり、使用者にとってより負担の少ない状態で、乳幼児を保持することができる。
【0017】
本発明のベビーキャリアの支持部材を略くさび型形状とすることにより、乳幼児の抱き入れや抱き下ろしなどで使用者が前屈みになるときでも、支持部材が使用者の足腰の動作を妨げることがない。さらに、支持部材の高さ方向の寸法を、3cm以上15cm以下とすることにより、支持部材は、乳幼児の臀部の支持という機能を充分提供しつつ、使用者の動作の邪魔にならない。このような支持部材の形状と寸法の最適化は、ベビーキャリア全体の小型化に貢献する。
【0018】
本発明のベビーキャリアの支持部材の上面の横幅方向の寸法を本体部の下端部の横幅以下の長さとすることにより、支持部材は乳幼児の股関節の動きを妨げることがなく、乳幼児は快適な開脚姿勢で座面に座った状態となることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態であるベビーキャリアの、乳幼児を収容したときに外側となる面である外面側を示した展開図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態であるベビーキャリアの、収容した乳幼児と接する側である内面側を示した展開図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態であるベビーキャリアの支持部材を示す図であって、
図3(a)は支持部材の上面図であり、
図3(b)は支持部材の側面図であり、
図3(c)は支持部材の正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態であるベビーキャリアの使用状態を説明する図であって、縦抱きにされた乳幼児の臀部が、支持部材によって支持されている状態を示す正面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態であるベビーキャリアの支持部材の着脱の様子を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態であるベビーキャリアの使用状態を説明する図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態であるベビーキャリアにおいて、位置決め台座部を使用した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のベビーキャリアを、生後14日から36ヵ月の平均的な身長体重の乳幼児に適用可能なベビーキャリアとして具現化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。ここで説明する実施形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものであるが、本発明は、実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0021】
以下において使用する、「上下」および「左右」といった相対的な用語が示す位置と方向は、図面を参照した説明に用いている場合には、図中の「上下」および「左右」の方向に対応している。これとは別に、注釈を加えることなく「上下」、「左右」、「前後」との用語を用いた場合、その位置と方向は、ベビーキャリアの使用者が直立した状態で知覚する「上下」、「左右」、「前後」の位置と方向に対応している。
【0022】
図1に、本実施形態のベビーキャリア1の外面側の展開図を示す。
図2に、本実施形態のベビーキャリア1の内面側の展開図を示す。本実施形態のベビーキャリア1は、本体部10と、補助保持部20と、肩ベルト部40と、腰ベルト部50を備えている。
【0023】
本実施形態のベビーキャリア1の腰ベルト部50の中央位置には、上蓋61を備えた収容部60が設けられている。さらに本実施形態のベビーキャリア1は、収容部60に収容可能な支持部材70を備えている。以下、ベビーキャリア1を構成するそれぞれの部材についてさらに詳細に説明する。
【0024】
ベビーキャリア1の本体部10は、
図4に示すように、使用者Mが乳幼児Bを保持するときに、乳幼児Bの身体にあてがわれて乳幼児Bを外側から支持する部材である。本実施形態の本体部10は、乳幼児Bを対面抱っこや前向きおんぶで保持する際に乳幼児Bの主に頭部にあてがわれて主に頭部を受ける略半楕円形状の頭当部11と、乳幼児Bの頭部側から背中、腰にかけてあてがわれて主に背中部分を受ける背当部12と、乳幼児Bの背中側から臀部にかけてあてがわれて主に臀部を受ける臀当部13が一体に形成されている。本体部10は、たとえば、ポリエチレンを網状構造に形成した柔軟で通気性のある素材を適用することができる。
【0025】
本体部10の頭当部11には、開閉手段15を備えたポケット部を設けることができる。
図1では、開閉手段としてスライドファスナを配置した例を示しているが、面ファスナやボタン等を開閉手段として適用することも可能である。
【0026】
本体部10の臀当部13を、乳幼児Bの臀部の中央側を受ける中央部13Aと中央部13Aの左右両側に位置し乳幼児Bの太股付近に当接する左右1対の端部13Bとから構成することが可能である。中央部13Aと端部13Bとは、内側(中心側)に向かって弧状に湾曲した縫製線13aの位置で縫い合わされており、端部13Bを中央部13A側に折り曲げ可能に形成されている。
【0027】
臀当部の端部13Bは、小さな乳幼児Bを収容した場合に、乳幼児Bの脚部が引っかかって、脚部が不自然な姿勢で拘束される可能性がある。そのため、端部13Bを中央部13A側に折り曲げた状態で固定できる固定手段を配置することが好ましい。固定手段としては、ボタン、面ファスナ、フック等、任意の固定手段を適用することができる。また、端部13Bを内側に折り曲げた時に、縫製線13aに沿った凹凸が乳幼児に不快感を与えないよう、縫製線13aを断続させて、縫い合わされていない部分を作成しておくことが好ましい。
【0028】
ベビーキャリア1の補助保持部20は、使用時に、使用者Mと乳幼児Bとの間に配置されて、本体部10と共に乳幼児Bを保持するように機能する部材である。補助保持部20の下端部は本体部10の下端部に連結されており、本体部10とは乳幼児Bを挟んで対向する位置に配置される。補助保持部20は、使用者Mと乳幼児Bの間にあって、汗が蒸発しやすいような、通気性を備えた柔軟な繊維で形成されることが好ましい。
【0029】
本実施形態のベビーキャリア1は、本体部10と補助保持部20の側辺同士を着脱自在に連結するベルト状の連結調整部22を備えることが好ましい。一例として、連結調整部22は、一端側が補助保持部20の左右の側辺にそれぞれ固定され、他端側にアジャスター付きバックルからなる連結差込具23を備えた一対の布ベルトで構成することができる。このような連結調整部22を適用する場合には、本体部10に、連結調整部22の連結差込具23を着脱可能に保持するための連結受具24を配置することが好ましい。
図1に、本体部10の背当部12の左右に、連結受具24を取り付けた形態を示す。
【0030】
図4に示すように、連結調整部22が取り付けられる高さ方向の位置は、使用時に、乳幼児の脇の下に接触しない位置であることが好ましい。連結調整部22のアジャスターによって布ベルトの長さを調整して連結差込具23と連結受具24とを連結することにより、本体部10と補助保持部20の距離を調整することができる。これにより本体部10と補助保持部20は、様々な大きさの乳幼児を収容するのに適した間隔で固定される。
【0031】
必須の構成要素ではなく選択的に配置可能な部材として、本体部10の内側と補助保持部20の内側との間に位置決め台座部30を架け渡すように配置することができる。位置決め台座部30を配置する場合は、一端部を本体部10の背当部12と臀当部13の境界部付近に固定し、他端部を補助保持部20の約1/3から2/3の範囲の高さに固定し、本体部10と補助保持部20のそれぞれの下端部までほぼ重ね合わせることが可能な長さで延在させることが好ましい。
【0032】
位置決め台座部30を備えたベビーキャリア1においては、乳幼児Bの臀部は、位置決め台座部30に接することになる。位置決め台座部30は、折り畳んだ状態で固定することにより、上下方向の長さ調節を可能とする長さ調節部を備えることができる。特に、低月齢の乳幼児Bをベビーキャリア1に収容する場合には、乳幼児Bの臀部を折り畳んで固定した位置決め台座部30によって本体部10の下端部よりも上方の好適な位置で支持することが可能となる。位置決め台座部30を折り畳んだときの好適な高さの例は、本体部10と補助保持部20の下端部から5cm~10cm程度上方となる位置である。
【0033】
ベビーキャリア1の腰ベルト部50は、使用者Mの腰回りに巻き付けて装着し、乳幼児Bの体重を下方で支持する部材である。腰ベルト部50は、本体部10および補助保持部20の下端部が接続される本体ベルト部51と、本体ベルト部51の長さ方向(左右方向)の両端部に配設された長さ調節部52とを備えている。長さ調節部52の両端には、一対となるアジャスター付きバックル53,54が固定されていて、使用者Mの腰回りの寸法に合わせて腰ベルト部50の全長を調節して装着することができる。長さ調節部52には、腰当て部55が、移動可能に取り付けられている。使用者は、腰あて部55を本体ベルト部51と前後で対をなすように配置することで、使用者Mの腰に長さ調節部52が食い込むことを防止することができる。
【0034】
腰ベルト部50は、たとえばポリエステル等の繊維で形成することができる。本体部10の臀当部13の下端部と、補助保持部20の下端部は、腰ベルト部50の本体ベルト部51の上端部に縫い合わせることで接続されている。本体部10に対して腰ベルト部50は略逆T字状に配設されており、腰ベルト部50の面方向に対して本体部10と補助保持部20は、直角方向に折れ曲がり自在となっている。
【0035】
ベビーキャリア1の肩ベルト部40は、使用者Mの左右の肩に掛けて装着し、乳幼児Bの体を上方から支えるための、二本のベルトである。本実施形態における肩ベルト部40の一端側は、補助保持部20の上端部の左右に縫い付けられて固定されている。肩ベルト部40の他端側は、補助保持部20の左右の側辺にそれぞれ縫い付けられて固定されている。肩ベルト部40の補助保持部20のへの取付箇所には、補強のための補助部材を用いて縫い付けても良い。それぞれの肩ベルト部40は、補助保持部20の側辺と上端部とに接続した、左右一対の環状部材を形成する。
【0036】
一実施形態として、それぞれの肩ベルト部40を、使用者Mの肩甲骨周辺に当接する肩掛け部41と、肩掛け部41に連なっており補助保持部20の側辺に接続する調節ベルト部42とで構成することができる。調節ベルト部42は、長さ調節が可能なアジャスターを備えている。肩掛け部41は、使用者Mの肩に局所的な荷重がかかることを防止するために、クッション材料が内包されている。さらに、必須ではないが、左右の肩掛け部41を結合し、左右の肩ベルト部40間の間隔を調整保持する肩ベルト調整部46が設けることで、使用者Mにかかる荷重を左右均等にすると同時に、肩ベルト部40のずり落ちを防止することができる。
【0037】
本実施形態のベビーキャリア1の肩ベルト部40は、肩ベルト部40と本体部10の頭当部11との間を着脱可能に結合する連結差込具43を備えることが好ましい。
図1に、本体部10の頭当部11の左右両端部に、連結差込具43を着脱可能に固定する連結受具44を配置した構成を示す。
図2に、肩ベルト部40の肩掛け部41の頂部付近に一端側を固定した連結差込具43の例を示す。連結差込具43と連結受具44を連結することにより、肩ベルト部40と本体部10が接続され、本体部10と補助保持部20の間に収容された乳幼児Bを安定して保持する。
【0038】
本実施形態のベビーキャリア1は、腰ベルト部50の中央位置に、上蓋61を備えた収容部60が設けられていることを特徴とする。さらに、本実施形態のベビーキャリア1は、収容部60に収容可能な支持部材70を備えていることを特徴とする。
【0039】
収容部60は、腰ベルト部50の外面を構成する繊維と同一の素材を用いて、構成されている。収容部60の上蓋61は、強度を必要とするときには、樹脂や金属の補強板を内蔵させることができる。支持部材70は、軽量で耐久性のある任意の素材を適用することができる。たとえば、発泡スチロール、硬質ポリウレタン等の軽量な樹脂製品に布製のカバーを付したものが用いられる。
【0040】
図3に、好適な支持部材70の形状を示す。
図3(a)は支持部材70の上面図であり、
図3(b)は支持部材70の側面図であり、
図3(c)は支持部材70の正面図である。支持部材70は、全体がくさび型に近い形状を有している。上面71は、円弧状の外周と外周よりも大きな径の内周からなる縁部で構成された三日月型の面である。支持部材70の内側側面74は、上面71の内周から下端部72までが部分円筒形に形成されている。支持部材70の外側側面73は、上面71の外周と前記内側側面の下辺部とをなめらかに接続する曲面で形成されている。
【0041】
支持部材の好適な寸法について説明する。支持部材の上面の横幅方向の寸法(使用時に左右方向となる寸法)Wは、10cm以上20cm以下の範囲であることが好ましい。支持部材の上面の厚さ(使用時に前後方向となる寸法)Dは、5cm以上15cm以下の範囲内であることが好ましい。支持部材の高さ方向の寸法Hは、3cm以上15cm以下であることが好ましい。これらの寸法を有することによって、
【0042】
図6に、収容部60に支持部材70を挿入する様子を模式的に示す。収容部60の内部の形状は支持部材70を模しており、特に収容部60の底辺の形状は、支持部材70の下端部の形状とほぼ一致するように収容部60を腰ベルト部50に縫い付けることで形成されている。収容部60の上蓋61は、ベビーキャリア1の使用時に、乳幼児Bの臀部を支持する座面61となるように、腰ベルト部50の中で上面71がほぼ水平に保持される。
【0043】
支持部材70の内側側面74の部分円筒形状は、使用者Mの腰回りに少なくとも一部が面接触するような半径で形成されている。また、支持部材70の外側側面73と内側側面74とは鋭角をなすように下端部72に連なっており、支持部材70の下端部72の近傍は、ほとんど厚さを持っていない。このような支持部材70の形状と、最適化された寸法によって、使用者Mが、ベビーキャリア1に乳幼児Bを抱き入れたり抱き下ろしたりするために、前屈みになった場合でも、支持部材70が使用者Mの足腰に干渉することは少なく、使用者Mの動作を妨げることがない。また、抱っこからおんぶに使用状態を変更したり、ベビーキャリアの使用中に体をひねったりした場合であっても、使用者Mの動作を妨げることがない。
【0044】
図6に、ベビーキャリア1に、乳幼児Bを抱っこの状態で収容した状態を示す。
図7に、ベビーキャリア1の位置決め台座部30を折り畳み、本体部10の下端部よりも上方で乳幼児を抱っこした状態を示す。いずれの場合でも、支持部材70を収容した収容部60の上蓋61である座面は、ベビーキャリア1に収容した乳幼児Bの臀部の少なくとも一部を支持することができる。そのため、乳幼児Bの位置がずれたり、必要以上に下がったりすることがない。
【0045】
ベビーキャリア1に乳幼児を収容する際には、ベビーキャリア1の本体部10と補助保持部20との間に乳幼児の好ましい姿勢を維持した状態で、連結差込具43と連結受具44の連結、及び連結差込具23と連結受具24の長さの調整を容易且つ安全に行うことができる。特に、頭部を支持する必要がある首すわり前の乳幼児Bにベビーキャリア1を使用する場合、ベビーキャリア1に一旦乳幼児Bを抱き入れると座面61によって乳幼児Bの臀部が支持されるので、使用者Mは乳幼児Bの頭部を支えることに集中し、より安心して抱き入れの動作を行うことができる。
【0046】
乳幼児Bをベビーキャリア1から降ろす場合、本実施形態のベビーキャリア1は、連結差込具23,43を連結受具24,44からそれぞれ取り外して本体部10を補助保持部20から開放し、乳幼児Bを本体部10と一緒にベッドや椅子などに降ろすことが可能である。この抱き下ろしの課程でも、ベビーキャリア1から離れるまで乳幼児Bの臀部は座面61で支持されるので、使用者Mは安心して乳幼児Bを降ろすことができる。
【0047】
抱っこの状態の乳幼児Bは、腰ベルト部50の中央で座面61に腰を下ろした状態となり、乳幼児の体重は使用者のウエスト周辺に分散した状態で支持される。このため、使用者Mにとってより負担の少ない状態で、乳幼児Bを保持することができる。また、おんぶのときの乳幼児Bは、使用者Mの背中側で座面61に腰を下ろした状態となる。この場合も、乳幼児Bの体重は、使用者の骨盤から腰椎周辺に分散した状態で支持されるので、使用者にとってより負担の少ない状態で、乳幼児を保持することができる。
【0048】
支持部材70の上面の横幅方向の寸法Wは、乳幼児Bの股関節の動きを妨げることがなく、乳幼児が快適な開脚姿勢で座面に座った状態となるために、特に重要である。乳幼児Bの臀部と股関節の一部は、本体部10を隔てて座面61に支持される。また、位置決め台座部30を備えているベビーキャリア1の場合は、本体部10と位置決め台座部30とを隔てて、座面61に支持される。そこで、支持部材70の上面71の横幅方向の寸法Wは、10本体部の下端部の横幅以下の長さであることが好ましい。
【0049】
このように、本実施形態のベビーキャリア1によれば、収容部60と支持部材70によっておんぶや抱っこの時に乳幼児Bの臀部を支持する座面61を供することができるため、乳幼児Bをベビーキャリア1に収容したり、ベビーキャリア1から降ろしたりする時の利便性を向上することができる。本実施形態のベビーキャリア1を使用することで、使用者Mと乳幼児Bの双方が、快適でかつ安全に過ごすことができる。
【0050】
以上、実施形態に基づいて、本発明の具体的な例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。それぞれの部材の寸法と配置は、本来の機能を損なわない範囲で対象とする乳幼児Bの月齢や、使用状態に対応するように、自由に変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 ベビーキャリア
10 本体部
20 補助保持部
30 位置決め台座部
40 肩ベルト部
50 腰ベルト部
60 収容部
70 支持部材