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  • 特開-プリント化粧金属板及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091004
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】プリント化粧金属板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20240627BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20240627BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240627BHJP
   E06B 3/82 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B32B15/08 H
B32B27/38
B32B27/30 A
E06B3/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207251
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】冨永 孝史
(72)【発明者】
【氏名】山村 菜月
【テーマコード(参考)】
2E016
4F100
【Fターム(参考)】
2E016HA00
2E016HA06
2E016JA11
2E016JC01
2E016LA01
2E016LB01
2E016LD01
4F100AA08B
4F100AA20B
4F100AA25A
4F100AB01A
4F100AB03A
4F100AB11B
4F100AB16B
4F100AB19B
4F100AB31A
4F100AH00B
4F100AH03B
4F100AK01D
4F100AK25C
4F100AK36C
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AK41E
4F100AK53C
4F100AK53E
4F100AT00C
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100CA13C
4F100CA13D
4F100CA14B
4F100CA14C
4F100EH46
4F100EH46B
4F100EH71A
4F100EJ42
4F100EJ68
4F100EJ68B
4F100EJ86
4F100GB07
4F100HB00D
4F100JB07
4F100JD05
4F100JK04
4F100JK06
4F100JK10
4F100JL10C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00D
4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】低コストでありながらも耐食性及び加工性を向上させることができるプリント化粧金属板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属板11と、金属板11の一方面上に設けられた下地層12と、下地層12上に設けられた基材層13と、基材層13上に設けられた絵柄層14と、絵柄層14上に設けられた表面保護層15とを備えたプリント化粧金属板10であって、基材層13は、ポリエステル系樹脂及びメラミン系樹脂に顔料を含有すると共に、さらに、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂の少なくとも一方を含有、又は、防錆剤を含有するものであり、金属板11は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板であり、Zrを含有する化成被膜層17Aが表層に形成されており、化成被膜層17Aは、金属板11上に170mg/m以上230mg/m以下の範囲内で設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、
前記金属板の一方面上に設けられた下地層と、
前記下地層上に設けられた基材層と、
前記基材層上に設けられた絵柄層と、
前記絵柄層上に設けられた表面保護層と
を備えたプリント化粧金属板であって、
前記基材層は、ポリエステル系樹脂及びメラミン系樹脂に顔料を含有すると共に、さらに、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂の少なくとも一方を含有、又は、防錆剤を含有するものであり、
前記金属板は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板であり、Zrを含有する化成被膜層が少なくとも一方面に形成されており、
前記化成被膜層は、前記金属板上に170mg/m以上230mg/m以下の範囲内で設けられている
ことを特徴とするプリント化粧金属板。
【請求項2】
前記化成被膜層は、厚さが0.18μm以上0.3μm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のプリント化粧金属板。
【請求項3】
前記化成被膜層は、シリカを1質量%以上10質量%以下の範囲内で含有している
ことを特徴とする請求項1に記載のプリント化粧金属板。
【請求項4】
前記金属板の他方面に化成被膜層が形成され、前記金属板の他方面の前記化成被膜層上に裏面保護層が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のプリント化粧金属板。
【請求項5】
前記下地層は、ポリエステル系樹脂に顔料及び有機添加剤を含有するものである
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のプリント化粧金属板。
【請求項6】
前記下地層は、さらに、防錆剤を含有するものである
ことを特徴とする請求項5に記載のプリント化粧金属板。
【請求項7】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる金属板の少なくとも一方面上に化成処理液を付着させて化成処理を施すことにより、前記金属板の少なくとも一方面上に化成被覆層を形成する化成被覆層形成工程と、
前記金属板の一方面上の前記化成被覆層上に下地層を設ける下地層形成工程と、
前記下地層上に基材層を設ける基材層形成工程と、
前記基材層上に絵柄層を設ける絵柄層形成工程と、
前記絵柄層上に表面保護層を設ける表面保護層形成工程と
を行うプリント化粧金属板の製造方法であって、
前記化成被覆層形成工程は、前記化成処理液がZr化合物を当該化成処理液の全体の質量に対して10質量%以上20質量%以下の範囲内で含有するものであり、前記金属板の少なくとも一方面上に前記化成処理液中の固形成分を170mg/m以上230mg/m以下の範囲内で設けるように前記金属板の少なくとも一方面上に前記化成処理液を付着させる工程であり、
前記基材層形成工程は、ポリエステル系樹脂及びメラミン系樹脂に顔料を含有させると共に、さらに、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂の少なくとも一方を含有、又は、防錆剤を含有させることにより、前記基材層を形成する工程である
ことを特徴とするプリント化粧金属板の製造方法。
【請求項8】
前記Zr化合物は、炭酸ジルコニウムアンモニウムである
ことを特徴とする請求項7に記載のプリント化粧金属板の製造方法。
【請求項9】
前記化成被覆層形成工程は、前記金属板の一方面及び他方面に化成被覆層を形成する工程であり、
さらに、前記金属板の他方面の前記化成被覆層上に裏面保護層を設ける裏面保護層形成工程を行う
ことを特徴とする請求項7または8に記載のプリント化粧金属板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建てやマンションやアパート等の住宅の玄関ドア等に利用されるプリント化粧金属板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建てやマンションやアパート等の住宅の玄関ドアには、絵柄を印刷した樹脂製のシートを金属板に貼り付けたプリント化粧金属板が利用されている。プリント化粧金属板を玄関ドアに利用した住宅においては、海岸付近等の塩害地域に建てられていると、プリント化粧金属板が腐食劣化し易くなってしまう。そのため、塩害地域に建てられる住宅の玄関ドアに利用されるプリント化粧板においては、金属板にステンレス鋼を利用したり、金属板の両面を樹脂シートでラミネート保護したり、金属板の表面に接着する樹脂層を厚くしたりすることが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-090003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プリント化粧金属板において、ステンレス鋼の利用や、樹脂シートでのラミネート保護を行うと、コストの上昇を招いてしまい、実施し難くなっている。また、金属板の表面に接着する樹脂層を厚くすると、屈曲性が低下してしまい、加工性の低下を引き起こしてしまうおそれがあった。
【0005】
このようなことから、本発明は、低コストでありながらも耐食性及び加工性を向上させることができるプリント化粧金属板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するための、本発明に係るプリント化粧金属板は、金属板と、前記金属板の一方面上に設けられた下地層と、前記下地層上に設けられた基材層と、前記基材層上に設けられた絵柄層と、前記絵柄層上に設けられた表面保護層とを備えたプリント化粧金属板であって、前記基材層は、ポリエステル系樹脂及びメラミン系樹脂に顔料を含有すると共に、さらに、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂の少なくとも一方を含有、又は、防錆剤を含有するものであり、前記金属板は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板であり、Zrを含有する化成被膜層が少なくとも一方面に形成されており、前記化成被膜層は、前記金属板上に170mg/m以上230mg/m以下の範囲内で設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るプリント化粧金属板は、上述したプリント化粧金属板において、前記化成被膜層の厚さが0.18μm以上0.3μm以下であると好ましい。
【0008】
また、本発明に係るプリント化粧金属板は、上述したプリント化粧金属板において、前記化成被膜層が、シリカを1質量%以上10質量%以下の範囲内で含有していると好ましい。
【0009】
また、本発明に係るプリント化粧金属板は、上述したプリント化粧金属板において、前記金属板の他方面に化成被膜層が形成され、前記金属板の他方面の前記化成被膜層上に裏面保護層が設けられていると好ましい。
【0010】
また、本発明に係るプリント化粧金属板は、上述したプリント化粧金属板において、前記下地層が、ポリエステル系樹脂に顔料及び有機添加剤を含有するものであると好ましい。
【0011】
また、本発明に係るプリント化粧金属板は、上述したプリント化粧金属板において、前記下地層が、さらに、防錆剤を含有するものであると好ましい。
【0012】
他方、前述した課題を解決するための、本発明に係るプリント化粧金属板の製造方法は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる金属板の少なくとも一方面上に化成処理液を付着させて化成処理を施すことにより、前記金属板の少なくとも一方面上に化成被覆層を形成する化成被覆層形成工程と、前記金属板の一方面上の前記化成被覆層上に下地層を設ける下地層形成工程と、前記下地層上に基材層を設ける基材層形成工程と、前記基材層上に絵柄層を設ける絵柄層形成工程と、前記絵柄層上に表面保護層を設ける表面保護層形成工程とを行うプリント化粧金属板の製造方法であって、前記化成被覆層形成工程は、前記化成処理液がZr化合物を当該化成処理液の全体の質量に対して10質量%以上20質量%以下の範囲内で含有するものであり、前記金属板の少なくとも一方面上に前記化成処理液中の固形成分を170mg/m以上230mg/m以下の範囲内で設けるように前記金属板の少なくとも一方面上に前記化成処理液を付着させる工程であり、前記基材層形成工程は、ポリエステル系樹脂及びメラミン系樹脂に顔料を含有させると共に、さらに、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂の少なくとも一方を含有、又は、防錆剤を含有させることにより、前記基材層を形成する工程であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るプリント化粧金属板の製造方法は、上述したプリント化粧金属板の製造方法において、前記Zr化合物が、炭酸ジルコニウムアンモニウムであると好ましい。
【0014】
また、本発明に係るプリント化粧金属板の製造方法は、上述したプリント化粧金属板の製造方法において、前記化成被覆層形成工程が、前記金属板の一方面及び他方面に化成被覆層を形成する工程であり、さらに、前記金属板の他方面の前記化成被覆層上に裏面保護層を設ける裏面保護層形成工程を行うと、好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るプリント化粧金属板によれば、基材層は、ポリエステル系樹脂及びメラミン系樹脂に顔料を含有すると共に、さらに、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂の少なくとも一方を含有、又は、防錆剤を含有するものであり、金属板は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板であり、Zrを含有する化成被膜層が少なくとも一方面に形成されており、化成被膜層は、金属板上に170mg/m以上230mg/m以下の範囲内で設けられているので、低コストでありながらも耐食性及び加工性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係るプリント化粧金属板の製造方法によれば、化成被覆層形成工程は、化成処理液がZr化合物を当該化成処理液の全体の質量に対して10質量%以上20質量%以下の範囲内で含有するものであり、合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる金属板の少なくとも一方面上に化成処理液中の固形成分を170mg/m以上230mg/m以下の範囲内で設けるように金属板の少なくとも一方面上に化成処理液を付着させる工程であり、基材層形成工程は、ポリエステル系樹脂及びメラミン系樹脂に顔料を含有させると共に、さらに、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂の少なくとも一方を含有、又は、防錆剤を含有させることにより、基材層を形成する工程であるので、上述した本発明に係るプリント化粧金属板を製造することが確実にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るプリント化粧金属板の主な実施形態の概略構造を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るプリント化粧金属板及びその製造方法の実施形態を図面に基づいて以下に説明する。なお、本発明は、図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではなく、各実施形態で説明する種々の技術的事項を必要に応じて適宜組み合わせることも含まれるものである。
【0019】
[主な実施形態]
本発明に係るプリント化粧金属板及びその製造方法の主な実施形態を図1に基づいて説明する。
【0020】
〈プリント化粧金属板〉
図1に示すように、合金化溶融亜鉛めっき鋼板製の金属板11の一方面(図1中、上方面)上には、樹脂製の下地層12が設けられている。下地層12上には、樹脂製の基材層13が設けられている。基材層13上には、インキで印刷された絵柄層14が設けられている。絵柄層14上には、樹脂製の表面保護層15が設けられている。また、金属板11の他方面(図1中、下方面)上には、樹脂製の裏面保護層16が設けられている。
【0021】
そして、金属板11と下地層12との間及び金属板11と裏面保護層16との間、すなわち、金属板11の一方面及び他方面の両面表層には、Zrを主成分とする化成被膜層17A,17Bがそれぞれ形成されている。このようなプリント化粧金属板10は、厚さが0.24μm以上1.12μm以下であると好ましい。
【0022】
〈金属板11〉
金属板11は、プリント化粧金属板10のベースとなる板である。金属板11は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなっている。合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、溶融した亜鉛中に鋼板を浸漬して鋼板の表面に亜鉛をめっきした後、熱処理することにより、亜鉛成分と鋼板中の鉄成分との合金化を図ったものであり、隣接する層との密着性や耐食性を向上させることが可能である。金属板11は、厚さが0.25mm以上1mm以下であると好ましい。
【0023】
〈下地層12〉
下地層12は、金属板11と基材層13との密着性を向上させると共に耐食性を向上させるための層である。下地層12は、ポリエステル系樹脂に顔料及び有機添加剤を含有するものであり、防錆剤をさらに含有すると、耐食性をより高めることができるので、好ましい。下地層12は、金属板11上に1.5g/m以上18g/m以下で設けられていると、耐食性を確実に向上させることができるため、好ましい。また、下地層12は、厚さが、1μm以上10μm以下であると好ましい。このような下地層12は、200℃以上の温度で焼付乾燥させることにより設けることも可能である。
【0024】
〈基材層13〉
基材層13は、樹脂製の層のなかでベースとなる層であり、絵柄層4に下地色を付与することができるようになっている。基材層13は、ポリエステル系樹脂及びメラミン系樹脂に下地色の顔料を含有すると共に、さらに、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂の少なくとも一方を含有、又は、防錆剤を含有することにより、耐食性の向上を図るようにしている。基材層13は、厚さが、10μm以上30μm以下であると好ましい。
【0025】
〈絵柄層14〉
絵柄層14は、絵柄によって意匠性を付与するための層である。絵柄層14は、染料又は顔料等の着色剤を適当なバインダ樹脂と共に適当な希釈溶媒中に溶解又は分散してなる印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法又はインクジェット印刷等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等で塗布される。
【0026】
バインダ樹脂としては、公知のバインダ樹脂を採用できる。例えば、下地層12で使用されるような、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂得、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂等の熱硬化型樹脂を適用することができる。また、顔料としては、公知の顔料を用いることができる。例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、鉄・複合酸化物、酸化鉄、有機顔料、メタリック顔料、パール顔料等を適用することができる。これらのうち、鉄・複合酸化物は遮熱顔料として使用される。
【0027】
また、絵柄としては、特に制限されるものではないが、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等或いはこれらの2種類以上の組み合わせ等を用いることできる。絵柄層14は、通常、厚さが、0.1μm以上0.2μm以下である。なお、インクジェット印刷を適用した場合、絵柄層14は、厚さが、上記範囲よりも厚くなる。
【0028】
なお、絵柄層14の絵柄に木目柄を適用する場合には、意匠性をさらに高めるため、絵柄層14と表面保護層15との間に、マット調の導管柄を印刷したマット導管印刷層をさらに設けることも可能である。
【0029】
〈表面保護層15〉
表面保護層15は、耐候性や曲げ加工性、耐傷付性、清掃性を付与するための透明な層である。表面保護層15は、ポリエステル系樹脂に無機添加剤や有機添加剤を含有するものであり、意匠性をより高めるため、樹脂ビーズやシリカ等をさらに含有することや、耐候性をより高めるため、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候剤をさらに含有することも可能である。表面保護層15は、厚さが、10μm以上15μm以下であると好ましい。
【0030】
〈裏面保護層16〉
裏面保護層16は、金属板11の他方面(図1中、下方面)、すなわち、裏面を保護するための層である。裏面保護層16は、エポキシ系樹脂又はポリエステル系樹脂に無機添加剤や有機添加剤を含有するものであり、防錆剤をさらに含有すると、耐食性をより高めることができるので、好ましい。また、裏面保護層16は、厚さが、2μm以上10μm以下であると好ましい。
【0031】
〈化成被膜層17A,17B〉
化成被膜層17A,17Bは、金属板(溶融亜鉛めっき鋼板)11の耐食性を高めるための層である。化成被覆層17A,17Bは、耐食性を十分に発現しつつ、基材層13と十分な密着性を発現できるように、Zrを含有している。
【0032】
また、化成被膜層17A,17Bは、金属板11上での単位面積当たりの量が170mg/m以上230mg/m以下の範囲内で設けられている。170mg/mであると、耐食性を十分に発現することができず、230mg/mを超えると、ムラを生じてしまい、各種機能の低下を引き起こし易くなってしまうからである。
【0033】
また、化成被膜層17A,17Bは、厚さが、0.18μm以上0.3μm以下であると好ましい。0.18μm未満であると、耐食性を十分に発現し難くなって、好ましくなく、0.3μmを超えると、基材層13との密着性の低下を引き起こし易くなって、好ましくないからである。
【0034】
さらに、化成被膜層17A,17Bは、シリカを1質量%以上10質量%以下の範囲内で含有していると好ましい。1質量%未満であると、耐食性を十分に発現し難くなって、好ましくなく、10質量%を超えると、基材層13との密着性の低下を引き起こし易くなって、好ましくないからである。
【0035】
このように、化成被膜層17A,17Bは、環境負荷を考慮した、六価クロムを含有しないクロメートフリー処理(ノンクロメート処理)によって形成されるクロメートフリー被膜(ノンクロメート被膜)となっているのである。
【0036】
〈プリント化粧金属板10の製造方法〉
上述したような本実施形態に係るプリント化粧金属板10の製造方法を次に説明する。
【0037】
まず、合金化溶融亜鉛めっき鋼板から目的とするサイズの金属板11を準備する。また、Zr化合物(例えば、炭酸ジルコニウムアンモニウム等)及びシリカを添加剤(例えば、硝酸ニッケル等)と共に水に加えて混合し、化成処理液を作成する。このとき、化成処理液は、上記Zr化合物を、全体の質量に対して10質量%以上20質量%以下の範囲内で含有すると共に、シリカを、全体の質量に対して1質量%以上10質量%以下の範囲内で含有するように調製される。
【0038】
このようにして化成処理液を調製した後、金属板11の一方面上に化成処理液を塗布して化成処理を行う。このとき、化成処理液中の固形成分が170mg/m以上230mg/m以下の範囲内で金属板11上に布設されるように化成処理液を金属板11の一方面上に付着させる。また、金属板11の他方面上にも化成処理液を一方面上と同様に塗布して化成処理を行う。これにより、耐食性を十分に発現しつつ、基材層13と十分な密着性を発現できるようにZrを含有すると共に、シリカを1質量%以上10質量%以下の範囲内で含有して、0.18μm以上0.3μm以下の厚さを有する化成被覆層17A,17Bが金属板11の両面表層上にそれぞれ形成される(以上、化成被覆層形成工程)。
【0039】
続いて、金属板11の他方面の化成被覆層17B上に裏面保護層16の上述した材料を塗布して乾燥固化させることにより、2μm以上10μm以下の厚さを有する裏面保護層16を形成する(以下、裏面保護層形成工程)。
【0040】
次に、金属板11の一方面の化成被覆層17A上に下地層12の上述した材料を固形成分が1.5g/m以上18g/m以下の量となるように塗布して乾燥固化させることにより、1μm以上10μm以下の厚さを有する下地層12を形成する(以上、下地層形成工程)。
【0041】
そして、下地層12上に基材層13の上述した材料を塗布して乾燥固化させることにより、10μm以上30μm以下の厚さを有する基材層13を形成する(以上、基材層形成工程)。
【0042】
さらに、基材層13上に絵柄層14の上述した材料を印刷して乾燥固化させることにより、0.1μm以上0.2μm以下の厚さを有する絵柄層14を形成する(以上、絵柄層形成工程)。
【0043】
最後に、絵柄層14上に表面保護層15の上述した材料を塗布して乾燥固化させることにより、10μm以上15μm以下の厚さを有する表面保護層15を形成する(以上、表面保護層形成工程)。
【0044】
このようにして金属板11に各層12~17A,17Bを設けることにより、0.24μm以上1.12μm以下の厚さを有する本実施形態に係るプリント化粧金属板10を製造することができる。
【0045】
〈本実施形態の効果〉
このような本実施形態に係るプリント化粧金属板10においては、基材層13が、ポリエステル系樹脂及びメラミン系樹脂に顔料を含有すると共に、さらに、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂の少なくとも一方を含有、又は、防錆剤を含有するものであり、金属板11が、合金化溶融亜鉛めっき鋼板であり、Zrを含有する化成被膜層17A,17Bが、金属板11上に170mg/m以上230mg/m以下の範囲内で設けられているので、低コストでありながらも耐食性及び加工性を向上させることができる。
【0046】
また、化成被膜層17A,17Bの厚さが、0.18μm以上0.3μm以下であるので、低コストでありながらも耐食性及び加工性を向上させることが確実にできる。
また、化成被膜層17A,17Bが、シリカを1質量%以上10質量%以下の範囲内で含有しているので、低コストでありながらも耐食性及び加工性をより向上させることができる。
【0047】
他方、本実施形態に係るプリント化粧金属板10の製造方法においては、合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる金属板11の両面表層上に化成処理液を付着させて化成処理を施すことにより、化成被覆層17A,17Bを形成する化成被覆層形成工程が、Zr化合物を10質量%以上20質量%以下の範囲内で含有する化成処理液を使用して、金属板11の両面表層上に固形成分を170mg/m以上230mg/m以下の範囲内で設けるように化成処理液を付着させる工程であり、基材層形成工程が、ポリエステル系樹脂及びメラミン系樹脂に顔料を含有させると共に、さらに、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂の少なくとも一方を含有、又は、防錆剤を含有させることにより、基材層13を形成する工程であるので、本実施形態に係るプリント化粧金属板10を容易に製造することができる。
【0048】
また、Zr化合物が、炭酸ジルコニウムアンモニウムであるので、本実施形態に係るプリント化粧金属板10をより確実に製造することができる。
【0049】
[他の実施形態]
なお、前述した実施形態においては、金属板11の一方面及び他方面の両面に同じ組成の化成被膜層17A,17Bを設けたプリント化粧金属板10の場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、例えば、使用される環境等によっては、金属板11の一方面の化成被膜層17Aと他方面の化成被膜層17Bとの組成を異ならせたプリント化粧金属板とすることや、金属板11の他方面の化粧被膜層17Bを省略して、金属板11の一方面のみに化成被膜層17Aを設けたプリント化粧金属板とすることも可能である。
【0050】
また、前述した実施形態においては、金属板11の他方面側に裏面保護層16を設けたプリント化粧金属板10の場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、例えば、使用される条件等によっては、裏面保護層16を省略したプリント化粧金属板とすることも可能である。
【実施例0051】
本発明に係るプリント化粧金属板及びその製造方法の実施例を具体的に以下に説明する。なお、本発明は、具体的に説明する以下の実施例のみに限定されるものではなく、各実施例で説明する種々の技術的事項を必要に応じて適宜組み合わせることも含まれるものである。
【0052】
[試験体及び比較体の作製]
〈試験体1〉
《金属板》
日本工業規格「JIS G3302」に準拠した厚さ0.6mmの合金化溶融亜鉛めっき鋼板(SGCC(アロイ),F12)を用意して金属板11とした。
【0053】
《化成被膜層形成工程》
液全体の質量に対して、炭酸ジルコニウムアンモニウム(AZC)が20質量%、シリカが10質量%、硝酸ニッケル(NN)が1質量%となるように、これらの有効成分を水に加えて攪拌混合することにより、化成処理液を得た。
【0054】
得られた化成処理液の固形成分が金属板11の一方面上に220mg/mとなるように化成処理液を金属板11の一方面上に塗布して乾燥固化させた後、これと同様に、金属板11の他方面上に化成処理液を塗布して乾燥固化させる。これにより、金属板11の両面表層上に化成被膜17A,17B(厚さ:0.26μm)を形成した。
【0055】
《裏面保護層形成工程》
エポキシ系樹脂が49質量%、無機添加剤が51質量%となるように、これらを均一に混合して、金属板11の他方面の化成被覆層17B上に塗布した後、200℃以上で加熱して焼付乾燥固化させる。これにより、金属板11の他方面の化成被覆層17B上に裏面保護層16(厚さ:7μm)を形成した。
【0056】
《下地層形成工程》
ポリエステル系樹脂が57質量%、顔料が42質量%、有機添加剤が1質量%となるように、これらを均一に混合して、金属板11の一方面の化成被膜層17A上に固形成分が1.5g/mとなるように塗布した後、風乾で自然乾燥させて固化させる。これにより、金属板11の一方面の化成被膜層17A上に下地層12(厚さ:1μm)を形成した。
【0057】
《基材層形成工程》
ポリエステル系樹脂が45質量%、メラミン系樹脂が15質量%、顔料が40質量%となるように、これらを均一に混合する。そして、エポキシ系樹脂及びアクリル系樹脂をさらに添加して均一に混合して、下地層12上に固形成分が20g/mとなるように塗布した後、200℃以上で加熱して焼付乾燥固化させる。これにより、下地層12上に基材層13(厚さ:13μm)を形成した。
【0058】
《絵柄層形成工程》
汎用されている印刷インキを基材層13上に印刷することにより、基材層13上に絵柄層14(厚さ:2~3μm)を形成した。
【0059】
《表面保護層形成工程》
ポリエステル系樹脂が84質量%、無機添加剤が9質量%、有機添加剤が7質量%となるように、これらを均一に混合して、絵柄層14上に塗布した後、200℃以上で加熱して絵柄層14も併せて焼付乾燥固化させる。これにより、絵柄層14上に表面保護層15(厚さ:10μm)を形成した。
このようにしてプリント化粧金属板10の試験体1を得た。
【0060】
〈試験体2〉
基材層形成工程において、前記混合物に対する質量割合で、汎用の防錆剤を1質量%となるようにさらに添加して均一に混合して、下地層12上に塗布する以外は、試験体1と同様にして作製することにより、プリント化粧金属板10の試験体2を得た。
【0061】
〈試験体3〉
化成被膜層形成工程において、化成処理液の固形成分が金属板11上に180mg/mとなるように化成処理液を金属板11上に塗布して乾燥固化させて、金属板11の両面表層上に厚さ0.2μmの化成被膜17A,17Bを形成する以外は、試験体1と同様にして作製することにより、プリント化粧金属板10の試験体3を得た。
【0062】
〈試験体4〉
化成被膜層形成工程において、化成処理液の固形成分が金属板11上に180mg/mとなるように化成処理液を金属板11上に塗布して乾燥固化させて、金属板11の両面表層上に厚さ0.2μmの化成被膜17A,17Bを形成する以外は、試験体2と同様にして作製することにより、プリント化粧金属板10の試験体4を得た。
【0063】
〈試験体5〉
化成被膜層形成工程において、液全体の質量に対して、炭酸ジルコニウムアンモニウム(AZC)が10質量%、シリカが5質量%、硝酸ニッケル(NN)が1質量%となるように、これらの有効成分を水に加えて攪拌混合することにより得られた化成処理液を用いる以外は、試験体1と同様にして作製することにより、プリント化粧金属板10の試験体5を得た。
【0064】
〈試験体6〉
化成被膜層形成工程において、液全体の質量に対して、炭酸ジルコニウムアンモニウム(AZC)が10質量%、シリカが5質量%、硝酸ニッケル(NN)が1質量%となるように、これらの有効成分を水に加えて攪拌混合することにより得られた化成処理液を用いる以外は、試験体2と同様にして作製することにより、プリント化粧金属板10の試験体6を得た。
【0065】
〈試験体7〉
化成被膜層形成工程において、液全体の質量に対して、炭酸ジルコニウムアンモニウム(AZC)が10質量%、シリカが5質量%、硝酸ニッケル(NN)が1質量%となるように、これらの有効成分を水に加えて攪拌混合することにより得られた化成処理液を用いる以外は、試験体3と同様にして作製することにより、プリント化粧金属板10の試験体7を得た。
【0066】
〈試験体8〉
化成被膜層形成工程において、液全体の質量に対して、炭酸ジルコニウムアンモニウム(AZC)が10質量%、シリカが5質量%、硝酸ニッケル(NN)が1質量%となるように、これらの有効成分を水に加えて攪拌混合することにより得られた化成処理液を用いる以外は、試験体4と同様にして作製することにより、プリント化粧金属板10の試験体8を得た。
【0067】
〈比較体1〉
化成被膜層形成工程において、化成処理液の固形成分が金属板11上に140mg/mとなるように化成処理液を金属板11上に塗布して乾燥固化させて、金属板11の両面表層上に厚さ0.16μmの化成被膜17A,17Bを形成する以外は、試験体1と同様にして作製することにより、プリント化粧金属板10の比較体1を得た。
【0068】
〈比較体2〉
化成被膜層形成工程において、化成処理液の固形成分が金属板11上に140mg/mとなるように化成処理液を金属板11上に塗布して乾燥固化させて、金属板11の両面表層上に厚さ0.16μmの化成被膜17A,17Bを形成する以外は、試験体2と同様にして作製することにより、プリント化粧金属板10の比較体2を得た。
【0069】
〈比較体3〉
化成被膜層形成工程において、化成処理液の固形成分が金属板11上に300mg/mとなるように化成処理液を金属板11上に塗布して乾燥固化させて、金属板11の両面表層上に厚さ0.16μmの化成被膜17A,17Bを形成する以外は、試験体1と同様にして作製することにより、プリント化粧金属板10の比較体3を得た。
【0070】
〈比較体4〉
化成被膜層形成工程において、化成処理液の固形成分が金属板11上に300mg/mとなるように化成処理液を金属板11上に塗布して乾燥固化させて、金属板11の両面表層上に厚さ0.16μmの化成被膜17A,17Bを形成する以外は、試験体2と同様にして作製することにより、プリント化粧金属板10の比較体4を得た。
【0071】
〈比較体5〉
化成被膜層形成工程において、液全体の質量に対して、ジルコンフッ化水素酸(FZA)が1質量%、フッ化チタン酸(FTA)が1質量%、フッ化チタンアンモニウム(AFT)が1質量%となるように、これらの有効成分を水に加えて攪拌混合することにより得られた化成処理液を用いる以外は、試験体1と同様にして作製することにより、プリント化粧金属板10の比較体5を得た。
【0072】
〈比較体6〉
化成被膜層形成工程において、液全体の質量に対して、ジルコンフッ化水素酸(FZA)が1質量%、フッ化チタン酸(FTA)が1質量%、フッ化チタンアンモニウム(AFT)が1質量%となるように、これらの有効成分を水に加えて攪拌混合することにより得られた化成処理液を用いる以外は、試験体2と同様にして作製することにより、プリント化粧金属板10の比較体6を得た。
【0073】
[試験内容]
〈塗工性〉
化成被覆膜形成工程において、化成処理液を金属板11上に塗布した際の塗工性を評価した。その結果を表1,2に示す。なお、表1,2において、「○」は、ムラなく塗工できたことを示し、「×」は、塗工ムラを生じてしまったことを示し、「○」を合格とした。
【0074】
〈曲げ試験〉
《180度曲げ試験》
日本工業規格「JIS Z2248」に準拠して試験を行った。具体的には、常温(25℃±5℃)及び低温(0℃±2℃)環境下において、試験体1~8及び比較体1~6を180度折り返す曲げ試験であって、別名ヘミング加工とも呼ばれる方法により試験を行った。180度曲げ試験として、折り曲げたときに隙間なく密着させる0T曲げ(密着曲げ)と、板厚tに対して最小曲げ半径0.5tで折り曲げる1T曲げとの2種類を行った。
【0075】
《90度曲げ試験》
上述と同様に、常温(25℃±5℃)環境下において、試験体1~8及び比較体1~6を90度折り返す曲げ試験を行った。90度曲げ試験として、曲げ半径Rを1mmとする1R曲げを行った。
【0076】
《評価方法》
曲げ試験を行った試験体1~8及び比較体1~6の曲折部を直接及びルーペ(倍率:10倍)でそれぞれ目視評価した後、セロハンテープによる粘着剥離評価を行った。その結果を表1,2に示す。
【0077】
なお、表1,2の目視評価において、「○」は、剥離、クラック、白化等を生じなかったことを示し、「△」は、問題のないレベルの剥離、クラック、白化等が認められたことを示し、「×」は、剥離、クラック、白化等を生じたことを示し、「○」及び「△」を合格とした。また、表1,2の粘着剥離評価において、「○」は、剥離を生じなかったことを示し、「△」は、剥離がわずかに認められたことを示し、「×」は、剥離を生じたことを示し、「○」及び「△」を合格とした。そして、すべての曲げ試験の評価結果が合格したものを加工性が優良であるとして「○」で示し、それ以外を「×」で示した。
【0078】
〈耐衝撃性試験〉
日本工業規格「JIS K5600 5-3」に準拠して試験を行った。具体的には、デュポン式試験機を用いて、試験体1~8及び比較体1~6による撃ち型(半径:6.35±0.03mm(1/4インチ))に対して、規定高さ位置(50cm)から錘(500±1g)を落下させた。そして、撃ち型の表面の状態を直接目視確認すると共に、セロハンテープによる粘着剥離確認を行って耐衝撃性を評価した。その結果を表1,2に示す。
【0079】
なお、表1,2において、「○」は、表面状態に目視で異常がなく、且つ、粘着剥離を生じなかったことを示し、「×」は、表面状態に目視で異常が認められた、又は、粘着剥離を生じたことを示し、「○」を合格とした。
【0080】
〈密着性試験〉
試験体1~8及び比較体1~6の表面に1mm四方の格子形状をなす切れ目を形成した後、セロハンテープによる粘着剥離を行って密着性を評価した。その結果を表1,2に示す。なお、表1,2において、「○」は、剥離を生じなかったことを示し、「×」は、剥離を生じたことを示し、「○」を合格とした。
【0081】
〈耐沸水性試験〉
試験体1~8及び比較体1~6を水中に入れて煮沸した。そして、5時間経過後、水中から取り出して、表面の状態を直接目視確認した後、セロハンテープによる粘着剥離確認(二次密着性)を行って耐沸水性を評価した。その結果を表1,2に示す。
【0082】
表1,2の目視確認において、「○」は、収縮、剥離、変退色等を生じなかったことを示し、「×」は、収縮、剥離、変退色等を生じたことを示し、「○」を合格とした。また、表1,2の二次密着性において、「○」は、剥離を生じなかったことを示し、「×」は、剥離を生じたことを示し、「○」を合格とした。
【0083】
〈耐中性塩水噴霧性試験〉
日本工業規格「JIS K5600 7-1」に準拠して試験を行った。具体的には、試験体1~8及び比較体1~6の端部をシールすると共に、表面にクロスカットの切れ目を形成して、表面に5%NaCl水溶液を噴霧した後、0℃±2℃の温度環境下に500時間放置して、表面の状態を評価した。その結果を表1,2に示す。なお、表1,2中、「○」は、最大2mmを超えるブリスタを生じなかったことを示し、「×」は、最大2mmを超えるブリスタを生じたことを示し、「○」を合格とした。
【0084】
[試験結果]
上述した試験の結果を表1,2に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表2からわかるように、比較体1(化成処理液塗布量140mg/m,エポキシ・アクリル添加)は、低温での180度曲げ試験において、1T曲げのとき、直接目視だと良好であったが、ルーペだとわずかな劣化が認められてしまった。そして、0T曲げのとき、直接及びルーペの両方でもわずかな劣化が認められた。それ以外、特に問題がなく、加工性の評価結果は合格となったが、耐中性塩水噴霧性試験において、赤錆を生じてしまうと共に、最大2mmを超えるブリスタを生じてしまい、不合格となった。
【0088】
また、比較体2(化成処理液塗布量140mg/m,防錆剤添加)は、低温での180度曲げ試験の1T曲げ及び0T曲げの両方において、直接及びルーペの両方共にわずかな劣化が認められた。それ以外、特に問題はなく、加工性の評価結果は合格となったが、耐中性塩水噴霧性試験において、赤錆を生じてしまうと共に、最大2mmを超えるブリスタを生じてしまい、不合格となった。
【0089】
また、比較体3,4(化成処理液塗布量:300mg/m)においては、塗工ムラを生じてしまい、他の試験項目の評価を行うことができなかった。また、比較体5,6(化成処理液Zr化合物濃度:1質量%)においては、加工性の評価結果が合格となったものの、耐中性塩水噴霧性試験において、赤錆を生じてしまうと共に、最大2mmを超えるブリスタを生じてしまい、不合格となった。
【0090】
これに対し、試験体1~8においては、表1からわかるように、低温での180度曲げ試験の0T曲げにおいて、ルーペで見たときにわずかな劣化が認められたものもあったが、特に問題はなく、加工性の評価結果が合格となった。さらに、耐中性塩水噴霧性試験において、赤錆を生じてしまったものの、最大2mmを超えるブリスタを生じることはなく、合格となった。
【0091】
したがって、本発明に係るプリント化粧金属板及びその製造方法によれば、低コストでありながらも耐食性及び加工性を向上できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係るプリント化粧金属板及びその製造方法は、低コストでありながらも耐食性及び加工性を向上させることができるので、建設産業を始めとして、各種産業において、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
10 プリント化粧金属板
11 金属板
12 下地層
13 基材層
14 絵柄層
15 表面保護層
16 裏面保護層
17A,17B 化成被膜層
図1