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  • 特開-ねじ締め機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091008
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ねじ締め機
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20240627BHJP
   B25B 23/10 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B23P19/06 C
B25B23/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207255
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安積 慶一
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA01
3C038BB01
3C038BC04
3C038EA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、気密パッキンの摩耗し難いねじ締め機を提供する。
【解決手段】
ねじの頭部と嵌合する嵌合孔371が形成されたボックスビット37と、前記ボックスビット37が連結されるビット軸35と、前記ビット軸35およびボックスビット37を回転駆動させる回転駆動源32とを備え、前記ビット軸35およびボックスビット37には、ビット軸35の外周に形成された開口部352から前記ボックスビット37の嵌合孔371まで連続する通気孔351が形成され、前記開口部352は、前記ビット軸35に相対回転可能に装着された吸気ユニット40に被覆され、前記吸気ユニット40には、空気を吸引可能な負圧発生手段が連続しているとともにビット軸35との間に設けられた気密パッキンにより気密性が保持されていることを特徴とするねじ締め機10による。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじの頭部と嵌合する嵌合孔が形成されたボックスビットと、前記ボックスビットが連結されるビット軸と、前記ビット軸およびボックスビットを回転駆動させる回転駆動源とを備え、
前記ビット軸およびビット軸は、前記回転駆動源に対して軸方向に相対移動可能に構成されているドライバユニットと、
前記ドライバユニットを移動させる位置制御機構とを備えたねじ締め機において、
前記ビット軸およびボックスビットには、ビット軸の外周に形成された開口部から前記ボックスビットの嵌合孔まで連続する通気孔が形成され、
前記開口部は、前記ビット軸に相対回転可能に装着された吸気ユニットに被覆され、
前記吸気ユニットには、空気を吸引可能な負圧発生手段が連続しているとともにビット軸との間に設けられた気密パッキンにより気密性が保持されていることを特徴とするねじ締め機。
【請求項2】
前記吸気ユニットは、ビット軸を被覆する殻部材および殻部材の開口部を封鎖する閉鎖蓋を備え、
前記殻部材の内部には、当該殻部材および閉鎖蓋と前記ビット軸との相対回転を許容する回転摺動部材と、前記気密パッキンとが内包されており、
前記気密パッキンは、閉鎖蓋とビット軸との間を密閉するよう配置されていることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め機。
【請求項3】
前記吸気ユニットは、回り止め部材によってビット軸と供回りすることが防止されていることを特徴とする請求項2に記載のねじ締め機。
【請求項4】
前記ビット軸は、クッションばねによって前記回転駆動源と離反する方向に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め機。
【請求項5】
前記負圧発生手段には、ビット軸およびボックスビットの内部の気圧を測定可能な圧力センサが設けられていること特徴とする請求項1に記載のねじ締め機。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじをワークに締結するねじ締め機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボックスビット102を備えたねじ締め機100として特許文献1に開示されたねじ締め機100が知られている。このねじ締め機100は、図4に示すように前記ねじと嵌合する嵌合孔101を備えたボックスビット102を締結モータ103により回転させるドライバユニット104と、このドライバユニット104を移動される位置制御機構105から構成されており、位置制御機構105の駆動を受けてワーク(図示せず)に向かい移動するボックスビット102が締結モータ103によって所定のトルクで回転することにより、ねじをワークに締結可能となっていた。また、前記ドライバユニット104は、締結モータ103の出力軸に連結される連結継手106と、この連結継手106とボックスビット102とを接続するビット軸107を有しており、ビット軸107は、前記連結継手106に対して、軸方向に相対移動可能に構成されているとともにビット軸107は、連結継手106に収容されたクッションばね108によって常時下方に付勢されている。このため、ねじとワークとが当接した瞬間等に生じる軸方向の衝撃を吸収することが可能でワークやねじの破損を防止出来る。さらに、前記ボックスビット102およびビット軸107には、軸方向に貫通する通気孔109が形成されている。この通気孔109の開口部は、前記位置制御機構105に固定されたハウジング110に覆われており、ハウジング110には、負圧発生手段(図示せず)まで連続するホース継手111が接続されている。このように、通気孔109が負圧発生手段に連続することにより、ボックスビット102の嵌合孔101にねじを吸着保持することが可能となる。なお、前記ハウジング110とビット軸107の間には、オムニシール等の気密パッキン112が配置されており、気密性が保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59-188161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のねじ締め機100は、前記ハウジング110が位置制御機構105に固定されていた。このため、ねじとねじ穴がずれている等によりビット軸107が傾斜すると、ビット軸107により気密パッキン112が圧迫されることとなり、ビット軸107と気密パッキン112との間で摩擦力が上昇する。この状態でビット軸107が回転したり、軸方向に移動したりすると、気密パッキン112の摩耗が激しく、短期間で破損することがあった。また、空気中の埃等がビット軸107の表面に付着した状態で当該ビット軸107が軸方向に相対移動すると、前記埃等の付着物が気密パッキン112を傷つけたり、気密パッキン112とビット軸107との間に入り込み隙間を形成することがあった。これらのように気密パッキン112が破損したり、気密パッキン112との間に付着物等が入り込むと、気密パッキン112による気密性が保持できなくなるため、嵌合穴101からねじが脱落する等の問題が発生する。また、これら理由により、従来のねじ締め機100は、気密パッキン112を比較的短期間毎に交換する必要があり、作業効率が悪いという問題もあった。
【0005】
そのため、本発明は、気密パッキンが摩耗し難いねじ締め機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて創生されたものであり、ねじの頭部と嵌合する嵌合孔が形成されたボックスビットと、前記ボックスビットが連結されるビット軸と、前記ビット軸およびボックスビットを回転駆動させる回転駆動源とを備え、前記ビット軸およびビット軸は、前記回転駆動源に対して軸方向に相対移動可能に構成されたドライバユニットと、前記ドライバユニットを移動させる位置制御機構とを備えたねじ締め機において、前記ビット軸およびボックスビットには、ビット軸の外周に形成された開口部から前記ボックスビットの嵌合孔まで連続する通気孔が形成され、前記開口部は、前記ビット軸に相対回転可能に装着された吸気ユニットに被覆され、前記吸気ユニットには、空気を吸引可能な負圧発生手段が連続しているとともに当該吸気ユニットとビット軸との間を密閉する気密パッキンが設けられ、前記負圧発生手段が駆動することにより、前記ボックスビットの嵌合部にねじを吸着保持可能に構成されることが好ましい。なお、前記吸気ユニットは、ビット軸を被覆する殻部材および殻部材の開口部を封鎖する閉鎖蓋を備え、前記殻部材の内部には、当該殻部材および閉鎖蓋と前記ビット軸との相対回転を許容する回転摺動部材と、前記気密パッキンとが内包されており、前記気密パッキンは、閉鎖蓋とビット軸との間を密閉するよう配置されていることが好ましい。また、前記吸気ユニットは、回り止め部材によってビット軸に供回りが防止されていることが好ましい。さらに前記ビット軸は、クッションばねによって前記回転駆動源と離反する方向に付勢されていることが好ましい。しかも前記負圧発生手段には、ビット軸およびボックスビットの内部の気圧を測定可能な圧力センサが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のねじ締め機によれば、負圧発生手段が接続される吸気ユニットがビット軸に装着されている。このため、ビット軸の傾斜および軸方向への移動に従動することができ、ビット軸が傾斜あるいは、軸方向へ移動しても気密パッキンが摩耗しない。このため、気密パッキンが破損し難くなる等の利点がある。また、これにより、気密パッキンの寿命が延び、交換頻度が低下するため、作業効率が向上する等の利点もある。なお、吸気ユニットがビット軸およびこれを被覆する殻部材の相対回転を許容する回転摺動部材を備えているため、吸気ユニットがビット軸と一体に回転することがなく、吸気ユニットが締結工程に影響を与えない等の利点がある。また、回り止め部材によって供回りが防止されているため、負圧発生手段との接続部品が動かずホース等が絡まる恐れがない等の利点がある。さらに、ビット軸を回転駆動源から離反する方向に付勢するクッションばねを備えることにより、ねじとワークとが当接した際の衝撃を吸収することが可能等の利点もある。しかも、負圧発生手段が圧力センサを備えおり、ボックスビットがねじを吸着保持したことを即座に検出できるため、サイクルタイムが向上する等の利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るねじ締め機の構造を示す一部断面側面図である。
図2】本発明に係るねじ締め機の要部の構造を示す要部拡大一部切欠き断面側面図である。
図3】本発明に係るねじ締め機の要部の構造を示す要部拡大底面図である。
図4】従来のねじ締め機の構造を示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1ないし図3において10は、ワーク(図示せず)に締結部品の一例であるねじ(図示せず)を締結するねじ締め機である。このねじ締め機10は、多関節ロボット(図示せず)の駆動を受けて水平方向に移動可能な位置制御機構20と、この位置制御機構20に支持されるドライバユニット30と、これら位置制御機構20およびドライバユニット30の駆動を制御する制御部とを有している。なお、ねじは、六角柱形状の頭部およぶ頭部と一体に形成された脚部からなる六角ボルトであり、脚部の外周には、おねじが形成されている。
【0010】
前記位置制御機構20は、鉛直方向に延びるフレーム21を備えており、このフレーム21の上下端部には、水平方向に延びる上板22および下板23が一体に固定されている。この上板22および下板23の間には、フレーム21と平行に延びるガイドロッド24が設けられており、このガイドロッド24には、摺動自在に構成されたドライバ台25が昇降自在に装着されている。また、前記上板22には、昇降駆動源の一例である昇降用ACサーボモータ26(以下、昇降モータ26という)が載置されており、この昇降モータ26の出力軸には、ボールねじ27が一体に回転可能に連結されている。このボールねじ27は、前記上板22および下板23の間に設けられており、このボールねじ27には、その回転によって昇降する駆動ナット(図示せず)を介して前記ドライバ台25が連結されている。これら構造により、前記ドライバ台25は、前記昇降モータ26の回転駆動を受けて、ガイドロッド24に沿って昇降可能となる。
【0011】
前記ドライバユニット30は、図1に示すように前記位置制御機構20のドライバ台25の上面に固定されるモータ台31を備えている。このモータ台31には、回転駆動源の一例である締結用ACサーボモータ32(以下、締結モータ32という)がその出力軸をモータ台31内に挿入するよう固定されており、この締結モータ32の出力軸には、一体に回転可能な軸継手33が連結されている。この軸継手33は、その下端に挿入孔331が形成されており、この挿入孔331には、軸継手33と一体に回転可能に構成されたビット軸35が挿入されている。このビット軸35は、前記位置制御機構20の下板23より下方まで伸びており、その下端には、前記ねじと嵌合可能な六角柱形状の嵌合孔371を有するボックスビット37が装着されている。また、前記挿入孔331には、軸方向に延びる長孔332が交差しており、この長孔332には、これに沿って昇降自在に構成された連結ピン34が挿通されている。この連結ピン34は、前記ビット軸35を吊下しており、頭部を有さないいもねじ(図示せず)によって固定されている。また、前記挿入孔331には、前記ビット軸35を常時下方に付勢するクッションばね36が封入されている。このクッションばね36の付勢により、ビット軸35は、前記連結ピン34が長孔332の下端に常時当接するように押し出されている一方、ビット軸35が上方向に押圧されるとクッションばね36が撓み、ビット軸35および連結ピン34が前記軸継手33および締結モータ32に対して相対移動可能となる。
【0012】
ビット軸35およびボックスビット37には、その軸方向に貫通する通気孔351が形成されている。この通気孔351は、その下端が前記ボックスビット37前記嵌合孔371まで連通している一方、その上端は、前記軸継手33より十分下方でビット軸35の径方向外側に向かい屈曲しており、ビット軸35の外周に開口部352を形成している。この通気孔351の開口部352は、ビット軸35の外周に設けられた吸気ユニット40に被覆されている。この吸気ユニット40は、図2に示すように前記通気孔351の開口部352を被覆可能な中空筒状の殻部材41およびこの殻部材41の上下の開口部を閉鎖するよう固定された閉鎖蓋42,42を有しており、前記閉鎖蓋42,42とビット軸35との隙間には、気密に保持する気密パッキン43,43が設けられている。また、前記殻部材41には、前記通気孔351の開口部352と同じ高さにホース継手44が接続されており、このホース継手44には、真空ポンプ等の負圧発生手段まで続く吸気ホース(図示せず)が接続されている。これら構造により、前記負圧発生手段が駆動すると、ビット軸35およびボックスビット37の内部が負圧となるため、ボックスビット37の嵌合孔371から吸気可能となる。また、前記負圧発生手段には、気圧を測定する圧力センサ(図示せず)が設けられており、当該圧力センサにより、前記吸気ユニット40や、ビット軸35およびボックスビット37の内圧を常時測定可能に構成されている。
【0013】
また、前記殻部材41の内部には、前記通気孔351の開口部352の上下にそれぞれに形成された係合溝に係合し、吸気ユニット40を高さ方向に固定する止め輪45,45と、ビット軸35と殻部材41との相対回転を許容する回転摺動部材の一例であるベアリング46,46が内包されており、前記ベアリング46,46と前記閉鎖蓋42,42の間には、ベアリング46,46の外輪のみと接触するよう環状の逃げ溝が形成されたワッシャ47,47が配されている。さらに、前記殻部材41は、図3に示すように平面部が形成された平面視D字形状に構成されているとともに前記ドライバ台25の下面には、平面部に当接可能な回り止め部材48が固定されている。この回り止め部材48は、前記平坦面と若干の隙間を空けて配置されている。これら構造により、吸気ユニット40は、ビット軸35の昇降動作および揺動動作に従動可能となるとともにビット軸35に対して相対回転自在となり、ビット軸35の回転時、供回りすることが防止される。なお、吸気ユニット40は、前記ドライバ台25や軸継手33から前記連結ピン34が長孔332内で相対移動可能な寸法以上離れるように設置されており、ビット軸35が軸継手33に対して昇降した際、吸気ユニット40がドライバ台25あるいは、軸継手33等と接触しないよう設計されている。
【0014】
前記制御部には、前記多関節ロボットや、前記位置制御機構20の昇降モータ26および前記ドライバユニット30の締結モータ32や、負圧発生手段およびねじ供給機(図示せず)等が接続されており、これらの駆動を制御可能に構成されている。なお、本実施形態においてねじ供給機は、特許第6176976号等に開示されるように前記多関節ロボットの駆動範囲内に予め設定される所定に位置(以下、ねじ供給位置という)までねじを供給するように構成された従来既知のものである。
【0015】
次に上記のように構成されたねじ締め機10の作用を説明する。
駆動信号が入力されると、制御部は、前記ねじ供給機を駆動させて前記ねじを前記ねじ供給位置まで供給する。ねじがねじ供給位置に供給されると前記多関節ロボットを駆動して前記ボックスビット37が前記ねじ供給位置の上方に位置するようねじ締め機10を移動させる。ボックスビット37がねじ供給位置の上方に到達すると、制御部は、前記位置制御機構20を駆動させてドライバユニット30をねじに向けて下降させる。ドライバユニット30が下降し始めると制御部は、前記締結モータ32を駆動させて、ボックスビット37を回転させる。この時、吸気ユニット40は、ベアリング46,46によってビット軸35に対して相対回転自在に構成されていることおよび殻部材41が回り止め部材48に当接しているため、ビット軸35と供回りすることが防止されている。
【0016】
上述のようにボックスビット37が回転しながら下降する途中で制御部は、前記負圧発生手段を作動させる。このように回転しながら下降するボックスビット37の嵌合孔371にねじの頭部が嵌合するとともに当該嵌合孔371にねじが吸着保持される。この時、ねじの頭部によって前記通気孔351と嵌合孔371との境界部分が封鎖され、ビット軸35および吸気ユニット40内の気圧が低下する。このように気圧が低下すると、前記圧力センサがこれを検出して制御部にねじの吸着保持完了を通知する。前記圧力センサからの信号を受信した制御部は、前記位置制御機構20を駆動させてドライバユニット30を引き上げる。その後、制御部は、多関節ロボットを駆動させてねじ締め機10を前記締結位置の上方に移動させる。ボックスビット37が締結位置の上方に到達すると、制御部は、前記位置制御機構20を再度駆動させてドライバユニット30を下降させるとともに前記締結モータ32を駆動させてボックスビット37およびねじを回転させる。これにより、ねじがワークに締結される。この締結時、前記締結モータ32が所定の締付トルクを出力すると、制御部は、締結モータ32および負圧発生手段を停止させるとともに前記位置制御機構20および多関節ロボットを駆動させてねじ締め機10を当初待機位置まで復帰させる。
【0017】
上述のねじ供給機からねじを受け取る過程およびねじの締結過程において、ボックスビット37がねじと嵌合した時およびねじとワークとが当接した際、前記クッションばね36が撓み、ボックスビット37およびビット軸35が締結モータ32に対して相対移動することにより、ボックスビット37に生じる衝撃を吸収している。このため、ボックスビット37やねじ、あるいはワーク等の破損が防止されている。また、ボックスビット37の軸線と、ねじ供給位置にて待機するねじあるいは、締結箇所とが若干ずれていた場合、前記ビット軸35は、寸法公差上前記軸継手33および当該ビット軸35の間あるいは、軸継手33と締結モータ32の間の発生する隙間によって若干揺動するように傾斜して位置ずれを解消する。このようにねじ供給機からねじを受け取る過程およびねじの締結過程において、ビット軸35は、締結モータ32に対して軸方向の移動や揺動等することになる。しかしながら、本願のねじ締め機10は、前述のように吸気ユニット40がビット軸35に従動するため、揺動するビット軸35が気密パッキン43,43を押圧せず、ビット軸35と気密パッキン43,43との間で摩擦力が上昇しない。このため、ビット軸35が回転しても気密パッキン43,43の摩耗が少なくなる。また、ビット軸35と気密パッキン43,43とが軸方向に相対移動しないため、ビット軸35の表面に付着する空気中の埃や締結位置周辺飛散している鉄粉等の付着物が前記気密パッキン43,43を傷つけたり、気密パッキン43,43とビット軸35との間に入り込み気密性を弱めたりすることが防止される。加えて、従来のねじ締め機の気密パッキン112には、回転方向、軸方向、径方向と三方向の負荷が付与されていたのに対して本願のねじ締め機10の気密パッキン43には、回転方向のみの負荷のみ付与される構造となっているため、摩耗が少なくなる。これらにより、気密パッキン43,43の寿命が延びるため、長期間使用しても気密性が保持され、ねじの脱落等が生じない。この結果、気密パッキン43の交換頻度が減少するため、ねじ締め機10の作業効率が向上する。
【0018】
上述のように吸気ユニット40がビット軸35に従動するため、ビット軸35が傾斜しても気密パッキン43,43の一部のみに負荷が係るということがない。これにより、負圧発生手段の駆動時、気密パッキン43,43が周方向均一な形状が保持されて気密性が向上するため、前記圧力センサによる負圧の測定結果が安定する。この結果、圧力センサによるねじの検出結果が安定するとともに検出速度が向上するため、サイクルタイムが短縮される。さらに、上述のようにビット軸35が傾斜してもビット軸35が気密パッキン43,43を押圧せず、ビット軸35と気密パッキン43,43との間で発生する摩擦力が増大しないため、当該摩擦力によるトルク損失がなくなり、締付トルクのトルク精度が安定する。
【0019】
また、上述のようにビット軸35が軸方向に移動する際に気密パッキン43,43が抵抗とならないため、ビット軸35を軸継手33から離反する方向に付勢するクッションばね36を従来のねじ締め機100より弱くすることが可能となる。そして、クッションばね36を弱くすることにより、ねじとボックスビット37とが当接した瞬間あるいはねじとワークとが当接した瞬間に発生する衝撃が低減され、ねじやワークが破損し難くなる。さらにクッションばね36が弱くした分、位置制御機構20によるドライバユニット30を軸方向に付勢するねじ締め推力を弱く設定できる。この結果、当該ねじ締め推力によるワークの変形量を減少させることが可能でき、高精度なねじ締めも可能となる。
【0020】
なお、本発明に係るボックスビット37は、前述したものに限定するものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、嵌合孔371の形状は、六角柱形状に限らずねじの頭部形状に合わせて適宜変更可能である。また、殻部材41は、前記回り止め部材48と係合して、供回りを防止であれば、D字形状に限定されず、その他の非円形に構成されても何ら問題ない。さらに、上記ねじ締め機10は、供給装置に供給されたねじを所定の供給位置まで取りに行く構成であったが、これに限定されず、例えば、本出願人により開示された特願2018-079554号公報に詳述されているようにボックスビット37の軸線上に供給装置から圧送されたねじを一旦保持可能なチャックユニットを備えるねじ締め装置であっても良い。しかも、本実施形態において、位置制御機構20は、垂直方向のみに駆動し、これを水平移動させる多関節ロボットに支持される構成であったが、水平方向および垂直方向に駆動可能なロボットアーム等、その他の構成であっても何ら問題無い。
【符号の説明】
【0021】
10 … ねじ締め機
20 … 位置制御機構
30 … ドライバユニット
31 … モータ台
32 … 締結モータ
33 … 軸継手
331… 挿入孔
332… 長孔
34 … 連結ピン
35 … ビット軸
351… 通気孔
352… 開口部
36 … クッションばね
37 … ボックスビット
371… 嵌合孔
40 … 吸気ユニット
41 … 殻部材
42 … 閉鎖蓋
43 … パッキン
44 … ホース継手
45 … 止め輪
46 … ベアリング
47 … ワッシャ
48 … 回り止め部材
図1
図2
図3
図4