(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091017
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
B60W 30/16 20200101AFI20240627BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20240627BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240627BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B60W30/16
B60W40/02
G08G1/00 X
B60T7/12 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207268
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】富澤 克美
(72)【発明者】
【氏名】田替藤 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 彩優子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 紀行
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA02
3D241BC01
3D241CA08
3D241CC03
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5H181AA01
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5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
(57)【要約】
【課題】隊列走行する移動体同士の距離を、搭乗者の状態や周囲の環境に応じて制御する。
【解決手段】搭乗者の発声による音声と、周囲の環境音とを含む音、を取得するマイク21と、周囲の環境情報を取得するセンサ22と、マイク21による取得結果に応じて、搭乗者が発声しているか否かを判定する発声判定部23と、発声判定部23により搭乗者が発声していると判定された場合に、マイク21による取得結果に応じて、他の移動体との距離の設定を行う距離設定部27と、センサ22により取得された周囲の環境情報に基づき、距離設定部27で設定した距離で走行した場合に、他の移動体に対して安全に走行可能か否かを判定する安全判定部28と、安全判定部28の判定結果に応じて、距離設定部27で設定された他の移動体との距離となるように走行制御を行う走行制御部29と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動体で隊列を形成して走行する際に、隊列内の他の移動体との間の距離を制御して走行する移動体であって、
搭乗者の発声による音声と、周囲の環境音とを含む音、を取得するマイクと、
周囲の環境情報を取得するセンサと、
前記マイクによる取得結果に応じて、前記搭乗者が発声しているか否かを判定する発声判定部と、
前記発声判定部により前記搭乗者が発声していると判定された場合に、前記マイクによる取得結果に応じて、前記他の移動体との距離の設定を行う距離設定部と、
前記センサにより取得された周囲の環境情報に基づき、前記距離設定部で設定した距離で走行した場合に、他の移動体に対して安全に走行可能か否かを判定する安全判定部と、
前記安全判定部の判定結果に応じて、前記距離設定部で設定された他の移動体との距離となるように走行制御を行う走行制御部と、を備える、
移動体。
【請求項2】
前記距離設定部は、前記マイクにより取得された搭乗者の発声による音声の大きさ、及び高さの少なくともいずれかに応じて、前記距離の設定を変更する、
請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
風向きを取得する風向取得部をさらに備え、
前記距離設定部は、
前記風向取得部で取得された風向きに応じて、前記距離の設定を変更する、
請求項1又は請求項2に記載の移動体。
【請求項4】
前記他の移動体との位置関係を取得する位置関係取得部をさらに備え、
前記距離設定部は、
前記位置関係取得部により取得された前記他の移動体の位置関係が縦列である場合に、前記他の移動体と左右に並列して走行するように前記距離の設定を変更する、
請求項1又は請求項2に記載の移動体。
【請求項5】
前記安全判定部は、
走行速度と、前記センサにより取得された自身の周囲の環境情報と、に基づき、前記他の移動体が急停車した場合であっても、前記他の移動体に対して安全に停止できるだけの距離を確保できるか否かに応じて、前記安全に走行可能か否かの判定を行う、
請求項1又は請求項2に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、1人~2人乗り程度の移動体が開発されている。例えば、この移動体とは電動キックボード等のマイクロモビリティであり、友人や家族などのグループが、このマイクロモビリティに乗車して隊列走行することが可能である。
【0003】
より具体的には、移動体として、IoTを具備した次世代のマイクロモビリティの開発が進められている。このような移動体が複数台で同一の目的地に向かう際に隊列走行する場合には、道路交通のルール及び安全の観点から、進行方向に対して並列ではなく、縦列に並んだ状態で隊列走行を行う。
【0004】
このとき、縦列で隊列走行している複数の移動体のうち、先頭の移動体が目的地を把握してルートを導き出す。このとき後続の移動体は、特に目的地やルートを考慮せずに、1つ前の移動体の移動体に追従する。これにより、複数の移動体が、簡単かつ安全に目的地に到達可能となる。例えば、特許文献1には、先行車への追従時における走行フィーリングを向上させる運転支援装置が開示されている。
【0005】
また、このようなマイクロモビリティは、小回りが利くとともに、窓やドアが無く、開放的である。そのため搭乗者は、インカムなどの無線装置を利用せずに、気軽に接近して直接会話(生声)することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、複数の移動体に乗車する搭乗者同士が直接会話を行う場合に、周囲の騒音が大きいと、搭乗者の声が互いに届かず、会話が困難になる場合がある。その一方で、搭乗者の声が確実に届くように移動体同士を近づけることが考えられるが、移動体同士が近づき過ぎると、安全な距離を保てなくなるおそれがある。そのため、複数の移動体の搭乗者同士で声が届く距離としつつ安全が確保できるように、移動体同士の距離が適切な距離となるように制御を行う要望がある。
【0008】
本開示は、隊列走行する移動体同士の距離を、搭乗者の状態や周囲の環境に応じて制御する移動体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示にかかる移動体は、複数の移動体で隊列を形成して走行する際に、隊列内の他の移動体との間の距離を制御して走行する移動体であって、搭乗者の発声による音声と、周囲の環境音とを含む音、を取得するマイクと、周囲の環境情報を取得するセンサと、前記マイクによる取得結果に応じて、前記搭乗者が発声しているか否かを判定する発声判定部と、前記発声判定部により前記搭乗者が発声していると判定された場合に、前記マイクによる取得結果に応じて、前記他移動体との距離の設定を行う距離設定部と、前記センサにより取得された周囲の環境情報に基づき、前記距離設定部で設定した距離で走行した場合に、他の移動体に対して安全に走行可能か否かを判定する安全判定部と、前記安全判定部の判定結果に応じて、前記距離設定部で設定された他の移動体との距離となるように走行制御を行う走行制御部と、を備える。
これにより、複数の移動体の搭乗者間で直接会話が可能であり、かつ、移動体同士が安全な距離となる状態で移動体を走行させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示よれば、隊列走行する移動体同士の距離を、搭乗者の状態や周囲の環境に応じて制御する移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】自移動体が他移動体に追従走行している状態を示す図である。
【
図3】走行状態変更部の構成を示すブロック図である。
【
図4】会話を行う際に走行状態を変更する手順を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本実施の形態に係る移動体について説明する。
図1に示すように、移動体1、2は、それぞれユーザが搭乗して所定の方向への走行を行う移動体であり、走行方向に対して縦列で隊列走行しているものとして説明する。また、この移動体1、2は、それぞれ電動キックボード等の、窓やドアが無い移動体である。
【0013】
以下では、移動体1を自移動体とし、移動体2を他の移動体(以下、他移動体)であるものとして説明する。さらにここでは、隊列の先頭を走行している移動体2に対し、移動体2のすぐ後方に配された移動体1が、移動体2に追従して走行し、移動体1の搭乗者から移動体2の搭乗者へ話しかける場合として説明する。また、移動体1と移動体2は、同一の構成を有する移動体であるものとして説明するが、これに限られない。
【0014】
最初に、移動体1の各構成部、及び、移動体1と移動体2が追従走行する際の互いの情報の送受信について説明する。
【0015】
本発明の一実施形態では、
図2に示すように、移動体1は、電波を生成して発信する発信部11と、電波を受信する受信部12と、受信角測定部13と、周波数測定部14と、記憶部15と、電源部16と、搭乗者が入力を行う追従設定部17と、追従にかかる更新処理のタイミングを変更する更新制御部18と、走行状態変更部20と、を備える。
【0016】
発信部11は、自移動体である移動体1から、他移動体である移動体2に向けて電波を発する発信部である。なお、発信部11から発せられる電波を、入射波とする。
【0017】
受信部12は、移動体1から発せられた入射波に対応して、移動体2から発せられた反射波(受信電波)を受信する受信部である。なお、発信部11で発信される電波の周波数及び、受信部12で受信される電波の周波数は、風による影響を受けにくい周波数とする。
【0018】
受信角測定部13は、受信部12で受信した電波がどの角度から入射したかの角度を測定する。すなわち受信角測定部13では、受信部12により移動体2からの電波を受信した際に、電波を受信した方向から、移動体2が存在している方向を特定することができる。
【0019】
周波数測定部14は、受信部12で受信した電波の周波数を測定する。ここでは周波数測定部14は、例えば測定された周波数と、後述する記憶部15に記憶されている他の移動体が発信する周波数の情報とを比較して、自移動体が発した電波であるかを特定することができるものとする。
【0020】
さらに、周波数測定部14は、発信部11で発した入射波と受信部12で受信した受信波により、電波のドップラー効果を利用して、自移動体である移動体1と、他移動体である移動体2の相対的な速度や、相対的な距離を測定する。
【0021】
なお、受信角測定部13と、周波数測定部14は、自移動体である移動体1と他移動体である移動体2の位置関係を取得することができることから、後述する位置関係取得部25として利用することが可能である。
【0022】
また、移動体1と移動体2において、発信部11と受信部12による情報の送受信では、互いの識別信号や、位置情報、速度、ブレーキ、ウィンカー等、主に追従走行に必要な情報の送受信を行うことができる。
【0023】
これらの構成は、1台のドップラーレーダーに相当していると考えることができるが、1台のドップラーレーダーでは一次元的な動きしかとらえることができないため、2台のドップラーレーザーに相当する構成とすることで、移動体2の二次元的な動きを捉えることが可能である。
【0024】
記憶部15は、自移動体である移動体1および他の移動体が発信する電波の周波数を記憶する。例えば、記憶部15に記憶された移動体1や移動体2の夫々の周波数の情報は、周波数測定部14において、ドップラー効果を利用して、移動体2との相対的な速度や、相対的な距離を測定する際に利用できる。
【0025】
電源部16は、移動体1が走行するために車輪を駆動するための電力や、各部の動作に必要な電力を供給することができるバッテリーを有している。
【0026】
追従設定部17は、搭乗者が操作することにより、移動体1を移動体2に追従させる設定とするか、追従させない設定とするかを切り替えることができる入力部である。
【0027】
更新制御部18は、搭乗者が操作することにより、受信角測定部13による他の移動体の方向の測定を行うタイミング、および、周波数測定部14による他の移動体との相対的な速度や、相対的な速度を測定するタイミング等、追従走行にかかる情報の更新のタイミングを変更することができる。
【0028】
走行状態変更部20は、追従設定部17において、隊列を組んで移動体1を移動体2に追従させる設定とした場合に、移動体同士の距離を、搭乗者の状態や周囲の環境に応じて制御する制御部である。
【0029】
図3に示すように、走行状態変更部20は、マイク21と、センサ22と、マイク21に入力された音から声の有無を判定する発声判定部23と、風向きを測定する風向取得部24と、移動体1と移動体2の位置関係を取得する位置関係取得部25と、手動で距離設定の操作を行う距離操作部26と、移動体1と移動体2の距離を設定する距離設定部27と、距離設定部27により設定された距離が安全距離か否かを判定する安全判定部28と、移動体1と移動体2の距離が距離設定部27で設定した距離となるように走行の制御を行う走行制御部29と、を備える。
【0030】
走行状態変更部20では、搭乗者の状態、及び、周囲の環境に応じて、移動体1の走行状態を変更するための判定や走行制御を行う。
【0031】
マイク21は、搭乗者による会話の音声と、周囲の環境音を取得する。ここでマイク21が取得する周囲の環境音とは、騒音や、風切り音等を含む。マイク21は、入力された音声の情報は、発声判定部23に出力する。
【0032】
センサ22は、周囲の環境情報を取得するセンサであり、ここでは移動体2や他の障害物の存在を取得する対物センサである。例えばセンサ22には、カメラやレーダーを用いることができる。センサ22は、取得した周囲の環境情報を、安全判定部28に出力する。
【0033】
発声判定部23は、マイク21による取得結果に応じて、搭乗者が発声しているか否かを判定する。発声判定部23は、判定結果を距離設定部27に出力する。なお、発声判定部23では、公知の音源分離技術を用いて、搭乗者の音声と周囲の環境音を分離して、音圧や周波数などの解析を行い、発声判定を行う。
【0034】
風向取得部24は、走行中の移動体にかかる風の風向きを測定できる。なお、風向取得部24は、風の強さを同時に測定するものであってもよい。風向取得部24は、取得された風に関する情報を、距離設定部27に出力する。なお、風は気象による自然風であり、移動体が走行する際に発生する走行風を含んでもよい。また、風(自然風)に関する情報を、公開されている気象情報から取得してもよい。
【0035】
位置関係取得部25は、走行中である移動体1と移動体2の現在の位置関係を取得する。なお、位置関係取得部25は、受信角測定部13や周波数測定部14を利用して、移動体1と移動体2の間で発生するドップラー効果を利用して位置関係を取得することができるが、この方法に限られない。位置関係取得部25は、取得された移動体1と移動体2の位置関係の情報を、距離設定部27に出力する。
【0036】
距離操作部26は、搭乗者が操作する操作部である。距離操作部26に対して行われる搭乗者の操作とは、典型的には、搭乗者の手によるボタンの押圧や、入力パネルの操作等であるが、搭乗者の視線の方向をカメラで取得し、所定の視線の方向がある場合に入力とすることや、ユーザの音声による入力等であってもよく、これらに限られない。距離操作部26は、搭乗者の操作により、移動体1と移動体2の距離を近づけるか、あるいは遠ざけるかの情報入力が行われる。距離操作部26は、入力された情報を距離設定部27に出力する。
【0037】
さらに、距離操作部26では、搭乗者が操作入力を行うことにより、近づけたい、または遠ざけたい対象を指定することができる。例えば、搭乗者は、距離操作部26を操作することにより、前方を走行している移動体から後方で走行している移動体へ話しかける場合に、対象となる移動体の指定を行うことができる。また他の一例として、距離操作部26では、3台の移動体が縦列で走行している場合であって、最後尾の移動体が、前方の1台の移動体を追い越して、先頭の移動体に話しかけたい場合であっても、対象となる先頭の移動体の指定を行うことができる。
【0038】
距離設定部27は、発声判定部23により、移動体1の搭乗者が発声していると判定された場合に、移動体1のマイク21により取得した搭乗者の音声と移動体2のマイク21により取得した周囲の環境音に応じて、移動体1と移動体2との距離の設定を行う。ここで、距離設定部27による距離の設定は、発話側である移動体1の搭乗者が発した音声と、受話側である移動体2が取得した環境音と、を利用することが望ましいが、移動体1と移動体2同士は距離が近く、かつ、同等の速度で走行しており、風切り音などの環境音は同様であると考えられるため、移動体2で取得される環境音に代えて、移動体1で取得される環境音を利用することができる。特に、移動体1と移動体2は同じ車種である場合には、移動体1と移動体2で取得される環境音はより同一性が高いものとして扱うことができる。
【0039】
例えば、距離設定部27は、搭乗者の音声の大きさと、騒音である周囲の環境音の音量のバランスに応じて、距離の設定を行うことができる。具体的には、移動体1の搭乗者から発声された音声は、移動体2との距離に応じて減衰して移動体2へ到達するが、到達した音声が、移動体2の周囲の騒音レベルより数dB程度大きければ、移動体2の搭乗者が聞き取ることができる。距離設定部27により設定される距離は、移動体2の搭乗者が聞き取れることができる移動体1と移動体2との間の距離は、公知の距離減衰の計算方法や予め設定された減衰量と距離との対応関係などを用いて算出することができる。
【0040】
すなわち、距離設定部27は、周囲の環境音が大きくて騒音レベルが所定値以上の高い状態である場合には、移動体1の搭乗者と移動体2の搭乗者の会話が聞こえにくくなることから、移動体1と移動体2との距離を、現在の距離より近づけるように設定することができる。一方、距離設定部27は、周囲の環境音が小さくて騒音レベルが所定値以下の低い状態である場合には、移動体1と移動体2との距離を、現在の距離より離れるように設定することができる。
【0041】
ここで一例として、人が音声を聞き取る際に、騒音である環境音が60dB程度である場合には、少なくとも3dB大きい63dB程度の音圧が必要である。また、音は発生源から遠ざかるにつれて減衰するため、2m程度であれば減衰量は6dBとなる。この場合には、音の発生源における出力音圧は69dBが必要となる。
【0042】
したがって、距離設定部27では、マイク21で取得した環境音の騒音レベルと、人が音声を発生する際の声の大きさに基づいて、移動体1の搭乗者が発声した場合に、移動体2の搭乗者が聞き取れる減衰量となる距離を設定する。具体的には、マイク21で取得した環境音の騒音レベル及び搭乗者の発声の音圧レベルの差に基づいて、移動体1の搭乗者が発声した場合に、移動体2においてマイク21で取得した搭乗者の発声の音圧レベルが、環境音の騒音レベルに対して所定値以上大きくなるよう、距離を設定する。
【0043】
また、距離設定部27では、以下のように距離設定を行うことができる。
【0044】
距離設定部27は、マイク21により取得した音声の高さ(周波数)が一般に低いと聞き取りにくいことから、搭乗者の音声の高さが所定値より低い場合(例えば、100~300Hz)は、移動体1と移動体2との距離を近づけるように設定することができる
【0045】
また、距離設定部27は、風向取得部24により取得された風向きに基づき、移動体1と移動体2との距離を設定することができる。例えば、後方である移動体1の搭乗者から前方である移動体2の搭乗者に声を掛けたい場合、移動体2が風上である場合に、移動体2の搭乗者は音が聞こえにくくなる場合がある。そのため、距離設定部27は、風向取得部24により移動体2が移動体1より風上であることに応じて、移動体1と移動体2との距離を近づけるように設定する。なお、風向取得部24で取得した風向きに応じて、移動体1と移動体2との距離を変更する変更内容は、これに限られない。
【0046】
また、距離設定部27は、位置関係取得部25により取得された移動体1と移動体2の位置関係に応じて、移動体1と移動体2との距離の設定を行うことができる。例えば、距離設定部27は、並列走行が規制(禁止)されていない区間において、移動体1と移動体2が並列して走行している状態が縦列して走行している状態に比べて、音が聞こえやすく、安全な移動体1と移動体2との距離を確保できる場合は、移動体1と移動体2が左右に並列で走行するように距離の設定を変更することができる。なお、位置関係取得部25により取得された位置関係に応じて、移動体1と移動体2との距離を変更する変更内容は、これに限られない。
【0047】
また、距離設定部27は、搭乗者が距離操作部26を操作することにより入力された内容に応じて、移動体1と移動体2との距離の設定を行うことができる。例えば、搭乗者は、会話する相手にだけ聞こえ易くし、他の人には聞こえにくくしたい場合は、距離操作部26を操作して、移動体1と移動体2を近づけるか否かを、任意に設定することができる。
【0048】
なお、距離設定部27による距離設定は、マイク21により取得した搭乗者の音声の大きさと騒音である周囲の環境音の大きさ、搭乗者の音声の高さ、風向き、移動体1と移動体2の位置関係、搭乗者の操作のいずれか1つに基づいて行うこととしてもよく、少なくとも2つの組み合わせにより行うこととしてもよい。典型的には、少なくとも距離設定部27による距離設定は、マイク21により取得された搭乗者の音声の大きさと、周囲の環境音の大きさと、の情報に応じて設定することができる。
【0049】
安全判定部28は、センサ22により取得された周囲の環境情報に基づき、距離設定部27で設定した距離を移動体2との相対距離として走行した場合に、移動体1が安全に走行可能か否かを判定する。
【0050】
例えば、安全判定部28は、センサ22により取得された移動体2との相対的な距離などを参照して、移動体2に対して安全に走行可能か否かを判定することができる。例えば、安全判定部28では、前方を走行している移動体2が急停止したときに追突しないよう、移動体2が安全に停止できるだけの距離を確保できるか否かを判定する。このとき、安全判定部28では、検出された速度や、路面における凹凸や濡れなどの環境情報の状態に基づき、予め設定されている停止距離を確保できるか否かを判定することができる。なお、移動体の安全な停止距離は、移動体の速度と、路面状態と、の関係から一般的に既知の情報を利用することができる。
【0051】
なお、安全判定部28は、距離設定部27で設定した移動体2との距離で走行した場合に、センサ22により取得される移動体2以外の他の移動体や障害物等に対しても安全であるか否かの判定を行っても良い。安全判定部28は、判定結果を走行制御部29に出力する。
【0052】
走行制御部29は、安全判定部28により安全であると判定された場合に、距離設定部27に設定された距離が、移動体1と移動体2の距離となるように、移動体1の走行を制御する。
【0053】
より具体的には、走行制御部29は、移動体1の搭乗者が移動体2の搭乗者に声を掛けたい場合には、走行状態変更部20に示した他の機能部の機能を利用して、移動体2に対する移動体1の距離を変更する処理をしながら、移動体1を移動体2に追従走行させる。また、走行制御部29は、移動体1の搭乗者が移動体2の搭乗者と会話を行わない場合には、走行状態変更部20に示した他の機能部の機能を利用せず、単に移動体1を移動体2に追従走行させることができる。また、走行制御部29は、追従設定部17において、移動体1を移動体2に追従させない設定とした場合に、移動体1の搭乗者の操作に応じて走行を制御することができる。
【0054】
なお、距離操作部26は、移動体1の搭乗者が移動体2の搭乗者に会話を行いたい場合に、会話開始のスイッチとして利用することができる。言い換えると、搭乗者が距離設定部27に設けられた所定のスイッチの操作を行ったことを契機として、走行状態変更部20を用いた移動体間の距離変更の処理を開始させることができる。
【0055】
次に、
図4を参照して、移動体1の動作の処理フローの一例について説明する。
【0056】
最初に、移動体1と移動体2は、進行方向に対して縦列で隊列走行を行う(ステップS1)。このとき、移動体1及び移動体2は、発信部11と、受信部12とを利用した情報の送受信、受信角測定部13と、周波数測定部14を利用した互いの位置関係の把握により、移動体2に対して移動体1が隊列走行している状態とする。なおステップS1では、移動体1の搭乗者と移動体2の搭乗者は会話を行っていない状態とする。
【0057】
なお、移動体1及び移動体2の隊列走行には、公知の方法を用いることも可能である。すなわち、移動体が車載追従走行装置または制御システムなどを有し、移動体1と移動体2の隊列走行では、先行車両との車間距離を目標車間距離に合わせるように、後続車両が先行車両に隊列走行した状態であればよい。
【0058】
次に、移動体1の搭乗者が、移動体2の搭乗者に対する発声を開始した場合の移動体1と移動体2の距離の制御について説明する。
【0059】
移動体1においてマイク21は、移動体1の搭乗者の音声と、周囲の環境音とを含む音の取得を行う。(ステップS2)。また、センサ22は、移動体1の周囲の環境情報を取得する(ステップS3)。
【0060】
発声判定部23は、マイク21による取得結果に応じて、搭乗者が発声しているか否かを判定する(ステップS4)。発声判定部23において、搭乗者が発声していると判定した場合には(ステップS4でYes)、ステップS5に進む。発声判定部23において、搭乗者の発声が確認できない場合には(ステップS4でNo)、ステップS2に戻り、搭乗者の発声が確認されるまで処理を繰り返す。
【0061】
距離設定部27は、移動体1と移動体2の相対的な距離の設定を行う(ステップS5)。この距離設定部27による距離設定は、マイク21により取得した搭乗者の音声の大きさと騒音である周囲の環境音の大きさ、搭乗者の音声の高さ、風向き、移動体1と移動体2の位置関係、搭乗者の操作に応じて、距離の設定を行う。
【0062】
安全判定部28は、距離設定部27で設定した移動体2に対する距離が、安全な距離であるか否かを判定する(ステップS6)。安全判定部28が、距離設定部27で設定された距離は安全な距離である、と判定した場合には(ステップS6でYes)、ステップS7に進む。安全判定部28が、距離設定部27で設定された距離は安全な距離ではない、と判定した場合には(ステップS6でNo)、ステップS5に戻り、距離設定部27による距離を再設定する。なお、この再設定を行う際には、話し掛けたくても近づけない状況が続いてしまう場合があるため、「通常よりも大きな声で話して下さい」、「会話に適する場所ではないため、暫くお待ち下さい」等の報知を行っても良い。
【0063】
走行制御部29は、距離設定部27で設定した移動体2に対する距離となるように、移動体1の走行を制御する(ステップS7)。
【0064】
これにより、移動体1と移動体2の搭乗者同士で直接会話が可能であり、かつ、移動体同士が安全な距離となる状態で、隊列走行を行うことができる。言い換えると、搭乗者の状態や周囲の環境に応じて、隊列走行する移動体同士の距離を変更するように、移動体1の走行状態を制御することができる。
【0065】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。すなわち上記の記載は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされており、当業者であれば、実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
【0066】
上記の説明では、自移動体である移動体1が、他移動体である移動体2の後方に配されて、移動体2に追従走行している場合について説明したが、これに限られない。
【0067】
例えば、移動体1と移動体2が並列に走行している場合(並列走行が許可される場所など)や、縦列に隊列を組んでいる場合における先頭に移動体1が配されており、移動体2が移動体1に追従している場合であっても、走行状態変更部20の動作により、移動体2との距離が適切となるように、調整することができる。
【0068】
また例えば、3台以上の移動体で隊列を組んで走行している場合であって、追従する対象の移動体と、会話のために接近したい移動体が異なる場合であっても、走行状態変更部20の動作により、会話のために接近したい移動体との距離が適切となるように、調整することができる。
【符号の説明】
【0069】
1、2 移動体
11 発信部
12 受信部
13 受信角測定部
14 周波数測定部
15 記憶部
16 電源部
17 追従設定部
18 更新制御部
20 走行状態変更部
21 マイク
22 センサ
23 発声判定部
24 風向取得部
25 位置関係取得部
26 距離操作部
27 距離設定部
28 安全判定部
29 走行制御部