(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024091020
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20240627BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B41J2/17 207
B41J2/01 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207272
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】岩本 正治
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA27
2C056FA13
2C056HA33
2C056JC15
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】搬送ベルトにより記録媒体を搬送しつつ縁なし記録を行う場合、記録媒体の端部は搬送ベルトから外側に飛び出す為、記録媒体の端部は搬送ベルトによって支持されずに垂れ下がり、ひいてはインク吸収体に接触して記録媒体が汚損される虞がある。
【解決手段】液体吐出装置は、媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドと対向する位置で媒体を吸着して搬送する搬送ベルトと、幅方向において搬送ベルトの外側に配置された液体受け部であって、媒体から外れた領域に吐出された液体を受ける液体受け面を形成する液体受け部と、を備え、液体受け面は、搬送ベルトと隣接する位置から幅方向の外側に向かって下がり傾斜状となる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドと対向する位置で媒体を吸着して搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトによる媒体の搬送方向と交差する幅方向において前記搬送ベルトの外側に配置された液体受け部であって、媒体から外れた領域に吐出された液体を受ける液体受け面を形成する前記液体受け部と、を備え、
前記液体受け面は、前記搬送ベルトと隣接する位置から前記幅方向の外側に向かって下がり傾斜状となる、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置において、前記搬送ベルトが媒体を吸着する吸着面に対する法線方向において、前記液体受け面の前記搬送ベルトと隣接する位置が、前記搬送ベルトの領域内にある、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出装置において、前記液体受け部は、前記液体受け面の前記幅方向の外側の端部を始点として、前記幅方向の外側に向かって上り傾斜状となる補助面を有し、
前記液体受け面と前記補助面とが接続する接続部が、前記搬送方向の上流または下流に向かって下がり傾斜状となる、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出装置において、前記接続部によって案内される液体を回収する液体回収トレイを有する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項3に記載の液体吐出装置において、前記補助面は、前記幅方向の外側の端部が、前記液体吐出ヘッドのヘッド面の高さ位置よりも高い位置にある、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の液体吐出装置において、前記液体受け部は、前記幅方向において前記搬送ベルトの両側に設けられる、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の液体吐出装置において、前記搬送ベルトを含むベルトユニットが、駆動源の動力を受けて前記幅方向に移動可能に構成され、
前記幅方向のサイズが前記搬送ベルトのサイズより小さい第1の媒体を搬送する際、前記駆動源を制御する制御部は、前記第1の媒体の前記幅方向の一方のエッジが前記搬送ベルトより外側に位置する様に前記駆動源を制御して前記搬送ベルトを移動させる、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液体吐出装置において、
前記液体受け部は、前記幅方向において前記搬送ベルトの両側に設けられ、
前記搬送ベルトは、
前記第1の媒体の前記幅方向の一方のエッジが前記搬送ベルトより外側に位置することとなる第1移動位置と、
前記第1の媒体の前記幅方向の他方のエッジが前記搬送ベルトより外側に位置することとなる第2移動位置と、
の間で移動可能である、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に液体を吐出することで記録する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクジェット記録装置において、搬送ベルトを用いて記録媒体を搬送しつつ、記録媒体の幅方向の端部に縁なし記録を行う為の構成が開示されている。
具体的には、特許文献1記載のインクジェット記録装置は幅方向に沿って所定の間隔を置いて4つの搬送ベルトが設けられており、隣合う二つの搬送ベルトの間に記録媒体の幅方向端部が配置された状態で、隣合う二つの搬送ベルトの間にインクが吐出されることで記録媒体の幅方向端部に縁なし記録が行われる。
搬送ベルトを挟んで記録ヘッドと対向する位置にはインク吸収体が備えられており、記録媒体の端部の外に吐出されたインク、即ち記録媒体に着弾しなかったインクは、インク吸収体により吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
縁なし記録は、記録媒体の端部から外れた領域に対してもインクを吐出することで実現される為、記録媒体の端部から外れた領域に吐出されたインクがミストとなって浮遊し、種々の不具合を招くことが知られている。従って記録媒体の端部から外れた領域に吐出されたインクが直ちにインク吸収体によって吸収される様に、高さ方向において極力インク吸収体を記録媒体に極力近づけることが好ましい。
ところが記録媒体の端部は搬送ベルトから外側に飛び出す為、飛び出した部分は搬送ベルトによって支持されずに垂れ下がり、ひいてはインク吸収体に接触して記録媒体が汚損される虞がある。しかしながら特許文献1記載のインクジェット記録装置では、この様な不具合に対する考慮がなされていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明の記録装置は、媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドと対向する位置で媒体を吸着して搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトによる媒体の搬送方向と交差する幅方向において前記搬送ベルトの外側に配置された液体受け部であって、媒体から外れた領域に吐出された液体を受ける液体受け面を形成する前記液体受け部と、を備え、前記液体受け面は、前記搬送ベルトと隣接する位置から前記幅方向の外側に向かって下がり傾斜状となることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】プリンターにおける媒体搬送経路の全体を示す図。
【
図4】ベルトユニットの
図3におけるA-A断面図。
【
図6】他の実施形態に係るベルトユニットの平面図。
【
図7】他の実施形態に係るベルトユニットの平面図。
【
図8】他の実施形態に係るベルトユニットの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る液体吐出装置は、媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドと対向する位置で媒体を吸着して搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトによる媒体の搬送方向と交差する幅方向において前記搬送ベルトの外側に配置された液体受け部であって、媒体から外れた領域に吐出された液体を受ける液体受け面を形成する前記液体受け部と、を備え、前記液体受け面は、前記搬送ベルトと隣接する位置から前記幅方向の外側に向かって下がり傾斜状となることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記搬送ベルトの外側には前記液体受け部が配置され、前記液体受け部が形成する前記液体受け面は、前記搬送ベルトと隣接する位置から前記幅方向の外側に向かって下がり傾斜状となることから、媒体が前記搬送ベルトの外側で垂れ下がっても、当該垂れ下がった部位が前記液体受け面に接触し難くなる。これにより前記液体受け面を媒体に近づけても、媒体において前記搬送ベルトの外側に飛び出た部位が前記液体受け面に接触し難くなる。そして前記液体受け面を媒体に近づけることで、媒体から外れた領域に吐出された液体が速やかに前記液体受け面に付着し、これによりミストの発生を抑制できる。
以上により、媒体が前記液体受け面に接触することに伴う汚損の抑制と、縁なし記録に伴って生じるミストの抑制と、の両立を図ることができる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記搬送ベルトが媒体を吸着する吸着面に対する法線方向において、前記液体受け面の前記搬送ベルトと隣接する位置が、前記搬送ベルトの領域内にあることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、前記搬送ベルトが媒体を吸着する吸着面に対する法線方向において、前記液体受け面の前記搬送ベルトと隣接する位置が、前記搬送ベルトの領域内にあることから、前記液体受け面が前記搬送ベルトによって搬送される媒体に近づくこととなり、これにより上記ミストの発生をより良好に抑制できる。
【0011】
第3の態様は、第2の態様に従属する態様であって、前記液体受け部は、前記液体受け面の前記幅方向の外側の端部を始点として、前記幅方向の外側に向かって上り傾斜状となる補助面を有し、前記液体受け面と前記補助面とが接続する接続部が、前記搬送方向の上流または下流に向かって下がり傾斜状となることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記液体案受け部は、前記液体受け面の前記幅方向の外側の端部を始点として、前記幅方向の外側に向かって上り傾斜状となる補助面を有することから、前記液体受け面上を前記幅方向の外側に向かって流れる液体は、前記補助面によって堰き止められる。
そして前記液体受け面と前記補助面とが接続する接続部が、前記搬送方向の上流または下流に向かって下がり傾斜状となることから、前記補助面によって堰き止められた液体が前記接続部に沿って前記搬送方向の上流または下流に向かって流れることとなる。
以上により、前記液体受け面によって受けた液体を一箇所に集約することができ、前記液体受け面によって受けた液体を効率的に回収することができる。
尚、本態様は上記第2の態様に限らず、上記第1の態様に従属しても良い。
【0013】
第4の態様は、第3の態様に従属する態様であって、前記接続部によって案内される液体を回収する液体回収トレイを有することを特徴とする。
本態様によれば、前記液体回収トレイにより、前記接続部によって案内される液体を回収することができる。また前記接続部によって液体が前記搬送方向の上流または下流に案内され、集約されることから、前記液体回収トレイが前記搬送方向に沿って大型化することを抑制できる。
【0014】
第5の態様は、第3の態様に従属する態様であって、前記補助面は、前記幅方向の外側の端部が、前記液体吐出ヘッドのヘッド面の高さ位置よりも高い位置にあることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、前記補助面は、前記幅方向の外側の端部が、前記液体吐出ヘッドのヘッド面の高さ位置よりも高い位置にあることから、前記液体吐出ヘッドから吐出された液体がミストとなった場合に、前記ミストが前記幅方向の外側に向かって流れることを前記補助面によって抑制することができる。
尚、本態様は上記第3の態様に限らず、上記第4の態様に従属しても良い。
【0016】
第6の態様は、第1から第5の態様のいずれかに従属する態様であって、前記液体受け部は、前記幅方向において前記搬送ベルトの両側に設けられることを特徴とする。
本態様によれば、前記液体受け部は、前記幅方向において前記搬送ベルトの両側に設けられることから、前記幅方向における媒体の両端部に対し縁なし記録を行うことができ、そして前記縁なし記録を行う際に、上述した第1から第5の態様のいずれかの作用効果が得られる。
【0017】
第7の態様は、第1から第5の態様のいずれかに従属する態様であって、前記搬送ベルトを含むベルトユニットが、駆動源の動力を受けて前記幅方向に移動可能に構成され、前記幅方向のサイズが前記搬送ベルトのサイズより小さい第1の媒体を搬送する際、前記駆動源を制御する制御部は、前記第1の媒体の前記幅方向の一方のエッジが前記搬送ベルトより外側に位置する様に前記駆動源を制御して前記搬送ベルトを移動させることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、前記幅方向のサイズが前記搬送ベルトのサイズより小さい第1の媒体を搬送する際、前記制御部は、前記第1の媒体の前記幅方向の一方のエッジが前記搬送ベルトより外側に位置する様に前記駆動源を制御して前記搬送ベルトを移動させるので、前記第1の媒体の前記幅方向における一方の側端領域に対して縁なし記録を実行可能となる。
【0019】
第8の態様は、第7の態様に従属する態様であって、前記液体受け部は、前記幅方向において前記搬送ベルトの両側に設けられ、前記搬送ベルトは、前記第1の媒体の前記幅方向の一方のエッジが前記搬送ベルトより外側に位置することとなる第1移動位置と、前記第1の媒体の前記幅方向の他方のエッジが前記搬送ベルトより外側に位置することとなる第2移動位置と、の間で移動可能であることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、前記幅方向において前記搬送ベルトの両側に設けられた上で、前記搬送ベルトが前記第1移動位置と前記第2移動位置との間で移動可能であることから、前記第1の媒体の前記幅方向の一方の側端領域、または他方の側端領域に対して縁なし記録を実行可能となる。
【0021】
以下、本発明を具体的に説明する。
以下では媒体の一例である記録用紙に対し、液体の一例であるインクを吐出することで記録を行うインクジェットプリンター1を、液体吐出装置の一例として説明する。以下においてインクジェットプリンター1は、プリンター1と略称する。
【0022】
各図において示すX-Y-Z座標系は直交座標系であって、Y軸方向が媒体の搬送方向と交差する幅方向であり、また装置奥行き方向である。本実施形態において装置本体2の周囲を構成する側面のうち、+Y方向の側面が背面となり、-Y方向の側面が前面となる。
X軸方向は装置幅方向であり、プリンター1の操作者から見て+X方向が左側、-X方向が右側となる。また-X方向は、後述する各用紙カセットからの用紙送り出し方向となる。
Z軸方向は鉛直方向即ち装置高さ方向であり、+Z方向が上方向、-Z方向が下方向となる。
以下では、記録用紙が送られていく方向を「下流」と言い、またその反対方向を「上流」と言う場合がある。
図1においては、用紙搬送経路を破線で示している。プリンター1において用紙は、破線で示す用紙搬送経路を通って搬送される。
【0023】
プリンター1は後述するラインヘッド12を備える装置本体2の下部に、鉛直方向に沿って複数の用紙カセット、具体的には第1用紙カセット3、第2用紙カセット4、第3用紙カセット5、及び第4用紙カセット6のこれら用紙カセットを備えている。符号Pは、各用紙カセットに収容される記録用紙を示している。
各用紙カセットに対しては、収容された記録用紙を-X方向に送り出すピックローラーが設けられている。符号21、22、23、24は、各用紙カセットに設けられたピックローラーを示している。
また各用紙カセットに対しては、ピックローラーによって送り出された記録用紙を更に下流に給送する給送ローラー対が設けられている。符号25、26、27、28は、各用紙カセットに対して設けられた給送ローラー対を示している。
尚、以下では「ローラー対」とは、特に説明しない限り不図示のモーターによって駆動される駆動ローラーと、この駆動ローラーに接して従動回転する従動ローラーとで構成されるものとする。
【0024】
符号T1は、各用紙カセットから送り出されて搬送ローラー対34に到達する記録用紙の搬送経路を示している。第1用紙カセット3から送り出された記録用紙は、搬送ローラー対29、33から送り力を受けて、搬送ローラー対34に送られる。第2用紙カセット4から送り出された記録用紙は、搬送ローラー対30、29、33から送り力を受けて搬送ローラー対34に送られる。第3用紙カセット5から送り出された記録用紙は、搬送ローラー対31、30、29、33から送り力を受けて搬送ローラー対34に送られる。第4用紙カセット6から送り出された記録用紙は、搬送ローラー対32、31、30、29、33から送り力を受けて搬送ローラー対34に送られる。
【0025】
搬送ローラー対34から送り力を受ける記録用紙は、液体吐出ヘッドの一例であるラインヘッド12と、搬送ベルト53との間、つまりラインヘッド12と対向する記録位置に送られる。
ラインヘッド12は、記録用紙の面に液体の一例であるインクを吐出して記録を実行する。ラインヘッド12は、インクを吐出するノズルが用紙幅方向の全域をカバーする様に構成されたインク吐出ヘッドであり、用紙幅方向への移動を伴わないで用紙幅全域に記録が可能なインク吐出ヘッドとして構成されている。但し、インク吐出ヘッドはこれに限られず、キャリッジに搭載されて用紙幅方向に移動しながらインクを吐出するタイプであってもよい。
【0026】
搬送ベルト53は、第1ローラー54及び第2ローラー55に掛け回される無端ベルトであって、第1ローラー54が不図示のモーターにより駆動されることで周回する。記録用紙は、搬送ベルト53の吸着面53aに吸着されつつラインヘッド12と対向する位置を搬送される。搬送ベルト53に対する記録用紙の吸着は、本実施形態では静電吸着方式が採用される。搬送ベルト53を帯電させる手段については後に説明する。
【0027】
ラインヘッド12により第1面に記録が行われた記録用紙は、搬送ベルト53の下流に位置する搬送ローラー対35により、搬送ローラー対36及び搬送ローラー対40のいずれかに向けて送られる。搬送ローラー対35の下流には不図示の経路切り換えフラップが設けられており、この経路切り換えフラップにより、搬送ローラー対35から送り力を受ける記録用紙は、搬送ローラー対36及び搬送ローラー対40のいずれかに送られる。
【0028】
記録用紙の第1面とその反対の第2面の双方に記録を行わない場合、即ち両面記録を行わない場合、記録用紙は搬送ローラー対35から搬送ローラー対36に向けて送られ、排出経路T4を通って排出トレイ8に向けて排出される。排出経路T4には、搬送ローラー対38と、搬送ローラー対39が設けられている。
【0029】
記録用紙の第1面とその反対の第2面の双方に記録を行う場合、即ち両面記録を行う場合、記録用紙は搬送ローラー対35から搬送ローラー対40に向けて送られ、スイッチバック経路T2に入る。その後、搬送ローラー対40の回転方向が切り換えられ、記録用紙は反転経路T3に入り、搬送ローラー対41、42、43により、搬送ローラー対34へ送られる。
【0030】
符号10A、10Bは吐出前のインクを収容する、液体収容部としてのインク収容部である。ラインヘッド12から吐出されるインクは、インク収容部10A、10Bから、図示を省略するチューブを介してラインヘッド12へと供給される。
【0031】
符号11は、ラインヘッド12から不図示のキャップ部に向けてメンテナンスの為に吐出された、廃液としてのインクを貯留する廃液収容部である。不図示のキャップ部に向けてメンテナンスの為に吐出された、廃液としてのインクは、不図示のキャップ部から不図示のチューブを介して廃液収容部11に送られる。
【0032】
続いて
図2以降を参照して搬送ベルト53を含むベルトユニット52について説明する。尚、以降において用紙幅方向となるY軸方向は単に幅方向と言う場合がある。また搬送ベルト53の+Y方向の端部から更に+Y方向と、搬送ベルト53の-Y方向の端部から更に-Y方向を、「外側」と称する場合がある。
ベルトユニット52は、搬送ベルト53が掛け回される第1ローラー54及び第2ローラー55を備えている。第1ローラー54は、不図示のモーターにより図の反時計回り方向に駆動され、これにより搬送ベルト53が周回して吸着面53aが+X方向に移動する。
搬送ベルト53の内側にはバックアッププレート56が設けられている。搬送ベルト53のうちラインヘッド12と対向する区間は、バックアッププレート56により支持される。
【0033】
ベルトユニット52は、帯電ローラー55を備えている。帯電ローラー55は搬送ベルト53の外面に接するローラーであり、搬送ベルト53の回転に応じて従動回転する。帯電ローラー55には、不図示の電源装置によって直流電圧が印加され、これにより帯電ローラー55は搬送ベルト53に接触している部位に電荷を供給する。その結果搬送ベルト53の外面はプラス極性に帯電し、搬送ベルト53の外面が記録用紙を吸着する吸着面となる。
尚、本実施形態においてベルトユニット52は静電吸着方式を採用するが、エアー吸引方式等の他の方式であっても良い。
【0034】
バックアッププレート56において幅方向の両側には、液体受け部60が設けられている。尚、本実施形態において液体受け部60はバックアッププレート56に設けられるが、他の部材に設けられていても良い。
液体受け部60は、
図3に示す様に幅方向において搬送ベルト53の外側に配置されている。液体受け部60は記録用紙の両端部に縁なし記録を行った際に、記録用紙の領域外に吐出されたインクを液体受け面60aによって受ける部位である。
液体受け部60aは種々の材料により形成可能であるが、本実施形態では一例としてPET(ポリエチレンテレフタレート)シートにより形成される。
尚、液体受け面60aがインク吸収性を備えるものであっても良い。例えば、PETシート上にインク吸収シートを配置しても良い。
【0035】
以下、液体受け部60について更に詳説する。本実施形態において液体受け部60は、搬送ベルト53に対し+Y方向の外側に位置する液体受け部60-1と、搬送ベルト53に対し-Y方向の外側に位置する液体受け部60-2とを含む。以下、液体受け部60-1と液体受け部60-2とを区別しない場合、液体受け部60と総称する。
【0036】
図3において符号P1は幅方向のサイズがW2である記録用紙であり、符号Pe1は記録用紙P1の+Y方向のエッジを示し、符号Pe2は-Y方向のエッジを示している。記録用紙P1の幅方向のサイズW2は、搬送ベルト53の幅方向のサイズW1より大きい。また符号W3はラインヘッド12による記録可能領域の幅方向サイズであり、サイズW3は記録用紙P1の幅方向のサイズW2より大きい。
この様な条件のもと、記録用紙P1の領域内に加え、エッジPe1、Pe2のそれぞれの外側領域に対してもインクを吐出することで、幅方向の両端部に縁なし記録を行うことができる。
【0037】
記録用紙P1のエッジPe1、Pe2は、サイズW2によって液体受け面60aに臨む位置に配置される。そして液体受け面60aは、記録用紙P1のエッジPe1、Pe2の外側領域に吐出されたインクを受ける。
液体受け面60aは、X軸方向即ち用紙搬送方向においてラインヘッド12の全領域を含んでいる。
【0038】
液体受け面60aは、
図4の特に拡大図に示す様に搬送ベルト53に隣接する位置K1から幅方向の外側に向かって下がり傾斜状となる。この下がり傾斜の傾斜角は、用紙搬送方向に亘って均一になる様に形成されている。これにより、エッジPe1、Pe2と液体受け面60aとの高さ方向のギャップは、用紙搬送方向に亘って均一となり易い。
液体受け面60aは、幅方向の外側に向かって下がり傾斜状となる為、液体受け面60aが受けたインクは外側方向に流れる。
【0039】
液体受け面60aの外側端部には、補助面60bが接続されている。補助面60bは、液体受け面60aの外側端部を起点として、幅方向の外側に向かって上り傾斜状となる様に形成されている。そして液体受け面60aと補助面60bとが接続する接続部60cが、
図2に示す様に用紙搬送方向の下流に向かって下がり傾斜状となる様に形成されている。これにより液体受け面60aを幅方向の外側に向かって流れたインクは、接続部60の傾斜に沿って用紙搬送方向の下流に向かって流れ、
図2の矢印fで示す様に下方に流れ落ちる。
【0040】
インクが流れ落ちる位置、即ち用紙搬送方向において接続部60の下方には、液体回収トレイ63が配置され、矢印fで示す様に流れ落ちるインクが液体回収トレイ63によって回収される。
液体回収トレイ63の内側には、インクを吸収する液体吸収材64が設けられており、液体吸収材64によってインクが保持される。
【0041】
この様に搬送ベルト53の外側には液体受け部60が配置され、液体受け部60が有する液体受け面60aは、搬送ベルト53と隣接する位置K1から幅方向の外側に向かって下がり傾斜状となることから、記録用紙において搬送ベルト53から外側にはみ出す部位が
図4に示す様に垂れ下がっても、当該垂れ下がった部位が液体受け面60aに接触し難くなる。これにより液体受け面60aを記録用紙に近づけても、記録用紙において搬送ベルト53の外側に飛び出た部位が液体受け面60aに接触し難くなる。そして液体受け面60aを記録用紙に近づけることで、記録用紙から外れた領域に吐出されたインクが速やかに液体受け面60aに付着し、これによりミストの発生を抑制できる。
以上により、記録用紙が液体受け面60aに接触することに伴う汚損の抑制と、縁なし記録に伴って生じるミストの抑制と、の両立を図ることができる。
【0042】
また本実施形態において搬送ベルト53が記録用紙を吸着する吸着面53aに対する法線方向(Z軸方向)において、
図4の拡大図で示す様に液体受け面60aの搬送ベルト53と隣接する位置K1が、搬送ベルト53の領域Z1内にある。
このことにより、液体受け面60aが搬送ベルト53によって搬送される記録用紙に近づくこととなり、これにより上記ミストの発生をより良好に抑制できる。
尚、位置K1と、領域Z1の上端部とがZ軸方向において同じ位置であっても良い。また、位置K1と、領域Z1の下端部とがZ軸方向において同じ位置であっても良い。
但し、液体受け面60aが搬送ベルト53と隣接する位置K1が、搬送ベルト53の領域Z1より下側にあっても良い。
【0043】
また液体受け部60は、液体受け面60aの幅方向の外側の端部を始点として、幅方向の外側に向かって上り傾斜状となる補助面60bを有する。これにより液体受け面60a上を幅方向の外側に向かって流れるインクは、補助面60bによって堰き止められる。そして液体受け面60aと補助面60bとが接続する接続部60cが、搬送方向下流に向かって下がり傾斜状となることから、補助面60bによって堰き止められたインクが搬送方向下流に向かって流れることとなる。
以上により、液体受け面60aによって受けたインクを一箇所に集約することができ、液体受け面60aによって受けたインクを効率的に回収することができる。
尚、本実施形態において接続部60cは搬送方向下流に向かって下がり傾斜状となるが、搬送方向上流に向かって下がり傾斜状となっても良い。
また補助面60bを省略し、液体受け面60a上を幅方向の外側に向かって流れるインクが、液体受け面60aの外側端部から垂れ落ちる様に構成しても良い。この場合、液体回収トレイ63は、液体受け面60aの搬送方向全域をカバーする様に形成することが好ましい。
【0044】
そしてこの様に液体回収トレイ63により、接続部60cによって案内されるインクを回収することができる。また接続部60cが、搬送方向下流または上流に向かって下がり傾斜状となる構成では、接続部60cによってインクが搬送方向下流または上流に案内され、集約されることから、液体回収トレイ63が搬送方向に沿って大型化することを抑制できる。
【0045】
また本実施形態において液体受け部60は、幅方向において搬送ベルト53の両側に設けられることから、幅方向における記録用紙の両端部に対し縁なし記録を行うことができる。
【0046】
尚、補助面60bは、
図5に示す他の実施形態に係る液体受け部60Aの様に幅方向の外側の端部K2が、ラインヘッド12のヘッド面12aの高さ位置よりも高い位置にある様に構成することも好適である。これにより、ラインヘッド12から吐出されたインクがミストとなった場合に、ミストが幅方向の外側に向かって流れることを補助面60bによって抑制することができる。
尚、補助面60bの端部K2は、用紙搬送方向におけるラインヘッド12の全域に亘ってヘッド面12aの高さ位置より高い位置にあることが好ましい。
【0047】
更に他の実施形態について
図6、
図7を参照して説明する。
図6、
図7に示すベルトユニット52Aは、ベース部材70に設けられている。ベース部材70は不図示のガイド部に沿って幅方向に移動可能に設けられている。ベース部材70には幅方向に沿ってラック部70aが形成されている。ラック部70aにはピニオン71が噛み合っており、ラック部70aとピニオン71とによってラックピニオン機構が構成されている。
【0048】
ピニオン71は駆動源であるモーター72によって回転駆動される。モーター72は、制御部76によって制御される。制御部76は、不図示のCPUや不揮発性メモリ等を備えた制御装置であり、前記不揮発性メモリに保持されたプログラムを実行することで各種制御を行う。
ベルトユニット52Aはこの様に構成されたことで、モーター72の動力を受けて幅方向に移動する。
【0049】
ベース部材70に対して+Y方向には規制部74aが設けられ、ベース部材70が規制部74aに当接することで、ベース部材70の+Y方向の移動限度が規制される。
またベース部材70に対して-Y方向には規制部74bが設けられ、ベース部材70が規制部74bに当接することで、ベース部材70の-Y方向の移動限度が規制される。
制御部76は、ベース部材70を規制部74a或いは規制部74bに当接させた際のモーター72の駆動電流値上昇をもとに、ベース部材70の現在位置を把握することができる。またモーター72には不図示のエンコーダーが設けられており、制御部76は前記エンコーダーから送信される情報をもとに、ベース部材70即ちベルトユニット52Aを所望する位置に位置決めすることができる。
【0050】
符号P2は幅方向のサイズW2aが搬送ベルト53のサイズW1より小さい第1の記録用紙である。制御部76は、第1の記録用紙P2を搬送する際、第1の記録用紙P2の幅方向の一方のエッジPe1が
図7に示す様に搬送ベルト53より外側に位置する様にモーター72を制御し、ベルトユニット52A(搬送ベルト53)を移動させる。
これにより、第1の記録用紙P2の幅方向における一方の側端領域に対して縁なし記録を実行可能となる。
【0051】
尚、
図7に示すベルトユニット52A(搬送ベルト53)の位置を、搬送ベルト53の第1移動位置として、ベルトユニット52A(搬送ベルト53)を
図8に示す第2移動位置に移動させることもできる。これにより第1の記録用紙P2の幅方向の他方のエッジPe2を搬送ベルト53より外側に配置することができ、前記他方の側端領域に縁なし記録を実行可能となる。
【0052】
尚、上記の構成では記録用紙の一方の端部領域にのみ縁なし記録が実行可能となる。この為、記録用紙の+Y方向の端部領域と-Y方向の端部領域のいずれの端部領域に縁なし記録を実行するかについて、プリンター1が備える操作部(不図示)を介してユーザーが設定可能に構成されていても良い。
【0053】
またこの様な構成に代えて、制御部76が、画像データの+Y方向の端部領域と-Y方向の端部領域とで仮に記録を行う場合の記録デューティを比較し、記録デューティが小さい側について縁なし記録を行っても良い。この様にすることで記録用紙から外れた領域に吐出されるインクを減らすことができ、インクミストの浮遊を抑制できる。ここで記録デューティとは、記録面の単位面積当たりをインクが覆う割合であり、例えば、50%の記録デューティであれば、記録面の単位面積の50%がインクで覆われることとなる。
【0054】
また縁なし記録を行う場合、画像データの一部が記録されず破棄されることとなる為、記録デューティが高い側の画像データの一部が記録されず破棄されると、画像データが失われたことが目立ち易い。従ってこの観点に基づき、画像データの+Y方向の端部領域と-Y方向の端部領域とで記録デューティを比較し、記録デューティが大きい側について縁なし記録を行っても良い。
【0055】
また上記実施形態では、記録用紙に対して搬送ベルト53を移動させたが、記録用紙を搬送ベルト53に対して移動させても良い。一例として第1用紙カセット3、第2用紙カセット4、第3用紙カセット5、及び第4用紙カセット6のいずれかが備えるエッジガイド(不図示)を幅方向に移動可能に構成し、記録用紙を搬送ベルト53に対して移動させても良い。また用紙搬送経路上において記録用紙を幅方向にシフトさせるシフト機構を採用しても良い。
【0056】
更に本発明は上記において説明した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
1…インクジェットプリンター、2…装置本体、3…第1用紙カセット、4…第2用紙カセット、5…第3用紙カセット、6…第4用紙カセット、8…排出トレイ、9…キャップユニット、9a…キャップ部、10A、10B…インク収容部、11…廃液収容部、12…ラインヘッド、19…給送ローラー対、21、22、23、24…ピックローラー、25、26、27、28…給送ローラー対、29~42…搬送ローラー対、
52、52A…ベルトユニット、53…搬送ベルト、54…第1ローラー、55…第2ローラー、56…バックアッププレート、57…帯電ローラー、60…液体受け部、60a…液体受け面、60b…補助面、60c…接続部、63…液体回収トレイ、64…液体吸収材、70…ベース部材、70a…ラック部、71…ピニオン、72…モーター、74a、74b…規制部、76…制御部